説明

平版印刷版用支持体およびネガ型感光性平版印刷版

【課題】耐刷性、耐地汚れ性、インキ脱離性および耐網がらみ性の全てに優れた平版印刷版が得られる平版印刷版用支持体、およびネガ型感光性平版印刷版を提供する。
【解決手段】親水性層が含有する無機フィラーの粒度分布のピークが0.2μm以上0.6μm未満の範囲と、0.6μm以上1.5μm未満の範囲に存在し、0.2μm以上0.6μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度をfx、0.6μm以上1.5μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度をfyとしたとき、fx/fy比が1.5以上であり、かつ分布頻度fyが25%以上である平版印刷版用支持体、およびこれを用いたネガ型感光性平版印刷版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に少なくとも親水性層を有する平版印刷版用支持体、および該平版印刷版用支持体を用いたネガ型感光性平版印刷版に関する。詳しくは実質的にアルカリ剤を含有しないケミカルレス現像によって現像処理する平版印刷版に好適な平版印刷版用支持体、およびネガ型感光性平版印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CTP(Computer To Plateの略)はJDF(Job Definition Formatの略)の拡充によりフルデジタル化が進み大幅に作業の効率化が図られてきている。また、出力機や印刷版等のハード面においても、プロセスレスやケミカルレスへの展開により効率化は勿論、人の健康や環境にも配慮したもの作りが浸透している。しかし、現在主流となっているサーマル型やフォトポリ型CTP印刷版では、印刷版をレーザー露光した後、強アルカリ剤を含有する現像液を用いて非画像部を溶出除去、その後水洗及びガム引き工程を経て印刷に供されるものとなるため、ケミカルレスとして十分とは言えないものであった。
【0003】
上記のような強アルカリ剤含有現像液を用いることを回避し、水などで現像可能なネガ型感光性平版印刷版の提案がされている。例えば特開2003−215801号公報(特許文献1)には、プラスチックフィルム支持体上に親水性層を有し、該親水性層上に側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有するカチオン性水溶性重合体、または側鎖にビニル基が置換したフェニル基及びスルホン酸塩基を有する水溶性重合体、及び光重合開始剤または酸発生剤を含有する感光層を有するネガ型感光性平版印刷版が開示されている。
【0004】
同公報には、かかる親水性層として、特公昭49−2286号公報に記載のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレート系ポリマーによる親水性樹脂層、特公昭56−2938号公報に記載の尿素樹脂と顔料から構成される親水性層、特開昭48−83902号公報に記載のアクリルアミド系ポリマーをアルデヒド類で硬化させて得られる親水性層、特開昭62−280766号公報に記載の水溶性メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、水不溶性無機粉体を含有する組成物を硬化させて得られる親水性層、特開平8−184967号公報に記載の側鎖にアミジノ基を有する繰り返し単位を含む水溶性ポリマーを硬化して得られる親水性層、特開平8−272087号公報に記載の親水性(共)重合体を含有し、加水分解されたテトラアルキルオルソシリケートで硬化された親水性層、特開平10−296895号公報に記載のオニウム基を有する親水性層、特開平11−311861号公報に記載のルイス塩基部分を有する架橋親水性ポリマーを多価金属イオンとの相互作用によって三次元架橋させて得られる親水性層、特開2000−122269号公報に記載の親水性樹脂及び水分散性フィラーを含有する親水性層等が例示される。しかしながら前述したカチオン性水溶性重合体やスルホン酸塩基を有する水溶性重合体を含有する感光層にこれらの親水性層を組み合わせても、十分な耐刷性や耐汚れ性を得ることは困難であった。
【0005】
このような問題を解決する技術として、特開2008−265297号公報(特許文献2)には、支持体上に水溶性ポリマーと該水溶性ポリマーを架橋する架橋剤とコロイダルシリカを含有し、該水溶性ポリマーとコロイダルシリカの比率を特定した親水性層を有するネガ型感光性平版印刷版が開示され、更に特開2009−226596号公報(特許文献3)では、親水性層が少なくとも水溶性ポリマー及び無機微粒子を含有し、該親水性層の膜面pH値を7.0以上としたネガ型感光性平版印刷版が開示されている。このようなネガ型感光性平版印刷版により水などでの現像が可能となったが、印刷条件によってはシャドー部に汚れが発生する網絡みと呼ばれる現象が発生したり、部分的に画像部が欠落し十分な耐刷性が得られない場合があり、改善が求められていた。
【0006】
水などでのケミカルレス現像が可能なネガ型感光性平版印刷版の耐汚れ性を改善する手段として、例えば特開2010−237559号公報(特許文献4)、特開2010−231133号公報(特許文献5)、特開2010−224188号公報(特許文献6)等では、支持体と親水性層との間に中間層を設けることが開示されているが、十分満足できるものではなかった。
【0007】
一方、特開2000−199964号公報(特許文献7)では耐汚れ性に優れた平版印刷版用支持体として、多孔質無機粒子と、平均粒径が異なる金属酸化物微粒子を2種以上含有する親水性層を有する平版印刷版用支持体が開示され、特開2000−229485号公報(特許文献8)では耐刷性と耐汚れ性に優れた印刷版用支持体として、多孔質無機粒子または薄層状無機粒子を含有する親水性層を有する印刷版用支持体が開示されている。また特開2002−19315号公報(特許文献9)では平均粒径の異なる同一骨格を有する粒子を含有する親水性層を有する平版印刷版用支持体が開示され、平均粒径が1〜10nmのコロイダルシリカと0.2〜10μmの細孔シリカ等を組み合わせた具体例が記載される。特開2003−231374号公報(特許文献10)では、基材上に特定の表面形状を有する親水性層を設けた印刷版材料が記載され、平均粒径が3〜100nmの金属酸化物微粒子と平均粒径が1μm以上の多孔質金属酸化物粒子を組み合わせた具体例が記載される。しかしながら耐刷性、耐地汚れ性、耐網がらみ性、及びインキ脱離性の全てに満足できる平版印刷版用支持体支持体、及びネガ型感光性平版印刷版は得られず、改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−215801号公報
【特許文献2】特開2008−265297号公報
【特許文献3】特開2009−226596号公報
【特許文献4】特開2010−237559号公報
【特許文献5】特開2010−231133号公報
【特許文献6】特開2010−224188号公報
【特許文献7】特開2000−199964号公報
【特許文献8】特開2000−229485号公報
【特許文献9】特開2002−19315号公報
