説明

平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法

【課題】現像スピードを低下させることなく、現像カスの発生が抑制され、耐汚れ性及び着肉性に優れた平版印刷版を与える平版印刷版原版及びそれを用いる平版印刷版の作製方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、感光層及び保護層をこの順に有する平版印刷版原版であって、前記感光層が増感色素、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有し、前記保護層が下記一般式(1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーであって、且つ、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位の合計が当該ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリマーを含有する平版印刷版原版。


一般式(1)及び一般式(2)中、R及びRは各々水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一でも異なってもよく、各々水素原子、メチル基又はエチル基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版及びそれを用いる平版印刷版の作製方法に関する。特に、現像スピードを低下させることなく、現像カスの発生が抑制され、耐汚れ性及び着肉性に優れた平版印刷版を提供する平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と印刷インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(感光層、画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液または有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が注目されてきている。従って、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の一つとなっている。
【0004】
また、従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、不要な画像記録層を現像液などによって溶解除去する工程が必要であるが、環境および安全上、より中性域に近い現像液での処理や少ない廃液が課題として挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっており、上記課題の解決の要請は一層強くなってきている。
【0005】
このように、現像液の低アルカリ化、処理工程の簡素化は、地球環境への配慮と省スペース、低ランニングコストへの適合化との両面から、従来にも増して強く望まれるようになってきている。しかし前述のように、従来の現像処理工程はpH11以上の高アルカリ水溶液で現像した後、水洗浴にてアルカリ剤を流し、その後、親水性樹脂を主とするガム液で処理するという3つの工程からなっており、そのため自動現像処理機自体も大きくスペースを取ってしまい、さらに現像廃液、水洗廃液、ガム廃液処理の問題等、環境およびランニングコスト面での課題を残している。
【0006】
従来の高アルカリ現像液で現像処理する場合、非画像部の感光層の除去は、主として、感光層に含まれるバインダーポリマーが高アルカリ現像液に溶解することにより行われる。これに対して、例えばpH10以下の低アルカリ現像液を用いて現像処理を行う場合、非画像部の感光層の除去は、主として、感光層に含まれるバインダーポリマーが低アルカリ現像液に分散することにより行われる。従って、たとえば、現像処理が長期間に及ぶと、現像液中における除去された感光層成分の増大に伴い、析出物(現像カス)が発生する。このような現像カスは、自動現像処理機の現像槽などの部位に付着するのみならず、現像処理後の平版印刷版に付着し、印刷物に汚れを生じる原因ともなる。
【0007】
このような問題を解決するため、特許文献1には、画像露光された平版印刷版原版を搬送方向に複数のガム処理部を有するガム処理装置を用いて、現像及びガム引きを単一処理で行う方法が提案されている。しかしながら、この方法によっても、長期にわたり処理を続けた場合、最終ガム処理部に発生する現像カスに起因する問題が存在する。
【0008】
更に、感光層の上に保護層を有する平版印刷版原版においては、保護層の除去も行う必要がある。保護層の除去は、現像処理に先立って別途水洗処理により行うことも可能であるが、処理工程の簡素化、省スペース化を考慮すると、保護層も現像処理工程において除去されることが望ましい。従って、保護層成分に起因する現像カスの問題を解決する必要がある。
保護層に用いられるポリマーに関して、例えば、特許文献2には、無機質層状化合物と共にリン酸基もしくはリン酸モノエステル基を有する特定の化合物またはリン酸基もしくはホスホン酸基を有する親水性樹脂を含有するオーバーコート層を有する機上現像型の平版印刷版原版が記載されている。また、特許文献3には、ケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコールと、特定量の雲母化合物と、水溶性(メタ)アクリル酸又はそのエステルを含む共重合体ポリマーを含有する保護層を有する平版印刷版原版が記載されている。更に、特許文献4には、層状化合物と共に側鎖に長鎖のエチレンオキシド鎖あるいはプロピレンオキシド鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル系の特定ポリマーを含有する保護層を有する平版印刷版原版が記載されている。
しかしながら、これらのポリマーを含有する保護層は、現像スピードを低下させることなく、現像カスの発生が抑制され、耐汚れ性及び着肉性に優れた平版印刷版を提供するには十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第07/057349号
【特許文献2】特開2007−90564号公報
【特許文献3】特開2007−256685号公報
【特許文献4】特開2009−56717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、現像スピードを低下させることなく、現像カスの発生が抑制され、耐汚れ性及び着肉性に優れた平版印刷版を与える平版印刷版原版を提供することである。また、他の目的は、かかる平版印刷版原版を用いる平版印刷版の作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定構造のポリマーを保護層に含有させることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0012】
(1)支持体上に、感光層及び保護層をこの順に有する平版印刷版原版であって、前記感光層が増感色素、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有し、前記保護層が下記一般式(1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーであって、且つ、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位の合計が当該ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリマーを含有する平版印刷版原版。
【0013】
【化1】

【0014】
一般式(1)及び一般式(2)中、R及びRは各々水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一でも異なってもよく、各々水素原子、メチル基又はエチル基を表す。
は炭素数1から8の無置換アルキル基又は芳香族基もしくは複素環基で置換されたアルキル基を表す。
【0015】
(2)前記バインダーポリマーがポリビニルブチラール樹脂である上記(1)に記載の平版印刷版原版。
(3)前記保護層が無機層状化合物を含有する上記(1)又は(2)に記載の平版印刷版原版。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像露光及び現像処理する平版印刷版の作製方法。
(5)前記現像処理を、pH2.0〜10.0の現像液で行う上記(4)に記載の平版印刷版の作製方法。
【0016】
(6)前記現像処理後、水洗処理を含まない上記(4)又は(5)に記載の平版印刷版の作製方法。
(7)前記現像処理が複数段階からなる上記(4)〜(6)のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
(8)前記現像処理が1段階からなる上記(4)〜(6)のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
(9)前記現像処理に用いる現像液が2種以上界面活性剤を含有する上記(4)〜(8)のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、現像スピードを低下させることなく、現像カスの発生が抑制され、耐汚れ性及び着肉性に優れた平版印刷版を与える平版印刷版原版を提供することができる。また、かかる平版印刷版原版を用いて複数段階からなる現像処理を行うことにより、現像スピードを低下させることなく、現像カスの発生が抑制され、耐汚れ性及び着肉性に優れた平版印刷版を提供することができる。更に、単一段階からなる現像処理によっても、現像スピードを低下させることなく、現像カスの発生が抑制され、耐汚れ性及び着肉性に優れた平版印刷版を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の平版印刷版原版の現像装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の平版印刷版原版の現像装置の他の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[平版印刷版原版]
本発明に係る平版印刷版原版は、支持体上に、感光層及び保護層をこの順に有する。必要により、支持体と感光層の間に、下塗り層(中間層)を有していてもよい。以下に、平版印刷版原版の構成を順次説明する。
【0020】
〔保護層〕
本発明の平版印刷版原版においては、露光時の重合反応を妨害する酸素の拡散侵入を遮断するため、感光層上に保護層(酸素遮断層)が設けられている。本発明に係る保護層は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーであって、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位の合計がポリマーを構成する全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリマー(以下、特定ポリマーとも称する)を含有することを特徴とする。
【0021】
【化2】

【0022】
一般式(1)及び一般式(2)中、R及びRは各々水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一でも異なってもよく、各々水素原子、メチル基又はエチル基を表す。Rは炭素数1から8の無置換アルキル基又は芳香族基もしくは複素環基で置換されたアルキル基を表す。
【0023】
アルキル基における芳香族基の炭素数は、6から10が好ましく、6から8がより好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ヒドロキシル基、脂肪族基などが挙げられる。芳香族基の例としては、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられる。
複素環基は、複素環として5員環または6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ヒドロキシル基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基などが挙げられる。複素環基の例としては、例えば、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環(例えば、ナフト〔2,1−d〕チアゾール環、ナフト〔1,2−d〕チアゾール環等)、チオナフテン〔7,6−d〕環、ベンゾオキサゾール環、ナフトオキサゾール環(例えば、ナフト〔2,1−d〕オキサゾール環等)、セレナゾール環、べンゾセレナゾール環、ナフトセレナゾール環(例えば、ナフト〔2,1−d〕セレナゾール環、ナフト〔1,2−d〕セレナゾール環等)、オキサゾリン環、セレナゾリン環、チアゾリン環、ピリジン環、キノリン環(例えば、2−キノリン環、4−キノリン環、ベンゾ〔t〕キノリン環等)、イソキノリン環(例えば、1−イソキノリン環、3−イソキノリン環、ベンゾイソキノリン環、)アクリジン環、3,3−ジアルキルインドレニン環、3,3−ジアルキルベンゾインドレニン環、3,3−ジアルキル〔1,7〕ジアゾ−2−インデン環、ペンゾイミダゾール環、ナフトラクタム環等から誘導される基が挙げられる。
一般式(1)及び一般式(2)において、R及びRは共に水素原子であることが好ましく、また、Rは炭素数1から8の無置換アルキル基が好ましく、特にtert−ブチル基が好ましい。
【0024】
一般式(1)で表わされる繰り返し単位を構成するモノマーの具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−エチルメチルアクリルアミド、N,N−エチルメチルメタクリルアミドが挙げられる。
【0025】
一般式(2)で表わされる繰り返し単位を構成するモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デカニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0026】
本発明に係る特定ポリマーは、必要に応じて、一般式(1)で表わされる繰り返し単位及び一般式(2)で表わされる繰り返し単位以外の共重合成分(以下、第3の共重合成分とも称する)を含有することができる。
第3の共重合成分としては、特定ポリマーの水溶性及び現像性の観点から、スルホン酸基、スルホン酸塩基、カルボベタイン基、スルホベタイン基又はアンモニウム基を有することが好ましく、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホベタイン基を有することがより好ましい。
【0027】
第3の共重合成分の繰り返し単位を構成するモノマーの具体例としては、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロパンスルホン酸、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロパンスルホン酸カリウム、4−((3−メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)ブタン−1−スルホネート、4−((3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)ブタン−1−スルホネート、ビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、ジエチレングリコール2−エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリルコリンクロライド、メタクリル酸3−スルホプロピルカリウム、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタインが挙げられる。
【0028】
以下に、特定ポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。表1〜3において、表中の数字は、特定ポリマーの番号を表す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
【化3】

