説明

平角電線用被覆材、被覆平角電線及び電気機器

【課題】平角電線を被覆したときに特性の低下を抑制できると共に、長尺化を可能にする平角電線用被覆材を提供する。また、本発明は、特性の低下が抑制された被覆平角電線及び電気機器を提供する。
【解決手段】平角電線用被覆材10は、平角電線を被覆するための被覆材であって、表面11aと、表面11aと反対側の裏面11bとを有する基材11と、基材11の表面11a上に形成された粘弾性体層12とを備え、剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、基材11の裏面11bに対する粘弾性体層12の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下である。被覆平角電線は、平角電線用被覆材10と、平角電線用被覆材10で被覆された平角電線とを備える。電気機器は、被覆平角電線を用いて作製されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平角電線用被覆材、被覆平角電線及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器に使用される回転機器、磁石等のコイル機器には、平角電線を絶縁性の被覆材で被覆した被覆平角電線が用いられている。平角電線として、従来より、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、またはそれらの金属の2種以上の組み合わせなどの線材が用いられており、近年では、ビスマス系、イットリウム系、ニオブ系などの超伝導線材が用いられている。
【0003】
このような平角電線を絶縁性の被覆材で被覆した被覆平角電線として、例えば特開2000−4552号公報(特許文献1)が挙げられる。この特許文献1には、並列された裸平角電線を絶縁フィルムテープで螺旋状に巻回して被覆することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−4552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の被覆平角電線において裸平角電線の絶縁性を高めるためには、絶縁フィルムテープの一部を重ね合わせたラップ部を設ける必要があるが、ラップ部に隙間が生じる場合や、絶縁フィルムテープが裸平角電線に十分に密着しないため気泡を含む場合があった。このような隙間や気泡が形成された部分には電界が集中し、微弱な放電が発生する。これは部分放電と呼ばれ、これにより絶縁フィルムテープが劣化し、長時間使用後には絶縁破壊に至ることがあり、特性が低下してしまうという問題があった。
特に、平角電線として超伝導線材を用いると、超伝導線材は液体窒素中で使用されるため、ラップ部分に噛みこんだ気泡による部分放電開始電圧の低下が著しいことが本発明者によって確認された。このため、平角電線として超伝導線材を用いた場合にも、ラップ部の気泡や隙間による部分放電に起因して、被覆平角電線の特性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
被覆平角電線の特性の低下を抑制するために、ラップ部の幅を広くして、ラップ部の気泡や隙間の発生を抑制する技術が考えられる。しかし、ラップ部の幅、つまり絶縁フィルムテープの重なり幅が広い場合には、絶縁フィルムテープを裸平角電線に螺旋状に巻回すると、1本の絶縁フィルムテープで巻回できる裸平角電線の長さが短くなる。
【0007】
また、被覆平角電線の特性の低下を抑制するために、裸平角電線の延在方向と絶縁フィルムテープの巻回する方向とのなす角度を大きくしてラップ部の気泡や隙間の発生を抑制する技術が考えられる。しかし、この場合にも、絶縁フィルムテープを裸平角電線に螺旋状に巻回すると、1本の絶縁フィルムテープで巻回できる裸平角電線の長さが短くなる。
【0008】
1本の絶縁フィルムテープで巻回できる裸平角電線の長さが短くなると、被覆平角電線の長さが短くなるので、この被覆平角電線を用いて電気機器を作製すると、被覆平角電線の接続箇所が増加する。被覆平角電線の接続箇所では、強度の低下、抵抗の増加などにより、電気機器の特性が低下してしまう。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、平角電線を被覆したときに特性の低下を抑制できると共に、長尺化を可能にする平角電線用被覆材を提供することを一の課題とする。また、本発明は、特性の低下が抑制された被覆平角電線及び電気機器を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、平角電線用被覆材で平角電線を螺旋状に被覆したときに、平角電線の延在方向と被覆材の巻回する方向とのなす角度(巻き角度)を小さく、かつラップ部の幅を小さくしても、ラップ部の気泡や隙間の発生を抑制して特性の低下を抑制できると共に、長尺化を可能にする手段について鋭意研究した結果、ラップ部における接着力が重要であることを見出して、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の平角電線用被覆材は、平角電線を被覆するための被覆材であって、表面と、この表面と反対側の裏面とを有する基材と、この基材の表面上に形成された粘弾性体層とを備え、剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、基材の裏面(自背面)に対する粘弾性体層の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下である。
【0012】
本発明の平角電線用被覆材によれば、自背面に対する接着力が0.05N/20mm以上であるので、平角電線を被覆した基材と、その上に重なる粘弾性体層との接着力が大きいため、巻き角度を小さく、かつラップ部の幅を小さくしても、ラップ部に隙間や気泡が形成されることを抑制できる。このため、平角電線を被覆したときに、部分放電の発生を抑制できるので、特性の低下を抑制できると共に、長尺化を可能にする平角電線用被覆材を提供することができる。
なお、自背面に対する接着力が10N/mm以下であると、平角電線用被覆材がロール状に巻回されている場合には、繰り出し力が大きすぎることがないので、平角電線用被覆材を繰り出すことができる。したがって、平角電線用被覆材を平角電線に被覆することが可能となる。
【0013】
上記平角電線用被覆材において好ましくは、粘弾性体層は、シリコーン系粘弾性体組成物を含む。
【0014】
シリコーン系粘弾性体組成物は、耐寒性、耐放射線性、耐熱性及び耐腐食性に優れるため、粘弾性体層の特性を向上できる。このため、平角電線を被覆したときに特性の低下をより抑制できる。
【0015】
上記平角電線用被覆材において好ましくは、基材は、5.0μm以上25.0μm以下の厚みを有する。
【0016】
基材の厚みが5.0μm以上であると、平角電線用被覆材の強度を向上することができる。基材の厚みが25.0μm以下であると、平角電線用被覆材を平角電線に被覆したときに形成される被覆平角電線における平角電線の密度を高めることができるので、被覆平角電線の特性の低下をより抑制できる。
【0017】
本発明の被覆平角電線は、平角電線用被覆材と、この平角電線用被覆材で被覆された平角電線とを備える。
【0018】
本発明の被覆平角電線によれば、自背面に対する粘弾性体層の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下である平角電線用被覆材を備えているので、巻き角度を小さく、かつラップ部の幅を小さくしても、ラップ部に隙間や気泡が形成されることを抑制できる。このため、特性の低下が抑制された被覆平角電線を提供することができる。
