説明

平面光源

【課題】主に、カラー液晶ディスプレイのバックライトになど用いられる、白色系に発光する平面光源を提供する。
【解決手段】平面光源は、フィールド・エミッション・ディスプレイ方式の光源であり、電子線により真空容器の内側の第1の蛍光体層が励起されて第1の光を出射し、第1の光により真空容器の外側の第2の蛍光体層が励起されて第2の光を出射し、白色系の光を発光する。発光効率が高く、演色性が高く、発光色の調整が容易な平面光源となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面状のフィールド・エミッション・ディスプレイ方式の光源に関する。
【背景技術】
【0002】
フィールド・エミッション・ディスプレイ(以下「FED」と記す。)は、ブラウン管(以下「CRT」と記す。)の電子銃にあたる装置を平面状にした技術で、CRTのような明るくてコントラストの高い画面を大型平面ディスプレイで実現することができ、かつ消費電力が小さく、省スペース薄型表示装置として注目されている。
【0003】
FEDは、図6に示すように、2枚の隔壁56で仕切られた真空容器の前面板51の内側に蛍光体層53が塗布等により具備されており、対向する後面板52の内側にはエミッタ層54が電子放出物質を塗布することにより具備されている。蛍光体層53とエミッタ層54の間には、約10kVの電圧が印加されており、陰極のエミッタ層54から放出された電子は電界によって加速され、高エネルギーの電子線となって陽極の蛍光体層53に衝突し、蛍光体層53中の蛍光体を発光させる。蛍光体は一般には絶縁体であり、衝突した電子は蛍光体にとどまり、帯電(チャージアップ)してしまうので、蛍光体層53の上に薄いアルミニウム等の金属を用いた導電層55を設けて、帯電を防止している。
【0004】
このようなFEDは、このままでカラーディスプレイとして使用されるほか、液晶用のバックライト光源としても検討されている。この場合は白色の面状光源として用いられる。
白色の光源として用いる場合には、蛍光体層の発光色が白色となるように、白色発光蛍光体が必要になるが、単一の蛍光体で白色発光するものはあまり無いため、混合蛍光体が一般的に用いられる。
単に白色光を得る目的では、青色発光蛍光体と、その補色の関係にある黄色発光蛍光体との混合蛍光体を用いることができるが、カラー液晶ディスプレイのバックライト用途では、演色性を考慮するため、赤色発光蛍光体、緑色発光蛍光体および青色発光蛍光体の3原色の蛍光体が用いられる(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−64820号公報 (第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらFEDの蛍光体層に用いられる蛍光体としては、通常のカラーCRT用蛍光体を用いることもできるが、次の理由により必ずしも最適ではない。
即ち、カラーCRTに印加される加速電圧は約30kVであり、FEDの加速電圧である約10kVより高い。このため、カラーCRTの蛍光体粒子は、蛍光体粒子の奥まで電子線によって励起されるが、FEDの場合は粒子表面付近が励起されるだけである。従って、カラーCRTと同じ明るさを得るためには、照射する電子線の量を大きく(すなわち、電流密度を大きく)しなければならず、輝度の電流飽和特性がFEDはCRTの場合より顕著に飽和しやすく、FEDの発光エネルギー効率はCRTと比べて低い。
さらに、蛍光体は電子の照射によって劣化するため、蛍光体の寿命特性は積算電子照射量に依存する。FEDの場合には、CRTよりも寿命問題が顕著になる。即ち、赤色・緑色・青色等の複数の蛍光体を、色合いを調整し混合するのだが、各々の蛍光体ごとに寿命特性が異なるため特定の色だけ早く劣化するなどして、駆動時間と共に発光色度が変化してしまい、白色光源としての信頼性に影響を与える。
このような事情から、FEDに用いる蛍光体およびFEDの構造に、新たな改良が求められている。
【0007】
本発明者らは、FEDに最適な高効率の電子線励起蛍光体の試作検討探索を種々行ってきたが、表1に示す現行のカラーCRT用蛍光体の電子線励起発光エネルギー効率を超える蛍光体はあまり無い。
【0008】
【表1】

【0009】
本発明者らはこのような状況から、電子線で各色の蛍光体を発光させるのではなく、電子線により紫外線ないし青色の波長領域の光を発光する蛍光体を励起させ、得られた紫外線ないし青色の波長領域の光を、別の蛍光体に照射することで、より長波長の様々な発光色に変換する方法を考案した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の平面光源は、FED方式の光源であって、電子線により真空容器の内側の第1の蛍光体層が励起されて第1の光を出射し、第1の光により真空容器の外側の第2の蛍光体層が励起されて第2の光を出射し、結果白色系の光を発光するものである。
