平版印刷版原版及びその作製方法
【課題】平版印刷における高い耐刷性を実現し、しかも露光部の良好な現像性をも達成する平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】親水性表面を有する支持体上側に、画像記録層を有してなる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版であって、前記画像記録層が、ポリ(ビニルアセタール)と、両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤と、赤外線吸収剤とを含有する平版印刷版原版、ならびに、平版印刷版原版の画像記録層を画像露光する露光工程、アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
【解決手段】親水性表面を有する支持体上側に、画像記録層を有してなる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版であって、前記画像記録層が、ポリ(ビニルアセタール)と、両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤と、赤外線吸収剤とを含有する平版印刷版原版、ならびに、平版印刷版原版の画像記録層を画像露光する露光工程、アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷におけるレーザ露光・現像に関連する技術の発展は目ざましい。特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっている。コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源としてレーザは非常に有用であり、これに対応する平版印刷原版の開発が極めて重要である。
【0003】
赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版の記録層は、アルカリ可溶性のバインダー樹脂と、光を吸収し熱を発生するIR染料等とを必須成分とする。このIR染料等が、未露光部(画像部)では、バインダー樹脂との相互作用によりバインダー樹脂の現像液に対する溶解性を実質的に低下させる現像抑制剤として働く。一方、露光部(非画像部)では、発生した熱によりIR染料等とバインダー樹脂との相互作用が弱まり、アルカリ現像液に溶解して平版印刷版を形成する。
【0004】
上記平版印刷版原版に要求される基本性能として、鮮明な画像部の形成を速やかに実現する現像性と、逆に、未露光部では記録層が溶解されず的確に保持される耐薬品性と、印刷可能量を高める耐刷性の向上とが挙げられる。しかしながら、これらの性能は通常相反するものであり、すべての性能項目を同時に引き上げることは極めて困難である。例えば、下記特許文献1〜3に開示された印刷版原版では、その記録層に特定のポリマーを含有させることが提案されている。通常、記録層に分子量の大きなポリマーを存在させると、その分、耐刷性や耐薬品性の向上は見込める。しかしながら、現像性については劣る方向となり、そうすると、すべての性能をバランス良く高めることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−017913号公報
【特許文献2】特許第4579639号明細書
【特許文献3】特表2010−532488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、上記特許文献の技術等に鑑み、上述した通常相反する特性項目について、その性能を同時に引き上げるための研究開発を行った。すなわち、本発明は、平版印刷における高い耐刷性及び耐薬品性を実現し、しかも露光部の良好な現像性、ランニングかすの抑制性、優れた現像廃液の濃縮性をも達成する平版印刷版原版およびその作製方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は以下の手段により達成された。
(1)親水性表面を有する支持体上側に、画像記録層を有してなる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版であって、前記画像記録層が、ポリ(ビニルアセタール)と、両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤と、赤外線吸収剤とを含有することを特徴とする平版印刷版原版。
(2)親水性表面を有する支持体上側に、下層及び上層をこの順に配設した画像記録層を有してなる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版であって、前記上層および/または下層が、ポリ(ビニルアセタール)と、両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤と、赤外線吸収剤とを、同じ層に、あるいはそれぞれ別々に層に含有することを特徴とする、(1)に記載の平版印刷版原版。
(3)前記両性界面活性剤が下記一般式(I)〜(III)のいずれかで表わされるものであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の平版印刷版原版。
【0008】
【化1】
(一般式(I)〜(III)中、R1は炭素数6〜24のアルキル基もしくは特定の連結基を介するアルキル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。R4、R5はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。ただし、R4及びR5の少なくとも一方は末端に酸性基もしくはその塩を有する。L1は炭素数1〜4の連結基を表す。X−はカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、ホスホン酸イオン、またはリン酸イオンを表す。)
(4)前記アニオン性界面活性剤が下記一般式(IV)〜(VII)のいずれか表わされるものであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の平版印刷版原版。
【0009】
【化2】
(一般式(IV)〜(VII)中、R6、R9は炭素数6〜24のアルキル基を表す。L2はフェニレン基又は単結合を表す。D1、E1、F1はスルホン酸イオンもしくはその塩、または硫酸イオンもしくはその塩を表す。R7は炭素数4〜18のアルキル基を表す。L3はフェニレン基またはナフチレン基を表す。R8はフェニル基またはナフチル基を表す。L4はポリアルキレンオキシ基を表す。L5はフェニレン基を表す。G1は酸素原子を表す。L6はフェニル基を表す。)
(5)前記ポリ(ビニルアセタール)の繰り返し単位が、下記一般式(a)で表されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【0010】
【化3】
(ここで、RおよびR’は独立に水素またはアルキルもしくはハロゲン原子であり、Rxはフェノール、ナフトールもしくはアントラセノール基である。)
(6)前記ポリ(ビニルアセタール)の繰り返し単位が、下記一般式(b)で表されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【0011】
【化4】
(ここで、RおよびR’は独立に水素またはアルキルもしくはハロゲン原子である。Ryは、下記R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のいずれかを表し、一般式(a)で表される樹脂が上記異なるRyの一種以上の繰り返し単位を含む共重合体である。
R1はアルキル基、シクロアルキル基、またはフェノールもしくはナフトール以外のアリール基であり、
R2は前記Rxと同義であり、
R3は炭素数2〜6のアルキニル基又はフェニル基である。)
(7)前記界面活性剤を、前記ポリ(ビニルアセタール)100質量部に対して1〜20質量部含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版の画像記録層を画像露光する露光工程、アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
(9)前記アルカリ水溶液がアニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤または両性界面活性剤を含むことを特徴とする(8)に記載の平版印刷版の作製方法。
(10)前記平版印刷版に含まれる両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤が、前記アルカリ水溶液に含まれる界面活性剤と同一であることを特徴とする(8)に記載の平版印刷版の作製方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の平版印刷原版は、平版印刷における高い耐刷性及び耐薬品性を実現し、しかも露光部の良好な現像性、ランニングかすの抑制性、優れた現象廃液の濃縮性をも同時に達成する。また、本発明の作製方法によれば、上述した良好な性能を発揮する平版印刷版原版を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の平版印刷版原版の記録層を単層構成とした一実施態様を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
<平版印刷版原版>
本発明の平版印刷版原版は、親水性表面を有する支持体上側に、画像記録層を有してなり、前記記録層が、(a)アセタール樹脂と、(b)特定の界面活性剤とを含有する。なお、支持体上側に、その他の層、例えば、下塗り層、表面保護層など任意の層をさらに有していてもよい。
【0015】
上記の構成を採用することにより、本発明において、耐刷性と耐薬品性と現像性等とを同時に達成するという効果を奏する理由(作用機構)は未解明の点を含むが、下記のように推定される。
両性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤は、ノニオン性・カチオン性界面活性剤よりも水和力、分散力が高いことが知られている。現像性への利得を出すため界面活性剤を増量すると一般的に記録層の耐薬品性を低下させるが、両性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤を用いた場合その添加が少量ですみ、耐刷性や耐薬性の悪化影響が小さいという利点がある。
一方、界面活性剤は感材の現像により消費されるため、現像系外からの界面活性剤の補充が必要となる。補充の方法として、活性剤を含む現像液を補充していく方法と、感材中に必要量の活性剤を含有させておく方法が上げられる。本発明のように感材中に活性剤を含ませ、かつ特定のアセタール樹脂と組み合わせて適用することにより、感材を現像した量が現像により消費した活性剤量となり得ることから、簡易、かつ、長期間安定に良好な現像性を保つことができると考えられる。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0016】
<アセタール樹脂>
本発明の平版印刷版原版を構成する記録層は、アセタール樹脂を含む。
本発明に適用されるアセタール樹脂としては、入手可能なポリ(ビニルアセタール)類が挙げられ、反復単位のうちの少なくとも50モル%(50モル%〜70モル%、より典型的には少なくとも60モル%)がアセタール含有反復単位であるものが挙げられる。これに対し非アセタール含有反復単位は、同じまたは異なるペンダントフェノール系基を有することもでき、または、非アセタール含有反復単位はペンダントフェノール系基を持たない反復単位であることができる。あるいは、非アセタール含有反復単位は両方のタイプの反復単位を含むことができる。例えば、ポリ(ビニルアセタール)は、イタコン酸またはクロトン酸基を含む反復単位を有することができる。さらに、ペンダントフェノール系基を含む反復単位が存在する場合には、それらの反復単位は、異なるペンダントフェノール系基を有することができる[例えば、ポリ(ビニルアセタール)は、アセタール含有反復単位を有することができ、2種または3種以上の異なるタイプの反復単位が異なるペン
ダントフェノール系基を有する]。
【0017】
さらに別の態様において、ポリ(ビニルアセタール)中の低モル量(20モル%
未満)のアセタール基を環状酸無水物またはイソシアネート化合物、例えばトルエンスルホニルイソシアネートと反応させることができる。
【0018】
本発明におけるポリ(ビニルアセタール)としては、下記一般式(a)で表される繰り返し単位を含む化合物が挙げられる。
【0019】
【化5】
ここで、RおよびR’は独立に水素またはアルキルもしくはハロゲン原子であり、Rxはフェノール、ナフトールもしくはアントラセノール基である。
【0020】
一般式(a)において、RおよびR’は、好ましくは、独立に水素原子、置換もしくは非置換の線状もしくは分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、クロロメチル、トリクロロメチル、iso−プロピル、iso−ブチル、t−ブチル、iso−ペンチル、neo−ペンチル、1−メチルブチルおよびiso−ヘキシル基など)、もしくは環中に3〜6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のシクロアルキル環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロヘキシルおよびシクロヘキシル基)、またはハロ基(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード)である。典型的には、RおよびR’は独立に水素、もしくは置換もしくは非置換メチル基、またはクロロ基であるか、あるいは、例えば、それらは独立に水素または非置換メチルである。
【0021】
Rxは、好ましくは、置換もしくは非置換フェノール、置換もしくは非置換ナフトール、または置換もしくは非置換アントラセノール基である。これらのフェノール基、ナフトール基およびアントラセノール基は、さらなるヒドロキシ置換基、メトキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、ハロメチル、トリハロメチル、ハロ、ニトロ、アゾ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、シアノ、アミノ、カルボキシ、エテニル、カルボキシアルキル、フェニル、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよび複素脂環式基などのさらなる置換基を最大3個まで有することができる。例えば、Rxは非置換フェノールもしくはナフトール基、例えば、2−ヒドロキシフェニルまたはヒドロキシナフチル基であることができる。なお、上記好ましい置換基は、所定の連結基(たとえば炭素数1〜3のアルキレン基)をともなって式(a)の炭素原子に置換していてもよい。
【0022】
このように、ポリ(ビニルアセタール)類は、構造(a)により表されるものの他に様々な他の反復単位を有することができるが、一般的に、反復単位の少なくとも50モル%は、構造(a)により表される同じまたは異なる反復単位である。
【0023】
ポリ(ビニルアセタール)について、さらに好ましくは、下記一般式(b)で表される繰り返し単位を含む化合物が挙げられる。
【0024】
【化6】
ここで、RおよびR’前記一般式(a)と同様である。
【0025】
Ry=R1であるモノマー(Ia)の重合比mは5〜40モル%であることが好ましく、15〜35モル%であることがより好ましい。
Ry=R2であるモノマー(Ib)の重合比nは10〜60モル%であることが好ましく、20〜40モル%であることがより好ましい。
さらに、
Ry=R3であるモノマー(Ic)の重合比pは0〜20モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。
【0026】
R1は、アルキル基、シクロアルキル基、またはフェノールもしくはナフトール以外のアリール基である。好ましくは、置換もしくは非置換の線状もしくは分岐状の炭素原子数1〜12のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、t−ブチル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、メトキシメチル、クロロメチル、トリクロロメチル、ベンジル、シンナモイル、iso−プロピル、iso−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、iso−ペンチル、neo−ペンチル、1−メチルブチルおよびiso−ヘキシル基など)、環中に3〜6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のシクロアルキル環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロヘキシルおよびシクロヘキシル基)、または、フェノールもしくはナフトール以外の芳香環中に6または10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アリール基(例えば、フェニル、キシリル、トルリル、p−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよびナフチルなどの置換もしくは非置換フェニルおよびナフチル基)である。典型的には、R1は置換もしくは非置換の炭素原子数1〜6のアルキル基である。
【0027】
R2は、前記式(a)のRxと同様である。
【0028】
R3は好ましくは、置換もしくは非置換の炭素原子数2〜4のアルキニル基(例えばエチニル基)、または置換もしくは非置換のフェニル基(例えば、フェニル、4−カルボキシフェニル、カルボキシアルキレンオキシフェニルおよびカルボキシアルキルフェニル基)である。典型的には、R3はカルボキシアルキルフェニル基、4−カルボキシフェニルもしくはカルボキシアルキレンオキシフェニル基、または他のカルボキシ含有フェニル基である。
【0029】
本実施形態のポリ(ビニルアセタール)は、存在する異なる反復単位の数に応じて少なくともテトラマーであることができる。例えば、構造(Ia)から構造(Ic)の先に定義した部類の反復単位のいずれとも異なる多数のタイプの反復単位が存在してもよい。例えば、一般式(a)のポリ(ビニルアセタール)は異なるR1基を有する構造(Ia)の反復単位を有することができる。反復単位のかかる多様性は、構造(Ia)から構造(Ic)のいずれかにより表されるものについても言える。
【0030】
本実施形態のポリマーは、上記により定義されるもの以外の反復単位を含むことができ、かかる反復単位は当業者であれば容易に分かるであろう。すなわち、その最も広い意味において、定義した反復単位に限定されないが、実施態様によっては、一般式(a)中に上記の反復単位のみが存在する。
【0031】
共存にもよい共重合単位としては[Id:−(CHR−CR1R4)−]が挙げられる。R4は好ましくは、−O−C(=O)−R5基であり、ここでR5は、上記のR1の定義と同様に、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜12のアルキル基、または芳香環中に6もしくは10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アリール基である。典型的には、R5は置換もしくは非置換の炭素原子数1〜6のアルキル基、例えば、非置換メチル基である。あるいは、[Ie:−(CHR−CR’OH)−]が挙げられる。繰り返し単位(Id)の共重合比は1〜20モル%であることが好ましく、1〜15モル%であることがより好ましい。繰り返し単位(Ie)の共重合比は5〜60モル%であることが好ましく、15〜55モル%であることがより好ましい。
【0032】
R5は好ましくは、ヒドロキシ基である。
【0033】
記録層中のアセタール樹脂の含有量は特に限定されないが、固形分の総量に対して10〜99質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましい。多くの実施態様は、全組成物または層乾燥質量の50〜90質量%の量で前記アセタール樹脂を含む。
【0034】
本明細書に記載のポリ(ビニルアセタール)類は、米国特許第6,541,181号(上記)に記載のものなどの公知の出発物質および反応条件を使用して調製できる。例えば、ポリビニルアルコールのアセタール化は、例えば米国特許第4,665,124号明細書(Dhillonら)、米国特許第4,940,646号明細書(Pawlowski)、米国特許第5,169,898号明細書(Wallsら)、米国特許第5,700,619号明細書(Dwarsら)および米国特許第5,792,823号明細書(Kimら)、並びに日本国特開平09−328519号公報(Yoshinaga)に記載に公知の標準的な方法に従って進行させ反応生成物を得ることができる。
【0035】
前記アセタール樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、5,000〜300,000であることが好ましく、20,000〜50,000であることがより好ましい。
【0036】
ポリ(ビニルアセタール)類は米国特許第6,255,033号および第6,541,181号明細書並びに国際公開第2004/081662に記載されている。同じまたは類似のポリ(ビニルアセタール)が欧州特許出願公開第1,627,732号明細書(Hatanakaら)並びに米国特許出願公開第2005/0214677号明細書(Nagashima)および米国特許出願公開第2005/0214678号明細書(Nagashima)(これらの文献に記載のポリ(ビニルアセタール)は全て本明細書に援用する)に構造単位(a)から(e)を含む一般式(I)および(II)により記載されている。
分子量及び分散度は特に断らない限りGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)法を用いて測定した値とし、分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量とする。GPC法に用いるカラムに充填されているゲルは芳香族化合物を繰り返し単位に持つゲルが好ましく、例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなるゲルが挙げられる。カラムは2〜6本連結させて用いることが好ましい。用いる溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒が挙げられる。測定は、溶媒の流速が0.1〜2mL/minの範囲で行うことが好ましく、0.5〜1.5mL/minの範囲で行うことが最も好ましい。この範囲内で測定を行うことで、装置に負荷がかからず、さらに効率的に測定ができる。測定温度は10〜50℃で行うことが好ましく、20〜40℃で行うことが最も好ましい。なお、使用するカラム及びキャリアは測定対称となる高分子化合物の物性に応じて適宜選定することができる。
【0037】
<フェノール樹脂>
本発明における記録層には、さらにフェノール系樹脂も使用できる。かかるフェノール系樹脂としては、ホスホール(hosphor)樹脂、例えばフェノールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、m−クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、p−クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、フェノールとクレゾール(m−,p−またはm−/p−混合物)とホルムアルデヒドの縮合ポリマー、およびピロガロールとアセトンの縮合コポリマーが挙げられる。さらに、側鎖にフェノール基を含む化合物を共重合させることにより得られるコポリマーも使用できる。かかるポリマーバインダーの混合物も使用できる。
【0038】
少なくとも1500の重量平均分子量および少なくとも300の数平均分子量を有するノボラック樹脂も有用である。一般的に、重量平均分子量は3,000〜300,000の範囲内にあり、数平均分子量は500〜250,000の範囲内にあり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10の範囲内にある。
【0039】
上記の第1のポリマーバインダーの特定の混合物を使用でき、かかる混合物としては、1種もしくは2種以上のポリ(ビニルアセタール)と1種もしくは2種以上のフェノール系樹脂との混合物が挙げられる。例えば、1種もしくは2種以上のポリ(ビニルアセタール)と1種もしくは2種以上のホスホール(hosphor)もしくはレゾール樹脂(またはホスホール(hosphor)およびレゾール樹脂)との混合物を使用できる。
【0040】
<酸性基含有ポリマー>
第2のポリマーバインダーの例としては、以下に示す(1)〜(5)に含まれる酸性基を主鎖および/または側鎖(ペンダント基)上に有する以下の部類のポリマーが挙げられる。
(1)スルホンアミド基(−SO2NH−R),
(2)置換スルホンアミドに基づく酸基(ここでは活性イミド基という)[例えば−SO2NHCOR,SO2NH
SO2R,−CONHSO2R],
(3)カルボン酸基(−CO2H),
(4)スルホン酸基(−SO3H)、および
(5)リン酸基(−OPO3H2).