【0019】
上記被覆平角電線において好ましくは、平角電線は、超伝導線である。
【0020】
超伝導線は低温で使用されるので、ラップ部に気泡や隙間があると、部分放電開始電圧が著しく低下する。しかし、本発明の被覆平角電線によれば、自背面に対する接着力が0.05N/20mm以上10N/20mm以下である平角電線用被覆材を備えているので、ラップ部に気泡や隙間が形成されることを抑制できる。このため、本発明は、平角電線として、超伝導線を好適に用いることができる。
【0021】
本発明の電気機器は、上記いずれかの被覆平角電線を用いて作製されている。
【0022】
本発明の電機機器によれば、1本の平角電線用被覆材で、高い特性を維持して被覆する平角電線の長さを長尺にできる平角電線用被覆材を備えた被覆平角電線を用いて作製されている。このため、被覆平角電線の接続箇所を低減できるので、接続箇所に起因した電気機器の特性の低下を低減できる。したがって、特性の低下が抑制された電気機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、平角電線を被覆したときに特性の低下を抑制できると共に、長尺化を可能にする平角電線用被覆材を提供することができる。また、本発明は、特性の低下が抑制された被覆平角電線及び電気機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における平角電線用被覆材を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における平角電線用被覆材を概略的に示す断面図であり、図1における領域IIの拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2における被覆平角電線を概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態2における被覆平角電線を概略的に示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態2における被覆平角電線を概略的に示し、図3及び図4におけるV−V線に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における被覆平角電線を概略的に示し、図4におけるVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2における被覆平角電線を概略的に示し、図4におけるVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3における電気機器の一例であるコイルを概略的に示す斜視図である。
【図9】実施例1及び2において、部分放電開始電圧を測定するための測定装置を示す模式図である。
【図10】実施例1及び2において、絶縁破壊電圧を測定するための測定装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0026】
(実施の形態1)
図1及び図2を参照して、本発明の一実施の形態における平角電線用被覆材について説明する。図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態1における平角電線用被覆材10は、平角電線を被覆するための被覆材である。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態における平角電線用被覆材10は、テープ状であり、例えば巻芯20にロール状に巻回されている。なお、平角電線用被覆材10は、テープ状に限定されず、シート状、フィルム状などの他の形状であってもよい。
【0028】
図2に示すように、平角電線用被覆材10は、表面11aと、表面11aと反対側の裏面11bとを有する基材11と、基材11の表面11a上に形成された粘弾性体層12とを備えている。なお、基材11と粘弾性体層12との間には、別の層がさらに形成されていてもよい。また、粘弾性体層12の表面12a上に、表面12aを保護するための剥離ライナー(図示せず)が形成されていてもよい。また、基材11の裏面11bには、粘弾性体層12は形成されていないことが好ましい。
【0029】
基材11は、絶縁性であれば特に限定されないが、耐放射線性及び耐熱性を有していることが好ましい。このような基材11として、例えばポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの樹脂のうち、特にポリイミド樹脂を基材11として用いることが好ましい。ポリイミド樹脂は、耐熱性と共に、不燃性材料であるので、電気機器に使用する絶縁材料としては、優れた難燃性を有するという点で、本実施の形態の平角電線用被覆材10の基材11として優れた特性を有する。
【0030】
上記ポリイミド樹脂は、公知または慣用の方法により得ることができる。例えば、ポリイミドは有機テトラカルボン酸二無水物とジアミノ化合物(ジアミン)とを反応させてポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を合成し、このポリイミド前駆体を脱水閉環することにより得ることができる。
【0031】
上記有機テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物等が挙げられる。これらの有機テトラカルボン酸二無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記有機テトラカルボン酸二無水物のうち、柔軟性を重視する場合には、エーテル結合を含有する化合物が好ましく、例えばODPAが好ましい。上記有機テトラカルボン酸二無水物のうち、強度を重視する場合には、剛直な構造を有するPMDAを用いることができ、強度及び柔軟性のバランスを考慮する場合には、BPDAを用いることができる。
【0032】
上記ジアミノ化合物としては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。これらのジアミノ化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
なお、本実施の形態において用いるポリイミド樹脂としては、有機テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用い、ジアミノ化合物としてp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。このようなポリイミド樹脂は、「カプトン(登録商標)」(東レ・デュポン社製)、「ユーピレックス(登録商標)」(宇部興産社製、「アピカル(登録商標)」(カネカ社製)などの市販品を用いることもできる。
【0034】
基材11は、5.0μm以上25.0μm以下の厚みを有することが好ましく、7.0μm以上15.0μm以下の厚みを有することがより好ましく、10.0μm以上12.5μm以下の厚みを有することがより一層好ましい。厚みがこの範囲内であると、十分な絶縁性を確保でき、平角電線を被覆したときに平角電線の機能を十分に発揮できる。
具体的には、基材11の厚みが25.0μm以下であると、平角電線用被覆材を平角電線に被覆した際に形成される被覆平角電線における平角電線の線占率を高めることができるので、被覆平角電線の特性の低下をより抑制できる。基材11の厚みが15.0μm以下であると、被覆平角電線の特性の低下をより一層抑制できる。基材11の厚みが12.5μm以下であると、被覆平角電線の特性の低下をさらに抑制できる。
