説明

平版印刷版材料、平版印刷版材料の可視画付与方法及び可視画像の消去方法

【課題】 露光後の薬剤による現像処理を必要とせず、露光画像の確認が容易で、画像形成における必要エネルギーが少なく、かつ印刷工程において、印刷機内を汚染することのない平版印刷版材料および、可視画像形成方法を提供する。
【解決手段】 熱または光により、酸化力を生じる化合物Aと、酸化力を生じたAによって酸化される化合物B、およびBの酸化物との共存下で色調が変化するバインダーCを含有する可視画付与層を有することを特徴とする平版印刷版材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平版印刷版材料および平版印刷版の画像形成方法に関し、特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能で、かつ薬材による現像処理を必要としない平版印刷版材料およびこの平版印刷版材料の画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取り扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTPが求められている。特に近年、特別な薬剤による現像処理が不要であって、ダイレクトイメージング(DI)機能を備えた印刷機に適用可能であり、また、PS版と同等の使い勝手を有する、汎用タイプのサーマルプロセスレスプレートへの期待が高まっている。
【0003】
DI用のサーマルプロセスレスプレートとしては、例えばアグファ社製のThermo Liteが挙げられる。
【0004】
サーマルプロセスレスプレートの画像形成に主として用いられるのは近赤外〜赤外線の波長を有するサーマルレーザー記録方式である。この方式で画像形成可能なサーマルプロセスレスプレートには、大きく分けて、後述するアブレーションタイプ、熱融着画像形成層機上現像タイプ、および相変化タイプが存在する。
【0005】
アブレーションタイプとしては、例えば、特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号等に記載されているものが挙げられる。
【0006】
露光後に現像処理を必要としないプロセスレス印刷版に求められる重要な仕様として、一つは印刷版に画像を露光後、印刷機で印刷を開始する前に画像の確認をするために露光した像様に画像が確認できること、いわゆる可視画性が必要である。
【0007】
さらにもう一つは、露光後に現像処理を行わずに印刷を開始するため、印刷機内において、印刷版上の露光部もしくは未露光部の不要な成分を、印刷インキ、湿し水あるいは印刷用紙上に、拡散、転写することにより画像印刷可能な印刷版としての形態が完成する。この際に、印刷インキ、湿し水あるいは印刷用紙上に移行した成分が、有色素材である場合、印刷インキの濁り、湿し水の汚染、印刷用紙の汚れを発生させる懸念がある。
【0008】
特開2002−205466号においては、可視画性を付与する目的でオーバーコート層に光学濃度を変化させる赤外吸収色素を添加して、これをアブレーション方式で画像形成を行っている。この場合は、露光時にオーバーコート層が飛散することで露光機周辺を汚染する可能性があり、また、印刷版上に残留したオーバーコート層の有色成分が印刷工程で印刷機内に拡散して汚染する欠点を有している。
【0009】
また、熱により酸やラジカルを発生させてそれらと反応する成分により着色して可視画性を付与する技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)が、これらの場合、印刷版の経時保存性を確保するためには保存時の温度での反応進行を抑えるために熱に対する酸、ラジカル発生の感度を落とさなければならず、その結果、露光時に要するエネルギーが多く必要となって生産性を低下させる結果となっていた。
【0010】
本発明者らは、これらの仕様を満たすべく検討した結果、特許文献3において、熱溶融粒子を加熱溶融して透明度のコントラストにより可視画像を形成する技術を開示している。しかしながら、この技術においては、可視画としてのコントラストがまだ十分であるとは言えなかった。
【特許文献1】特開2002−211150号公報
【特許文献2】特開2002−211151号公報
【特許文献3】特開2001−322226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、露光後の薬剤による現像処理を必要とせず、露光画像の確認が容易で、画像形成における必要エネルギーが少なく、かつ印刷工程において、印刷機内を汚染することのない平版印刷版材料および、可視画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の構成により解決することができた。
【0013】
(請求項1)
熱または光により、酸化力を生じる化合物Aと、酸化力を生じたAによって酸化される化合物B、およびBの酸化物との共存下で色調が変化するバインダーCを含有する可視画付与層を有することを特徴とする平版印刷版材料。
【0014】
(請求項2)
化合物Bがヨウ素化合物であり、バインダーCがポリビニルアルコール樹脂、アミロース、アミロペクチン、セルロース樹脂のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版材料。
【0015】
(請求項3)
化合物Aがハロゲン化銀であることを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版材料。
【0016】
(請求項4)
像様に熱または光を与えることにより、化合物Aに酸化力を生じさせ、この化合物Aで化合物Bを酸化させてバインダーCとの共存下で色調を変化させることを特徴とする平版印刷版材料の可視画付与方法。
【0017】
(請求項5)
化合物Bがヨウ素化合物であり、バインダーCがポリビニルアルコール樹脂、アミロース、アミロペクチン、セルロース樹脂のいずれかを含むことを特徴とする請求項4に記載の平版印刷版材料の可視画付与方法。
【0018】
(請求項6)
