説明

平面センサー

イオン選択性層8を含む電極5、電解質層9、及び外側層10を含むCO感受性平面検出デバイスが開示されている。電解質層9は、浸透圧活性化学種を、電解質層エリア1m当たり0.8〜6.0ミリオスモルの量にて含み、そして電解質層9に重炭酸塩イオンや塩化物イオンをもたらさない親水性オスモル濃度増大化成分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された平面COセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
平面センサーは、患者の血液サンプルの成分を測定するために臨床環境において使用される新世代のセンサーを代表している。平面センサーの概念を用いると、従来の構造物と比較して、より小さくてより単純なセンサー構造物を得ることができる。使用回数が多数にのぼる場合(新生児からの血液サンプルの分析のように)、少ない体積量のサンプルが有利である。
【0003】
1つの特に興味あるタイプのセンサーは、COを測定するのに使用されるいわゆるセバリングハウス型センサーである。セバリングハウス型センサーの場合、血液サンプルからのCOが外側膜を横切って電解質層中に拡散するということで、血液サンプルのpCO(COの分圧)が測定され、そして次に電解質層のpHが測定される。セバリングハウス型センサーは、2つの電極、すなわちpH選択性電極と内部参照電極を含む。重炭酸塩電解質層のpHは、一方の側が電解質層と接触していて、他方の側がpH電極の接触材料と接触しているプロトン選択性層を横切る電気化学的応答(electrochemical correspondence)から測定される。そして次に、既定の相関関係に従ってpH値がpCO値に変換される。電解質層は、内部参照電極も覆っている。従って、ナトリウムセンサーやカリウムセンサー等の殆どのイオン選択性センサーが、外部参照電極と組み合わせて操作されるのに対して、セバリングハウス型センサーでは、上記外側膜の高い電気化学的インピーダンスに打ち勝つために内部参照電極が導入される。
【0004】
セバリングハウス型センサーの場合はさらに、外側膜は、COの透過を可能にするが、イオン性化学種が電解質コンパートメントに流入するのを防がなければならない。特に、プロトンが外側膜を透過すると、COのみによる電解質pHの制御がもはや不可能になるので、COセンサーの機能が低下する。したがって、一般的な外側膜は通常、イオンの移送を起こさせない材料から作製される。
【0005】
血液サンプルと電解質層の一般的な溶媒は水であるので、血液サンプルと接触させると常に、外側膜の両端に浸透圧平衡が確立される。膜の両側に対する浸透圧活性化学種の濃度に依存して水が膜を横切って移行し、その結果、それぞれ電解質層の膨潤と収縮が起こる。
【0006】
オスモル濃度(すなわち、浸透圧活性化学種の濃度)は、オスモラー(Osmolar)(OsM)の装置にて測定される。従って、NaClのような一価:一価塩という最も単純な場合では、ナトリウムイオンと塩化物イオンのそれぞれがオスモル濃度に対して同等に寄与し、NaClのXM溶液に対してはオスモル濃度は2XOsMである。同様に、NaSOのような一価:二価塩の場合は、ナトリウムイオンと硫酸イオンが2:1の比にてオスモル濃度に寄与し、NaSOのYM溶液に対するオスモル濃度は3YOsMである。
【0007】
血液サンプル中の浸透圧活性化学種の濃度は、通常320mOsMの範囲であり、オスモル濃度に対する主要な寄与物質は、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムである。従って、電解質層中の浸透圧活性化学種の初期濃度が320mOsM未満という場合においては、電解質の浸透圧濃度が320mOsMに達するまでは、電解質から外への水の正味フラックスが生ずると推測される。同様に、電解質層中の浸透圧活性化学種の初期濃度が320mOsMより高い場合においては、電解質の浸透圧濃度が320mOsMに達するまでは、電解質層中への水の正味フラックスが生ずるようである。しかしながら、どちらの場合も、水の移行が電解質層の体積を変化させ、このことが外側膜に機械的応力をもたらし、そしておそらくは、センサーのデラミネーションや崩壊を引き起こす。さらに、電解質厚さの変化はセンサーの性能に直接影響を及ぼす。従って、膨潤が起こり、それにより層厚さが大きくなりすぎると、センサーの応答時間が遅くなる傾向があるのに反して、脱水が起こって、それにより層厚さが小さくなりすぎると、塩の沈殿と意図せぬ相分離を引き起こし、これによってセンサーの起動時間が実用限界を越えて長くなり、あるいはセンサーが動作不能となることさえある。
【0008】
一般的に過度の乾燥工程と再水和工程を含むプロセスによって製造される平面センサーの場合、これらの問題はより一層重大となる。
【0009】
上記の膨潤もしくは収縮、及びそれに関連した問題を取り除くための直接的なアプローチは、重炭酸塩の濃度を上記の320mOsM付近に(すなわち、160mMの重炭酸塩の範囲に)選定することであろう。しかしながら、重炭酸塩の濃度がこのように高いと、センサーの感度が低下しやすい。
【0010】
これに代わって、先行技術のセバリングハウス型センサーの場合には、電解質層組成物に対して2つの代替アプローチが適用されている。
【0011】
1つのアプローチによれば、かなり高濃度の浸透圧活性化学種が電解質層に使用される。
【0012】
このように米国特許第6,805,781号明細書は、電解質層が、グリセロールを50重量%含んでいて、KClの濃度が20mMでNaHCOの濃度が10mMの水溶液である、という平面状セバリングハウス型センサーを開示している。電解質層は、シリコーンの外側膜によって覆われている。
【0013】
しかしながら、このような高濃度の浸透圧活性化学種を使用した場合(この場合は、4〜5OsMの範囲)、電解質層中への水のかなりの移行を予測することができる。このような水の移行は、電解質層のかなりの膨潤を引き起こし、そして次にセンサーのデラミネーションを引き起こす(たとえセンサーとともにフレキシブルなシリコーン外側膜が使用されたとしても)。さらに、湿潤電解質層の厚さがより大きくなるために、このようなセンサーの応答時間は長くなりやすい。
