説明

平板表示装置用洗浄剤組成物

【課題】ガラス基板、電極または配線上に存在する有無機汚染物またはパーティクルを除去することが可能な平板表示装置用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物は、組成物の総重量に対して、第4級アンモニウム塩化合物0.01〜10重量%、グリコールエーテル化合物0.01〜10重量%、リン酸エステル化合物0.01〜10重量%、グリセリン化合物0.01〜5重量%及び接触角低下剤0.01〜1重量%を含有し、残部が水からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板表示装置用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
平板表示装置(flat panel display device)は、半導体デバイスのように、成膜、露光、エッチングなどの工程を経て製品が製造される。ところが、このような製造工程によって、基板の表面に、各種の有機物や無機物などの大きさが1μm以下の非常に小さいパーティクル(particle)により付着汚染が発生する。このようなパーティクルが付着したままで、次の工程処理を施した場合、膜のピンホールまたはピット、配線のショートまたはブリッジが発生し、製品の製造収率が低下する。
【0003】
したがって、汚染物を除去するための洗浄が各工程の間に行われており、このための洗浄剤についても多くの研究があった。特許文献1では、有機アミン、有機ホスホン酸、直鎖糖アルコール及び水からなる半導体素子用剥離剤組成物を開示している。ところが、前記特許文献1は、半導体素子に用途が限定されており、銅及び銅合金からなる配線に対する防食能力がないという欠点がある。特許文献2では、アルカノールアミン、有機溶媒、キレート化合物及び水からなる、半導体及びTFT−LCD(Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display)用洗浄剤組成物を開示している。ところが、前記特許文献2の公開特許は、有機汚染物及びパーティクルの除去力に劣り、ポリヒドロキシベンゼン系キレート化合物としてのカテコールまたは没食子酸などにより長期間使用の際に析出などの問題が発生しうる。特許文献3では、有機酸成分、有機アルカリ成分、界面活性剤成分および水を含む、半導体デバイス用基板の洗浄剤を開示している。ところが、特許文献3の洗浄剤は、酸性範囲の溶液なので、洗浄初期段階の基本的特性である、有機物や無機物などの大きさが1μm以下の非常に小さいパーティクルに対する除去性が不十分である。そして、銅配線に対する防食効果のみがあるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国特許公開第2008−0038161号明細書
【特許文献2】韓国特許公開第2004−0035368号明細書
【特許文献3】韓国特許公開第2006−0127098号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガラス基板、電極または配線上に存在する有無機汚染物またはパーティクルを除去することが可能な平板表示装置用洗浄剤組成物を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、平板表示装置に用いられる銅を含む金属からなる電極または配線などを腐食させることなく、洗浄効果を発揮する平板表示装置用洗浄剤組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、リンス問題が発生せず、経済的かつ環境調和的な平板表示装置用洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、組成物の総重量に対して、第4級アンモニウム塩化合物0.01〜10重量%、グリコールエーテル化合物0.01〜10重量%、リン酸エステル化合物0.01〜10重量%、グリセリン化合物0.01〜5重量%及び接触角低下剤0.01〜1重量%を含有し、残部が水からなることを特徴とする、平板表示装置用洗浄剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物は、ガラス基板、電極または配線上に存在する有無機汚染物またはパーティクルを除去することができる。本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物は、平板表示装置に用いられる銅を含む金属からなる電極または配線などを腐食させることなく、洗浄効果を発揮することができる。本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物は、多量の水を使用することにより、リンス問題が発生する可能性を低める。そして、本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物は経済的かつ環境調和的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】有機汚染物のうち有機サインペンの跡で汚染されたガラス基板を示す写真である。
【図2】本発明の実施例4に係る洗浄剤組成物を用いて有機汚染物のうち有機サインペンの跡が除去される結果を示す写真である。
【図3】有機汚染物のうち指紋で汚染された銅基板を示す写真である。
【図4】本発明の実施例4に係る洗浄剤組成物を用いて有機汚染物のうち指紋汚染成分が除去される結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物は、第4級アンモニウム塩化合物、グリコールエーテル化合物、リン酸エステル化合物、グリセリン化合物、接触角低下剤及び水を含んでなる。
【0013】
本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物に含まれる第4級アンモニウム塩化合物は、有無機汚染物及びパーティクルに対して優れた洗浄能力を提供し、銅を含む金属からなる電極または配線に対する優れた防食能力を提供する。
【0014】
前記第4級アンモニウム塩化合物は、組成物の総重量に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%で含まれる。上述した範囲を満足すると、有無機汚染物およびパーティクルに対して洗浄能力が優秀になり、銅を含む金属からなる電極または配線に対する防食能力が優秀になる。
【0015】
前記第4級アンモニウム塩化合物は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)よりなる群から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物に含まれるグリコールエーテル化合物は、有無機汚染物とパーティクルに対する溶解力を増加させ、経済的かつ環境的に利点を提供する。
【0017】