【特許文献10】特開2003−231374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐刷性、耐地汚れ性、インキ脱離性および耐網がらみ性の全てに優れた平版印刷版が得られる平版印刷版用支持体を提供することにある。また耐刷性、耐地汚れ性、インキ脱離性および耐網がらみ性の全てに優れたネガ型感光性平版印刷版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の発明により達成された。
1)基材上に無機フィラーと親水性バインダーを含有する親水性層を有する平版印刷版用支持体であって、該親水性層が含有する無機フィラーの粒度分布のピークが0.2μm以上0.6μm未満の範囲と、0.6μm以上1.5μm未満の範囲に存在し、0.2μm以上0.6μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度をfx、0.6μm以上1.5μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度をfyとしたとき、fx/fy比が1.5以上であり、かつ分布頻度fyが25%以上であることを特徴とする平版印刷版用支持体。
2)上記(1)記載の平版印刷版用支持体の親水性層上に、少なくとも光重合性の感光層を有するネガ型感光性平版印刷版。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐刷性、耐地汚れ性、インキ脱離性および耐網がらみ性の全てに優れた平版印刷版が得られる平版印刷版用支持体を提供することができる。また耐刷性、耐地汚れ性、インキ脱離性および耐網がらみ性の全てに優れたネガ型感光性平版印刷版を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
<基材>
本発明の平版印刷版用支持体が有する基材としては、アルミニウム板、各種プラスチックフィルム、各種プラスチックによりラミネートされた紙などが挙げられる。中でも柔軟性があり、張力による変形の少ない素材である各種プラスチックフィルムが好ましく用いられる。好ましいプラスチックフィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロース等が代表的に挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく用いられる。
【0014】
これらの基材の表面は、親水性層や必要に応じて設けられる裏塗り層などとの接着を良くするために、表面処理されていても良い。こうした表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。更なる表面処理として基材上に設ける親水性層との接着性を高めるため基材上に下引き層を設けても良い。
【0015】
<親水性層>
本発明の平版印刷版用支持体は、基材上に親水性層を有し、該親水性層は無機フィラーを含有する。親水性層が含有する無機フィラーの粒度分布は、0.2μm以上0.6μm未満の範囲と0.6μm以上1.5μm未満の範囲の少なくとも2カ所にピークが存在し、0.2μm以上0.6μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度をfx、0.6μm以上1.5μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度をfyとしたとき、fx/fy比が1.5以上であり、かつ分布頻度fyが25%以上である。fx/fy比は2.0以上であることが好ましい。なお、上限は3.5未満であることが望ましい。なお上記した範囲で、例えば0.2μm以上0.6μm未満の範囲に複数のピークが存在する場合は高い方のピークにて分布頻度fxを求めれば良いが、この2つのピークが隣接し、2つのピーク間の凹部の高さが高い方のピークの60%以上であるような場合においては、本発明では1つのピークと見なすこととする。これにより耐刷性や耐地汚れ性にとりわけ優れた平版印刷版用支持体が得られる。
【0016】
本発明における粒度分布とは体積基準の粒度分布であり、測定対象となるサンプル粒子群がどのような粒子径のものでどのような割合で構成されているかを表す指標であり、一般に知られる公知の方法により測定することができる。測定方法としては例えば、ふるい法、コールター法(コールター原理)、動的光散乱法、画像解析法、レーザー回折散乱法等が知られているが、本発明においては、測定する粒子サイズや再現性、操作性等の観点からレーザー回折散乱法が好ましく用いられ、例えばHORIBA(株)製LA−920(レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置)により測定することができる。また分布頻度はその測定結果に基づき、測定結果を大きさ(粒子径)毎の存在比率の分布として求めることができる。
【0017】
本発明における粒度分布と分布頻度は、塗工液中で分散された無機フィラーを測定することで、あるいは塗布された親水性層の乾燥塗膜をアルカリにより再溶解した溶液中の無機フィラーを測定することで求めることができる。また後述するように、本発明では2種以上の無機フィラーを併用することができるが、本発明にて好ましく用いられるレーザー回折散乱法ではFraunhofer回折理論とMie散乱理論より光強度の分布パターンを求めるため対象物固有の屈折率が必要となり、屈折率の異なる2種以上の無機フィラーを含有する塗工液の粒度分布や分布頻度を正確に測定することは困難である。しかしこのような場合、予めそれぞれの無機フィラー単体での粒度分布と分布頻度を測定し、得られた測定結果に塗工液中での添加比率を係数として乗じることによって2種以上の無機フィラーを併用する塗工液の粒度分布と分布頻度を求めることができる。
【0018】
<無機フィラー>
親水性層が含有する無機フィラーは、上記のような粒度分布を有する無機フィラーであればフィラーは1種類でもよいが、2種以上を併用することで上記のような粒度分布を比較的容易に得られるため好ましい。中でも平均一次粒子径が0.1μm以上0.6μm未満の無機フィラーと、平均一次粒子径が0.6μm以上2.0μm未満の無機フィラーを組み合わせて用いることが好ましく、このような組み合わせであれば無機フィラーは更に3種、4種と組み合わせて用いてもよい。無機フィラーの添加量は該親水性層の全固形分量に対して60質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上であればより好ましい。
【0019】
上記親水性層に用いる無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、コロイダルシリカ、細孔シリカ、カオリン等が挙げられるが、中でも二酸化チタン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムが好ましい。また、コロイダルシリカや細孔シリカ、及びカオリン等といった珪素含有化合物を用いないことが好ましく、これら珪素含有化合物の含有量を親水性層中の全無機フィラーに対して5質量%以下とすることが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましく、特に1質量%以下、とりわけ0.5質量%以下とすることが好ましい。
【0020】
