説明

平版印刷版原版及びこれを用いた平版印刷版の作成方法

【課題】従来の現像方式及び簡易現像方式において着肉性が良好であり、高耐刷性を有する平版印刷版原版の提供。
【解決手段】支持体上に、(A)増感色素、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物及び(D)水に不溶且つアルカリ可溶性であるポリマーを含有し、露光後に自動現像処理機によってpHが2〜14の現像液の存在下で未露光部を除去することで画像形成可能な画像記録層、並びに、保護層をこの順に有する平版印刷版原版であって、該保護層が、(E)一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位を有し、これら2つの繰り返し単位の合計がポリマーを構成する全繰り返し単位に対して少なくとも95モル%である親水性ポリマーを含有することを特徴とする平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版及びこれを用いた平版印刷版の作成方法に関する。詳しくは、レーザーによる画像露光により直接製版可能であり、pH2〜14の現像液で現像可能な平版印刷版原版及びこれを用いた平版印刷版の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長300nm〜1200nmの紫外光、可視光、赤外光を放射する固体レーザー、半導体レーザー、ガスレーザーは高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっており、これらのレーザーはコンピューター等のデジタルデータから直接製版する際の記録光源として、非常に有用である。これら各種レーザー光に感応する記録材料については種々研究されており、代表的なものとして、第一に、画像記録波長760nm以上の赤外線レーザーで記録可能な材料として特許文献1に記載のポジ型記録材料、特許文献2に記載されている酸触媒架橋型のネガ型記録材料、特許文献3に記載されている赤外線吸収剤を含むラジカル重合型のネガ型記録材料等がある。第二に、300nm〜700nmの紫外光または可視光レーザー対応型の記録材料として特許文献4及び特許文献5に記載されているラジカル重合型のネガ型記録材料等が多数ある。
【0003】
また、従来の平版印刷版原版(以下、PS版ともいう)では、露光の後、非画像部を溶解除去する工程(現像処理)が不可欠であり、現像処理された印刷版を水洗したり、界面活性剤を含有するリンス液で処理したり、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で処理する後処理工程も必要であった。これらの付加的な湿式の処理が不可欠であるという点は、従来のPS版の大きな検討課題となっている。前記のデジタル処理によって製版工程の前半(画像形成処理)が簡素化されても、後半(現像処理)が煩雑な湿式処理では、簡素化による効果が不充分である。
特に近年は、地球環境への配慮が産業界全体の大きな関心事となっている。環境への配慮からも、より中性域に近い現像液での処理や少ない廃液が課題として挙げられている。更に湿式の後処理は、簡素化するか、乾式処理に変更することが望ましい。
【0004】
このような観点から、処理工程を簡略化する方法として、現像とガム液処理を同時に行う1浴処理による方法がある。すなわち後水洗工程を必要とせず、前水洗工程を行わずに印刷原版を露光後、保護層の除去、非画像部の除去、ガム液処理を1浴で同時に行い、後水洗工程を行わずに乾燥し、印刷工程に入る簡易現像方式である。
【0005】
また処理工程をなくす方法の一つに、露光済みの印刷原版を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインキを供給することによって、印刷原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で現像処理が完了する方式である。
【0006】
従来の現像方式、簡易現像方式及び機上現像方式いずれの平版印刷版原版においても、親水性保護層を有する平版印刷版原版共通の課題としてインキ着肉性低下がある。これは保護層中の親水性成分が画像記録層中に潜り込んだまま、露光により硬化して画像部となるため発生すると考えられている。この問題は画像記録層の疎水性が十分でない場合において特に顕著である。
【0007】
特許文献6、7には着肉性付与のため、保護層にセルロース類を含有することが提案されている。しかし、着肉性・耐刷性と現像性のバランスが不十分であった。
更に、特許文献8には、支持体上に、活性光線吸収剤と重合開始剤と重合性化合物とを含有し、印刷インキ、湿し水又はこれらの両方により除去可能な画像記録層を有し、更に無機質の層状化合物を含有する保護層をこの順に有する平版印刷版原版が記載されている。しかしながら、塗布・乾燥段階で表面が親水性である無機質層状化合物及びバインダーとして用いたポリビニルアルコール樹脂が画像記録層中に潜り込んだまま露光により硬化して画像部となるため、塗布直後及び経時後でのインキ着肉性を低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4708925号明細書
【特許文献2】特開平8−276558号公報
【特許文献3】特開2009−91555号公報
【特許文献4】米国特許第2850445号明細書
【特許文献5】特公昭44−20189号公報
【特許文献6】特許第4162365号明細書
【特許文献7】特開2008−162056号公報
【特許文献8】特開2005−119273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、上記のような先行技術の欠点を克服した平版印刷版原版を提供することである。すなわち、従来の現像方式及び簡易現像方式において着肉性が良好であり、高耐刷性を有する平版印刷版を与える原版及びこれを用いた平版印刷版の作成方法を提供することである。特に、平版印刷版原版を経時保管させた後に露光・現像を行うとともに、特色インキを用いた場合の着肉性に優れ、高耐刷性を有する平版印刷版原版及びこれを用いた平版印刷版の作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.支持体上に、(A)増感色素、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物及び(D)水に不溶且つアルカリ可溶性であるポリマーを含有し、露光後に自動現像処理機によってpHが2〜14の現像液の存在下で未露光部を除去することで画像形成可能な画像記録層、並びに、保護層をこの順に有する平版印刷版原版であって、該保護層が、(E)一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位を有し、これら2つの繰り返し単位の合計がポリマーを構成する全繰り返し単位に対して少なくとも95モル%である親水性ポリマーを含有することを特徴とする平版印刷版原版。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、R、Rは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一又は異なってもよい水素原子、メチル基、又はエチル基を表す。Rは、炭素原子数2〜10のアルキル基又は一般式(3)で表される置換基を表す。一般式(3)において、Lは炭素原子数2〜6のアルキレン基、Rは炭素原子数4〜8のアルキル基を表す。nはポリエーテルの平均付加モル数で2〜4の数である。
【0013】
2.前記(E)少なくとも一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーが更に下記一般式(4)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して0.3〜5.0モル%有することを特徴とする前記1に記載の平版印刷版原版。
【0014】
【化2】