【0014】
もう1つのアプローチによれば、かなり低濃度の浸透圧活性化学種が電解質層に使用される。
【0015】
すなわち、米国特許第4,818,361号明細書は、分子量115,000のポリビニルアルコールを4%含んでいて、重炭酸ナトリウムの濃度が0.005Mで塩化ナトリウムの濃度が0.0005Mである水性電解質層を有する平面状セバリングハウス型センサーを開示している。ポリビニルアルコールは、水和の程度を調節するために、そして再水和したときに層の厚さを安定化させるために使用される。このセンサーには、ポリ塩化ビニル系の外側膜が用いられる。しかしながら、このような低い初期濃度の浸透圧活性化学種を使用した場合(この場合は、10mOsMの範囲)、電解質層のかなりの脱水を予測することができる。
【0016】
同様に、米国特許第6,022,463号明細書は、pH感受性PVC系の外側膜をベースとする平面COセンサーを開示している。こうした代替構造物を使用した場合でも、外側膜を横切る水の浸透圧移送という問題が関連してくる。このセンサーの電解質層は、0.02M重炭酸ナトリウム水溶液である。したがって、先行技術の上記ピースの場合のように、このような初期濃度の浸透圧活性化学種を40mOsMの範囲で使用すると、電解質層のかなりの脱水が観察される可能性がある。
【0017】
さらに米国特許第5,554,272号明細書では、ポリ塩化ビニル/アルコール系の電解質層を有する平面COセンサーを開示している。この層は、160mOsMの範囲(すなわち、平衡状態における320mOsMより低い)の全濃度の浸透圧活性化学種を乾燥状態で含む。
【0018】
低濃度の浸透圧活性化学種を含むこれら電解質構造物の全てについて、このようなセンサーを、同等のオスモル濃度の血液サンプルもしくは溶液に曝露すると、浸透圧不均衡が観察される可能性がある。したがって塩の沈殿と相分離が起こり、このためセンサー性能の低下を引き起こす可能性がある。
【0019】
理解しておかねばならないことは、セバリングハウス型センサーの場合、塩化物イオンが、重炭酸塩とともに電解質中に存在するのが好ましい(なぜなら、これらイオンの両方が、センサー信号を発生する電気化学的プロセスに関与するからである)という点である。したがって、銀/塩化銀(Ag/AgCl)参照電極の場合、不適切な塩化物濃度も同様に不安定性を引き起こす。
【0020】
セバリングハウス型のCO検出デバイスについて説明してきたけれども、浸透圧プロセスに関する本発明における考慮事項は、イオン性化学種の移送を阻止するガス透過性膜で覆われた電解質層を含む全てのセンサー構造物に対して当てはまる。したがって、このようなセンサー構造物の他の例はアンモニアセンサーであり、このセンサーでは、アンモニア感受性電解質とアンモニウム選択性もしくはpH選択性電極によってアンモニアの濃度が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第6,805,781号明細書
【特許文献2】米国特許第4,818,361号明細書
【特許文献3】米国特許第6,022,463号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって上記の説明を考慮すると、外側膜を横切る水のフラックスに関する問題を軽減させた新規平面状検出デバイスが求められている。
【0023】
さらに、センサーが、必要とされる応答時間に適した制御された電解質次元境界(controlled electrolyte dimensional boundaries)を示すことが求められている。したがってCO感受性のセバリングハウス型センサーの場合、そして臨床血液分析用の他のセンサーの場合も、応答時間は10秒を超えてはならない。
【0024】
実際、外側膜の変形に対する改良された制御を達成することが可能であり、これにより検出デバイスのデラミネーションもしくは動作不良というリスクを低下させ又は解消することが可能である、ということを本発明者らは見出した。
【0025】
これは、センサーの電解質層中に組み込まれる浸透圧活性化学種の総量を正確に制御することによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
したがって、本発明は、イオン選択性層を有する電極、電解質層、及び外側層を含み、ここで層が、該イオン選択性層と該外側層との間に配置されていて、浸透圧活性化学種を電解質層1m当たり0.8〜6.0ミリオスモルの量で含み、該電解質層が、該電解質層に重炭酸塩イオンまたは塩化物イオンを補給しない親水性のオスモル濃度増大化成分を含むことを特徴とする平面CO検出デバイスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施態様に従った、平面状で小型のCO選択性セバリングハウス型センサーの側断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書の文脈では、「センサー」と「センサーデバイス」という用語(これらは同義語として使用されている)は、特定の化学種(この場合はCO)との接触に応じて該化学種と選択的に相互作用し、これにより明確で且つ測定可能な応答(例えば電気信号)を生ずるデバイスを意味するように意図されている。関連したタイプのセンサーは、例えば電位差滴定センサーと電流測定センサーである。
【0029】
「検出デバイス」という用語と結びついた形の「平面の」(“planar”)という表現は、検出デバイスが、実質的にフラットな支持体(一般には誘電性である)上に小型の構成に形成されている、という事実を表わしている。したがって、ほとんどの関連した実施態様においては、実質的にフラットな支持体上に直接材料を逐次的に施す(例えば、厚膜法及び/又は薄膜法を使用する)ことによって種々の層が形成される。
【0030】