無機フィラーとして好ましく用いられる二酸化チタンは、ルチル型、アナタース型のいずれでもよく、その製法についても硫酸法、塩素法いずれかに限定されるものではない。それらを単独または混合して使用してもよい。更に、分散安定性や他の機能性の観点から、各種表面処理を施したものを選択的に用いることも可能である。市販されている二酸化チタンとしては、例えば堺化学工業(株)からSR−1、R−650、R−5N、R−7E、R−3L、A−110、A−190等、石原産業(株)からタイペークR−580、同R−930、同A−100、同A−220、同CR−58、チタン工業(株)からクロノスKR−310、同KR−380、同KA−10、同KA−20等、テイカ(株)からチタニックスJR−301、同JR−600A、同JR−800、同JR−701等、デュポン(株)からタイピュアR−900、同R−931等が挙げられる。
【0021】
硫酸バリウムは、バリウム塩素溶液に硫酸塩水溶液を加えて化学的に沈殿させて製造される沈降性硫酸バリウムを用いることが好ましい。沈降性硫酸バリウムは例えば堺化学工業(株)から“バリエース”として様々な粒子径のものや表面処理が施されたものなどが市販されているが、本発明ではいずれも用いることができる。
【0022】
水酸化アルミニウムは、アルミナ含有鉱石であるボーキサイトを苛性ソーダもしくはアルミン酸ナトリウム溶液と混合し、高温高圧条件下でアルミナ成分を抽出し、その抽出液から溶解残分である赤泥を分離除去して、清澄化したアルミン酸ナトリウム溶液を得る。その後、該溶液に種子を添加して水酸化アルミニウムを晶析させ、得られた水酸化アルミニウムを粉砕することで得ることができる。水酸化アルミニウムは昭和電工(株)から“ハイジライト”として各種グレードが市販されており、本発明ではいずれも用いることができる。
【0023】
<親水性バインダー>
本発明の平版印刷版用支持体が有する親水性層は、親水性バインダーを含有する。かかる親水性バインダーとしては、天然物では、澱粉類、海藻マンナン、寒天及びアルギン酸ナトリウム等の藻類から得られるもの、マンナン、ペクチン、トラガントガム、カラヤガム、キサンチンガム、グアービンガム、ローカストビンガム、アラビアガム等の植物性粘質物、デキストラン、グルカン、キサンタンガム、及びレバン等のホモ多糖類、サクシノグルカン、プルラン、カードラン、及びザンタンガム等のヘテロ多糖等の微生物粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼイン及びコラーゲン等のタンパク質、キチン及びその誘導体等が挙げられる。また、半天然物(半合成物)類としては、セルロース誘導体、カルボキシメチルグアーガム等の変性ガム、並びにデキストリン等の培焼澱粉類、酸化澱粉類、エステル化澱粉類等の加工澱粉等が挙げられる。一方、合成品には、ポリビニルアルコール、部分アセタール化ポリビニルアルコール、アリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等の変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸エステル部分けん化物、ポリメタクリル酸塩、及びポリアクリルアマイド等のポリアクリル酸誘導体及びポリメタクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合物、カルボキシビニル重合物、スチレン/マレイン酸共重合物、スチレン/クロトン酸共重合物等が挙げられる。これらの中でも、ゼラチンが好ましく用いられる。
【0024】
また親水性層における親水性バインダーの含有量は、前記無機フィラーとの間に好ましい含有比率があり、全無機フィラー100質量部に対して5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であればより好ましい。30質量%を超えるとフィラー充填密度が低下し十分な親水性が付与できず、耐地汚れ性や耐網がらみ性が低下する場合がある。一方、5質量%未満では塗工液のハンドリング性が低下したり、親水性層形成後にひび割れが生じる場合がある。
【0025】
<架橋剤>
本発明の親水性層は架橋剤を含有することが好ましい。用いる架橋剤としては例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、アルデヒド化合物、シラン化合物、クロム明礬、ジビニルスルホン等が好適に用いることができるが、親水性バインダーがゼラチンである場合に特に好ましい架橋剤はジビニルスルホンである。架橋剤の配合量は前記親水性バインダーの固形分量に対して5〜35質量%が好ましく、更には10〜25質量%とすることが好ましい。架橋剤の添加方法については、該親水性層の塗工液を製造する際に添加したり、塗布直前にインラインで添加する方法などがあるが、いずれでも良い。
【0026】
親水性層を十分に架橋させるため、例えば親水性層を形成し光重合性の感光層を塗布するまでの間に30〜60℃、好ましくは40〜50℃の温度下の条件で0.5〜10日間、好ましくは1〜7日間の加温処理を施すことが好ましい。このような加温処理によって該親水性層は露光後の現像処理により露出され、印刷時に非画像部として印刷に供されても、印刷適性としては当然であるが、耐傷性という観点において十分な性能が発現できる。
【0027】
<光重合性の感光層>
次に本発明のネガ型感光性平版印刷版について説明する。本発明のネガ型感光性平版印刷版は、前記した平版印刷版用支持体の親水性層上に、少なくとも光重合性の感光層を有する。かかる感光層は光重合開始剤及び重合性二重結合基を有する化合物を含有することが好ましい。
【0028】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、従来から知られる公知の化合物を用いることができる。例えば、トリハロアルキル置換された化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物としてs−トリアジン化合物及びオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)、有機ホウ素塩、ヘキサアリールイミダゾール、チタノセン化合物、チオ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらの光重合開始剤の中でも、特にトリハロアルキル置換化合物、有機ホウ素塩が好ましく用いられる。更に好ましくは、トリハロアルキル置換化合物と有機ホウ素塩を組み合わせて用いることである。トリハロアルキル置換化合物と有機ホウ素塩を組み合わせることで、高感化を達成することができ、また、これらを組み合わせて使用することで発生したラジカル種が安定するため、更に感度を向上することができるために好ましい。
【0029】
光重合開始剤であるトリハロアルキル置換化合物は、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール誘導体が挙げられ、あるいは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環あるいは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0030】
トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を以下に示す。
【0031】
【化1】

【0032】
【化2】

【0033】
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記一般式1で表される。
【0034】
【化3】

【0035】
