説明

平行に配列されたカーボン・ナノチューブを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料、その生産方法、及びそれから生成された複合材料

実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料について説明する。カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、繊維材料とこの繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブ層とを含み、浸出カーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列され、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、相互に、繊維材料に又はその両方に架橋結合される。架橋結合は、例えば、共有結合又はπスタッキング相互作用により起こる。カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に成長した追加のカーボン・ナノチューブをさらに含むことができる。カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む複合材料及びカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の生産方法についても説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、カーボン・ナノチューブに関し、より詳しくは、繊維材料上に成長させたカーボン・ナノチューブに関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条に基づき、2010年2月2日出願の米国仮特許出願第61/300,783号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。本出願は、また、すべて2009年11月2日出願の米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号、及び2010年11月2日出願の第12/938,328号にも関連し、これらの内容はそれぞれ参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【0003】
(連邦政府の資金提供による研究開発の記載)
該当なし。
【背景技術】
【0004】
様々な高性能の用途における複合材料の使用が増加しているので、改善された性能特性を有する材料に対する需要が増大している。改善された性能特性としては、例えば、改善された引張強度、応力/歪み性能、耐衝撃性、ヤング率、剪断強度、剪断弾性率、靭性、圧縮強度、及び/又は圧縮弾性率などの機械的特性を挙げることができる。上記の特性及びその他の特性を向上させるために、複合材料は、その特性をバルク複合マトリックス(例えばポリマーマトリックス、金属マトリックス、セラミックマトリックス、又はガラスマトリックス)に付与する充填剤(通常、繊維材料)を含み、それによって向上した特性を複合材料全体に与える。
【0005】
繊維含有複合材料の繊維材料は、向上した特性を複合材料に与えるために特に重要である。繊維材料の特性は複合材料全体に与えられるので、繊維材料の機械的特性を向上させると、その結果、バルク複合材料の特性を改善することができる。従来のマイクロスケールの繊維材料は、通常、約800ksiから約900ksiの範囲の引張強度を示す。向上した繊維材料の幾つかは、これらの値より改善されているが、その向上した繊維材料の多くは、欠陥がない連続繊維を生成することができないことから大量生産に適していない。さらに、これらの向上した繊維材料の多くは極めて高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複合材料のナノスケールの強化は、複合材料の機械的特性を改善するために追求されているもう一つのストラテジー(strategy)である。ナノ規模の強化は、非常に高い引張強度を有するカーボン・ナノチューブで実行することが最も多い。例えば、多層カーボン・ナノチューブは、これまで測定されているすべての材料の中で最高の引張強度を有し、約63GPaの引張強度を達成している。さらに、理論的計算では、特定のカーボン・ナノチューブでは最高約300GPaの引張強度が可能であるとの予測がある。カーボン・ナノチューブを利用した複合材料の強化ストラテジーは、通常、繊維材料とは別個の異質な成分として複合マトリックス中にカーボン・ナノチューブを分散させることを含んでいた。これらの複合材料の大部分は、カーボン・ナノチューブ同士を互い実質的に平行な配置構成で配列しようとしている。カーボン・ナノチューブはナノスケールの強化材料として有望であるが、カーボン・ナノチューブを複合マトリックスに組み込む場合、複雑な問題に遭遇する場合がある。これらの問題としては、例えば、カーボン・ナノチューブの担持でマトリックスの粘度が増大すること、カーボン・ナノチューブの配向及び勾配の制御が不確実なことなどが挙げられる。
【0007】
以上を鑑みて、向上した繊維材料を作成するために、拡張性があり、高品質で費用対効果が高いストラテジーは当技術分野においてかなり有利である。非限定的な例では、このような向上した繊維材料を、高性能複合材料の作成に使用することができる。本開示は、これらの要求を満たし、関連する利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施形態では、本開示は、繊維材料と、当該繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブ層と、を含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料について説明する。浸出カーボン・ナノチューブは、実質的に繊維材料の長手軸に平行に配列される。実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、相互に、繊維材料に又はその両方に架橋結合される。
【0009】
ある実施形態では、本開示は、マトリックス材料と、繊維材料と繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブ層とを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料と、を含む複合材料について説明する。浸出カーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列される。実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、相互に、繊維材料に又はその両方に架橋結合される。
【0010】
ある実施形態では、本開示の方法は、繊維材料と、繊維材料に浸出されて繊維材料の表面に実質的に垂直に配列されたカーボン・ナノチューブと、を含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を提供し、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するように、実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブを再配向することを含む。
【0011】
ある実施形態では、本開示の方法は、連続繊維材料を提供し、電界又は磁界の存在下で、連続繊維材料上にカーボン・ナノチューブ層を成長させることを含む。カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を形成するように連続繊維材料に浸出される。浸出カーボン・ナノチューブが繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列されるように、電界又は磁界の方向を合わせる。
【0012】
ある実施形態では、本開示の方法は、繊維材料と、繊維材料に浸出されて繊維材料の表面に実質的に垂直に配列されたカーボン・ナノチューブと、を含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を提供し、架橋結合され実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブを形成するために、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料に架橋ポリマーを添加し、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された架橋結合浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するように、架橋結合され実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブを再配向することを含む。架橋ポリマーは、架橋結合されて実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成する。
【0013】
ある実施形態では、本明細書で説明する連続カーボン・ナノチューブ成長プロセスは、連続繊維材料を提供し、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を形成するように、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブを連続カーボン・ナノチューブ成長プロセスで連続繊維材料上に成長させ、浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、相互に、繊維材料に又はその両方に架橋結合し、連続繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された架橋結合浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するように、機械的プロセス又は化学的プロセスによって架橋結合浸出カーボン・ナノチューブを配向することを含む。架橋結合は、架橋結合浸出カーボン・ナノチューブを形成するように、浸出カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成する架橋ポリマーで、浸出カーボン・ナノチューブを処理することを含む。
【0014】
以上は、以下の詳細な説明をよりよく理解できるように、本開示の特徴をかなり広義に概略説明している。本開示の追加の特徴及び利点を以降で説明するが、これは特許請求の範囲の主題を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】炭素繊維に浸出されているカーボン・ナノチューブの例示的なTEM画像を示す。
【図2】目標長さ40μmの±20%以内であるカーボン・ナノチューブで浸出された炭素繊維の例示的なSEM画像例を示す。
【図3】カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維の織物(fabric weave)内の炭素繊維トウの例示的なSEM画像を示す。
【図4】実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブを有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を作成することができる例示的な化学的プロセスを示す。
【図5】実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブを有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を合成する例示的な連続システムの概略図を示す。
【図6】一連の代表的なSEM画像を示し、繊維材料の表面上に成長したままの状態の実質的に垂直に配列されたカーボン・ナノチューブ(図6A)、及び実質的に垂直に配列されたカーボン・ナノチューブの再配列の後の繊維材料の表面上で実質的に平行に配列されたカーボン・ナノチューブ(図6B〜図6D)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示及びその利点をよりよく理解するために、本開示の特定の実施形態について説明する添付図面と組み合わせて以下の説明を参照されたい。
【0017】
本開示は、一部は実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料、及びそれを含む複合材料を対象とする。本開示は、また、一部は実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を作成する方法も対象とする。
【0018】
繊維材料及びマトリックス材料を含む複合材料では、繊維材料の向上した物理的及び/又は化学的特性を複合材料全体に与えることができる。カーボン・ナノチューブを浸出してある繊維材料を含む複合材料は、改善された機械的強度と例えば電気伝導性及び熱伝導性などの追加の潜在的利点との両方を有する先進の材料を形成するのに現在の技術の障壁を克服することができる1つの方法である。本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料におけるカーボン・ナノチューブの実質的に平行な配列及びそれから生成される複合材料は、これらの特性をさらに増大させることができる。出願人の理論上の研究によると、現在のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料では、従来の繊維材料に対して引張強度の向上が2倍を超える。本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料における実質的に平行なカーボン・ナノチューブの配列は、複合材料内の繊維の間隔をさらに近づけることができ、それによって、機械的特性のさらなる改善を実現可能にすることができる。
【0019】
実質的に平行に配列されたカーボン・ナノチューブを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、カーボン・ナノチューブを実質的に配列された状態でマトリックス材料内に導入するための多用途の土台(platform)であり、それによって、カーボン・ナノチューブを含む複合材料の重大な問題を克服できるようにする。また、例えば、繊維材料上のカーボン・ナノチューブの長さ及び被覆密度を変化させることにより、複合材料内で様々な特性を選択的に示すことができる。例えば、複合材料に構造的支持を付与するために比較的短いカーボン・ナノチューブを使用することができる。比較的長いカーボン・ナノチューブは、構造的支持を付与するのに加えて、通常は伝導性が低い又は非伝導性である複合材料に、電気伝導性又は熱伝導性の伝播通路を確立するために使用することができる。また、複合材料にカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を不均一に又は傾斜配置して、所望の特性を複合材料の選択部分に選択的に付与することができる。
【0020】
炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、ガラス繊維、及び有機繊維などのカーボン・ナノチューブを浸出してある繊維材料は、すべて2009年11月2日出願の本出願人の同時係属出願の米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号、及び第12/611,103号、及び2010年11月2日出願の第12/938,328号に記載されている。上記出願の各々は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。図1は、炭素繊維に浸出されているカーボン・ナノチューブの例示的なTEM画像を示す。図2は、目標長さ40μmの±20%以内であるカーボン・ナノチューブで浸出された炭素繊維の例示的なSEM画像例を示す。図1及び図2の画像では、カーボン・ナノチューブは多層カーボン・ナノチューブであるが、本明細書に記載の様々な実施形態では、単層カーボン・ナノチューブ、二層カーボン・ナノチューブ、及び3つ以上の壁を有する多層カーボン・ナノチューブなどの任意のタイプのカーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出し使用することができる。
【0021】
本明細書で使用する用語「繊維材料」とは、基本的構造特徴として繊維質成分を有する任意の材料をいう。この用語は、連続又は不連続の繊維、フィラメント、ヤーン、ロービング、トウ、テープ、織物(woven)又は不織布、プライ、マットなどを包含する。
【0022】
本明細書で使用する用語「浸出する」とは結合されることをいい、用語「浸出」とは結合処理をいう。そのため、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料とは、自身に結合されたカーボン・ナノチューブを有する繊維材料をいう。繊維材料へのカーボン・ナノチューブの結合は、機械的連結、共有結合、イオン結合、π‐π相互作用(π‐スタッキング相互作用)、及び/又はファン・デル・ワールス力の介在による物理吸着などが含まれ得る。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは繊維材料に直接結合される。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブの成長を仲介するために用いられるバリア・コーティング及び/又は触媒ナノ粒子を介して繊維材料に間接的に結合される。カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出させる具体的な方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。
【0023】
本明細書で使用する用語「架橋結合する」又は「架橋結合された」とは、カーボン・ナノチューブと少なくとも1つの他の材料との間の化学的相互作用又は電子的結合をいう。架橋結合は、様々な実施形態においてイオン結合、共有結合及び/又はπ‐スタッキング相互作用を含むことができる。
【0024】
本明細書で使用する用語「ナノ粒子」とは、球のなど価直径が約0.1nmから約100nmの間の直径を有する粒子をいうが、ナノ粒子は必ずしも形状が球形である必要はない。本明細書で使用する用語「触媒ナノ粒子」とは、カーボン・ナノチューブの成長を仲介する触媒活性を保有するナノ粒子をいう。
【0025】
本明細書で使用する用語「遷移金属」とは、周期表のd‐ブロック(3族から12族)におけるあらゆる元素又はその合金をいう。また、用語「遷移金属塩」とは、あらゆる遷移金属化合物(例えば、遷移金属元素の酸化物、炭化物、窒化物など)をいう。カーボン・ナノチューブを合成するために適した触媒ナノ粒子を形成する例示的な遷移金属は、例えば、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au、Ag、並びにこれらの合金、塩及び混合物が挙げられる。
【0026】
本明細書で使用する用語「サイジング剤」又は「サイジング」とは、繊維材料の製造において、繊維材料を完全な状態で保護するか、繊維材料とマトリックス材料との間の界面相互作用を向上させるか、及び/又は繊維材料の特定の物理的特性を変更及び/又は向上させるためのコーティングとして使用される材料をいう。
【0027】