そして、真空容器の内側の第1の蛍光体層により第1の光を得て、この第1の光により真空容器の外側の第2の蛍光体層を励起するため、CRTと比べてFEDの約10kVという比較的低い印加電圧による電子線によりすべての蛍光体を励起する場合と比べて、励起効率が高い。また各色の蛍光体の電子線励起効率の差、ないしは電子線による劣化速度の差による色ずれが生じず、さらに、第2の蛍光体層のための蛍光体として様々な種類の蛍光体から選択可能になるため、発光波長特性を調整しやすい。
このため、発光効率が高く、発光色の調整が容易な平面光源を得ることができる。
【0011】
請求項2記載の平面光源は、請求項1記載の平面光源において、第1の光を近紫外線領域ないしは青色領域の波長の光としたものである。
そして、真空容器の内側の第1の蛍光体層から出射される第1の光を近紫外線領域ないしは青色領域の波長の光としたことにより、効率よく第2の蛍光体層の蛍光体を励起することができる。
【0012】
請求項3記載の平面光源は、請求項2記載の平面光源において、第1の蛍光体層がYPO:Ce3+、YAlO:Ce3+、BaFX:Eu2+(XはCl,Br,Iの少なくともいずれか一つの元素)およびYSiO:Ce3+の少なくともいずれか一つの蛍光体を含むものである。
そして、これらの電子線励起効率が高く近紫外線領域で発光する蛍光体を第1の蛍光体層に用いたことで、効率よく第2の蛍光体層の蛍光体を励起することができ、また第2の蛍光体層の蛍光体の選択肢の幅が広がるため、発光色の調整も容易にできる平面光源となる。
【0013】
請求項4記載の平面光源は、請求項2記載の平面光源において、第1の蛍光体層がZnS:Ag蛍光体を含むものである。
そして、これらの電子線励起効率が高く青色領域で発光する蛍光体を第1の蛍光体層に用いたことで、効率よく第2の蛍光体層の蛍光体を励起することができ、また第2の蛍光体層の蛍光体のと混色により、発光効率の良い平面光源となる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の平面光源によれば、フィールド・エミッション・ディスプレイ方式の光源であり、電子線により真空容器の内側の第1の蛍光体層が励起されて第1の光を出射し、第1の光により真空容器の外側の第2の蛍光体層が励起されて第2の光を出射し、白色系の発光をする平面光源としたことで、発光効率が高く、演色性が高く、発光色の調整が容易な平面光源を得ることができる。
【0015】
請求項2記載の平面光源によれば、請求項1記載の平面光源において、第1の光を近紫外線領域ないしは青色領域の波長の光としたことで、演色性が高く、発光色の調整が容易な平面光源を得ることができる。
【0016】
請求項3記載の平面光源によれば、請求項2記載の平面光源において、第1の蛍光体層がYPO:Ce3+、YAlO:Ce3+、BaFX:Eu2+(XはCl,Br,Iの少なくともいずれか一つの元素)およびYSiO:Ce3+の少なくともいずれか一つの蛍光体を含むもの構成としたことで、発光効率が高く、演色性が高く、発光色の調整が容易な平面光源を得ることができる。
【0017】
請求項4記載の平面光源によれば、請求項2記載の平面光源において、第1の蛍光体層がZnS:Ag蛍光体を含むもの構成としたことで、発光効率が高く、演色性が高く、発光色の調整が容易な平面光源を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態における平面光源を、図1を用いて説明する。
2枚の隔壁6で仕切られた真空容器の前面板1の内側に第1の蛍光体層3が塗布等により具備されており、対向する後面板2の内側にはエミッタ層4が電子放出物質を塗布することにより具備されている。第1の蛍光体層3とエミッタ層4の間には、約10kVの電圧が印加されており、陰極のエミッタ層4から放出された電子は電界によって加速され、高エネルギーの電子線となって陽極の第1の蛍光体層3に衝突し、第1の蛍光体層3中の蛍光体を発光させる。帯電(チャージアップ)防止のため、第1の蛍光体層3の上に薄いアルミニウム等の導体による導電層5が接着または蒸着等により具備されている。
前面板1の外側に第2の蛍光体層7が塗布または印刷等により具備されており、さらにその表面に透明樹脂等による保護膜8が設けられている。
第1の蛍光体層3から出射された第1の光は、第2の蛍光体層7を通過する際に第2の蛍光体層7中の蛍光体を励起し、第2の光を発光する。このとき、第1の光と第2の光とが混色され、平面光源10から出射される。