化合物Aがハロゲン化銀であることを特徴とする請求項4または5に記載の平版印刷版材料の可視画付与方法。
【0019】
(請求項7)
可視画像が形成された平版印刷材料に還元剤を供給することにより化合物Bの酸化物を還元して色調の変化を復元することを特徴とする可視画像の消去方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、露光画像の確認が容易で、画像形成における必要エネルギーが少なく、かつ印刷工程において、印刷機内を汚染することのない平版印刷版材料を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
[基材]
本発明の平版印刷版材料の基材としては、印刷版の基材として使用される公知の材料を使用することができる。例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合基材等が挙げられる。基材の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0023】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムが好ましい。アルミニウム板は、通常その表面に存在する圧延・巻取り時に使用されたオイルを除去するためにアルカリ、酸、溶剤等で脱脂した後に使用される。脱脂処理としては特にアルカリ水溶液による脱脂が好ましい。また、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行なうことが好ましい。例えば、ケイ酸塩やシランカップリング剤等のカップリング剤を含有する液に浸漬するか、液を塗布した後、十分な乾燥を行なう方法が挙げられる。陽極酸化処理も易接着処理の一種と考えられ、使用することができる。また、陽極酸化処理と上記浸漬または塗布処理を組み合わせて使用することもできる。また、公知の方法で粗面化されたアルミニウム基材、いわゆるアルミ砂目を、親水性表面を有する基材として使用することもできる。
【0024】
本発明の平版印刷版材料に使用されるアルミニウム基材には、純アルミニウムおよびアルミニウム合金よりなる基材が含まれる。アルミニウム合金としては種々のものが使用でき、例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
【0025】
アルミニウム基材は、粗面化処理に先立ってアルミニウム表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。また、脱脂処理には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理にアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。
【0026】
脱脂処理にアルカリ水溶液を用いた場合には、燐酸、硝酸、塩酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に電解粗面化を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0027】
基材の粗面化としては公知の方法での電解粗面化処理を行うが、その前処理として、適度な処理量の化学的粗面化や機械的粗面化を適宜くみあわせた粗面化処理を行なってもかまわない。
【0028】
化学的粗面化は脱脂処理と同様に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリの水溶液を用いる。処理後には燐酸、硝酸、塩酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に電解粗面化を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0029】
機械的粗面化処理方法は特に限定されないがブラシ研磨、ホーニング研磨が好ましい。
【0030】
機械的に粗面化された基材は、基材の表面に食い込んだ研磨剤、アルミニウム屑等を取り除いたり、ピット形状をコントロールしたりする等のために、酸またはアルカリの水溶液に浸漬して表面をエッチングすることが好ましい。酸としては、例えば硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が含まれ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が含まれる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。
【0031】
機械的粗面化処理に#400よりも細かい粒度の研磨剤を用い、かつ、機械的粗面化処理の後にアルカリ水溶液によるエッチング処理を行うことで、機械的粗面化処理による入り組んだ粗面化構造を滑らかな凹凸の表面とすることができる。このため、本発明の画像形成層を設けた際にも機上現像性を損なうことなく数μm〜数十μmの比較的長波長のうねりを形成することができ、これに後述する電解粗面化処理を加えることで、印刷性能が良好で、かつ、耐刷性向上にも寄与するアルミニウム基材とすることができる。また、電解粗面化処理時の電気量を低減することもでき、コストダウンにもつながる。
【0032】
上記をアルカリの水溶液で浸漬処理を行った場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0033】
中和処理の次に電解粗面化処理を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化処理に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0034】
電解粗面化処理は一般に酸性電解液中で交流電流を用いて粗面化を行うものである。酸性電解液は通常の電解粗面化法に用いられるものが使用できるが、塩酸系または硝酸系電解液を用いるのが好ましく、本発明においては塩酸系電解液を用いるのが特に好ましい。
【0035】
電解に使用する電源波形は、矩形波、台形波、のこぎり波等さまざまな波形を用いることができるが、特に正弦波が好ましい。