本明細書で使用する用語「巻き取り可能な長さ」又は「巻き取り可能な寸法」とは、等価的に、カーボン・ナノチューブ浸出後に繊維材料をスプール(spool)又はマンドレル(mandrel)に巻き取っておくことが可能な、長さの限定されない、繊維材料の有する少なくとも1つの寸法をいう。「巻き取り可能な寸法」の繊維材料は、繊維材料へのカーボン・ナノチューブ浸出のためのバッチ処理又は連続処理のいずれかの使用を示す少なくとも1つの寸法を有する。市販の巻き取り可能な寸法の例示的な炭素繊維材料は、800テックス(1テックス=1g/1,000m)又は620ヤード/ポンドの寸法を有するAS4 12k炭素繊維トウ(Grafil,Inc.、カルフォルニア州サクラメント)である。工業用の炭素繊維のトウは、例えば、5、10、20、50及び100ポンドのスプールで入手され得るが、より大きなスプールには特注を必要とする場合もある。
【0028】
本明細書で使用する用語「長さが均一」とは、約1μmから約500μmの範囲にあるカーボン・ナノチューブ長に関して、カーボン・ナノチューブが、カーボン・ナノチューブの全長の±約20%又はそれ未満の許容誤差を伴う長さを有する状態をいう。極めて短いカーボン・ナノチューブ長(例えば、1μm〜4μmなど)では、この誤差は、±約1μm、即ち、カーボン・ナノチューブの全長の約20%よりも若干大きくなるであろう。
【0029】
本明細書で使用する用語「密度分布が均一」とは、繊維材料上のカーボン・ナノチューブ密度が、カーボン・ナノチューブで覆われる繊維材料表面積に関して被覆率±約10%の許容誤差を有する状態をいう。
【0030】
本明細書で使用する用語「マトリックス材料」とは、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、ランダム配向、整列配向、垂直配向、平行配向、及びその組合せなどの特定の配向に組織化する働きができる複合材料中の連続相をいう。例示的マトリックス材料としては、例えば、ポリマー、金属、ガラス及びセラミックが挙げられる。
【0031】
本明細書で使用する用語「連続プロセス」とは、実質的に途切れずに動作する複数段階のプロセスをいう。
【0032】
ある実施形態では、本開示は、繊維材料と当該繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブ層とを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料について説明する。前記浸出カーボン・ナノチューブは、前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列される。実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、相互に、繊維材料に又はその両方に架橋結合される。
【0033】
様々な実施形態では、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブは、少なくとも部分的に架橋結合された状態である。ある実施形態では、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層内にある他のカーボン・ナノチューブに架橋結合される。他の実施形態では、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、繊維材料に架橋結合される。さらに他の実施形態では、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層内にある他のカーボン・ナノチューブに及び繊維材料に架橋結合される。
【0034】
実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの架橋結合は、カーボン・ナノチューブと別の材料との間の化学的又は電子的相互作用を経て実行することができる。すなわち、本発明の実施形態によれば、架橋結合は、カーボン・ナノチューブと別の材料との間に共有結合を形成するばかりでなく、その間のエネルギー的に有利な電子結合も含むことができる。例えば、ある実施形態では、架橋結合は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブと別の材料との間にイオン結合を含むことができる。他の実施形態では、架橋結合は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブと別の材料とのπ‐スタッキング相互作用を含むことができる。しかし、さらに他の実施形態では、架橋結合は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブと別の材料との共有結合を含むことができる。
【0035】
実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの架橋結合は、ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ上の1つの点にて実行することができる。しかし、他の実施形態では、カーボン・ナノチューブとの架橋結合は、カーボン・ナノチューブ上の複数の点(すなわち2つ以上)にて実行することができる。カーボン・ナノチューブと別の材料との間に複数の相互作用点があると、その結果、その間にエネルギー的にさらに有利な相互作用及び/又はより強力な共有結合が生じることが当業者には認識されよう。特に、カーボン・ナノチューブと別の材料との間に複数のπ‐スタッキング相互作用がある場合は、その間の相互作用の強度が共有結合のそれに近づくか又は上回ることさえある。
【0036】
ある実施形態では、架橋ポリマーが、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成する。一般に、カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成するように動作可能な架橋ポリマーは、カーボン・ナノチューブの芳香環と相互作用することができる剛体棒芳香族ポリマーである。カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成することができる例示的剛体棒芳香族ポリマーは、米国特許第7,241,496号、第7,244,407号、第7,296,576号及び第7,344,691号で説明されており、それぞれを参照により全体を本明細書に組み込むものとする。ある実施形態では、架橋ポリマーは、ポリ(フェニレンエチレン)である。本実施形態を実践するのに適した例示的剛体棒芳香族ポリマーは、KENTERAであり、これはZyvex Performance Materials(オハイオ州コロンバス)から入手可能である。
【0037】
本明細書で説明する様々な実施形態のいずれでも、カーボン・ナノチューブを浸出した繊維材料としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、及び有機繊維(例えばアラミド繊維)を挙げることができる。繊維材料のさらに特定の例としては、例えば、炭化珪素(SiC)繊維、炭化ホウ素(BC)繊維、窒化珪素(Si)繊維、酸化アルミニウム(Al)繊維及びその様々な組合せを挙げることができる。
【0038】
炭素繊維は、繊維の生成に用いられる前駆体(そのいずれもが本明細書に記載される様々な実施形態に使用可能)、即ち、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)及びピッチ(pitch)に基づいて3種類に分類される。セルロース系材料であるレーヨン前駆体から作られる炭素繊維は、約20%という比較的低い炭素含有率を有し、繊維は低強度及び低剛性の傾向がある。対照的に、PAN前駆体は、約55%の炭素含有率を有し、表面欠陥が最小限であるため優れた引張強度を有する炭素繊維を提供する。石油アスファルト、コールタール及びポリ塩化ビニルに基づくピッチ前駆体もまた、炭素繊維の生成に使用することができる。ピッチは、相対的に安価で炭素収率が高いが、得られる炭素繊維に対する既知のバッチ処理に不均一性の問題があることがある。
【0039】
様々な実施形態では、繊維材料は、連続長である。様々な実施形態では、繊維材料は、約1μmから約100μmの間の範囲の直径を有する。この範囲の直径を有する連続長の繊維材料は、様々な販売元から容易に入手可能である。
【0040】
様々な実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、単独のフィラメントを含むもの、さらに複数の繊維を含むものなど、様々な形態のいずれであってもよい。以下で説明するように、連続長の繊維材料は、これにカーボン・ナノチューブを浸出するための連続プロセスを容易にできることが当業者には認識されるであろう。様々な実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、例えばフィラメント、ロービング、ヤーン、繊維トウ、テープ、組物(braids)、織物(woven fabric)、不織布、繊維プライ及び繊維マットなどの非限定的な形態でよい。非限定的な例として、図3は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の織物内にある炭素繊維トウの例示的なSEM画像を示す。さらに、上述したカーボン・ナノチューブ浸出繊維の様々な織った形態及び織らない形態は、所望に応じて、カーボン・ナノチューブを含まないものなど、これら及び他の繊維タイプのあらゆる混合物を含むことができる。
【0041】
様々な実施形態では、長さ及び密度分布が均一なカーボン・ナノチューブを、巻き取り可能な長さのフィラメント、ロービング、繊維トウ、テープ、織物(fabric)及び他の3次織布構造(three-dimensional woven structure)に浸出することができる。様々なフィラメント、繊維トウ、ヤーン、マット、織物(woven)及び不織布などにカーボン・ナノチューブを直接浸出することができるが、カーボン・ナノチューブ浸出繊維である元の繊維トウ、糸などから、このような比較的高い規則構造を生成することも可能である。例えば、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、カーボン・ナノチューブ浸出繊維トウから織物(woven fabric)に変形することができる。
【0042】
フィラメントは、通常、約1μmから約100μmの範囲の直径を有する高い縦横比の繊維を含む。ロービングは、撚り合わせて細くした異物のない繊維からなる軟質ストランドを含む。
【0043】
繊維トウは、通常、フィラメントを結合した束(bundle)であり、ある実施形態では、これが撚り合わされてヤーンとなる。ヤーンには、撚り合わされたフィラメントを密に結合した束が含まれるが、この場合、ヤーンにおける各フィラメントの直径は、比較的均一である。ヤーンには、「テックス(tex)」(1000リニアメーター当たりのグラム重量として示される)又は「デニール(denier)」(10,000ヤード当たりのポンド重量として示される)で表される様々な重量がある。ヤーンに関して、標準的なテックス範囲は、通常、約200テックスから約2000テックスまでである。
【0044】
繊維組物(fiber braids)は、繊維が高密度に詰め込まれたロープ状構造体を示す。このようなロープ状構造体は、例えば、ヤーンから組まれる。組上げ構造体は中空部分を含んでもよく、或いは、別のコア材料の周囲に組まれてもよい。
み立てることができる。
【0045】
繊維トウは、撚り合わされていないフィラメントを結合した束も含むことができる。ヤーンと同様に、繊維トウにおける個々のフィラメントの直径は概して均一である。また、繊維トウも様々な重量を有し、テックス範囲は、通常、約200テックスから約2000テックスの間である。加えて、繊維トウは、例えば、12Kトウ、24Kトウ、48Kトウなどの繊維トウ内にある数千のフィラメントの数により、しばしば特徴付けられる。
【0046】
テープは、例えば、織物又は不織の扁平繊維トウとして組まれる繊維材料である。テープは様々な幅を持ち、通常、リボン同様の両面構造体である。本明細書に記載される様々な実施形態において、カーボン・ナノチューブは、テープの一面又は両面の繊維材料に浸出する。また、種類、直径又は長さの異なるカーボン・ナノチューブが、テープの各面で成長可能であり、これは特定の用途で有利になることがある。同時係属中である出願人の米国特許出願に記載されるように、巻いたテープへのカーボン・ナノチューブの浸出は、連続的な方法で実施される。
【0047】
ある実施形態において、繊維材料は、織物又はシート状構造体に構成される。これらには、前述のテープに加えて、例えば、織物、不織布マット及び繊維プライが含まれる。このようなより高い規則構造は、カーボン・ナノチューブが既に浸出した状態の、元となる繊維トウ、ヤーン、フィラメントなどから作ることができる。テープの場合のように、このような比較的高い規則構造は、本明細書で説明する手順に従ってカーボン・ナノチューブを直接浸出させることもできる。
【0048】
出願人の同時係属特許出願で説明したように、繊維材料は、繊維材料上にカーボン・ナノチューブを成長させる目的で、その上に触媒ナノ粒子の層(通常は単分子層以内)を提供するように改質される。様々な実施形態では、カーボン・ナノチューブの成長を仲介するために使用される触媒ナノ粒子は、遷移金属及びこれらの種々の塩である。ある実施形態では、触媒ナノ粒子は、例えば浸漬コーティング、溶射コーティング、プラズマ蒸着、蒸着技術、電着技術、及び当業者に知られている他のプロセスなどの技術を使用して繊維材料上に付着させることができる。
【0049】
カーボン・ナノチューブは、そのキラリティに応じて金属質、半金属質又は半導電性となり得る。カーボン・ナノチューブのキラリティを示すために確立された命名システムが当業者には認識されており、2つの指数(n,m)で識別され、ここで、n及びmは、管状構造に形成された場合の六方晶系のグラファイトの切断部及び巻き方を表す整数である。キラリティに加えて、カーボン・ナノチューブの直径は、その電気伝導性及び関連する熱伝導性の特性にも影響する。カーボン・ナノチューブを合成する際に、カーボン・ナノチューブの直径は、一定のサイズの触媒ナノ粒子を使用することによって制御することができる。通常、カーボン・ナノチューブの直径は、その構成に触媒作用を及ぼす触媒ナノ粒子の直径に近い。したがって、カーボン・ナノチューブの特性は、1つの点では、例えばカーボン・ナノチューブの合成に使用する触媒ナノ粒子のサイズを調節することによって制御することができる。非限定的な例として、約1nmの直径を有する触媒ナノ粒子を使用して、繊維材料に単層カーボン・ナノチューブを浸出することができる。より大きい触媒ナノ粒子は、主に多層カーボン・ナノチューブを作成するために使用され、これらはナノチューブ層が複数あるため又は単層カーボン・ナノチューブと多層カーボン・ナノチューブの混合であるため、さらに大きい直径を有する。多層カーボン・ナノチューブは、通常、単層カーボン・ナノチューブより複雑な伝導性プロファイルを有する。何故なら、壁間反応が個々のナノチューブ層間に生じて電流を不均一に再配分することがあるからである。対照的に、単層カーボン・ナノチューブでは、異なる部分にまたがる電流に変化がない。
【0050】
本発明の繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブのタイプは、通常、無制限に変更することができる。様々な実施形態では、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、例えば任意の数のフラーレン族の炭素の円筒形同素体であり、単層カーボン・ナノチューブ、二層カーボン・ナノチューブ、多層カーボン・ナノチューブ、及びその任意の組合せがある。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブを、フラーレン状構造で閉塞することができる。言い換えると、カーボン・ナノチューブは、このような実施形態では閉鎖端を有する。しかし、他の実施形態では、カーボン・ナノチューブは、開放端のままである。ある実施形態では、閉塞されたカーボン・ナノチューブの端は、適切な酸化剤(例えばHNO/HSO)で処理することによって開口できる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは他の物質を封入する。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、繊維材料に浸出された後に共有結合的に機能化することができる。機能化を使用して、例えば、バルク複合マトリックス材に対するカーボン・ナノチューブの適合性を増大させることができる。ある実施形態では、プラズマプロセスを使用して、カーボン・ナノチューブの機能化を促進することができる。
【0051】
ある実施形態では、繊維材料はバリア・コーティングをさらに含む。例示的なバリア・コーティングは、例えば、アルコキシシラン、メチルシロキサン、アルモキサン、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス及びガラスナノ粒子を含むことができる。例えば1つの実施形態では、バリア・コーティングは、Accuglass(登録商標)T−11スピンオンガラス(Honeywell International Inc.、ニュージャージー州モリスタウン)である。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ合成のための触媒ナノ粒子は、未硬化のバリア・コーティング材料と組み合わせて、一緒に繊維材料に塗布することができる。他の実施形態では、バリア・コーティング材料は、触媒ナノ粒子が付着する前に繊維材料に添加することができる。一般的に、バリア・コーティングは、カーボン・ナノチューブ成長のための炭素原料ガスに触媒ナノ粒子を晒せるほど十分に薄い。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、実質的に触媒ナノ粒子の有効直径以下である。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約10nmから約100nmの間の範囲である。他の実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、40nmを含む約10nmから約50nmの間の範囲である。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約10nm未満であり、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、及び約10nmと、これらの中間のすべての値とその端数を含む。
【0052】
理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは、繊維材料とカーボン・ナノチューブの中間層として機能し、カーボン・ナノチューブを繊維材料に機械的に浸出させる。バリア・コーティングを介したこのような機械的浸出は、カーボン・ナノチューブを成長させる頑強なシステムを提供し、繊維材料がカーボン・ナノチューブを組織化するための土台として機能する一方、さらに有益なカーボン・ナノチューブ特性を繊維材料に付加する。さらに、バリア・コーティングを含めることの利点は、例えば、水分への曝露による化学的損傷及び/又はカーボン・ナノチューブの成長促進に使用される高温における熱損傷から繊維材料を保護するという点もある。
【0053】
触媒ナノ粒子を付着させた後、カーボン・ナノチューブを成長させるための化学蒸着(CVD)系のプロセス又は他のプロセスを使用して、繊維材料上に浸出カーボン・ナノチューブを連続的に成長させる。その結果のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、それ自体が複合材料構造である。カーボン・ナノチューブ合成の例示的なプロセスは、例えば、マイクロキャビティ、熱又はプラズマCVD技術、レーザ・アブレーション、アーク放電、火炎合成及び高圧一酸化炭素(HiPCO)合成が挙げられ、これらはすべて当業者に知られている。ある実施形態では、CVD系成長プロセスは、カーボン・ナノチューブの成長が電界方向に従うように、成長プロセス中に電界を与えることによってプラズマ助長することができる。
【0054】