【0015】
式中Rは水素原子又はメチル基を表す。Xは単結合又は一般式(5)で表される構造又はその組合せを有する構造を表す。Yは、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、ホスホン酸基、ホスホン酸塩基、ヒドロキシル基、カルボベタイン基、スルホベタイン基、及び、アンモニウム基から選択される少なくともいずれかの置換基を表す。
【0016】
3.前記一般式(4)においてYが、スルホン酸基、スルホン酸塩基、カルボベタイン基、スルホベタイン基、及び、アンモニウム基から選択される少なくともいずれかの置換基であることを特徴とする前記2に記載の平版印刷版原版。
4.前記一般式(1)で表される繰り返し単位のR及びRが共に水素原子であり、一般式(2)で表される繰り返し単位のRが、炭素原子数2〜8の直鎖、分岐又は環状の無置換アルキル基であることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
5.前記保護層が、(F)無機質層状化合物を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
6.前記(A)増感色素が赤外線吸収染料であることを特徴とする前記1〜5のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
7.前記1〜6のいずれか一項に記載の平版印刷版原版を、画像様露光した後、自動処理機によってpHが2〜14の現像液の存在下で非画像部の画像記録層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【0017】
本発明では、(E)特定構造の繰り返し単位を有する親水性ポリマーを保護層に含有することにより、着肉性が良好であり、高耐刷性を有する平版印刷版原版を提供するという課題を達成できた。特に特色インキを用いたときに予想外に経時後であっても着肉性が低下しなかった。
本発明の作用機構は必ずしも明確ではないが、つぎのように推定している。
従来、保護層乾燥時に、保護層の(E)親水性ポリマー及び/又は(F)無機質層状化合物が画像記録層成分と層間混合して現像後も画像部に残り、着肉性が低下するという欠点があった。
分子内に酸基又はその塩を含むことにより水溶性を確保する従来の親水性バインダーポリマーでは、画像記録層及び保護層の親水性が高く、両者が混合しやすくなるため、着肉性向上が困難であった。特に無機質層状化合物を保護層に含む平版印刷版原版においては、着肉性向上がより困難であった。
ところが、保護層に、(E)特定構造の繰り返し単位を有する親水性ポリマーを用いると、インキ着肉性が良好であった。
これは、本発明の(E)親水性ポリマーが、(F)無機質層状化合物がある場合においても、保護層成分と画像記録層成分との混合を抑制するため、現像時に保護層成分が速やかに除去されるようになった結果であると推定している。
【0018】
本発明において、一般式(4)で表される特定構造を有する親水性成分を導入する場合は、その導入量が少量であることが非常に重要である。導入量が多すぎても少なすぎても特色インキ着肉性が低下する。着肉性良化の作用機構は明確ではないが、親水性の非常に高い成分を少量導入することで、現像性と着肉性のバランスが良化したため、予想外に、経時した平版印刷版原版で起こりやすかった特色インキ使用時の着肉性低下が殆ど起こらなくなったと推定している。
このように本発明は、従来技術の延長からは想像できない平版印刷版原版の保護層用新規ポリマー技術であり、実用上の性能の大幅な向上を可能にするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、着肉性(特に特色インキ着肉性)が良好であり、高耐刷性を有する平版印刷版原版及びこれを用いた平版印刷版の作成方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明について、以下に詳細に説明する。
〔平版印刷版原版〕
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、pH2〜14の現像液により未露光部を除去することで画像形成可能な画像記録層、並びに、保護層をこの順に有する。また、本発明の平版印刷版原版は、支持体と画像記録層の間に下塗り層を有してもよい。
以下、本発明の平版印刷版原版の構成要素及び成分などについて説明する。
【0021】
(保護層)
本発明の保護層は、下記一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位を有し、これら2つの繰り返し単位の合計がポリマーを構成する全繰り返し単位に対して少なくとも95モル%である親水性ポリマーを含有することを特徴とする。
2つの繰り返し単位の合計がこの範囲で着肉性と現像性の両立が可能である。95モル%未満だと、平版印刷版原版を経時させた場合に特色インキの着肉性が劣化しやすくなる。
以下では、この親水性ポリマーを本発明の親水性ポリマーとも称する。この下記一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位を有する本発明の親水性ポリマーは、更に下記一般式(4)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して0.3〜5.0モル%有することが好ましい。
【0022】
【化3】

【0023】
式中、R、Rは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一又は異なってもよい水素原子、メチル基、又はエチル基を表す。Rは、炭素原子数2〜10のアルキル基又は一般式(3)で表される置換基を表す。一般式(3)において、Lは炭素原子数2〜6のアルキレン基、Rは炭素原子数4〜8のアルキル基を表す。nはポリエーテルの平均付加モル数で2〜4の数である。
【0024】
【化4】

【0025】
式中Rは水素原子又はメチル基を表す。Xは単結合又は一般式(5)で表される構造又はその組合せを有する構造で表される。Yは、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、ホスホン酸基、ホスホン酸塩基、ヒドロキシル基、カルボベタイン基、スルホベタイン基、及び、アンモニウム基から選択される少なくともいずれかの置換基を表す。
【0026】
一般式(1)で表わされる繰り返し単位のRとRは共に水素原子であることが好ましい。一般式(2)で表わされる繰り返し単位のRが炭素原子数2〜8の直鎖、分岐もしくは環状の無置換アルキル基であることが好ましい。
一般式(1)及び一般式(2)の各式で表わされる繰り返し単位の組み合わせとしては、一般式(1)及び一般式(2)のRとRが共に水素原子、一般式(1)のRとRが共に水素原子、一般式(2)のRが炭素原子数3〜4の分岐かつ無置換アルキル基である組み合わせが最も好ましい。
一般式(4)で表される繰り返し単位としては、水溶性及び現像性の観点から、Yはスルホン酸基、スルホン酸塩基、カルボベタイン基、スルホベタイン基、アンモニウム基が好ましく、スルホン酸基、スルホン酸塩基及びスルホベタイン基がより好ましい。
【0027】
一般式(1)で表わされる繰り返し単位の由来となるモノマーの具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−エチルメチルアクリルアミド、N,N−エチルメチルメタクリルアミドが挙げられる。
【0028】
一般式(2)で表わされる繰り返し単位の由来となるモノマーの具体例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸2−(2−エチルヘキシルオキシエトキシ)エチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシルが挙げられる。
【0029】
一般式(4)で表わされる繰り返し単位の由来となるモノマーの具体例としては、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロパンスルホン酸、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロパンスルホン酸カリウム、4−((3−メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)ブタン−1−スルホネート、4−((3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)ブタン−1−スルホネート、ビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、ジエチレングリコール2−エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリルコリンクロライド、メタクリル酸3−スルホプロピルカリウム、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタインなどが挙げられる。
【0030】
本発明の(E)親水性ポリマーは、一般式(4)で表される繰り返し単位を含有する場合、その含有量は0.3〜5モル%である。0.3〜3モル%含有するものが好ましく、0.3〜1.5モル%含有するものがより好ましい。この範囲で、良好な現像性、着肉性及び耐刷性が得られる。0.3モル%未満及び5モル%を超えると着肉性、特に特色インキの着肉性が劣る。
一般式(1)で表される繰り返し単位は、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して65〜96.7モル%を含むものが好ましく、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して70〜80モル%を含むものがより好ましく、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して74〜80モル%を含むものが特に好ましい。一般式(2)で表される繰り返し単位は、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して3〜30モル%を含むものが好ましく、20〜30モル%含むものがより好ましく、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して20〜26モル%含むものが特に好ましい。
【0031】
(E)親水性ポリマーの質量平均モル質量(Mw)は、10,000〜200,000が好ましく、10,000〜100,000がより好ましく、10,000〜30,000が最も好ましい。
【0032】
以下に本発明の親水性ポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【化5】