一方、基材11の厚みが5.0μm以上であると、平角電線用被覆材10を平角電線に被覆した際に形成される被覆平角電線の絶縁性を高めることができるので、作動中に絶縁破壊することを抑制できる。基材11の厚みが7.0μm以上であると、絶縁破壊することをより抑制できる。基材11の厚みが10.0μm以上であると、絶縁破壊することをより一層抑制できる。
【0035】
なお、本実施の形態における基材11は、後述する粘弾性体層12との投錨力を向上させるために、スパッタエッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理などの化学的処理がされていてもよく、下塗り剤などが塗布されていてもよい。
【0036】
また、本実施の形態における基材11は、1層で構成されていてもよく、複数層で構成されていてもよい。
【0037】
粘弾性体層12は、基材11の裏面11b(自背面)に対して0.05N/20mm以上10N/20mm以下、好ましくは0.2N/20mm以上6.0N/20mm以下、より好ましくは1.7N/20mm以上3.6N/20mm以下の接着力(180°ピール、引っ張り速度300mm/分)を有している。
【0038】
自背面に対する接着力が0.05N/20mm未満であると、平角電線を被覆した基材11と、その上(裏面11b上)に重なる粘弾性体層12との接着力が小さすぎるため、巻き角度が小さい場合や、ラップ部の幅が小さい場合には、ラップ部に隙間や気泡が形成されるので、平角電線を被覆したときに、部分放電が発生するなど、特性が低下する。また、巻き角度を大きくする場合やラップ幅を大きくすると、1本の平角電線用被覆材で平角電線を被覆したときの長さを長尺にできない。自背面に対する接着力が0.2N/20mm以上であると、特性の低下を抑制できると共に、長尺化を可能にする。自背面に対する接着力が1.7N/20mm以上であると、特性の低下をより抑制できると共に、より長尺にすることができる。
一方、自背面に対する接着力が10N/mmを超えると、本実施の形態のように平角電線用被覆材10がロール状に巻回されている場合には、繰り出し力が大きすぎるため、平角電線用被覆材10を繰り出すことができないので、平角電線用被覆材10を平角電線に被覆することができない。また、自背面に対する接着力が10N/mmを超えると、この平角電線用被覆材を用いてコイルを形成し、空隙にエポキシ樹脂等を導入して固める際に、エポキシ樹脂が付着しにくいので、コイル等の電気機器に用いることができない。自背面に対する接着力が3.6N/20mm以下の場合、巻き戻し安定性を十分に得られるので、平角電線用被覆材を平角電線に被覆することができる。
【0039】
ここで、上記自背面に対する接着力は、幅が20mmの粘弾性体層12を自背面に貼付し、圧着した後、剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離するために必要な力を意味し、数値が大きいほど自背面に対する接着力(粘着力)が大きいことを示す。
【0040】
上記自背面に対する接着力は、例えば粘弾性体層12の組成を調整することで達成できる。例えば粘弾性体層12としてシリコーン系粘弾性体組成物を用いる場合、シリコーンガムとシリコーンレジンとの配合比を調整することで、自背面に対する接着力を調整することができ、具体的にはシリコーンレジンの配合量を増やすことで接着力を高めることができる。より具体的には、粘弾性体層12の自背面に対する接着力(180°ピール、引っ張り速度300mm/分)を0.05N/20mm以上10N/20mm以下にするためには、シリコーンガムとシリコーンレジンとの配合割合(重量比)をシリコーンガム:シリコーンレジン=95:5〜30:70程度にする。
【0041】
また、粘弾性体層12は、SUS304鋼板に対して好ましくは0.28N/20mm以上8.0N/20mm以下、より好ましくは2.5N/20mm以上5.9N/20mm以下の接着力(180°ピール、引っ張り速度300mm/分)を有している。
【0042】
SUS304鋼板に対する接着力が0.28N/20mm以上であると、粘弾性体層12の接着力が大きいので、平角電線と室温で十分に密着し、ラップ部に形成される隙間や気泡を抑制して平角電線を被覆できるので、特性の低下をより抑制できると共に、1本の平角電線用被覆材で平角電線を被覆したときに長尺化を可能にする。SUS304鋼板に対する接着力が2.5N/20mm以上であると、特性の低下をより一層抑制できると共に、より長尺にできる。
一方、SUS304鋼板に対する接着力が5.9N/mm以下であると、本実施の形態のように平角電線用被覆材がロール状に巻回されている場合には、平角電線用被覆材を繰り出すことが容易にできると共に平角電線用被覆材で平角電線を螺旋状に被覆したときに、平角電線用被覆材10が伸びてしまうこと及び平角電線に反りや捩れ等の発生を抑制できる。
【0043】
ここで、上記SUS304鋼板に対する接着力は、幅が20mmの粘弾性体層12をSUS304鋼板に貼付し、圧着した後、剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離するために必要な力を意味し、数値が大きいほど自背面に対する接着力(粘着力)が大きいことを示す。
【0044】
上記SUS304鋼板に対する接着力は、例えば粘弾性体層12の組成を調整することで達成できる。例えば粘弾性体層としてシリコーン系粘弾性体組成物を用いる場合、シリコーンガムとシリコーンレジンとの配合比を調整することで、SUS304鋼板に対する接着力を調整することができ、具体的にはシリコーンレジンの配合量を増やすことで接着力を高めることができる。より具体的には、粘弾性体層12のSUS304鋼板に対する接着力(180°ピール、引っ張り速度300mm/分)を0.28N/20mm以上5.9N/20mm以下にするためには、シリコーンガムとシリコーンレジンとの配合割合(重量比)をシリコーンガム:シリコーンレジン=90:10〜50:50程度にする。
【0045】
粘弾性体層12は、粘弾性体を構成するベースポリマーを含む。このようなベースポリマーとしては、特に限定されず、公知のベースポリマーから適宜選択して用いることができ、例えばアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、フッ素系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。これらのベースポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのベールポリマーのうち、耐寒性、耐放射線性、耐熱性及び耐腐食性に優れる観点から、シリコーン系ポリマーを粘弾性体層12として用いることが好ましい。つまり、粘弾性体層12は、シリコーン系ポリマーを含有する粘弾性体組成物(シリコーン系粘弾性体組成物)を含むことが好ましく、シリコーン系粘弾性体組成物を主成分とし、残部が不可避的不純物からなることがより好ましい。
【0046】
ここで、上記シリコーン系粘弾性体組成物は、シリコーンガム及びシリコーンレジンを主成分とする配合物の架橋構造を含有している。
【0047】