【0041】
上記の基(1)〜(5)におけるRは水素または炭化水素基を表す。
【0042】
置換基(1)のスルホンアミド基を有する代表的な第2のポリマーバインダーは、例えば、スルホンアミド基を有する化合物から誘導された主たる成分として最低限の構成単位から構成されたポリマーが挙げられる。そのため、かかる化合物の例としては、その分子中に、少なくとも1個の水素原子が窒素原子に結合している少なくとも1個のスルホンアミド基と、少なくとも1個の重合性の不飽和基を有する化合物が挙げられる。これらの化合物には、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、およびN−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミドがある。そのため、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、例えばm−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、またはN−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミドなどのホモポリマーおよびコポリマーを使用できる。
【0043】
置換基(2)の活性イミド基を有する第2のポリマーバインダーは、主たる構成成分として活性イミド基を有する化合物から誘導された反復単位を含むポリマーである。かかる化合物の例としては構造式−(CO)(NH)(SO2)−により定義される部分を有する重合性の不飽和化合物が挙げられる。
【0044】
N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミドおよびN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミドはかかる重合性化合物の例である。
【0045】
上記の置換基(3)〜(5)のいずれかを有する第2のポリマーバインダーとしては、望ましい酸性基または重合後にかかる酸性基に変換可能な基を有するエチレン性不飽和重合性モノマーを反応させることにより容易に調製されるものが挙げられる。
【0046】
上記の(1)〜(5)から選択される酸性基を有する最低限の構成単位について、ポリマー中にただ1種類の酸性基を使用する必要はなく、実施態様によっては、少なくとも2種の酸性基を有することが有用なことがある。当然、第2のポリマーバインダー中の全ての反復単位が上記酸性基のうちの1つを持たなくてはならないというわけではないが、通常、少なくとも10モル%、典型的には少なくとも20モル%が上記の酸性基のうちの一つを有する反復単位から構成される。
【0047】
酸性基含有ポリマーは、少なくとも2,000の重量平均分子量および少なくとも500の数平均分子量を有することができる。典型的には、重量平均分子量は5,000〜300,000の範囲内にあり、数平均分子量は800〜250,000の範囲内にあり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10の範囲内にある。
【0048】
酸性基含有ポリマーを1種または2種以上の第1のポリマーバインダーと併用してもよい。酸性基含有ポリマーの含有量は特に限定されないが、少なくとも1質量%かつ50質量%以下であることが好ましく、5〜30質量%の量であることがより好ましい。
【0049】
なお、本明細書における基(原子群)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。なお、本明細書において***化合物とは、当該化合物そのものに加え、その塩、そのイオン等を含む意味に用いる。典型的には、当該化合物及び/又はその塩を意味する。このことは、次に説明する界面活性剤についても同様であり、そこで規定される化合物が対イオンを伴わないイオンで存在していても、塩であってもよい。
【0050】
<界面活性剤>
・両性界面活性剤
好ましい両性界面活性剤としては下記一般式(I)〜(III)のいずれかで表わされるものが挙げられる。
【0051】
【化7】
【0052】
R1は炭素数6〜24のアルキル基もしくは特定の連結基を介するアルキル基を表す。なかでも、直鎖の炭素数8〜18のアルキル基、炭素数8〜18のもしくは特定の連結基を介するアルキル基が好ましく、特定の連結基としてはアミド基が好ましい。
R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。なかでも、メチル基、エチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
R4、R5はそれぞれ独立に末端に酸性基もしくはその塩(好ましくはカルボン酸もしくはその塩)を有する炭素数1〜5のアルキル基を表す。なかでも、2−カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、2−カルボキシプロピル基、カルボキシポリエチレンオキシド基、カルボキシポリプロピレンオキシド基が好ましい。
L1は炭素数1〜4の連結基を表す。なかでも、アルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
X−はカルボン酸イオン(もしくはその塩)、スルホン酸イオン(もしくはその塩)、硫酸イオン(もしくはその塩)、ホスホン酸イオン(もしくはその塩)、またはリン酸イオン(もしくはその塩)を表す。
上記アニオン性基は塩をなしていてもよく、その対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンが挙げられる。
【0053】
両性界面活性剤として具体的には、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型等が挙げられる。
【0054】
上記一般式(I)で表される両性界面活性剤の具体例としては、レボン2000、レボンLD36(以上、三洋化成工業(株)製)、Texnol R2(日本乳化剤(株)製)AM−301、AM−3130N(以上、日光ケミカルズ(株)製)、アンヒトール20AB、アンヒトール20BS、アンヒトール24B、アンヒトール55AB、アンヒトール86B(以上、花王(株)製)、アデカアンホートAB−35L、アデカアンホートPB−30L(以上、(株)ADEKA製)、アンホレックスCB−1、アンホレックスLB−2(以上、ミヨシ油脂(株)製)、エナジコールC−30B、エナジコールL−30B(以上、ライオン(株)製)、オバゾリンBC、オバゾリンCAB−30、オバゾリンLB−SF、オバゾリンLB(以上東邦化学工業(株)製)、ソフタゾリンCPB−R、ソフタゾリンCPB、ソフタゾリンLPB−R、ソフタゾリンLPB、ソフタゾリンMPB、ソフタゾリンPKBP(以上、川研ファインケミカル(株)製)、ニッサンアノンBDC−S、ニッサンアノンBDF−R、ニッサンアノンBDF−SF、ニッサンアノンBF、ニッサンアノンBL−SF、ニッサンアノンBL(以上、日油(株)製)などが挙げられる。
上記一般式(II)で表される両性界面活性剤の具体例としては、アンヒトール20N(花王(株)製)、ソフタゾリンLAO−C、ソフタゾリンLAO(以上、川研ファインケミカル(株)製)、ユニセーフA−OM(日油(株)製)、カチナールAOC(東邦化学工業(株)製)、アロモックスDMC−W(ライオン(株)製)などが挙げられる。
上記一般式(III)で表される両性界面活性剤の具体例としては、エナジコールDP−30(ライオン(株)製)、デリファット160C(コグニスジャパン(株)製)、パイオニンC158G(竹本油脂(株)製)などが挙げられる。
【0055】
さらに上記両性界面活性剤の具体例を化学構造式により下記に例示する。
【0056】
【化8】
【0057】
一般式(I)〜(III)で表される化合物は、単独もしくは組み合わせて使用することができる。
【0058】
一部重複するものもあるが、両性イオン系界面活性剤の別の例は、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルイミダゾールなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。
【0059】
特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。これらの具体例としては、特開2008−203359号の段落番号〔0256〕の式(2)で示される化合物、特開2008−276166号の段落番号〔0028〕の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009−47927号の段落番号〔0022〕〜〔0029〕に記載の化合物を挙げることができる。
【0060】
現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤としては、下記一般式(A1)で表される化合物、一般式(A2)で表される化合物、一般式(A3)で表される化合物が好ましい。
【0061】
【化9】
【0062】
式(A1)〜(A3)中、R1、R11及びR15は、各々独立に、炭素数8〜20のアルキル基又は総炭素数8〜20の連結基を有するアルキル基を表す。R2、R3、R12及びR13は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はエチレンオキサイド基を含有する基を表す。R4及びR14は、各々独立に、単結合又はアルキレン基を表す。また、R1、R2、R3及びR4のうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよく、R11、R12、R13及びR14のうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよい。L1、L2は炭素数1〜4の連結基を表す。なかでも、アルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましい。Xは水素原子もしくはアルカリ金属(好ましくはナトリウム又はカリウム)を表す。
【0063】
上記一般式(A1)で表される化合物又は一般式(A2)、一般式(A3)で表される化合物において、総炭素数値が大きくなると疎水部分が大きくなり、水系の現像液への溶解性が低下する。この場合、溶解を助けるアルコール等の有機溶剤を、溶解助剤として水に混合することにより、溶解性は良化はするが、総炭素数値が大きくなりすぎた場合、適正混合範囲内で界面活性剤を溶解することはできない。従って、R1〜R4又はR11〜R14及びR15の炭素数の総和は好ましくは10〜40、より好ましくは12〜30である。
【0064】
R1又はR11で表される連結基を有するアルキル基は、アルキル基の間に連結基を有する構造を表す。すなわち、連結基が1つの場合は、「−アルキレン基−連結基−アルキル基」で表すことができる。連結基としては、エステル結合、カルボニル結合、アミド結合が挙げられる。連結基は2以上あってもよいが、1つであることが好ましく、アミド結合が特に好ましい。連結基と結合するアルキレン基の総炭素数は1〜5であることが好ましい。このアルキレン基は直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキレン基が好ましい。連結基と結合するアルキル基は炭素数が3〜19であることが好ましく、直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキルであることが好ましい。
【0065】
R2又はR12がアルキル基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0066】
R3又はR13がアルキル基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
R3又はR13で表されるエチレンオキサイドを含有する基としては、−Ra(CH2CH2O)nRbで表される基を挙げることができる。ここで、Raは単結合、酸素原子又は2価の有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、Rbは水素原子又は有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、nは1〜10の整数を表す。
【0067】
R4及びR14がアルキレン基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
一般式(A1)〜(A3)で表される化合物は、アミド結合を有することが好ましく、R1又はR11の連結基としてアミド結合を有することがより好ましい。
一般式(A1)で表される化合物又は一般式(A2)で表される化合物の代表的な例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
【化10】
【0069】
【化11】
【0070】
【化12】
【0071】
式(A1)〜(A3)で表される化合物は公知の方法に従って合成することができる。また、市販されているものを用いることも可能である。市販品として、式(A1)で表される化合物は川研ファインケミカル社製のソフタゾリンLPB、ソフタゾリンLPB−R、ビスタMAP、竹本油脂社製のタケサーフC−157L等があげられる。式(A2)で表される化合物は川研ファインケミカル社製のソフタゾリンLAO、第一工業製薬社製のアモーゲンAOL等があげられる。
両性イオン系界面活性剤は現像液中に、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
・アニオン性界面活性剤
好ましいアニオン性界面活性剤としては下記一般式(IV)〜(VII)のいずれかで表わされるものが挙げられる。
【0073】
【化13】
(一般式(IV)〜(VII)中、R6、R9は炭素数6〜24のアルキル基を表す。L2はフェニレン基又は単結合を表す。D1、E1、F1はスルホン酸イオンもしくはその塩、または硫酸イオンもしくはその塩を表す。R7は炭素数4〜18のアルキル基を表す。L3はフェニレン基またはナフチレン基を表す。R8はフェニル基またはナフチル基を表す。L4はポリアルキレンオキシ基を表す。L5はフェニレン基を表す。G1は酸素原子を表す。L6はフェニル基を表す。)
【0074】
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類、芳香族スルホン酸塩類、芳香族置換ポリオキシエチレンスルホン酸塩類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類およびアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0075】
本発明の処理液に用いられるアニオン性界面活性剤としては、スルホン酸又はスルホン酸塩を含有するアニオン系界面活性剤が特に好ましい。アニオン性界面活性剤は単独もしくは組み合わせて使用することができる。
【0076】
本発明において前記両性もしくはアニオン性界面活性剤の含有量は特に限定されないが、これを含む層(一例においては上層)の固形分の総量に対して、1質量%超20質量%未満であり、3〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。上記下限値以上とすることで、特にランニングかすの発生を効果的に抑制することができ好ましい。上記上限値以下とすることで、膜減り及び耐刷性を十分に確保することができ好ましい。上記特定のポリビニルアセタールとの関係でいうと、同様の観点から、その100質量部に対して、0.5〜18質量部あることが好ましく、1〜16質量部であることがより好ましい。上記下限値以上とすることで、特にランニングかすの発生を効果的に抑制することができ好ましい。
【0077】
・他の界面活性剤
特定現像液は、本発明の効果を損ねない範囲において、上記以外のノニオン系界面活性剤、カチオン系等を含有してもよい。
【0078】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、芳香族化合物のポリエチレングリコール付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤が、ノニオン芳香族エーテル系界面活性剤を含むことが好ましく、非解離性の置換基を有してもよいベンゼン、又はナフタレンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの付加物であることがより好ましい。この界面活性剤は、1種を単独使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0080】
ノニオン性界面活性やカチオン系剤を併用する場合にも、両性界面活性剤ないしアニオン性界面活性剤の含有量が最も多いことが好ましく、両性界面活性剤ないしアニオン性界面活性剤は界面活性剤総量の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
なお上記両性界面活性剤については、特開平4−13149、特開昭59−121044などを参照することができる。
【0081】
これらの他の界面活性剤の含有量は、記録層の固形分の総量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【0082】
<赤外線吸収剤>
本発明の平版印刷版原版は、その記録層に赤外線吸収剤を含む。赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収剤として知られる種々の染料を用いることができる。
本発明に用いることができる赤外線吸収剤としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち、赤外光又は近赤外光を少なくとも吸収するものが、赤外光又は近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で好ましく、シアニン染料が特に好ましい。
【0083】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。
【0084】
【化14】
【0085】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。X2は、酸素原子又は硫黄原子を示す。L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0086】
【化15】
【0087】
上記式中、Xa−は後述するZa−と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0088】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0089】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。
Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3及びR4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。
R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。但し、一般式(a)で示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0090】
好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
赤外線吸収剤として特に好ましくは、以下に示すシアニン染料Aである。
【0091】
【化16】
赤外線吸収剤を添加する際の添加量としては、全固形分に対し、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましく、1.0〜30質量%であることが特に好ましい。添加量が0.01質量%以上であると、高感度となり、また、50質量%以下であると、層の均一性が良好であり、層の耐久性に優れる。
【0092】
<他のアルカリ可溶性樹脂>
本発明において、「アルカリ可溶性」とは、pH8.5〜13.5(好ましくは8.5〜10.8、より好ましくは9.0〜10.0)のアルカリ水溶液に標準現像時間の処理で可溶であることを意味する。
記録層に用いられる他のアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものであれば特に制限はないが、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に、フェノール性水酸基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の酸性の官能基を有するものが好ましく、このような、アルカリ可溶性を付与する酸性の官能基を有するモノマーを10モル%以上含む樹脂が挙げられ、20モル%以上含む樹脂がより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分が10モル%以上であると、アルカリ可溶性が十分得られ、また、現像性に優れる。
また更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3−8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。また、その重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
【0093】
前記他のアルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が2,000以上、かつ数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000で、かつ数平均分子量が800〜250,000であることがより好ましい。また、前記他のアルカリ可溶性樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
記録層に所望により含まれる他のアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明における記録層の全固形分に対する他のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、0〜98質量%の添加量で用いてもよい。また、前記(A)星型ポリマー100質量部に対し、80質量部以下の割合で含みうる。
【0094】
<水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂>
本発明に係る記録層には、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂を含有することで、赤外線吸収剤とアルカリ可溶性樹脂が有する極性基との間に相互作用が形成され、ポジ型の感光性を有する層が形成される。上述したものを含めて言うと、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂等を好ましく挙げることができる。
本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものであれば特に制限はないが、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、又は、これらの混合物であることが好ましい。