【0036】
また、特開平10−869号公報に開示されているような分割電解粗面化処理も好ましく用いることができる。
【0037】
硝酸系電解液を用いての電解粗面化において印加される電圧は、1〜50Vが好ましく、5〜30Vが更に好ましい。電流密度(ピーク値)は、10〜200A/dm2が好ましく、20〜150A/dm2が更に好ましい。
【0038】
電気量は全処理工程を合計して、100〜2000C/dm2、好ましくは200〜1500C/dm2、より好ましくは200〜1000C/dm2である。
【0039】
温度は、10〜50℃が好ましく、15〜45℃が更に好ましい。硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。
【0040】
電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、蓚酸等を加えることが出来る。
【0041】
本発明においては、電解粗面化処理された基材は、表面のスマット等を取り除いたり、ピット形状をコントロールしたりする等のために、アルカリの水溶液に浸漬して表面のエッチングを行う。
【0042】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が含まれる。
【0043】
アルカリ水溶液によるエッチング処理を行うことで、本発明の画像形成層を設けた際の刷り出し性や地汚れが低減され非常に良好となる。
【0044】
公知の電解粗面化処理方法の一方法として、電解粗面化処理後のエッチング処理を硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等の酸で行う方法も公知であるが、エッチングを酸で行った場合には、本発明の画像形成層を設けた際の刷り出しが劣化し、また、地汚れを生じるようになる。
【0045】
アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に陽極酸化処理を行う場合は、中和に使用する酸を陽極酸化処理に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0046】
粗面化処理の次に、陽極酸化処理を行う。
【0047】
本発明で用いられる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理により基材上には酸化皮膜が形成される。本発明において、陽極酸化処理には、硫酸および/または燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に米国特許第1,412,768号に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法や、米国特許第3,511,661号に記載されている燐酸を用いて電解する方法等を用いることができる。
【0048】
陽極酸化処理された基材は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0049】
また、陽極酸化処理された基材は適宜、上記封孔処理以外の表面処理を行うこともできる。表面処理としては、ケイ酸塩処理、リン酸塩処理、各種有機酸処理、PVPA処理、ベーマイト化処理といった公知の処理が挙げられる。また、特開平8−314157号に記載の炭酸水素塩を含有する水溶液による処理や、炭酸水素塩を含有する水溶液による処理に続けてクエン酸のような有機酸処理を行ってもよい。
【0050】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。
【0051】
また、裏面のすべり性を制御する(例えば版胴表面との摩擦係数を低減させる)目的で、裏面コート層を設けた基材も好ましく使用することができる。
【0052】
[親水性層]
本発明の平版印刷版材料は、基材表面に後述の画像形成層と隣接するように親水性層を設けてもよい。
【0053】
親水性層に用いられる親水性素材としては、金属酸化物が好ましい。
【0054】
金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましい。例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良い。平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0055】
上記金属酸化物微粒子はその造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0056】
本発明には、上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。
【0057】
上記コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、さらに、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0058】
本発明の印刷版材料の親水性層は金属酸化物として多孔質金属酸化物粒子を含むことが好ましい。多孔質金属酸化物粒子としては、後述する多孔質シリカ又は多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0059】
多孔質無機粒子の粒径としては、親水性層に含有されている状態で、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。
【0060】
本発明の親水性層にはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0061】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0062】
[光熱変換素材]
本発明の好ましい態様として、親水性層には光熱変換素材を含有させることができる。
【0063】
光熱変換素材としては下記のような素材を挙げることができる。
【0064】
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