【0019】
ここで、第1の蛍光体層3に含まれる蛍光体は、電子線により効率よく励起され、第1の光として近紫外線の領域ないしは青色領域の波長の光を出射するものが望ましい。例えば、
・355nmに発光ピーク波長を持つ、YPO:Ce3+
・370nmに近紫外発光ピーク波長を持つ、YAlO:Ce3+
・380nmに近紫外発光ピーク波長を持つ、BaFX:Eu2+(X=Cl,Br,I)、
・415nmに近紫外発光ピーク波長を持つ、YSiO:Ce3+
・450nmに青色発光ピーク波長を持つ、ZnS:Ag
等が好ましく用いることができる。
【0020】
また、第2の蛍光体層7に含まれる蛍光体としては、第1の光により効率よく励起され、かつ第1の光との混色により、白色光が得られるものが望ましい。ここで、例えば第1の光が青色光であれば、この補色である黄色光を第2の光として発光する黄色発光蛍光体を第2の蛍光体層7の蛍光体として選択できるが、黄色発光蛍光体の代わりに、緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体とを組み合わせて用いると、さらに演色性が優れた白色光を得ることができる。
また、例えば第1の光が紫外線であれば、第2の蛍光体層7の蛍光体としては、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、赤色発光蛍光体の組み合わせを用いることができ、これらの混色により、演色性に優れた白色光を得ることができる。
【0021】
第2の蛍光体層7の蛍光体としては、例えば次の蛍光体が好適に用いることができる。
青色発光蛍光体としては、ZnS:Ag、BaMgAl1017:Eu2+、Sr(POCl:Eu2+等の蛍光体が好ましい。
緑色発光蛍光体としては、SrGa:Eu2+、ZnS:Cu、CaS:Ce3+、YAl12:Ce3+、(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu2+、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu2+等の蛍光体が好ましい。
赤色発光蛍光体としては、(Ca,Sr)S:Eu2+、RES:Eu3+(RE=Y,Gd,La,Lu)、SrSiO:Eu2+、MgGe11:Mn4+、赤色発光サイアロン系蛍光体、等の蛍光体が好ましい。
このほかに、第2の蛍光体層7の蛍光体としては有機蛍光染料等も用いることができる。
【0022】
従来技術の場合、電子線により励起される第1の蛍光体層3に相当する蛍光体層において、複数の蛍光体を具備したFEDがあるが、この場合は具備した蛍光体がすべて電子線により効率よく励起されて発光する必要があり、また電子線による劣化特性が揃っている必要があった。しかし、一般的に蛍光体は電子線による励起と光(電磁波)による励起とで励起、発光までのメカニズムが異なり、特にFEDの約10kVという比較的低い印加電圧の場合には、電子線による励起効率と、光による励起効率とを比較すると、電子線励起では蛍光体の励起部分の体積が小さく、また電子照射によるチャージアップもあるため、光による励起の方が励起効率が高い。
このため、第1の蛍光体層3に用いる蛍光体は、約10kVという比較的低い印加電圧の電子線でも効率よく励起される蛍光体が望ましく、特に
・355nmに発光ピーク波長を持つ、YPO:Ce3+
・370nmに近紫外発光ピーク波長を持つ、YAlO:Ce3+
・375nmに近紫外発光ピーク波長を持つ、(Ba,Sr)SO:Eu2+
・450nmに青色発光ピーク波長を持つ、ZnS:Ag
が好適に用いられる。
【0023】
一方、印加電圧の低い電子線による励起効率が低い蛍光体であっても、光による励起効率が高い蛍光体であれば、第2の蛍光体層7の蛍光体として有効に用いることができるため、FED内部に用いるのが不適切であった蛍光体でも、第2の蛍光体層7用として利用可能である。このため、さまざまな蛍光体を第2の蛍光体層7に用いることができるため、所望する白色度を得やすい。またカラー液晶ディスプレイのバックライトパネルの用途としては、対象となるカラー液晶ディスプレイのカラーフィルターの特性にあわせて多種の蛍光体の中から最適な蛍光体を選択しやすくなるため、結果として望ましい色調のカラー液晶ディスプレイを得ることができる。
【0024】
また、第2の蛍光体層は、複数の蛍光体を混合したものを印刷等の手段によって具備させても良いが、図2に示すストライプ状のパターンや、図3に示すハニカム状のパターンで例えば青色発光蛍光体、赤色発光蛍光体および緑色発光蛍光体を並べて具備してもよい。この並べて具備する方法は、特に体色の強い蛍光体を用いる場合に有効である。