前記グリコールエーテル化合物は、組成物の総重量に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%で含まれる。上述した範囲を満足すると、有無機汚染物とパーティクルに対する溶解力が増加し、洗浄工程が仕上がった後に洗浄剤の残留問題が起こらず、経済的かつ環境的に利点を提供することができる。
【0018】
前記グリコールエーテル化合物は、エチレングリコールモノブチルエーテル(BG)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)、ジエチレングリコールモノエチルエテル(カルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(MFDG)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(BTG)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(MTG)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)よりなる群から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0019】
本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物に含まれるリン酸エステル化合物は、量子性、非量子性溶媒の共溶媒の役目として作用し、基板上に位置する有機汚染物および有機起因性斑に対する優れた洗浄効果を提供する。そして、少量でも優れた有機汚染物除去能力を持つ。
【0020】
前記リン酸エステル化合物は、組成物の総重量に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%で含まれる。上述した範囲を満足すると、基板上に位置する有機汚染物及び有機起因性斑に対する優れた洗浄効果を提供することができる。
【0021】
前記リン酸エステル化合物は、下記化学式1で表されることが好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、C1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。前記アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であることが好ましい。
【0024】
前記化学式1で表されるリン酸エステル化合物の例としては、メチルホスフェート、ジメチルホスフェート、トリメチルホスフェート、エチルホスフェート、ジエチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート及びトリブチルホスフェートなどを挙げることができる。
【0025】
前記リン酸エステル化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物に含まれるグリセリン化合物は、銅を含む金属からなる電極又は配線の腐食を防止し、有機洗浄力を向上させる。
【0026】
前記グリセリン化合物は、組成物の総重量に対して、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%で含まれる。上述した範囲を満足すると、有機汚染物に対する洗浄力が低下することなく、銅を含む金属からなる電極又は配線に対する防食特性が優秀になる。
【0027】
本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物に含まれる接触角低下剤は、洗浄工程後の基板の親水性を確保するために含まれるもので、銅を含む金属の腐食を防止する。
【0028】
前記接触角低下剤は、組成物の総重量に対して、0.01〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%で含まれる。上述した範囲を満足すると、洗浄工程後の基板の親水性確保がより容易であり、銅を含む金属からなる電極または配線に対する防食特性を向上させることができる。前記接触角低下剤はチオグリセリンであることが好ましい。
【0029】
本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物に含まれる水は、組成物の総重量が100重量%となるように残量を含む。前記水は、半導体工程用を使用し、好ましくは18MΩ・cm以上の脱イオン水を使用する。
【0030】
本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物は、トリアゾール系化合物を用いることなく、銅を含む金属からなる電極または配線に防食能力を与えることができる。前記トリアゾール系化合物を用いると、防食能力には優れるが、銅の表面に前記トリアゾール系化合物が吸着して残される問題があるので、利用を控えることが好ましい。
【0031】
本発明は、前記平板表示装置用洗浄剤組成物から製造された平板表示装置を提供する。前記平板表示装置の例としては有機電界発光素子、液晶ディスプレイなどを挙げることができる。
【0032】
本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物は、ガラス基板、電極または配線上に存在する有無機汚染物またはパーティクルを除去することができる。本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物は、平板表示装置に用いられる銅を含む金属からなる電極または配線などを腐食させることなく、洗浄効果を発揮することができる。本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物は、多量の水を使用することにより、リンス問題が発生する可能性を低める。そして、本発明の平板表示装置用洗浄剤組成物は経済的かつ環境調和的である。
【0033】
以下、実施例及び試験例によって本発明をさらに詳細に説明する。ところが、本発明の範囲はこれらの実施例及び試験例によって限定されるものではない。
【0034】
−実施例1〜実施例12、比較例1〜比較例5:洗浄剤組成物の製造−
攪拌器が設置されている混合槽に、下記表1に記載の成分を表1に記載の組成比に基づいて混合し、常温で1時間500rpmの速度で攪拌して洗浄剤組成物を製造した。
【0035】
【表1】

【0036】
−試験例:洗浄剤組成物の特性評価−
1)銅エッチング速度の評価
まず、銅が2500Å(=250nm)の厚さに形成されたガラス基板を、実施例1〜実施例12および比較例1〜比較例5の洗浄剤組成物に30分間浸漬させる。この際、洗浄剤の温度は、25℃であり、銅膜の厚さを浸漬させる前及び後に測定する。また、銅膜の溶解速度を銅膜の厚さ変化から計算して測定する。結果を表2に示す。
【0037】
2)汚染物除去力の評価−1