したがって平面センサーは、適切な材料の薄いシート(例えば、プラスチック箔、セラミックプレートのスラブ、又はシリコンウエハー)のフラットな表面上に作製される。これらの平面体(planar entities)は、一般には棒状に作製される検出デバイスの従来の実施態様に対する機能的等価物である。しかしながら、当業者によく知られているように、このような平面検出デバイスは、製造、操作、及び耐久性等に関して、全く新しい範囲の問題を引き起こす。
【0031】
したがって平面センサーの層は、取り外すことができないか、あるいは置き換えることのできない平面状の一体構造となるように配置される。これに対して、従来のセンサーの場合は、外側層もしくは外側膜は別個の物体であって、一般にはセンサーの残部上に(すなわち、棒状の電極上に)「クリックされ」(“clicked”)、この物体に対し他の層もしくは膜を置き換えることができる。
【0032】
従来のセンサーの場合は、必要以上の電解質リザーバーが、外側層もしくは外側膜と電極との間のヘッドスペース内に配置される。こうしたリザーバーにより(構造物が一体化していないという事実とあいまって)、従来のセンサーは浸透圧不均衡に対してかなり堅牢となる。他方、平面センサーの場合は、一体構造であることと電解質体積がより小さいということにより、このシステムは浸透圧不均衡に対して比較的感受性がより高くなる。
【0033】
本明細書の文脈では、「電極」とは、イオン選択性層と接触材料の電気化学系を表わしている。電極は、一方における電解質と、他方における適切な外側電気回路もしくはメーターとの間に電気化学的応答をもたらすように適合される。
【0034】
「電気化学的応答をもたらす」という表現は、一方における電解質のイオン性化学種と、他方における接触材料の電子導電性化学種と、外側電気回路もしくはメーターとの間に電気接点が確立される、ということを意味する。
【0035】
「電極」に言及しているときは、「少なくとも1つの電極」を意味するように意図されている。本発明による検出デバイスは、1つだけの電極を含んでよいが、一般には2つの電極を含み、1つが作用電極であって、もう1つが参照電極である。特に、セバリングハウス型検出デバイスは2つの電極を含む。
【0036】
前述のとおり、電極は、混合導体である「接触材料」を含む。作用電極用のこうした混合導体の特定の例は、米国特許第6,805,781号明細書に開示のナトリウム−バナジウム−青銅である。混合導体は、イオン導電性のほかに電子導電性も示す。混合導体がイオン選択性層と整合し、そのインターフェース上に関連した電位差が確立される。接触材料はさらに、前述したような外側電気回路に対する電気接触をもたらす。
【0037】
理解しておかねばならないことは、作用電極用の接触材料として上記したナトリウム−バナジウム−青銅は、従来の検出デバイスに一般的に利用されている内部電解質におけるAg/AgCl参照バンド(reference band)の組み合わせシステムに代わって平面検出デバイスの構成要素となっている、という点である。このような「内部電解質」は、後述の「電解質層」と区別しなければならない。
【0038】
電極はさらに「イオン選択性層」を含む。イオン選択性層は、電解質層に対向していて電解質層に対する拡散障壁を構成し、1種以上の当該イオンに選択的に応答する。したがってイオン選択性層は、電解質層と接触材料との間に配置される。
【0039】
本発明の他の実施態様によれば、イオン選択性層は、それ自体がイオン選択性である接触材料から造り上げることができる。したがって、1つの興味深い実施態様においては、接触材料がTa表面またはPtの酸化層を有する。
【0040】
説明をわかりやすくするため、そして通常セバリングハウス型センサーの場合、pH電極のイオン選択性層は、ポリマーマトリックスにおけるH選択性イオノフォアから構成される。
【0041】
本発明によれば、「電解質層」とは、サンプルの適切なガス(この場合はCO)を受け入れるためのバッファー・ゾーンとして作用する層(好ましくは水性層)を意味する。電解質層は、外側層と電極との間に配置される。電解質層は、ガスを吸収することができて、ガス信号を電極によって読み取り可能な信号に変換する(通常は、ガス信号を電解質層のpH変化に変換させることによって)ことができる重炭酸塩緩衝剤または他の緩衝剤化合物を含んでよい。電解質層はさらに、内部参照電極と電気化学的に相互作用し、そして次に電極と内部参照電極との間の電気化学的応答を可能にする化合物を含んでよい。
【0042】
さらに本発明の文脈では、「外側層」とは、電解質層を覆い、且つサンプルに対向している層もしくは膜を意味し、サンプルと電解質層との間のガスの制御された交換を可能にする。しかしながら、外側層は、イオン性化学種が電解質コンパートメントに流入するのを阻止しなければならない。特に外側層を通してプロトンが透過すると、電解質層のpH変化がコントロール不良となるために、センサーの機能が低下するからである。したがって、一般的な外側膜は通常、イオン輸送を許容しない材料から造られる。さらに、検出デバイスの外側層は、標準的なヒト血液サンプルに対して電解質を平衡化させると起こる寸法変化を吸収することが好ましい。このため、外側層は、良好な弾性特性を有していなければならない。
【0043】
通常、外側層に対しては、ポリエチレン、軟質化PVC、ポリウレタン、シリコーン、又はフルオロポリマー〔ポリ(テトラフルオロエチレン)など〕等の疎水性材料が使用される。
【0044】
セバリングハウス型センサーの場合は、外側層が、サンプルと電解質層との間のCO交換を制御する。
【0045】
本発明の平面検出デバイスの場合、外側層は、液体状態でデポジットされたポリマーから作製するのが好ましい。この目的のために、シリコーンとポリウレタンが最も適している。なぜならこれらのポリマーは、未硬化の液体状態で供給することができるからである。したがって好ましい実施態様では、外側層がシリコーン材料を含む。他の好ましい実施態様では、外側層がポリウレタン(例えば、カルボキシル化ポリ(塩化ビニル)と混合した状態のポリウレタン)を含む。
【0046】
外側層は、水を輸送する能力に関して適切な特性を示さなければならない。セバリングハウス型センサーの場合、水に対する外側層の拡散定数は1×10−11〜1×10−8/秒の範囲(特に1×10−10〜5×10−9/秒の範囲)である。