各々の蛍光体を並べて具備する場合、各蛍光体の第1の光に対する発光効率にあわせて、具備する面積の比率を調整することで、色調を調整可能である。
複数の蛍光体を混合して具備した場合、蛍光体から出射された例えば緑色領域の第2の光の一部が、再び例えば赤色発光蛍光体に吸収され波長変換されることが起こりうる。しかしながら、複数の蛍光体を混合せずに並べて具備した場合では、これらの再吸収がないため、混合した場合に比べて光源としての輝度が向上する。
複数の蛍光体を並べて具備したとき、複数の蛍光体から出射される光が効率よく混合されるように、平面光源10に光拡散機能を有する光拡散層を設けてもよい。また、例えば第1の蛍光体層からの第1の光が青色領域の波長の光である場合は、青色発光蛍光体の領域には何も具備せずに、光が透過するように赤色発光蛍光体および緑色発光蛍光体を配置してもよい。
【0025】
エミッタ層4として、電子放出物質として例えばカーボンナノチューブ(CNT)を例示したが、このほかの電子放出物質でも良く、また電子を放出しやすい形状の構造(例えばスピント型など)をとっても良く、効率良く電子を放出できる機能が備わっていれば良い。
【0026】
次に、上記一実施の形態の実施例として、本発明の平面光源について説明する。
【実施例1】
【0027】
図1に示すように、2枚の隔壁6で仕切られた真空容器の前面板1の内側に、青色発光蛍光体ZnS:Ag,Clを含む第1の蛍光体層3が塗布により具備されており、さらに第1の蛍光体層3の帯電防止のために、第1の蛍光体層3の上に導電層5として薄いアルミニウム金属箔が接着により具備されている。
対向する後面板2の内側には電子放出物質としてカーボンナノチューブ(CNT)を含むエミッタ層4が塗布により具備されている。
前面板1の外側には、緑色発光蛍光体SrGa:Euと赤色発光蛍光体CaS:Euとの混合蛍光体を含む第2の蛍光体層7が、図2に示すストライプ状のパターンで印刷により具備されており、その表面に透明樹脂による保護膜8が設けられている。
このとき、領域31には緑色発光蛍光体が、領域32には赤色発光蛍光体が具備されており、領域33には何も具備しない。
第1の蛍光体層3とエミッタ層4の間に約10kVの電圧を印加すると、陰極であるエミッタ層4から放出された電子が電界によって加速され、高エネルギーの電子線となり陽極である第1の蛍光体層3中の青色発光蛍光体ZnS:Ag,Clに衝突し、これを励起して第1の光として青色領域の光を出射する。この青色領域の光の一部は、第2蛍光体層7中の領域31にある緑色発光蛍光体SrGa:Euと領域32にある赤色発光蛍光体CaS:Euとに吸収され、第2の光として緑色領域の光および赤色領域の光に変換される。
これら、第2の光と、領域33を通過した第1の光とが混色され、白色光となり、平面光源10から出射される。
このとき、図示しないが保護膜8の上部に、光を拡散させる拡散層を設けてもよい。
【0028】
(比較例)
次に比較例として、従来の図6に示す構造に従い、通常のCRTに用いられる青色発光蛍光体ZnS:Ag、緑色発光蛍光体ZnS:Cu,Al、赤色発光蛍光体Y2O2S:Euの混合蛍光体を蛍光体層53として用い、蛍光体層53の上に導電層55として薄いアルミニウム金属が同様に設けられている。
対向する後面板2の内側には、同じくCNTを含むエミッタ層54が設けられている。
蛍光体層53とエミッタ層54の間に約10kVの電圧を印加すると、陰極であるエミッタ層54から放出された電子が電界によって加速され、高エネルギーの電子線となり陽極である蛍光体層53中の各々の蛍光体と衝突し、これを励起して各々青色・緑色・赤色の光を出射し、混色されて白色光となる。
【0029】
本発明実施例1と比較例の平面光源からの発光スペクトルを図4に示す。
この二つの平面光源の色度はx=0.28、y=0.27の白色発光を示すように各蛍光体の配合量を調整しており、発光特性を測定した結果、発光輝度は従来例よりも輝度は約5%高い。
また、この実施例1の平面光源は、発光スペクトルからもわかるようにより幅広い発光スペクトルを有しており、特に深い赤色領域の光を含むために演色性にも優れている。
【0030】
次に、本発明の平面光源の別の実施形態として、第1の蛍光体層に紫外線発光蛍光体を選択した場合について説明する。
【実施例2】
【0031】
紫外線発光蛍光体SrSO:Euを含む第1の蛍光体層3が塗布により具備され、青色発光蛍光体BaMgAl1017:Eu、緑色発光蛍光体ZnGeO:Mnおよび赤色発光蛍光体YS:Euを混合した、混合蛍光体を含む第2の蛍光体層7が塗布により具備したほかは、実施例1と同様に平面光源を構成し、これを実施例2とした。