【0033】
上記特定ポリマー70〜78において、x/y/zの組成比は74/25/1(モル%)、Mwは20,000である。
【0034】
特定ポリマーにおいて、一般式(1)で表される繰り返し単位、一般式(2)で表される繰り返し単位、及び必要により含まれる第3の成分に由来する繰り返し単位は、各々、2種以上存在してもよい。
特定ポリマーは、一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位からなる場合、一般式(1)で表される繰り返し単位を70〜95mol%、一般式(2)で表される繰り返し単位を5〜30mol%含むことが好ましく、一般式(1)で表される繰り返し単位を70〜80mol%、一般式(2)で表される繰り返し単位を20〜30mol%含むものがより好ましく、一般式(1)で表される繰り返し単位を75〜80mol%、一般式(2)で表される繰り返し単位を20〜25mol%含むものが特に好ましい。
特定ポリマーが第3の共重合成分に由来する繰り返し単位を含有する場合、第3の成分に由来する繰り返し単位の割合は、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して10mol%未満であり、好ましくは、5mol%未満であり、特に好ましくは3mol%未満である。
特定ポリマーの質量平均モル質量(Mw)は、10,000〜200,000が好ましく、10,000〜100,000がより好ましく、10,000〜30,000が特に好ましい。
特定ポリマーの乾燥塗布量は、好ましくは0.01〜5.0g、より好ましくは0.01〜1.0g、特に好ましくは0.02〜0.8gである。
【0035】
本発明に係る保護層には、必要に応じて、本発明の特定ポリマーと共に他のポリマーを用いることができる。使用できるポリマーとしては、例えば、比較的結晶性に優れた水溶性ポリマーが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコールが、酸素遮断性、現像除去性等の特性において良好な結果を与える。
【0036】
保護層に併用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するために必要な量の未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル又はアセタールで置換されていてもよい。また、一部が他の共重合成分を有していても良い。ポリビニルアルコールはポリ酢酸ビニルを加水分解することにより得られるが、ポリビニルアルコールとしては加水分解度が71〜100モル%、重合繰り返し単位数が300〜2400のものを好ましく挙げることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。ポリビニルアルコールは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0037】
また、変性ポリビニルアルコールも好ましく用いることができる。特に、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。更に、ポリビニルアルコールと混合して使用する成分としては、ポリビニルピロリドンまたはその変性物が酸素遮断性、現像除去性等の観点から好ましい。
本発明に係る保護層における特定ポリマーの含有量は、保護層に含まれる全ポリマーに対して、30〜98質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%が更に好ましい。
【0038】
保護層には、グリセリン、ジプロピレングリコール等を添加して可撓性を付与することができる。また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を添加することができる。
【0039】
さらに、本発明に係る保護層には、酸素遮断性や感光層表面の保護を向上させる目的で無機質の層状化合物を含有させることが好ましい。
層状化合物とは、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、下記一般式
A(B,C)2−510(OH,F,O)
〔ただし、AはLi,K,Na,Ca,Mg,有機カチオンの何れかであり、BおよびCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSiまたはAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、りん酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0040】
上記天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母および鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、およびNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、NaまたはLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNaまたはLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0041】
上記の層状化合物の中でも、合成の無機質の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、この膨潤性合成雲母や、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘度鉱物類等は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi+ 、Na+ 、Ca2+、Mg2+、有機カチオン等の陽イオンを吸着している。これらの無機質層状化合物は水により膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイトおよび膨潤性合成雲母はこの傾向が強い。
【0042】
層状化合物の形状としては、層状化合物の拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
層状化合物の粒子径は、その平均径が1〜20μm、好ましくは1〜10μm、特に好ましくは2〜5μmである。粒子径が1μmよりも小さいと酸素や水分の透過の抑制が不十分であり、効果を十分に発揮できない。また20μmよりも大きいと塗布液中での分散安定性が不十分であり、安定的な塗布を行うことができない問題が生じる。また、粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を感光層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる感光層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる効果が得られる。
【0043】
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.05〜10g/mが好ましく、無機質の層状化合物を含有する場合には、0.1〜2.0g/mがより好ましく、無機質の層状化合物を含有しない場合には、0.5〜5g/mがより好ましい。
【0044】
〔感光層〕
本発明の平版印刷版原版において、感光層(以下、画像記録層とも称する)は増感色素、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する。
【0045】
(A)増感色素
本発明に係る感光層は増感色素を含有する。増感色素は、画像露光時の光を吸収して励起状態となり、後述する重合開始剤に電子移動、エネルギー移動又は発熱などでエネルギーを供与し、重合開始機能を向上させるものであれば特に限定せず用いることができる。特に、300〜450nm又は750〜1400nmに極大吸収を有する増感色素が好ましく用いられる。
【0046】
300〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素としては、メロシアニン色素類、ベンゾピラン類、クマリン類、芳香族ケトン類、アントラセン類等を挙げることができる。
【0047】
300nmから450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素のうち、高感度の観点からより好ましい色素は下記一般式(IX)で表される色素である。
【0048】
【化4】

【0049】
(一般式(IX)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環基又はヘテロ環基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子又はN−(R)を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、一価の非金属原子団を表し、AとR又はRとRはそれぞれ互いに結合して、脂肪族性または芳香族性の環を形成してもよい。)
【0050】
一般式(IX)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、一価の非金属原子団を表し、好ましくは、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の芳香族複素環残基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子を表す。
【0051】
Aは置換基を有してもよい芳香族環基またはヘテロ環基を表し、置換基を有してもよい芳香族環基及びヘテロ環基の具体例としては、R、R及びRで記載した置換もしくは非置換のアリール基及び置換もしくは非置換の芳香族複素環残基と同様のものが挙げられる。
【0052】
このような増感色素の具体例としては、特開2007−58170号、段落番号〔0047〕〜〔0053〕に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0053】
更に、下記一般式(V)〜(VI)で示される増感色素も用いることができる。
【0054】
【化5】

【0055】
【化6】

【0056】
式(V)中、R〜R14は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R〜R10の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
式(VI)中、R15〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R15〜R24の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
【0057】
このような増感色素の具体例としては、欧州特許出願公開1349006やWO2005/029187に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0058】
また、特開2007−171406号、特開2007−206216号、特開2007−206217号、特開2007−225701号、特開2007−225702号、特開2007−316582号、特開2007−328243号に記載の増感色素も好ましく用いることができる。
【0059】
続いて、本発明にて好適に用いられる750〜1400nmに極大吸収を有する増感色素(以降、「赤外線吸収剤」とも称する)について詳述する。赤外線吸収剤は染料又は顔料が好ましく用いられる。
【0060】
染料としては、市販の染料および例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0061】
【化7】

【0062】
一般式(a)中、Xは水素原子、ハロゲン原子、−NPh、X−L又は以下に示す基を表す。ここで、Xは酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を表し、Lは炭素数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子(N、S、O、ハロゲン原子、Se)を有する芳香族環又はヘテロ原子を含む炭素数1〜12の炭化水素基を示す。Xは後述するZと同義であり、Rは水素原子又はアルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基及びハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0063】
【化8】

【0064】
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R及びRは炭素数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、RとRとは互いに結合して5員環または6員環を形成していることも好ましい。
【0065】
Ar及びArは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素数12以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルコキシ基が挙げられる。Y及びYは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子または炭素数12以下のジアルキルメチレン基を示す。R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素数12以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Zaは対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZaは必要ない。好ましいZaは、感光層塗布液の保存安定性から、ハライドイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン及びアリールスルホン酸イオンである。
【0066】
好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号、段落番号[0017]〜[0019]に記載されたものを挙げることができる。
【0067】
特に好ましい他の例としてさらに、特開2002−278057号に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0068】
顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0069】
増感色素の添加量は、感光層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、更に好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.2〜10質量部である。
【0070】
(B)重合開始剤
本発明に係る感光層は重合開始剤(以下、開始剤化合物とも称する)を含有する。本発明においては、ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
【0071】
本発明における開始剤化合物としては、当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、トリハロメチル化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、鉄アレーン錯体が挙げられる。なかでも、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オニウム塩、トリハロメチル化合物及びメタロセン化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましく、特にヘキサアリールビイミダゾール化合物が好ましい。重合開始剤は、2種以上を適宜併用することもできる。
【0072】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号に記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。ヘキサアリールビイミダゾール化合物は、300〜450nmに極大吸収を有する増感色素と併用して用いられることが特に好ましい。
【0073】
本発明において好適に用いられるオニウム塩は、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩が挙げられる。特にジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が好ましく用いられる。オニウム塩は、750〜1400nmに極大吸収を有する赤外線吸収剤と併用して用いられることが特に好ましい。
【0074】
その他、特開2007−206217号、段落番号〔0071〕〜〔0129〕に記載の重合開始剤も好ましく用いることができる。
【0075】
重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。感光層中の重合開始剤の使用量は感光層全固形分に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは1.0質量%〜10質量%である。
【0076】
(C)重合性化合物
本発明に係る感光層は重合性化合物を含有する。重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物などの化学的形態をもつ。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物を使用することも可能である。
【0077】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0078】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0079】
CH=C(R)COOCHCH(R)OH (A)
(ただし、R及びRは、HまたはCHを示す。)
【0080】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0081】
また、特表2007−506125号に記載の光−酸化可能な重合性化合物も好適であり、少なくとも1個のウレア基及び/又は第三級アミノ基を含有する重合可能な化合物が特に好ましい。具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0082】
【化9】

【0083】
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。重合性化合物は、感光層の全固形分に対して、好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%の範囲で使用される。
【0084】
(D)バインダーポリマー
本発明に係る感光層はバインダーポリマーを含有する。バインダーポリマーとしては、感光層成分を支持体上に担持可能であり、現像液により除去可能であるものが用いられる。バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが用いられる。特に、(メタ)アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が好ましく用いられる。
【0085】
本発明において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アリルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体を重合成分として有する共重合体のことを言う。「ポリウレタン樹脂」とは、イソシアネート基を2つ以上有する化合物とヒドロキシル基を2つ以上有する化合物の縮合反応により生成されるポリマーのことをいう。「ポリビニルブチラール樹脂」とは、ポリ酢酸ビニルを一部又は全てを鹸化して得られるポリビニルアルコールとブチルアルデヒドを酸性条件下で反応(アセタール化反応)させて合成されるポリマーのことを言い、さらに、残存したヒドロキシ基と酸基等有する化合物を反応させ方法等により酸基等を導入したポリマーも含まれる。
【0086】
本発明におけるバインダーポリマーの好適な一例としては、酸基を含有する繰り返し単位を有する共重合体が挙げられる。酸基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基等が挙げられるが、特にカルボン酸基が好ましく、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位や下記一般式(I)で表されるものが好ましく用いられる。
【0087】
【化10】

【0088】
(一般式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又はn+1価の連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR−を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。)
【0089】
一般式(I)におけるRで表される連結基は、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から構成されるもので、その原子数は好ましくは1〜80である。具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレンなどが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有していてもよい。Rとしては、単結合、アルキレン、置換アルキレンであることが好ましく、単結合、炭素数1〜5のアルキレン、炭素数1〜5の置換アルキレンであることが特に好ましく、単結合、炭素数1〜3のアルキレン、炭素数1〜3の置換アルキレンであることが最も好ましい。
置換基としては、1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0090】
は水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基が特に好ましく、水素原子又はメチル基が最も好ましい。nは1〜3であることが好ましく、1又は2であることが特に好ましく、1であることが最も好ましい。
【0091】
バインダーポリマーの全共重合成分に占めるカルボン酸基を有する共重合成分の割合(モル%)は、現像性の観点から、1〜70%が好ましい。現像性と耐刷性の両立を考慮すると、1〜50%がより好ましく、1〜30%が特に好ましい。
【0092】
また、例えば、下記のような酸基を導入したポリビニルブチラール樹脂も好ましく用いられる。
【0093】
【化11】

【0094】
一般式(II)において、各繰り返し単位の好ましい比率は、p/q/r/s=50−78モル%/1−5モル%/5−28モル%/5−20モル%の範囲である。Ra,Rb,Rc,Rd,Re,Rfはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい一価の置換基又は単結合であり、mは0〜1の整数である。Ra,Rb,Rc,Rd,Re,Rfの好ましい例としては、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール基が挙げられる。更に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基などの直鎖アルキル基、カルボン酸が置換したアルキル基、ハロゲン原子、フェニル基、カルボン酸が置換したフェニル基が挙げられる。RcおよびRd、ReおよびRfはそれぞれ環構造を形成することができる。RcとReの結合する炭素原子およびRdとRfの結合する炭素原子間の結合は、単結合または二重結合または芳香族性二重結合であり、二重結合または芳香族性二重結合の場合、Rc−RdまたはRe−RfまたはRc−RfまたはRe−Rdはそれぞれ結合して単結合を形成する。
【0095】
上記カルボン酸基含有単位の好ましい具体例としては、下記の例が挙げられる。
【0096】
【化12】