【0047】
オスモル濃度に関して、「電解質層エリア1m当たりのミリオスモル」という表現は、ある特定数の化学種が、電解質層エリアの1mを構成する電解質層体積で存在する、という意味に理解しなければならない。したがって平面センサー構造物の場合、「電解質層エリア1m当たりのミリオスモル」という表現は、特定の厚さ(一般にはμmの範囲)を有する1m×1mの電解質層の標準エリア「シート」に含まれる浸透圧活性化学種の数を明確に示す。言うまでもないことであるが、体積を減少もしくは増加させても、したがって層厚さを減少もしくは増加させても(すなわち、濃縮あるいは希釈によって)、電解質層エリア1m当たり存在する化学種の数は変わらない。同様に、円筒状のガラスビーカー中に存在するスラリーは、希釈すると、側面から見たときに、より半透明のように見えるが、希釈しても(あるいは濃縮しても)、上から見たときの半透明性は変わらない。
【0048】
電解質層エリア1m当たりのオスモル濃度を特定の範囲内に保つことによって、300〜350mOsMの範囲(特に約320mOsM)のオスモル濃度を有する血液サンプルもしくはそれに対応したサンプル(例えば、洗浄液や清浄液)と接触させたときの電解質層が適切な層厚さを得る、ということが達成される。このような厚さであると、外側層に不必要な歪みがかからないとともに、他方では、センサーが当該目的のために適切な応答時間と起動時間をもたらす。
【0049】
したがって本発明の実施態様によれば、電解質層は、浸透圧活性化学種を、電解質層1m当たり0.8〜6.0ミリオスモルに相当する量で含み、そして電解質層に重炭酸塩イオンや塩化物イオンをもたらさない親水性のオスモル濃度増大化成分を含む。
【0050】
本明細書の文脈では、「ある親水性のオスモル濃度増大化成分」という用語は、水に対して溶解性であって、従って浸透圧活性であり、そして電解質層により多くの重炭酸塩イオン(HCO)や塩化物イオン(Cl)をもたらさないあらゆる化学物質を意味するよう意図されている。したがって、セバリングハウス型センサーの場合、親水性のオスモル濃度増大化成分は、KNOやLiNO等の塩;または糖類、グリコール、もしくはアルコール等の任意の中性物質;であってよい。親水性のオスモル濃度増大化成分は、pH電極の機能に影響を及ぼさないような成分から選択するのが好ましい。
【0051】
「ある親水性のオスモル濃度増大化成分」に言及しているときは、「1種以上の親水性のオスモル濃度増大成分」を意味するように意図されている。本発明の検出デバイスは、1種のみの親水性オスモル濃度増大化成分を含んでよいが、2種以上の(例えば、異なる分子量の)親水性オスモル濃度増大成分を含んだほうがよい。
【0052】
親水性オスモル濃度増大化成分の導入により、電解質層のオスモル濃度の制御が改良されるとともに、作用電極と内部参照電極の動作に対して最適である程度以上に、さらなる重炭酸塩イオンや塩化物イオンを導入する必要は全くない。このように、電解質層のオスモル濃度に対する最適の制御が達成される。
【0053】
本発明の好ましい実施態様では、電解質は、親水性オスモル濃度増大化成分を、電解質層エリア1m当たり0.05〜1.2ミリモルの範囲の量で含む。親水性オスモル濃度増大成分のこのようなレベルにより、親水性オスモル濃度増大化成分と、電解質層の他の任意のオスモル濃度寄与成分との最適の組み合わせが得られる。
【0054】
親水性オスモル濃度増大化成分は80〜5,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有するのが好ましく、800〜3,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有するのがさらに好ましい。このような分子量の親水性オスモル濃度増大成分を使用すると、電解質層のオスモル濃度と粘度との最適の組み合わせを得ることができる。この文脈において理解しておかねばならないことは、かなり低い分子量の親水性オスモル濃度増大化成分を導入すると、電解質層は、最適のオスモル濃度において低すぎる粘度を有する可能性があり、また最適の粘度において高すぎるオスモル濃度を有する可能性がある、という点である。同様に、あまりにも高い分子量の親水性オスモル濃度増大化成分を使用すると、電解質層は、最適のオスモル濃度において高すぎる粘度を有する可能性があり、また最適の粘度において低すぎるオスモル濃度を有する可能性がある。特に計量分配プロセス(dispensing process)の場合は、800〜3,000g/モルの分子量範囲の親水性オスモル濃度増大化成分を使用した場合に得られるオスモル濃度と粘度との組み合わせが有用である。
【0055】
したがって本発明の好ましい実施態様では、親水性オスモル濃度増大化成分は、オリゴ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、およびシクロデキストリンからなる群から選択される1種以上の成分を含む。
【0056】
あるいは、親水性オスモル濃度増大化成分は、5,000g/モルより大きい(好ましくは10,000g/モルより大きい)重量平均分子量を有する化合物から選択することもできる。したがって親水性オスモル濃度増大成分は、ポリ(ビニルピロリドン)、メチルセルロース、セルロースもしくは他のセルロース誘導体、寒天、またはこのような分子量の類似物質から選択することができる。このような親水性オスモル濃度増大成分は、粘度調整に対しても同様に使用することができる。
【0057】
本発明の好ましい実施態様では、親水性オスモル濃度増大化成分は、電解質層の全オスモル濃度に対して8%より多く寄与する。
【0058】
親水性オスモル濃度増大化成分は、水に対し25℃にて少なくとも10g/リットルの量にて溶解するのが好ましい。
【0059】
本発明の好ましい実施態様では、電解質層は、重炭酸塩イオンを、電解質層エリア1m当たり0.1〜1.0ミリモルの範囲の量にて含む。このような濃度の電解質層中の重炭酸塩イオンにより、センサーの作用電極の最適動作が可能となる。
【0060】