上述のプロセスによって作成されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料では、合成中に成長の配向を制御する措置をとらない限り、浸出カーボン・ナノチューブは、通常、繊維材料の表面に対して実質的に垂直になるように繊維材料に浸出される。出願人は、例えばカーボン・ナノチューブの成長中に電界又は磁界の方向を適切にすることによって、浸出カーボン・ナノチューブが繊維材料の長手軸に対して実質的に平行になるように、カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出できることを発見した。すなわち、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層を、カーボン・ナノチューブ成長プロセスから直接得ることができる。実質的に平行に配列されたカーボン・ナノチューブをカーボン・ナノチューブ成長プロセスから得られない場合は、以降でより詳細に説明するように、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層内で再配向することができる。
【0055】
ある実施形態では、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に成長した追加のカーボン・ナノチューブをさらに含むことができる。成長状態に応じて、追加のカーボン・ナノチューブは、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層に対して実質的に垂直に配列されるように、又は実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層に実質的に平行に配列されるように成長させることができる。すなわち、ある実施形態では、追加のカーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列される。繊維材料上の実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層のように、最初は実質的に平行に配列されていないどのような追加のカーボン・ナノチューブでも、以降で説明するプロセスに従って再配向することができる。
【0056】
追加のカーボン・ナノチューブの合成は、浸出カーボン・ナノチューブを成長させるために説明した上述の技術のいずれでも実行することができる。さらに、浸出カーボン・ナノチューブ及び追加のカーボン・ナノチューブの成長は、同じ又は異なるカーボン・ナノチューブ成長プロセスで実行することができる。一般的に、追加のカーボン・ナノチューブは、上述したカーボン・ナノチューブのタイプのいずれでもよい。すなわち、追加のカーボン・ナノチューブは、単層カーボン・ナノチューブ、二層カーボン・ナノチューブ、又は多層カーボン・ナノチューブでよく、その開放端型及び閉鎖端型並びにその派生物を含む。ある実施形態では、追加のカーボン・ナノチューブと浸出カーボン・ナノチューブは同じものである。しかし、他の実施形態では、追加のカーボン・ナノチューブと浸出カーボン・ナノチューブは異なる。浸出カーボン・ナノチューブと追加のカーボン・ナノチューブとが異なる場合、その相違は、例えばカーボン・ナノチューブのタイプの相違、直径の相違、長さの相違、又は機能化のタイプの相違を挙げることができる。
【0057】
上述したように、浸出カーボン・ナノチューブは、バリア・コーティングに埋め込まれた触媒ナノ粒子から成長し、浸出カーボン・ナノチューブは、同時に又はその後に、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するために配向される。本発明の実施形態では、追加のカーボン・ナノチューブは、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に直接付着している触媒ナノ粒子から成長する。すなわち、追加のカーボン・ナノチューブは、それ自体、バリア・コーティングを介して繊維材料に浸出されない。しかし、ある実施形態では、追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部に架橋結合することができる。ある実施形態では、追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、相互に、又は相互及び実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの両方に架橋結合することができる。このような架橋結合の結果、追加のカーボン・ナノチューブは、容易に外れないように繊維材料に良好に付着することができる。追加のカーボン・ナノチューブの架橋結合は、上述した技術のいずれかで遂行することができる。
【0058】
ある実施形態では、繊維材料上に成長したカーボン・ナノチューブは、例えば水分、酸化、摩耗、圧縮及び/又は他の環境条件から繊維材料を保護するためのサイジング剤として作用するなど、さらなる目的に役立つことができる。このようなカーボン・ナノチューブ系のサイジング剤は、従来のサイジング剤の代わりに、又はそれに加えて繊維材料に塗布することができる。カーボン・ナノチューブ系のサイジング剤は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料と複合材料のマトリックス材料との界面としても機能することができる。
【0059】
従来のサイジング剤が存在する場合、それは繊維材料上のカーボン・ナノチューブの浸出及び成長の前後に塗布することができる。従来のサイジング剤は、タイプ及び機能が多種多様であり、例えば界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、シロキサン、アルコキシシラン、アミノシラン、シラン、シラノール、ポリビニルアルコール、デンプン、及びその混合物が挙げられる。このような従来のサイジング剤を使用して、カーボン・ナノチューブ自体を様々な状態から保護する、又はカーボン・ナノチューブが与えられていない繊維材料にさらなる特性を付与することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブが成長する前に、従来のサイジング剤を繊維材料から除去することができる。任意選択で、従来のサイジング剤を、カーボン・ナノチューブ又はカーボン・ナノチューブ成長状態との適合性がさらに高い別の従来のサイジング剤と交換することができる。
【0060】
追加のカーボン・ナノチューブを合成した後、任意選択で触媒ナノ粒子をカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料から除去することができる。ある実施形態では、酸浴槽処理で触媒ナノ粒子を除去することができる。ある実施形態では、浸出カーボン・ナノチューブ及び/又は追加のカーボン・ナノチューブを(例えばカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の液体臭素処理によって)さらに精製することができる。
【0061】
別の実施形態では、追加のカーボン・ナノチューブが、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された後、さらなる触媒ナノ粒子を再度付着させることができ、それでも繊維材料上にさらにカーボン・ナノチューブを成長させることができる。したがって、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、自身上に任意の数のカーボン・ナノチューブ層を成長させることができる。ある実施形態では、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、自身上に実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの単層を有する。すなわち、このような実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの単層を含む。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、合計でN個の層(1個の実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層及び実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に成長したN−1個の追加のカーボン・ナノチューブ層)を有することができる。ある実施形態では、層の合計数は1から約50の間である。ある実施形態では、層の合計数は1から約25の間である。他の実施形態では、層の合計数は、約2から約10の間、又は約2から約5の間、又は約5から約25の間、又は約25から約50の間である。
【0062】
一般に、出願人の同時係属特許出願に記載されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、他の方法で生成できるよりはるかに高いカーボン・ナノチューブの担持量割合を有する。例えば、このようなカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、重量で約1%から約30%、又は約40%もの浸出カーボン・ナノチューブを含むことができる。本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料において複数のカーボン・ナノチューブ層の選択肢を設けることによって、本発明の実施形態では、繊維材料上にさらに高い重量パーセントのカーボン・ナノチューブを成長させることができる。ある実施形態では、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、元の繊維材料に対して重量で最大約2000%のカーボン・ナノチューブを含むことができる。ある実施形態では、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、元の繊維材料に対して重量で約1%から約2000%又は約1%から約1000%又は約1%から約500%又は約1%から約200%のカーボン・ナノチューブを含むことができる。他の実施形態では、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、元の繊維材料に対して重量で約5%から約50%又は約10%から約40%のカーボン・ナノチューブを含むことができる。選択されたカーボン・ナノチューブの重量パーセントは、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を使用する所与の用途によって規定することができ、本開示の利点を考慮すれば、当業者は、特定の用途に対して望ましい重量パーセントを有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を作成することができる。
【0063】
カーボン・ナノチューブの層数に加えて、繊維材料上に成長したカーボン・ナノチューブの重量パーセントは、カーボン・ナノチューブの平均長によって決定することもできる。したがって、所与のカーボン・ナノチューブの重量パーセントに対して、カーボン・ナノチューブの長さとカーボン・ナノチューブの層数との両方を変更して、所望の重量パーセントを達成することができる。以前に述べたように、本明細書で説明する様々な実施形態では、浸出カーボン・ナノチューブの長さと追加のカーボン・ナノチューブの長さとは実質的に同じであっても、又は異なっていてもよい。直後に説明するように、異なる長さのカーボン・ナノチューブは、異なる特性を繊維材料に付与するために用いることができる。したがって、浸出カーボン・ナノチューブと追加のカーボン・ナノチューブとが実質的に異なる長さを有する実施形態では、異なる特性を本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の内部領域及び外部領域に選択的に付与することができる。
【0064】
一般に、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料のカーボン・ナノチューブの長さは、広範囲にわたって変化することができる。さらに、浸出カーボン・ナノチューブの長さと追加のカーボン・ナノチューブの長さとは、別個に変更することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長は、約1μmから約10μmの間である。このような長さを有するカーボン・ナノチューブは、例えば、剪断強度を増大する用途で有用になり得る。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長は、約5μmから約70μmの間である。このような長さを有するカーボン・ナノチューブは、例えば、特に本発明の実施形態のようにカーボン・ナノチューブが繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列される場合に引張強度を増大させるために有用になり得る。さらに他の実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長は、約10μmから約100μmの間である。このような長さを有するカーボン・ナノチューブは、機械的特性に加えて、例えば電気的特性及び熱伝導特性を改善するために有用であり得る。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長は約100μmから約500μmの間である。このような長さを有するカーボン・ナノチューブは、例えば電気的及び熱的な伝導特性を改善するために特に有用になり得る。また、約50μmより長い長さを有するカーボン・ナノチューブは、例えば難燃性を与えるために特に有用になり得る。
【0065】
ある実施形態では、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、通常、長さが均一である。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約1μmから約500μmの間であり、それは約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、約500μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約1μm未満であり、それは例えば約0.5μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約1μmから約10μmの間であり、それは例えば約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。さらに他の実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約500μmより大きく、それは例えば約510μm、約520μm、約550μm、約600μm、約700μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。さらに他の実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約5μmから約50μmの間又は約5μmから約25μmの間である。
【0066】
ある実施形態では、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、通常、密度分布が均一であり、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブ密度の均一性と呼ばれる。以上で定義されたように、均一な密度分布の誤差はカーボン・ナノチューブが浸出された繊維材料表面積の約±10%である。非限定的な例として、この誤差は、8nmの直径及び5つの層を有するカーボン・ナノチューブの場合には、約±1500本カーボン・ナノチューブ/μmと同等である。このような数字は、カーボン・ナノチューブ内部の空間が充填可能であると仮定している。ある実施形態では、繊維材料の被覆率(すなわち、カーボン・ナノチューブによって被覆された繊維材料表面積の割合)として表される最大カーボン・ナノチューブ密度が、約55%という高い値になることがあるが、これもカーボン・ナノチューブが8nmの直径、5つの層及び充填可能な内部空間を有すると仮定している。55%の表面積被覆率は、参照した寸法を有するカーボン・ナノチューブの場合に、約15,000本カーボン・ナノチューブ/μmと同等である。ある実施形態では、被覆率の密度は、最大で約15,000本カーボン・ナノチューブ/μmである。繊維材料の表面上の触媒ナノ粒子の配置、カーボン・ナノチューブ成長条件への繊維の曝露時間、及びカーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出するために使用する実際の成長条件自体を変更することによって、広範囲のカーボン・ナノチューブ密度分布を達成できることは当業者には認識されよう。さらに、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に成長した追加のカーボン・ナノチューブは、同様に密度分布が実質的に均一で、広範囲の密度分布にわたって変えることもできる。以上の計算は、自身上に成長した追加のカーボン・ナノチューブではなく、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層のみを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料に関してであることに留意されたい。
【0067】
出願人は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブを含む本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料において予想される引張強度の向上を計算するために、マイクロメカニカルモデルを開発した。そのモデルでは、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層及び追加の実質的に平行に配列されたカーボン・ナノチューブの可変層を含む繊維材料について考察した。モデルは、理想的なカーボン・ナノチューブ配列と各層におけるKENTERAとの架橋結合を仮定する。ここでKENTERAは、カーボン・ナノチューブが繊維材料と同じ比率で歪むようなカーボン・ナノチューブと繊維材料との間に最適化された付着を生成する。すなわち、カーボン・ナノチューブは繊維材料上で滑らない。
【0068】
出願人のモデルによると、そのシステムは、カーボン・ナノチューブ又は繊維材料のいずれかが破損した場合に破損するものと仮定される。カーボン・ナノチューブは繊維材料よりはるかに高い引張強度を有するので、モデルでは常に繊維の損傷が最初に観察される。13層のカーボン・ナノチューブ(1層の実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ及び12層の追加のカーボン・ナノチューブ)を有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の場合、1833ksiという引張強度の計算値が決定され、したがって、従来の繊維材料に対して2倍を超える引張強度の増大を実現できることが確認された。実際には、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、自身上に十分なカーボン・ナノチューブ層が付着している場合、繊維材料の損傷に耐えることが可能である。すなわち、カーボン・ナノチューブは、機械的欠陥をつなぐ能力があるので、繊維材料の損傷後、効果的に機械的支持を提供することができる。したがって、実際の引張強度の向上は、上述の計算よりはるかに高いことがある。
【0069】
他の様々な実施形態では、本開示は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の生産方法及びそれから生成される複合材料を提供する。