また、特開平11−240270号、特開平11−265062号、特開2000−309174号、特開2002−49147号、特開2001−162965号、特開2002−144750号、特開2001−219667号に記載の化合物も好ましく用いることができる。
【0066】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられるが、このような光熱変換材が可視光領域に大きな吸収をもつ場合には、可視画付与層で生じた画像のコントラストが低下する場合があるため、できるだけ可視画の判別性を阻害しないように添加することが重要である。
【0067】
[画像形成層]
本発明の平版印刷版材料において、露光部のインキ着肉性を発現させる層として、画像形成層を設けることが必要である。本発明の印刷版材料において、画像形成層は熱により変形、溶融、軟化等の変化を生じる感熱性素材を含有する。
【0068】
画像形成層には、前述の親水性層に記載の光熱変換素材を含有させるのが好ましい態様である。
【0069】
画像形成層がインキ着肉性を生じるメカニズムは、赤外レーザー等で像様露光することにより、親水層または、画像形成層中の光熱変換材が発熱して画像形成層中の感熱性素材が軟化、溶融して親水層表面あるいは、基材の親水面との接着性が増大することで、インキ着肉性が発現する。
【0070】
使用可能な素材としては、天然または合成ワックス類、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリウレタン系樹脂もしくはこれらの共重合体樹脂あるいはブロックイソシアネートなどの熱反応性の素材などが挙げられる。なかでも本発明の感熱性素材は、耐刷性、機上現像性等においてブロックイソシアネート、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂粒子等であることが好ましい。これらの樹脂の好ましい物性として、融点、軟化点、ガラス転移点(Tg)などの性質が40℃以上である。
【0071】
又、感熱性素材は熱可塑性の樹脂微粒子などが好ましく、その平均粒径は0.01〜2μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱可塑性樹脂微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱可塑性樹脂微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱可塑性樹脂微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0072】
[画像形成層に含有可能なその他の素材]
本発明に用いられる画像形成層にはさらに以下のような素材を含有させることができる。
【0073】
画像形成層には水溶性樹脂、水分散性樹脂を含有させることができる。水溶性樹脂、水分散性樹脂としては、オリゴ糖、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられる。
【0074】
オリゴ糖としては、ラフィノース、トレハロース、マルトース、ガラクトース、スクロース、ラクトースといったものが挙げられるが、特にトレハロースが好ましい。
【0075】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
【0076】
ポリアクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(Na塩等)、ポリアクリルアミドとしては、分子量3000〜500万であることが好ましく、5000〜100万であることがより好ましい。
【0077】
水溶性樹脂、水分散性樹脂は平版印刷版材料の経時保存後の地汚れや耐熱性、および機上現像性を向上させるために添加させる場合があるが、添加量を増やした場合、印刷版画像部の耐久性を低下させる場合があるため添加量は必要最低限であることが好ましく、通常50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。
【0078】
また、画像形成層には、水溶性の界面活性剤を含有させることができる。Si系、F系、アセチレングリコール系等の界面活性剤を使用することができる。
【0079】
さらに、pH調整のための酸(リン酸、酢酸等)またはアルカリ(水酸化ナトリウム、ケイ酸塩、リン酸塩等)を含有していても良い。
【0080】
画像形成層の付き量としては、0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.1〜3g/m2であり、さらに好ましくは0.2〜2g/m2である。
【0081】
[可視画付与層]
本発明の可視画付与層には、少なくとも熱または光により、酸化力を生じる化合物Aと、酸化力を生じたAにより酸化される化合物B、およびBの酸化物との共存下で色調が変化するバインダーCを含有する。
【0082】
化合物Aは熱または光により、後述の化合物Bを酸化する能力を生じるものであれば特に制限は無いが、熱や光に対する感度が良好な点において、とくにハロゲン化銀が好ましく用いられる。ハロゲン化銀は熱または光を受けて、銀イオンが還元されて銀原子となると同時にハロゲンイオンがハロゲンとなる。このハロゲンが必要に応じて水分の存在下で、酸化力を有する。
【0083】
ハロゲン化銀は、単独では可視光や赤外光に対する感度は非常に小さいが、可視光や赤外光に対する感度を付与するために必要に応じて、以下の増感色素、強色増感剤を含有させることが好ましい。
【0084】
(増感色素)
本発明の可視画付与層には、例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号に記載された増感色素が使用できる。本発明に使用される有用な増感色素は例えばリサーチディスクロージャー17643IV−A項(1978年12月p.23)、同Item1831X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種スキャナー光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号記載の化合物が好ましく用いられる。