本発明の他の好ましい実施態様では、電解質は、塩化物イオンを、電解質層エリア1m当たり0.05〜1.0ミリモルの範囲の量で含む。このような濃度の電解質層中の塩化物イオンにより、センサーの参照電極の最適動作が可能となる。
【0061】
電解質の重炭酸塩イオンと塩化物イオンは一般に、それぞれ、ナトリウム及び/又はカリウムの重炭酸塩として、ならびにナトリウム及び/又はカリウムの塩化物塩として供給される。重炭酸塩と塩化物は、それぞれNaHCO及びKClとして供給されるのが好ましい。
【0062】
本発明のさらに他の好ましい実施態様では、電解質は、浸透圧活性化学種を、電解質層エリア1m当たり0.8〜2.5ミリオスモルに相当する量で含む。このようなケースでは、親水性オスモル濃度増大成分は、電解質層中に、電解質層エリア1m当たり0.05〜0.5ミリの範囲の量で存在するのが好ましい。同様に、電解質層は、重炭酸塩イオンを、電解質層エリア1m当たり0.1〜0.5ミリの範囲の量で含むのが好ましく(0.2〜0.4ミリモルの範囲の量で含むのがさらに好ましく)、塩化物イオンを、電解質層エリア1m当たり0.05〜0.5ミリモルの範囲の量で含むのが好ましい(0.1〜0.4ミリモルの範囲の量で含むのがさらに好ましい)。このような電解質により、センサーの最適の感度と応答が可能となる。
【0063】
現時点で最も興味ある実施態様では、電極上に電解質層が、電解質層エリア1m当たり1.0〜2.2ミリオスモル(例えば、1.0〜2.0ミリオスモル、1.2〜2.2ミリオスモル、または1.2〜2.0ミリオスモル)、0.8〜1.8ミリオスモル、または1.4〜2.5ミリオスモルに相当する量で配置される。これらの好ましい範囲のそれぞれに対し、電解質層組成物を、製造プロセス、外側層の機械的特性、及び応答時間について最適化することができる。
【0064】
本発明の好ましい実施態様では、検出デバイスの電解質層は3〜20μmの範囲の厚さを有する。さらに、電解質層の厚さは3〜8μmの範囲であるのが好ましい。
【0065】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、検出デバイスの電解質層は、標準的なヒト血液サンプルと平衡状態にあるときには3〜20μmの範囲の厚さを有する。さらに、標準的なヒト血液サンプルと平衡状態にある電解質層の厚さは3〜8μmの範囲であるのが好ましい。
【0066】
電解質層の厚さが3〜20μmの範囲である場合(特に3〜8μmの範囲内である場合)、検出デバイスが、300〜350mOsM(特に約320mOsM)の範囲のオスモル濃度を有する血液サンプルまたは対応するサンプル(例えば、洗浄溶液もしくは清浄溶液)と接触すると、5〜10秒の範囲の応答時間(目的に対して適している)を達成する、ということが見出された。理解しておかねばならないことは、電解質層がより厚くなると、血液分析における適切な使用に関して応答時間が長くなりすぎる可能性がある、という点である。同様に、電解質層がより薄くなると、検出デバイスは、不安定になって誤動作する可能性がある。
【0067】
電解質層のオスモル濃度を調整するという本発明の考え方は、イオン化学種の移送を阻止するガス透過性膜によって覆われた電解質層を含む全てのセンサーに適用することができる。さらに、上記の電解質−膜構造を示さないセンサーであっても、浸透圧プロセスが関連していることがある。
【0068】
したがって、接触材料構造物を覆うイオン選択性膜から製造されたナトリウムセンサーやカリウムセンサー等のより単純なセンサー構造物の場合、この原理が同様に当てはまる。なぜなら、未調整の水フラックスが、センサーを不安定にするか、又は誤作動さえ引き起こすからである。したがってこのようなセンサーの場合、任意の内部電解質層を含めた電解質層の全てが、本発明の主題であってよい(すなわち、電解質層の全てを、本発明の親水性オスモル濃度増大化成分を含むように構成することができる)。
【0069】
本発明の実施態様によれば、平面CO選択性検出デバイスが、作用電極と参照電極;作用電極上に配置されたH選択性イオノフォアを含むイオン選択性層;少なくともイオン選択性層と参照電極を覆っている電解質層;及び、電解質層を覆っているシリコーン材料の外側層;を含み、ここで該電解質層が、浸透圧活性化学種を、電解質層エリア1m当たり0.8〜2.5ミリオスモルの量で含み、該電解質層が、重炭酸塩イオンを、電解質層エリア1m当たり0.1〜0.5ミリオスモルの範囲の量で、塩化物イオンを、電解質層エリア1m当たり0.05〜0.5ミリモルの範囲の濃度で、また、親水性オスモル濃度増大化成分を、電解質層エリア1m当たり0.05〜0.5ミリモルの範囲の量で含む。
【0070】
さらに、本発明の実施態様によれば、平面CO選択性検出デバイスが、作用電極と参照電極;作用電極上に配置されたH−選択性イオノフォアを含むイオン選択性層;少なくともイオン選択性層と参照電極を覆っている電解質層;及び、電解質層を覆っているシリコーン材料の外側層;を含み、ここで該電解質層が、重炭酸塩イオンを、電解質層エリア1m当たり0.1〜0.5ミリオスモルの範囲の量で、塩化物イオンを、電解質層エリア1m当たり0.05〜0.5ミリモルの範囲の濃度で、また親水性オスモル濃度増大化成分を、電解質層エリア1m当たり0.05〜0.5ミリモルの範囲の量で含み、該電解質層が、標準的なヒト血液サンプルと平衡状態にある電解質層の厚さが3〜8μmの範囲であるような量で、イオン選択性層上に配置されている。
【0071】
添付の図面(本明細書中に組み込まれていて、本明細書の一部を構成している)は、本発明の1つの実施態様を図示しており、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0072】
図1は、本発明の実施態様に従った、平面状で小型のCO選択性セバリングハウス型センサーの側断面図を示す。
【0073】
図面には、検出デバイスの他の全ての層を載せているセラミック支持体1が示されている。
【0074】
3は、セラミック支持体中の中央スルーホールであって、白金や金等の電子導電性材料が充填されており、裏側導体パッド2と前側導体パッド4(どちらも白金または金で造られている)を電子的に接続している。
【0075】