式中、R、R、R及びRは各々同じであっても異なっていても良く、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらのうちで、R、R、R及びRのうちの一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0036】
有機ホウ素塩を構成するカチオンとしては、アルカリ金属イオン及びオニウム化合物が挙げられるが、好ましくはオニウム塩であり、例えばテトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
上述したような光重合開始剤の含有量は、後述する重合性二重結合基を有する化合物に対して、1〜50質量%の範囲が好ましく、更には5〜30質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0040】
<重合性二重結合基を有する化合物>
重合性二重結合基を有する化合物は、重合性二重結合基を有する高分子化合物あるいは重合性二重結合基を有する低分子化合物であり、重合性二重結合基を有する高分子化合物及び重合性二重結合基を有する低分子化合物を併用することが光重合効率の上から好ましい。
【0041】
重合性二重結合基を有する高分子化合物について説明する。この重合性二重結合基を有する高分子化合物は、任意の繰り返し単位によって形成された高分子化合物であり、任意の連結基を介して重合性二重結合基が側鎖に結合した高分子化合物である。中でもビニル基を反応性二重結合基として有した高分子化合物が好ましく用いられ、ビニル基が置換したフェニル基が直接もしくは任意の連結基を介して主鎖と結合した高分子化合物が特に好ましく用いられる。また、アルカリ性現像液、もしくは中性現像液(ケミカルレス現像液)での現像を可能にするため、任意の連結基を介して主鎖に連結するカルボキシル基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等を導入することが好ましいが、中でも現像性の高さからスルホン酸基を有する高分子化合物が好ましく用いることができる。該スルホン酸基は塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アミン塩等)を形成しても良い。これらの連結基としては特に限定されず、任意の基、原子またはそれらの複合した基が挙げられる。ビニル基が置換したフェニル基及びスルホン酸基は、それぞれ独立して主鎖に結合していても良いし、あるいはビニル基が置換したフェニル基とスルホン酸基が連結基の一部または全部を共有する形で結合していても良い。
【0042】
上記ビニル基が置換したフェニル基において、該フェニル基は置換されていても良く、また、該ビニル基はハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていても良い。
【0043】
本発明のビニル基が置換したフェニル基が直接もしくは任意の連結基を介して主鎖と結合した高分子化合物は、詳細には、下記一般式2で表される基を側鎖に有するものが好ましい。
【0044】
【化6】

【0045】
式中、R、R及びRは、同じであっても異なっていても良く、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基から選ばれる基を表し、これらの基を構成するアルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等で置換されていても良い。これらの基の中でも、R、Rが水素原子であり、Rが水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)あるものが特に好ましい。
【0046】
式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基から選ばれる基を表す。また、これらの基を構成するアルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等で置換されていても良い。
【0047】
式中、Lは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子または、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子群からなる多価の連結基を表す。具体的には下記に例示される構造単位より構成される基及び下記に示す複素環基が挙げられる。これらの基は単独でも任意の2つ以上が組み合わされていても良い。
【0048】
【化7】

【0049】
連結基Lとしては複素環を含むものが好ましい。Lを構成する複素環の例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらの複素環は置換基を有していても良い。
【0050】
上述した多価の連結基が置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。
【0051】
式中、mは0〜4の整数を表し、pは0または1の整数を表し、qは1〜4の整数を表す。
【0052】
本発明の重合性二重結合基を有する高分子化合物は、上述した側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する繰り返し単位、及びスルホン酸基を有する繰り返し単位からのみなる重合体であっても良いし、あるいは本発明の効果を妨げない限り、更に他の繰り返し単位を導入した重合体であっても良い。また更に、他のモノマーとの共重合体であっても良く、このようなモノマーは1種で用いても良いし、任意の2種類以上を用いても良い。
【0053】
また、本発明の重合性二重結合基を有する高分子化合物は連鎖移動剤を用いることで、任意の置換基を高分子主鎖の末端に導入することができる。具体的には直鎖アルカンチオール、特にアルコキシ基やハロゲン原子が結合した珪素原子が置換した直鎖アルカンチオールを連鎖移動剤として重合時に用いることで、高い画像強度を得ることができるため好ましく用いることができる。このような連鎖移動剤の例として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルジクロロメチルシラン、4−メルカプトブチルトリメトキシシラン、4−メルカプトブチルジメトキシメチルシラン、4−メルカプトブチルトリエトキシシラン、4−メルカプトブチルトリクロロシラン、4−メルカプトブチルジクロロメチルシラン等が挙げられ、これらの分子末端の珪素原子同士は加水分解縮合することで酸素原子を介して結合してシロキサン結合を形成しても良い。
【0054】
本発明の重合性二重結合基を有する高分子化合物の好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例示された構造式の中の数字は共重合体トータル組成100質量%中における各繰り返し単位の質量%を表す。
【0055】
【化8】

【0056】
【化9】

【0057】
本発明の重合性二重結合基を有する高分子化合物の重量平均分子量は、1000から100万の範囲であることが好ましく、更に5万から60万の範囲にあることが特に好ましい。本発明における重合性二重結合基を有する高分子化合物は1種のみの単独で用いても良いし、任意の2種以上を混合して用いても良い。
【0058】