このような酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有することが好ましい。したがって、このような樹脂は、上記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーを1つ以上含むモノマー混合物を共重合することによって好適に生成することができる。前記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸の他に、下式で表される化合物及びその混合物が好ましく例示できる。なお、下式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0095】
【化17】
【0096】
本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、上記重合性モノマーの他に、他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。この場合の共重合比としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有するモノマーのようなアルカリ可溶性を付与するモノマーを10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分が10モル%以上であると、アルカリ可溶性が十分得られ、また、現像性に優れる。
【0097】
使用可能な他の重合性モノマーとしては、下記に挙げる化合物を例示することができる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、等のアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート。2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2,6−ジエチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、等のマレイミド類。
これらの他のエチレン性不飽和モノマーのうち、好適に使用されるのは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルである。
【0098】
また、アルカリ可溶性樹脂としては、上述したようにノボラック樹脂が好ましく挙げられる。
【0099】
前記水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が2,000以上、かつ数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000で、かつ数平均分子量が800〜250,000であることがより好ましい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
本発明の画像記録材料の記録層におけるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明における記録層の全固形分中に対するアルカリ可溶性樹脂の含有量は、全固形分中、2.0〜99.5質量%であることが好ましく、10.0〜99.0質量%であることがより好ましく、20.0〜90.0質量%であることが更に好ましい。アルカリ可溶性樹脂の添加量が2.0質量%以上であると記録層(感光層)の耐久性に優れ、また、99.5質量%以下であると、感度、及び、耐久性の両方に優れる。
【0100】
<その他の添加剤>
(酸発生剤)
画像記録層には、感度向上の観点から、酸発生剤を含有することが好ましい。
本発明において酸発生剤とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。この酸発生剤から発生した酸が触媒として機能し、前記酸分解性基における化学結合が開裂して酸基となり、記録層のアルカリ水溶液に対する溶解性がより向上するものである。
【0101】
本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、US4,708,925号や特開平7−20629号に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号及び特開平1−102457号の各公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、米国特許第5,135,838号や米国特許第5,200,544号に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。さらに、特開平2−100054号、特開平2−100055号及び特願平8−9444号に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
さらに、前記特開平8−220752号公報において、「酸前駆体」として記載されている化合物、或いは、特開平9−171254号号公報において「(a)活性光線の照射により酸を発生し得る化合物」として記載されている化合物なども本発明の酸発生剤として適用しうる。
【0102】
なかでも、感度と安定性の観点から、酸発生剤としてオニウム塩化合物を用いることが好ましい。以下、オニウム塩化合物について説明する。
本発明において好適に用い得るオニウム塩化合物としては、赤外線露光、及び、露光により赤外線吸収剤から発生する熱エネルギーにより分解して酸を発生する化合物として知られる化合物を挙げることができる。本発明に好適なオニウム塩化合物としては、感度の観点から、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する、以下に述べるオニウム塩構造を有するものを挙げることができる。
本発明において好適に用いられるオニウム塩としては、公知のジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジニウム塩等が挙げられ、なかでも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムのスルホン酸塩、カルボン酸塩、BF4−、PF6−、ClO4−などが好ましい。
アジニウム塩化合物の具体例としては、特開2008−195018公報の段落番号〔0047〕〜〔0056〕に記載の化合物を挙げることができる。また、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群もまた、本発明における酸発生剤として好適に用いられる。
酸発生剤を記録層に添加する場合の、好ましい添加量は、記録層の全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜30質量%の範囲である。添加量が上記範囲において、酸発生剤添加の効果である感度の向上が見られるとともに、非画像部における残膜の発生が抑制される。
【0103】
(酸増殖剤)
本発明における記録層には、酸増殖剤を添加してもよい。
本発明における酸増殖剤とは、比較的に強い酸の残基で置換された化合物であって、酸触媒の存在下で容易に脱離して新たに酸を発生する化合物である。すなわち、酸触媒反応によって分解し,再び酸(以下、一般式でZOHと記す)を発生する。1反応で1つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に酸濃度が増加することにより、飛躍的に感度が向上する。この発生する酸の強度は,酸解離定数(pKa)として3以下であり、さらに2以下であることが好ましい。これよりも弱い酸であると,酸触媒による脱離反応を引き起こすことができない。
このような酸触媒に使用される酸としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルスルホン酸等が挙げられる。
【0104】
酸増殖剤は、WO95/29968号、WO98/24000号、特開平8−305262号、特開平9−34106号、特開平8−248561号、特表平8−503082号、米国特許第5,445,917号、特表平8−503081号、米国特許第5,534,393号、米国特許第5,395,736号、米国特許第5,741,630号、米国特許第5,334,489号、米国特許第5,582,956号、米国特許第5,578,424号、米国特許第5,453,345号、米国特許第5,445,917号、欧州特許第665,960号、欧州特許第757,628号、欧州特許第665,961号、米国特許第5,667,943号、特開平10−1598号等に記載の酸増殖剤を1種、或いは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0105】
酸増殖剤を記録層中に添加する場合の添加量としては、固形分換算で、0.01〜20質量%,好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の範囲である。酸増殖剤の添加量が上記範囲において、酸増殖剤を添加する効果が充分に得られ、感度向上が達成されるとともに、画像部の膜強度低下が抑制され、特定ポリウレタンに起因する優れた膜強度が維持される。
【0106】
(その他の添加剤)
前記記録層及び記録層を形成するにあたっては、上記の必須成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。
【0107】
(現像促進剤)
前記記録層には、感度を向上させる目的で、酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加してもよい。
酸無水物類としては環状酸無水物が好ましく、具体的に環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシテトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。非環状の酸無水物としては、無水酢酸などが挙げられる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、2,2’−ビスヒドロキシスルホン、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されており、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の酸無水物、フェノール類及び有機酸類の記録層の全固形分に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
【0108】
(その他の界面活性剤)
記録層には、塗布性を良化するため、また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、上記のほか、特開昭62−170950号公報、特開平11−288093号公報、特開2003−57820号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
その他の界面活性剤の記録層の全固形分に占める割合は、0.01〜15質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.05〜2.0質量%が更に好ましい。
【0109】
(焼出し剤/着色剤)
記録層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼出し剤及び着色剤としては、例えば、特開2009−229917号公報の段落番号〔0122〕〜〔0123〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物を本発明にも適用しうる。
これらの染料は、記録層の全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜3質量%の割合で添加することがより好ましい。
【0110】
(可塑剤)
記録層には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加してもよい。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
これらの可塑剤は、記録層の全固形分に対し、0.5〜10質量%の割合で添加することが好ましく、1.0〜5質量%の割合で添加することがより好ましい。
【0111】
(ワックス剤)
記録層には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6,117,913号明細書、特開2003−149799号公報、特開2003−302750号公報、又は、特開2004−12770号公報に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルを有する化合物などを挙げることができる。
添加量として好ましいのは、記録層中に占める割合が0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0112】
<記録層の形成>
本発明の平版印刷版原版における記録層は、通常、前記各成分を溶剤に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。
【0113】
記録層の塗布量としては、0.6〜4.0g/m2の範囲にあることが好ましく、0.7〜2.5g/m2の範囲にあることがより好ましい。0.6g/m2以上であると、耐刷性に優れ、4.0g/m2以下であると、画像再現性及び感度に優れる。
【0114】
<支持体>
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸度安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート又は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であることが好ましい。
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.15〜0.4mmであることがより好ましく、0.2〜0.3mmであることが特に好ましい。
【0115】
このようなアルミニウム板には、必要に応じて粗面化処理、陽極酸化処理などの表面処理を行ってもよい。アルミニウム支持体の表面処理については、例えば、特開2009−175195号公報の〔0167〕〜〔0169〕に詳細に記載されるような、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理、表面の粗面化処理、陽極酸化処理などが適宜、施される。
陽極酸化処理を施されたアルミニウム表面は、必要により親水化処理が施される。
親水化処理としては、2009−175195号公報の〔0169〕に開示されている如き、アルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法、フッ化ジルコン酸カリウム或いは、ポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0116】
<下塗層>
本発明においては、必要に応じて支持体と記録層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン等のアミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、並びに、ヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。また、これら下塗層成分は、1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。下塗層に使用される化合物の詳細、下塗層の形成方法は、特開2009−175195号公報の段落番号〔0171〕〜〔0172〕に記載され、これらの記載は本発明にも適用される。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2であることが好ましく、5〜100mg/m2であることがより好ましい。被覆量が上記範囲であると、十分な耐刷性能が得られる。
【0117】
<バックコート層>
本発明の平版印刷版原版の支持体裏面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
上記のようにして作製された平版印刷版原版は、画像様に露光され、その後、現像処理を施される。
【0118】
<平版印刷版の製版方法>
本発明の平版印刷版の作製方法は、前記本発明の赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を赤外線により画像様に露光する露光工程と、pH11.0〜13.5(好ましくは12.0〜13.5、より好ましくは12.5〜13.5)のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含むことを特徴とする。
本発明の平版印刷版の作製方法によれば、焼きだめ性が良好となり、得られた平版印刷版は、非画像部の残膜に起因する汚れの発生がなく、画像部の強度、耐久性に優れる。
以下、本発明の製版方法の各工程について詳細に説明する。
【0119】
<露光工程>
本発明の平版印刷版の製版方法は、本発明の赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を画像様に露光する露光工程を含む。
本発明の平版印刷版原版の画像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザがより好ましい。中でも、本発明においては、波長750〜1,400nmの赤外線を放射する固体レーザ又は半導体レーザにより画像露光されることが特に好ましい。
レーザの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。
平版印刷版原版に照射されるエネルギーは、10〜300mJ/cm2であることが好
ましい。上記範囲であると、硬化が十分に進行し、また、レーザーアブレーションを抑制し、画像が損傷を防ぐことができる。
【0120】
本発明における露光は、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは、副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表したとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が、0.1以上であることが好ましい。
【0121】
本発明に使用することができる露光装置の光源の走査方式は、特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0122】
<現像工程>
・現像液
本発明の平版印刷版の製版方法はアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程を含む。現像工程に使用されるアルカリ水溶液(以下、「現像液」ともいう。)は、pH11.0〜13.5(好ましくは12.0〜13.5、より好ましくは12.5〜13.5)のアルカリ水溶液である。なお、ここでのpHは室温(20℃)においてHORIBA社製、F−51(商品名)で測定した値で定義する。
【0123】
本発明においては、高いpHの現像液を用いたとしても、前記特定の界面活性剤を特定の高分子化合物と組み合わせて感光層中に適用したため、高安定処理性を実現することができる。
これについてより具体的にいうと、自動現像機(自現機)は電導度にてアルカリ濃度を制御するが、アルカリ濃度を一定に保持すると、ポリウレタンバインダーの現像に必須な界面活性剤濃度が次第に増えていったり/減っていったりしてしまう。つまり現像処理の安定性に欠ける。
これに対し本発明では、あらかじめ、平版印刷版原版の画像記録層の中に界面活性剤を仕込んでおり、アルカリ濃度のみで現像液を管理しても界面活性剤の濃度は初期から一定で保持されるという利点を有する。
【0124】
前記現像液のアルカリ性を呈する成分としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらの炭酸塩を用いることができる。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
また、前記現像液は、界面活性剤を含むことが好ましく、アニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を少なくとも含むことがより好ましい。界面活性剤は処理性の向上に寄与する。界面活性剤は平版印刷版原版の画像記録層に含まれる界面活性剤と同一のものが好ましい。このような組合せとすることにより、画像記録層の界面活性剤と現像液の界面活性剤とが相互に作用して、一層良好な現像性および安定性の実現に寄与する。
前記現像液に用いられる界面活性剤は、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、及び、両性の界面活性剤のいずれも用いることができるが、既述のように、アニオン性、両性(ベタイン性)の界面活性剤が好ましい。
本発明の現像液に用いられるアニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0126】
本発明の現像液に用いられるノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。この中でも、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するものが好ましく、アルキル置換又は無置換のフェノールエチレンオキサイド付加物又は、アルキル置換又は無置換のナフトールエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
本発明の現像液に用いられる両性界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型等が挙げられる。
【0127】
前記現像液に用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が好ましく、スルホン酸又はスルホン酸塩を含有するアニオン性界面活性剤が特に好ましい。
界面活性剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【0128】
前記現像液を好適なpHに保つためには、緩衝剤として炭酸イオン、炭酸水素イオンが存在することで、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。炭酸イオン、炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
現像液のpHは、現像可能であれば特に限定されないが、pH8.5〜10.8の範囲であることが好ましい。
【0129】
炭酸塩及び炭酸水素塩の総量は、現像液の全質量に対して、0.3〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。総量が0.3質量%以上であると現像性、処理能力が低下せず、20質量%以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
【0130】
その他、この種の現像液に適用されるもとして、適宜、有機アルカリ剤、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、極性溶剤、無機酸、無機塩等を適用してもよい。
【0131】
・現像処理