接触材料層5は、前側導体パッド4の上で、且つ前側導体パッド4を覆い尽くすようにして形成されている。接触材料層5は、電子的に且つイオン的に導電性である材料(例えば、米国特許第6,805,781号明細書に開示の酸化ナトリウムバナジウム化合物)から作製される。
【0076】
第1の環状構造物6aが接触材料層5を取り囲み、第1の環状構造物6aは、前側導体パッド4と接触材料層5とを合わせた全高とほぼ同じ高さを有する。第1の環状構造物6aは、電気的に絶縁性の材料から造られていて、例えば米国特許第5,858,452号明細書に開示のように設けられている。
【0077】
環状参照電極構造物4a+7が第1の環状構造物6aを取り囲んでいる。このように、環状参照電極構造物4a+7は、接触材料層5とは隔離されている。
【0078】
環状参照電極構造物4a+7は、銀(Ag)のコア4aがAgと塩化銀(AgCl)との混合物7によって覆われた形で造られている。
【0079】
相互接続に関して説明すると、環状参照電極構造物4a+7が、2つの周辺スルーホール3aと3bの上に設けられており、スルーホールのそれぞれには白金(Pt)ペーストが充填されていて、スルーホールのそれぞれが、Ptペーストから造られた裏側導体パッド2a及び2bと環状のAgコア4aとを接続している。
【0080】
第2の環状構造物6bが環状参照電極構造物4a+7を取り囲んでいる。第2の環状構造物6bは第1の環状構造物6aと同じ電気的に絶縁性の材料から造られていて、例えば米国特許第5,858,452号明細書に開示のように設けられている。
【0081】
選択性イオノフォアをPVC中に含むpH感受性ポリマー層8が、接触材料層5と第1の環状構造物6aの一部を覆っている。
【0082】
電解質層9が、pH感受性層8、第1の環状構造物6aの残部、及び環状参照電極構造物4a+7を覆っている。電解質層9は、重炭酸ナトリウム及び/又は重炭酸カリウムや塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムのほかに、ポリ(エチレングリコール)等の親水性オスモル濃度増大成分を含み、これら化合物の浸透圧濃度が、合計で、電解質層エリア1m当たり0.8〜6.0ミリオスモルの範囲を構成する。
【0083】
シリコーンの外側層10が電解質層9を覆い、第2の環状構造物6bの高さが、前側導体パッド4、接触材料層5、pH感受性ポリマー層8、電解質層9、及び外側層10を合わせた全高とほぼ同等となるように、外側層が第2の環状構造物6bと整合している。
【0084】
図1に示す本発明の実施態様による平面検出デバイスは、平面検出デバイスの製造に対して従来使用されている方法(当業者には明らかであろう)に従って製造することができる。さらに、本発明によるセバリングハウス型検出デバイスの製造について、実施例1で説明している。
【0085】
検出デバイスの動作時は、裏側導体パッド2、2a、及び2bが、検出デバイスの電位差を測定するための通常の測定装置に接続される。
【0086】
上記の説明は、環状の形状を有する、本発明による検出デバイスのある特定の実施態様に関する。しかしながら、この形状は、本発明の特に好ましい実施態様であると見なすべきであり、本発明の範囲の限定として理解すべきではない。
【実施例】
【0087】
実施例1
本発明による平面CO感受性検出デバイスは下記の通りに作製した。
【0088】
図1を参照すると、厚さ700μmのアルミナ支持体1に、直径20μmの3つの超小型スルーホール3、3a、及び3bが、一列に並ぶように設けられており、そして中心と中心との距離が1000μmである。スルーホール3、3a、及び3bのそれぞれには、白金ペースト(P2607,SIKEMA)が充填されていて、スルーホールのそれぞれが、支持体裏側上の類似の白金ペースト2、2a、及び2bから円形ディスクに接続されている。スルーホール3はさらに、支持体前側上の円形導体パッド4(直径50μm)に接続されていて、後述のセンサー構造物に対向している。導体パッド4は、上記の白金ペーストから作製される。スルーホール3aと3bはさらに、環状参照電極構造物4a+7のAgコア4a(デュポン社から市販のQS175銀導体)に接続されている。
【0089】
アルミナ支持体1の上にはさらに、封入剤の2つの環状構造物6aと6bが存在しており、これらの環状構造物は、米国特許第5,858,452号明細書に記載のような電気的に絶縁性の材料から作製されている。パッド4を中心に置いた第1の環状構造物6aは、内径が700μm、幅が500μm、そして高さが20μmである。第2の環状構造物6bは、同様にパッド4を中心に置いて、内径が2400μm、幅が600μm、そして高さが110μmである。
【0090】
環状構造物6aと6bのそれぞれが、英国のESLヨーロッパ社製のESLガラス4904から製造されたアルミナ支持体に対向している内側層、及び米国カリフォルニア州のSenDxメディカル社製のポリマー封入剤[米国カリフォルニア州のSenDxメディカル社の米国特許第5,858,452号明細書に開示されていて、28.1重量%のポリエチルメタクリレート(Elvacite、パート番号2041、デュポン社製)、36.4重量%のカルビトールアセテート、34.3重量%のシラン化カオリン(パート番号HF900、エンゲルハルト社製)、0.2重量%のヒュームドシリカ、及び1.0重量%のトリメトキシシランを含む〕の外側層を有する。
【0091】
円形の接触材料層5は、パッド4の上に、且つパッド4を覆い尽くすように施されている。円形層5は、直径が700μmで厚さが20μmであり、米国特許第6,805,781号明細書の開示内容に従って施される。したがって、ナトリウム−バナジウム−青銅を、ボールミル中にて約1μmの粒径になるまで粉砕する。次いでこの粉末を、ボールミル中にて、ESL社製のアクリレート結合剤システム#1112Sと、青銅と結合剤との比が70:30(重量比)となるように混合する。接触材料層5のプリンティングは、厚膜プリンティング装置(TF−100、MPM社)を使用して行う。
【0092】