【0070】
ある実施形態では、本開示の方法は、繊維材料と当該繊維材料に浸出されて繊維材料の表面に対して実質的に垂直に配列されたカーボン・ナノチューブとを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を提供することと、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するように実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブを再配向すること、とを含む。
【0071】
ある実施形態では、本発明の方法は、実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部を相互に、繊維材料に又は繊維材料と相互との両方に架橋結合することを、さらに含む。上述したように、架橋結合は、ある実施形態では共有結合を、他の実施形態ではπ‐スタッキング相互作用を含むことができる。これも上述したように、架橋ポリマーは、ある実施形態では実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成することができる。
【0072】
ある実施形態では、本発明の方法は、触媒ナノ粒子を実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に付着させることと、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に追加のカーボン・ナノチューブを成長させることと、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列されるように、追加のカーボン・ナノチューブを配向することとを、さらに含む。ある実施形態では、本発明方法は、追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部と架橋結合することを、さらに含む。このような架橋結合は、また、追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部が、相互に、又は実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブと相互の両方に架橋結合されることを、さらに含むことができる。実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの場合のように、架橋結合は、様々な実施形態では共有結合又はπ‐スタッキング相互作用を含むことができ、架橋結合はある実施形態では架橋ポリマーによって促進することができる。
【0073】
実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を作成すると、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するために浸出カーボン・ナノチューブの再配列を実行することができる。以降で説明するように、機械的プロセス又は化学的プロセスによって、実質的に平行な配向に実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブを再配列することができる。別の実施形態では、カーボン・ナノチューブの合成と同時に実質的に平行な配列を実行することができる。以上で言及したように、カーボン・ナノチューブの成長プロセス中に適切に方向付けられた電界又は磁界を使用することにより、カーボン・ナノチューブの合成と同時にカーボン・ナノチューブを配列し、実質的に平行な配向にすることができる。浸出カーボン・ナノチューブと同様に、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に成長した追加のカーボン・ナノチューブも、上述した技術のいずれかを使用して配向又は再配向することができる。
【0074】
カーボン・ナノチューブを形成する際に、成長は印加された電界又は磁界の方向に向かう傾向がある。カーボン・ナノチューブを実質的に平行に配列する電気機械的手段は、例えば、成長プロセス中にカーボン・ナノチューブが繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列されるように、カーボン・ナノチューブの成長中に繊維材料に実質的に平行に指向された電界又は磁界を使用することを含む。実質的に平行に配列されたカーボン・ナノチューブを生成するカーボン・ナノチューブ成長プロセスにおいて、プラズマ溶射などの炭素原料源の配置(geometry)及び電界又は磁界を適切に調節することにより、カーボン・ナノチューブの合成後に別個の再配列ステップを回避することができる。
【0075】
カーボン・ナノチューブを実質的に平行に配列する機械的手段は、例えば押出成形、引抜成形、ガス圧補助ダイス、従来のダイス、及びマンドレルを含むことができる。以上の技術及び繊維材料の長手軸の方向に剪断力を加える他の関連技術を使用すると、その上にあるカーボン・ナノチューブを実質的に垂直の配向から、繊維材料の長手軸に実質的に平行な配向へと再配列することができる。
【0076】
繊維材料上のカーボン・ナノチューブを実質的に平行に配列する化学的手段は、溶媒、界面活性剤、及びマイクロエマルジョンを使用することを含み、その結果、繊維材料がこれらの化学物質を含む液体から引き出されるにつれ、被覆効果が生じる。したがって、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を液体から引き出すと、その上にあるカーボン・ナノチューブの少なくとも幾つかを再配列して、実質的に平行な配向にすることができる。ある実施形態では、化学的プロセスは、カーボン・ナノチューブの少なくとも一部を架橋結合することを含む。このような架橋結合は、上述したような架橋ポリマーを使用して実行することができる。
【0077】
ある実施形態では、電気機械的、機械的及び/又は化学的手段の組合せを使用して、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料内で所望のカーボン・ナノチューブの配列度合を達成することができる。すなわち、初期の配列手順で、所望の配列度合が生成されない場合は、配列手順を何回か繰り返すか、又は異なる配列手順を使用することができる。
【0078】
ある実施形態では、本発明方法に使用する繊維材料は、連続長である。すなわち、繊維材料は、連続的なカーボン・ナノチューブ成長プロセスを使用して繊維材料上でカーボン・ナノチューブが成長できるように、巻き取り可能な長さである。さらに、実質的に平行な配向にカーボン・ナノチューブを配列することは、連続的なカーボン・ナノチューブ成長プロセスと動作可能に連動することができる。
【0079】
図4は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブを有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を作成することができる例示的な化学的プロセスを示す。繊維材料400をスタートとして、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料401を、本明細書や出願人の同時係属特許出願にも記載されている連続カーボン・ナノチューブ成長手順に従って最初に作成する。カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料401は、繊維表面に対して実質的に垂直に配列される状態で繊維材料400に浸出されたカーボン・ナノチューブ402を有する。次に、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料401を処理して、カーボン・ナノチューブ間に架橋結合403を形成し、それによって架橋結合したカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料404を形成する。この時点で、架橋結合したカーボン・ナノチューブ405は、まだ、繊維表面に対して実質的に垂直に配列されている。その後、架橋結合したカーボン・ナノチューブ405を、平行に配列されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料406に実質的に平行に配列するように再配向する。ここで、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブは、平行に配列されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料406上に層407を形成する。
【0080】
任意選択で、カーボン・ナノチューブを形成するのに適した追加の触媒ナノ粒子を、層407上に付着させ、追加のカーボン・ナノチューブをその上に成長させることができる(ステップは図示せず)。追加のカーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に対して実質的に平行に配列された状態で成長するか、上述した再配列技術のいずれかによって再配向して、層407上に追加のカーボン・ナノチューブ層408を形成することができる。追加のカーボン・ナノチューブは、その間の架橋結合及び/又は層407内の実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブとの架橋結合を含むことができる。このプロセスで、多層の平行に配列されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料409が形成される。その後、触媒付着、カーボン・ナノチューブ成長、カーボン・ナノチューブ配向、及び任意選択で架橋結合操作を繰り返すことによって、層408上に追加のカーボン・ナノチューブのさらなる層を成長させることができる。任意選択で、触媒ナノ粒子は、各層を付着させた後に除去することができるが、触媒の除去は決して必須ではない。
【0081】
ある実施形態では、本開示の方法は、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブを再配列する別個の操作をせずに実行することができる。すなわち、ある実施形態では、繊維材料へのカーボン・ナノチューブ浸出は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブを、カーボン・ナノチューブの合成から直接得られるように実行することができる。
【0082】
ある実施形態では、本開示の方法は、連続繊維材料を提供することと、電界又は磁界の存在下で連続繊維材料上にカーボン・ナノチューブ層を成長させることと、を含む。カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を形成するように、連続繊維材料に浸出される。電界又は磁界は、浸出されたカーボン・ナノチューブが繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列されるように指向される。
【0083】
実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブをカーボン・ナノチューブの合成により直接得る場合、ある実施形態ではカーボン・ナノチューブを架橋結合することもできる。すなわち、ある実施形態では、本発明の方法は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部を相互に、繊維材料に、又は繊維材料と相互との両方に架橋結合することをさらに含む。上述したように、架橋結合は、ある実施形態では浸出カーボン・ナノチューブとの共有結合を、他の実施形態では浸出カーボン・ナノチューブとのπ‐スタッキング相互作用を含むことができる。ある実施形態では、架橋ポリマーは実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成する。このケースの架橋結合は、浸出カーボン・ナノチューブが実質的に平行な配向に予め配列された後に実行されることに留意されたい。
【0084】
その後、架橋結合された実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブを含む繊維材料でのさらなる作業は、上述した手順と同様に進行する。すなわち、ある実施形態では、上記方法は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に触媒ナノ粒子を付着させることと、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に追加のカーボン・ナノチューブを成長させることと、連続繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列されるように、追加のカーボン・ナノチューブを配向することとを、さらに含む。ある実施形態では、方法は、追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部に架橋結合することを、さらに含む。このような架橋結合は、また、追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部を相互に、又は実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブと相互との両方に架橋結合することも含むことができる。浸出カーボン・ナノチューブのように、架橋結合は様々な実施形態では共有結合又はπ‐スタッキング相互作用を含むことができ、架橋結合はある実施形態では架橋ポリマーによって促進することができる。
【0085】
ある実施形態では、本開示の方法は、繊維材料と当該繊維材料に浸出されて繊維材料の表面に対して実質的に垂直に位置合わせされたカーボン・ナノチューブとを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を提供することと、架橋結合した実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブを形成するために架橋ポリマーをカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料に添加することと、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された架橋結合浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するように架橋結合した実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブを再配向することと、を含む。架橋ポリマーは、架橋結合した実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成する。
【0086】
ある実施形態では、本明細書で説明する連続カーボン・ナノチューブ成長プロセスは、連続繊維材料を提供することと、連続カーボン・ナノチューブ成長プロセスで連続繊維材料上に、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を形成するように繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブを成長させることと、浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部を相互に、繊維材料に、又はその両方に架橋結合することと、連続繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された架橋結合浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するように、機械的プロセス又は化学的プロセスによって架橋結合浸出カーボン・ナノチューブを配向することと、を含む。架橋結合は、架橋結合浸出カーボン・ナノチューブを形成するように浸出カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成する架橋ポリマーで浸出カーボン・ナノチューブを処理することを含む。
【0087】
架橋結合した実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブが、連続カーボン・ナノチューブ成長プロセスで作成されると、その後、追加のカーボン・ナノチューブ層の成長を実行する。このような実施形態では、連続カーボン・ナノチューブ成長プロセスは、架橋結合した実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に触媒ナノ粒子を付着させることと、架橋結合した実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に追加のカーボン・ナノチューブを成長させることと、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列されるように追加のカーボン・ナノチューブを配向することとを、さらに含む。ある実施形態では、連続プロセスは、追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、架橋結合した実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部に架橋結合することを、さらに含む。このような架橋結合は、また、追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部を相互に、又は架橋結合した実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ及び相互の両方に架橋結合することも含む。浸出カーボン・ナノチューブのように、架橋結合は、様々な実施形態では共有結合又はπ‐スタッキング相互作用を含むことができ、架橋結合は、ある実施形態では架橋ポリマーで促進することができる。
【0088】
様々な実施形態では、本開示の方法は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料をマトリックス材料内に配置することをさらに含み、それによって、複合材料を形成することを含む。
【0089】
様々な実施形態では、本開示は複合材料について説明する。複合材料は、マトリックス材料と、繊維材料及び繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブ層を含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料とを含む。浸出されたカーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列される。実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部は相互に、繊維材料に、又は相互及び繊維材料に架橋結合される。様々な実施形態では、架橋結合は共有結合を含むことができ、他の実施形態では、架橋結合はπ‐スタッキング相互作用を含むことができる。ある実施形態では、架橋ポリマーは、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成する。
【0090】