現像の温度は、現像可能であれば特に制限はないが、60℃以下であることが好ましく、15〜40℃であることがより好ましい。自動現像機を用いる現像処理においては、処理量に応じて現像液が疲労してくることがあるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。現像及び現像後の処理の一例としては、アルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する方法が例示できる。また、他の例としては、炭酸イオン、炭酸水素イオン及び界面活性剤を含有する水溶液を用いることにより、前水洗、現像及びガム引きを同時に行う方法が好ましく例示できる。よって、前水洗工程は特に行わなくともよく、一液を用いるだけで、更には一浴で前水洗、現像及びガム引きを行ったのち、乾燥工程を行うことが好ましい。現像の後は、スクイズローラ等を用いて余剰の現像液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
【0132】
現像工程は、擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像露光後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号公報、特開昭60−59351号公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像露光後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。中でも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
【0133】
現像工程の後、連続的又は不連続的に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥は熱風、赤外線、遠赤外線等によって行う。
本発明の平版印刷版の作製方法において好適に用いられる自動処理機としては、現像部と乾燥部とを有する装置が用いられ、平版印刷版原版に対して、現像槽で、現像とガム引きとが行なわれ、その後、乾燥部で乾燥されて平版印刷版が得られる。
【0134】
また、耐刷性等の向上を目的として、現像後の印刷版を非常に強い条件で加熱することもできる。加熱温度は、通常200〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる恐れがある。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に好適に用いられる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0136】
[合成例1]
ポリマーAは下記の手順を用いて調製した:
水冷コンデンサー、滴下漏斗および温度計を備え、DMSO(200g)を含む反応容器にBF−03(50g)を加えた。連続撹拌しながら、混合物が透明溶液になるまで混合物を80℃で30分間加熱した。次に、温度を60℃に調節し、DMSO(50g)中のMSA(2.7g)を加えた。15分間かけて、ブチルアルデヒド(10.4g)の溶液を反応混合物に加え、反応混合物を55〜60℃に1時間保った。次に、DMSO(100g)中の2−ヒドロキシベンズアルデヒド(サリチル酸アルデヒド、39g)を反応混合物に加えた。次に、反応混合物をアニソール(350g)により希釈し、真空蒸留を開始した。反応混合物からアニソール:水共沸混合物を留去した(溶液中の残った水は0.1%未満)。反応混合物を室温に冷却し、DMSO(30g)中に溶解したTEA(8g)により中和し、次に6kgの水とブレンドした。その結果析出したポリマーを水で洗浄し、濾過し、50℃で真空中で24時間乾燥させ、80gの乾燥したポリマーAを得た。
【0137】
・BF−03は、Chang Chun Petrochemical Co.,Ltd.(台湾)から入手したポリ(ビニルアルコール)、98%加水分解(Mw=15,000)を表す。
・MSAはメタノールスルホン酸(99%)を表す。
・DMSOはジメチルスルホキシドを表す。
・TEAはトリエタノールアミンを表す。
【0138】
[実施例1、比較例1]
実施例および比較例の感光性組成物を以下のように製造した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ポリマーA 7.22g
クリスタル・バイオレット 0.20g
S 0094IR色素 0.16g
表1記載の界面活性剤 表1に記載した量
PM(1−メトキシ−2−プロパノール) 91.8g
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0139】
各配合物を濾過し、電気化学的に粗面化され陽極参加処理されたアルミニウム基材であってポリ(ビニルホスホン酸)の水溶液による処理にかけられたアルミニウム基材に通常の方法により適用し、得られた画像形成性層コーティングをGlunz&Jensenの「Unigraph Quartz」オーブン内で105℃で2.5時間乾燥させた。各画像形成性層の乾燥被覆量は約1.5g/m2 であった。
【0140】
得られた平版印刷版原版について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0141】
<ランニングかすの評価>
前記の現像開始液電導度値40mS/cmと平衡電導度値45mS/cmを自動現像機の制御部にインプットした
前記自動現像機で、1日当たり平均50枚で1ヶ月間、前記ランニング用プレートを処理した。この間、露光は、Creo社製Trendsetter(商品名)にて、ビーム強度9w、ドラム回転速度150rpmで全面を露光しておこなった。
1ヶ月後に、現像タンクから現像液を抜いて状況を目視で観察したところ、現像カスは見られなかった。
AA:現像タンクから現像液を抜き目視で確認して現像カスがまったくない、または
ほとんどない状態
B :現像タンクから現像液を抜き目視で確認して現像カスが容易に認められるレベル
C :現像タンクから現像液を抜かずとも通版すると版に現像カスが付着するレベル
【0142】
<膜減りの評価>
画像部の現像による膜減りの評価
未露光の平版印刷版原版をその後、富士フイルム(株)製自動現像機LP−940Hに、富士フイルム(株)製現像液DT−2(1:8で希釈したもの)及び富士フイルム(株)製フィニッシャーFG−1(1:1で希釈したもの)を仕込み、現像液温度32℃、現像時間12秒で現像処理した。この時の現像液の電導度は43mS/cmであった。
現像前後の感光層の光学濃度を測定し、現像前の濃度からアルミ支持体だけの濃度を差し引いたものを100%としたときの相対濃度を現像膜減りとして表した。
AA:90%以上
A :85%以上90%未満
B :80%以上85%未満
C :80%未満
【0143】
<耐刷性の評価>
平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter(商品名)にて、ビーム強度9w、ドラム回転速度150rpmで、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、富士フイルム(株)製現像液DT−2(商品名)(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサーLP940H(商品名)を用い、現像温度30℃、現像時間12秒で現像を行った。これを、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロン(商品名)を用いて連続して印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。なお、耐刷性は、比較例1の耐刷数を1.0とした際の相対値として示した。テストパターンとしては、2cm×2cmのベタ画像(全面画像部)を用いた。印刷物の目視評価により、印刷部にカスレやヌケが発生した枚数を刷了枚数とした。このとき、「1.0」は4万枚であった。
AA:90%以上
A :85%以上90%未満
B :80%以上85%未満
C :80%未満
<廃液濃縮適性評価>
ランニングを行った後の現像廃液20Lを富士フイルムグラフィックシステムズ株式会社製廃液削減装置XR−2000を使用して、消泡剤に富士フイルム株式会社製AF−Aを水で3%に希釈したものを使用して、濃縮を行った。
濃縮率と蒸留再生水のBOD値より評価した。
AA:濃縮率4倍以上、かつ、BOD値300mg/L未満
A :濃縮率3倍以上4倍未満、かつ、BOD値300mg/L未満
B :濃縮率2倍以上3倍未満、かつ、BOD値300mg/L未満
C :濃縮率1倍以上2倍未満、かつ、BOD値300mg/L未満
D :濃縮率1倍以上2倍未満、かつ、BOD値300mg/L以上
【0144】
(現像液)
・D―ソルビット 2.5 質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5 質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 96.15質量%
【0145】
【表1】
*1:界面活性剤を含む記録層の固形分総和に対する含有率である。以下の表についても同じ。
・ソフタゾリンLPB−R:商品名、アミドベタイン型の両性界面活性剤、
川研ファインケミカル株式会社製
・ソフタゾリンLAO:商品名、アミドアミンオキシド型両性界面活性剤、
川研ファインケミカル株式会社製
・ニューコールB4SN:商品名、アニオエン性界面活性剤、
日本乳化剤株式会社製
R−O−(CH2CH2O)n−SO3Na (R:アリール基、n:整数)
・ペレックスNBL:商品名、アニオン性界面活性剤、花王株式会社製
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、
*2:cから始まる番号の試験例は比較例を意味する。以下の実施例・比較例についても同様である。
【0146】
[実施例2、比較例2]
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を経て処理することで支持体を作製した。
【0147】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0148】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0149】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0150】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0151】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0152】
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0153】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0154】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0155】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0156】
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い支持体を作製した。
上記によって得られた支持体には、引き続き下記の親水処理、及び下塗り処理を行った。
【0157】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸漬することでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.6mg/m2であった。
【0158】
〔下塗り処理〕
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下
記組成の下塗り液を塗布して、80℃で15秒間乾燥することにより下塗層を形成した。
乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
【0159】
(下塗層用塗布液)
・下記高分子化合物(下記式(I)) 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0160】
【化18】
【0161】
(記録層の形成)
次に、上記で得られた下塗層付き支持体に、下記組成の下層用塗布液Aを、ワイヤーバーで塗布したのち、140℃の乾燥オーブンで50秒間乾燥して塗布量を0.85g/m2とした。
得られた下層付き支持体に、下記組成の上層用塗布液Bをワイヤーバーで塗布した。塗布後140℃60秒間の乾燥を行い、総塗布量を1.1g/m2として実施例及び比較例のポジ型平版印刷版原版を得た。
【0162】
<下層用塗布液A>
・ポリマーA 2.13g
・表2に示す界面活性剤 (表2に記載量)
・前記シアニン染料A 0.134g
・ビス−p−ヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.19g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)
ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・エチルバイオレット6−ナフタレンスルホン酸 0.078g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.023g
・γ−ブチロラクトン 13.16g
・メチルエチルケトン 25.39g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.95g
【0163】
<上層用塗布液B>
・m−クレゾール/p−クレゾール(60/40)ノボラック
(重量平均分子量4000) 0.341g
・前記シアニン染料A 0.019g
・下記構造ポリマー1/MEK30%溶液(下記構造) 0.14g
・4級アンモニウム塩(下記構造) 0.004g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.004g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−781、大日本インキ化学工業(株)製) 0.001g
・メチルエチルケトン 2.63g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.27g
【0164】
【化19】
【0165】
【化20】
【0166】
得られた平版印刷版原版について以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0167】
(現像液)
・D―ソルビット 2.5質量%
・ソフタゾリンLAO(30%溶液) 12質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 84.15質量%
【0168】
【表2】
*1、*2は表1と同義である。
【0169】
[実施例3、比較例3]
使用するアセタール樹脂をポリマーAからポリマーB〜Iにそれぞれ変更した以外、実施例2と同様にして、ランニングかす、膜減り、耐刷性について評価を行った。その結果を表3に示す。
【0170】
ポリマーB〜Iの詳細は以下の通りである。
【0171】
【化21】
【0172】
・ポリマーB:(a/b/c/d/e=36/37/2/25/0;重量平均分子量:16000)
R1=n−ブチル基 R2=4−ヒドロキシベンジル基
・ポリマーC:(a/b/c/d/e=12/49/17/22/0;重量平均分子量:14000)
R1=n−ブチル基 R2=3−ヒドロキシベンジル基
・ポリマーD:(a/b/c/d/e=30/41/2/20/9;重量平均分子量:18000)
R1=n−ブチル基 R2=2−ヒドロキシベンジル基 R6=グリオキシル酸基
・ポリマーE:(a/b/c/d/e=21/43/2/24/10;重量平均分子量:16000)
R1=n−ブチル基 R2=3−ヒドロキシベンジル基 R6=プロパルギル基
・ポリマーF:(a/b/c/d/e=38/42/2/18/0;重量平均分子量:18000)
R1=n−ブチル基 R2=2−ヒドロキシベンジル基
・ポリマーG:(a/b/c/d/e=25/38/12/26/0;重量平均分子量:16000)
R1=n−ブチル基 R2=4−ヒドロキシベンジル基
・ポリマーH:(a/b/c/d/e=16/10/12/44/18;重量平均分子量:18000)
R1=n−イソバレル基 R2=2−ヒドロキシベンジル基 R6=4−ホルミルフェノキシ酢酸基
・ポリマーI:(a/b/c/d/e=14/44/2/40/0;重量平均分子量:16000)
R1=n−ブチル基 R2=3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシベンジル基
【0173】
得られた平版印刷版原版について以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0174】
(現像液)
・D―ソルビット 2.5質量%
・ソフタゾリンLAO(30%溶液) 12質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 84.15質量%
【0175】
【表3】
*1、*2は表1と同義である。
【0176】
[実施例4、比較例4]
(記録層の形成)
次に、前記実施例で得られた下塗層付き支持体に、下記組成の下層用塗布液aを、ワイヤーバーで塗布したのち、140℃ の乾燥オーブンで50秒間乾燥して塗布量を0.85G/M2とした。
得られた下層付き支持体に、下記組成の上層用塗布液b をワイヤーバーで塗布した。塗布後140℃60秒間の乾燥を行い、総塗布量を1.1G/M2として実施例及び比較例のポジ型平版印刷版原版を得た。
【0177】
<下層用塗布液A>
・ポリマーA 2.13g
・表4に示す界面活性剤 (表4に記載量)
・前記シアニン染料A 0.134g
・ビス−p−ヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.19g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)
ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・エチルバイオレット6−ナフタレンスルホン酸 0.078g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.023g
・γ−ブチロラクトン 13.16g
・メチルエチルケトン 25.39g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.95g
【0178】
<上層用塗布液B>
・m−クレゾール/p−クレゾール(60/40)ノボラック
(重量平均分子量4000) 0.341g
・表4に示す界面活性剤 (表4に記載量)
・前記シアニン染料A 0.019g
・ポリマー1/MEK30%溶液(上記構造) 0.14g
・4級アンモニウム塩(前記構造) 0.004g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.004g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−781、大日本インキ化学工業(株)製) 0.001g
・メチルエチルケトン 2.63g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.27g
【0179】
得られた平版印刷版原版について以下の評価を行った。結果を表4に示す。
【0180】
(現像液)
・d―ソルビット 2.5質量%
・ソフタゾリンlao(30%溶液) 12質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 84.15質量%
【0181】
【表4】
*1は表1と同義である。
【0182】
[実施例5、比較例5]
(基板)
アルミニウムシートの表面を2%の塩酸にて電解粗面化処理を行った。平均粗さRaは0.5μmであった。更に20%硫酸水溶液中で陽極酸化処理を行い、酸化皮膜量を2.7g/m2とした。その後、ケイ酸ナトリウム2.5重量%水溶液に70℃で30分間浸漬して、水洗後、乾燥した。
【0183】
(画像記録層)
上記のようにして得られた基板に下記に示す下層の被覆溶液1をバーコーターにて被覆重量が1.5g/m2となるように塗布し、130℃で40秒間乾燥した後に35℃まで冷却した。更に、下記に示す上層の被覆溶液をバーコーターにて被覆重量が0.5g/m2となるように塗布し、135℃で40秒間乾燥後、ゆっくりと20から26℃まで冷却した。こうして、平版印刷版原版を得た。
【0184】
<下層用塗布液>
・N−フェニルマレイミド/メタクリル酸/メタクリルアミド共重合体
(重量比59・15・25、Mw 50000) 5.21g
・前記シアニン染料A 0.94g
・クリスタルバイオレット 0.08g
・BYK307(BYK Chemie製) 0.03g
・メチルエチルケトン 61.0g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 14.0g
・γ−ブチロラクトン 9.40g
・水 9.34g
【0185】
<上層用塗布液>
・ポリマーA 7.5g
・表5 に示す界面活性剤 (表5に記載量)
・エチルバイオレット 0.03g
・クリスタルバイオレット 0.08g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176、大日本インキ化学工業(株)製)
0.05g
・3−ペンタノン 62.50g
・プロピレングリコール1―モノメチルエーテル2−アセテート 29.92g
【0186】
得られた平版印刷版原版について以下の評価を行った。結果を表5に示す。
【0187】
(現像液)
・D―ソルビット 2.5質量%
・ニューコールB4SN(60%溶液) 7質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 89.15質量%
【0188】
【表5】
*1、*2は表1と同義である。
【0189】
以上から明らかなように、本発明の平版印刷版原版においては、比較例のものに比し、ランニングかすが大幅に改善され、膜減りもなく十分な性能を有し、しかも高い耐刷性を示した。この結果より、本発明の両性界面活性剤もしくはアニオン性界面活性剤を含有する記録層をもつ平版印刷版原版は、高い耐刷性とともに、良好な現像性を実現することが分かる。
【符号の説明】
【0190】
1 画像記録層
3 下塗り層
4 支持体
10 平版印刷版原版
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷におけるレーザ露光・現像に関連する技術の発展は目ざましい。特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっている。コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源としてレーザは非常に有用であり、これに対応する平版印刷原版の開発が極めて重要である。
【0003】
赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版の記録層は、アルカリ可溶性のバインダー樹脂と、光を吸収し熱を発生するIR染料等とを必須成分とする。このIR染料等が、未露光部(画像部)では、バインダー樹脂との相互作用によりバインダー樹脂の現像液に対する溶解性を実質的に低下させる現像抑制剤として働く。一方、露光部(非画像部)では、発生した熱によりIR染料等とバインダー樹脂との相互作用が弱まり、アルカリ現像液に溶解して平版印刷版を形成する。
【0004】
上記平版印刷版原版に要求される基本性能として、鮮明な画像部の形成を速やかに実現する現像性と、逆に、未露光部では記録層が溶解されず的確に保持される耐薬品性と、印刷可能量を高める耐刷性の向上とが挙げられる。しかしながら、これらの性能は通常相反するものであり、すべての性能項目を同時に引き上げることは極めて困難である。例えば、下記特許文献1〜3に開示された印刷版原版では、その記録層に特定のポリマーを含有させることが提案されている。通常、記録層に分子量の大きなポリマーを存在させると、その分、耐刷性や耐薬品性の向上は見込める。しかしながら、現像性については劣る方向となり、そうすると、すべての性能をバランス良く高めることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−017913号公報
【特許文献2】特許第4579639号明細書
【特許文献3】特表2010−532488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、上記特許文献の技術等に鑑み、上述した通常相反する特性項目について、その性能を同時に引き上げるための研究開発を行った。すなわち、本発明は、平版印刷における高い耐刷性及び耐薬品性を実現し、しかも露光部の良好な現像性、ランニングかすの抑制性、優れた現像廃液の濃縮性をも達成する平版印刷版原版およびその作製方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は以下の手段により達成された。
(1)親水性表面を有する支持体上側に、画像記録層を有してなる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版であって、前記画像記録層が、ポリ(ビニルアセタール)と、両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤と、赤外線吸収剤とを含有することを特徴とする平版印刷版原版。
(2)親水性表面を有する支持体上側に、下層及び上層をこの順に配設した画像記録層を有してなる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版であって、前記上層および/または下層が、ポリ(ビニルアセタール)と、両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤と、赤外線吸収剤とを、同じ層に、あるいはそれぞれ別々に層に含有することを特徴とする、(1)に記載の平版印刷版原版。
(3)前記両性界面活性剤が下記一般式(I)〜(III)のいずれかで表わされるものであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の平版印刷版原版。
【0008】
【化1】
(一般式(I)〜(III)中、R1は炭素数6〜24のアルキル基もしくは特定の連結基を介するアルキル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。R4、R5はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。ただし、R4及びR5の少なくとも一方は末端に酸性基もしくはその塩を有する。L1は炭素数1〜4の連結基を表す。X−はカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、ホスホン酸イオン、またはリン酸イオンを表す。)
(4)前記アニオン性界面活性剤が下記一般式(IV)〜(VII)のいずれか表わされるものであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の平版印刷版原版。
【0009】
【化2】
(一般式(IV)〜(VII)中、R6、R9は炭素数6〜24のアルキル基を表す。L2はフェニレン基又は単結合を表す。D1、E1、F1はスルホン酸イオンもしくはその塩、または硫酸イオンもしくはその塩を表す。R7は炭素数4〜18のアルキル基を表す。L3はフェニレン基またはナフチレン基を表す。R8はフェニル基またはナフチル基を表す。L4はポリアルキレンオキシ基を表す。L5はフェニレン基を表す。G1は酸素原子を表す。L6はフェニル基を表す。)
(5)前記ポリ(ビニルアセタール)の繰り返し単位が、下記一般式(a)で表されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【0010】
【化3】
(ここで、RおよびR’は独立に水素またはアルキルもしくはハロゲン原子であり、Rxはフェノール、ナフトールもしくはアントラセノール基である。)
(6)前記ポリ(ビニルアセタール)の繰り返し単位が、下記一般式(b)で表されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【0011】
【化4】
(ここで、RおよびR’は独立に水素またはアルキルもしくはハロゲン原子である。Ryは、下記R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のいずれかを表し、一般式(a)で表される樹脂が上記異なるRyの一種以上の繰り返し単位を含む共重合体である。
R1はアルキル基、シクロアルキル基、またはフェノールもしくはナフトール以外のアリール基であり、
R2は前記Rxと同義であり、
R3は炭素数2〜6のアルキニル基又はフェニル基である。)
(7)前記界面活性剤を、前記ポリ(ビニルアセタール)100質量部に対して1〜20質量部含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版の画像記録層を画像露光する露光工程、アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
(9)前記アルカリ水溶液がアニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤または両性界面活性剤を含むことを特徴とする(8)に記載の平版印刷版の作製方法。
(10)前記平版印刷版に含まれる両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤が、前記アルカリ水溶液に含まれる界面活性剤と同一であることを特徴とする(8)に記載の平版印刷版の作製方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の平版印刷原版は、平版印刷における高い耐刷性及び耐薬品性を実現し、しかも露光部の良好な現像性、ランニングかすの抑制性、優れた現象廃液の濃縮性をも同時に達成する。また、本発明の作製方法によれば、上述した良好な性能を発揮する平版印刷版原版を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の平版印刷版原版の記録層を単層構成とした一実施態様を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
<平版印刷版原版>
本発明の平版印刷版原版は、親水性表面を有する支持体上側に、画像記録層を有してなり、前記記録層が、(a)アセタール樹脂と、(b)特定の界面活性剤とを含有する。なお、支持体上側に、その他の層、例えば、下塗り層、表面保護層など任意の層をさらに有していてもよい。
【0015】
上記の構成を採用することにより、本発明において、耐刷性と耐薬品性と現像性等とを同時に達成するという効果を奏する理由(作用機構)は未解明の点を含むが、下記のように推定される。
両性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤は、ノニオン性・カチオン性界面活性剤よりも水和力、分散力が高いことが知られている。現像性への利得を出すため界面活性剤を増量すると一般的に記録層の耐薬品性を低下させるが、両性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤を用いた場合その添加が少量ですみ、耐刷性や耐薬性の悪化影響が小さいという利点がある。
一方、界面活性剤は感材の現像により消費されるため、現像系外からの界面活性剤の補充が必要となる。補充の方法として、活性剤を含む現像液を補充していく方法と、感材中に必要量の活性剤を含有させておく方法が上げられる。本発明のように感材中に活性剤を含ませ、かつ特定のアセタール樹脂と組み合わせて適用することにより、感材を現像した量が現像により消費した活性剤量となり得ることから、簡易、かつ、長期間安定に良好な現像性を保つことができると考えられる。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0016】
<アセタール樹脂>
本発明の平版印刷版原版を構成する記録層は、アセタール樹脂を含む。
本発明に適用されるアセタール樹脂としては、入手可能なポリ(ビニルアセタール)類が挙げられ、反復単位のうちの少なくとも50モル%(50モル%〜70モル%、より典型的には少なくとも60モル%)がアセタール含有反復単位であるものが挙げられる。これに対し非アセタール含有反復単位は、同じまたは異なるペンダントフェノール系基を有することもでき、または、非アセタール含有反復単位はペンダントフェノール系基を持たない反復単位であることができる。あるいは、非アセタール含有反復単位は両方のタイプの反復単位を含むことができる。例えば、ポリ(ビニルアセタール)は、イタコン酸またはクロトン酸基を含む反復単位を有することができる。さらに、ペンダントフェノール系基を含む反復単位が存在する場合には、それらの反復単位は、異なるペンダントフェノール系基を有することができる[例えば、ポリ(ビニルアセタール)は、アセタール含有反復単位を有することができ、2種または3種以上の異なるタイプの反復単位が異なるペン
ダントフェノール系基を有する]。
【0017】
さらに別の態様において、ポリ(ビニルアセタール)中の低モル量(20モル%
未満)のアセタール基を環状酸無水物またはイソシアネート化合物、例えばトルエンスルホニルイソシアネートと反応させることができる。
【0018】
本発明におけるポリ(ビニルアセタール)としては、下記一般式(a)で表される繰り返し単位を含む化合物が挙げられる。
【0019】
【化5】
ここで、RおよびR’は独立に水素またはアルキルもしくはハロゲン原子であり、Rxはフェノール、ナフトールもしくはアントラセノール基である。
【0020】
一般式(a)において、RおよびR’は、好ましくは、独立に水素原子、置換もしくは非置換の線状もしくは分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、クロロメチル、トリクロロメチル、iso−プロピル、iso−ブチル、t−ブチル、iso−ペンチル、neo−ペンチル、1−メチルブチルおよびiso−ヘキシル基など)、もしくは環中に3〜6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のシクロアルキル環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロヘキシルおよびシクロヘキシル基)、またはハロ基(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード)である。典型的には、RおよびR’は独立に水素、もしくは置換もしくは非置換メチル基、またはクロロ基であるか、あるいは、例えば、それらは独立に水素または非置換メチルである。
【0021】
Rxは、好ましくは、置換もしくは非置換フェノール、置換もしくは非置換ナフトール、または置換もしくは非置換アントラセノール基である。これらのフェノール基、ナフトール基およびアントラセノール基は、さらなるヒドロキシ置換基、メトキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、ハロメチル、トリハロメチル、ハロ、ニトロ、アゾ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、シアノ、アミノ、カルボキシ、エテニル、カルボキシアルキル、フェニル、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよび複素脂環式基などのさらなる置換基を最大3個まで有することができる。例えば、Rxは非置換フェノールもしくはナフトール基、例えば、2−ヒドロキシフェニルまたはヒドロキシナフチル基であることができる。なお、上記好ましい置換基は、所定の連結基(たとえば炭素数1〜3のアルキレン基)をともなって式(a)の炭素原子に置換していてもよい。
【0022】
このように、ポリ(ビニルアセタール)類は、構造(a)により表されるものの他に様々な他の反復単位を有することができるが、一般的に、反復単位の少なくとも50モル%は、構造(a)により表される同じまたは異なる反復単位である。
【0023】
ポリ(ビニルアセタール)について、さらに好ましくは、下記一般式(b)で表される繰り返し単位を含む化合物が挙げられる。
【0024】
【化6】
ここで、RおよびR’前記一般式(a)と同様である。
【0025】
Ry=R1であるモノマー(Ia)の重合比mは5〜40モル%であることが好ましく、15〜35モル%であることがより好ましい。
Ry=R2であるモノマー(Ib)の重合比nは10〜60モル%であることが好ましく、20〜40モル%であることがより好ましい。
さらに、
Ry=R3であるモノマー(Ic)の重合比pは0〜20モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。
【0026】
R1は、アルキル基、シクロアルキル基、またはフェノールもしくはナフトール以外のアリール基である。好ましくは、置換もしくは非置換の線状もしくは分岐状の炭素原子数1〜12のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、t−ブチル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、メトキシメチル、クロロメチル、トリクロロメチル、ベンジル、シンナモイル、iso−プロピル、iso−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、iso−ペンチル、neo−ペンチル、1−メチルブチルおよびiso−ヘキシル基など)、環中に3〜6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のシクロアルキル環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロヘキシルおよびシクロヘキシル基)、または、フェノールもしくはナフトール以外の芳香環中に6または10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アリール基(例えば、フェニル、キシリル、トルリル、p−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよびナフチルなどの置換もしくは非置換フェニルおよびナフチル基)である。典型的には、R1は置換もしくは非置換の炭素原子数1〜6のアルキル基である。
【0027】
R2は、前記式(a)のRxと同様である。
【0028】
R3は好ましくは、置換もしくは非置換の炭素原子数2〜4のアルキニル基(例えばエチニル基)、または置換もしくは非置換のフェニル基(例えば、フェニル、4−カルボキシフェニル、カルボキシアルキレンオキシフェニルおよびカルボキシアルキルフェニル基)である。典型的には、R3はカルボキシアルキルフェニル基、4−カルボキシフェニルもしくはカルボキシアルキレンオキシフェニル基、または他のカルボキシ含有フェニル基である。
【0029】
本実施形態のポリ(ビニルアセタール)は、存在する異なる反復単位の数に応じて少なくともテトラマーであることができる。例えば、構造(Ia)から構造(Ic)の先に定義した部類の反復単位のいずれとも異なる多数のタイプの反復単位が存在してもよい。例えば、一般式(a)のポリ(ビニルアセタール)は異なるR1基を有する構造(Ia)の反復単位を有することができる。反復単位のかかる多様性は、構造(Ia)から構造(Ic)のいずれかにより表されるものについても言える。
【0030】
本実施形態のポリマーは、上記により定義されるもの以外の反復単位を含むことができ、かかる反復単位は当業者であれば容易に分かるであろう。すなわち、その最も広い意味において、定義した反復単位に限定されないが、実施態様によっては、一般式(a)中に上記の反復単位のみが存在する。
【0031】
共存にもよい共重合単位としては[Id:−(CHR−CR1R4)−]が挙げられる。R4は好ましくは、−O−C(=O)−R5基であり、ここでR5は、上記のR1の定義と同様に、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜12のアルキル基、または芳香環中に6もしくは10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アリール基である。典型的には、R5は置換もしくは非置換の炭素原子数1〜6のアルキル基、例えば、非置換メチル基である。あるいは、[Ie:−(CHR−CR’OH)−]が挙げられる。繰り返し単位(Id)の共重合比は1〜20モル%であることが好ましく、1〜15モル%であることがより好ましい。繰り返し単位(Ie)の共重合比は5〜60モル%であることが好ましく、15〜55モル%であることがより好ましい。
【0032】
R5は好ましくは、ヒドロキシ基である。
【0033】
記録層中のアセタール樹脂の含有量は特に限定されないが、固形分の総量に対して10〜99質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましい。多くの実施態様は、全組成物または層乾燥質量の50〜90質量%の量で前記アセタール樹脂を含む。
【0034】
本明細書に記載のポリ(ビニルアセタール)類は、米国特許第6,541,181号(上記)に記載のものなどの公知の出発物質および反応条件を使用して調製できる。例えば、ポリビニルアルコールのアセタール化は、例えば米国特許第4,665,124号明細書(Dhillonら)、米国特許第4,940,646号明細書(Pawlowski)、米国特許第5,169,898号明細書(Wallsら)、米国特許第5,700,619号明細書(Dwarsら)および米国特許第5,792,823号明細書(Kimら)、並びに日本国特開平09−328519号公報(Yoshinaga)に記載に公知の標準的な方法に従って進行させ反応生成物を得ることができる。
【0035】
前記アセタール樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、5,000〜300,000であることが好ましく、20,000〜50,000であることがより好ましい。
【0036】
ポリ(ビニルアセタール)類は米国特許第6,255,033号および第6,541,181号明細書並びに国際公開第2004/081662に記載されている。同じまたは類似のポリ(ビニルアセタール)が欧州特許出願公開第1,627,732号明細書(Hatanakaら)並びに米国特許出願公開第2005/0214677号明細書(Nagashima)および米国特許出願公開第2005/0214678号明細書(Nagashima)(これらの文献に記載のポリ(ビニルアセタール)は全て本明細書に援用する)に構造単位(a)から(e)を含む一般式(I)および(II)により記載されている。
分子量及び分散度は特に断らない限りGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)法を用いて測定した値とし、分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量とする。GPC法に用いるカラムに充填されているゲルは芳香族化合物を繰り返し単位に持つゲルが好ましく、例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなるゲルが挙げられる。カラムは2〜6本連結させて用いることが好ましい。用いる溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒が挙げられる。測定は、溶媒の流速が0.1〜2mL/minの範囲で行うことが好ましく、0.5〜1.5mL/minの範囲で行うことが最も好ましい。この範囲内で測定を行うことで、装置に負荷がかからず、さらに効率的に測定ができる。測定温度は10〜50℃で行うことが好ましく、20〜40℃で行うことが最も好ましい。なお、使用するカラム及びキャリアは測定対称となる高分子化合物の物性に応じて適宜選定することができる。
【0037】
<フェノール樹脂>
本発明における記録層には、さらにフェノール系樹脂も使用できる。かかるフェノール系樹脂としては、ホスホール(hosphor)樹脂、例えばフェノールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、m−クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、p−クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、フェノールとクレゾール(m−,p−またはm−/p−混合物)とホルムアルデヒドの縮合ポリマー、およびピロガロールとアセトンの縮合コポリマーが挙げられる。さらに、側鎖にフェノール基を含む化合物を共重合させることにより得られるコポリマーも使用できる。かかるポリマーバインダーの混合物も使用できる。
【0038】
少なくとも1500の重量平均分子量および少なくとも300の数平均分子量を有するノボラック樹脂も有用である。一般的に、重量平均分子量は3,000〜300,000の範囲内にあり、数平均分子量は500〜250,000の範囲内にあり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10の範囲内にある。
【0039】
上記の第1のポリマーバインダーの特定の混合物を使用でき、かかる混合物としては、1種もしくは2種以上のポリ(ビニルアセタール)と1種もしくは2種以上のフェノール系樹脂との混合物が挙げられる。例えば、1種もしくは2種以上のポリ(ビニルアセタール)と1種もしくは2種以上のホスホール(hosphor)もしくはレゾール樹脂(またはホスホール(hosphor)およびレゾール樹脂)との混合物を使用できる。
【0040】
<酸性基含有ポリマー>
第2のポリマーバインダーの例としては、以下に示す(1)〜(5)に含まれる酸性基を主鎖および/または側鎖(ペンダント基)上に有する以下の部類のポリマーが挙げられる。
(1)スルホンアミド基(−SO2NH−R),
(2)置換スルホンアミドに基づく酸基(ここでは活性イミド基という)[例えば−SO2NHCOR,SO2NH
SO2R,−CONHSO2R],
(3)カルボン酸基(−CO2H),
(4)スルホン酸基(−SO3H)、および
(5)リン酸基(−OPO3H2).