【0097】
さらに、本発明におけるバインダーポリマーの好適な一例である、酸基を含有するポリマーの酸基は、塩基性化合物で中和されていても良く、特に、アミノ基、アミジン基、グアニジン基等の塩基性窒素を含有する化合物で中和されていることが好ましい。さらに、塩基性窒素を含有する化合物がエチレン性不飽和基を有することも好ましい。具体的な化合物としては、WO2007/057442記載の化合物が挙げられる。
【0098】
本発明に用いられるバインダーポリマーはさらに架橋性基を有することが好ましい。ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に感光層中で起こるラジカル重合反応の過程でバインダーポリマーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
【0099】
バインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0100】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.01〜10.0mmol、より好ましくは0.05〜5.0mmol、特に好ましくは0.1〜2.0mmolである。
【0101】
本発明に用いられるバインダーポリマーは、上記酸基を有する重合単位、架橋性基を有する重合単位の他に、(メタ)アクリル酸アルキルまたはアラルキルエステルの重合単位を有していてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、メチル基がより好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0102】
バインダーポリマーは、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。バインダーポリマーの含有量は、良好な画像部の強度と画像形成性の観点から、感光層の全固形分に対して、5〜75質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、10〜60質量%が更に好ましい。
また、重合性化合物及びバインダーポリマーの合計含有量は、感光層の全固形分に対して、80質量%以下であることが好ましい。80質量%を超えると、感度の低下、現像性の低下を引き起こす場合がある。合計含有量は、より好ましくは35〜75質量%である。
【0103】
本発明においては、平版印刷版原版の感光層中の重合性化合物とバインダーポリマーの割合を調節することにより、現像液の感光層への浸透性がより向上し、現像性が更に向上する。即ち、感光層中の重合性化合物/バインダーポリマーの質量比は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.25〜4.5、特に好ましくは、2〜4である。
【0104】
<その他の感光層成分>
感光層は、上記成分の他に、連鎖移動剤を含有することが好ましい。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。
特に、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類等)を連鎖移動剤として好ましく用いることができる。
感光層には、さらに、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、現像性の促進および塗布面状を向上させるための界面活性剤、現像性と耐刷性両立の為のマイクロカプセル、現像性の向上やマイクロカプセルの分散安定性向上などのための親水性ポリマー、画像部と非画像部を視認するための着色剤や焼き出し剤、感光層の製造中または保存中のラジカル重合性化合物の不要な熱重合を防止するための重合禁止剤、酸素による重合阻害を防止するための高級脂肪誘導体、画像部の硬化皮膜強度向上のための無機微粒子、現像性向上のための親水性低分子化合物、感度向上の為の共増感剤や連鎖移動剤、可塑性向上のための可塑剤等を添加することができる。これの化合物はいずれも公知のものを使用でき、例えば、特開2007−206217号、段落番号〔0161〕〜〔0215〕に記載の化合物を使用することができる。
【0105】
<感光層の形成>
本発明に係る感光層は、必要な上記各成分を適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製し、この塗布液を支持体上に塗布して形成される。ここで使用する溶剤としては、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、γ−ブチルラクトン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。溶剤は単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0106】
塗布、乾燥後に得られる支持体上の感光層塗布量(固形分)は、0.3〜3.0g/mが好ましい。感光層を塗布するには、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0107】
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状な親水性支持体であればよい。特に、アルミニウム板が好ましい。アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。これらの処理については、特開2007−206217号、段落番号〔0241〕〜〔0245〕に記載された方法を好ましく用いることができる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲内で、感光層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲内で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
支持体の厚さは0.1〜0.6mmが好ましく、0.15〜0.4mmがより好ましく、0.2〜0.3mmが更に好ましい。
【0108】
<支持体親水化処理、下塗り層>
本発明の平版印刷版原版においては、非画像部の親水性を向上させ印刷汚れを防止するために、支持体表面の親水化処理を行うことや支持体と感光層との間に下塗り層を設けることも好ましい。
【0109】
支持体表面の親水化処理としては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液に浸漬処理または電解処理するアルカリ金属シリケート処理、フッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、ポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられるが、ポリビニルホスホン酸水溶液に浸漬処理する方法が好ましく用いられる。
【0110】
下塗り層としては、ホスホン酸、リン酸、スルホン酸などの酸基を有する化合物を含有する下塗り層が好ましく用いられる。これらの化合物は、感光層との密着性を向上させるために、さらに重合性基を含有することが好ましい。さらにエチレンオキシド基などの親水性付与基を有する化合物も好ましい化合物として挙げることができる。
これらの化合物は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。特開平10−282679号に記載の付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有するシランカップリング剤、特開平2−304441号に記載のエチレン性二重結合反応基を有するリン含有化合物などが好ましく挙げられる。
特に好ましい下塗り層としては、特開2005−238816号、特開2005−125749号、特開2006−239867号、特開2006−215263号に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面に相互作用する官能基および親水性基を有する低分子又は高分子化合物を含有するものが挙げられる。
【0111】
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/mが好ましく、1〜30mg/mがより好ましい。
【0112】
〔バックコート層〕
必要に応じて、支持体に表面処理を施した後又は下塗り層を形成した後、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号に記載の有機高分子化合物、特開平6−35174号に記載の有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OC等のケイ素のアルコキシ化合物を用いることが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0113】
[平版印刷版の作製方法]
以下に、本発明に係る平版印刷版の作製方法について記載する。本発明に係る平版印刷版原版を、画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版が作製される。画像露光の後、露光された平版印刷版原版に、後述の加熱処理(プレヒート処理)を行い、その後、現像処理を行うこともできる。
【0114】
〔画像露光〕
画像露光は、平版印刷版原版を、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光することにより行われる。
光源の波長は300〜450nm又は750〜1400nmが好ましい。300〜450nmの場合は、この領域に吸収極大を有する増感色素を画像記録層に有する平版印刷版原版が用いられ、750〜1400nmの場合は、この領域に吸収を有する増感色素である赤外線吸収剤を含有する平版印刷版原版が用いられる。300〜450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。750〜1400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。
【0115】
〔現像処理〕
現像処理は、画像露光された平版印刷版原版を現像液により処理して、画像記録層の未露光部を除去し、非画像部を形成することにより行われる。本発明の平版印刷版の作製方法においては、現像処理により保護層も同時に除去されるので、現像処理に先立って画像露光された平版印刷版原版を水洗処理(プレ水洗処理)する必要は無い。
現像処理工程において、現像液を画像露光された平版印刷版原版に適用するためには、公知の方法が利用できる。例えば、平版印刷版原版を現像液に浸漬する方法(浸漬法)、平版印刷版原版に現像液を噴霧する方法(噴霧法)、平版印刷版原版に現像液を塗布する方法(塗布法)が好ましく用いられる。また、これらの方法においては、必要により、平版印刷版原版の表面をブラシなどで擦る手段を付加することができる。平版印刷版原版に対する現像液の適用は、1段階で行っても、複数段階で行ってもよい。複数段階は、2段階又は3段階が好ましい。複数段階で現像処理を行う場合、各段階における現像液の適用方法は、同じでも異なってもよい。例えば、浸漬法―浸漬法、浸漬法―噴霧法が好ましく用いられる。また、複数段階で現像処理を行う場合、各段階において使用される現像液の組成は同一でも良いし、異なっていてもよい。
【0116】
本発明に係る平版印刷版の作製方法の1つの好ましい態様は、現像処理の後、水洗処理を含まないことを特徴としている。ここで、「水洗処理を含まないこと」とは、平版印刷版原版の現像処理後、一切の水洗処理を行わないことを意味する。即ち、この態様によれば、画像露光後、全く水洗処理を行うことなく平版印刷版が作製されるという利点がある。
【0117】
現像処理において用いる現像液が、得られた平版印刷版版面の汚染や損傷を防ぐ表面保護化合物を含有する場合、現像処理と同時に不感脂化処理を行うことができる。このような現像液については、後で説明する。
表面保護化合物を含む現像液を用いて、現像処理を1段階で行うことは、本発明に係る平版印刷版の作製方法の他の1つの好ましい態様である。この態様は、処理工程の簡略化、地球環境への配慮、省スペース、低ランニングコストなどの観点で特に優れている。
【0118】
現像処理における現像液の温度は、特に限定されないが、20℃〜40℃が好ましく、20℃〜35℃が更に好ましく、20℃〜30℃が特に好ましい。
【0119】
現像処理は現像装置(以下、自動現像処理機とも称する)で行うことが好ましい。以下に、本発明に係る平版印刷版の作製方法において好適に使用される現像装置について記載する。
【0120】
図1は、本発明に係る平版印刷版の作製方法において好ましく用いられる現像装置の構成を概略的に示す図である。この現像装置は、現像処理を2段階で行う場合に好適に用いられる。
【0121】
現像装置1は、予め画像記録部に露光が行われた平版印刷版原版10を搬送経路に沿って搬送しながら、該平版印刷版原版10に現像を行い、平版印刷版を作製するものである。
【0122】
現像装置1は、搬送される平版印刷版原版10の搬送方向の上流側から順に、プレヒート部150と、第1の処理部2と、第2の処理部3と、第3の処理部4と、乾燥部152とを備えている。
【0123】
プレヒート部150は、加熱ユニットを有している。プレヒート部150は、現像処理に先立って、平版印刷版原版10に加熱ユニットによってプレヒートを行う。プレヒートの加熱条件は、100℃、10秒間で行う。加熱時間、加熱温度は、版材により適宜変更できる。加熱時間は、5〜30秒に設定されることが好ましい。また、加熱温度は、60〜140℃で設定する事が好ましく、より好ましくは、80〜120℃である。なお、プレヒート部は必ずしも備わっている必要はなく、平版印刷版原版の構成に応じてプレヒート部を設けずに省略してもよい。
【0124】
第1の処理部2は、槽20を有する。槽20には、所定の量の現像液L1が溜められている。第1の処理部2は、搬送される平版印刷版原版10を現像液L1に浸漬させることで、画像記録層の露光部を現像する。図1に示す構成では、第1の処理部2は、第1の現像部として機能する。
【0125】
また、第1の処理部2は、搬送ローラ対22と、搬送ローラ対24とを備える。搬送ローラ対22は、第1の処理部2における搬送経路の上流側に配され、搬送される平版印刷版原版10を槽20に溜められた現像液L1に浸漬させつつ搬入する。搬送ローラ対24は、第1の処理部2における搬送経路の下流側に配され、平版印刷版原版10を第1の処理部2から搬出する。
【0126】
第1の処理部2は、擦り部材26を備える。擦り部材26は、第1の処理部2における搬送経路の搬送ローラ対22と搬送ローラ対24との間に配されている。擦り部材26は、槽20に溜められた現像液L1に浸漬される平版印刷版原版の表面を擦ることで保護層及び画像記録層の非露光部を除去する。擦り部材26は、現像液L1に浸された状態で平版印刷版原版10を擦るため、現像液の飛散が殆ど生じない。これにより、現像液の飛散に起因する現像装置内の汚染やカスの発生を回避できる。
【0127】
擦り部材は、平版印刷版原版の表面を擦ることができる部材であれば何でも良いが、特に、回転軸を中心に回転することで表面を擦ることが可能な回転ブラシロールを用いることが好ましい。このような、回転ブラシロールとしては、例えば、公知のチャンネルブラシ、ねじりブラシ、植え込みブラシ、絨毯ブラシ、及びモルトンローラ等を使用することが好ましい。
【0128】
回転ブラシロール等を用いて、処理液に浸漬した状態で擦る際には、液の飛散の観点から、擦り部材は、直径の1/3以上は処理液中に浸漬している状態が好ましく、より好ましくは、2/3以上、更に好ましくは3/4以上が浸漬している状態である。
【0129】
チャンネルブラシとしては、実開昭62−167253号、実開平4−63447号、実開平4−64128号、特開平6−186751号の各公報に開示されているような、長尺のいわゆるチャンネルブラシ(帯状ブラシ)を、ローラ本体表面に螺旋状に巻付けたものが用いられる。ねじりブラシとしては、特開平3−87832号の各公報に開示されているようなシャフトに設けられた螺旋状の溝内にねじりブラシを挿入してシャフトへ螺旋状に巻き付けたものが用いられる。植え込みブラシとしては、シャフトローラに小穴をあけ、ブラシ材料を植え込む方法で作成されるものが用いられる。絨毯ブラシとしては、特開2001−5193号、特開2001−66788号の各公報に開示されているようなシャフトローラの周面に織物に毛材が織り込まれた細長の帯体を巻き付けたものが用いられる。モルトンローラとしては、特開平10−198044号の広報に開示されているようなローラー部に繊維製の編成物からなる筒状の摺接材を被せて装着側の端部を緊締したものが使用できる。
【0130】
擦り部材として回転する部材を用いる場合、その擦り部材の回転数は、平版印刷版原版の非露光部の画像記録層の除去性を向上させるために、なるべく速いことが好ましいが、現像装置の耐久性、製造コスト、処理液の飛散及び平版印刷版原板の露光部の損傷等の観点から、30〜1000rpmが好ましく、50〜500rpmがより好ましい。
【0131】
擦り部材としてブラシを用いる場合、そのブラシの本数は、一本以上有ればよく、複数本有していても良い。2本以上の場合は、一本以上を、平版印刷版原版の処理方向と逆の方向に回転させても良い。更に、回転する擦り部材を用いる場合には、擦り部材を回転軸方向に揺動させながら現像処理を行っても良い。擦り部材を回転軸方向に揺動させることで、平版印刷版原版の非画像部の除去をより効果的に行うことができ、より高品質の平版印刷版を作製することが可能となる。
【0132】
擦り部材に用いるブラシの材質は、馬の毛、豚の毛等の天然繊維、人造繊維、金属繊維などが知られているが、耐薬品性より人造繊維が好ましい。人造繊維としては、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン12等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル類、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリオレフィン類、アセチルセルロース等のセルロース類、ポリウレタン等のポリウレタン類、ポリフェニレンサルファイト、エチレン・4弗化エチレン共重合体、ポリ弗化ビニリデン等の弗素樹脂類が用いられるが、弾性、剛性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性、給水性、吸湿性等を考慮すると、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン12、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートが好ましく、より好ましくはナイロンナイロン6・6、ナイロン6・10、6・12、ナイロン12、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンが用いられる。ポリエステル類ではとくにポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。ポリオレフィン類では特にポリプロピレンが好ましい。
【0133】
ブラシの毛の太さは特に限定はされないが、0.01mmから1.0mmが好ましく、より好ましくは、0.1mmから0.5mmが好ましい。ブラシの太さが0.01mmより細いと擦り性が劣り、1.0mmより太いと、版面に擦り傷を付けやすくなるためである。また、ブラシの毛の長さは特に限定されないが、通常3mmから50mmの範囲で用いられる。3mmより短くすると平版印刷版原版へのあたりが不均一になって版面に擦り傷を付けやすくなるためである。また、50mmより長い場合には、長くすることによる現像処理上のメリットが見出されなくなり、経済的にも不利である。モルトンローラの場合は、編成物からなる筒状の摺接材を被せるため、毛材の太さや長さの規定は不要である。
【0134】
第2の処理部3は、槽30を有する。槽30には、所定の量の現像液L2が溜められている。図1に示す構成では、第2の処理部3は、第2の現像部として機能する。
【0135】
また、第2の処理部3は、搬送ローラ対32と、搬送ローラ対34とを備える。搬送ローラ対32は、第2の処理部3における搬送経路の上流側に配され、第1の処理部2から搬出された平版印刷版原版10を、第2の処理部3に搬入する。搬送ローラ対34は、第2の処理部3における搬送経路の下流側に配され、平版印刷版原版10を第2の処理部3から搬出する。平版印刷版原版10は、搬送ローラ対32と搬送ローラ対34の間を略水平に搬送される。
【0136】
更に、第2の処理部3は、互いに平行に配置された一対のスプレ管31を有する。一対のスプレ管31は、両者の間で搬送経路を挟み込むように配置されている。また、一対のスプレ管31は、第2の処理部3における搬送経路の搬送ローラ対32と搬送ローラ対34との間に配されている。
【0137】
一対のスプレ管31は、搬送される平版印刷版原版10に現像液L2を吹き付ける。こうして、第2の処理部3は、第1の処理部2で現像されずに残存する画像記録層の露光部を補足的に現像するとともに、平版印刷版原版10上に付着したカスを洗い流すことが可能である。処理部3は、槽30に溜められた現像液L2をスプレ管31へ送液する機構を備えており、スプレ管31から吐出した現像液L2は、槽30に戻り、循環される。
【0138】
第3の処理部4は、槽40を有する。槽40には、所定の量の現像液L3が溜められている。図1に示す構成では、第3の処理部4は、第2の処理部3と同様に現像部として機能する。
【0139】
また、第3の処理部4は、搬送ローラ対42と、搬送ローラ対44とを備える。搬送ローラ対42は、第3の処理部4における搬送経路の上流側に配され、第2の処理部3から搬出された平版印刷版原版10を、第3の処理部4に搬入する。搬送ローラ対44は、第3の処理部4における搬送経路の下流側に配され、平版印刷版原版10を第3の処理部4から搬出する。平版印刷版原版10は、搬送ローラ対42と搬送ローラ対44の間を略水平に搬送される。
【0140】
更に、第3の処理部4は、互いに平行に配置された一対のスプレ管41を有する。一対のスプレ管41は、両者の間で搬送経路を挟み込むように配置されている。また、一対のスプレ管41は、第3の処理部4における搬送経路の搬送ローラ対42と搬送ローラ対44との間に配されている。
【0141】
一対のスプレ管41は、搬送される平版印刷版原版10に現像液L3を吹き付けることで、第1の処理部2及び第2の処理部3で現像されずに残存する画像記録層の露光部を補足的に現像するとともに、平版印刷版原版10上に付着したカスを洗い流すことが可能である。第3の処理部4は、槽40に溜められた現像液L3をスプレ管41へ送液する機構を備えており、スプレ管41から吐出した現像液L3は、槽40に戻り、循環される。
【0142】
乾燥部152は、第3の処理部4から搬出された平版印刷版原版10を乾燥する。乾燥温度(平版印刷版原版の表面における温度)は、約55℃であり、50〜60℃の範囲で設定されることが好ましい。但し、この設定温度は、平版印刷版原版の構成や現像液の処方に応じて適宜設定可能である。
【0143】
また、現像装置1は、補充部60と、送液装置とを備える。
【0144】
補充部60は、第2の処理部3の槽30に、パイプ等を介して新鮮な現像液を補充する。新鮮な補充液とは、版を処理していない未使用の現像液のことであり、未使用の現像液L2であることが好ましい。
【0145】
送液装置は、第1の処理部2の槽20に溜めた現像液L1の状態に応じた量の現像液を、第2の処理部3の槽30から槽20に送液する。送液装置は、パイプ80と、回収部82と、タンク84と、ポンプ86とを備える。
【0146】
パイプ80は、槽20と槽30との間に延設され、送液する現像液L2を流通せしめる閉路である。
【0147】
回収部82は、槽30に溜められた現像液L2が一定の液面レベルを超えた場合に、回収口から超えた分に相当する量の現像液L2を回収し、パイプ80内に導く。
【0148】
タンク84は、回収部82にパイプ80を介して連結されている。タンク84は、回収部82で回収された現像液L2を一時的に貯留する。
【0149】
ポンプ86は、タンク84にパイプ80を介して連結されている。ポンプ86は、タンク84に貯留された現像液L2をパイプ80を介して第1の処理部2の槽20に送液する。ポンプ86は、駆動モータの回転数を制御することにより、回転数に応じた送液量で現像液L2を槽20に送液する。ポンプ86は、例えば、予め定められた容積の現像液を供給することが可能なものであり、例えば、ベローズポンプ、ダイアフラムポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプなどを採用することができる。
【0150】
また、送液装置は、パイプに、現像液L2に含まれるカスなどの異物を除去するためのフィルタ部を備えていてもよい。こうすれば現像液からカスなどを除去し、現像液を常にクリーンな状態に維持することができる。更に、回収部82とタンク84とが一体に設けられていてもよい。
【0151】
現像装置1は、補充部60によって新鮮な現像液L2を第2の処理部3の槽30に補充することができる。このため、槽30に溜められている現像液L2の状態が劣化してしまうことを抑えることができる。
【0152】
また、現像装置1は、第1の槽に溜めた現像液の状態に応じて、送液装置によって槽30から槽20に現像液L2を補充する。第1の槽に溜められた現像液の状態とは、現像液L1の液面の高さ(液位)や現像液L1の疲労度である。
【0153】
現像液L1、現像液L2、現像液L3は、本発明の効果が損なわれない限りにおいて、同一でも、異なる組成でも良い。現像液L1と現像液L2は同一のものを用いることが好ましい。この場合には、現像装置1は、第1の処理部2の槽20に溜められた現像液L1の成分が変化せず安定するように、送液装置によって槽20に送液する現像液L2の量を制御している。現像液L1、L2の温度はそれぞれ、任意の温度で使用できるが、好ましくは10℃〜50℃である。
【0154】
また、槽20に溜められた現像液L1の現像性を回復させるため、第2の処理部3の槽30に補充される現像液L2として濃縮液を用いることもある。濃縮液を補充する場合は、タンク84が遮蔽され、蒸発量が小さい時である。この時の補充量は、好ましくは1.05〜6倍であるが、より好ましくは、1.1〜3倍、更に好ましくは、1.1〜2倍である。他方、現像液L2が外気と接触しやすく、蒸発が大きい場合がある。この場合、補充する液を希釈側にする事がある。この場合は、好ましくは、0.6〜0.95倍、より好ましくは、0.7〜0.9倍、更に好ましくは、0.8〜0.9倍である。
【0155】
槽30から槽20への送液量は、送液量を多くした場合に局所的に温度の均一性が損なわれることを抑えるため、1L/min以下にすることが好ましい。
【0156】
なお、槽30は、図示しない液循環用スプレを槽30に配備し、図示されない循環ポンプによって、溜められた現像液L1の循環を行うことで、該現像液L1の均一性を保持している。
【0157】
現像装置1は、補充部60の補充によって増加した分に相当する量を回収部82から回収して、タンク84に貯留させた後、送液するシステムになっている。しかし、送液の方法はこれに限定されない。槽20に溜められた現像液L1の状態の変化を見込んで、予め設定された量の現像液を送液してもよい。
【0158】
この現像装置1によれば、第2の処理部3に補充部60によって補充を行うことで、槽30に溜められる現像液L2の劣化を防止することができる。また、送液装置によって、現像液L2を槽30から槽20に送液することができる。このため、槽20に現像液を補充する機構を設ける必要がなく、現像液L1の状態に応じて所定の量だけ槽20に送液でき、また、ポンプ86によって送液する量を正確に制御することができる。このため、現像液の状態を維持することができ、平版印刷版を高品質で安定して作製することができる。
【0159】
また、現像装置1は、閉路であるパイプ80を介して槽20に現像液L2を送液するため、蒸発などの影響によって送液される現像液L2が変質してしまうことを防止できる。槽に溜められた現像液をオーバーフローさせて、槽に現像液を供給する構成では、送液する現像液の量を制御することが不可能であり、また、現像液の変質が顕著である。
【0160】
更に、現像装置1は、第1の処理部2と第2の処理部3との間に他の処理部が存在しても、送液を行うことが可能である。
【0161】
上述した現像装置1の構成は、適宜変更可能である。
【0162】
例えば、第2の処理部3及び第3の処理部は水平搬送方式としたが、浸漬方式でも効果を発現できる。
【0163】
例えば、現像装置は、3つの槽20、30、40を備えた構成としたが、これに限定されない。現像装置は1は、4つ以上の槽を備えていてもよい。
【0164】
現像装置は、槽に溜められた現像液を汲み上げてノズルから吹き付けて処理する方式や、実質的に未使用の処理液を一版毎に必要な分だけ供給して現像する、所謂、使い捨て処理方式のいずれの方式が一般的に用いられる。液の飛散防止という観点では、平版印刷版原版を浸漬搬送させて現像処理する方式が優れている。
【0165】
現像装置は、更に、露光装置を一体に備えていてもよい。
【0166】
本発明に係る平版印刷版の作製方法に使用される自動現像処理機の他の例について、図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明に係る平版印刷版の作製方法において好ましく用いられる他の自動現像処理機の構成を概略的に示す図である。この自動現像処理機は、現像処理を1段階で行う場合に好適に用いられる。
【0167】
図2に示す自動現像処理機100は、機枠202により外形が形成されたチャンバーからなり、平版印刷版原版の搬送路11の搬送方向(矢印A)に沿って連続して形成された前加熱(プレヒート)部200、現像部300及び乾燥部400を有している。
前加熱部200は、搬入口212及び搬出口218を有する加熱室208を有し、その内部には串型ローラー210とヒーター214と循環ファン216とが配置されている。
【0168】
現像部300は、外板パネル310により前加熱部200と仕切られており、外板パネル310にはスリット状挿入口312が設けられている。
現像部300の内部には、現像液で満たされている現像槽308を有する処理タンク306と、平版印刷版原版を処理タンク306内部へ案内する挿入ローラー対304が設けられている。現像槽308の上部は遮蔽蓋324で覆われている。
【0169】
現像槽308の内部には、搬送方向上流側から順に、ガイドローラー344及びガイド部材342、液中ローラー対316、ブラシローラー対322、ブラシローラー対326、搬出ローラー対318が並設されている。現像槽308内部に搬送された平版印刷版原版は、現像液中に浸漬され、回転するブラシローラー対322、326の間を通過することにより非画像部が除去される。
ブラシローラー対322、326の下部には、スプレーパイプ330が設けられている。スプレーパイプ330はポンプ(不図示)が接続されており、ポンプによって吸引された現像槽308内の現像液がスプレーパイプ330から現像槽308内へ噴出するようになっている。
【0170】
現像槽308側壁には、第1の循環用配管C1の上端部に形成されたオーバーフロー口51が設けられており、超過分の現像液がオーバーフロー口51に流入し、第1の循環用配管C1を通って現像部300の外部に設けられた外部タンク50に排出される。
外部タンク50は第2の循環用配管C2が接続され、第2の循環用配管C2中には、フィルター部54及び現像液供給ポンプ55が設けられている。現像液供給ポンプ55によって、現像液が外部タンク50から現像槽308へ供給される。また、外部タンク50内には上限液レベル計52、下限液レベル計53が設けられている。
現像槽308は、第3の循環用配管C3を介して補充用水タンク71に接続されている。第3の循環用配管C3中には水補充ポンプ72が設けられており、この水補充ポンプ72によって補充用水タンク71中に貯留される水が現像槽308へ供給される。
液中ローラー対316の上流側には液温センサ336が設置されており、搬出ローラー対318の上流側には液面レベル計338が設置されている。
【0171】
現像300と乾燥部400との間に配置された仕切り板332にはスリット状挿通口334が設けられている。また、現像部300と乾燥部400との間の通路にはシャッター(不図示)が設けられ、平版印刷版原版11が通路を通過していないとき、通路はシャッターにより閉じられている。
乾燥部400は、支持ローラー402、ダクト410、412、搬送ローラー対406、ダクト410、412、搬送ローラー対408がこの順に設けられている。ダクト410、412の先端にはスリット孔414が設けられている。また、乾燥部400には図示しない温風供給手段、発熱手段等の乾燥手段が設けられている。乾燥部400には排出口404が設けられ、乾燥手段により乾燥された平版印刷版は排出口404から排出される。
【0172】
次に、現像液について説明する。現像と同時に不感脂化処理を可能とする上で、以下の構成の現像液を好適に使用することができる。とりわけ、後述の界面活性剤及び、水溶性高分子化合物の少なくともいずれかを含有することが、不感脂化処理能を付与する上で好ましい。
【0173】
本発明の平版印刷版の作製方法において使用される現像液は、水を主成分とする(水を60質量%以上含有する)水溶液であるのが好ましい。現像液のpHは、好ましくは2.0以上10.0であり、より好ましくは5.0以上10.0、更に好ましくは6.0以上10.0、最も好ましくは6.5以上9.9以下である。
【0174】
なお、現像液は、アルカリ剤を含有しても良い。アルカリ剤を含有する場合は、pHが8.0以上10.0にあることが好ましい態様であり、より好ましいpHは、9.0以上10.0、更に好ましくは、9.2以上9.9以下である。アルカリ剤を含有しない場合は、pHが2.0以上9.0以下であることが好ましい態様であり、より好ましいpHは、4.0以上8.0以下、更に好ましくは、4.5以上7.5以下である。
【0175】
また、本発明に用いられる現像液は界面活性剤を含有することが好ましい。この際、用いられる界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性イオン系等を挙げることができる。
【0176】
前記アニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0177】
前記カチオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0178】
前記ノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。この中でも、アルキレンオキサイド鎖を有するものが好ましく、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するものがより好ましく、アルキル置換若しくは無置換のフェノールエチレンオキサイド付加物、又は、アルキル置換若しくは無置換のナフトールエチレンオキサイド付加物が更に好ましい。
【0179】
アルキレンオキサイド鎖を有するノニオン系界面活性剤としては、特に好ましくは、下記一般式(3)で表されるノニオン芳香族エーテル系界面活性剤が挙げられる。
【0180】
X−Y−O−(A)n−(B)m−H (3)
式(3)中、Xは芳香族基を表し、Yは単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、A及びBは互いに異なる基であって、−CHCHO−又は−CHCH(CH)O−を表し、n及びmは各々0〜100の整数を表し、但しn及びmの和は2以上である。
【0181】
式(3)中、Xで表される芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜100の有機基が挙げられる。有機基の例として下記一般式(3‐A)、(3‐B)について記載する有機基の例と同様である。式(3)において、A及びBがともに存在するとき、これらはランダムに存在してもブロックとして存在してもよい。また、n及びmの和は4〜100が好ましく、6〜50がより好ましく、8〜30が更に好ましく、10〜28が特に好ましい。
【0182】
一般式(3)で表されるノニオン芳香族エーテル系界面活性剤のなかで、下記一般式(3‐A)又は(3‐B)で示される化合物が好ましい。
【0183】
【化13】

