平面形放電ランプ点灯システム及びバックライトシステム
【課題】 放電空間で放電を形成するための始動電圧を低減することで、電極部での放電回り込み現象を改善し、スペーサにて分割された放電空間の全てに放電路を形成し、発光面全体で発光することができる。
【解決手段】 透光性のガラス板から構成される前面基板１と、側壁３とスペーサ５を一体的に形成した背面基板２を略一定の間隔で対向させて配置し、周辺部をフリットガラス７で封着して放電容器を形成し、その背面基板２の外部にシート状導電性物質８、例えば、ＳＵＳ、Ｆｅなどの金属板、又はＡｇなどの導電性ペーストを塗布した樹脂などのフィルム、シート、プレートを近接又は離間して配置して平面形放電ランプを点灯させるようにした。
【解決手段】 透光性のガラス板から構成される前面基板１と、側壁３とスペーサ５を一体的に形成した背面基板２を略一定の間隔で対向させて配置し、周辺部をフリットガラス７で封着して放電容器を形成し、その背面基板２の外部にシート状導電性物質８、例えば、ＳＵＳ、Ｆｅなどの金属板、又はＡｇなどの導電性ペーストを塗布した樹脂などのフィルム、シート、プレートを近接又は離間して配置して平面形放電ランプを点灯させるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は平面形放電ランプ点灯システム及びバックライトシステムに関する。
【背景技術】
【０００２】
図１５は特公平６−５０６２４号公報（特許文献１）の図１に記載された、１種の面光源装置である平面形放電ランプの第１の従来例を示している。この従来例の平面形放電ランプは、当該公報の図によれば、発光面となる透光性を有する面板１１０と、該面板１１０の内面に形成された透明導電膜から成る電極１２０と、該透明導電膜１２０が外部電極とされる部分以外を覆って設けられた透光性を有する誘電体層１３０と、前記面板と対向配置された絶縁基板１４０と、該絶縁基板１４０に被着された蛍光体１６０からなり、前面基板１１０と前記絶縁基板１４０とが一体に封着され、内部に希ガスと水銀が封入され、前記絶縁基板１４０に設けられた放電路１５０の断面形状が、面板に向かって開くような勾配や曲面又はそれらを組み合わせた形状に形成したことを特徴としている。この場合、電極１２０は放電路１５０に対し直交して配置される構成である。
【０００３】
図１６は、特開平１０−２２２０８３号公報（特許文献２）に示された平面形放電ランプの第２の従来例の構成であり、電極１９０はスペーサ１００に対し垂直に方向に配置される基本構成は図１５の従来例と同じであるが、電極１９０は前面基板１１０の外壁に設置されている。
【０００４】
図１７は、特開２００３−２１７１５１７号公報（特許文献３）に示された平面形放電ランプの第３の従来例の斜視図であり、図１８はその底面２００の断面図である。この従来例の平面形放電ランプでは、第１電極２６０ａと第２電極２６０ｂの間の放電空間を複数の細型隔壁３００にて複数の放電領域に分割し、前記第１電極２６０ａと第２電極２６０ｂをこれらの分割放電領域と細型隔壁３００に対して垂直方向に配置した構成である。
【０００５】
この第３の従来例の平面形放電ランプの構成は、図１５の従来例、図１６の従来例と同じであるが、電荷集中度を向上して放電効率を向上することができるように、第１電極２６０ａ及び第２電極２６０ｂと一体に形成され、これら第１電極２６０ａ及び第２電極２６０ｂから分割放電領域それぞれの内部に向かって突出するように、互いに対向する第１突出部２６６ａ及び第２突出部２６６ｂを設けている。
【０００６】