シリコーンガムとしては、例えば、ジメチルシロキサンを主な構成単位とするオルガノポリシロキサンを好適に用いることができる。オルガノポリシロキサンには必要に応じてビニル基、または他の官能基が導入されてもよい。オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は通常18万以上であるが、28万以上100万以下が好ましく、50万以上90万以下がより好ましい。これらのシリコーンガムは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。重量平均分子量が低い場合には、架橋剤の量によりゲル分率を調整することができる。
【0048】
シリコーンレジンとしては、例えば、M単位(R3SiO1/2)、Q単位(SiO2)、T単位(RSiO3/2)及びD単位(R2SiO)から選ばれるいずれか少なくとも1種の単位(上記単位中、Rは一価炭化水素基または水酸基を示す)を有する共重合体からなるオルガノポリシロキサンを好適に用いることができる。この共重合体からなるオルガノポリシロキサンは、OH基を有する他に、必要に応じてビニル基等の種々の官能基が導入されていてもよい。導入する官能基は架橋反応を起こすものであってもよい。共重合体としては、M単位とQ単位とからなるMQレジンが好ましい。
【0049】
シリコーンガムとシリコーンレジンとの配合割合(重量比)は特に限定されないが、シリコーンガム:シリコーンレジン=100:0〜20:80程度が好ましく、100:0〜30:70程度がより好ましい。シリコーンガム及びシリコーンレジンは、単にそれらを配合してもよく、それらの部分縮合物であってもよい。
【0050】
上記配合物には、それを架橋構造物とするために、通常、架橋剤を含む。架橋剤により、シリコーン系粘弾性体組成物のゲル分率を調整することができる。
【0051】
粘弾性体層12のゲル分率は、シリコーン系粘弾性体組成物の種類によっても異なるが、概ね20%以上99%以下程度が好ましく、30%以上98%以下程度がより好ましい。ゲル分率がこの範囲内であると、接着力と保持力とのバランスがとりやすいという利点がある。具体的には、ゲル分率が99%以下の場合、初期接着力が低くなることを抑制できるので、貼り付きが良好になる。ゲル分率が20%以上の場合、十分な保持力が得られるので、平角電線用被覆材10のずれを抑制できる。
【0052】
本実施の形態におけるシリコーン系粘弾性体組成物のゲル分率(重量%)は、シリコーン系粘弾性体組成物から乾燥重量W1(g)の試料を採取し、これをトルエンに浸漬した後、この試料の不溶分をトルエン中から取り出し、乾燥後の重量W2(g)を測定し、(W2/W1)×100の式より求められる値である。
【0053】
本実施の形態におけるシリコーン系粘弾性体組成物は、一般に用いられる、過酸化物系架橋剤による過酸化物硬化型架橋と、Si−H基を含有するシロキサン系架橋剤による付加反応型架橋を用いることができる。
【0054】
過酸化物系架橋剤の架橋反応はラジカル反応であるため、通常150℃以上220℃以下の高温下で架橋反応が進められる。一方、ビニル基含有のオルガノポリシロキサンとシロキサン系架橋剤との架橋反応は付加反応であるので、通常80℃以上150℃以下の低温で反応が進む。本実施の形態においては、特に低温短時間で架橋を完了できる観点から、付加反応型架橋が好ましい。
【0055】
上記過酸化物系架橋剤としては、従来よりシリコーン系粘弾性体組成物に使用されている各種のものを特に制限なく使用でき、例えば過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン−3等が挙げられる。これらの過酸化物系架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。過酸化物系架橋剤の使用量は、通常、シリコーンゴム100重量部に対して0.15重量部以上2重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上1.4重量部以下であることがより好ましい。
【0056】
シロキサン系架橋剤として、例えば、ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に少なくとも平均2個有するポリオルガノハイドロジエンシロキサンが用いられる。ケイ素原子に結合した有機基としてはアルキル基、フェニル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられるが、合成及び取り扱いが容易である観点から、メチル基が好ましい。シロキサン骨格構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。
【0057】
シロキサン系架橋剤の添加量は、シリコーンゴム及びシリコーンレジン中のビニル基1個に対して、ケイ素原子に結合した水素原子が好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは4個以上17個以下になるように配合する。ケイ素原子に結合した水素原子が1個以上の場合には十分な凝集力が得られ、4個以上の場合にはより十分な凝集力が得られる。ケイ素原子に結合した水素原子が30個以下の場合には接着特性の低下を抑制でき、17個以下の場合には接着特性の低下をより抑制できる。
シロキサン系架橋剤を用いる場合には、通常、白金触媒が用いられるが、その他種々の触媒を使用することができる。
なお、シロキサン系架橋剤を用いる場合には、シリコーンゴムとしてビニル基を有するオルガノポリシロキサンを用い、そのビニル基は0.0001モル/100g以上0.01モル/100g以下程度であることが好ましい。
【0058】
本発明の粘弾性体層には、上記ベースポリマーの他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、粘着付加剤、可塑剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、安定剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、顔料、軟化剤、充填剤などの従来公知の各種の添加剤を適宜配合することができる。
【0059】
粘弾性体層12は、1.0μm以上25.0μm以下の厚みを有することが好ましく、3.0μm以上15.0μm以下の厚みを有することがより好ましい。粘弾性体層12の厚みがこの範囲内であると、適度な接着性が得られるという利点がある。
具体的には、粘弾性体層12の厚みが25.0μm以下であると、平角電線用被覆材10を平角電線に被覆した際に形成される被覆平角電線における平角電線の線占率を高めることができるので、被覆平角電線の特性の低下をより抑制できる。粘弾性体層12の厚みが15.0μm以下であると、特性の低下をより一層抑制できる。
一方、粘弾性体層12の厚みが1.0μm以上であると、平角電線への密着度を高めることができ、平角電線と平角電線用被覆材10との間に形成される隙間をより抑制できる。粘弾性体層12の厚みが3.0μm以上であると、平角電線と平角電線用被覆材10との間に形成される隙間をより一層抑制できる。
【0060】
また、平角電線用被覆材10は、13.0μm以上40.0μm以下の厚みを有することが好ましく、15.5μm以上40.0μm以下の厚みを有することがより好ましい。平角電線用被覆材10の厚みが13.0μm以上であると、強度が十分であり、取り扱い性に優れ、15.5μm以上であると、強度がより十分であり、取り扱い性により優れる。平角電線用被覆材10の厚みが40.0μm以下であると、平角電線用被覆材を平角電線に被覆した際に形成される被覆平角電線における平角電線の線占率を高めることができるので、被覆平角電線の特性の低下をより抑制できる。