【0184】
式(3−A)及び(3−B)中、R10、R20は、各々水素原子又は炭素数1〜100の有機基を表し、t、uは各々1又は2を表し、Y1、Y2は各々単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、v、wは各々0〜100の整数を表し、但しv及びwの和は2以上であり、v′、w′は各々0〜100の整数を表し、但しv′及びw′の和は2以上である。
【0185】
tが2であり、R10が炭素数1〜100の有機基であるとき、R10は同一でも異なっていてもよく、あるいはR10が一緒になって環を構成していてもよく、また、uが2であり、R20が炭素数1〜100の有機基であるとき、R20は同一でも異なっていてもよく、あるいはR20が一緒になって環を構成していてもよい。
【0186】
炭素数1〜100の有機基の具体例としては、飽和でも不飽和でもよく、直鎖でも分岐鎖でもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基など)、アルコキシ基、アリーロキシ基、N‐アルキルアミノ基、N、N‐ジアルキルアミノ基、N‐アリールアミノ基、N、N‐ジアリールアミノ基、N‐アルキル‐N‐アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N‐アルキルカルバモイルオキシ基、N‐アリールカルバモイルオキシ基、N、N‐ジアルキルカルバモイルオキシ基、N、N‐ジアリールカルバモイルオキシ基、N‐アルキル‐N‐アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、N‐アルキルアシルアミノ基、N‐アリールアシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N‐アルキルカルバモイル基、N、N‐ジアルキルカルバモイル基、N‐アリールカルバモイル基、N、N‐ジアリールカルバモイル基、N‐アルキル‐N‐アリールカルバモイル基、ポリオキシアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖が結合している上記の有機基などが挙げられる。上記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0187】
好ましいR10、R20としては、水素原子又は炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、N‐アルキルアミノ基、N、N‐ジアルキルアミノ基、N‐アルキルカルバモイル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、繰り返し単位数5〜20程度のポリオキシアルキレン鎖、炭素数6〜20のアリール基、繰り返し単位数5〜20程度のポリオキシアルキレン鎖が結合しているアリール基などが挙げられる。
【0188】
一般式(3‐A)又は(3‐B)で示される化合物において、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位数は好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。ポリオキシプロピレン鎖の繰り返し単位数は好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5である。ポリオキシエチレン部とポリオキシプロピレン部はランダムに存在してもブロックとして存在してもよい。
【0189】
以下に一般式(3)で示されるノニオン芳香族エーテル系活性剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0190】
【化14】