次に、本発明に使用する重合性二重結合基を有する低分子化合物について述べる。この場合の重合性二重結合基を有する低分子化合物とは、上記の光重合性開始剤の光分解により発生するラジカルにより重合を行う化合物であればいずれも好ましく用いることができる。更には、分子内に2個以上の重合性二重結合基を有する化合物を含んで用いた場合には、ラジカルによる重合の結果、架橋物が生成するため、ネガ型感光性平版印刷版材料を構成した場合に、架橋した堅い画像部皮膜を形成することから耐刷性及びインキ乗り性に優れた印刷版を与えるため極めて好ましく用いることができる。こうした目的で用いることのできる重合性二重結合基を有する化合物の例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性アクリル系モノマー等を挙げることができ、あるいはアクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も同様に使用される。
【0059】
本発明のネガ型感光性平版印刷版の感光層には前述の光重合開始剤を増感する化合物を併せて含有することが好ましい。400〜430nmの波長域の感度を増大される化合物としてシアニン系色素、特開平7−271284号公報、特開平8−29973号公報等に記載されるクマリン系化合物、特開平9−230913号公報、特開2001−42524号公報等に記載されるカルバゾール系化合物や、特開平8−262715号公報、特開平8−272096号公報、特開平9−328505号公報等に記載されるカルボメロシアニン系色素、特開平4−194857号公報、特開平6−295061号公報、特開平7−84863号公報、特開平8−220755号公報、特開平9−80750号公報、特開平9−236913号公報等に記載されるアミノベンジリデンケトン系色素、特開平4−184344号公報、特開平6−301208号公報、特開平7−225474号公報、特開平7−5685号公報、特開平7−281434号公報、特開平8−6245号公報等に記載されるピロメチン系色素、特開平9−80751号公報等に記載されるスチリル系色素、あるいは(チオ)ピリリウム系化合物等が挙げられる。これらのうち、シアニン系色素またはクマリン系化合物あるいは(チオ)ピリリウム系化合物が好ましい。
【0060】
本発明のネガ型感光性平版印刷版の感光層を構成するその他の要素として、視認性を高める目的で種々の着色剤を添加することが好ましく行われる。こうした目的で添加される着色剤として着色顔料の水系分散物が最も好ましく用いることができる。こうした顔料の水系分散物の例として各種、黒色、青色、赤色、緑色、黄色等の着色した顔料が水溶性である各種分散剤の存在下に水中で分散された任意の素材が使用可能である。顔料として特に、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等は入手が容易であり水中での分散も比較的容易であるため特に好ましく用いることができる。また、こうした顔料を水中で分散させるために用いることのできる分散剤の例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン基を有する水溶性であるノニオン系界面活性剤や、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ポリスチレン−マレイン酸共重合体、その他各種水溶性高分子が挙げられる。こうした分散剤は着色顔料100質量部に対して5〜50質量部の範囲で含まれていることが好ましい。更に着色顔料を用いる場合には、重合性二重結合を有する化合物100質量部に対して1〜30質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0061】
本発明のネガ型感光性平版印刷版の感光層はシランカップリング剤を含有することが好ましい。感光層がシランカップリング剤を含有することによって優れた耐刷性が得られるが、本発明の親水性層を有するネガ型感光性平版印刷版においては、耐地汚れ性、耐網がらみ性、及びインキ脱離性等が低下することなく耐刷性が向上するため、特に好ましい。
【0062】
シランカップリング剤としては、その目的を達成するものであれば特に限定されず任意のものを用いることができる。例えば、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリス(3−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。中でも、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランが特に好ましい。なお、シランカップリング剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0063】
感光層が含有するシランカップリング剤の量としては、感光層が含有する重合性二重結合基を有する化合物に対して、0.2〜20質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。
【0064】
感光層を構成するその他の要素として、長期にわたる保存に関して、熱重合による暗所での硬化反応を防止するために重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。こうした目的で好ましく使用される重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩類等が好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、本発明の感光性組成物の総固形分質量100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0065】
感光層自体の乾燥固形分塗布量に関しては、乾燥質量で1平方メートルあたり0.3〜10gの範囲の乾燥固形分塗布量で形成することが好ましく、更に0.5〜3gの範囲であることが良好な解像度を発揮し、かつ細線画像や微小網点画像の耐刷性を確保し、同時にインキ乗り性を大幅に向上させるために極めて好ましい。
【0066】
<保護層>
本発明のネガ型感光性平版印刷版材料においては、感光層の上に、更に保護層を設けることも好ましく行われる。保護層は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止し、大気中での露光感度を更に向上させる好ましい効果を有する。更には感光層表面を傷から防止する効果も併せて期待される。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低く力学的強度に優れ、更に、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、光硬化性感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
【0067】
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報等に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが良く、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸等のような水溶性ポリマーが知られているが、これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的に最も良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル及びアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。こうした保護層を適用する際の乾燥固形分塗布量に関しては好ましい範囲が存在し、感光層上に乾燥質量で1平方メートルあたり0.1〜10gの範囲の乾燥固形分塗布量で形成することが好ましく、更には0.2〜2gの範囲が好ましい。保護層は、公知の種々の塗布方式を用いて感光層上に塗布、乾燥される。