【0061】
平角電線用被覆材10は、螺旋状に平角電線を被覆する際にラップ幅を狭く、かつ裸平角電線の延在方向と絶縁フィルムテープの巻回する方向とのなす角度を小さくできる観点から、被覆する平角電線の幅の1倍以上2倍以下の幅を有することが好ましい。このような平角電線用被覆材10の幅は、例えば1mm以上80mm以下が好ましく、1.5mm以上60mm以下がより好ましく、2mm以上40mm以下がより一層好ましい。
【0062】
平角電線用被覆材10は、平角電線を被覆する際の接続部分であるつなぎ目を設けないことが好ましいので、長尺であることが好ましい。このような平角電線用被覆材10の長さは、例えば500mm以上が好ましく、1000mm以上がより好ましく、3000m以上がより一層好ましい。本実施の形態の平角電線用被覆材10は巻芯20にロール状に巻回されて保持されているが、1つの巻芯20に複数列に亘って巻回する、いわゆるボビン巻きにより保持されていてもよい。
【0063】
続いて、図1及び図2を参照して、本実施の形態における平角電線用被覆材10の製造方法について説明する。
【0064】
まず、上述したように、表面11aと、この表面11aと反対側の裏面11bとを有する基材11を準備する。
【0065】
次に、基材11の表面11a上に、粘弾性体層12を形成する。粘弾性体層12の形成方法は特に限定されないが、例えばシリコーン系粘弾性体組成物を基材11の表面11a上にコーティングする方法により、粘弾性体層12を形成することができる。
【0066】
具体的には、シリコーンゴム、シリコーンレジン、架橋剤、触媒等を含むシリコーン系粘弾性体組成物をトルエン等の溶剤に溶解した溶液を基材11の表面11aに塗布し、次いで上記配合物を加熱することで溶剤の留去と架橋とを行う。本実施の形態におけるシリコーン系粘弾性体組成物を含む粘弾性体層12の形成方法としては、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0067】
以上の工程を実施することにより、図2に示す平角電線用被覆材10を製造することができる。なお、平角電線用被覆材10の製造方法は、上述した方法に特に限定されない。平角電線用被覆材10が剥離ライナーを備えている場合には、例えば以下の方法で製造してもよい。
【0068】
具体的には、まず剥離ライナーを準備する。剥離ライナーとしては、例えば、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シート、金属箔、またはそれらのラミネート体等が挙げられる。
【0069】
次に、剥離ライナー上に、例えばシリコーン系粘弾性体組成物を含む粘弾性体層12を形成する。粘弾性体層12を形成する方法は特に限定されないが、トルエンを溶剤に用い、付加反応型架橋を行うシリコーン系粘弾性体組成物を含む粘弾性体層12を形成する場合には、加熱温度は、例えば80℃以上150℃以下が好ましく、100℃以上130℃以下がより好ましい。なお、加熱温度は、溶剤を留去でき、所定の架橋反応が進行できる温度であれば特に限定されない。
【0070】
次に、剥離ライナー上に形成された粘弾性体層12を、基材11に転写する。以上の工程を実施することにより、図2に示す平角電線用被覆材10を製造することができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、図2に示す平角電線用被覆材10を巻芯20に巻き付ける工程をさらに実施する。この工程は、平角電線用被覆材10の形状等により省略されてもよい。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態における平角電線用被覆材10は、平角電線を被覆するための被覆材であって、表面11aと、この表面11aと反対側の裏面11bとを有する基材11と、基材11の表面11a上に形成された粘弾性体層12とを備え、剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、基材11の裏面11b(自背面)に対する粘弾性体層12の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下である。
【0073】
本実施の形態における平角電線用被覆材10によれば、自背面に対する接着力が0.05N/20mm以上であるので、平角電線を被覆した基材11と、その上に重なる粘弾性体層12との接着力が大きいため、平角電線への巻き角度を小さく、かつラップ部の幅を小さくしても、ラップ部に隙間や気泡が形成されることを抑制できる。このため、平角電線を被覆したときに、部分放電の発生を抑制できるので、特性の低下を抑制できると共に、長尺化を可能にする平角電線用被覆材10を実現できる。
なお、自背面に対する接着力が10N/mm以下であるので、平角電線用被覆材10がロール状に巻回されている場合には、繰り出し力が大きすぎないので、平角電線用被覆材10を繰り出すことができる。したがって、平角電線用被覆材10を平角電線に被覆することが可能となる。
【0074】
(実施の形態2)
図3〜図7を参照して、本発明の実施の形態2における被覆平角電線100について説明する。本実施の形態における被覆平角電線100は、図3に示すように、実施の形態1の平角電線用被覆材と10と、この平角電線用被覆材10により被覆された平角電線110とを備えている。
【0075】
平角電線110が平角電線用被覆材10に被覆される態様は特に限定されず、螺旋状に巻回されてもよく、平角電線用被覆材10の長さ方向に平角電線110を添わせるように(タテ添えされるように)巻回されてもよい。本実施の形態における平角電線110は、図3〜図5に示すように、平角電線用被覆材10に螺旋状に巻回されるように被覆されている。
【0076】
ここで、平角電線110が平角電線用被覆材10に螺旋状に巻回された場合の好ましい態様について、図3〜図7を参照して説明する。
【0077】
図4に示すように、平角電線110の延在方向と平角電線用被覆材10の巻回する方向とのなす角度θ(巻き角度θまたは巻き回し角度θとも言う)は、60°未満であることが好ましく、20°以下であることがより好ましい。角度θが小さいほど、1本の平角電線用被覆材10で巻くことができる平角電線110の長さが長くなる。
【0078】
また、図3〜図5に示すように、平角電線用被覆材10の一部を重ね合うハーフラップで螺旋状に巻回されている。図5及び図6に示すように、ラップ部120が形成されていない領域における平角電線110は、平角電線用被覆材10に一重で被覆され、図5及び図7に示すようにラップ部120が形成された領域における平角電線110は、平角電線用被覆材10に二重で被覆されている。このため、ラップ部120を設けることにより、平角電線110の絶縁性を高めることができる。
【0079】
図5に示すように、ラップ部120の幅W120(重なり幅または沿面距離とも言う)は、平角電線用被覆材10の幅W10の40%未満であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。ラップ部120の幅W120が大きいほど、電流が抜けにくいため、放電を抑制でき、絶縁破壊電圧を向上できる。しかし、本実施の形態では、ラップ部120において、基材11の裏面11b上に粘弾性体層12が密着しているので、ラップ部120の幅W120が小さくても、電流が抜けにくくなる。このように、ラップ部120の幅W120を小さくできると、1本の平角電線用被覆材10で巻くことができる平角電線110の長さを長くできる。
【0080】
次に、平角電線110について説明する。