ある実施形態では、本発明の複合材料は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に成長した追加のカーボン・ナノチューブをさらに含む。ある実施形態では、追加のカーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列される。すなわち、ある実施形態では、追加のカーボン・ナノチューブは、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に1つ又は複数の層を形成する。ある実施形態では、追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部に架橋結合される。ある実施形態では、追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、相互に、又は実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブと相互の両方にも架橋結合することができる。成長、カーボン・ナノチューブの実質的に平行な配列、及び架橋結合については、以上でより詳細に考察してきた。
【0091】
様々な実施形態では、本発明の複合材料内のマトリックス材料は、例えばポリマーマトリックス、セラミックマトリックス、ガラスマトリックス及び金属マトリックスを含む。カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を様々な複合マトリックス材料に組み込むことについては、出願人の同時係属米国特許出願で2010年11月22日出願の第12/952,144号、両方とも2010年11月23日出願の第12/953,434号及び第12/953,447号、及び2010年12月8日出願の第12/963,589号に記載されており、これはそれぞれ参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【0092】
一般に、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー及び弾性ポリマーは、本発明の複合材料にとって適切なポリマー材料である。適切な熱硬化性ポリマーマトリックスは、例えばフタル酸/マレイン酸タイプのポリエステル類、ビニルエステル類、エポキシ類、フェノール類、シアナート類、ビスマレイミド類、及びナディック エンド‐キャップト ポリイミド類(nadic end-capped polyimides)(例えば、PMR‐15)が挙げられる。適切な熱可塑性ポリマーマトリックスは、例えば、ポリエチレン類、ポリプロピレン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリスルホン類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリフェニレンオキシド類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリスルフィド類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリエーテルスルホン類、ポリアミドイミド類、ポリエーテルイミド類、ポリイミド類、ポリアリレート類、及び液晶性ポリエステル類が挙げられる。
【0093】
本明細書で説明する複合材料を形成する際には、多種多様な金属マトリックスを使用することができる。ある実施形態では、金属マトリックスは、例えば、アルミニウム、マグネシウム、銅、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、銀、金、チタン、及びこれらの混合物の少なくとも1つを挙げることができる。金属マトリックスの混合物は合金であってもよい。非限定的な例として、例示的な合金はニッケル‐コバルト合金である。
【0094】
本発明の複合材料に使用するのに適切なセラミックマトリックスは、例えば2元系、3元系又は4元系セラミック材料を挙げることができ、これは様々な実施形態では、炭化物、窒化物、ホウ化物又は酸化物である。例示的なセラミックマトリックスとしては、例えば炭化珪素、炭化タングステン、炭化クロム(Cr)、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、ホウ化チタン(TiB)、酸化アルミニウム、窒化珪素(Si)、SiCN、FeN、BaTiO、リチウム珪酸アルミニウム又はムライト(2つの化学量論形態を有する珪酸塩鉱物、すなわち3Al・2SiO又は2Al・SiO)が挙げられる。ある実施形態では、セラミックマトリックスはセメントである。
【0095】
一般に、本発明の複合材料の繊維材料は、カーボン・ナノチューブを浸出することができる任意の繊維材料であってよい。ある実施形態では、繊維材料は、例えば炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維又は有機繊維(例えばアラミド繊維)であってよい。本発明の複合材料には、様々なタイプのカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の混合物も含めることができる。さらに、本発明の複合材料には、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料と、カーボン・ナノチューブが浸出されていない繊維材料との混合物も含めることができる。
【0096】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、マトリックス材料内に均一に分布する。しかし、他の実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、マトリックス材料内に不均一に分布する。不均一に分布したカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を有する実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、向上した特性のみを複合材料の特定の部分に選択的に付与するために使用することができる。非限定的な例では、表面付近にのみカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を有する複合材料を使用して、表面熱伝達特性を向上させるか、表面の耐衝撃性を付与することができる。別の実施形態では、異なる長さを有するカーボン・ナノチューブを、2つ以上の異なる繊維材料に浸出することができ、次にこれを複合材料内に不均一に分布させることができる。例えば、浸出した異なる長さのカーボン・ナノチューブを有する繊維材料を、複合材料の異なる部分に分布させることができる。このような実施形態では、異なる長さを有するカーボン・ナノチューブは、これが分布する複合材料の部分を特異的に向上させることができる。非限定的な例では、耐衝撃性を改善するのに十分な長さを有するカーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出して、複合材料の表面付近に分布させることができ、電気伝導性伝播通路を確立するのに十分な長さを有するカーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出して、複合材料の別の領域に分布させることができる。本開示に鑑みて、特性向上の他の組合せは当業者には想定可能である。別の実施形態では、不均一な分布とは、複合材料内のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の傾斜分布を含む。
【0097】
ある実施形態では、本発明の複合材料は、重量で約0.1%から約25%の範囲のカーボン・ナノチューブを含むことができる。他の実施形態では、複合材料は、重量で約1%から約15%の範囲のカーボン・ナノチューブを含むことができる。さらに他の実施形態では、複合材料は、重量で約5%から約20%の範囲のカーボン・ナノチューブを含むことができる。
【0098】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、複合材料内で互いに実質的に平行に配列される。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、複合材料内においてクロスプライ配向で分布する。すなわち、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、複合材料内に層状に積層され、このような実施形態では、各層の個々の繊維が、隣接する層の個々の繊維に対して実質的に垂直である。別の実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、本発明の複合材料内でランダムに、又は同様に配列されない状態で配向することができる。複合材料のある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、短繊維である。複合材料の他の実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、連続繊維である。
【0099】
複合材料のある実施形態では、架橋結合は、カーボン・ナノチューブへの共有結合を含むことができる。他の実施形態では、架橋結合は、カーボン・ナノチューブへのπ‐スタッキング相互作用を含むことができる。上述したように、架橋ポリマーは、ある実施形態では実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成することができる。複合材料のある実施形態では、架橋ポリマーは、マトリックス材料にも架橋結合することができる。このような実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料とマトリックス材料との適合性を増大させることができ、これは前記2つと機械的特性が向上した複合材料との間の相互作用強化につながる。また、架橋ポリマーの構造を化学的に変性させて、広範囲の化学的特性を有する様々なマトリックス材料との最も適切なタイプの相互作用を形成することができる。さらに、架橋ポリマーは、マトリックス材料から繊維材料及びカーボン・ナノチューブへの荷重伝達を向上させる働きをし、それによって、複合材料の引張強度を改善する。
【0100】
本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料及びそれから生成された複合材料には、多くの潜在的使用法がある。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む物品について本明細書で説明する。
【0101】
カーボン・ナノチューブ浸出伝導性炭素繊維を、電気装置用電極の製造に使用することができる。超伝導性繊維を生産する際に、超伝導層を繊維材料に十分付着させることが困難なことがある。その一因は、繊維材料と超伝導層との熱膨張率の差にある。当技術分野における別の難点は、CVDプロセスで繊維材料をコーティングする間に生じる。例えば反応性ガス(例えば水素ガス又はアンモニア)が繊維表面を腐食する、及び/又は繊維表面上に望ましくない炭化水素化合物を形成して、超伝導層の良好な付着をより困難にすることがある。カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維材料は、当技術分野における上述したこれらの難点を克服することができる。
【0102】
カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む物品は、カーボン・ナノチューブが存在するので、改善された耐摩耗性を示すことができる。これらの特性の恩恵を受けることができる物品には、ブレーキロータ、自動車の駆動軸、ゴム製Oリング及びガスケットシール、工具、軸受、航空機部品、自転車のフレームがあるが、これらに限定されない。
【0103】
カーボン・ナノチューブは有効表面積が広いので、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、水濾過の用途及び他の抽出プロセス、例えば水からの有機油の分離に適切なものにすることができる。また、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、地下水、貯水施設、又は家庭及びオフィスで使用するインラインフィルタから有機毒素を除去するためにも使用することができる。
【0104】
油田技術では、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、例えばパイプ軸受、配管補強、及びゴム製Oリングなどの掘削装置の製造に有用なことがある。さらに、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、地層から貴重な石油鉱床を得るために油田にも適用可能である抽出プロセスに使用することができる。例えば、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を使用して、大量の水及び/又は砂が存在する地層から油を抽出するか、他の方法では高い沸点のために単離が困難になるような比較的重い油を抽出することができる。例えば多孔管システムと併用して、多孔管に上塗りした本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料によるこのような重油の吸い上げ(wicking)を、真空システムなどと効果的に結合して、重油及び油母頁岩地層から高沸点の留分を連続的に除去することができる。さらに、このようなプロセスは、当技術分野で知られている従来の熱又は触媒分解法(catalyzed cracking methods)と併用して、又はそれの代わりに使用することができる。
【0105】
本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、航空宇宙及び弾道学用途の構造的要素を向上させることもできる。例えば、ミサイルのノーズコーン、航空機の翼の前縁、航空機の1次構造部品(例えばフラップ、翼、プロペラ及び空気ブレーキ、小型機の胴体、ヘリコプタの外殻及びロータブレード)、航空機の2次構造部品(例えば床、扉、シート、空調装置及び2次タンク)、及び航空機のモータ部品などの構造体は、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料によって提供される構造的向上から恩恵を受けることができる。多くの他の用途における構造的向上としては、例えば掃海艇船体、ヘルメット、レドーム、ロケットノズル、救急ストレッチャ、及びエンジン構成要素を挙げることができる。建築及び建設では、外部特徴の構造的向上としては、例えば柱、ペディメント、ドーム、コーニス、及び型枠が挙げられる。同様に、建築の内部向上としては、例えばブラインド、衛生陶器、窓用形材などの構造が挙げられる。
【0106】
海洋産業では、構造的向上は、船体、ストリンガー、マスト、プロペラ、舵及び甲板を挙げることができる。本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、例えばトレーラウォール用の大型パネル、鉄道車両の床板、トラック運転台、外部ボディモールディング、バスの車体外殻及び貨物専用コンテナなど、大量運輸産業にも使用することができる。自動車用途では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、車内部品(例えばトリミング、シート、及び計器パネル)、外部構造(例えばボディパネル、開口部、底部、及びフロント及びリアモジュール)、及び自動車エンジン区画及び燃料機械区画の部品(例えば車軸及びサスペンション、燃料及び排気システム、及び電気及び電子部品)に使用することができる。
【0107】
本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の他の用途には、例えば橋梁建造、鉄筋コンクリート製品(例えばドエルバー、鉄筋、ポストテンション式及びプレストレス方式のテンドン)、ステーインプレースフレームワーク(stay-in-place framework)、送電及び配電構造(例えば電柱、送電ポール、及び腕木)、高速道路の安全及び路側に必要なもの(例えば信号支柱、ガードレール、柱及び支柱)、防音壁、地方自治体の所有するパイプ及び貯蔵タンクを含むことができる。
【0108】
本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、例えば水上スキー及びスキー、自転車、カヤック、カヌー及びパドル、スノーボード、ゴルフクラブのシャフト、ゴルフカート、釣り竿、及び水泳プールなどの様々なレジャー用機器にも使用することができる。他の消費財及びビジネス機器としては、道具(gears)、パン(pans)、住居、ガス耐圧瓶、及び家庭電化製品用部品(例えば洗浄機、洗濯機ドラム、乾燥機、生ゴミ処理機、空調機及び加湿器)を挙げることができる。
【0109】
カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の電気特性は、様々なエネルギー貯蔵及び家庭電化製品に影響を与えることもできる。例えば、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、風力タービンの羽根、太陽光利用構造、及び電子機器用筐体(例えばラップトップ、携帯電話、及びコンピュータキャビネットで、浸出カーボン・ナノチューブを使用してEMIシールドを提供することができる)に使用することができる。他の用途は、電線、冷却装置、電柱、回路基板、配電盤、梯子の手摺、光ファイバ、データ線などの構造体に内蔵された電源、コンピュータ端子箱、及びビジネス機器(例えば複写機、金銭登録機及び郵便機器)を挙げることができる。
【0110】
本明細書で開示する実施形態は、出願人の米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号、第12/611,103号及び第12/938,328号に記載された方法によって容易に作成することができるカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を利用でき、それぞれは、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。以下に、そこで説明されているプロセスについて簡単に説明する。
【0111】
カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出するために、カーボン・ナノチューブを繊維材料上で直接合成する。ある実施形態では、これは、最初にカーボン・ナノチューブ形成触媒(例えば触媒ナノ粒子)を繊維材料上に付着させることによって遂行される。この触媒付着の前に、幾つかの準備プロセスを実行することができる。
【0112】
ある実施形態では、繊維材料を必要に応じてプラズマで処理して、触媒を受け入れるための表面を作ることができる。例えば、プラズマ処理されたガラス繊維により、カーボン・ナノチューブ形成触媒が付着する粗面化されたガラス繊維表面がもたらされる。また、ある実施形態では、プラズマは、繊維表面を「浄化(clean)」する機能をも果たす。このように繊維表面を「粗面化(roughing)」するためのプラズマプロセスにより、触媒の付着は促進される。粗さ(roughness)は、通常、ナノメートルのスケールである。プラズマ処理プロセスにおいて、深さ及び直径がナノメートル単位のクレーター又は窪みが形成される。このような表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、窒素及び水素など、種々の異なる1以上のあらゆるガスのプラズマを用いても達成される。
【0113】
ある実施形態では、使用される繊維材料が、これに付随するサイジング剤を有する場合、そのようなサイジング剤を触媒の付着前に必要に応じて除去してもよい。必要に応じて、前記サイジング剤は触媒付着後に除去してもよい。ある実施形態では、サイジング剤の除去は、カーボン・ナノチューブの合成中又は予熱工程におけるカーボン・ナノチューブの合成直前に行われる。他の実施形態では、サイジング剤の中には、カーボン・ナノチューブ合成プロセスの全体にわたって残存できるものもある。
【0114】