【0041】
上記の基(1)〜(5)におけるRは水素または炭化水素基を表す。
【0042】
置換基(1)のスルホンアミド基を有する代表的な第2のポリマーバインダーは、例えば、スルホンアミド基を有する化合物から誘導された主たる成分として最低限の構成単位から構成されたポリマーが挙げられる。そのため、かかる化合物の例としては、その分子中に、少なくとも1個の水素原子が窒素原子に結合している少なくとも1個のスルホンアミド基と、少なくとも1個の重合性の不飽和基を有する化合物が挙げられる。これらの化合物には、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、およびN−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミドがある。そのため、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、例えばm−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、またはN−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミドなどのホモポリマーおよびコポリマーを使用できる。
【0043】
置換基(2)の活性イミド基を有する第2のポリマーバインダーは、主たる構成成分として活性イミド基を有する化合物から誘導された反復単位を含むポリマーである。かかる化合物の例としては構造式−(CO)(NH)(SO2)−により定義される部分を有する重合性の不飽和化合物が挙げられる。
【0044】
N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミドおよびN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミドはかかる重合性化合物の例である。
【0045】
上記の置換基(3)〜(5)のいずれかを有する第2のポリマーバインダーとしては、望ましい酸性基または重合後にかかる酸性基に変換可能な基を有するエチレン性不飽和重合性モノマーを反応させることにより容易に調製されるものが挙げられる。
【0046】
上記の(1)〜(5)から選択される酸性基を有する最低限の構成単位について、ポリマー中にただ1種類の酸性基を使用する必要はなく、実施態様によっては、少なくとも2種の酸性基を有することが有用なことがある。当然、第2のポリマーバインダー中の全ての反復単位が上記酸性基のうちの1つを持たなくてはならないというわけではないが、通常、少なくとも10モル%、典型的には少なくとも20モル%が上記の酸性基のうちの一つを有する反復単位から構成される。
【0047】
酸性基含有ポリマーは、少なくとも2,000の重量平均分子量および少なくとも500の数平均分子量を有することができる。典型的には、重量平均分子量は5,000〜300,000の範囲内にあり、数平均分子量は800〜250,000の範囲内にあり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10の範囲内にある。
【0048】
酸性基含有ポリマーを1種または2種以上の第1のポリマーバインダーと併用してもよい。酸性基含有ポリマーの含有量は特に限定されないが、少なくとも1質量%かつ50質量%以下であることが好ましく、5〜30質量%の量であることがより好ましい。
【0049】
なお、本明細書における基(原子群)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。なお、本明細書において***化合物とは、当該化合物そのものに加え、その塩、そのイオン等を含む意味に用いる。典型的には、当該化合物及び/又はその塩を意味する。このことは、次に説明する界面活性剤についても同様であり、そこで規定される化合物が対イオンを伴わないイオンで存在していても、塩であってもよい。
【0050】
<界面活性剤>
・両性界面活性剤
好ましい両性界面活性剤としては下記一般式(I)〜(III)のいずれかで表わされるものが挙げられる。
【0051】
【化7】
【0052】
R1は炭素数6〜24のアルキル基もしくは特定の連結基を介するアルキル基を表す。なかでも、直鎖の炭素数8〜18のアルキル基、炭素数8〜18のもしくは特定の連結基を介するアルキル基が好ましく、特定の連結基としてはアミド基が好ましい。
R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。なかでも、メチル基、エチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
R4、R5はそれぞれ独立に末端に酸性基もしくはその塩(好ましくはカルボン酸もしくはその塩)を有する炭素数1〜5のアルキル基を表す。なかでも、2−カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、2−カルボキシプロピル基、カルボキシポリエチレンオキシド基、カルボキシポリプロピレンオキシド基が好ましい。
L1は炭素数1〜4の連結基を表す。なかでも、アルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
X−はカルボン酸イオン(もしくはその塩)、スルホン酸イオン(もしくはその塩)、硫酸イオン(もしくはその塩)、ホスホン酸イオン(もしくはその塩)、またはリン酸イオン(もしくはその塩)を表す。
上記アニオン性基は塩をなしていてもよく、その対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンが挙げられる。
【0053】
両性界面活性剤として具体的には、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型等が挙げられる。
【0054】
上記一般式(I)で表される両性界面活性剤の具体例としては、レボン2000、レボンLD36(以上、三洋化成工業(株)製)、Texnol R2(日本乳化剤(株)製)AM−301、AM−3130N(以上、日光ケミカルズ(株)製)、アンヒトール20AB、アンヒトール20BS、アンヒトール24B、アンヒトール55AB、アンヒトール86B(以上、花王(株)製)、アデカアンホートAB−35L、アデカアンホートPB−30L(以上、(株)ADEKA製)、アンホレックスCB−1、アンホレックスLB−2(以上、ミヨシ油脂(株)製)、エナジコールC−30B、エナジコールL−30B(以上、ライオン(株)製)、オバゾリンBC、オバゾリンCAB−30、オバゾリンLB−SF、オバゾリンLB(以上東邦化学工業(株)製)、ソフタゾリンCPB−R、ソフタゾリンCPB、ソフタゾリンLPB−R、ソフタゾリンLPB、ソフタゾリンMPB、ソフタゾリンPKBP(以上、川研ファインケミカル(株)製)、ニッサンアノンBDC−S、ニッサンアノンBDF−R、ニッサンアノンBDF−SF、ニッサンアノンBF、ニッサンアノンBL−SF、ニッサンアノンBL(以上、日油(株)製)などが挙げられる。
上記一般式(II)で表される両性界面活性剤の具体例としては、アンヒトール20N(花王(株)製)、ソフタゾリンLAO−C、ソフタゾリンLAO(以上、川研ファインケミカル(株)製)、ユニセーフA−OM(日油(株)製)、カチナールAOC(東邦化学工業(株)製)、アロモックスDMC−W(ライオン(株)製)などが挙げられる。
上記一般式(III)で表される両性界面活性剤の具体例としては、エナジコールDP−30(ライオン(株)製)、デリファット160C(コグニスジャパン(株)製)、パイオニンC158G(竹本油脂(株)製)などが挙げられる。
【0055】
さらに上記両性界面活性剤の具体例を化学構造式により下記に例示する。
【0056】
【化8】
【0057】
一般式(I)〜(III)で表される化合物は、単独もしくは組み合わせて使用することができる。
【0058】
一部重複するものもあるが、両性イオン系界面活性剤の別の例は、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルイミダゾールなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。
【0059】
特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。これらの具体例としては、特開2008−203359号の段落番号〔0256〕の式(2)で示される化合物、特開2008−276166号の段落番号〔0028〕の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009−47927号の段落番号〔0022〕〜〔0029〕に記載の化合物を挙げることができる。
【0060】
現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤としては、下記一般式(A1)で表される化合物、一般式(A2)で表される化合物、一般式(A3)で表される化合物が好ましい。
【0061】
【化9】
【0062】
式(A1)〜(A3)中、R1、R11及びR15は、各々独立に、炭素数8〜20のアルキル基又は総炭素数8〜20の連結基を有するアルキル基を表す。R2、R3、R12及びR13は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はエチレンオキサイド基を含有する基を表す。R4及びR14は、各々独立に、単結合又はアルキレン基を表す。また、R1、R2、R3及びR4のうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよく、R11、R12、R13及びR14のうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよい。L1、L2は炭素数1〜4の連結基を表す。なかでも、アルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましい。Xは水素原子もしくはアルカリ金属(好ましくはナトリウム又はカリウム)を表す。
【0063】
上記一般式(A1)で表される化合物又は一般式(A2)、一般式(A3)で表される化合物において、総炭素数値が大きくなると疎水部分が大きくなり、水系の現像液への溶解性が低下する。この場合、溶解を助けるアルコール等の有機溶剤を、溶解助剤として水に混合することにより、溶解性は良化はするが、総炭素数値が大きくなりすぎた場合、適正混合範囲内で界面活性剤を溶解することはできない。従って、R1〜R4又はR11〜R14及びR15の炭素数の総和は好ましくは10〜40、より好ましくは12〜30である。
【0064】
R1又はR11で表される連結基を有するアルキル基は、アルキル基の間に連結基を有する構造を表す。すなわち、連結基が1つの場合は、「−アルキレン基−連結基−アルキル基」で表すことができる。連結基としては、エステル結合、カルボニル結合、アミド結合が挙げられる。連結基は2以上あってもよいが、1つであることが好ましく、アミド結合が特に好ましい。連結基と結合するアルキレン基の総炭素数は1〜5であることが好ましい。このアルキレン基は直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキレン基が好ましい。連結基と結合するアルキル基は炭素数が3〜19であることが好ましく、直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキルであることが好ましい。
【0065】
R2又はR12がアルキル基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0066】
R3又はR13がアルキル基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
R3又はR13で表されるエチレンオキサイドを含有する基としては、−Ra(CH2CH2O)nRbで表される基を挙げることができる。ここで、Raは単結合、酸素原子又は2価の有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、Rbは水素原子又は有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、nは1〜10の整数を表す。
【0067】
R4及びR14がアルキレン基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
一般式(A1)〜(A3)で表される化合物は、アミド結合を有することが好ましく、R1又はR11の連結基としてアミド結合を有することがより好ましい。
一般式(A1)で表される化合物又は一般式(A2)で表される化合物の代表的な例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
【化10】
【0069】
【化11】
【0070】
【化12】
【0071】
式(A1)〜(A3)で表される化合物は公知の方法に従って合成することができる。また、市販されているものを用いることも可能である。市販品として、式(A1)で表される化合物は川研ファインケミカル社製のソフタゾリンLPB、ソフタゾリンLPB−R、ビスタMAP、竹本油脂社製のタケサーフC−157L等があげられる。式(A2)で表される化合物は川研ファインケミカル社製のソフタゾリンLAO、第一工業製薬社製のアモーゲンAOL等があげられる。
両性イオン系界面活性剤は現像液中に、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
・アニオン性界面活性剤
好ましいアニオン性界面活性剤としては下記一般式(IV)〜(VII)のいずれかで表わされるものが挙げられる。
【0073】
【化13】
(一般式(IV)〜(VII)中、R6、R9は炭素数6〜24のアルキル基を表す。L2はフェニレン基又は単結合を表す。D1、E1、F1はスルホン酸イオンもしくはその塩、または硫酸イオンもしくはその塩を表す。R7は炭素数4〜18のアルキル基を表す。L3はフェニレン基またはナフチレン基を表す。R8はフェニル基またはナフチル基を表す。L4はポリアルキレンオキシ基を表す。L5はフェニレン基を表す。G1は酸素原子を表す。L6はフェニル基を表す。)
【0074】
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類、芳香族スルホン酸塩類、芳香族置換ポリオキシエチレンスルホン酸塩類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類およびアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0075】
本発明の処理液に用いられるアニオン性界面活性剤としては、スルホン酸又はスルホン酸塩を含有するアニオン系界面活性剤が特に好ましい。アニオン性界面活性剤は単独もしくは組み合わせて使用することができる。
【0076】
本発明において前記両性もしくはアニオン性界面活性剤の含有量は特に限定されないが、これを含む層(一例においては上層)の固形分の総量に対して、1質量%超20質量%未満であり、3〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。上記下限値以上とすることで、特にランニングかすの発生を効果的に抑制することができ好ましい。上記上限値以下とすることで、膜減り及び耐刷性を十分に確保することができ好ましい。上記特定のポリビニルアセタールとの関係でいうと、同様の観点から、その100質量部に対して、0.5〜18質量部あることが好ましく、1〜16質量部であることがより好ましい。上記下限値以上とすることで、特にランニングかすの発生を効果的に抑制することができ好ましい。
【0077】
・他の界面活性剤
特定現像液は、本発明の効果を損ねない範囲において、上記以外のノニオン系界面活性剤、カチオン系等を含有してもよい。
【0078】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、芳香族化合物のポリエチレングリコール付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤が、ノニオン芳香族エーテル系界面活性剤を含むことが好ましく、非解離性の置換基を有してもよいベンゼン、又はナフタレンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの付加物であることがより好ましい。この界面活性剤は、1種を単独使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0080】
ノニオン性界面活性やカチオン系剤を併用する場合にも、両性界面活性剤ないしアニオン性界面活性剤の含有量が最も多いことが好ましく、両性界面活性剤ないしアニオン性界面活性剤は界面活性剤総量の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
なお上記両性界面活性剤については、特開平4−13149、特開昭59−121044などを参照することができる。
【0081】
これらの他の界面活性剤の含有量は、記録層の固形分の総量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【0082】
<赤外線吸収剤>
本発明の平版印刷版原版は、その記録層に赤外線吸収剤を含む。赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収剤として知られる種々の染料を用いることができる。
本発明に用いることができる赤外線吸収剤としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち、赤外光又は近赤外光を少なくとも吸収するものが、赤外光又は近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で好ましく、シアニン染料が特に好ましい。
【0083】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。
【0084】
【化14】
【0085】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。X2は、酸素原子又は硫黄原子を示す。L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0086】
【化15】
【0087】
上記式中、Xa−は後述するZa−と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0088】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0089】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。
Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3及びR4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。
R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。但し、一般式(a)で示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0090】
好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
赤外線吸収剤として特に好ましくは、以下に示すシアニン染料Aである。
【0091】
【化16】
赤外線吸収剤を添加する際の添加量としては、全固形分に対し、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましく、1.0〜30質量%であることが特に好ましい。添加量が0.01質量%以上であると、高感度となり、また、50質量%以下であると、層の均一性が良好であり、層の耐久性に優れる。
【0092】
<他のアルカリ可溶性樹脂>
本発明において、「アルカリ可溶性」とは、pH8.5〜13.5(好ましくは8.5〜10.8、より好ましくは9.0〜10.0)のアルカリ水溶液に標準現像時間の処理で可溶であることを意味する。
記録層に用いられる他のアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものであれば特に制限はないが、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に、フェノール性水酸基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の酸性の官能基を有するものが好ましく、このような、アルカリ可溶性を付与する酸性の官能基を有するモノマーを10モル%以上含む樹脂が挙げられ、20モル%以上含む樹脂がより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分が10モル%以上であると、アルカリ可溶性が十分得られ、また、現像性に優れる。
また更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3−8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。また、その重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
【0093】
前記他のアルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が2,000以上、かつ数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000で、かつ数平均分子量が800〜250,000であることがより好ましい。また、前記他のアルカリ可溶性樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
記録層に所望により含まれる他のアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明における記録層の全固形分に対する他のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、0〜98質量%の添加量で用いてもよい。また、前記(A)星型ポリマー100質量部に対し、80質量部以下の割合で含みうる。
【0094】
<水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂>
本発明に係る記録層には、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂を含有することで、赤外線吸収剤とアルカリ可溶性樹脂が有する極性基との間に相互作用が形成され、ポジ型の感光性を有する層が形成される。上述したものを含めて言うと、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂等を好ましく挙げることができる。
本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものであれば特に制限はないが、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、又は、これらの混合物であることが好ましい。
このような酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有することが好ましい。したがって、このような樹脂は、上記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーを1つ以上含むモノマー混合物を共重合することによって好適に生成することができる。前記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸の他に、下式で表される化合物及びその混合物が好ましく例示できる。なお、下式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0095】
【化17】
【0096】
本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、上記重合性モノマーの他に、他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。この場合の共重合比としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有するモノマーのようなアルカリ可溶性を付与するモノマーを10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分が10モル%以上であると、アルカリ可溶性が十分得られ、また、現像性に優れる。
【0097】
使用可能な他の重合性モノマーとしては、下記に挙げる化合物を例示することができる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、等のアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート。2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2,6−ジエチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、等のマレイミド類。
これらの他のエチレン性不飽和モノマーのうち、好適に使用されるのは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルである。
【0098】
また、アルカリ可溶性樹脂としては、上述したようにノボラック樹脂が好ましく挙げられる。
【0099】
前記水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が2,000以上、かつ数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000で、かつ数平均分子量が800〜250,000であることがより好ましい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
本発明の画像記録材料の記録層におけるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明における記録層の全固形分中に対するアルカリ可溶性樹脂の含有量は、全固形分中、2.0〜99.5質量%であることが好ましく、10.0〜99.0質量%であることがより好ましく、20.0〜90.0質量%であることが更に好ましい。アルカリ可溶性樹脂の添加量が2.0質量%以上であると記録層(感光層)の耐久性に優れ、また、99.5質量%以下であると、感度、及び、耐久性の両方に優れる。