平角電線110は、テープ状の線材であり、各頂点は角張っていてもよく、湾曲していても(Rが設けられていても)よい。
【0081】
平角電線110は、特に限定されず、従来周知の物を使用でき、その素材としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、またはそれらの2種以上の金属の組み合わせからなる線材を用いることができる。また、平角電線110として、ビスマス系、イットリウム系、ニオブ系などの各種超伝導材料からなる平角電線を用いることもできる。
【0082】
平角電線110の具体的寸法の一例を示すと、厚みは例えば1mm以上10mm以下であり、幅は例えば1mm以上20mm以下であり、アスペクト比(断面形状における幅/厚みの比)は例えば1以上60以下程度である。
【0083】
続いて、本実施の形態における被覆平角電線100の製造方法について説明する。
【0084】
まず、実施の形態1にしたがって平角電線用被覆材10を製造する。
【0085】
次に、平角電線110を準備して、図3〜図7に示すように、平角電線用被覆材10の一部が重なり合うハーフラップで螺旋状に巻回する。具体的には、平角電線110に粘弾性体層12の一部が接触するように、かつ平角電線用被覆材10の基材11の裏面11bの一部上に粘弾性体層12の残部が接触するように、平角電線用被覆材10を配置する。
【0086】
この工程では、平角電線110の延在方向と平角電線用被覆材10の巻回する方向とのなす角度θが好ましくは60°未満、より好ましくは20°以下になるように平角電線110を平角電線用被覆材10で被覆する。また、ラップ部120の幅W120が平角電線用被覆材10の幅W10の好ましくは40%未満、より好ましくは30%以下になるように平角電線110を平角電線用被覆材10で被覆する。
【0087】
なお、平角電線用被覆材10が剥離ライナーを備えている場合には、平角電線110に巻回する際に、剥離ライナーと粘弾性体層12の表面12aとを剥離しながら、平角電線110を巻回する。
【0088】
上記工程を実施することにより、図3〜図7に示す本実施の形態の被覆平角電線100を製造することができる。
【0089】
以上説明したように、本実施の形態における被覆平角電線100は、実施の形態1の平角電線用被覆材10と、この平角電線用被覆材10に被覆された平角電線110とを備えている。
【0090】
本実施の形態における被覆平角電線100によれば、基材11の裏面11b(自背面)に対する粘弾性体層12の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下である平角電線用被覆材10を備えているので、巻き角度θを小さく、かつラップ部120の幅W120を小さくしても、ラップ部120において基材11の裏面11bに対して粘弾性体層12が強固に接着されているため、ラップ部120に隙間や気泡が形成されることを抑制できる。したがって、巻き角度θを小さくする及び/または重なり幅を小さくしても、特性の低下が抑制され、かつ長尺にされた被覆平角電線100を実現することができる。
【0091】
(実施の形態3)
図8を参照して、本発明の実施の形態3における電気機器の一例であるコイル200を説明する。図8に示すように、本実施の形態のコイル200は、巻枠210と、この巻枠210に巻きつけられた実施の形態2の被覆平角電線100とを備えている。
【0092】
巻枠210は、被覆平角電線100を巻装できれば特に限定されないが、例えば円筒型、レーストラック型等である。被覆平角電線100は、1本であってもよく、必要な長さに応じて、複数本が接続されていてもよい。コイルは、複数のコイル200が積層されていてもよい。
【0093】
実施の形態3におけるコイル200の製造方法は、巻枠210を準備する工程と、この巻枠210に被覆平角電線100を巻きつける工程とを備えている。
【0094】
ここで、本実施の形態では、電気機器の一例としてコイル200を例に挙げて説明したが、電気機器はコイル200に限定されない。電気機器は、例えば絶縁コイル、超伝導コイル、超伝導マグネット、超伝導ケーブル、電力貯蔵装置などである。
【0095】
以上説明したように、本実施の形態の電気機器の一例であるコイル200は、実施の形態2の被覆平角電線100を用いて作製されている。
【0096】
本発明の電機機器の一例であるコイル200によれば、1本の平角電線用被覆材10で、高い特性を維持して被覆できる平角電線の長さを長尺にできる平角電線用被覆材10を備えた被覆平角電線100を用いて作製されている。このため、コイル200において、被覆平角電線100の接続箇所を低減できる。一般的に、被覆平角電線100の接続箇所では、強度、絶縁性、抵抗等が他の箇所よりも劣るので、接続箇所を低減できると、接続箇所に起因した電気機器の特性の低下を低減できる。
また、平角電線用被覆材10と平角電線110との間に気泡や隙間が低減されているので、コイル200は高い絶縁破壊電圧を有するため、被覆平角電線100を用いたコイル200においては、印加する電圧を大きくした設計が可能であり、その出力を向上できる。
したがって、特性の低下が抑制された電気機器を実現できる。
【実施例1】
【0097】
本実施例では、剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、自背面に対する粘弾性体層の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下であることの効果について調べた。
【0098】
(本発明例1)
本発明例1では、実施の形態1にしたがって平角電線用被覆材10を製造した。具体的には、シリコーン系粘弾性体として「KR−3700」(シリコーンレジン、固形分60%、信越化学工業社製)100重量部と、白金触媒として「PL−50T」(信越化学工業社製)0.5重量部と、溶剤としてトルエン315重量部とを配合し、ディスパーで攪拌して、シリコーン系粘弾性体組成物を作製した。ポリイミド樹脂からなる基材11として「カプトン40EN」(厚み10.0μm、引張弾性率5.80GPa、東レ・デュポン社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが3.0μmとなるように塗布し、乾燥温度150℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥して、基材11上にゲル分率が74%の粘弾性体層12を形成した平角電線用被覆材10を作製した。これを巻芯20(内径76mm)に巻き取り、図1に示すロール状の巻回体を得た。
【0099】
(本発明例2)
本発明例2は、基本的には本発明例1と同様であったが、粘弾性体層12及び基材11において異なっていた。具体的には、シリコーン系粘弾性体として「X−40−3229」(シリコーンガム、固形分60%、信越化学工業社製)70重量部及び「KR−3700」(シリコーンレジン、固形分60%、信越化学工業社製)30重量部と、白金触媒として「PL−50T」(信越化学工業社製)0.5重量部と、溶剤としてトルエン315重量部とを配合し、ディスパーで攪拌してシリコーン系粘弾性体組成物を作製した。ポリイミド樹脂からなる基材11として、「カプトン50H」(厚み12.5μm、引張弾性率3.50GPa、東レ・デュポン社製)を用いた。
【0100】
(本発明例3)
基材11としてポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーS10」(厚み12.0μm、引張弾性率4GPa、東レ株式会社製)を用いた以外は本発明例1と同様にして、平角電線用被覆材10を製造した。