環状参照電極構造物4a+7を、スルーホール3aと3bの上にプリントする。構造物4a+7は、内径が1700μmで外径が2400μmの環状構造物であり、Agコア(デュポン社製のQS175銀導体)が、銀と塩化銀(デグッサRDAGCL、50重量%のAg/50重量%のAgCl)、アクリレート樹脂、及びカルビトールアセテートを含むペーストによって覆われた状態で製造される。構造物4a+7は、全高が20μmとなるようにプリントする。
【0093】
pH感受性層8のために、下記の組成物を調製する:144mgのHイオノフォアを計量し、アルゴン雰囲気下にてハミルトンシリンジを使用して、隔膜を通して50mlのブルーキャップボトル中に移す。72mgのK−テトラキス、1.6gのPVC(分子量80,000g/モル)、及び3.2gのジオクチルフタレート(#800030、フルカ社)を計量し、ボトルに移す。16.40gの新たに蒸留して冷却したTHFと5.47gのシクロヘキサンを計量し、同様にボトルに移した。全ての成分が混ざり合うまで、ボトルの側面に沿って流体が流れるよう、ボトルを慎重に向きを変えて傾ける。ボトルは、振ったりひっくり返したりはしない。
【0094】
接触材料層5の上に計量分配することによって、約150nlの上記組成物を施す。オーブン中にて40℃で15分乾燥した後、約150nlの上記組成物をさらに施し、引き続きオーブン中にて40℃で24時間乾燥する。このようにして、1200μmの直径を有し、したがって環状構造物6aの幅の半分を覆い、そして層8の中央部に40μmの高さを有するpH感受性層8の構造物が得られる。
【0095】
本発明の電解質層9をpH感受性層8の上に付与する。電解質層9は、KClとNaHCOとの水溶液(KClの濃度が6.7mMでNaHCOの濃度が11.9mM)である電解質溶液から付与した。電解質溶液はさらに、3.4mMのポリエチレングリコールPEG1500(シグマ−アルドリッチ、202436)をオスモル濃度増大化成分として含有する。最後に、全体としての電解質溶液は、2重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、シグマ社、H9262)を含有する。全ての成分をブルーキャップボトル(a blue−cap bottle)中で混合する。
【0096】
この文脈において理解しておかねばならないことは、電解質層の全体的なオスモル濃度に対するヒドロキシプロピルメチルセルロースからの寄与は1%未満である、という点である。この化合物は、主として粘度調整のために電解質層9に供給される。
【0097】
電解質層9のための電解質溶液を、pH感受性層8の全体、環状構造物6aの外側部分、及び環状参照電極構造物4a+7の上に分配して、これらを完全に覆うようにし、これにより検出デバイスが水和状態になったときに、2つの電極間に電気接触をもたらすようにする。
【0098】
電解質層9は、2400μmの直径を有し、120nlの量の電解質溶液(約25μmの調製厚さに、そして浸透圧活性化学種1m当たり1ミリモルに相当する)を前述のように分配することによって得られる。分配後は、電解質層9を自然乾燥する。乾燥した層は約1μmの厚さを有する。
【0099】
検出デバイスの動作・湿潤状態では、電解質層9の厚さは約3μmである。このような厚さは、検出デバイスに関して適用される血液サンプル、洗浄液、及び清浄液によってもたらされる約320mOsMという、検出デバイスの外部のオスモル濃度に応答して得られる。したがって理解しておかねばならないことは、検出デバイスの動作状態において、電解質層のオスモル濃度が約320mOsMであるということ、すなわち電解質が、その調製されたままの状態から7〜8倍濃縮されるという点である。
【0100】
最後に、電解質層9を、50μm厚さのシリコーン膜(未硬化の状態で分配)である外側層10で覆う。シリコーンは、周囲空気の湿度に曝露されると硬化して、デバイス全体に対する強靭でピンホールの無い外側膜が形成される。適切な粘度を得るために、シリコーン材料(東芝製のTSE GE399C)を20重量%のヘキサンで希釈する。この外側層10は、約4×10−9/秒という水に対する拡散定数を有する。
【0101】
実施例2
3.4mMのポリ(エチレングリコール)PEG1500の代わりに3.4mMの濃度のグリセロールを、電解質層9のための電解質溶液中におけるオスモル濃度増大化成分として使用したこと以外は、実施例1において述べた全工程に従って平面検出デバイスを作製した。
【0102】
実施例3
さらに、3.4mMのポリ(エチレングリコール)PEG1500の代わりに3.1mMのポリ(エチレングリコール)PEG1500と0.3mMのグリセロールとの混合物を、電解質層9のための電解質溶液中におけるオスモル濃度増大化成分として使用したこと以外は、実施例1において述べた全工程に従って平面検出デバイスを作製した。
【0103】
比較実施例1
3.4mMのポリ(エチレングリコール)PEG1500の代わりに5Mの濃度のグリセロールを、電解質層9のための分配溶液とともに付与したこと以外は、実施例1において述べた全工程に従って平面検出デバイスを作製した。このような濃度のグリセロールは、例えば米国特許第6,805,781号明細書に開示されているような、高濃度の浸透圧活性化学種という概念に対応している。
【0104】
実施例1〜3と比較実施例1で説明したとおりに作製した平面検出デバイスを以下のように試験した:
実施例4
実施例1〜3と比較実施例1の平面検出デバイスを、ラジオメーター・メディカル(Radiometer Medical)ApS製の改良型ABL700血液ガスアナライザー(ABL700血液ガスアナライザーセンサーのチャンバーが、平面検出デバイスを収容するように改良されている)で試験した。
【0105】
すすぎ洗いとキャリブレーションのために、緩衝剤入り洗浄液及びCOとOを含有する2つの加圧ガス(残部はN)を使用した。5%と10%のCO分圧を適用した。これらのガスと洗浄溶液を使用してアナライザーが規則的なキャリブレーションを行い、センサーの応答時間を観察した。
【0106】
キャリブレーション時の平面検出デバイスの応答時間を、t=0秒でのCO曝露時間と比較して、t=4秒、t=8秒、及びt=12秒でのセンサー信号に基づいて算出した。応答時間は、全信号の90%に達する時間を表わすt90%として算出される。