【0191】
【化15】

【0192】
前記両性イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタインなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。
特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。これらの具体例は、特開2008−203359号、段落番号〔0255〕〜〔0278〕、特開2008−276166号、段落番号〔0028〕〜〔0052〕等に記載されているものを挙げることができる。
【0193】
現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤としては、下記一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0194】
【化16】

【0195】
式(1)及び(2)中、R及びR11は、各々独立に、炭素数8〜20のアルキル基又は総炭素数8〜20の連結基を有するアルキル基を表す。
、R、R12及びR13は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はエチレンオキサイド基を含有する基を表す。
及びR14は、各々独立に、単結合又はアルキレン基を表す。
また、R、R、R及びRのうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよく、R11、R12、R13及びR14のうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0196】
上記一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物において、総炭素数値が大きくなると疎水部分が大きくなり、水系の現像液への溶解性が低下する。この場合、溶解を助けるアルコール等の有機溶剤を、溶解助剤として水に混合することにより、溶解性は良化するが、総炭素数値が大きくなりすぎた場合、適正混合範囲内で界面活性剤を溶解することはできない。従って、R〜R又はR11〜R14の炭素数の総和は好ましくは10〜40、より好ましくは12〜30である。
【0197】
又はR11で表される連結基を有するアルキル基は、アルキル基の間に連結基を有する構造を表す。すなわち、連結基が1つの場合は、「−アルキレン基−連結基−アルキル基」で表すことができる。連結基としては、エステル結合、カルボニル結合、アミド結合が挙げられる。連結基は2以上あってもよいが、1つであることが好ましく、アミド結合が特に好ましい。連結基と結合するアルキレン基の総炭素数は1〜5であることが好ましい。このアルキレン基は直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキレン基が好ましい。連結基と結合するアルキル基は炭素数が3〜19であることが好ましく、直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキルであることが好ましい。
【0198】
又はR12がアルキル基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0199】
又はR13がアルキル基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
又はR13で表されるエチレンオキサイドを含有する基としては、−Ra(CH2CH2O)nRbで表される基を挙げることができる。ここで、Raは単結合、酸素原子又は2価の有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、Rbは水素原子又は有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、nは1〜10の整数を表す。
【0200】
及びR14がアルキレン基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物は、アミド結合を有することが好ましく、R又はR11の連結基としてアミド結合を有することがより好ましい。
一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物の代表的な例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0201】
【化17】