【0101】
(本発明例4)
アクリル酸n−ブチル:アクリル酸=100:5(重量比)の配合物100部に対して、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを0.2部添加し、トルエン中で重合して、重量平均分子量50万[ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算分子量]のアクリル系重合体(共重合体)を含む溶液(共重合溶液)を得た。この共重合溶液に、共重合体の固形分100部に対して、ポリイソシアネート系化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業(株)製)4部を添加し、充分混合して粘弾性体組成物を作製した。ポリエチレンテレフタレートからなる基材11として「ルミラーS10」(厚み25.0μm、引張弾性率4GPa、東レ株式会社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが15.0μmとなるよう塗布し、乾燥温度120℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥して、ポリエチレンテレフタレート基材上にゲル分率が45%のアクリル系粘弾性体層を形成した平角電線用被覆材10を製造した。これを巻芯20(内径76mm)に巻き取り、ロール状の巻回体を得た。
【0102】
(比較例1)
比較例1の平角電線用被覆材は、基本的には本発明例1と同様であったが、基材11として「カプトン50H」(厚み12.5μm、東レ・デュポン社製)を用い、粘弾性体層を設けなかった点において異なっていた。
【0103】
(比較例2)
シリコーン系粘弾性体として「X−40−3229」(シリコーンガム、固形分60%、信越化学工業社製)100重量部と、白金触媒として「PL−50T」(信越化学工業社製)0.5重量部と、溶剤としてトルエン315重量部とを配合し、ディスパーで攪拌してシリコーン系粘弾性体組成物を作製した以外は本発明例2と同様にして、平角電線用被覆材10を製造した。
【0104】
(比較例3)
アクリル酸n−ブチル:アクリル酸=100:5(重量比)の配合物100部に対して、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを0.2部添加し、トルエン中で重合して、重量平均分子量50万[ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算分子量]のアクリル系重合体(共重合体)を含む溶液(共重合溶液)を得た。この共重合溶液に、共重合体の固形分100部に対して、粘着付与剤としてフェノール系樹脂20部、キシレン系樹脂30部、ポリイソシアネート系化合物(商品名「コロネートL」 日本ポリウレタン工業(株)製)2部を添加し、充分混合して粘弾性体組成物を作製した。ポリエチレンテレフタレートからなる基材「ルミラーS10」(厚み12.0μm、引張弾性率4GPa、東レ株式会社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが30.0μmとなるよう塗布し、乾燥温度120℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥して、ポリエチレンテレフタレートからなる基材上にゲル分率が35%のアクリル系粘弾性体層を形成した平角電線用被覆材を作製した。これを巻芯(内径76mm)に巻き取り、ロール状の巻回体を得た。
【0105】
(評価方法)
本発明例1〜4及び比較例1〜3について、粘弾性体層の自背面に対する接着力(自背面接着力)、SUS304鋼板に対する粘弾性体層の接着力(接着力)、部分放電開始電圧をそれぞれ測定すると共に、浮きについて評価した。これらの結果を表1に示した。
【0106】
(自背面に対する接着力の測定)
本発明例1〜4及び比較例2において作製した平角電線用被覆材10を幅20mm、長さ150mmに切断して、粘弾性体層をステンレス板に貼り付けた。その平角電線用被覆材の背面(基材11の裏面11b)に同種の平角電線用被覆材(幅20mm、長さ150mm)の粘弾性体層を23℃、50%RH雰囲気下、2kgローラー1往復により貼り付けた。23℃で30分間養生した後、ミネベア株式会社製万能引張試験機『TCM−1kNB』を用い、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分で剥離試験を行い、自背面に対する接着力を測定した。これを自背面接着力とし、下記の表1に記載する。
【0107】
(SUS304鋼板に対する接着力の測定)
本発明例1〜4及び比較例2において作製した平角電線用被覆材10を幅20mm、長さ150mmに切断し評価用サンプルとした。23℃、50%RH雰囲気下、評価用サンプルの粘弾性体層を、SUS304鋼板に2kgローラー1往復により貼り付けた。23℃で30分間養生した後、ミネベア株式会社製万能引張試験機『TCM−1kNB』を用い、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分で剥離試験を行い、SUS304鋼板に対する接着力を測定した。これを接着力とし、下記の表1に記載する。
【0108】
(浮き評価)
本発明例1〜4及び比較例1、2で作成した平角電線用被覆材について、幅5mmの試験片とし、平角電線として「Di−BSCCO」(線材:ビスマス系超伝導線、厚み0.23mm×幅4.3mm、住友電気工業社製)に対し、巻き回し角度(図4における角度θ)を20度、平角電線用被覆材同士の重なり(図5におけるラップ部120の幅W120)を約1.5mm(平角電線の幅W10に対して30%)で螺旋状に被覆した長さ10cmの評価サンプルを作製した。評価サンプルを目視観察することで、平角電線用被覆材の浮きの有無を確認した。なお、浮きとは、平角電線用被覆材と平角電線との間に隙間または気泡が形成されている状態とした。その結果を下記の表1に示す。表1において、浮きが見られなかった場合を「○」、浮きが見られた場合を「×」とした。
【0109】
(部分放電開始電圧の測定)
浮き評価サンプルを部分放電開始電圧測定の評価サンプルとし、図9に示す測定装置300により、液体窒素中での部分放電開始電圧を測定した。
具体的には、図9において、容器331内に、電極332及び支柱333で挟持する形で評価サンプル150を配置した。上部の電極332に部分放電測定器334を接続し、評価サンプル150の平角電線にアース335を接続した。その後、液体窒素336を、少なくとも評価サンプル150が浸漬するよう加え、温度が安定した状態(約15分後)で、部分放電開始電圧の測定を開始した。
なお、電極332のサイズは25mmφ、R2.5mm、接触面積20mmφであり、昇圧速度200Vrms/秒で昇圧した際に、放電電荷量が100pC以上の放電が50PPS(単位時間当たりの放電電荷の発生数)以上確認された時の印加電圧を部分放電開始電圧とした。その結果を下記の表1に記載する。
表1において、部分放電開始電圧が280Vrms以上である場合を「○」、280Vrms未満である場合を「×」とした。
【0110】
(絶縁破壊電圧の測定)
浮き評価サンプルを絶縁破壊電圧測定の評価サンプルとし、図10に示す測定装置400により、液体窒素中での絶縁破壊電圧をJIS C 2110に準拠して測定した。