【0107】
実施例1、2、及び3のそれぞれ3つのセンサー(合計で9つのセンサー)を試験した。9つのセンサー全てが5.0±1.5秒のt90%応答時間を示した。
【0108】
比較実施例1の3つのセンサーを試験した。これら3つのセンサーは15±10秒のt90%応答時間を示した。
【0109】
全てのセンサーを拡張試験スキーム(an extended test scheme)に曝露し、その間、20日間にわたって規則的なキャリブレーションを200回行った。
【0110】
このような拡張試験の後、実施例1、2、及び3の9つのセンサーは、5.1±1.8秒という実質的に不変のt90%応答時間を示した。
【0111】
拡張試験の終わりに、比較実施例1の3つのセンサーは、t90%応答時間が25±15秒であったという点で、大幅に増加した応答時間を示した。
【0112】
12個のセンサーのそれぞれに対して、事後テストであるSEM検査を行った。
【0113】
実施例1、2、及び3の9つのセンサーのいずれも、拡張試験スキームの後にデラミネーションの兆候は全く見られなかった。比較実施例1の3つのセンサー全てについて、デラミネーションの兆候が観察された。
【0114】
当業者にとっては言うまでもないことであるが、本発明の要旨を逸脱することなく、本発明のセンサーシステムとサンプリングセルに対し種々の改良や変更を施すことができる。したがって、こうした改良や変更が添付のクレーム及びそれらの等価物の範囲内に含まれるならば、本発明はこうした改良や変更を含むものとする。
【符号の説明】
【0115】
1 セラミック支持体
2 裏側導体パッド
2a 裏側導体パッド
2b 裏側導体パッド
3 中央スルーホール
3a 周辺スルーホール
3b 周辺スルーホール
4 前側導体パッド
4a 銀(Ag)のコア
4a+7 環状参照電極構造物
5 接触材料層
6a 第1の環状構造物
6b 第2の環状構造物
7 AgとAgClの混合物
8 pH感受性ポリマー層
9 電解質層
10 外側層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン選択性層(8)を含む電極(5)、電解質層(9)、及び外側層(10)を含む平面CO検出デバイスであって、ここで電解質層(9)が、イオン選択性層(8)と外側層(10)との間に配置されていて、電解質層(9)が、浸透圧活性化学種を、電解質層エリア1m当たり0.8〜6.0ミリオスモルの量にて含み、電解質層(9)が、電解質層(9)に重炭酸塩イオンや塩化物イオンを添加しない親水性オスモル濃度増大化成分を含むことを特徴とする、上記平面CO検出デバイス。
【請求項2】
親水性オスモル濃度増大化成分が、電解質層(9)中に、電解質層エリア1m当たり0.05〜1.2ミリモルの範囲の量で存在する、請求項1に記載の検出デバイス。
【請求項3】
電解質層(9)が、重炭酸塩イオンを、電解質層エリア1m当たり0.1〜1.0ミリモルの範囲の量で含む、請求項1又は2のいずれかに記載の検出デバイス。
【請求項4】
電解質層(9)が、塩化物イオンを、電解質層エリア1m当たり0.05〜1.0ミリモルの範囲の量で含む、請求項1〜3のいずれかに記載の検出デバイス。
【請求項5】
電解質層(9)が、浸透圧活性化学種を、電解質層エリア1m当たり0.8〜2.5ミリオスモルの量で含む、請求項1に記載の検出デバイス。
【請求項6】
親水性オスモル濃度増大化成分が、電解質層(9)中に、電解質層エリア1m当たり0.05〜0.5ミリモルの範囲の量で存在する、請求項5に記載の検出デバイス。
【請求項7】
電解質層(9)が、重炭酸塩イオンを、電解質層エリア1m当たり0.1〜0.5ミリモルの範囲の量で含む、請求項5又は6のいずれかに記載の検出デバイス。
【請求項8】
電解質層(9)が、塩化物イオンを、電解質層エリア1m当たり0.05〜0.5ミリモルの範囲の量で含む、請求項5〜7のいずれかに記載の検出デバイス。
【請求項9】
親水性オスモル濃度増大化成分が、80〜5,000g/モルの範囲の重量平均分子量、好ましくは800〜3,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の検出デバイス。
【請求項10】
親水性オスモル濃度増大化成分が、オリゴ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、およびシクロデキストリンからなる群から選択される1種以上の成分を含む、請求項9に記載の検出デバイス。
【請求項11】
親水性オスモル濃度増大化成分が、電解質層(9)の全オスモル濃度に対して8%より多く寄与する、請求項1〜10のいずれかに記載の検出デバイス。
【請求項12】
電解質層(9)が、3〜20μmの範囲の厚さ、好ましくは3〜8μmの範囲の厚さを有する、請求項1〜11のいずれかに記載の検出デバイス。
【請求項13】
電解質層(9)が、標準的なヒト血液サンプルと平衡状態になったときに3〜20μmの範囲の厚さ、好ましくは3〜8μmの範囲の厚さを有する、請求項1〜12のいずれかに記載の検出デバイス。
【請求項14】
電解質層(9)が、300〜350mOsMのオスモル濃度の浸透圧活性化学種を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の検出デバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2012−513015(P2012−513015A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541095(P2011−541095)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050347
【国際公開番号】WO2010/072223
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(500554782)ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス (20)