【0068】
本発明の平版印刷版用支持体が有する親水性層や、その上層に設けられる光重合性の感光層、及び保護層等を塗布する場合は、支持体上に、上述した要素から構成される組成物の塗液を塗布、乾燥して作製される。塗布方法としては、公知の種々の方法を用いることができ、例えば、バーコーター塗布、スライドホッパーコーティング塗布、カーテン塗布、ブレード塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、回転塗布、ディップ塗布等を挙げることができる。
【0069】
<現像処理>
現像処理における現像液としては、画質向上や現像時間の短縮等を目的として、必要に応じて界面活性剤もしくはアルカリ剤を含有して良い。前述の重合性二重結合を有する化合物がカルボキシル基やスルホ基等の酸性基を有し、該酸性基が感光層中において、金属塩もしくはアミン塩の形態になっている場合には、後述するアルカリ剤を実質的に含有しない現像液、すなわち、pHが9未満の中性現像液で現像することが可能である。特に重合性二重結合を有する化合物がスルホ基の中和塩を有する場合には良好な現像性を得ることが可能であり、純水で溶出可能であるが、カルボキシル基中和塩の場合やスルホ基中和塩を有していても十分な溶解性を得ることができない場合は、該中性現像液に現像性の向上を目的として活性剤を添加することができる。
【0070】
界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン性、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類等のアニオン性、アルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性の界面活性剤、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等の水溶性有機溶剤等が挙げられる。
【0071】
一方、前述の重合性二重結合を有する化合物がカルボキシル基やスルホ基など中和されていない酸性基を有する場合には、現像液はアルカリ剤が含有していることが好ましい。アルカリ剤としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第二燐酸ナトリウム、第三燐酸ナトリウム、第二燐酸アンモニウム、第三燐酸アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウム等の無機アルカリ塩、またはモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等が挙げられ、これらを添加し、pH9以上に調整することでアルカリ性現像液として用いることができる。また、前述の中性現像液として用いた活性剤等を該アルカリ現像液に添加することも現像性改善の上で好ましい。
【0072】
なお、現像は、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の公知の現像法により、通常、好ましくは10〜60℃程度、更に好ましくは15〜45℃程度の温度で、5秒〜10分程度の時間でなされる。その際、感光層上に必要に応じて設けられる保護層は、予め水などで除去しておいてもよいし、現像時に除去することとしてもよい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、無論この記述により本発明が限定されるものではない。なお、以下の記述の中における単位として%や部は、特に記載がない限り質量基準である。
【0074】
(実施例1)
<親水性層または平版印刷版用支持体>
厚みが約200μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、下記組成の親水性層塗工液1をスライドホッパーコーティング法により塗布した。その際、湿分塗布量が35g/mになるように予め設定して行った。塗布後直ちに1〜5℃の冷風にて塗膜をゲル化、その後は50℃に設定された乾いた風を用いて乾燥を行った。乾燥後には40℃40%RHに調整された恒温恒湿機に入れ7日間の加温を施すことで平版印刷版用支持体を完成させた。
【0075】
<親水性層塗工液1>
アルカリ処理ゼラチン 1.2部
無機フィラー1:二酸化チタン 4.0部
(TISR1、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒2.04)
無機フィラー2:硫酸バリウム 1.6部
(B35、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒1.23)
無機フィラー3:水酸化アルミニウム 0.4部
(H42、昭和電工(株)製、平均一次粒子径≒1.0μm、相対屈折率≒1.24)
分散剤(アクリル酸共重合金属塩、10%溶液) 1.0部
界面活性剤(POEノニルフェニルエーテル硫酸Na、10%溶液) 0.4部
硬膜剤(ジビニルスルホン、5%溶液) 4.0部
水で全量を35部とした。
【0076】
上記親水性層塗工液1が含有する無機フィラーの粒度分布と分布頻度に関しては、上記親水性層塗工液1が含有する無機フィラー2と3を添加せず、親水性層塗工液中に無機フィラー1が単独で存在する塗工液を作製し、また同様の手法で親水性層塗工液中に無機フィラー2や3が単独で存在する塗工液をそれぞれ作製し、各々の無機フィラーの粒度分布と分布頻度をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA(株)製LA920)を用いて測定し、得られた各々単体分散液の粒度分布に添加比率を係数として乗じ、上述の親水性層塗工液1の粒度分布と分布頻度を算出した。この結果を表1に示す。
【0077】
<光重合性感光層>
上記で得られた親水性層上に、下記光重合性感光層塗工液を固形分量が1.5g/mになるよう塗布を行い、塗布後75℃の乾燥器内にて10分間乾燥した。
【0078】
<光重合性感光層塗工液>
スルホン酸型重合体 SP−2(重量平均分子量40万) 1部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 0.5部
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン 0.08部
光重合開始剤 BC−6 0.1部
光重合開始剤 T−8 0.1部
増感剤 下記構造 0.05部
着色剤 ピグメントブルー15 0.2部
アセトン 5部
エタノール 5部
テトラヒドロフラン 10部
【0079】
【化10】

【0080】
<保護層>
下記保護層処方に従って塗布液を作製し、前記光重合性感光層上に固形分量が1.5g/mになるよう塗布を行い、塗布後75℃の乾燥器内にて10分間乾燥を行ってネガ型感光性平版印刷版を得た。
【0081】
<保護層処方>
ポリビニルアルコール PVA−102((株)クラレ製) 1部
イオン交換水 9部