この実施例2の場合、第1の蛍光体層3から出射される第1の光は、紫外線領域の波長範囲であるため人の目からはほとんど視認されず、第2の蛍光体層7から出射される青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体および赤色発光蛍光体からの第2の光が混合され、白色光とうなり、実施例2の平面光源から出射される。
ここで、第2の蛍光体層7を実施例1のようにストライプ状のパターンで具備せずに、混合蛍光体を塗布することにより具備したが、これは上記青色蛍光体BaMgAl1017:Eu、緑色発光蛍光体ZnGeO:Mnおよび赤色発光蛍光体YS:Euが、いずれも体色がほとんど無く、第2の光を再吸収するおそれが極めて少ないためである。
【0032】
上記実施例2の平面光源からの発光スペクトルを図5に示す。
実施例1と同様に、この実施例2の平面光源の色度は、x=0.28、y=0.27の白色発光を示すように各蛍光体の配合量を調整している。
【0033】
このように、本発明の平面光源は、第1の蛍光体層が電子線により励起され、第1の光として可視光または紫外線光を出射し、第2の蛍光体層がこの第1の光により励起され、第2の光として可視光を出射し、これらの混合により白色を得るものである。
ここで、第2の蛍光体層の蛍光体を可視光励起タイプの蛍光体または紫外線励起タイプの蛍光体から任意に選択できるため、発光色の調整が容易であり、例えばカラー液晶ディスプレイのバックライトパネルとして用いた場合に、上記カラー液晶ディスプレイのカラーフィルターの透過特性に合わせて、種々の蛍光体の中から最適の蛍光体を選択しやすく、発光色の調整が容易である。
また、電子線による励起では、蛍光体の種類によって電流飽和特性が異なるため、複数の蛍光体を用いて電子線励起強度を変化させた場合に、発光強度のバランスが崩れ、発光色が変化してしまうという問題があるが、本発明の平面光源の場合、第1の蛍光体層により電子線を第1の光である可視光または紫外線光に変換した上で、この第1の光により、他の複数の蛍光体を励起するため、電子線励起強度を変化させても、発光色は変化しにくいという特徴を持っている。このため、やはりカラー液晶ディスプレイ等のバックライトパネルとして最適である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の平面光源は、照明等の白色系光源に好適であり、さらにカラー液晶ディスプレイ用途において、発光色を容易に調整しやすく、また発光色が変化しにくいという特徴のため、特に好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態の平面光源の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】第2の蛍光体層の具備のパターンの一例を示す模式図である。
【図3】第2の蛍光体層の具備のパターンの別の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の実施例1および従来の平面光源の発光スペクトルを表すグラフである。
【図5】本発明の実施例2の平面光源の発光スペクトルを表すグラフである。
【図6】従来の平面光源の構造の一例を模式的に示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールド・エミッション・ディスプレイ方式の光源であって、
電子線により、真空容器の内側の第1の蛍光体層が励起され、第1の光を出射し、
第1の光により、真空容器の外側の第2の蛍光体層が励起され、第2の光を出射し、
白色系の光を発光する
ことを特徴とする平面光源。
【請求項2】
第1の光は、近紫外線領域ないしは青色領域の波長の光である
ことを特徴とする請求項1記載の平面光源。
【請求項3】
第1の蛍光体層は、YPO:Ce3+、YAlO:Ce3+、BaFX:Eu2+(XはCl,Br,Iの少なくともいずれか一つの元素)およびYSiO:Ce3+の少なくともいずれか一つの蛍光体を含む
ことを特徴とする請求項2記載の平面光源。
【請求項4】
第1の蛍光体層は、ZnS:Ag蛍光体を含む
ことを特徴とする請求項2記載の平面光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−16268(P2009−16268A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178970(P2007−178970)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(390031808)根本特殊化学株式会社 (21)
【Fターム(参考)】