カーボン・ナノチューブ形成触媒(例えば触媒ナノ粒子)の付着前、又はこれと同時に行われる更にもう1つの工程として、繊維材料上へのバリア・コーティングの塗布がある。バリア・コーティングは、繊細な繊維材料(例えば、炭素繊維、有機繊維、金属繊維など)の健全性を保護するために考えられた材料である。このようなバリア・コーティングは、例えば、アルコキシシラン、アルモキサン、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス(spin on glass)及びガラスナノ粒子を挙げることができる。例えば、ある実施形態では、バリア・コーティングは、Accuglass(登録商標)T−11スピンオンガラス(Honeywell International Inc.、ニュージャージー州モリスタウン)である。1つの実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、未硬化のバリア・コーティング材に加えられて、その後、共に繊維材料に塗布されてもよい。他の実施形態では、バリア・コーティング材は、カーボン・ナノチューブ形成触媒の付着前に繊維材料に加えられる。このような実施形態の場合、バリア・コーティングは、触媒の付着前に部分的に硬化してよい。バリア・コーティング材は、後続のCVDなどのカーボン・ナノチューブ成長プロセスのための炭素原料ガスにカーボン・ナノチューブ形成触媒を晒すことが十分に可能な薄さである。ある実施形態において、バリア・コーティングの厚さは、カーボン・ナノチューブ形成触媒の有効径未満か、それに実質的に等しい。カーボン・ナノチューブ形成触媒及びバリア・コーティングが適切に配置されたなら、バリア・コーティングを十分に硬化させることができる。ある実施形態において、バリア・コーティングの厚さは、触媒へのカーボン・ナノチューブ原料ガスのアクセスがまだ可能な限りは、カーボン・ナノチューブ形成触媒の有効径よりも大きくてよい。このようなバリア・コーティングは、カーボン・ナノチューブ形成触媒に対する炭素原料ガスのアクセスが可能となる程度に十分多孔質であってよい。
【0115】
理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは、繊維材料とカーボン・ナノチューブの中間層として機能し、機械的に繊維材料へカーボン・ナノチューブを浸出する。バリア・コーティングを介したこのような機械的浸出は、カーボン・ナノチューブが成長するための頑強なシステムを提供し、ここでは繊維材料がカーボン・ナノチューブを組織化するための基盤として機能しながら、有益なカーボン・ナノチューブ特性を繊維材料に与えられるようにする。バリア・コーティングを備えた機械的な浸出の利点は、本明細書で前述した間接的な結合と同様である。また、バリア・コーティングを含むことの利点は、水分に晒されることに起因した化学的損傷、又は、カーボン・ナノチューブ成長を促進するために用いられる温度で繊維材料を加熱することに起因したあらゆる熱的損傷から、繊維材料を直接保護するという点にある。
【0116】
以下でさらに説明するように、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、遷移金属触媒ナノ粒子の形でカーボン・ナノチューブ形成触媒を含む液体溶液として準備することができる。合成されたカーボン・ナノチューブの直径は、上述したような遷移金属触媒ナノ粒子の大きさに関連する。
【0117】
カーボン・ナノチューブの合成は、高温で実行される化学蒸着(CVD)プロセス又は関連のカーボン・ナノチューブ成長プロセスに基づくものである。他の例示的なカーボン・ナノチューブ成長プロセスは、例えば、マイクロキャビティ、レーザ・アブレーション、火炎合成、アーク放電、及び高圧一酸化炭素(HiPCO)合成が挙げられる。具体的な温度は触媒の選択によるが、通常は約500℃から約1000℃の範囲である。したがって、カーボン・ナノチューブの合成は、カーボン・ナノチューブの成長を支援するために、繊維材料を上述の範囲の温度に加熱することを含む。
【0118】
ある実施形態では、触媒を含む繊維材料上でCVDにより促進されるカーボン・ナノチューブ成長が実行される。CVDプロセスは、例えばアセチレン、エチレン及び/又はエタノールなどのカーボン含有原料ガスによって促進することができる。カーボン・ナノチューブ成長プロセスは、一般的に、1次キャリアガスとして不活性ガス(例えば窒素、アルゴン及び/又はヘリウム)を使用する。カーボン含有原料ガスは、通常、混合物全体の約0.1%から約15%の間の範囲で供給される。CVD成長のための実質的に不活性な環境は、成長チャンバーから水分及び酸素を除去することによって準備することができる。
【0119】
カーボン・ナノチューブ成長プロセスにおいて、カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブの成長に作用する遷移金属触媒ナノ粒子のある場所で成長する。強プラズマ励起電界の存在を任意に用いて、カーボン・ナノチューブの成長に影響を与えることができる。即ち、成長は、電界方向に従う傾向がある。プラズマ溶射及び電界の配置(geometry)を適切に調節することにより、垂直配列の(即ち、繊維材料の長手軸に対して垂直な)カーボン・ナノチューブを合成できる。一定の条件下では、プラズマがない場合であっても、密集したカーボン・ナノチューブは成長方向を実質的に垂直に維持して、結果として、カーペット(carpet)又はフォレスト(forest)に似た高密度配列のカーボン・ナノチューブが生じる。
【0120】
触媒付着プロセスに戻って、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、繊維材料上にカーボン・ナノチューブを成長させることを目的として、その上に触媒ナノ粒子の層(通常は単分子層以内)を設けるために付着される。繊維材料上に触媒ナノ粒子を付着させる操作は、例えば触媒ナノ粒子の溶液の溶射又はディップコーティングなどを含む幾つかの技術によって、又は例えばプラズマプロセスを介して起こる気相蒸着によって遂行することができる。したがって、ある実施形態では、溶媒に触媒を含んだ溶液を形成した後、その溶液で繊維材料をスプレー若しくは浸漬コーティングすることにより、又はスプレー及び浸漬コーティングを組み合わせることにより、触媒が塗布される。単独で或いは組み合わせて用いられるいずれかの手法は、1回、2回、3回、4回、或いは何回でも使用され、これにより、カーボン・ナノチューブの形成に作用する触媒ナノ粒子が十分均一にコーティングされた繊維材料を提供することができる。例えば、浸漬コーティングが使用される場合、繊維材料は、第1の浸漬槽において、第1の滞留時間、第1の浸漬槽内に置かれる。第2の浸漬槽を使用する場合、繊維材料は、第2の滞留時間、第2の浸漬槽内に置かれる。例えば、繊維材料は、浸漬の形態及びラインスピードに応じて約3秒〜約90秒の間、カーボン・ナノチューブ形成触媒の溶液に晒される。スプレー又は浸漬コーティングを用いることにより、約5%未満から約80%もの表面被覆率の触媒表面密度を有する繊維材料が得られる。より高い表面密度(例えば、約80%)の場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒ナノ粒子は実質的に単分子層である。ある実施形態において、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒をコーティングするプロセスにより単分子層だけが生成される。例えば、積み重ねたカーボン・ナノチューブ形成触媒上におけるカーボン・ナノチューブ成長は、カーボン・ナノチューブが繊維材料へ浸出する程度を低下させることがある。他の実施形態において、遷移金属触媒ナノ粒子は、蒸着技術、電解析出技術、及び当業者に既知の他のプロセス(例えば、遷移金属触媒を、有機金属、金属塩又は気相輸送を促進する他の組成物として、プラズマ原料ガスへ添加することなど)を用いて繊維材料上に付着する。
【0121】
カーボン・ナノチューブ浸出繊維を製造するプロセスを連続的にするために、巻き取り可能な繊維材料は、一連の槽で浸漬コーティングを施すことが可能であり、この場合、浸漬コーティング槽は空間的に分離されている。例えば、炉から新たに形成されたガラス繊維など、発生期の繊維が新たに生成されている連続プロセスにおいて、カーボン・ナノチューブ形成触媒の浸漬又は溶射は、新たに形成された繊維材料を十分に冷却した後の第1段階となり得る。ある実施形態において、新たに形成されたガラス繊維の冷却は、カーボン・ナノチューブ形成触媒粒子を分散させた冷却水の噴流で実施される。
【0122】
ある実施形態では、連続プロセスにおいて、繊維を生成してこれにカーボン・ナノチューブを浸出させる場合、サイジング剤の塗布に代えてカーボン・ナノチューブ形成触媒の塗布が行われる。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、他のサイジング剤の存在下で新たに形成された繊維材料に塗布される。このようなカーボン・ナノチューブ形成触媒及び他のサイジング剤の同時塗布により、繊維材料と表面接触したカーボン・ナノチューブ形成触媒を供給してカーボン・ナノチューブの浸出を確実にすることができる。また更なる実施形態では、繊維材料が十分に軟化した状態にある間、例えば、焼きなまし温度近傍又はそれ未満の状態にある間に、カーボン・ナノチューブ形成触媒を溶射又は浸漬コーティングにより発生期の繊維に塗布し、これにより、カーボン・ナノチューブ形成触媒が繊維材料の表面に僅かに埋め込まれる。例えば、高温のガラス繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を付着させる場合、ナノ粒子が溶融して結果的にカーボン・ナノチューブの特性(例えば、直径)が制御不能とならないように、カーボン・ナノチューブ形成触媒の融点を超えないように配慮する必要がある。
【0123】
カーボン・ナノチューブ形成触媒溶液は、あらゆるd‐ブロック遷移金属の遷移金属ナノ粒子溶液であってよい。また、ナノ粒子には、元素形態及び塩形態のd‐ブロック金属からなる合金や非合金の混合物、並びにこれらの混合物が含まれてよい。このような塩形態には、限定するものではないが、酸化物、炭化物、窒化物、酢酸塩、硝酸塩などが含まれる。限定しない例示的な遷移金属ナノ粒子には、例えば、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au及びAg、これらの塩と、これらの混合物と、が含まれる。ある実施形態にでは、このようなカーボン・ナノチューブ形成触媒は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を直接繊維材料に塗布或いは浸出させることにより、繊維材料上に配置される。多くのナノ粒子遷移金属触媒が、例えば、Ferrotec Corporation(ニューハンプシャー州ベッドフォード)などの様々なサプライヤーから市販されており容易に入手できる。
【0124】
繊維材料にカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布するために用いられる触媒溶液は、カーボン・ナノチューブ形成触媒が全域にわたって均一に分散可能ないかなる共通溶媒でもよい。このような溶媒には、限定するものではないが、水、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、トルエン、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサン、又は自身内にカーボン・ナノチューブ形成触媒ナノ粒子の適切な分散系を形成するために極性が制御された他のいかなる溶媒が挙げられる。触媒溶液中におけるカーボン・ナノチューブ形成触媒の濃度は、触媒対溶媒で、およそ1:1から1:10000の範囲内である。
【0125】
ある実施形態では、繊維材料にカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布した後、繊維材料は軟化温度まで任意に加熱される。この工程は、繊維材料の表面にカーボン・ナノチューブ形成触媒を埋め込むのに役立ち、これにより、種結晶成長(seeded growth)を促して、成長するカーボン・ナノチューブの先端に触媒が浮遊する(float)先端成長を阻止することが可能である。ある実施形態では、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を付着した後、繊維材料の加熱は、約500℃から約1000℃の間の温度で行われてよい。カーボン・ナノチューブの成長のためにも用いられるこのような温度への加熱により、繊維材料上にある既存のサイジング剤の除去が促進され、これにより、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を直接付着させることが可能となる。また、ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、加熱前に、サイジング剤のコーティング表面上に配置されてもよい。加熱工程は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料表面上に配置したまま、サイジング剤を除去するために用いられる。この温度での加熱は、カーボン・ナノチューブ成長のための炭素原料ガスの導入前に、又はこれと実質的に同時に行われる。
【0126】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出させるプロセスには、繊維材料からサイジング剤を除去すること、サイジング剤除去後にカーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料に塗布すること、繊維材料を少なくとも約500℃まで加熱すること、及び、繊維材料上にカーボン・ナノチューブを合成することが含まれる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出プロセスの工程には、繊維材料からサイジング剤を除去すること、繊維材料に対してカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布すること、カーボン・ナノチューブの合成温度まで繊維を加熱すること、及び、触媒を含有する繊維材料上へ炭素プラズマを溶射すること、が含まれる。このように、工業用のガラス繊維材料が使用される場合、カーボン・ナノチューブ浸出繊維を構成するためのプロセスには、繊維材料上に触媒を配置する前に、繊維材料からサイジング剤を除去する個別の工程が含まれる。工業用サイジング剤の中には、存在する場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒と繊維材料との面接触を防止して、繊維材料に対するカーボン・ナノチューブの浸出を抑制できるものがある。ある実施形態において、カーボン・ナノチューブの成長条件下でサイジング剤を確実に除去する場合には、サイジング剤の除去は、カーボン・ナノチューブ形成触媒付着後であって炭素含有原料ガスの供給直前又は供給中に行われる。
【0127】
カーボン・ナノチューブを合成する工程には、限定するものではないが、マイクロキャビティ(micro-cavity)、熱又はプラズマ助長CVD法、レーザ・アブレーション、アーク放電、火炎合成、及び高圧一酸化炭素法(HiPCO)といった、カーボン・ナノチューブを形成するための多数の手法が含まれる。CVD中、特に、サイジングされた繊維材料が、これにカーボン・ナノチューブ形成触媒を配置した状態で直接用いられる。ある実施形態では、従来のいかなるサイジング剤もカーボン・ナノチューブの合成中に除去可能である。ある実施形態では、他のサイジング剤は除去されないが、サイジング剤を介した炭素原料ガスの拡散のため、繊維材料へのカーボン・ナノチューブの合成及び浸出を妨げることはない。ある実施形態では、アセチレンガスはイオン化されて、カーボン・ナノチューブ成長のための低温炭素プラズマジェットを形成する。プラズマは触媒を含む繊維材料に向けられる。このように、ある実施形態では、繊維材料上におけるカーボン・ナノチューブの合成には、(a)炭素プラズマを形成すること、及び(b)繊維材料上に配置された触媒に炭素プラズマを向けること、が含まれる。成長するカーボン・ナノチューブの直径は、カーボン・ナノチューブ形成触媒の大きさにより決定される。ある実施形態では、サイジングされた繊維材料は約550℃〜約800℃に加熱され、カーボン・ナノチューブの合成を促進する。カーボン・ナノチューブの成長を開始させるために、反応器には2つ以上のガス、即ち、不活性キャリアガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、又は窒素)及び炭素含有原料ガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノール、又はメタン)が注入される。カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブ形成触媒のある場所で成長する。
【0128】
ある実施形態では、CVD成長プロセスはプラズマで助長される。プラズマは、成長プロセス中に電界を与えることにより生成される。この条件下で成長するカーボン・ナノチューブは電界方向に従う。従って、反応器の配置を調節することにより、垂直配列のカーボン・ナノチューブが、繊維の長手軸に実質的に垂直に成長する(即ち、放射状成長)。ある実施形態では、繊維の周囲に放射状に成長させるために、プラズマは必要とされない。明確な面を有する、例えば、テープ、マット、織物、パイルなどのような繊維材料の場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、繊維材料の一面又は両面に配置可能である。これに対応して、このような条件下、カーボン・ナノチューブもまた、繊維材料の一面又は両面で成長する。
【0129】
上述したように、カーボン・ナノチューブ合成は、巻き取り可能な繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させる連続プロセスを提供するのに十分な速度で行われる。以下に例示されるように、このような連続的な合成は、多くの装置構成により容易になる。
【0130】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、「オール・プラズマ(all plasma)」プロセスで作られる。このような実施形態では、繊維材料は、多くのプラズマ介在工程を通って、最終的なカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を形成する。プラズマプロセスの第1には、繊維表面の改質工程が含まれる。これは、前述のように、繊維材料の表面を「粗面化(roughing)」して触媒の配置を容易にするためのプラズマプロセスである。また前述のように、表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素及び窒素などの種々異なる1以上のガスからなるプラズマを用いて達成される。
【0131】
表面改質後、繊維材料は触媒の塗布へと進む。本発明のオール・プラズマプロセスでは、この工程は、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を配置するためのプラズマプロセスである。カーボン・ナノチューブ形成触媒は、前述のように、通常、遷移金属である。遷移金属触媒は、例えば、磁性流体、有機金属、金属塩、これらの混合物、又は気相輸送の促進に適した他のあらゆる組成物など、限定しない形態の前駆体としてプラズマ原料ガスに添加され得る。カーボン・ナノチューブ形成触媒は、真空及び不活性雰囲気のいずれも必要とはせず、周囲環境の室温で塗布可能である。ある実施形態では、繊維材料は触媒の塗布前に冷却される。
【0132】