【0100】
<その他の添加剤>
(酸発生剤)
画像記録層には、感度向上の観点から、酸発生剤を含有することが好ましい。
本発明において酸発生剤とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。この酸発生剤から発生した酸が触媒として機能し、前記酸分解性基における化学結合が開裂して酸基となり、記録層のアルカリ水溶液に対する溶解性がより向上するものである。
【0101】
本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、US4,708,925号や特開平7−20629号に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号及び特開平1−102457号の各公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、米国特許第5,135,838号や米国特許第5,200,544号に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。さらに、特開平2−100054号、特開平2−100055号及び特願平8−9444号に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
さらに、前記特開平8−220752号公報において、「酸前駆体」として記載されている化合物、或いは、特開平9−171254号号公報において「(a)活性光線の照射により酸を発生し得る化合物」として記載されている化合物なども本発明の酸発生剤として適用しうる。
【0102】
なかでも、感度と安定性の観点から、酸発生剤としてオニウム塩化合物を用いることが好ましい。以下、オニウム塩化合物について説明する。
本発明において好適に用い得るオニウム塩化合物としては、赤外線露光、及び、露光により赤外線吸収剤から発生する熱エネルギーにより分解して酸を発生する化合物として知られる化合物を挙げることができる。本発明に好適なオニウム塩化合物としては、感度の観点から、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する、以下に述べるオニウム塩構造を有するものを挙げることができる。
本発明において好適に用いられるオニウム塩としては、公知のジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジニウム塩等が挙げられ、なかでも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムのスルホン酸塩、カルボン酸塩、BF4−、PF6−、ClO4−などが好ましい。
アジニウム塩化合物の具体例としては、特開2008−195018公報の段落番号〔0047〕〜〔0056〕に記載の化合物を挙げることができる。また、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群もまた、本発明における酸発生剤として好適に用いられる。
酸発生剤を記録層に添加する場合の、好ましい添加量は、記録層の全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜30質量%の範囲である。添加量が上記範囲において、酸発生剤添加の効果である感度の向上が見られるとともに、非画像部における残膜の発生が抑制される。
【0103】
(酸増殖剤)
本発明における記録層には、酸増殖剤を添加してもよい。
本発明における酸増殖剤とは、比較的に強い酸の残基で置換された化合物であって、酸触媒の存在下で容易に脱離して新たに酸を発生する化合物である。すなわち、酸触媒反応によって分解し,再び酸(以下、一般式でZOHと記す)を発生する。1反応で1つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に酸濃度が増加することにより、飛躍的に感度が向上する。この発生する酸の強度は,酸解離定数(pKa)として3以下であり、さらに2以下であることが好ましい。これよりも弱い酸であると,酸触媒による脱離反応を引き起こすことができない。
このような酸触媒に使用される酸としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルスルホン酸等が挙げられる。
【0104】
酸増殖剤は、WO95/29968号、WO98/24000号、特開平8−305262号、特開平9−34106号、特開平8−248561号、特表平8−503082号、米国特許第5,445,917号、特表平8−503081号、米国特許第5,534,393号、米国特許第5,395,736号、米国特許第5,741,630号、米国特許第5,334,489号、米国特許第5,582,956号、米国特許第5,578,424号、米国特許第5,453,345号、米国特許第5,445,917号、欧州特許第665,960号、欧州特許第757,628号、欧州特許第665,961号、米国特許第5,667,943号、特開平10−1598号等に記載の酸増殖剤を1種、或いは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0105】
酸増殖剤を記録層中に添加する場合の添加量としては、固形分換算で、0.01〜20質量%,好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の範囲である。酸増殖剤の添加量が上記範囲において、酸増殖剤を添加する効果が充分に得られ、感度向上が達成されるとともに、画像部の膜強度低下が抑制され、特定ポリウレタンに起因する優れた膜強度が維持される。
【0106】
(その他の添加剤)
前記記録層及び記録層を形成するにあたっては、上記の必須成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。
【0107】
(現像促進剤)
前記記録層には、感度を向上させる目的で、酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加してもよい。
酸無水物類としては環状酸無水物が好ましく、具体的に環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシテトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。非環状の酸無水物としては、無水酢酸などが挙げられる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、2,2’−ビスヒドロキシスルホン、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されており、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の酸無水物、フェノール類及び有機酸類の記録層の全固形分に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
【0108】
(その他の界面活性剤)
記録層には、塗布性を良化するため、また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、上記のほか、特開昭62−170950号公報、特開平11−288093号公報、特開2003−57820号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
その他の界面活性剤の記録層の全固形分に占める割合は、0.01〜15質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.05〜2.0質量%が更に好ましい。
【0109】
(焼出し剤/着色剤)
記録層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼出し剤及び着色剤としては、例えば、特開2009−229917号公報の段落番号〔0122〕〜〔0123〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物を本発明にも適用しうる。
これらの染料は、記録層の全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜3質量%の割合で添加することがより好ましい。
【0110】
(可塑剤)
記録層には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加してもよい。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
これらの可塑剤は、記録層の全固形分に対し、0.5〜10質量%の割合で添加することが好ましく、1.0〜5質量%の割合で添加することがより好ましい。
【0111】
(ワックス剤)
記録層には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6,117,913号明細書、特開2003−149799号公報、特開2003−302750号公報、又は、特開2004−12770号公報に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルを有する化合物などを挙げることができる。
添加量として好ましいのは、記録層中に占める割合が0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0112】
<記録層の形成>
本発明の平版印刷版原版における記録層は、通常、前記各成分を溶剤に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。
【0113】
記録層の塗布量としては、0.6〜4.0g/m2の範囲にあることが好ましく、0.7〜2.5g/m2の範囲にあることがより好ましい。0.6g/m2以上であると、耐刷性に優れ、4.0g/m2以下であると、画像再現性及び感度に優れる。
【0114】
<支持体>
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸度安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート又は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であることが好ましい。
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.15〜0.4mmであることがより好ましく、0.2〜0.3mmであることが特に好ましい。
【0115】
このようなアルミニウム板には、必要に応じて粗面化処理、陽極酸化処理などの表面処理を行ってもよい。アルミニウム支持体の表面処理については、例えば、特開2009−175195号公報の〔0167〕〜〔0169〕に詳細に記載されるような、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理、表面の粗面化処理、陽極酸化処理などが適宜、施される。
陽極酸化処理を施されたアルミニウム表面は、必要により親水化処理が施される。
親水化処理としては、2009−175195号公報の〔0169〕に開示されている如き、アルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法、フッ化ジルコン酸カリウム或いは、ポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0116】
<下塗層>
本発明においては、必要に応じて支持体と記録層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン等のアミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、並びに、ヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。また、これら下塗層成分は、1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。下塗層に使用される化合物の詳細、下塗層の形成方法は、特開2009−175195号公報の段落番号〔0171〕〜〔0172〕に記載され、これらの記載は本発明にも適用される。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2であることが好ましく、5〜100mg/m2であることがより好ましい。被覆量が上記範囲であると、十分な耐刷性能が得られる。
【0117】
<バックコート層>
本発明の平版印刷版原版の支持体裏面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
上記のようにして作製された平版印刷版原版は、画像様に露光され、その後、現像処理を施される。
【0118】
<平版印刷版の製版方法>
本発明の平版印刷版の作製方法は、前記本発明の赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を赤外線により画像様に露光する露光工程と、pH11.0〜13.5(好ましくは12.0〜13.5、より好ましくは12.5〜13.5)のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含むことを特徴とする。
本発明の平版印刷版の作製方法によれば、焼きだめ性が良好となり、得られた平版印刷版は、非画像部の残膜に起因する汚れの発生がなく、画像部の強度、耐久性に優れる。
以下、本発明の製版方法の各工程について詳細に説明する。
【0119】
<露光工程>
本発明の平版印刷版の製版方法は、本発明の赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を画像様に露光する露光工程を含む。
本発明の平版印刷版原版の画像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザがより好ましい。中でも、本発明においては、波長750〜1,400nmの赤外線を放射する固体レーザ又は半導体レーザにより画像露光されることが特に好ましい。
レーザの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。
平版印刷版原版に照射されるエネルギーは、10〜300mJ/cm2であることが好
ましい。上記範囲であると、硬化が十分に進行し、また、レーザーアブレーションを抑制し、画像が損傷を防ぐことができる。
【0120】
本発明における露光は、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは、副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表したとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が、0.1以上であることが好ましい。
【0121】
本発明に使用することができる露光装置の光源の走査方式は、特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0122】
<現像工程>
・現像液
本発明の平版印刷版の製版方法はアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程を含む。現像工程に使用されるアルカリ水溶液(以下、「現像液」ともいう。)は、pH11.0〜13.5(好ましくは12.0〜13.5、より好ましくは12.5〜13.5)のアルカリ水溶液である。なお、ここでのpHは室温(20℃)においてHORIBA社製、F−51(商品名)で測定した値で定義する。
【0123】
本発明においては、高いpHの現像液を用いたとしても、前記特定の界面活性剤を特定の高分子化合物と組み合わせて感光層中に適用したため、高安定処理性を実現することができる。
これについてより具体的にいうと、自動現像機(自現機)は電導度にてアルカリ濃度を制御するが、アルカリ濃度を一定に保持すると、ポリウレタンバインダーの現像に必須な界面活性剤濃度が次第に増えていったり/減っていったりしてしまう。つまり現像処理の安定性に欠ける。
これに対し本発明では、あらかじめ、平版印刷版原版の画像記録層の中に界面活性剤を仕込んでおり、アルカリ濃度のみで現像液を管理しても界面活性剤の濃度は初期から一定で保持されるという利点を有する。
【0124】
前記現像液のアルカリ性を呈する成分としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらの炭酸塩を用いることができる。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
また、前記現像液は、界面活性剤を含むことが好ましく、アニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を少なくとも含むことがより好ましい。界面活性剤は処理性の向上に寄与する。界面活性剤は平版印刷版原版の画像記録層に含まれる界面活性剤と同一のものが好ましい。このような組合せとすることにより、画像記録層の界面活性剤と現像液の界面活性剤とが相互に作用して、一層良好な現像性および安定性の実現に寄与する。
前記現像液に用いられる界面活性剤は、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、及び、両性の界面活性剤のいずれも用いることができるが、既述のように、アニオン性、両性(ベタイン性)の界面活性剤が好ましい。
本発明の現像液に用いられるアニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0126】
本発明の現像液に用いられるノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。この中でも、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するものが好ましく、アルキル置換又は無置換のフェノールエチレンオキサイド付加物又は、アルキル置換又は無置換のナフトールエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
本発明の現像液に用いられる両性界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型等が挙げられる。
【0127】
前記現像液に用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が好ましく、スルホン酸又はスルホン酸塩を含有するアニオン性界面活性剤が特に好ましい。
界面活性剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【0128】
前記現像液を好適なpHに保つためには、緩衝剤として炭酸イオン、炭酸水素イオンが存在することで、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。炭酸イオン、炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
現像液のpHは、現像可能であれば特に限定されないが、pH8.5〜10.8の範囲であることが好ましい。
【0129】
炭酸塩及び炭酸水素塩の総量は、現像液の全質量に対して、0.3〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。総量が0.3質量%以上であると現像性、処理能力が低下せず、20質量%以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
【0130】
その他、この種の現像液に適用されるもとして、適宜、有機アルカリ剤、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、極性溶剤、無機酸、無機塩等を適用してもよい。
【0131】
・現像処理
現像の温度は、現像可能であれば特に制限はないが、60℃以下であることが好ましく、15〜40℃であることがより好ましい。自動現像機を用いる現像処理においては、処理量に応じて現像液が疲労してくることがあるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。現像及び現像後の処理の一例としては、アルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する方法が例示できる。また、他の例としては、炭酸イオン、炭酸水素イオン及び界面活性剤を含有する水溶液を用いることにより、前水洗、現像及びガム引きを同時に行う方法が好ましく例示できる。よって、前水洗工程は特に行わなくともよく、一液を用いるだけで、更には一浴で前水洗、現像及びガム引きを行ったのち、乾燥工程を行うことが好ましい。現像の後は、スクイズローラ等を用いて余剰の現像液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
【0132】
現像工程は、擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像露光後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号公報、特開昭60−59351号公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像露光後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。中でも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
【0133】
現像工程の後、連続的又は不連続的に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥は熱風、赤外線、遠赤外線等によって行う。
本発明の平版印刷版の作製方法において好適に用いられる自動処理機としては、現像部と乾燥部とを有する装置が用いられ、平版印刷版原版に対して、現像槽で、現像とガム引きとが行なわれ、その後、乾燥部で乾燥されて平版印刷版が得られる。
【0134】
また、耐刷性等の向上を目的として、現像後の印刷版を非常に強い条件で加熱することもできる。加熱温度は、通常200〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる恐れがある。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に好適に用いられる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0136】
[合成例1]
ポリマーAは下記の手順を用いて調製した:
水冷コンデンサー、滴下漏斗および温度計を備え、DMSO(200g)を含む反応容器にBF−03(50g)を加えた。連続撹拌しながら、混合物が透明溶液になるまで混合物を80℃で30分間加熱した。次に、温度を60℃に調節し、DMSO(50g)中のMSA(2.7g)を加えた。15分間かけて、ブチルアルデヒド(10.4g)の溶液を反応混合物に加え、反応混合物を55〜60℃に1時間保った。次に、DMSO(100g)中の2−ヒドロキシベンズアルデヒド(サリチル酸アルデヒド、39g)を反応混合物に加えた。次に、反応混合物をアニソール(350g)により希釈し、真空蒸留を開始した。反応混合物からアニソール:水共沸混合物を留去した(溶液中の残った水は0.1%未満)。反応混合物を室温に冷却し、DMSO(30g)中に溶解したTEA(8g)により中和し、次に6kgの水とブレンドした。その結果析出したポリマーを水で洗浄し、濾過し、50℃で真空中で24時間乾燥させ、80gの乾燥したポリマーAを得た。
【0137】
・BF−03は、Chang Chun Petrochemical Co.,Ltd.(台湾)から入手したポリ(ビニルアルコール)、98%加水分解(Mw=15,000)を表す。
・MSAはメタノールスルホン酸(99%)を表す。
・DMSOはジメチルスルホキシドを表す。
・TEAはトリエタノールアミンを表す。
【0138】
[実施例1、比較例1]
実施例および比較例の感光性組成物を以下のように製造した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ポリマーA 7.22g
クリスタル・バイオレット 0.20g
S 0094IR色素 0.16g
表1記載の界面活性剤 表1に記載した量
PM(1−メトキシ−2−プロパノール) 91.8g
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0139】
各配合物を濾過し、電気化学的に粗面化され陽極参加処理されたアルミニウム基材であってポリ(ビニルホスホン酸)の水溶液による処理にかけられたアルミニウム基材に通常の方法により適用し、得られた画像形成性層コーティングをGlunz&Jensenの「Unigraph Quartz」オーブン内で105℃で2.5時間乾燥させた。各画像形成性層の乾燥被覆量は約1.5g/m2 であった。
【0140】
得られた平版印刷版原版について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0141】
<ランニングかすの評価>
前記の現像開始液電導度値40mS/cmと平衡電導度値45mS/cmを自動現像機の制御部にインプットした
前記自動現像機で、1日当たり平均50枚で1ヶ月間、前記ランニング用プレートを処理した。この間、露光は、Creo社製Trendsetter(商品名)にて、ビーム強度9w、ドラム回転速度150rpmで全面を露光しておこなった。
1ヶ月後に、現像タンクから現像液を抜いて状況を目視で観察したところ、現像カスは見られなかった。
AA:現像タンクから現像液を抜き目視で確認して現像カスがまったくない、または
ほとんどない状態
B :現像タンクから現像液を抜き目視で確認して現像カスが容易に認められるレベル
C :現像タンクから現像液を抜かずとも通版すると版に現像カスが付着するレベル
【0142】
<膜減りの評価>
画像部の現像による膜減りの評価
未露光の平版印刷版原版をその後、富士フイルム(株)製自動現像機LP−940Hに、富士フイルム(株)製現像液DT−2(1:8で希釈したもの)及び富士フイルム(株)製フィニッシャーFG−1(1:1で希釈したもの)を仕込み、現像液温度32℃、現像時間12秒で現像処理した。この時の現像液の電導度は43mS/cmであった。