【0202】
【化18】

【0203】
【化19】

【0204】
式(1)又は(2)で表される化合物は公知の方法に従って合成することができる。また、市販されているものを用いることも可能である。市販品として、式(1)で表される化合物は川研ファインケミカル社製のソフタゾリンLPB、ソフタゾリンLPB−R、ビスタMAP、竹本油脂社製のタケサーフC−157L等があげられる。式(2)で表される化合物は川研ファインケミカル社製のソフタゾリンLAO、第一工業製薬社製のアモーゲンAOL等があげられる。
【0205】
界面活性剤は2種以上用いてもよい。2種以上の界面活性剤の組み合わせとしては、界面活性剤の少なくとも1種がノニオン系界面活性剤であることが好ましい。更に好ましくは、ノニオン系−ノニオン系界面活性剤の組み合わせ及び両性イオン系−ノニオン系界面活性剤の組み合わせである。
現像液中の界面活性剤の含有量は、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0206】
本発明に係る現像液には、非画像部の不感脂化や版面保護性を補助することを目的として、皮膜形成性を有する水溶性高分子化合物を含有させることも好ましい。
【0207】
水溶性高分子化合物としては、例えば、アラビアガム、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルプロピルセルロース等)及びその変性体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、澱粉誘導体(例えば、デキストリン、マルトデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉酵素分解デキストリン、カルボキジメチル化澱粉、リン酸化澱粉、サイクロデキストリン等)、プルラン及びその誘導体等が挙げられる。
【0208】
水溶性高分子化合物として使用することができるその他の澱粉誘導体としては、ブリティッシュガム等の焙焼澱粉、酵素デキストリン及びシャーディンガーデキストリン等の酵素変成デキストリン、可溶化澱粉に示される酸化澱粉、変成アルファー化澱粉及び無変成アルファー化澱粉等のアルファー化澱粉、燐酸澱粉、脂肪澱粉、硫酸澱粉、硝酸澱粉、キサントゲン酸澱粉及びカルバミン酸澱粉等のエステル化澱粉、カルボキシアルキル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、スルフォアルキル澱粉、シアノエチル澱粉、アリル澱粉、ベンジル澱粉、カルバミルエチル澱粉、ジアルキルアミノ澱粉等のエーテル化澱粉、メチロール架橋澱粉、ヒドロキシアルキル架橋澱粉、燐酸架橋澱粉、ジカルボン酸架橋澱粉等の架橋澱粉、澱粉ポリアクリロアミド共重合体、澱粉ポリアクリル酸共重合体、澱粉ポリ酢酸ビニル共重合体、澱粉ポリアクリロニトリル共重合体、カオチン性澱粉ポリアクリル酸エステル共重合体、カオチン性澱粉ビニルポリマー共重合体、澱粉ポリスチレンマレイン酸共重合体、澱粉ポリエチレンオキサイド共重合体、澱粉ポリプロピレン共重合体等の澱粉グラフト重合体等が挙げられる。
【0209】
水溶性高分子化合物として使用することができる天然高分子化合物としては、水溶性大豆多糖類、澱粉、ゼラチン、大豆から抽出されるヘミセルロース、かんしょ澱粉、ばれいしょ澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉及びコーンスターチ等の澱粉類、カラジーナン、ラミナラン、海ソウマンナン、ふのり、アイリッシュモス、寒天及びアルギン酸ナトリウム等の藻類から得られるもの、トロロアオイ、マンナン、クインスシード、ペクチン、トラガカントガム、カラヤガム、キサンチンガム、グアービンガム、ローカストビンガム、キャロブガム、ベンゾインガム等の植物性粘質物、デキストラン、グルカン、レバン等のホモ多糖、並びに、サクシノグルカン及びサンタンガム等のヘトロ多糖等の微生物粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼイン及びコラーゲン等の蛋白質が挙げられる。
なかでも、アラビアガム、デキストリンやヒドロキシプロピル澱粉等の澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類などを好ましく使用することができる。
水溶性高分子化合物の現像液中の含有量は、0.05〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0210】
本発明で使用する現像液は、更にpH緩衝剤を含有することが好ましい。
本発明のpH緩衝剤としては、pH2.0〜10.0に緩衝作用を発揮する緩衝剤が好ましく、弱アルカリ性のpH緩衝剤がより好ましく用いられる。具体的には、(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオン、(b)ホウ酸イオン、(c)有機アミン化合物及びその有機アミン化合物のイオン、及びそれらの併用などが挙げられる。すなわち、例えば(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオンの組み合わせ、(b)ホウ酸イオン、又は(c)有機アミン化合物及びその有機アミン化合物のイオンの組み合わせなどが、現像液においてpH緩衝作用を発揮し、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。特に好ましくは、(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオンの組み合わせ及び(c)有機アミン化合物及びその有機アミン化合物のイオンである。
【0211】
炭酸イオン、炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0212】
pH緩衝剤として(a)炭酸イオンと炭酸水素イオンの組み合わせを採用するとき、炭酸イオン及び炭酸水素イオンの総量は、現像液に対して0.05〜5mol/Lが好ましく、0.1〜2mol/Lがより好ましく、0.2〜1mol/Lが特に好ましい。総量が0.05mol/L以上であると現像性、処理能力が低下しにくく、5mol/L以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、更に現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたしにくい。
【0213】
pH緩衝剤として(b)ホウ酸イオンを採用するとき、ホウ酸イオンの総量は、現像液に対して0.05〜5mol/Lが好ましく、0.1〜2mol/Lがより好ましく、0.2〜1mol/Lが特に好ましい。ホウ酸塩の総量が0.05mol/L以上であると現像性、処理能力が低下しにくく、一方5mol/L以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、更に現像液の廃液処理時の中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたしにくい。
【0214】
本発明においては、水溶性のアミン化合物及びそのアミン化合物のイオンの組合せも好ましく用いることができる。
水溶性のアミン化合物は、特に限定されないが、水溶性を促進する基を有する水溶性のアミン化合物が好ましい。水溶性を促進する基としてカルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、水酸基などが挙げられる。水溶性のアミン化合物は、水溶性を促進する基を複数有していてもよい。また、カルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基は塩構造になっていてもよい。なかでも、水酸基を有するアミン化合物が特に好ましい。
【0215】
カルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基を持つ水溶性のアミン化合物の具体例としては、グリシン、アミノ二酢酸、リシン、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、パラヒドロキシフェニルグリシン、ジヒドロキシエチルグリシン、アラニン、アントラニル酸、トリプトフアン等のアミノ酸、スルフアミン酸、シクロヘキシルスルフアミン酸、タウリン等の脂肪酸アミンスルホン酸、アミノエタンスルフィン酸等の脂肪酸アミンスルフィン酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。なかでも、グリシン、アミノ二酢酸及びその塩が好ましい。
【0216】
ホスホン酸基(ホスフィン酸基も含む)を持つ水溶性のアミン化合物の具体例としては、2−アミノエチルホスホン酸、1−アミノエタン−1、1−ジホスホン酸、1−アミノ−1−フエニルメタン−1、1−ジホスホン酸、1−ジメチルアミノエタン−1、1−ジホスホン酸、エチレンジアミノペンタメチレンホスホン酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。なかでも、2−アミノエチルホスホン酸及びその塩が好ましい。
【0217】
水酸基を持つ水溶性のアミン化合物の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルモルフォリン、モノイソプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンN、N−ジエタノールアニリン等が挙げられる。 なかでも、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルモルフォリンが好ましい。
なかでも、特に、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するアルキル基によって置換された、ジ又はトリアルカノールアミン化合物及びそのイオンであることが好ましい。少なくとも1つのヒドロキシル基を有するアルキル基は、更にもうひとつのヒドロキシル基、ハロゲン、ニトロ基、ニトリル基、(ヘテロ)芳香族基、飽和又は不飽和炭化水素基から選れる置換基を有しても良い。アルキル基として炭素数15以下が好ましく、炭素数12以下がより好ましく、炭素数8以下が更に好ましい。
【0218】
具体的なアルカノール基としては、HO−CH−*、HO−CH−CH−*、HO−CH−CH−CH−*、CH−CH(OH)−CH−*、CH−C(OH)(CH)−*、HO−CH−CH−CH−CH−*、CH−CH(CH)−CH(OH)−*、CH−CH(C)−CH(OH)−*、CH−C(CH)(OH)−CH−*、HO−CH−CH−CH−CH−CH−CH−*、HO−CH−CH−CH−CH(OH)−CH−CH−*、CH−CH−CH(OH)−CH−CH−CH−*、CH−CH(CH)−CH−CH(OH)−CH−*、CH−CH(C)−CH−CH(OH)−CH−*、HO−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−*、HO−CH−CH−CH−CH(OH)−CH−CH−CH−CH−*、CH−CH−CH(OH)−CH−CH−CH−CH−CH−*、CH−CH(CH)−CH−C(C)(OH)−CH−CH−CH−*、が挙げられる。(ここで*は、アミン基のNへの連結部を示す。)
【0219】
ジ又はトリアルカノールアミンの具体例として、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、トリイソプロパノールアミン、が挙げられる。
【0220】
水溶性のアミン化合物のイオンは、水溶性のアミン化合物の水溶液において発生させることができ、水溶性のアミン化合物の水溶液に更にアルカリ又は酸を加えてもよく、また、水溶性のアミン化合物の塩を添加することにより水溶液中に含有させることができる。
【0221】
アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、及びこれらの組み合わせなどを用いることができる。酸としては、無機酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、亜燐酸などを用いることができ、特に燐酸、亜燐酸が好ましい。このようなアルカリ又は酸を添加することにより、pHを微調整することができる。
【0222】
本発明に係わる現像液は、酸とアミンとの反応物からなる塩を含有することが好ましく、これにより、有機アミン化合物のイオンが生成される。
【0223】
また、現像液は、リン酸及び亜リン酸の少なくともいずれかの酸と、ジ又はトリアルカノールアミンとの反応物からなる塩を含有することがより好ましい。
【0224】
上記pH緩衝剤として、c)有機アミン化合物及びその有機アミン化合物のイオンを用いる場合には、その含有量は、現像液中のモル濃度で0.005〜5mol/Lが好ましく、0.01〜2mol/Lがより好ましく、0.01〜1mol/Lが特に好ましい。水溶性のアミン化合物のイオンの総量がこの範囲にあると現像性、処理能力が低下せず、一方廃液処理が容易である。
【0225】
pH緩衝剤が、リン酸及び亜リン酸の少なくともいずれかの酸と、ジ又はトリアルカノールアミンとの反応物からなる塩である場合、その含有量は、現像液中のモル濃度で少なくとも0.02mol/Lが好ましく、少なくとも0.1mol/Lがより好ましく、少なくとも0.15mol/Lが特に好ましい。また、5mol/L以下が好ましく、2.5mol/L以下がより好ましく、1mol/L以下が特に好ましい。アミンの酸に対する物質量比は、0.1以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.75以上が最も好ましい。また、20以下が好ましく、12以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。
【0226】
本発明に係る現像液は有機溶剤を含有しても良い。含有可能な有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、アイソパーE、H、G(エッソ化学(株)製)等)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)、極性溶剤が挙げられる。極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)等が挙げられる。
【0227】
現像液に含有される有機溶剤は2種以上を併用することもできる。有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。安全性、引火性の観点から、有機溶剤の濃度は40質量%未満が望ましく、10質量%未満が好ましく、5質量%未満がより好ましい。
【0228】
本発明に係る現像液は酵素を含有しても良い。本発明に用いられる酵素は、光重合性画像記録層を有する平版印刷版原版の現像処理における現像カスの発生を抑制する作用を示すものであれば、その種類については特に限定されず、八木達彦ら編「酵素ハンドブック(第3版)」(朝倉書店)に記載されているような群の酵素であれば任意に用いることができる。特に、モノマー(エチレン性不飽和化合物)を分解・可溶化させるという目的からは、国際生化学分子生物学連合(IUBMB)酵素委員会の酵素番号(EC番号)のEC3.群に属する加水分解酵素を用いることが好ましい。エチレン性不飽和化合物は多くの場合、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子などから構成されることから、カルボン酸エステル結合を加水分解する酵素、リン酸エステルを加水分解する酵素、硫酸エステルを加水分解する酵素、エーテル結合を加水分解する酵素、チオエーテル構造を加水分解する酵素、ペプチド結合を加水分解する酵素、炭素−窒素結合を加水分解する酵素、炭素−炭素結合を加水分解する酵素、炭素−ハロゲン結合を加水分解する酵素等が好ましい酵素として挙げられ、より好ましくは、エステル結合、アミド結合、3級アミノ基、ウレタン結合、ウレア結合、チオウレタン結合、及び、チオウレア結合よりなる群から選択される少なくとも1つを加水分解する酵素である。
【0229】
これらの中でも、特にEC3.1群(エステル加水分解酵素)、EC3.4群(ペプチド結合加水分解酵素)に属するものが好ましく、EC3.1.1.3(トリアシルグリセロールリパーゼ)、EC3.4.11.1(ロイシンアミノペプチダーゼ(leucyl
aminopeptidase))、EC3.4.21.62(サブチリシン(subtilisin))、EC3.4.21.63(オルリジン(oryzin))、EC3.4.22.2(パパイン(papain))、EC3.4.22.32(stem bromelain)、EC3.4.23.18(aspergillo pepsin I)、EC3.4.24.25(ビブリオリシン)、EC3.4.24.27(テルモリシン(thermolysin))、及び、EC3.4.24.28(バシロリシン(bacillolysin))が好ましい。更に、EC3.1.1.3、EC3.4.21.14、EC3.4.21.62、EC3.4.21.63が最も好ましい。
【0230】
更に、前述した通り、本発明において、現像液のpHは、好ましくは2.0〜10.0であり、より好ましくは5.0〜10.0、更に好ましくは6.0〜10.0、最も好ましくは6.9〜9.9である。
【0231】
これらの観点から、酵素としては、アルカリ酵素が好ましく用いられる。ここでアルカリ酵素とは至適pH領域がアルカリ性にある酵素であり、至適pH領域を6.9〜9.9に有する酵素が好ましく、至適温度領域を20℃〜60℃に有する酵素が好ましく、25℃〜50℃に有する酵素がより好ましい。
【0232】
具体的には、アルカリプロテアーゼ、アルカリリパーゼ等、アルカリ条件下において主にモノマーのエステル基を加水分解が可能な酵素が好ましい。アルカリプロテアーゼとしては、Bacillus subtilis、Aspergillus oryzae、Bacillus stearothermophilus、パパイヤラテックス、パパイヤ、Ananas comosus M、Pig pancreas、Bacillus licheniformis、Aspergillus melleus、Aspergillus sp.、Bacillus lentus、Bacillus sp.、Bacillus clausii、アルカリリパーゼとしては、Candida cylindracea、Humicola lanuginosa、Psudomonas、Mucor sp.,Chromobacterium viscosum、Rhizopus japonics、Aspergillus niger、Mucor javanicus、Penicillium camemberti、Rhizopus
oryzae、Candida rugosa、Penicillium roqueforti、Rhizopus delemar、Psendomonas sp.、Aspergillus sp.、Rhizomucor miehei、Bacillus sp.、Alcaligenes sp.等の微生物起源のものがある。
【0233】
より具体的な態様として、リパーゼPL、リパーゼQLM、リパーゼSL、リパーゼMY、リパーゼOF(以上、明糖産業(株)製)、ニューラーゼF3G、リパーゼA「アマノ」6、リパーゼAY「アマノ」30G、リパーゼG「アマノ」50、リパーゼR「アマノ」、リパーゼAS「アマノ」、ウマミザイムG、パパインW−40、プロテアーゼA「アマノ」G、プロテアーゼN「アマノ」G、プロテアーゼNL「アマノ」、プロテアーゼP「アマノ」3G、プロテアーゼS「アマノ」G、プロメラインF、プロレザーFG−F、ペプチターゼR、サモアーゼPC10F、プロチンSD−AC10F、プロチンSD−AY10、プロチンSD−PC10F、プロチンSD−NY10、膵臓性消化酵素TA、プロザイム、プロザイム6、セミアルカリプロティナーゼ、リパーゼAYS「アマノ」、リパーゼPS「アマノ」SD、リパーゼAK「アマノ」、リパーゼPS「アマノ」IM、プロテアーゼN「アマノ」、プロテアーゼS「アマノ」、アシラーゼ「アマノ」、D−アミノアシラーゼ「アマノ」等(以上、天野エンザイム(株)製)や、アルカラーゼ、エスペラーゼ、サビナーゼ、エバラーゼ、カンナーゼ、リポラーゼ、ライペックス、NS44020、NS44120、NS44060、NS44114、NS44126、NS44160等(以上ノボザイムズジャパン社製)、アルカリ性プロテアーゼ(タケダ化学工業(株)製)、アロアーゼXA−10(ヤクルト薬品工業(株))、アルカリプロテアーゼGL、プロテックス 6L、ピュラフェクト、ピュラフェクト OX、プロペラーゼ、プロテックス OXG、プロテックス 40L(以上ジェネンコア協和(株))、スミチームMP(新日本化学工業(株))、ビオブラーゼ OP、ビオブラーゼ AL−15KG、ビオブラーゼ 30G、ビオブラーゼ APL−30、ビオブラーゼ XL−416F、ビオブラーゼ SP−20FG、ビオブラーゼ SP−4FG、プロテアーゼ CL−15(以上ナガセケムテックス(株))、オリエンターゼ(エイチビィアイ(株))、エンチロンSA(洛東化成工業(株))等が挙げられる。
【0234】
これら酵素の導入方法としては、現像液中に直接投入しても、平版印刷版原版の処理時に現像液に投入しても構わない。また、現像液に酵素を供給しながら現像処理を行ってもよい。
用いられる酵素の含有量としては、現像液全量に対して0.01質量%〜20質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%が更に好ましく、0.2質量%〜5質量%が最も好ましい。
【0235】
現像液には上記成分の他に、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、無機酸、無機塩などを含有させることができる。具体的には、特開2007−206217号、段落番号〔0266〕〜〔0270〕に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0236】
本発明に係る現像液は、露光された平版印刷版原版の現像液及び必要に応じて現像補充液として用いることができる。また、前述の如き自動現像処理機に好ましく適用することができる。自動現像処理機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。
【0237】
本発明の平版印刷版の作製方法においては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。この様な加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度、耐刷性の向上、感度の安定化といった利点が生じる。
更に、画像強度、耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対して全面加熱若しくは全面露光を行うことも有効である。通常、現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行う事が好ましい。温度が高すぎると、未露光部が硬化してしまう等の問題を生じ得る。現像後の加熱には非常に強い条件を利用する。通常は100〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じ得る。
【実施例】
【0238】
以下に実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、下記ポリマーに関して、繰り返し単位の比はモル比である。
【0239】
[実施例1〜9及び比較例1〜9]
〔平版印刷版原版1〜8の作製〕
<支持体1の作製>
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。このアルミニウム板を25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を0.3質量%の塩酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dmの条件下に交流電流により60秒間電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。このアルミニウム板を15%硫酸水溶液溶液中で、25℃、電流密度10A/dm、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行い、更に1%ポリビニルホスホン酸水溶液に60℃で10秒間浸漬した後、20℃でカルシウムイオン濃度が75ppmの硬水、次いで、純水で各4秒間洗浄し、親水化処理を行い乾燥して支持体1を作製した。カルシウムの付着量は、2.0mg/mであった。支持体1の表面粗さを測定したところ、0.44μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
【0240】
<感光層1の形成>
支持体1上に、下記組成の感光層塗布液(1)をバー塗布した後、90℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.3g/mの感光層1を形成した。
【0241】
<感光層塗布液(1)>
・下記バインダーポリマー(1)(質量平均分子量:5万) 0.04g
・下記バインダーポリマー(2)(質量平均分子量:8万) 0.30g
・下記重合性化合物(1) 0.17g
(PLEX6661−O、デグサジャパン製)
・下記重合性化合物(2) 0.51g
・下記増感色素(1) 0.03g
・下記増感色素(2) 0.015g
・下記増感色素(3) 0.015g
・下記重合開始剤(1) 0.13g
・連鎖移動剤:メルカプトベンゾチアゾール 0.01g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
(顔料:15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(質量平均分子量:6万、共重合モル比:83/17)):10質量部、シクロヘキサノン:15質量部)
・熱重合禁止剤 0.01g
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
・下記フッ素系界面活性剤(1)(質量平均分子量:1万) 0.001g
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
・N,Nジメチルアミノプロピルメタクリルアミド 0.015g
【0242】
【化20】