【0085】
(強色増感剤)
増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せおよび強色増感を示す物質はRD17643(1978年12月発行)第23頁IVのJ項、あるいは特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されている。
【0086】
本発明においては、強色増感剤として一般式〔6〕で表される複素芳香族メルカプト化合物が好ましい。
【0087】
一般式〔6〕 Ar−SM
式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウム、またはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン、またはキナゾリンである。しかしながら、他の複素芳香環も含まれる。
【0088】
なお、有機酸銀塩及び/又はハロゲン化銀粒子乳剤の分散物中に含有させたときに実質的に上記のメルカプト化合物を生成するジスルフィド化合物も本発明に含まれる。特に、下記の一般式〔7〕で表せるジスルフィド化合物が好ましい例として挙げることが出来る。
【0089】
一般式〔7〕 Ar−S−S−Ar
式中、Arは上記一般式〔6〕の場合と同義である。
【0090】
上記の複素芳香環は、例えば、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる群から選ばれる置換基を有しうる。
【0091】
メルカプト置換複素芳香族を以下に列挙する。しかしながら、本発明はこれらに限定されない。
M−1 2−メルカプトベンズイミダゾール
M−2 2−メルカプトベンズオキサゾール
M−3 2−メルカプトベンゾチアゾール
M−4 5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール
M−5 6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール
M−6 2,2′−ジチオビス(ベンゾチアゾール)
M−7 3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール
M−8 4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール
M−9 2−メルカプトイミダゾール
M−10 1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール
M−11 2−メルカプトキノリン
M−12 8−メルカプトプリン
M−13 2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン
M−14 7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール
M−15 2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール
M−16 4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート
M−17 2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール
M−18 3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール
M−19 4−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン
M−20 2−メルカプトピリミジン
M−21 4,6−ジアミノ−メルカプトピリミジン
M−22 2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド
M−23 3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール
M−24 2−メルカプト−4−フェニルオキサゾール
本発明に係る強色増感剤はハロゲン化銀を含む層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルの範囲で用いるのが好ましい。特に好ましくは、銀1モル当たり0.01〜0.5モルの範囲の量が好ましい。
【0092】
化合物Bは、酸化物Aにより酸化されて、その酸化物が後述のバインダーCと共存することで、色調が変化するものであれば特に制限はないが、本発明においてはヨウ素化合物が好ましく用いられる。
【0093】
ヨウ素化合物は、水溶性で水溶液中でヨウ素イオンの状態になる化合物が好ましく、さらにはヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなどの比較的水溶性が高く、低分子量の化合物を用いることが、取扱い性や、添加量に対する発色の効率の点で好ましい。
【0094】
バインダーCは上記化合物Bの酸化物との共存下で色調が変化するバインダーであれば特に制限は無いが、化合物Bがヨウ素化合物である場合には、バインダーCはポリビニルアルコール樹脂、アミロース、アミロペクチン、セルロース樹脂などが好ましく用いられる。これらの樹脂は、ヨウ素原子をバインダー分子中に取り込むことにより、白色から無色透明の状態から、青から赤紫色へ色調の変化を生じる。この発色を像様に行うことにより可視画性を付与することが出来る。
【0095】
可視画像の消去
可視画付与層で形成された可視画像は、必要に応じて酸化剤を含有する水溶液で洗浄することで容易に消去可能である。具体例をあげるとヨウ素分子とポリビニルアルコールなどで形成された可視画像は、ヨウ素分子を還元可能なアスコルビン酸の水溶液で洗浄することで、ヨウ素分子がヨウ素イオンとなり着色を除去することができる。
【0096】
可視画付与層に含むことが可能なその他の成分としては、前記画像形成層の成分があげられる。
【0097】