現像前後の感光層の光学濃度を測定し、現像前の濃度からアルミ支持体だけの濃度を差し引いたものを100%としたときの相対濃度を現像膜減りとして表した。
AA:90%以上
A :85%以上90%未満
B :80%以上85%未満
C :80%未満
【0143】
<耐刷性の評価>
平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter(商品名)にて、ビーム強度9w、ドラム回転速度150rpmで、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、富士フイルム(株)製現像液DT−2(商品名)(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサーLP940H(商品名)を用い、現像温度30℃、現像時間12秒で現像を行った。これを、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロン(商品名)を用いて連続して印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。なお、耐刷性は、比較例1の耐刷数を1.0とした際の相対値として示した。テストパターンとしては、2cm×2cmのベタ画像(全面画像部)を用いた。印刷物の目視評価により、印刷部にカスレやヌケが発生した枚数を刷了枚数とした。このとき、「1.0」は4万枚であった。
AA:90%以上
A :85%以上90%未満
B :80%以上85%未満
C :80%未満
<廃液濃縮適性評価>
ランニングを行った後の現像廃液20Lを富士フイルムグラフィックシステムズ株式会社製廃液削減装置XR−2000を使用して、消泡剤に富士フイルム株式会社製AF−Aを水で3%に希釈したものを使用して、濃縮を行った。
濃縮率と蒸留再生水のBOD値より評価した。
AA:濃縮率4倍以上、かつ、BOD値300mg/L未満
A :濃縮率3倍以上4倍未満、かつ、BOD値300mg/L未満
B :濃縮率2倍以上3倍未満、かつ、BOD値300mg/L未満
C :濃縮率1倍以上2倍未満、かつ、BOD値300mg/L未満
D :濃縮率1倍以上2倍未満、かつ、BOD値300mg/L以上
【0144】
(現像液)
・D―ソルビット 2.5 質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5 質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 96.15質量%
【0145】
【表1】
*1:界面活性剤を含む記録層の固形分総和に対する含有率である。以下の表についても同じ。
・ソフタゾリンLPB−R:商品名、アミドベタイン型の両性界面活性剤、
川研ファインケミカル株式会社製
・ソフタゾリンLAO:商品名、アミドアミンオキシド型両性界面活性剤、
川研ファインケミカル株式会社製
・ニューコールB4SN:商品名、アニオエン性界面活性剤、
日本乳化剤株式会社製
R−O−(CH2CH2O)n−SO3Na (R:アリール基、n:整数)
・ペレックスNBL:商品名、アニオン性界面活性剤、花王株式会社製
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、
*2:cから始まる番号の試験例は比較例を意味する。以下の実施例・比較例についても同様である。
【0146】
[実施例2、比較例2]
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を経て処理することで支持体を作製した。
【0147】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0148】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0149】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0150】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0151】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0152】
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0153】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0154】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0155】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0156】
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い支持体を作製した。
上記によって得られた支持体には、引き続き下記の親水処理、及び下塗り処理を行った。
【0157】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸漬することでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.6mg/m2であった。
【0158】
〔下塗り処理〕
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下
記組成の下塗り液を塗布して、80℃で15秒間乾燥することにより下塗層を形成した。
乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
【0159】
(下塗層用塗布液)
・下記高分子化合物(下記式(I)) 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0160】
【化18】
【0161】
(記録層の形成)
次に、上記で得られた下塗層付き支持体に、下記組成の下層用塗布液Aを、ワイヤーバーで塗布したのち、140℃の乾燥オーブンで50秒間乾燥して塗布量を0.85g/m2とした。
得られた下層付き支持体に、下記組成の上層用塗布液Bをワイヤーバーで塗布した。塗布後140℃60秒間の乾燥を行い、総塗布量を1.1g/m2として実施例及び比較例のポジ型平版印刷版原版を得た。
【0162】
<下層用塗布液A>
・ポリマーA 2.13g
・表2に示す界面活性剤 (表2に記載量)
・前記シアニン染料A 0.134g
・ビス−p−ヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.19g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)
ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・エチルバイオレット6−ナフタレンスルホン酸 0.078g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.023g
・γ−ブチロラクトン 13.16g
・メチルエチルケトン 25.39g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.95g
【0163】
<上層用塗布液B>
・m−クレゾール/p−クレゾール(60/40)ノボラック
(重量平均分子量4000) 0.341g
・前記シアニン染料A 0.019g
・下記構造ポリマー1/MEK30%溶液(下記構造) 0.14g
・4級アンモニウム塩(下記構造) 0.004g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.004g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−781、大日本インキ化学工業(株)製) 0.001g
・メチルエチルケトン 2.63g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.27g
【0164】
【化19】
【0165】
【化20】
【0166】
得られた平版印刷版原版について以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0167】
(現像液)
・D―ソルビット 2.5質量%
・ソフタゾリンLAO(30%溶液) 12質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 84.15質量%
【0168】
【表2】
*1、*2は表1と同義である。
【0169】
[実施例3、比較例3]
使用するアセタール樹脂をポリマーAからポリマーB〜Iにそれぞれ変更した以外、実施例2と同様にして、ランニングかす、膜減り、耐刷性について評価を行った。その結果を表3に示す。
【0170】
ポリマーB〜Iの詳細は以下の通りである。
【0171】
【化21】
【0172】
・ポリマーB:(a/b/c/d/e=36/37/2/25/0;重量平均分子量:16000)
R1=n−ブチル基 R2=4−ヒドロキシベンジル基
・ポリマーC:(a/b/c/d/e=12/49/17/22/0;重量平均分子量:14000)
R1=n−ブチル基 R2=3−ヒドロキシベンジル基
・ポリマーD:(a/b/c/d/e=30/41/2/20/9;重量平均分子量:18000)
R1=n−ブチル基 R2=2−ヒドロキシベンジル基 R6=グリオキシル酸基
・ポリマーE:(a/b/c/d/e=21/43/2/24/10;重量平均分子量:16000)
R1=n−ブチル基 R2=3−ヒドロキシベンジル基 R6=プロパルギル基
・ポリマーF:(a/b/c/d/e=38/42/2/18/0;重量平均分子量:18000)
R1=n−ブチル基 R2=2−ヒドロキシベンジル基
・ポリマーG:(a/b/c/d/e=25/38/12/26/0;重量平均分子量:16000)
R1=n−ブチル基 R2=4−ヒドロキシベンジル基
・ポリマーH:(a/b/c/d/e=16/10/12/44/18;重量平均分子量:18000)
R1=n−イソバレル基 R2=2−ヒドロキシベンジル基 R6=4−ホルミルフェノキシ酢酸基
・ポリマーI:(a/b/c/d/e=14/44/2/40/0;重量平均分子量:16000)
R1=n−ブチル基 R2=3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシベンジル基
【0173】
得られた平版印刷版原版について以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0174】
(現像液)
・D―ソルビット 2.5質量%
・ソフタゾリンLAO(30%溶液) 12質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 84.15質量%
【0175】
【表3】
*1、*2は表1と同義である。
【0176】
[実施例4、比較例4]
(記録層の形成)
次に、前記実施例で得られた下塗層付き支持体に、下記組成の下層用塗布液aを、ワイヤーバーで塗布したのち、140℃ の乾燥オーブンで50秒間乾燥して塗布量を0.85G/M2とした。
得られた下層付き支持体に、下記組成の上層用塗布液b をワイヤーバーで塗布した。塗布後140℃60秒間の乾燥を行い、総塗布量を1.1G/M2として実施例及び比較例のポジ型平版印刷版原版を得た。
【0177】
<下層用塗布液A>
・ポリマーA 2.13g
・表4に示す界面活性剤 (表4に記載量)
・前記シアニン染料A 0.134g
・ビス−p−ヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.19g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)
ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・エチルバイオレット6−ナフタレンスルホン酸 0.078g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.023g
・γ−ブチロラクトン 13.16g
・メチルエチルケトン 25.39g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.95g
【0178】
<上層用塗布液B>
・m−クレゾール/p−クレゾール(60/40)ノボラック
(重量平均分子量4000) 0.341g
・表4に示す界面活性剤 (表4に記載量)
・前記シアニン染料A 0.019g
・ポリマー1/MEK30%溶液(上記構造) 0.14g
・4級アンモニウム塩(前記構造) 0.004g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.004g
・フッ素系界面活性剤
(メガファックF−781、大日本インキ化学工業(株)製) 0.001g
・メチルエチルケトン 2.63g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.27g
【0179】
得られた平版印刷版原版について以下の評価を行った。結果を表4に示す。
【0180】
(現像液)
・d―ソルビット 2.5質量%
・ソフタゾリンlao(30%溶液) 12質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 84.15質量%
【0181】
【表4】
*1は表1と同義である。
【0182】
[実施例5、比較例5]
(基板)
アルミニウムシートの表面を2%の塩酸にて電解粗面化処理を行った。平均粗さRaは0.5μmであった。更に20%硫酸水溶液中で陽極酸化処理を行い、酸化皮膜量を2.7g/m2とした。その後、ケイ酸ナトリウム2.5重量%水溶液に70℃で30分間浸漬して、水洗後、乾燥した。
【0183】
(画像記録層)
上記のようにして得られた基板に下記に示す下層の被覆溶液1をバーコーターにて被覆重量が1.5g/m2となるように塗布し、130℃で40秒間乾燥した後に35℃まで冷却した。更に、下記に示す上層の被覆溶液をバーコーターにて被覆重量が0.5g/m2となるように塗布し、135℃で40秒間乾燥後、ゆっくりと20から26℃まで冷却した。こうして、平版印刷版原版を得た。
【0184】
<下層用塗布液>
・N−フェニルマレイミド/メタクリル酸/メタクリルアミド共重合体
(重量比59・15・25、Mw 50000) 5.21g
・前記シアニン染料A 0.94g
・クリスタルバイオレット 0.08g
・BYK307(BYK Chemie製) 0.03g
・メチルエチルケトン 61.0g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 14.0g
・γ−ブチロラクトン 9.40g
・水 9.34g
【0185】
<上層用塗布液>
・ポリマーA 7.5g
・表5 に示す界面活性剤 (表5に記載量)
・エチルバイオレット 0.03g
・クリスタルバイオレット 0.08g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176、大日本インキ化学工業(株)製)
0.05g
・3−ペンタノン 62.50g
・プロピレングリコール1―モノメチルエーテル2−アセテート 29.92g
【0186】
得られた平版印刷版原版について以下の評価を行った。結果を表5に示す。
【0187】
(現像液)
・D―ソルビット 2.5質量%
・ニューコールB4SN(60%溶液) 7質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 89.15質量%
【0188】
【表5】
*1、*2は表1と同義である。
【0189】
以上から明らかなように、本発明の平版印刷版原版においては、比較例のものに比し、ランニングかすが大幅に改善され、膜減りもなく十分な性能を有し、しかも高い耐刷性を示した。この結果より、本発明の両性界面活性剤もしくはアニオン性界面活性剤を含有する記録層をもつ平版印刷版原版は、高い耐刷性とともに、良好な現像性を実現することが分かる。
【符号の説明】
【0190】
1 画像記録層
3 下塗り層
4 支持体
10 平版印刷版原版
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性表面を有する支持体上側に、画像記録層を有してなる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版であって、前記画像記録層が、ポリ(ビニルアセタール)と、両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤と、赤外線吸収剤とを含有することを特徴とする平版印刷版原版。
【請求項2】
親水性表面を有する支持体上側に、下層及び上層をこの順に配設した画像記録層を有してなる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版であって、前記上層および/または下層が、ポリ(ビニルアセタール)と、両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤と、赤外線吸収剤とを、同じ層に、あるいはそれぞれ別々に層に含有することを特徴とする、請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記両性界面活性剤が下記一般式(I)〜(III)のいずれかで表わされるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版原版。
【化1】
(一般式(I)〜(III)中、R1は炭素数6〜24のアルキル基もしくは特定の連結基を介するアルキル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。R4、R5はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。ただし、R4及びR5の少なくとも一方は末端に酸性基もしくはその塩を有する。L1は炭素数1〜4の連結基を表す。X−はカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、ホスホン酸イオン、またはリン酸イオンを表す。)
【請求項4】
前記アニオン性界面活性剤が下記一般式(IV)〜(VII)のいずれか表わされるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版原版。
【化2】
(一般式(IV)〜(VII)中、R6、R9は炭素数6〜24のアルキル基を表す。L2はフェニレン基又は単結合を表す。D1、E1、F1はスルホン酸イオンもしくはその塩、または硫酸イオンもしくはその塩を表す。R7は炭素数4〜18のアルキル基を表す。L3はフェニレン基またはナフチレン基を表す。R8はフェニル基またはナフチル基を表す。L4はポリアルキレンオキシ基を表す。L5はそれぞれ独立にフェニレン基を表す。G1は酸素原子を表す。L6はフェニル基を表す。)
【請求項5】
前記ポリ(ビニルアセタール)の繰り返し単位が、下記一般式(a)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【化3】
(ここで、RおよびR’は独立に水素またはアルキルもしくはハロゲン原子であり、Rxはフェノール、ナフトールもしくはアントラセノール基である。)
【請求項6】
前記ポリ(ビニルアセタール)の繰り返し単位が、下記一般式(b)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【化4】
(ここで、RおよびR’は独立に水素またはアルキルもしくはハロゲン原子である。Ryは、下記R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のいずれかを表し、一般式(a)で表される樹脂が上記異なるRyの一種以上の繰り返し単位を含む共重合体である。
R1はアルキル基、シクロアルキル基、またはフェノールもしくはナフトール以外のアリール基であり、
R2は前記Rxと同義であり、
R3は炭素数2〜6のアルキニル基又はフェニル基である。)
【請求項7】
前記界面活性剤を、前記ポリ(ビニルアセタール)100質量部に対して1〜20質量部含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の平版印刷版原版の画像記録層を画像露光する露光工程、アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
【請求項9】
前記アルカリ水溶液がアニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤または両性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項8に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項10】
前記平版印刷版に含まれる両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤が、前記アルカリ水溶液に含まれる界面活性剤と同一であることを特徴とする請求項8に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項1】
親水性表面を有する支持体上側に、画像記録層を有してなる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版であって、前記画像記録層が、ポリ(ビニルアセタール)と、両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤と、赤外線吸収剤とを含有することを特徴とする平版印刷版原版。
【請求項2】
親水性表面を有する支持体上側に、下層及び上層をこの順に配設した画像記録層を有してなる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版であって、前記上層および/または下層が、ポリ(ビニルアセタール)と、両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤と、赤外線吸収剤とを、同じ層に、あるいはそれぞれ別々に層に含有することを特徴とする、請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記両性界面活性剤が下記一般式(I)〜(III)のいずれかで表わされるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版原版。
【化1】
(一般式(I)〜(III)中、R1は炭素数6〜24のアルキル基もしくは特定の連結基を介するアルキル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。R4、R5はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。ただし、R4及びR5の少なくとも一方は末端に酸性基もしくはその塩を有する。L1は炭素数1〜4の連結基を表す。X−はカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、ホスホン酸イオン、またはリン酸イオンを表す。)
【請求項4】
前記アニオン性界面活性剤が下記一般式(IV)〜(VII)のいずれか表わされるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版原版。
【化2】
(一般式(IV)〜(VII)中、R6、R9は炭素数6〜24のアルキル基を表す。L2はフェニレン基又は単結合を表す。D1、E1、F1はスルホン酸イオンもしくはその塩、または硫酸イオンもしくはその塩を表す。R7は炭素数4〜18のアルキル基を表す。L3はフェニレン基またはナフチレン基を表す。R8はフェニル基またはナフチル基を表す。L4はポリアルキレンオキシ基を表す。L5はそれぞれ独立にフェニレン基を表す。G1は酸素原子を表す。L6はフェニル基を表す。)
【請求項5】
前記ポリ(ビニルアセタール)の繰り返し単位が、下記一般式(a)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【化3】
(ここで、RおよびR’は独立に水素またはアルキルもしくはハロゲン原子であり、Rxはフェノール、ナフトールもしくはアントラセノール基である。)
【請求項6】
前記ポリ(ビニルアセタール)の繰り返し単位が、下記一般式(b)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【化4】
(ここで、RおよびR’は独立に水素またはアルキルもしくはハロゲン原子である。Ryは、下記R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のいずれかを表し、一般式(a)で表される樹脂が上記異なるRyの一種以上の繰り返し単位を含む共重合体である。
R1はアルキル基、シクロアルキル基、またはフェノールもしくはナフトール以外のアリール基であり、
R2は前記Rxと同義であり、
R3は炭素数2〜6のアルキニル基又はフェニル基である。)
【請求項7】
前記界面活性剤を、前記ポリ(ビニルアセタール)100質量部に対して1〜20質量部含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の平版印刷版原版の画像記録層を画像露光する露光工程、アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
【請求項9】
前記アルカリ水溶液がアニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤または両性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項8に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項10】
前記平版印刷版に含まれる両性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤が、前記アルカリ水溶液に含まれる界面活性剤と同一であることを特徴とする請求項8に記載の平版印刷版の作製方法。
【図1】
【公開番号】特開2012−215832(P2012−215832A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−18134(P2012−18134)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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