【0037】
【化6】


【0038】
【表4】

【0039】
本発明の(E)親水性ポリマーの保護層中での含有量は、保護層固形分の20〜97質量%であることが好ましい。より好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは40〜90質量%である。この範囲内で、着肉性もより良好であり、耐刷性もより良好な平版印刷版原版が得られる。
【0040】
本発明の保護層には、薄層で良好な酸素遮断性を得るため、(F)無機質層状化合物を含有することが好ましい。
無機質層状化合物とは、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、下記一般式
A(B,C)2−510(OH,F,O)
〔ただし、AはLi,K,Na,Ca,Mg,有機カチオンの何れか、B及びCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSi又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0041】
上記天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0042】
上記の層状化合物の中でも、雲母が好ましく、合成の無機質の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、この膨潤性合成雲母や、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘土鉱物類等は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+、有機カチオン等の陽イオンを吸着している。これらの無機質層状化合物は水により膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイト及び膨潤性合成雲母はこの傾向が強い。
【0043】
層状化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0044】
上記の層状化合物の具体的な添加量の合計は、用いる層状化合物によって異なるので一概には決めがたいが、一般に、保護層全固形分の3〜80質量%が好ましく、より好ましくは5〜70質量%、最も好ましくは10〜60質量%である。これらの範囲で良好な酸素遮断性が得られる。
層状化合物の粒子径は、その平均径は1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは1〜10μmであり、特に好ましくは2〜5μmである。粒子径が1μm以上であれば酸素や水分の透過の抑制が十分であり、効果を十分に発揮でき好ましい。また20μm以下であれば塗布液中での分散安定性が十分であり、安定的な塗布を行うことができ好ましい。また、該粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度であることが好ましい。
【0045】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる効果が得られる。
【0046】
また、これらの保護層にはべたつきを防止するためにフッ素系化合物、シリコーン系化合物、ワックス系エマルジョンを添加することができる。これらを添加すると保護層の表面に浮いてくることで親水性樹脂に起因するべたつきがなくなる。これらの化合物の添加量は保護層の0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜2.0質量%である。
【0047】
保護層用塗布液には、塗布性を向上させためのアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤や皮膜の物性改良のため水溶性可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。更に、この塗布液には、画像記録層との密着性、塗布液の経時安定性、着肉性などを向上するための公知の添加剤を加えてもよい。保護層用塗布液は、上記成分が溶解した水溶液であることが好ましい。
【0048】
保護層は、画像記録層上に公知の方法で塗布される。保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/mの範囲であることが好ましく、0.02〜3g/mの範囲がより好ましく、最も好ましくは0.02〜1g/mの範囲である。
【0049】
(画像記録層)
本発明の画像記録層は、(A)増感色素、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物及び(D)水に不溶且つアルカリ可溶性であるポリマーを含有し、露光後に自動現像処理機によってpHが2〜14の現像液の存在下で未露光部を除去することで画像形成可能な画像記録層である。
以下に、画像記録層に含有できる各成分について、順次説明する。
【0050】
(A)増感色素
重合性組成物に用いる増感色素は、画像露光時の光を吸収して励起状態となり、重合開始剤に電子移動、エネルギー移動又は発熱などでエネルギーを供与し、重合開始機能を向上させるものであれば特に限定せず用いることができる。特に、300〜450nm又は750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する増感色素が好ましく用いられる。
【0051】
350〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素としては、メロシアニン類、ベンゾピラン類、クマリン類、芳香族ケトン類、アントラセン類、スチリル類、オキサゾール類等の色素を挙げることができる。
【0052】
350〜450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素のうち、高感度の観点からより好ましい色素は下記一般式(I)で表される色素である。
【0053】
【化7】

【0054】
一般式(I)中、Aは置換基を有してもよいアリール基又はヘテロアリール基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子又はN(R)を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、1価の非金属原子団を表し、AとR又はRとRは、それぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0055】
一般式(I)について更に詳しく説明する。R、R又はRで表される1価の非金属原子団は、好ましくは、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を表す。
【0056】
このような増感色素の具体例としては、特開2007−58170号公報の段落番号[0047]〜[0053]に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0057】
更に、下記一般式(II)又は(III)で示される増感色素も用いることができる。
【0058】
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
式(II)中、R〜R14は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R〜R10の少なくとも一つは炭素原子数2以上のアルコキシ基を表す。
式(III)中、R15〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R15〜R24の少なくとも一つは炭素原子数2以上のアルコキシ基を表す。
【0061】
このような増感色素の具体例としては、欧州特許出願公開第1349006号明細書や国際公開第2005/029187号パンフレットに記載の化合物が好ましく用いられる。
【0062】
また、特開2006−189604号、特開2007−171406号、特開2007−206216号、特開2007−206217号、特開2007−225701号、特開2007−225702号、特開2007−316582号、特開2007−328243号の各公報に記載の増感色素も好ましく用いることができる。
【0063】
続いて、750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する増感色素(以降、赤外線吸収剤と称することもある)について記載する。赤外線吸収剤は染料又は顔料が好ましく用いられる。
【0064】
染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(IV)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0065】
【化10】

【0066】
一般式(IV)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−N(R)(R10)、−X−L又は以下に示す基を表す。ここで、R及びR10は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルキル基、水素原子を表し、またRとR10とが互いに結合して環を形成してもよい。なかでもフェニル基が好ましい。Xは酸素原子又は硫黄原子を示し、Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子(N、S、O、ハロゲン原子、Se)を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。下記式のXは後述するZと同様に定義され、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0067】
【化11】