本発明の印刷版材料の好ましい態様としては、前述の表面を親水化処理されたアルミニウム基材、もしくは基材上に設けられた親水性層上に、画像形成層を設け、画像形成層またはそれ以外の基材上の構成層のいずれかに、後述する光熱変換素材を含有する印刷版材料である。可視画付与層は、画像形成層と別層として設けても良いが、塗布工程数の低減、光熱変換効率の向上の観点から、画像形成層と可視画付与層が1つの層として機能することが好ましい態様である。
【0098】
[保護層]
画像形成層の上層として保護層を設けることもできる。
【0099】
保護層に用いる素材としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂を好ましく用いることができる。
【0100】
また、特開2002−019318号や特開2002−086948号に記載されている親水性オーバーコート層も好ましく用いることができる。保護層の付き量としては、0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.1〜3g/m2であり、さらに好ましくは0.2〜2g/m2である。
【0101】
本発明においては保護層に可視画付与層の機能を兼ねることも出来る。
【0102】
本発明の平版印刷版材料は、露光直後に印刷機に取り付けて後述の方法で印刷が可能であるが、水洗などの処理を印刷機取り付け前に行うと印刷機のインキや湿し水、印刷用紙の汚れを軽減することが出来る。
【0103】
[画像形成方法]
本発明の平版印刷版材料は、印刷版としての画像形成と、可視画像の付与のための画像形成の、2つの画像形成工程が存在する。これらを別々の工程で行っても良いが、簡略化の点から同時に行われることが好ましい。
【0104】
具体的には、サーマルヘッドや赤外レーザー光源を用いて像様露光を行い画像形成層中の感熱性素材を軟化、溶融してインキ着肉性を発現させると同時に、同一熱源を用いて前述のメカニズムを用いて可視画像を形成する。
【0105】
たとえば赤外レーザー露光等で光熱変換素材を用いて発熱させ、画像形成層にインキ着肉性を発現させると同時に、赤外光領域に分光増感されたハロゲン化銀を感光させて、可視画像を生じさせる。この様な場合、画像形成層と可視画付与層は同一層であることが、露光エネルギー効率の点で好ましい。
【0106】
さらには、本発明の可視画付与層を画像形成層と1層化することにより、可視画成分が画像形成層の感熱性素材に固定されるため、後述の機上現像時に発色成分が印刷版上に固定されて、印刷機においてインキローラーや湿し水ローラー側へ移行しにくく出来るため好都合である。
【0107】
[機上現像方法]
本発明の印刷版材料の好ましい態様である、赤外線レーザー熱溶融・熱融着方式の印刷版材料の画像形成層は、赤外線レーザー露光部が親油性の画像部となり、未露光部の層が除去されて非画像部となる。未露光部の除去は、水洗によっても可能であるが、印刷機上で湿し水およびまたはインクを用いて除去する、いわゆる機上現像することも十分に可能である。
【0108】
印刷機上での画像形成層の未露光部の除去は、版胴を回転させながら水付けローラーやインクローラーを接触させて行なうことができるが、下記に挙げる例のような、もしくは、それ以外の種々のシークエンスによって行なうことができる。また、その際には、印刷時に必要な湿し水水量に対して、水量を増加させたり、減少させたりといった水量調整を行ってもよく、水量調整を多段階に分けて、もしくは、無段階に変化させて行ってもよい。
【0109】
(1)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
【0110】
(2)印刷開始のシークエンスとして、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
【0111】
(3)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーとインクローラーとを実質的に同時に接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
【実施例】
【0112】
実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【0113】
実施例1
基材
基材1
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0114】
次いでこのアルミニウム板を、塩酸10g/L、アルミを0.5g/L含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が50A/dm2の条件で電解粗面化処理を行なった。この際の電極と試料表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は12回に分割して行い、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dm2とし、合計で480C/dm2の処理電気量(陽極時)とした。また、各回の粗面化処理の間に5秒間の休止時間を設けた。
【0115】
電解粗面化後は、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマットを含めた溶解量が1.2g/m2になるようにエッチングし、水洗し、次いで25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。次いで、20%硫酸水溶液中で、20Vの定電圧条件で電気量が150C/dm2となるように陽極酸化処理を行い、さらに水洗した。
【0116】
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、70℃に保たれた1質量%のリン酸二水素ナトリウム水溶液に30秒間浸漬し、水洗を行った後に80℃で5分間乾燥し、基材1を得た。基材1のRaは460nmであった(WYKO社製RST Plusを使用し、40倍で測定した)。
【0117】