オール・プラズマプロセスを継続して行うと、カーボン・ナノチューブの合成がカーボン・ナノチューブ成長反応器内で起こる。カーボン・ナノチューブの成長はプラズマ助長化学蒸着を用いて実現されるが、この場合、炭素プラズマが触媒を含む繊維に溶射される。カーボン・ナノチューブの成長は高温(触媒にもよるが、通常は約500℃〜約1000℃の範囲)で起こるので、触媒を含む繊維は炭素プラズマに晒される前に加熱される。カーボン・ナノチューブ浸出プロセスの場合、繊維材料は、軟化が始まるまで任意に加熱されてもよい。加熱後、繊維材料は炭素プラズマを受けられる状態になっている。炭素プラズマは、例えば、炭素を含む原料ガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノールなど)を、ガスのイオン化が可能な電界中に通すことにより生成される。この低温炭素プラズマは、溶射ノズルにより繊維材料に向けられる。繊維材料は、プラズマを受けるために、例えば、溶射ノズルから約1センチメートル以内など、溶射ノズルにごく近接している。ある実施形態では、加熱器は、繊維材料の上側のプラズマ溶射装置に配置され、これにより繊維材料を高温に維持する。
【0133】
連続的なカーボン・ナノチューブ合成の別の構成には、カーボン・ナノチューブを繊維材料上に直接合成・成長させるための専用の矩形反応器が含まれる。その反応器は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を生成するための連続的なインラインプロセス用に設計され得る。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、CVDプロセスにより、大気圧、かつ、約550℃から約800℃の範囲の高温で、マルチゾーン反応器(multi-zone reactor)内で成長する。カーボン・ナノチューブの合成が大気圧で起こるということは、繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させるための連続処理ラインに反応器を組み込むことを容易にする一因である。このようなゾーン反応器を用いた連続的なインライン処理に合致する別の利点は、カーボン・ナノチューブの成長が数秒で発生するということであり、当該技術分野で標準的な他の手法及び装置構成における数分(又はもっと長い)とは対照的である。
【0134】
様々な実施形態によるカーボン・ナノチューブ合成反応器は、以下の特徴を含む。
【0135】
(矩形に構成された合成反応器)
当該技術分野で既知の標準的なカーボン・ナノチューブ合成反応器は横断面が円形である。これには、例えば、歴史的理由(研究所では円筒状の反応器がよく用いられる)及び利便性(流体力学は円筒状の反応器にモデル化すると容易になり、また、加熱器システムは円管チューブ(石英など)に容易に対応する)、並びに製造の容易性などの多くの理由がある。本開示は、従来の円筒形状を変えて、矩形横断面を有するカーボン・ナノチューブ合成反応器を提供する。変更の理由は以下の通りである。
【0136】
1)反応器容積の非効率的な使用。反応器により処理される多くの繊維材料は相対的に平面的である(例えば、形状が薄いテープやシート状、或いは、開繊したトウ若しくはロービング(roving)など)ので、円形横断面では反応器の容積を十分に使用していない。この不十分な使用は、円筒状のカーボン・ナノチューブ合成反応器にとって、例えば、以下のa)乃至c)に挙げるような、いくつかの欠点となる。a)十分なシステムパージの維持;反応器の容積が増大すれば、同レベルのガスパージを維持するためにガス流量の増大が必要となり、この結果、開放環境におけるカーボン・ナノチューブの大量生産には不十分なシステムとなる。b)炭素含有原料ガス流量の増大;前記a)のように、システムパージのための不活性ガス流を相対的に増大させると、炭素含有原料ガス流量を増大させる必要がある。例示的な12Kのガラス繊維ロービングが、矩形横断面を有する合成反応器の全容積に対しておよそ2000分の1の容積であることを考慮されたい。同等の円筒状反応器(即ち、矩形横断面の反応器と同じ平坦化されたガラス繊維材料を収容できるだけの幅を有する円筒状の反応器)では、ガラス繊維材料の容積は、反応器の体積のおよそ17,500分の1である。CVDなどのガス蒸着プロセス(gas deposition processes)は、通常、圧力及び温度だけで制御されるが、容積は蒸着の効率に顕著な影響を与え得る。矩形反応器の場合、それでもなお過剰な容積が存在し、この過剰容積は無用の反応を促進する。しかしながら、円筒状反応器は、無用な反応の促進が可能なその容積が約8倍もある。このように競合する反応が発生する機会がより大きいと、所望の反応が有効に生じるには、円筒状反応器では一層遅くなってしまう。このようなカーボン・ナノチューブ成長の速度低下は連続的な成長プロセスの進行にとって問題となる。矩形反応器構成の別の利点は、矩形チャンバーの高さを更に低くすることで反応器の容積が低減され、これにより容積比が改善され反応が更に効率的になるという点である。本明細書に開示される実施形態の中には、矩形合成反応器の全容積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全容積に対して僅か約3000倍にしか過ぎないものがある。更なる実施形態の中には、矩形合成反応器の全容積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全容積に対して僅か約4000倍にしか過ぎないものもある。また更なる実施形態の中には、矩形合成反応器の全容積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全容積に対して約10,000倍未満のものがある。加えて、円筒状反応器を使用した場合、矩形横断面を有する反応器と比較すると、同じ流量比を提供するためには、より大量の炭素含有原料ガスが必要である点に注目されたい。当然のことながら、他の実施形態の中には、矩形ではないがこれに比較的類似しており、かつ、円形横断面を有する反応器に対して、反応器の容積を同様に低減する多角形状で表される横断面を有する合成反応器がある。c)問題のある温度分布;相対的に小径の反応器を用いた場合、チャンバー中心からその壁面までの温度勾配はごく僅かである。しかし、例えば、工業規模の生産に用いられるような場合などには、サイズの増大に伴い、このような温度勾配は増加する。温度勾配は、繊維材料の全域で製品品質がばらつく(即ち、製品品質が半径位置に応じて変化する)原因となる。この問題は、矩形横断面を有する反応器を用いた場合に殆ど回避される。特に、平面的な基材が用いられる場合、基材のサイズが大きくなったときに、反応器の高さを一定に維持することができる。反応器の頂部と底部間の温度勾配は基本的にごく僅かであり、結果的に、生じる熱的な問題や製品品質のばらつきは回避される。
【0137】
2)ガス導入。当該技術分野では、通常、管状炉が使用されているので、一般的なカーボン・ナノチューブ合成反応器は、ガスを一端に導入し、それを反応器に通して他端から引き出している。本明細書に開示された実施形態の中には、ガスが、反応器の両側面又は反応器の頂面及び底面のいずれかを通して対称的に、反応器の中心又は対象とする成長ゾーン内に導入されるものがある。これにより、流入する原料ガスがシステムの最も高温の部分(カーボン・ナノチューブの成長が最も活発な場所)に連続的に補充されるので、全体的なカーボン・ナノチューブ成長速度が向上する。
【0138】
(ゾーン分け)
比較的低温のパージゾーンを提供するチャンバーは、矩形合成反応器の両端から延びる。出願人は、仮に高温ガスが外部環境(即ち、反応器の外部)と接触(mix)すると、繊維材料の劣化(degradation)が増加すると、結論を下した。低温パージゾーンは、内部システムと外部環境間の緩衝となる。当該技術分野で既知のカーボン・ナノチューブ合成反応器の構成では、通常、基材を慎重に(かつ緩やかに)冷却することが求められる。本発明の矩形カーボン・ナノチューブ成長反応器の出口における低温パージゾーンは、連続的なインライン処理に必要とされるような短時間の冷却を実現する。
【0139】
(非接触、ホットウォール型、金属製反応器)
ある実施形態では、金属製ホットウォール型(hot-walled)反応器(例えば、ステンレス鋼)が用いられる。金属、特にステンレス鋼が炭素の付着(即ち、煤及び副生成物の形成)を受けやすいために、この種類の反応器の使用は常識に反するようにも考えられる。従って、大部分のカーボン・ナノチューブ合成反応器は、炭素の付着が殆どないため、また、石英は洗浄し易く、また試料の観察が容易であるため、石英から作られる。しかしながら、出願人は、ステンレス鋼上における煤及び炭素付着物が増加することにより、より着実、より効率的、より高速、かつ、より安定的なカーボン・ナノチューブ成長がもたらされるということを発見した。理論に拘束されるものではないが、大気圧運転(atmospheric operation)と連動して、反応器内で起こるCVDプロセスでは拡散が制限されることが示されている。即ち、カーボン・ナノチューブ形成触媒に「過度に供給される(overfed)」、つまり、過量の炭素が、(反応器が不完全真空下で運転している場合よりも)その相対的に高い分圧により反応器システム内で得られる。結果として、開放システム(特に清浄なもの)では、過量の炭素がカーボン・ナノチューブ形成触媒の粒子に付着して、カーボン・ナノチューブの合成能力を低下させる。ある実施形態では、反応器に「汚れが付いて(dirty)」いる、即ち、金属反応器壁に煤が付着している状態の場合に、矩形反応器を意図的に運転する。炭素が反応器壁上の単分子層に付着すると、炭素は、それ自体を覆って付着し易くなる。得られる炭素の中には、この機構により「回収される(withdrawn)」ものがあるので、ラジカルの形で残っている炭素原料が、カーボン・ナノチューブ形成触媒を被毒させない速度でこの触媒と反応する。既存のシステムでは「清浄に(cleanly)」運転するが、これは連続処理のために開放状態であれば、減速した成長速度で、はるかに低い収率でしかカーボン・ナノチューブを生産できないことになる。
【0140】
カーボン・ナノチューブの合成を、前述のように「汚れが付いて」いる状態で実施するのは概して有益であるが、それでも、装置のある部分(例えば、ガスマニフォールド及びガス入口)は、煤が閉塞状態を引き起こした場合、カーボン・ナノチューブの成長プロセスに悪影響を与える。この問題に対処するために、カーボン・ナノチューブ成長反応チャンバーの当該部分を、例えば、シリカ、アルミナ又はMgOなどの煤抑制コーティングで保護してもよい。実際には、装置のこれらの部分は、煤抑制コーティングで浸漬コーティングが施される。INVAR(商標名)は高温におけるコーティングの適切な接着性を確実にする同様のCTE(熱膨張係数)を有し、重要なゾーンにおける煤の著しい堆積を防止するので、INVAR(商標名)などの金属が、これらのコーティングに用いられる。
【0141】
(触媒還元及びカーボン・ナノチューブ合成の組合せ)
本明細書に開示されたカーボン・ナノチューブ合成反応器において、触媒還元及びカーボン・ナノチューブ成長のいずれもが反応器内で起こる。還元工程が個別の工程として実施されると、連続プロセスに用いるものとして十分タイムリーに行えなくなるため、このことは重要である。当該技術分野において既知の標準的なプロセスにおいて、還元工程の実施には、通常1〜12時間かかる。本開示によれば、両工程は1つの反応器内で生じるが、これは、少なくとも1つには、炭素含有原料ガスを導入するのが、円筒状反応器を用いる当該技術分野では標準的となっている反応器の端部ではなく、中心部であることに起因する。還元プロセスは、繊維が加熱ゾーンに入ったときに行われる。この時点に至るまでに、ガスには、触媒を(水素ラジカルの相互作用を介して)還元する前に反応器壁と反応して冷える時間があるということである。還元が起こるのは、この移行領域である。システム内で最も高温の等温ゾーンでカーボン・ナノチューブの成長は起こり、反応器の中心近傍におけるガス入口の近位で最速の成長速度が生じる。
【0142】
ある実施形態では、例えば、トウ又はロービングなど(例えば、ガラスロービング)、緩くまとまった(loosely affiliated)繊維材料が使用される場合、連続プロセスには、トウ又はロービングのストランド(strand)又はフィラメントを広げる工程が含まれる。このように、トウ又はロービングは、広げられるときには、例えば、真空ベースの開繊システム(vacuum-based fiber spreading system)を用いて開繊される。例えば、サイジングされて比較的堅いガラス繊維ロービングを使用する場合、ロービングを「軟化」して繊維の開繊を容易にするために、更なる加熱を用いることができる。個々のフィラメントを含んで構成される開繊繊維(spread fiber)は、フィラメントの全表面積を晒させるよう十分分離して開繊され、こうして後続の処理工程でロービングがより効率的に反応できるようにする。例えば、開繊トウ又は開繊ロービングは、前述のようにプラズマシステムで構成される表面処理工程を経る。その後、粗面化された開繊繊維はカーボン・ナノチューブ形成触媒の浸漬槽を通過する。その結果、表面で放射状に分布した触媒粒子を有するガラスロービングの繊維となる。触媒を含んだロービングの繊維は、その後、前述のように、例えば、矩形チャンバーなどの適切なカーボン・ナノチューブ成長チャンバーに入るが、ここでは、大気圧CVD又はプラズマCVDプロセスを通る流れを用いて、毎秒数ミクロンの速度でカーボン・ナノチューブを合成する。ロービングの繊維は、こうして、そこに放射状に配列されたカーボン・ナノチューブを備えて、カーボン・ナノチューブ成長反応器を出る。
【0143】
上記で概略説明したプロセスに記載したように、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の合成後、浸出されたカーボン・ナノチューブは、実質的に平行に再配向され、架橋結合される。その後、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ上に追加のカーボン・ナノチューブを成長させることができ、追加のカーボン・ナノチューブは、同様に実質的に平行に再配向され、架橋結合される。様々な実施形態では、浸出カーボン・ナノチューブを再配向し架橋結合する工程と、追加のカーボン・ナノチューブを成長させ再配向し架橋結合する工程を、最初のカーボン・ナノチューブ浸出プロセスと効果的に結合することができる。このようなプロセスを、図5で簡潔に説明する。
【0144】
図5は、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブを有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を合成するための例示的な連続システム500の概略図を示す。連続システム500は、繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出するために、上述した様々な実施形態のいずれかにより動作する初期カーボン・ナノチューブ浸出システム501を含む。カーボン・ナノチューブ浸出システム501を出ると、繊維材料は架橋結合ステーション502に入り、浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部と架橋結合する。様々な実施形態では、架橋結合ステーション502は、上述したような架橋結合剤(例えば架橋ポリマー)を含む浴槽である。次に、繊維材料は再配列ステーション503に入り、ここで架橋結合したカーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するように再配列される。実際には、繊維材料に引張力を加える溶媒を使用した場合、ある程度の配列が架橋結合ステーション502でも起こる。さらに、所望の配列度合を達成するために、連続システム500は、選択的に、複数の架橋結合ステーション502及び/又は再配列ステーション503を含んでもよい。例えば、連続システム500は、所望のカーボン・ナノチューブ配列度合達成するために、選択的に2つ以上の再配列ステーション503を含んでいる。2つ以上の再配列ステーション503を使用する場合、異なる再配列方法を使用することができる。
【0145】
実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層を有する繊維材料を形成した後、繊維材料は、触媒ナノ粒子付着ステーション504へ入る。上述したように触媒ナノ粒子の付着が実行されて、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に触媒ナノ粒子を付着させる。触媒ナノ粒子付着ステーション504を出た後、繊維材料は、カーボン・ナノチューブ成長システム505に入る。カーボン・ナノチューブ成長システム505は、カーボン・ナノチューブがバリア・コーティング又は繊維材料上に直接成長するのではなく、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に成長することを除いて、カーボン・ナノチューブ浸出システム501と実質的に同じ方法で動作する。カーボン・ナノチューブ成長システム505内でカーボン・ナノチューブを成長した後、繊維材料は、架橋結合ステーション506及び再配列ステーション507を通過し、これらのステーションは、上述したステーション502及び503と同様に動作する。
【0146】
再配列ステーション507を出た後、連続システム500は、繊維材料上にさらに追加のカーボン・ナノチューブを成長させるために使用される。そのために、繊維材料を、再び、触媒ナノ粒子付着ステーション504、カーボン・ナノチューブ成長システム505、架橋結合ステーション506及び再配列ステーション507を通過させるか、または、連続システム500が、選択的に、繊維材料をこれらの構成要素に複数回通過通できるようにしてもよい。繊維材料を任意的な触媒除去ステーション509に通すことによって、触媒ナノ粒子を、追加のカーボン・ナノチューブを成長する前に繊維材料から除去することができる。ある実施形態では、触媒除去ステーション509は、触媒ナノ粒子の除去に適切な1つ又は複数の酸浴槽を使用することができる。
【0147】
所望の量の追加のカーボン・ナノチューブが繊維材料上に成長したら、繊維材料を、繊維巻き取りボビン510内のスプール、マンドレルなどの巻き取り器に巻き付ける。複数の繊維が、連続システム500内でカーボン・ナノチューブを成長させている場合、前記システムは、選択的な繊維バンドラー508をさらに含むことができ、これは個々のフィラメントを巻いて、上述したようなさらに高い規則構造の繊維材料にする。
【0148】
当然のことながら、本発明の様々な実施形態の働きに実質的に影響を及ぼさない変更も、本明細書で提供された本発明の定義に含まれる。したがって、以下の実施例は、本発明を例示するものであり、限定するものではない。
【0149】
実施例1:カーボン・ナノチューブを炭素繊維材料に浸出した後に再配列及び架橋結合が続く連続プロセス。本実施例では、793のテックス値を有する34−700 12K無サイジング炭素繊維トウ(Grafil Inc.、カリフォルニア州サクラメント)を、カーボン・ナノチューブ浸出用の繊維材料として使用した。この炭素繊維トウの個々のフィラメントは、約7μmの直径を有する。カーボン・ナノチューブの浸出、再配列及び架橋結合は、前述の図5に示したものと同様の連続システムを使用して実施した。本実施例では、炭素繊維上に1層のカーボン・ナノチューブを成長させた。
【0150】
図5に示したように、カーボン・ナノチューブ浸出システム501を使用して、カーボン・ナノチューブを炭素繊維基材に浸出した。カーボン・ナノチューブ浸出システム501に入る前に、触媒ナノ粒子及びバリア・コーティングを、反対の順序で塗布した。すなわち、繊維材料をスプレッダーステーション(図示せず)で十分に開繊した後、複数の浸漬槽を介して触媒ナノ粒子を繊維材料にコーティングしたが、ここではヘキサン中に体積で3000対1の希釈率で希釈した「EFH−1」溶液(Ferrotec Corporation、ニューハンプシャー州ベッドフォード)を使用した。その後、繊維材料を乾燥させた。次に、浸漬槽により、イソプロピルアルコール中に体積で40対1の希釈率で希釈した「Accuglass(登録商標)T−11スピンオンガラス」(Honeywell International Inc.、ニュージャージー州モリスタウン)のバリア・コーティングを塗布した。その後、焼き釜内での乾燥を実施した。大気圧CVDによるカーボン・ナノチューブ成長は、本明細書で説明したような24インチの成長ゾーンを有する矩形反応器内で実施した。総ガス流量の98.0%が不活性ガス(窒素)で、他の2.0%は炭素原料(アセチレン)であった。炭素繊維トウを、1.5フィート/分(45.72cm/分)の速度で反応器に通して引き出し、その成長ゾーンを700℃に維持した。得られた浸出カーボン・ナノチューブは、長さが約10μmであった。