有機汚染物の除去力評価のために2cm×2cmのサイズに形成されたガラス基板及び銅基板上を有機成分サインペン及び指紋で汚染させ、汚染した基板をスプレー式基板洗浄装置を用いて1分間25℃で実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例5の洗浄剤組成物で洗浄した。洗浄の後、超純水で30秒間洗浄した後、窒素で乾燥させた。
【0038】
ここで、有機サインペンの除去有無の評価基準として、有機成分サインペンによる汚染の後、24時間大気乾燥したものを用いて評価を行った。
○:除去された場合、×:除去されていない場合
ここで、銅基板に対する指紋の除去有無の評価基準は以下の通り。
【0039】
10:完全に除去された場合、0:除去されていない場合
3)汚染物除去力の評価−2
また、銅基板を大気中に24時間放置して大気中の各種有機物、無機物、パーティクルなどに汚染させた後、スプレー式銅基板洗浄装置を用いて1分間25℃で実施例1〜実施例12および比較例1〜比較例5の洗浄剤組成物で洗浄した。洗浄の後、超純水で30秒間洗浄した後、窒素で乾燥させた。前記ガラス基板上に0.5μLの超純水の液滴を滴下させて洗浄後の接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0040】
4)パーティクル除去力の評価
実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例5の洗浄剤組成物によって、無機パーティクルソリューションで汚染させたガラス基板に対する洗浄を行った。より詳細に説明すると、ガラス基板を平均粒径0.8μmの有機パーティクルソリューションで汚染させ、1分間3000rpmでスピンドライした後、スプレー式ガラス基板洗浄装置を用いて1分間25℃でそれぞれの洗浄剤で洗浄した。洗浄の後、超純水で30秒間洗浄した後、窒素で乾燥させた。洗浄前後のパーティクル数は表面粒子測定器(Topcon WM−1500)で0.1μm以上のパーティクル数を測定した。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2を参照すると、本発明に係る実施例1〜実施例12の洗浄剤組成物は、銅に対する防食性能に優れるうえ、有機サインペン、大気汚染物に対する除去力にも優れることが分かる。
【0043】
一方、図1は有機汚染物のうち有機サインペンの跡で汚染されたガラス基板を示す写真である。図2は本発明の実施例4に係る洗浄剤組成物を用いて有機汚染物のうち有機サインペンの跡が除去される結果を示す写真である。図3は有機汚染物のうち指紋で汚染された銅基板を示す写真である。図4は本発明の実施例4に係る洗浄剤組成物を用いて有機汚染物のうち指紋汚染成分が除去される結果を示す写真である。
【0044】
図1〜図4を参照すると、実施例4の洗浄剤組成物を用いると、有機汚染物に対する洗浄能力に優れることが分かる。
【0045】
一方、比較例1、比較例2および比較例3の場合は、有機サインペンや指紋汚染、大気汚染物などに対する洗浄力に優れないことが分かる。比較例4の場合は、銅に対する防食性能および大気汚染物に対する洗浄力に優れないことが分かる。そして、比較例5の場合は、銅に対する防食性能に優れず、大気汚染物に対する除去力にも優れなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総重量に対して、第4級アンモニウム塩化合物0.01〜10重量%、グリコールエーテル化合物0.01〜10重量%、リン酸エステル化合物0.01〜10重量%、グリセリン化合物0.01〜5重量%及び接触角低下剤0.01〜1重量%を含有し、残部が水からなることを特徴とする、平板表示装置用洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記第4級アンモニウム塩化合物が、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)よりなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記グリコールエーテル化合物が、エチレングリコールモノブチルエーテル(BG)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)、ジエチレングリコールモノエチルエテル(カルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(MFDG)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(BTG)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(MTG)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)よりなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記リン酸エステル化合物が下記化学式1で表されることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置用洗浄剤組成物。
【化1】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、C1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。)
【請求項5】
前記リン酸エステル化合物が、メチルホスフェート、ジメチルホスフェート、トリメチルホスフェート、エチルホスフェート、ジエチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート及びトリブチルホスフェートよりなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、請求項4に記載の平板表示装置用洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記接触角低下剤がチオグリセリンであることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置用洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の平板表示装置用洗浄剤組成物から製造されたことを特徴とする平板表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246474(P2012−246474A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30676(P2012−30676)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(506171277)ドンウー ファイン−ケム カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】