【0068】
一般式(IV)のR及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。重合性組成物溶液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましい。またR及びRは互いに連結し環を形成してもよく、環を形成する際は5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0069】
Ar、Arは、それぞれ同じでも異なってもよく、置換基を有していてもよいアリール基を示す。好ましいアリール基としては、ベンゼン環基及びナフタレン環基が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12以下のアルコキシ基が挙げられる。Y、Yは、それぞれ同じでも異なってもよく、硫黄原子又は炭素原子数12以下のジアルキルメチレン基を示す。R、Rは、それぞれ同じでも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なってもよく、水素原子又は炭素原子数12以下の炭化水素基を示す。原料の入手容易性から、好ましくは水素原子である。また、Zは、対アニオンを示す。ただし、一般式(IV)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZは必要ない。好ましいZは、重合性組成物溶液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン及びアリールスルホン酸イオンである。
【0070】
一般式(IV)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]に記載の化合物、特開2002−023360号公報の段落番号[0016]〜[0021]、特開2002−040638号公報の段落番号[0012]〜[0037]に記載の化合物、好ましくは特開2002−278057号公報の段落番号[0034]〜[0041]、特開2008−195018号公報の段落番号[0080]〜[0086]に記載の化合物、特に好ましくは特開2007−90850号公報の段落番号[0035]〜[0043]に記載の化合物が挙げられる。
【0071】
また特開平5−5005号公報の段落番号[0008]〜[0009]、特開2001−222101号公報の段落番号[0022]〜[0025]に記載の化合物も好ましく使用することができる。
【0072】
赤外線吸収染料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、顔料等の赤外線吸収染料以外の赤外線吸収剤を併用してもよい。顔料としては、特開2008−195018号公報の段落番号[0072]〜[0076]に記載の化合物が好ましい。
【0073】
増感色素の含有量は、画像記録層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、更に好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.2〜10質量部である。
【0074】
(B)重合開始剤
本発明に用いられる(B)重合開始剤としては、(C)重合性化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。本発明において使用しうる重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。
本発明における重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)有機ホウ酸塩化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物、が挙げられる。
【0075】
(a)有機ハロゲン化物としては、特開2008−195018号公報の段落番号[0022]〜[0023]に記載の化合物が好ましい。
【0076】
(b)カルボニル化合物としては、特開2008−195018号公報の段落番号[0024]に記載の化合物が好ましい。
【0077】
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
【0078】
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0025]に記載の化合物が好ましい。
【0079】
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0026]に記載の化合物が好ましい。
【0080】
(f)アジド化合物としては、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0027]に記載の化合物が好ましい。
【0081】
(h)有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0028]に記載の化合物が好ましい。
【0082】
(i)ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号、特開2002−328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
【0083】
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0028]〜[0030]に記載の化合物が好ましい。
【0084】
(k)オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5-158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許出願公開第2008/0311520号の各明細書、特開平2−150848号、特開2008−195018号の各公報、又はJ.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩、特開2008−195018号公報に記載のアジニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
【0085】
上記の中でもより好ましいものとして、オニウム塩、なかでもヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩が挙げられる。以下に、これらの化合物の具体例を示すが、これに限定されない。
【0086】
ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に電子供与性基、例えばアルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、更に好ましくは非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=テトラフェニルボラートが挙げられる。
【0087】
スルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0088】
アジニウム塩の例としては、1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−シクロヘキシルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−クロロ−1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−シアノピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、3,4−ジクロロ−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−ベンジルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−フェネチルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=p−トルエンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ペルフルオロブタンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ブロミド、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=テトラフルオロボラートが挙げられる。
【0089】
本発明における重合開始剤は、画像記録層を構成する全固形分に対し好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは0.8〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。
【0090】
(C)重合性化合物
本発明における画像記録層に用いるラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物などの化学的形態をもつ。
【0091】
モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲノ基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006−508380号公報、特開2002−287344号公報、特開2008−256850号公報、特開2001−342222号公報、特開平9−179296号公報、特開平9−179297号公報、特開平9−179298号公報、特開2004−294935号公報、特開2006−243493号公報、特開2002−275129号公報、特開2003−64130号公報、特開2003−280187号公報、特開平10−333321号公報、を含む参照文献に記載されている。
【0092】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0093】
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (A)
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
【0094】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報、特開2003−344997号公報、特開2006−65210号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報、特開2000−250211号公報、特開2007−94138号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類や、米国特許第7153632号明細書、特表平8−505958号公報、特開2007−293221号公報、特開2007−293223号公報記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
【0095】
これらの重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。上記の重合性化合物は、画像記録層の全固形分に対して、好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは15〜60質量%の範囲で使用される。
【0096】
(D) 水に不溶且つアルカリ可溶性であるポリマー
バインダーポリマーの化学構造は、特に限定されないが、現像液への溶解性、すなわち現像性の観点から酸基を有する有機高分子が好ましく、特にカルボン酸又はその塩を含有する有機高分子がより好ましい。
本発明の平版印刷版原版用の重合性組成物に用いることができるバインダーポリマーとしては、カルボン酸含有のアルカリ水可溶又は膨潤性の有機高分子が例示できる。この様な有機高分子としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば、特公昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が有用である。バインダーポリマーとして、カルボン酸(塩)基を含有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含む共重合体が好ましい。
また、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなども有用である。更に、特公平7−120040号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開平11−352691号の各公報に記載のポリウレタン樹脂もアルカリ水可溶又は膨潤性バインダーとして有用である。本発明に使用できるバインダーポリマーとして、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、又は、ウレタン樹脂が好ましく用いられる。
【0097】
本発明のバインダーポリマーとして好適な材料の一例は、(a)カルボン酸基(その塩を含む。)を含有するモノマー単位及び(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位を有する共重合体である。
【0098】
(a)カルボン酸基を含有するモノマー単位としては、特に限定されないが、特開2002−40652号公報、特開2005−300650号公報の段落番号[0059]〜[0075]に記載の構造が好ましく用いられる。
(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位としては、特に限定されないが、特開2007−248863号公報の段落番号[0041]〜[0053]に記載の構造が好ましく用いられる。
【0099】
本発明のバインダーポリマーは、(a)カルボン酸基を含有するモノマー単位も、(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位も含まないエチレン性不飽和化合物に由来するモノマー単位を共重合成分として有していてもよい。