【0151】
次に、カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維トウを、体積で水100部に対してKENTERAが1部の希釈率で水中に希釈されたKENTERA(Zyvex Performance Materials、オハイオ州コロンバス)を含有する浸漬槽からなる架橋結合ステーション502に通して引き出した。炭素繊維に浸出した架橋結合カーボン・ナノチューブを得た。
【0152】
次に、架橋結合カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維トウを、再配列ステーション503に通し、ここではテーパ状ダイによる機械的再配列を介して、カーボン・ナノチューブが繊維軸の方向に平行に配列される。最終的に、前記再配列のメカニズムもまた化学的プロセスと機械的プロセスとの両方を含んでいた。何故なら、ダイの通過と同時に、架橋結合ステーションからの余分な溶液も、繊維材料から押し出されたからである。この動作の剪断力もまた再配列に寄与した。
【0153】
本実施例では、カーボン・ナノチューブを1層しか成長しなかったので、追加の触媒ナノ粒子の付着及び追加のカーボン・ナノチューブの成長は省略した。したがって、この実施例では、その後、配列され架橋結合されたカーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維トウを、個々のフィラメントを小さいサイズのトウに再結合するために、繊維バンドラー508を通過させ、繊維巻き取りボビン510を使用してスプールに実質的に巻き付けた。
【0154】
図6A〜図6Dは、一連の代表的なSEM画像を示し、炭素繊維材料の表面上に成長したままの状態の実質的に垂直に配列されたカーボン・ナノチューブ(図6A)、及び実質的に垂直に配列されたカーボン・ナノチューブの再配列の後の炭素繊維材料の表面上で実質的に平行に配列されたカーボン・ナノチューブ(図6B〜図6D)を示す。図6Cと図6Dは、実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの高解像度画像を示す。本実施例により作成されたカーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維は、未処理の繊維材料に対して約45%の引張強度の改善を実証した。
【0155】
開示された実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者であれば、これらが本発明の例示にすぎないことを容易に認識するであろう。本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例を考え出すことが可能であることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料であって、
繊維材料と、
前記繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブ層と、
を含み、
前記浸出カーボン・ナノチューブは、前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列され、
前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、相互に、前記繊維材料に又はその両方に架橋結合されるカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料。
【請求項2】
架橋結合は、共有結合を含む請求項1に記載のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料。
【請求項3】
架橋結合は、π‐スタッキング相互作用を含む請求項1に記載のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料。
【請求項4】
架橋ポリマーは、前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブと前記π‐スタッキング相互作用を形成する請求項3に記載のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料。
【請求項5】
前記繊維材料は、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維、及び有機繊維からなる群から選択される請求項1に記載のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料。
【請求項6】
前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に成長した追加のカーボン・ナノチューブを、さらに含み、
前記追加のカーボン・ナノチューブは、前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列される請求項1に記載のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料。
【請求項7】
前記追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部に、相互に又はその両方に架橋結合される請求項6に記載のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料。
【請求項8】
前記繊維材料は連続長である請求項1に記載のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料。
【請求項9】
マトリックス材料と、
繊維材料と前記繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブ層を含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料と、
を含み、
前記浸出カーボン・ナノチューブは、前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列され、
前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、相互に前記繊維材料に又はその両方に架橋結合される複合材料。
【請求項10】
架橋結合は、共有結合を含む請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
架橋結合は、π‐スタッキング相互作用を含む請求項9に記載の複合材料。
【請求項12】
架橋ポリマーは、前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブと前記π‐スタッキング相互作用を形成する請求項11に記載の複合材料。
【請求項13】
前記架橋ポリマーは、前記マトリックス材料にも架橋結合される請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
前記繊維材料は、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維、及び有機繊維からなる群から選択される請求項9に記載の複合材料。
【請求項15】
前記マトリックス材料は、ポリマーマトリックス、セラミックマトリックス、及び金属マトリックスからなる群から選択される請求項9に記載の複合材料。
【請求項16】
前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に成長した追加のカーボン・ナノチューブを、さらに含み、
前記追加のカーボン・ナノチューブは、前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列される請求項9に記載の複合材料。
【請求項17】
前記追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部は、前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部に、相互に又はその両方に架橋結合される請求項16に記載の複合材料。
【請求項18】
前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、前記複合材料内で実質的に平行に配列される請求項9に記載の複合材料。
【請求項19】
前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、短繊維を含む請求項9に記載の複合材料。
【請求項20】
前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、連続繊維を含む請求項9に記載の複合材料。
【請求項21】
繊維材料と、該繊維材料に浸出されて前記繊維材料の表面に実質的に垂直に配列されたカーボン・ナノチューブとを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を提供することと、
前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するように、前記実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブを再配向することと、
を含む方法。
【請求項22】
前記実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、相互に、前記繊維材料に又はその両方に架橋結合することを、さらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
架橋結合は、共有結合を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
架橋結合は、π‐スタッキング相互作用を含む請求項22に記載の方法。
【請求項25】
架橋ポリマーは、前記実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブと前記π‐スタッキング相互作用を形成する請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料をマトリックス材料内に配置することを、さらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
再配向は、機械的プロセスを含む請求項21に記載の方法。
【請求項28】
再配向は、化学的プロセスを含む請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に触媒ナノ粒子を付着させることと、
前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に追加のカーボン・ナノチューブを成長させることと、
前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列されるように前記追加のカーボン・ナノチューブを配向することと、
をさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部に、相互に又はその両方に架橋結合することを、さらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料をマトリックス材料内に配置することを、さらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記繊維材料は、連続長である請求項21に記載の方法。
【請求項33】
連続繊維材料を提供することと、
電界又は磁界の存在下で、前記連続繊維材料上にカーボン・ナノチューブ層を成長させることと、
を含み、
カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を形成するように、前記カーボン・ナノチューブを前記連続繊維材料に浸出させ、
前記浸出カーボン・ナノチューブが前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列されるように、前記電界又は前記磁界の方向を合わせる方法。
【請求項34】
前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、相互に、前記繊維材料に又はその両方に架橋結合することを、さらに含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
架橋結合は、共有結合を含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
架橋結合は、π‐スタッキング相互作用を含む請求項34に記載の方法。
【請求項37】
架橋ポリマーは、前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブと前記π‐スタッキング相互作用を形成する請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料をマトリックス材料内に配置することを、さらに含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に触媒ナノ粒子を付着させることと、
前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に追加のカーボン・ナノチューブを成長させることと、
前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列されるように、前記追加のカーボン・ナノチューブを配向することと、
をさらに含む請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、前記実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部に、相互に又はその両方に架橋結合することを、さらに含む請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料をマトリックス材料内に配置することを、さらに含む請求項40に記載の方法。
【請求項42】
繊維材料と、該繊維材料に浸出されて前記繊維材料の表面に実質的に垂直に配列されたカーボン・ナノチューブとを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を提供することと、
架橋結合して実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブを形成するために、前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料に架橋ポリマーを添加することと、
を含み、
前記架橋ポリマーは、前記架橋結合して実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成し、さらに、
前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された架橋浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するように、前記架橋結合して実質的に垂直に配列された浸出カーボン・ナノチューブを再配向することを含む方法。
【請求項43】
再配向は、機械的プロセスを含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
再配向は、化学的プロセスを含む請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記架橋結合して実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層に触媒ナノ粒子を付着させることと、
前記架橋結合して実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に追加のカーボン・ナノチューブを成長させることと、
前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列されるように、前記追加のカーボン・ナノチューブを配向することと、
をさらに含む請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、前記架橋結合して実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブに、相互に又はその両方に架橋結合することを、さらに含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
連続カーボン・ナノチューブ成長プロセスであって、
連続繊維材料を提供することと、
連続カーボン・ナノチューブ成長プロセスで前記連続繊維材料上にカーボン・ナノチューブを成長させることと、
を含み、
前記カーボン・ナノチューブがカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を形成するように、前記繊維材料に浸出され、さらに、
前記浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、相互に、前記繊維材料に又はその両方に架橋結合することを含み、
架橋結合は、架橋結合した浸出カーボン・ナノチューブを形成するように、前記浸出カーボン・ナノチューブとπ‐スタッキング相互作用を形成する架橋ポリマーで前記浸出カーボン・ナノチューブを処理することを含み、さらに、
前記連続繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列された架橋浸出カーボン・ナノチューブ層を形成するように、機械的プロセス又は化学的プロセスによって前記架橋浸出カーボン・ナノチューブを配向することを含む連続カーボン・ナノチューブ成長プロセス。
【請求項48】
前記架橋結合して実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に触媒ナノ粒子を付着させることと、
前記架橋結合して実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブ層の上に追加のカーボン・ナノチューブを成長させることと、
前記繊維材料の長手軸に実質的に平行に配列されるように、前記追加のカーボン・ナノチューブを配向することと、
をさらに含む請求項47の連続カーボン・ナノチューブ成長プロセス。
【請求項49】
前記追加のカーボン・ナノチューブの少なくとも一部を、前記架橋結合して実質的に平行に配列された浸出カーボン・ナノチューブの少なくとも一部に、相互に又はその両方に架橋結合することを、さらに含む請求項48に記載の連続カーボン・ナノチューブ成長プロセス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−518791(P2013−518791A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551392(P2012−551392)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/023403
【国際公開番号】WO2011/146151
【国際公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】