【0243】
【化21】

【0244】
【化22】

【0245】
【化23】

【0246】
【化24】

【0247】
【化25】

【0248】
【化26】

【0249】
【化27】

【0250】
【化28】

【0251】
<保護層の形成>
前記感光層上に、下記組成よりなる保護層塗布液(1)〜(8)を、乾燥塗布量が1.2g/mとなるようにバーを用いて塗布した後、125℃、70秒で間乾燥して保護層を形成し、平版印刷版原版1〜8を得た。
【0252】
保護層塗布液(1)〜(8)
・表A又は表Bに記載の保護層ポリマー 0.53g
・PVA−205 0.13g
(部分加水分解ポリビニルアルコール、クラレ(株)製、鹸化度=86.5−89.5モル%、粘度=4.6−5.4mPa・s(20℃、4質量%水溶液中))
・PVA−105 0.142g
(完全加水分解ポリビニルアルコール、クラレ(株)製、鹸化度=98.0−99.0モル%、粘度=5.2−6.0mPa・s(20℃、4質量%水溶液中))
・ポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(1/1))(分子量7万) 0.001g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.002g
・水 13g
【0253】
〔平版印刷版原版9〜11の作成〕
前記感光層上に、下記組成よりなる保護層塗布液(9)〜(11)を、乾燥塗布量が1.2g/mとなるようにバーを用いて塗布した後、125℃、70秒で間乾燥して保護層を形成し、平版印刷版原版9〜11を得た。
【0254】
保護層塗布液(9)〜(11)
・表A又は表Bに記載の保護層ポリマー 0.53g
・PVA−205 0.13g
(部分加水分解ポリビニルアルコール、クラレ(株)製、鹸化度=86.5−89.5モル%、粘度=4.6−5.4mPa・s(20℃、4質量%水溶液中))
・PVA−105 0.142g
(完全加水分解ポリビニルアルコール、クラレ(株)製、鹸化度=98.0−99.0モル%、粘度=5.2−6.0mPa・s(20℃、4質量%水溶液中))
・下記雲母分散液(1) 0.6g
・ポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(1/1))(質量平均分子量7万)0.001g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.002g
・水 13g
【0255】
(雲母分散液(1)の調製)
水368gに合成雲母(ソマシフME−100、コープケミカル社製、アスペクト比:1000以上)の32gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)0.5μmになるまで分散し、雲母分散液(1)を得た。
【0256】
〔平版印刷版原版12〜14の作製〕
<支持体2の作製>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を10質量%水酸化ナトリウム水溶液に60℃で25秒間浸漬してエッチングし、流水で水洗後、20質量%硝酸水溶液で中和洗浄し、次いで水洗した。これを正弦波の交番波形電流を用いて1質量%硝酸水溶液中で300クーロン/dmの陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。引き続いて1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に40℃で5秒間浸漬後、30質量%の硫酸水溶液中に浸漬し、60℃で40秒間デスマット処理した後、20質量%硫酸水溶液中で、電流密度2A/dmの条件で陽極酸化皮膜の厚さが2.7g/mになるように2分間陽極酸化処理した。更に1%ポリビニルホスホン酸水溶液に60℃で10秒間浸漬した後、20℃でカルシウムイオン濃度が75ppmの硬水、次いで、純水で各4秒間洗浄し、乾燥して親水化処理を行い、支持体2を作製した。カルシウムの付着量は、1.8mg/mであった。支持体2の表面粗さを測定したところ、0.28μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
【0257】
<感光層2の形成>
支持体2上に、下記組成の感光層塗布液(2)をバー塗布した後、90℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.3g/mの感光層2を形成した。
【0258】
<感光層塗布液(2)>
・上記記バインダーポリマー(1)(質量平均分子量:5万) 0.34g
・上記重合性化合物(1) 0.68g
・下記増感色素(4) 0.06g
・上記重合開始剤(1) 0.18g
・下記連鎖移動剤(1) 0.02g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
(顔料:15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(質量平均分子量:6万、共重合モル比:83/17)):10質量部、
シクロヘキサノン:15質量部)
・熱重合禁止剤 0.01g
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
・上記フッ素系界面活性剤(1)(質量平均分子量:1万) 0.001g
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0259】
【化29】