このようなモノマー単位としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミドに由来するモノマー単位が好ましい。特に、特開2007−272134号公報の段落番号[0061]〜[0084]に記載のアミド基(メタ)アクリル酸アミドに由来するモノマー単位が好ましく用いられる。このモノマーの含有量は、総モノマー単位数を100とした場合、そのうちの5〜50単位であることが好ましく、5〜35単位であることがより好ましく、5〜25単位であることが更に好ましい。
【0100】
本発明における重合性組成物には、バインダーポリマーとして、前述のモノマー単位の組み合わせを有する付加重合体以外に、側鎖に架橋性基を有するウレタン樹脂も使用することができる。ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に画像記録層中で起こる化学反応によりバインダーポリマーを架橋することができる基のことである。このような機能を有する基であれば特にその化学構造は限定されないが、例えば、付加重合し得る官能基としてエチレン性不飽和基が好ましい。また、特開2007−17948号公報の段落番号[0130]〜[0139]に記載された官能基が例示できる。
【0101】
本発明で特に好ましく用いられる側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂は、(i)ジイソシアネート化合物、(ii)カルボキシ基を有するジオール化合物、(iii)架橋性基を有するジイソシアネート化合物、及び、必要であれば、(iv)カルボキシ基を有さないジオール化合物、(v)アミノ基を有する化合物を重付加反応させることにより得ることができる。
【0102】
上記(i)、(ii)及び(iii)の化合物は、特開2007−17948号公報の段落番号[0142]〜[0167]に記載された式(4)〜(10)及び具体例が挙げられる。(iv)の化合物は、特開2007−17948号公報の段落番号[0180]〜[0225]に記載された一般式(A’)、式(a)〜(e)、式(11)〜(22)及び具体的化合物が挙げられる。(v)の化合物は特開2007−17948号公報の段落番号[0227]〜[0230]に記載された式(31)及び式(32)及び具体的化合物が挙げられる。上記のポリウレタン樹脂のほかに、特開2003−270775号公報に記載されるようなカルボキシ基を有するポリウレタンに高分子反応で架橋性基を導入して得られるポリウレタン樹脂も例示できる。
【0103】
平版印刷版原版の画像記録層の現像性を維持するためには、使用されるバインダーポリマーは、適当な分子量を有することが好ましく、質量平均モル質量(Mw)が5,000〜300,000であることがより好ましく、20,000〜150,000であることが更に好ましい。
【0104】
これらのバインダーポリマーは、重合性組成物中に任意な量で含有させることができるが、重合性組成物中におけるバインダーポリマーの含有量は、10〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。
【0105】
(H)その他の成分
本発明における画像記録層には、必要に応じて、更に他の成分を含有することができる。
(1)疎水化前駆体
本発明では、耐刷性を向上させるため、疎水化前駆体を用いることができる。本発明における疎水化前駆体とは、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できる微粒子を意味する。微粒子としては、疎水性熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子、重合性基を有するポリマー微粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及びミクロゲル(架橋ポリマー微粒子)から選ばれる少なくともひとつであることが好ましい。
【0106】
疎水性熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.333003、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。
このようなポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
【0107】
本発明に用いられる疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。
【0108】
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられ、これらは、熱反応による架橋、及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0109】
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー微粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などを好適なものとして挙げることができる。
【0110】
本発明で用いられるマイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させたものである。なお、画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。更に、マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
【0111】
本発明においては、架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様であってもよい。このミクロゲルは、その中又は表面の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができ、特に、ラジカル重合性基をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
【0112】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化、もしくはミクロゲル化する方法としては、公知の方法が適用できる。
【0113】
上記のマイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmが更に好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0114】
疎水化前駆体の含有量としては、画像記録層全固形分の5〜90質量%の範囲であることが好ましい。
【0115】
(2)その他
更にその他の成分として、低分子親水性化合物、感脂化剤、界面活性剤、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、無機質層状化合物、及び共増感剤もしくは連鎖移動剤などを添加することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落番号[0114]〜[0159]、特開2006−091479号公報の段落番号[0023]〜[0027]、米国特許公開2008/0311520号明細書段落番号[0060]、特開2009−208458号公報段落番号[0089]〜[0105]に記載の化合物及び添加量が好ましい。
【0116】
<画像記録層の形成>
本発明における画像記録層は、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0142]〜[0143]に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、これを支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することで形成される。塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
【0117】
(下塗り層)
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある)を設けることが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわず現像性を向上させるのに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ。
【0118】
下塗り層に用いる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。これらの化合物は、低分子化合物でも高分子ポリマーであってもよい。また、これらの化合物は必要に応じて2種以上を混合して使用してもよい。
【0119】
高分子ポリマーである場合は、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−、−COCH2COCH3が好ましい。親水基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としてはメタクリル基、アリル基などが好ましい。
この高分子ポリマーは、高分子ポリマーの極性置換基と、対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーがさらに共重合されていてもよい。
【0120】
具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号、特開2005−125749号、特開2006−239867号、特開2006−215263号の各公報記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面に相互作用する官能基、及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物を含有するものも好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005−125749号及び特開2006−188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基、及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
【0121】
下塗り層用高分子樹脂中の不飽和二重結合の含有量は、高分子ポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、最も好ましくは0.2〜5.5mmolである。
下塗り層用の高分子ポリマーは、質量平均モル質量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましい。
【0122】
本発明の下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時における汚れ防止のため、キレート剤、第2級又は第3級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基とアルミニウム支持体表面と相互作用する基とを有する化合物等(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)を含有することができる。
【0123】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0124】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体としては、公知の支持体が用いられる。なかでも、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
また、上記アルミニウム板は必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートあるいは米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行うことができる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。
【0125】
本発明の支持体には必要に応じて、裏面に、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されているケイ素のアルコキシ化合物を含むバックコート層を設けることができる。
【0126】
〔製版方法〕
本発明の平版印刷版の製版方法は、少なくとも平版印刷版原版を画像露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)、及び、処理液により現像処理する工程(以下、「現像工程」ともいう。)を含む方法であることが好ましい。
【0127】
<露光工程>
本発明に用いられる平版印刷版原版は、デジタルデータを可視光レーザー、赤外線レーザーなどのレーザーにより走査露光する方法、画像が記録された透明原画を通してハロゲンランプ、高圧水銀灯などの光源により露光する方法により画像記録することができるが、可視光レーザー、赤外線レーザーなどのレーザーにより走査露光する方法が好ましい。
望ましい光源の波長は、300nmから450nm又は750nmから1400nmの波長が好ましく用いられる。300nmから450nmの場合は、この領域に吸収極大を有する増感色素を画像記録層に有する平版印刷版原版が用いられ、750nmから1400nmの場合は、この領域に吸収を有する増感色素である赤外線吸収剤を含有する平版印刷版原版が用いられる。300nmから450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。750nmから1400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。
【0128】
<現像工程>
本発明に用いられる平版印刷版原版は、露光した後、pH2〜14の現像液にて現像される。
【0129】