具体的には、図10において、容器431内に、電極432、433で挟持する形で評価サンプル150を配置した。上部の電極432に耐電圧試験装置434を接続し、下部の電極433にアース435を接続した。その後、液体窒素を、少なくとも評価サンプル150が浸漬するよう加え、温度が安定した状態(約15分後)で、絶縁破壊電圧の測定を開始した。
なお、電極432、433のサイズは25mmφ、R2.5mm、接触面積20mmφであり、昇圧速度AC250Vrms/秒で昇圧した際に、評価サンプル150が絶縁破壊を起こした時(漏れ電流による閾値:50mA)の電圧値を、絶縁破壊電圧とした。
【0111】
(評価結果)
【表1】

【0112】
表1に示すように、剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、自背面に対する粘弾性体層12の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下である本発明例1〜4は、浮きが見られず、部分放電開始電圧が580Vrms以上で、かつ絶縁破壊電圧が3.6kV以上であり、高い特性を維持できた。
【0113】
一方、粘弾性体層を備えていなかった比較例1は、粘着感が全くないため、評価サンプルを作製できず、自背面に対する接着力及びSUS304鋼板に対する接着力が測定不可であった。このため、比較例1の部分放電開始電圧及び絶縁破壊電圧が低く、特性が低かった。
【0114】
剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、基材11の裏面11bに対する粘弾性体層12の接着力が、0.05N/20mm未満の比較例2は、自背面に対する接着力が低かったため、浮きが見られ、部分放電開始電圧及び絶縁破壊電圧が低く、特性が低かった。
【0115】
剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、基材11の裏面11bに対する粘弾性体層12の接着力が、10N/20mmを超えた比較例3は、自背面に対する粘着力が大きすぎたため、ロール状巻回体から平角電線に被覆する際に、繰り出し力が大きく、また速度が安定しないため被覆平角電線の評価サンプルを作製することができなかった。
【0116】
以上より、本実施例によれば、平角電線用被覆材において、剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、自背面に対する粘弾性体層の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下であることにより、平角電線を被覆したときに特性の低下を抑制できることが確認できた。
また、被覆平角電線において、自背面に対する粘弾性体層の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下である粘弾性体層を含む平角電線用被覆材に平角電線が被覆されることにより、特性の低下が抑制されることが確認できた。
【実施例2】
【0117】
本実施例では、剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、自背面に対する粘弾性体層の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下であることの効果をさらに調べた。
【0118】
本実施例では、実施例1の本発明例1〜4、比較例1、2の平角電線用被覆材を製造した。本発明例1〜4及び比較例1、2で製造した平角電線用被覆材について、幅5mmの試験片とし、平角電線として「Di−BSCCO」(線材:ビスマス系超伝導線、厚み0.23mm×幅4.3mm、住友電気工業社製)に対し、巻き回し角度(図4における角度θ)を60度、被覆材同士の重なり(図4におけるラップ部120の幅)を約2.0mm(試験片幅に対して40%)で螺旋状に被覆した長さ10cmの評価サンプルを作製し、実施例1と同様に、浮きを観察すると共に、部分放電開始電圧及び絶縁破壊電圧を測定した。これらの結果を下記の表2に記載する。
【0119】
(評価結果)
【表2】

【0120】
表2に示すように、巻き角度を大きく、かつ重なり幅を大きくした実施例2では、実施例1に比べて浮きを低減できた。このため、巻き角度を大きく、かつ重なり幅を大きくすれば、粘弾性体層の自背面に対する接着力が小さくても、特性を向上できた。しかし、巻き角度を大きく、かつ重なり幅を大きくすると、1本の平角電線用被覆材で被覆できる平角電線の長さが短くなった。実施例1の結果と実施例2の結果とを併せて考えると、剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、自背面に対する粘弾性体層の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下であることにより、巻き角度及び重なり幅を小さくしても、高い特性を維持できることがわかった。
【0121】
以上より、本実施例によれば、剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、自背面に対する粘弾性体層の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下であることにより、平角電線を被覆したときに特性の低下を抑制できると共に、長尺化を可能にする平角電線用被覆材を実現できることが確認できた。
【0122】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0123】
10 平角電線用被覆材、11 基材、11a,12a 表面、11b 裏面、12 粘弾性体層、20 巻芯、100 被覆平角電線、110 平角電線、120 ラップ部、150 評価サンプル、200 コイル、210 巻枠、300,400 測定装置、331,431 容器、332,432,433 電極、333 支柱、334 部分放電測定器、335,435 アース、336 液体窒素、434 耐電圧試験装置、W10,W120 幅、θ 角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角電線を被覆するための被覆材であって、
表面と、前記表面と反対側の裏面とを有する基材と、
前記基材の前記表面上に形成された粘弾性体層とを備え、
剥離角度が180°で、かつ引っ張り速度が300mm/分で剥離したときの、前記基材の前記裏面に対する前記粘弾性体層の接着力が、0.05N/20mm以上10N/20mm以下である、平角電線用被覆材。
【請求項2】
前記粘弾性体層は、シリコーン系粘弾性体組成物を含む、請求項1に記載の平角電線用被覆材。
【請求項3】
前記基材は、5.0μm以上25.0μm以下の厚みを有する、請求項1または2に記載の平角電線用被覆材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の平角電線用被覆材と、
前記平角電線用被覆材で被覆された平角電線とを備えた、被覆平角電線。
【請求項5】
前記平角電線は、超伝導線である、請求項4に記載の被覆平角電線。
【請求項6】
請求項4または5に記載の被覆平角電線を用いて作製された、電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−20726(P2013−20726A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151056(P2011−151056)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】