続いて、酢酸アンモニウム(関東化学株式会社製)を固形分濃度0.1質量%の水溶液とし、90℃に液温を保った浴中に、攪拌しながら60秒浸漬処理後、水洗、乾燥した後、カルボキシメチルセルロース1150(ダイセル化学株式会社製)を固形分濃度0.1質量%の水溶液とし、80℃に液温を保った浴中に、攪拌しながら30秒浸漬処理後、水洗、乾燥した。
【0118】
平版印刷版材料の作製
[印刷版材料1]
下記組成の素材を、暗室下で十分に攪拌混合した後、純水で濃度を適宜希釈調整し、濾過して、固形分2.5質量%の可視画付与層兼画像形成層(1)の塗布液を得た。次いで、親水性層上に、可視画付与層兼画像形成層(1)の塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥後の付量が0.8g/m2となるように塗布し、温度50℃で3分間乾燥した。次いで、35℃24時間のエイジング処理を行って、印刷版材料1〜11を得た。表中の質量部比は乾燥後の固形分中の質量比率を表す。
【0119】
可視画付与層兼画像形成層(1)の塗布液組成
【0120】
【表1】

【0121】
【化1】

【0122】
[印刷版材料2]
比較の平版印刷版材料として、可視画付与層兼画像形成層(1)の塗布液組成のうち、化合物A、Bを除いた以外は同様にして、印刷版材料2を作製した。
【0123】
赤外線レーザー露光による画像形成
平版印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを400mJ/cm2として、2400dpi(dpiは2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成した。露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像とを含むものである。
【0124】
印刷方法
印刷機:三菱重工業(株)製DAIYA1F−1を用いて、コート紙、湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)2質量%、インク(東洋インク社製TKハイユニティ紅)を使用して印刷を行った。印刷版材料は露光後そのままの状態で版胴に取り付け、PS版と同じ刷り出しシークエンスを用いて印刷した。
【0125】
印刷評価
[機上現像性]
各平版印刷版材料について、刷り出しから何枚目の印刷で機上現像が終了するか求めた。機上現像終了の指標は、印刷物上で非画像部の汚れがなく、かつ、ベタ画像部の濃度が1.6以上(Macbeth RD918を用いてMのモードで測定し)であり、かつ、95%の網点画像が開いていることとした。良好な印刷が得られるまでの損紙の枚数を表に示した。
【0126】
[耐刷性評価]
2万枚までの印刷を行い、3%網点画像が欠け始めた時点の印刷枚数を耐刷性の指標とした。なお、機上現像が不可能な場合や、地汚れが大きく耐刷性の判定が困難なものは表中で「−」と記載している。結果から、本発明の平版印刷版材料が良好な耐刷性を有していることがわかる。
【0127】
[可視画性の評価]
赤外線レーザー露光による画像形成の平版印刷版材料をグレタグマクベス社製、標準光源装置プルーフライト(反射用)LD50−440モデルの光源下で観察を行い、網点ステップ部の画像を観察した。その際の網点%の異なるステップ同士の階調差の判別性の可否を比較した。
【0128】
評価基準
5:網点1%から99%の全領域において網点の階調差Δ%が5%のステップの差を目視判別可能
4:網点5%から95%の領域において網点の階調差Δ%が5%のステップの差を目視判別可能
3:網点10%から90%の領域において網点の階調差Δ%が20%のステップの差を目視判別可能
2:網点0%(未露光部)と50%および100%(ベタ露光部)ののステップの差を目視判別可能
1:網点0%(未露光部)と100%(ベタ露光部)ののステップの差を目視判別可能
評価した結果を表2に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
表2の結果より、本発明の可視画付与層は、基本的な印刷性能を犠牲にすることなく露光後の目視判別性が良好であり、可視画性が良好となる。
【0131】
また、印刷版材料1の画像露光後に、35度に温度調整した5%アスコルビン酸水溶液浴に攪拌しながら60秒浸漬して、露光部に発生した可視画像が消色されるのを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱または光により、酸化力を生じる化合物Aと、酸化力を生じたAによって酸化される化合物B、およびBの酸化物との共存下で色調が変化するバインダーCを含有する可視画付与層を有することを特徴とする平版印刷版材料。
【請求項2】
化合物Bがヨウ素化合物であり、バインダーCがポリビニルアルコール樹脂、アミロース、アミロペクチン、セルロース樹脂のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版材料。
【請求項3】
化合物Aがハロゲン化銀であることを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版材料。
【請求項4】
像様に熱または光を与えることにより、化合物Aに酸化力を生じさせ、この化合物Aで化合物Bを酸化させてバインダーCとの共存下で色調を変化させることを特徴とする平版印刷版材料の可視画付与方法。
【請求項5】
化合物Bがヨウ素化合物であり、バインダーCがポリビニルアルコール樹脂、アミロース、アミロペクチン、セルロース樹脂のいずれかを含むことを特徴とする請求項4に記載の平版印刷版材料の可視画付与方法。
【請求項6】
化合物Aがハロゲン化銀であることを特徴とする請求項4または5に記載の平版印刷版材料の可視画付与方法。
【請求項7】
可視画像が形成された平版印刷材料に還元剤を供給することにより化合物Bの酸化物を還元して色調の変化を復元することを特徴とする可視画像の消去方法。

【公開番号】特開2006−7514(P2006−7514A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186170(P2004−186170)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】