現像液処理としては、通常以下の工程で実施される。(1)現像液により非画像部を除去する、(2)ガム液処理を実施する、(3)乾燥工程で乾燥する。本発明に用いられる平版印刷版原版は、通常通りの工程により現像する(通常現像)こともできるが、(1)と(2)の工程を同時に行う(簡易現像)ことが好ましい。何れの現像方法においても、工程(1)の前に保護層を除去するための水洗工程を入れてもよい。工程(1)の現像は、常法に従って、0〜60℃、好ましくは15〜40℃程度の温度で、例えば、露光処理した平版印刷版原版を現像液に浸漬してブラシで擦る方法、スプレーにより現像液を吹き付けてブラシで擦る方法等により行う。
【0130】
通常現像の場合は、工程(1)と工程(2)の間に余分な現像液を除去するための水洗工程を入れてもよい。また、工程(1)に用いられる現像液としては公知のアルカリ現像液を使用することが好ましい。
【0131】
簡易現像の場合は、現像及びガム処理の後に、スクイズローラーを用いて余剰の現像液を除去した後、乾燥を行うことが好ましい。
簡易現像において用いられる現像液は、pHが2〜11の水溶液である。水を主成分(水を60質量%以上含有)とする水溶液が好ましく、特に、界面活性剤(アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性イオン系等)を含有する水溶液や、水溶性高分子化合物を含有する水溶液が好ましい。界面活性剤と水溶性高分子化合物の両方を含有する水溶液も好ましい。該現像液のpHは、より好ましくは5〜10.7、さらに好ましくは6〜10.5、最も好ましくは7.5〜10.3である。
【0132】
簡易現像の現像液に用いられるアニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルアルキルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチルアルキル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0133】
簡易現像の現像液に用いられるカチオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルイミダゾリニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0134】
簡易現像の現像液に用いられるノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。この中でも、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するものが好ましく、アルキル置換又は無置換のフェノールエチレンオキサイド付加物又は、アルキル置換又は無置換のナフトールエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0135】
簡易現像の現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタインなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。これらの具体例は、特開2008−203359号公報段落番号[0255]〜[0278]の式(2)で示される化合物、特開2008−276166号公報段落番号[0028]〜[0052]の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009−47927号公報段落番号[0022]〜[0029]で示される化合物等に記載されているものを用いることができる。
【0136】
界面活性剤は2種以上用いてもよく、現像液中に含有する界面活性剤の比率は、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0137】
また、簡易現像の現像液に用いられる水溶性高分子化合物としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)及びその変性体、プルラン、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸及びその塩、ポリスチレンスルホン酸及びその塩などが挙げられる。
【0138】
上記大豆多糖類は、公知のものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。
上記変性澱粉も、公知のものが使用でき、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等の澱粉を酸又は酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で作ることができる。
水溶性高分子化合物は2種以上を併用することもできる。水溶性高分子化合物の現像液中における含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0139】
簡易現像に用いられる現像液には、さらにpH緩衝剤を含ませることができる。
本発明のpH緩衝剤としては、pH2〜11に緩衝作用を発揮する緩衝剤であれば何れも好適に使用することができる。本発明においては弱アルカリ性の緩衝剤が好ましく用いられ、例えば(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオン、(b)ホウ酸イオン、(c)水溶性のアミン化合物及びそのアミン化合物のイオン、及びそれらの併用などが挙げられる。すなわち、例えば(a)炭酸イオン-炭酸水素イオンの組み合わせ、(b)ホウ酸イオン、又は(c)水溶性のアミン化合物-そのアミン化合物のイオンの組み合わせなどが、現像液においてpH緩衝作用を発揮し、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。特に好ましくは、炭酸イオン及び炭酸水素イオンの組み合わせである。
炭酸イオン、炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
pH緩衝剤として(a)炭酸イオンと炭酸水素イオンの組み合わせを採用するとき、炭酸イオン及び炭酸水素イオンの総量は、水溶液の全質量に対して0.05〜5mol/Lが好ましく、0.1〜2mol/Lがより好ましく、0.2〜1mol/Lが特に好ましい。
【0140】
また、簡易現像に用いられる現像液には、有機溶剤を含有してもよい。含有可能な有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、”アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)あるいはガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、あるいはハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)や、極性溶剤が挙げられる。極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、等)等が挙げられる。これらの有機溶剤は、2種以上を併用することもできる。
【0141】
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能であり、現像液に、有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。
【0142】
本発明の現像液には上記の他に、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、無機酸、無機塩などを含有することができる。具体的には、特開2007−206217号公報段落番号[0266]〜[0270]に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0143】
上記の現像液は、露光されたネガ型平版印刷版原版の現像液及び現像補充液として用いることができ、後述の自動現像処理機(以下、自動処理機とも称する)に適用することが好ましい。自動処理機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。
【0144】
本発明におけるpH2〜14の現像液による現像処理は、現像液の供給手段及び擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。さらに自動処理機は現像処理手段の後に、スクイズローラー等の余剰の現像液を除去する手段や、温風装置等の乾燥手段を備えていることが好ましい。
【0145】
その他、本発明の平版印刷版原版からの平版印刷版の製版プロセスとしては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。この様な加熱により、該画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化といった利点が生じ得る。さらに、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱もしくは全面露光を行う事も有効である。通常現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行う事が好ましい。温度が高すぎると、未露光部が硬化してしまう等の問題を生じる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用する。通常は100〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる。
【実施例】
【0146】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は質量平均モル質量(Mw)であり、繰り返し単位の比率はモル百分率である。
【0147】
[実施例1〜101及び比較例1〜4] 平版印刷版原版(1)
【0148】
<支持体1の作製>
厚さ0.30mm、幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板に、表面処理として以下の(a)〜(f)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0149】
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%水溶液、温度70℃でエッチング処理を行い、アルミニウム板を5g/m2溶解した。その後水洗を行った。
(b)温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後水洗した。
(c)60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。この時の電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%、アンモニウムイオン0.007質量%含む)、温度30℃であった。交流電源は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが2msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/cm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後水洗を行った。
(d)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%水溶液でスプレーによるエッチング処理を35℃で行い、アルミニウム板を0.2g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後水洗した。
(e)温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
(f)硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む水溶液)、温度33℃、電流密度が5(A/dm2)で、50秒間陽極酸化処理を行った。その後水洗を行った。この時の陽極酸化皮膜質量が2.7g/m2であった。
このようにして得られたアルミニウム支持体1の表面粗さRaは0.27(測定機器;東京精密(株)製サーフコム、蝕針先端径2ミクロンメーター)であった。
【0150】
<表面親水化処理>
次に、上記支持体1を、4g/Lのポリビニルホスホン酸(Mw=15,000)を含有する40℃の水溶液に10秒間浸漬し、20℃の水道水で2秒間洗浄し、乾燥することで、親水化処理したアルミニウム支持体を作製した。
【0151】
<画像記録層の形成>
下記画像記録層塗布液(1)を調製し、上記の処理をしたアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間行った。乾燥後の被覆量は1.3〜2.0g/mであった。
【0152】
−画像記録層塗布液(1)−
・重合性化合物(化合物A:下記構造) 1.00g
・バインダーポリマー(バインダーA) 0.50g
・増感色素(下記構造) 0.08g
・重合開始剤(下記構造) 0.15g
・連鎖移動剤(下記構造) 0.14g
・N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩 0.005g
・ε―フタロシアニン顔料分散物 0.18g
(顔料:15質量部、分散剤 下記ポリマー(1):10質量部、
溶剤: シクロヘキサノン/メトキシプロピルアセテート/1−メトキシ
−2−プロパノール=15質量部/20質量部/40質量部)
・フッ素系ノニオン界面活性剤 0.004g
(メガファックF780、DIC(株)製)
・メチルエチルケトン 12g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 12g
【0153】
なお、重合性化合物(化合物A)、バインダーポリマー(バインダーA)、ポリマー(1)、重合開始剤、増感色素、及び連鎖移動剤の構造を以下に示す。
【0154】
【化12】