【0082】
<露光・現像処理>
上記で得られたネガ型感光性平版印刷版について、405nmに発光する青紫半導体レーザー(出力50mW)を露光光源に用い、版面露光エネルギーを200μJ/cmに設定してテストチャート画像を露光した。その後、25℃のイオン交換水に15秒に漬けてセルローススポンジで光重合性感光層/保護層を有する側の面を擦り現像、その後乾燥することにより印刷刷版を作製した。この印刷刷版を用いて以下の方法により、耐刷性と耐地汚れ性、インキ脱離性、及び耐網絡み性について評価を行った。
【0083】
<耐刷性>
印刷機はオフセット枚葉印刷機ハイデルベルグQM46を使用、印刷インキにはDIC(株)製のニューチャンピオンFグロス墨H、給湿液には(株)日研化学研究所製アストロマークIIIの1%希釈液を用いて印刷を行った。なお、版仕立てにおいてゲージフィルムを用いて標準200μmのところ300μm(+100μm)仕立てとした。評価としては、スタート時の印刷紙面と1万枚印刷時の印刷紙面とを比較して、5〜20%のハイライト網点部の減衰率及びベタ部における微細な欠陥等を25倍ルーペで入念に観察し、以下の評価基準を用いて判定した。この結果を表1に示す。
◎:ハイライト部、ベタ部共に殆ど変化が認められない。
○:ハイライト部で僅かな減衰(減衰率10%以内)が認められる。
但し、ベタ部において欠陥は認められない。
△:ハイライト部で明確な減衰(減衰率10%以上)が認められる。
但し、ベタ部において欠陥は認められない。
×:ハイライト部が5割以上減衰している、
またはベタ部において欠陥などの異常が認められる。
【0084】
<耐地汚れ性>
印刷機は、耐刷性と同様オフセット枚葉印刷機ハイデルベルグQM46を使用、印刷インキにはニューチャンピオンFグロス紫S、給湿液にはHuber Group製のCombiFIX−XLの1%希釈液を用いて印刷を行った。なお、版仕立てについては標準200μmとした。耐地汚れ性評価としては、スタート時の印刷紙面と3,000枚印刷時の印刷紙面とを比較し、以下の評価基準を用いて判定した。この結果を表1に示す。
◎:3,000枚目まで地汚れが認められない。
○:2,000〜3,000枚未満の間で地汚れが認められる。
△:1,000〜2,000枚未満の間で地汚れが認められる。
×:1〜1,000枚未満の間で地汚れが認められる。
【0085】
<インキ脱離性>
印刷機は、耐刷性と同様にオフセット枚葉印刷機ハイデルベルグQM46を使用、印刷インキには東洋インキ(株)製のハイユニティーネオソイ紅LZ、給湿液には日研化学(株)製アストロマークIIIの1%希釈液を用いて印刷を行った。なお、版仕立てについては標準200μmとした。印刷方法については、まず乾いた印刷刷版に水フォームローラーをタッチさせる前にインキフォームローラーを版面に2回転タッチさせる、その後間もなく給紙と同時に水フォームローラーをタッチさせる方法により印刷を行った。印刷紙面において完全に汚れがなくなるのに要した印刷枚数からインキ脱離性の評価として以下基準により判定した。この結果を表1に示す。
◎:1〜20枚未満で非画像部の汚れが完全になくなる。
○:20〜50枚未満で非画像部の汚れが完全になくなる。
△:50〜100枚未満で非画像部の汚れが完全になくなる。
×:非画像部の汚れが完全になくなるのに、100枚以上を要する。
【0086】
<耐網絡み性>
上記インキ脱離性の評価のため500枚以上印刷を行った後に印刷機を一旦停止してブランケットのみを洗浄した。その後、再び通常通り水フォームローラーを版面に5回転以上タッチさせた後に給紙を開始する方法で印刷を行った。耐網絡み性の評価については、5,000枚目の印刷紙面の観察により、以下の評価基準を用いて判定した。この結果を表1に示す。
◎:90%以上のシャドウ部でも絡みの発生が認められない、
かつ再現性に問題が認められない。
○:85%以上90%未満の網点部で僅かに絡みが認められるも、
実用上問題ないレベル。
△:70%以上85%未満の網点部で絡みが認められる。
×:70%未満の網点部で絡みが認められる、また再現性に問題が認められる。
【0087】
(実施例2)
実施例1で用いた親水性層塗工液1を下記親水性塗工液2に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2のネガ型感光性平版印刷版を得た。親水性層塗工液2における無機フィラーの粒度分布と分布頻度に関しては実施例1と同様の手法にて求めた。更に得られたネガ型感光性平版印刷版の印刷適性についても実施例1と同様にして評価を行った。これらの結果を表1に示す。
<親水性層塗工液2>
アルカリ処理ゼラチン 1.2部
無機フィラー1:二酸化チタン 4.0部
(TISR1、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒2.04)
無機フィラー2:硫酸バリウム 1.0部
(B35、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒1.23)
無機フィラー3:水酸化アルミニウム 1.0部
(H42、昭和電工(株)製、平均一次粒子径≒1.0μm、相対屈折率≒1.24)
分散剤(アクリル酸共重合金属塩、10%溶液) 1.0部
界面活性剤(POEノニルフェニルエーテル硫酸Na、10%溶液) 0.4部
硬膜剤(ジビニルスルホン、5%溶液) 4.0部
水で全量を35部とした。
【0088】
(比較例1)
実施例1で用いた親水性層塗工液1を下記親水性塗工液3に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1のネガ型感光性平版印刷版を得た。親水性層塗工液3における無機フィラーの粒度分布と分布頻度に関しては実施例1と同様の手法にて求めた。更に得られたネガ型感光性平版印刷版の印刷適性についても実施例1と同様にして評価を行った。これらの結果を表1に示す。
<親水性層塗工液3>
アルカリ処理ゼラチン 1.2部
無機フィラー1:二酸化チタン 4.0部
(TISR1、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒2.04)
無機フィラー2:硫酸バリウム 0.4部
(B35、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒1.23)
無機フィラー3:水酸化アルミニウム 1.6部
(H42、昭和電工(株)製、平均一次粒子径≒1.0μm、相対屈折率≒1.24)
分散剤(アクリル酸共重合金属塩、10%溶液) 1.0部
界面活性剤(POEノニルフェニルエーテル硫酸Na、10%溶液) 0.4部
硬膜剤(ジビニルスルホン、5%溶液) 4.0部
水で全量を35部とした。
【0089】
(実施例3)
実施例1で用いた親水性層塗工液1を下記親水性塗工液4に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3のネガ型感光性平版印刷版を得た。無機フィラーの構成が単一組成のため、無機フィラーの粒度分布と分布頻度は親水性層塗工液4から直接求めた。更に得られたネガ型感光性平版印刷版の印刷適性については実施例1と同様にして評価を行った。これらの結果を表1に示す。
<親水性層塗工液4>
アルカリ処理ゼラチン 1.2部
無機フィラー1:二酸化チタン 6.0部
(TISR1、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒2.04)