【0260】
【化30】

【0261】
<保護層の形成>
感光層2上に、下記組成の保護層塗布液(12)〜(14)を、乾燥塗布量が1.5g/mとなるようにバーを用いて塗布した後、125℃で70秒間乾燥して保護層を形成し、平版印刷版原版12〜14を得た。
【0262】
保護層塗布液(12)〜(14)
・表A又は表Bに記載の保護層ポリマー 0.53g
・上記雲母分散液(1) 0.6g
・スルホン酸変性ポリビニルアルコール 0.2g
(ゴーセランCKS−50、日本合成化学(株)製、鹸化度:
99モル%、平均重合度:300、変性度:約0.4モル%)
・ポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(1/1)) 0.001g
(質量平均分子量:7万)
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)0.002g
・水 13g
【0263】
〔平版印刷版原版15〜17の作製〕
<支持体3の作製>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0264】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0265】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。その後、珪酸ナトリウム1質量%水溶液にて20℃で10秒処理した。このように処理されたアルミニウム板の表面粗さを測定したところ、0.54μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
【0266】
上記アルミニウム板に、バーコーターを用いて下記下塗り層塗布液(1)を塗布し、80℃で20秒間乾燥して支持体3を作製した。乾燥後の下塗り層塗布質量は15mg/mであった。
【0267】
<下塗り層塗布液(1)>
下記ポリマー(SP3) 2.7g
純水 900.0g
メタノール 100.0g
【0268】
【化31】

【0269】
<感光層3の形成>
支持体3上に、上記感光層塗布液(1)のバインダーポリマー(1)(質量平均分子量:5万)を下記バインダーポリマー(3)(質量平均分子量:3.5万)に変えた感光層塗布液(3)を用いる以外感光層1の形成と同様にして感光層3を形成した。
【0270】
【化32】

【0271】
<保護層の形成>
感光層3上に、上記保護層塗布液(12)〜(14)を、乾燥塗布量が1.5g/mとなるようにバーを用いて塗布した後、125℃で70秒間乾燥して保護層を形成し、平版印刷版原版15〜17を得た。
【0272】
下記組成の現像液A〜Cを作製した。
<現像液A>
・ノニオン系界面活性剤(BASF製:プルロニックPE9400(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイドのブロックコポリマー)) 2.5g
・ノニオン系界面活性剤(CLARIANT製:エマルゾーゲンTS160(2,4,6−tris−(1−phenylethyl)−phenol−ethoxylate)
2.5g
・1−フェノキシ−2−プロパノール 1.0g
・トリエタノールアミン 0.6g
・リン酸(85%) 0.3g
・グルコン酸ナトリウム 1.0g
・クエン酸3ナトリウム 0.5g
・エチレンジアミンテトラアセテート4ナトリウム塩 0.05g
・ポリスチレンスルホン酸(Alco chemical社製:Versa TL77(30質量%溶液)) 1.0g
・水 90.55g
(水酸化ナトリウム及びリン酸を添加し、pHを6.9に調整)
【0273】
<現像液B>
・下記界面活性剤−1(川研ファインケミカル(株)製:ソフタゾリンLPB−R)
15g
・下記界面活性剤−2(川研ファインケミカル(株)製:ソフタゾリンLAO)
4g
・キレート剤 エチレンジアミンコハク酸 三ナトリウム
(InnoSpec specialty chemicals社製:ENVIOMET C140) 0.68g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール 0.025g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.025g
・シリコーン系消泡剤(GE東芝シリコーン(株)社製:TSA739) 0.15g
・グルコン酸ナトリウム 1.5g
・炭酸ナトリウム 1.06g
・炭酸水素ナトリウム 0.52g
・水 77.04g
(pH:9.8)
【0274】
【化33】

【0275】
<現像液C>
・界面活性剤−3 ポリオキシエチレンナフチルエーテル(日本乳化剤(株)製:ニューコールB−13)
3g
・キレート剤 エチレンジアミンコハク酸 三ナトリウム
(InnoSpec specialty chemicals社製:オクタクエストE30)
0.68g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール 0.025g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.025g
・シリコーン系消泡剤(GE東芝シリコーン(株)社製:TSA739) 0.15g
・グルコン酸ナトリウム 1.5g
・炭酸ナトリウム 1.06g
・炭酸水素ナトリウム 0.52g
・水 77.04g
・リパーゼ(ノボザイムズジャパン製:NS44126) 0.3g
(pH:9.8)
【0276】
<画像露光>
平版印刷版原版を、FUJIFILM Electronic Imaging Ltd.製Violet半導体レーザープレートセッターVx9600(InGaN系半導体レーザー405nm±10nm発光/出力30mWを搭載)を用いて画像露光を行った。画像露光は、富士フイルム(株)製FMスクリーン(TAFFETA20)を用い、解像度2438dpi、網点面積率50%、版面露光量0.05mJ/cmの条件で実施した。
【0277】
<現像処理>
実施例1〜5及び比較例1〜7においては、下記表Aに示す各現像液を使用し、図1に示すような構成の現像装置を用いて画像露光された平版印刷版原版の現像処理を行った。プレヒート部150における加熱条件は、100℃、10秒間であった。現像液の液温は25℃であった。平版印刷版原版の搬送速度は、平版印刷版原版が第1の処理部の槽20の上流側の搬送ローラ対22から搬入されて、槽20の下流側の搬送ローラ対24から搬出されるまでの通過時間が20秒となるように設定した。擦り部材26は、その回転方向を搬送方向に対して順転方向に駆動するよう設定した。擦り部材26の外径はφ50mmであった。第1の処理部2の槽20から搬出された平版印刷版原版は、第2の処理部30で現像液のスプレによる処理を受け、その後乾燥部152にて乾燥させた。乾燥温度(版面)は、約55℃であった。なお、第3の処理部はその搬送機能のみを使用した。
実施例6〜9及び比較例8〜9においては、下記表Bに示す現像液を使用し、図2に示すような構成の自動現像処理機を用いて画像露光された平版印刷版原版の現像処理を行った。プレヒート部の温度は100℃、現像液の温度は25℃、現像時間(平版印刷版原版が現像液に浸漬している時間)は21秒、乾燥部の温度は80℃であった。
【0278】
<評価>
各平版印刷版原版について、現像スピードを以下の様にして評価した。また、上記画像露光及び現像処理条件にて、現像カス、耐汚れ性及び着肉性を以下の様にして評価した。
【0279】
<現像スピード>
得られた平版印刷版を30℃−75%RHの保存環境で10日間保存後、画像露光、加熱処理、水洗処理を行うことなく、1浴現像処理型の富士フイルム(株)社製自動現像機LP−1310HIIを用い搬送速度(ライン速度)2m/分、現像温度25℃で現像処理した。実施例1〜5及び比較例1〜7においては、下記表Aに示す第1段階現像液を使用し、実施例6〜9及び比較例8〜9においては、下記表Bに示す現像液を使用した。
現像して得られた平版印刷版の非画像部濃度を、マクベス反射濃度計RD−918を使用し、濃度計に装備されている赤フィルターを用いてシアン濃度を測定した。各平版印刷版原版において、保護層、感光層、下塗り層を塗布する前の、親水化表面処理が完了した支持体の濃度値を0.00とし、以下の基準で評価した。
○:支持体の濃度値と比較して+0.02以下であり、実用上問題のない。
×:支持体の濃度値と比較して+0.03以上であり、実用上不可。
【0280】
<現像カス>
得られた10枚の平版印刷版(3.0m)について、版上の汚れ(版上に付着したカスの個数)を目視で観察し、単位面積(1m)当たりのカスの個数について、以下の基準で評価した。
○:1個未満
○△:1〜2個
△:3〜5個
△×:6〜8個
×:9個以上
【0281】
<着肉性>
得られた平版印刷版について、三菱重工製ダイヤ1F−2印刷機を用いて印刷を行った。印刷インキは大日本インキ社製グラフG(N)、湿し水は富士写真フイルム製IF マークIIを使用した。印刷開始後、徐々にインキが画像部に付着し、結果として紙上でのインキ濃度が高まる。インキ濃度が標準的印刷物濃度(マクベス反射濃度D=1.80)に達したときの印刷枚数をインキ着肉性として以下の基準で評価した。印刷枚数が少ないほど着肉性が優れていることになる。
○:着肉枚数が12枚以下
○△:13−14枚
△:15−20枚
×:25枚以上
【0282】
<耐汚れ性>
各平版印刷版について上記の条件で1万枚印刷した後、ブランケット上の非画像部に対応する部分の汚れを目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:ブランケットの汚れが全く認められない。
△:ブランケットの汚れが殆ど認められない。
×:ブランケットの汚れが明らかに認められる。
【0283】
評価結果を表A及び表Bに示す。
【0284】
【表4】

【0285】
【表5】

【0286】
表A及び表Bの結果から、本発明に係る特定のポリマーを含有する保護層を有する平版印刷版原版は、本発明に係る特定のポリマー以外のポリマーを有する保護層を有する平版印刷版原版に比べて、現像スピードを低下させることなく、現像カスの発生が抑制され、耐汚れ性及び着肉性に優れた平版印刷版を与えることが分かる。
【符号の説明】
【0287】
1 平版印刷版の処理装置
2 第1の処理部
3 第2の処理部
4 第3の処理部
20、30、40 槽
60 補充部
80 パイプ
84 タンク
86 ポンプ
100 自動現像処理機
200 前加熱(プレヒート)部
300 現像部
308 現像槽
400 乾燥部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、感光層及び保護層をこの順に有する平版印刷版原版であって、前記感光層が増感色素、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有し、前記保護層が下記一般式(1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーであって、且つ、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位の合計が当該ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリマーを含有する平版印刷版原版。
【化1】

一般式(1)及び一般式(2)中、R及びRは各々水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一でも異なってもよく、各々水素原子、メチル基又はエチル基を表す。
は炭素数1から8の無置換アルキル基又は芳香族基もしくは複素環基で置換されたアルキル基を表す。
【請求項2】
前記バインダーポリマーがポリビニルブチラール樹脂である請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記保護層が無機層状化合物を含有する請求項1又は2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像露光及び現像処理する平版印刷版の作製方法。
【請求項5】
前記現像処理を、pH2.0〜10.0の現像液で行う請求項4に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項6】
前記現像処理後、水洗処理を含まない請求項4又は5に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項7】
前記現像処理が複数段階からなる請求項4〜6のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項8】
前記現像処理が1段階からなる請求項4〜6のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項9】
前記現像処理に用いる現像液が2種以上界面活性剤を含有する請求項4〜8のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−80003(P2013−80003A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218547(P2011−218547)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】