【0155】
<保護層の形成>
上記画像記録層上に、更に下記組成の保護層用塗布液(1)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して実施例1〜100及び比較例1〜4の平版印刷版原版を得た。
また、上記保護層用塗布液(1)の代わりに下記組成の保護層用塗布液(2)を用いた以外は実施例4の平版印刷版原版と同様に保護層を設けて実施例101の平版印刷版原版を得た。
【0156】
<保護層用塗布液(1)>
・無機層状化合物分散液(1) 1.5g
・表1〜4の親水性ポリマー(固形分) 0.070g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1質量%水溶液 0.86g
・イオン交換水 6.54g
【0157】
(無機層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0158】
<保護層用塗布液(2)>
・親水性ポリマー4(固形分) 0.035g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1質量%水溶液 0.86g
・イオン交換水 8.00g
【0159】
なお、比較例1〜3に使用した親水性ポリマーの構造を以下に示す。
【0160】
【化13】

【0161】
【表5】

【0162】
比較例4では、親水性ポリマーとしてポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS-50、スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)を使用した。
【0163】
−現像液組成−
・炭酸ナトリウム 130g
・炭酸水素ナトリウム 70g
・ニューコールB13(日本乳化剤(株)製界面活性剤) 500g
・アラビアガム(水溶性高分子、Mw=20万) 250g
・ヒドロキシアルキル化澱粉 700g
(水溶性高分子、日澱化学製、ペノンJE66)
・リン酸第一アンモニウム 20g
・2−ブロモ−2−ニトリプロパン−1,3−ジオール 0.1g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.1g
・水 9139.8g
(現像液のpH=9.8)
【0164】
<平版印刷版原版の評価>
(1)製版
作製された各平版印刷版原版を、FUJIFILM Electronic Imaging Ltd.(FFEI社)製Violet半導体レーザープレートセッターVx9600(InGaN系半導体レーザー(発光波長405nm±10nm/出力30mW)を搭載)により画像露光した。画像描画は、解像度2,438dpiで、富士フイルム(株)製FMスクリーン(TAFFETA 20)を用い、網点面積率が50%となるように、版面露光量0.05mJ/cm2で行った。
次いで、100℃、30秒間のプレヒートを行った後、上記現像液を用い、自動現像処理機にて現像処理を実施し、平版印刷版を得た。自動現像処理機は、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径50mmのブラシロールを1本有し、搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.52m/sec)させた。処理液の温度は30℃であった。平版印刷版原版の搬送は、搬送速度100cm/minで行った。現像処理後、乾燥部にて乾燥を行った。乾燥温度は80℃であった。
【0165】
(2)着肉性の評価
i)初期着肉性
上記のようにして得られた平版印刷版を、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とスペースカラーフージョンG(N)墨インキ(DICグラフィックス(株)製))とを用い、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を行った。
上記の印刷スタートにおいて、画像部の印刷用紙上のインキ濃度が良好な着肉性を示す枚数に達するまでに要した印刷用紙の枚数を初期着肉性として計測した。結果を表6〜8に示す。
【0166】
ii)特色インキ着肉性(塗布直後、経時後)
インキとして特色インキEpple Pantone Blau 072C(Epple社製インキ)を用いた以外は、上記初期着肉性と同様に印刷を行った。1万枚目の印刷用紙をサンプリングし、20%FM網点部のインキ濃度をグレタグ濃度計で調べた。その測定値を基にインキ着肉性の評価を次の指標で表6〜8に示す。
【0167】
A.インキ濃度1.8〜1.9:全くインキ濃度低下なく、インキ着肉性良好。
B.インキ濃度1.5〜1.7:ややインキ濃度低下しているが許容レベル。
C.インキ濃度1.0〜1.4:はっきりとインキ濃度低下しておりNGレベル。
D.インキ濃度0.9以下:インキ濃度低下著しく劣悪。
【0168】
経時後の着肉性は、作製した平版印刷版原版を60℃で4日間保管したのち、上記の評価を行った結果である。
【0169】
(3)耐刷性の評価
製版においてスクエアドットの50%網点を露光パターンに使用した以外は、上記と同様に製版して耐刷性評価に用いる平版印刷版を得た。得られた平版印刷版を用いて初期着肉性評価と同じ条件で印刷した。印刷を継続し、1万枚印刷する毎に、富士フイルム(株)社製マルチクリーナーにより版材の表面からインキを拭き取る作業を繰り返しつつ印刷を行い、充分なインキ濃度を保って印刷できなくなったところを刷了とした。なお、評価結果は比較例1で得られた平版印刷版の刷了枚数を100とし、他の平版印刷版の刷了枚数はその相対評価とした。値が大きいほど、耐刷性に優れていることを意味する。
【0170】
【表6】

【0171】
【表7】

【0172】
【表8】

【0173】
上記の結果から、本発明の(E)特定構造の繰り返し単位を有する親水性ポリマーを保護層に含有することにより、着肉性が優れることがわかる。特に経時後の特色インキ着肉性劣化に対して効果が大きい。
【0174】
[実施例102〜202及び比較例5〜8] 平版印刷版原版(2)
<下塗り層の形成>
前記アルミニウム支持体1に下記下塗り層用塗布液(1)をワイヤーバーにて塗布し、90℃30秒間乾燥した。塗布量は10mg/mであった。
【0175】
― 下塗り層用塗布液(1)―
・下記構造の高分子化合物A(Mw:10,000) 0.05g
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
【0176】
【化14】

【0177】
<画像記録層の形成>
次に、下記画像記録層塗布液(2)を調製し、上記の支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、画像記録層を形成した。乾燥は、温風式乾燥装置にて115℃ で34秒間行った。乾燥後の画像記録層被覆量は1.4g/m であった。
【0178】
<画像記録層塗布液(2)>
・赤外線吸収剤(1)〔下記構造〕 0.10g
・重合開始剤(1)〔下記構造〕 0.30g
・ペンタエリスリトールトリアクリレート ヘキサメチレンジイソシアネート
ウレタンプレポリマー UA−306H 共栄社化学社製)〕 1.33g
・バインダーポリマー(2)〔下記構造〕 1.35g
・エチルバイオレット 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.025g
(メガファックF−780−F DIC(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 18.4g
・メタノール 9.83g
・1−メトキシ−2−プロパノール 18.4g
【0179】
【化15】