分散剤(アクリル酸共重合金属塩、10%溶液) 1.0部
界面活性剤(POEノニルフェニルエーテル硫酸Na、10%溶液) 0.4部
硬膜剤(ジビニルスルホン、5%溶液) 4.0部
水で全量を35部とした。
【0090】
(比較例2)
実施例1で用いた親水性層塗工液1を下記親水性塗工液5に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2のネガ型感光性平版印刷版を得た。無機フィラーの構成が単一組成のため、無機フィラーの粒度分布と分布頻度は親水性層塗工液5から直接求めた。更に得られたネガ型感光性平版印刷版の印刷適性については実施例1と同様にして評価を行った。これらの結果を表1に示す。
<親水性層塗工液5>
アルカリ処理ゼラチン 1.2部
無機フィラー1:硫酸バリウム 6.0部
(B35、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒1.23)
分散剤(アクリル酸共重合金属塩、10%溶液) 1.0部
界面活性剤(POEノニルフェニルエーテル硫酸Na、10%溶液) 0.4部
硬膜剤(ジビニルスルホン、5%溶液) 4.0部
水で全量を35部とした。
【0091】
(実施例4)
実施例1で用いた親水性層塗工液1を下記親水性塗工液6に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4のネガ型感光性平版印刷版を得た。親水性層塗工液6における無機フィラーの粒度分布と分布頻度に関しては実施例1と同様の手法にて求めた。更に得られたネガ型感光性平版印刷版の印刷適性についても実施例1と同様にして評価を行った。これらの結果を表1に示す。
<親水性層塗工液6>
アルカリ処理ゼラチン 1.2部
無機フィラー1:二酸化チタン 4.0部
(TISR1、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒2.04)
無機フィラー2:硫酸バリウム 2.0部
(B35、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒1.23)
分散剤(アクリル酸共重合金属塩、10%溶液) 1.0部
界面活性剤(POEノニルフェニルエーテル硫酸Na、10%溶液) 0.4部
硬膜剤(ジビニルスルホン、5%溶液) 4.0部
水で全量を35部とした。
【0092】
(比較例3)
実施例1で用いた親水性層塗工液1を下記親水性塗工液7に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例3のネガ型感光性平版印刷版を得た。親水性層塗工液7における無機フィラーの粒度分布と分布頻度に関しては実施例1と同様の手法にて求めた。更に得られたネガ型感光性平版印刷版の印刷適性についても実施例1と同様にして評価を行った。これらの結果を表1に示す。
<親水性層塗工液7>
アルカリ処理ゼラチン 1.2部
無機フィラー1:二酸化チタン 2.0部
(TISR1、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒2.04)
無機フィラー2:硫酸バリウム 4.0部
(B35、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒1.23)
分散剤(アクリル酸共重合金属塩、10%溶液) 1.0部
界面活性剤(POEノニルフェニルエーテル硫酸Na、10%溶液) 0.4部
硬膜剤(ジビニルスルホン、5%溶液) 4.0部
水で全量を35部とした。
【0093】
(比較例4)
実施例1で用いた親水性層塗工液1を下記親水性塗工液8に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例4のネガ型感光性平版印刷版を得た。親水性層塗工液8における無機フィラーの粒度分布と分布頻度に関しては実施例1と同様の手法にて求めた。更に得られたネガ型感光性平版印刷版の印刷適性についても実施例1と同様にして評価を行った。これらの結果を表1に示す。
<親水性層塗工液8>
アルカリ処理ゼラチン 1.2部
無機フィラー1:多孔質シリカ 2.0部
(SYLOJET P403、GRACE Davison(株)製、平均一次粒子径≒3μm、相対屈折率≒1.09)
無機フィラー2:コロイダルシリカ 0.2部
(スノーテックスOXS、日産化学工業(株)製、平均粒子径≒5nm、相対屈折率≒1.85)
無機フィラー3:コロイダルシリカ 4.0部
(スノーテックスOL、日産化学工業(株)製、平均粒子径≒45nm、相対屈折率≒1.85)
分散剤(アクリル酸共重合金属塩、10%溶液) 1.0部
界面活性剤(POEノニルフェニルエーテル硫酸Na、10%溶液) 0.4部
硬膜剤(ジビニルスルホン、5%溶液) 4.0部
水で全量を35部とした。
【0094】
(比較例5)
実施例1で用いた親水性層塗工液1を下記親水性塗工液9に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例5のネガ型感光性平版印刷版を得た。親水性層塗工液9における無機フィラーの粒度分布と分布頻度に関しては実施例1と同様の手法にて求めた。更に得られたネガ型感光性平版印刷版の印刷適性についても実施例1と同様にして評価を行った。これらの結果を表1に示す。
<親水性層塗工液9>
アルカリ処理ゼラチン 1.2部
無機フィラー1:多孔質シリカ 4.2部
(サイリシア435、富士シリシア(株)製、平均一次粒子径≒4.1μm、相対屈折率≒1.09)
無機フィラー2:コロイダルシリカ 1.8部
(スノーテックスS、日産化学工業(株)製、平均粒子径≒9.5nm、相対屈折率≒1.85)
分散剤(アクリル酸共重合金属塩、10%溶液) 1.0部
界面活性剤(POEノニルフェニルエーテル硫酸Na、10%溶液) 0.4部
硬膜剤(ジビニルスルホン、5%溶液) 4.0部
水で全量を35部とした。
【0095】
【表1】

【0096】
表1から判るように本発明により、耐刷性と保水性、またインキ脱離性、耐網絡み性の全てにおいて優れた平版印刷版用支持体およびネガ型感光性平版印刷版が得られることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に無機フィラーと親水性バインダーを含有する親水性層を有する平版印刷版用支持体であって、該親水性層が含有する無機フィラーの粒度分布のピークが0.2μm以上0.6μm未満の範囲と、0.6μm以上1.5μm未満の範囲に存在し、0.2μm以上0.6μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度をfx、0.6μm以上1.5μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度をfyとしたとき、fx/fy比が1.5以上であり、かつ分布頻度fyが25%以上であることを特徴とする平版印刷版用支持体。
【請求項2】
上記請求項1に記載の平版印刷版用支持体の親水性層上に、少なくとも光重合性の感光層を有するネガ型感光性平版印刷版。

【公開番号】特開2013−88670(P2013−88670A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229981(P2011−229981)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】