【0180】
【化16】

【0181】
<保護層の形成>
上記画像記録層上に、更に前記の保護層用塗布液(1)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して実施例102〜202及び比較例5〜8の平版印刷版原版を得た。
また、保護層用塗布液(1)の代わりに前記の保護層用塗布液(2)を用いた以外は実施例105の平版印刷版原版と同様に保護層を設けて実施例202の平版印刷版原版を得た。
【0182】
なお、比較例5〜8に使用した親水性ポリマーは、比較例1〜4に用いたものと同じである。
【0183】
[実施例203〜205] 平版印刷版原版(3)
上記平版印刷版原版(2)に対して、画像記録層層塗布液を下記画像記録層層塗布液(3)に変更し、バー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.6g/mの画像記録層を作製した以外は、実施例105、173、174と同様の方法で平版印刷版原版(3)を作製した。
【0184】
<画像記録層塗布液(3)>
・ポリマー(B)〔下記合成法〕 0.9g
・Hybridur580(Air Products and Chemicals社製) 1.2g
・エチレン性不飽和基を有するモノマー 1.35g
SR−399(サートマー社製)
・NK Ester A−DPH(Kowa American社製) 1.35g
・CD 9053 (サートマー社製) 0.25g
・重合開始剤(2)[下記に示す化合物] 0.0162g
・FluorN 2900(Cytonix 社製) 0.05g
・ピグメント1 0.4g
・赤外線吸収剤(3) 0.030g
・1−メトキシ−2−プロパノール 50.0g
・γ−ブチロラクトン 15.0g
・メチルエチルケトン 60.0g
・水 15.0g
【0185】
なお、上記組成中の商品名などで記載の化合物は下記の通りである。
・Hybridur580:ポリウレタンアクリルハイブリッド分散液
・SR−399:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・NK Ester A−DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・CD 9053:三官能性酸エステル
・FluorN 2900:パーフルオロポリエーテルポリエチレングリコール(550)ブロックポリマー
・ピグメント1:全固形分中の7.7%がポリビニルアルコールをアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド及び4-ホルミル安息香酸とでアセタール化させたポリビニルアセタールから派生したポリビニルアセタール、76.9%がIrgalith Blue GLVO (Cu-phthalocyanine C.I. Pigment Blue 15:4)、15.4%がDisperbyk.RTM. 167分散助剤(from Byk Chemie)からなる固形分の1-メトキシ-2-プロパノール23質量%分散液
・赤外線吸収剤(3):2-[2-[3-[2-(1,3-Dihydro-1,3,3-trimethyl-2H-indol-2-ylidene)-ethylidene]-2-(1-phenyl-1H-tetrazol-5-ylsulfanyl)-1-cyclohexen-1-yl]-ethenyl]-1,3,3-tri- methyl-3H-indolium chloride(FEW Chemicals 社製)
【0186】
【化17】

【0187】
(ポリマー(B)の合成)
1000mlの3つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却
器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(1.6g)、メタクリル酸メチル(20g)、アクリロニトリル(24g)、N−ビニルカルバゾール(20g)、メタクリル酸(16g)、N,N’−ジメチルアセトアミド(320g)を加えて60℃、約16時間加熱した。
上記反応混合物に対し、水酸化カリウム(5.2g)水溶液(水、40g)をゆっくり加え、反応混合物が高粘性の液体となり、10分攪拌した後、臭化アリル(13.3g)を加え、55℃で3時間加熱した。反応混合物に対し、N,N’−ジメチルアセトアミド(40g)で薄めた濃塩酸(12g)を加え、更に3時間攪拌した。この反応溶液を、氷水(12リットル)と濃塩酸(20g)の混合物に対しゆっくり加え、しばらく攪拌した。ここで生じた沈殿物をろ過し、ます2000mLの2−プロパノールで洗浄し、次に2000mLの水により洗浄し、白色の粉が得られる。この粉は、終夜風乾させ、ついで50℃で3時間乾燥させることでポリマー(B)(80g)が得られた。
【0188】
平版印刷版原版の評価
(1)製版
得られた平版印刷版原版をセッティング部分からオートローダーにて、Creo社製Trendsetter3244に搬送し、解像度2,400dpiでベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの20%及び5%網点チャートを、出力7W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー110mJ/cmで露光した。露光後、加熱処理、水洗処理は行わず、富士フイルム(株)社製自動現像機LP−1310HIIを用い搬送速度(ライン速度)2m/分、現像温度30℃で現像処理した。なお、現像液は富士フイルム(株)製DH−Nの1:4水希釈液(pH=12.1)を用い、現像補充液は富士フイルム(株)製FCT−421の1:1.4水希釈を用いた。
【0189】
(2)初期着肉性、特色インキ着肉性(塗布直後、経時後)の評価
前記の平版印刷版原版(1)の場合と同様に評価した。
結果を表9〜11に示す。
【0190】
(3)耐刷性の評価
現像処理後の平版印刷版を(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付け、初期着肉性評価と同じ条件で印刷した。約5、000枚おきにマルチクリーナE(富士フイルム(株)製プレートクリーナー)で版面を洗浄しながら、画像部のインキ濃度が低下して20μmFMスクリーンの5%網点濃度が印刷開始時より0.5%低下したときを刷了と判断し、その時の印刷枚数を耐刷枚数とした。比較例5のの耐刷枚数を100とし、他の平版印刷版原版の耐刷はその相対評価とした。値が大きいほど、耐刷性が高いことになる。
【0191】
【表9】

【0192】
【表10】

【0193】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、(A)増感色素、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物及び(D)水に不溶且つアルカリ可溶性であるポリマーを含有し、露光後に自動現像処理機によってpHが2〜14の現像液の存在下で未露光部を除去することで画像形成可能な画像記録層、並びに、保護層をこの順に有する平版印刷版原版であって、該保護層が、(E)一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位を有し、これら2つの繰り返し単位の合計がポリマーを構成する全繰り返し単位に対して少なくとも95モル%である親水性ポリマーを含有することを特徴とする平版印刷版原版。
【化1】


式中、R、Rは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一又は異なってもよい水素原子、メチル基、又はエチル基を表す。Rは、炭素原子数2〜10のアルキル基又は一般式(3)で表される置換基を表す。一般式(3)において、Lは炭素原子数2〜6のアルキレン基、Rは炭素原子数4〜8のアルキル基を表す。nはポリエーテルの平均付加モル数で2〜4の数である。
【請求項2】
前記(E)少なくとも一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位を有する親水性ポリマーが更に下記一般式(4)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して0.3〜5.0モル%有することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
【化2】


式中Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは単結合又は一般式(5)で表される構造又はその組合せを有する構造を表す。Yは、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、ホスホン酸基、ホスホン酸塩基、ヒドロキシル基、カルボベタイン基、スルホベタイン基、及び、アンモニウム基から選択される少なくともいずれかの置換基を表す。
【請求項3】
前記一般式(4)においてYが、スルホン酸基、スルホン酸塩基、カルボベタイン基、スルホベタイン基、及び、アンモニウム基から選択される少なくともいずれかの置換基であることを特徴とする請求項2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位のR及びRが共に水素原子であり、一般式(2)で表される繰り返し単位のRが、炭素原子数2〜8の直鎖、分岐又は環状の無置換アルキル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
前記保護層が、(F)無機質層状化合物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
前記(A)増感色素が赤外線吸収染料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の平版印刷版原版を、画像様露光した後、自動処理機によってpHが2〜14の現像液の存在下で非画像部の画像記録層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。