ところが、これら第１〜第３の従来例の構成のように、線状のスペーサによって放電空間を多数に分割し、一対の電極を各放電空間の両端部に配置した構成の場合、図１９に示すような問題点があった。図１９は、スペーサ５と電極６ａ，６ｂとの相対的な位置関係を示した平面形放電ランプの断面図であり、電極６ａ，６ｂはランプ外壁に配置されるか、又はランプ内壁に塗布された後に誘電体層でコートされた構成がとられている。ランプの排気やガス導入を容易にするために、スペーサ５は、その両端部が側壁３に接しないように配置され、スペーサ５にて分割されたそれぞれの放電空間が繋がるような構成としているが、電極６ａ，６ｂ間に交流電圧を印加すると、図１９に示すように、分割された放電空間のすべてに放電路が形成されるのではなく、部分的に発光する問題が発生する。図１９で斜線を施した放電空間Ａは放電路が形成され、斜線を施していない放電空間Ｂは放電路が形成されていないことを示している。
【０００７】
この原因は、次の通りである。各放電空間の両端部に作用するように配置される電極６ａと６ｂに電圧を印加すると、全ての放電空間に電界が作用する。各放電空間は、ガラスや蛍光体の表面状態や電極の状態の差異によりランプ始動電圧が若干異なり、始動電圧が最も低い放電空間で放電路が形成される。この放電路が形成された放電空間Ａでは、両端の電極部の表面を覆っている誘電体層（ガラス部）に印加される電圧は、放電路が形成される前は印加電圧と逆極性の電圧が印加されていたが、放電路の形成により印加電圧と同極性に変化し、結果的に当該放電空間Ａに印加される電圧が低減して放電が終了する。
【０００８】
他方、放電空間Ａに隣り合う放電路が形成されていない放電空間Ｂの電極部の表面を覆っている誘電体層（ガラス）では、放電に至っていないので、印加電圧と逆極性の電圧が印加されたままであるが、空間Ａの誘電体層（ガラス）は先述したように同極性に変化しているため、空間Ａと空間Ｂの誘電体層（ガラス）との間に電圧差を生じ、両者の間で放電し、外観的には電極部で放電路が繋がっているように見えてしまう。そして、空間Ｂの誘電体層（ガラス部）の電圧は印加電圧と同極性になるため、結果的には、空間Ｂに作用する電圧が低減し、空間Ｂでは放電開始しない。同様な現象が管全体に発生し、放電空間のすべてに放電路が形成されるということがなく、部分的に発光する問題が発生する。このバリア放電型の平面形放電ランプに特有の上記の放電の回り込み現象は、放電空間で放電を形成するための始動電圧が高い場合に発生しやすい。
【特許文献１】特公平６−５０６２４号公報
【特許文献２】特開平１０−２２２０８３号公報
【特許文献３】特開２００３−２１７１５１７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、放電空間で放電を形成するための始動電圧を低減することで安定した点灯が可能な平面形放電ランプ点灯システム及びバックライトシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
本発明の平面形放電ランプ点灯システムは、透光性の前面基板と背面基板とを対向させて配置し、内部に放電媒体を封入し、前記前面基板と背面基板の少なくともどちらか一方の内側に蛍光体層を形成して面状放電容器を構成し、前記面状放電容器の内部又は外部に、かつ少なくとも一方が前記放電媒体に接触しないように少なくとも一対の電極を設置し、前記前面基板と背面基板との間で前記電極に対して直角方向へ所定の間隔を有するように配置され、前記電極間を複数の放電領域に分割すると共に、両端部が前記面状放電容器を形成する側壁に接しないように配置された複数のスペーサを具備した平面形蛍光ランプと、前記面状放電容器の背面基板に接して又は所定の間隔をあけて配置したシート状導電物質とを備えたことを特徴とするものである。
【００１１】
本発明の平面形放電ランプ点灯システムにおいては、前記一対の電極は、前記複数のスペーサの端部と前記面状放電容器を形成する側壁との間に形成される空隙部分より内側の位置に設けることができる。
【００１２】
また本発明の平面形放電ランプ点灯システムにおいては、前記一対の電極の一方を、前記前面基板又は背面基板の少なくとも一方の外側に設置することで前記放電媒体と接触しないようにすることができる。
【００１３】
また本発明の平面形放電ランプ点灯システムにおいては、前記シート状導電物質は、全面導電物質でシート状のもの、全面導電物質に開口部を設けたもの、又は導電性物質のメッシュ状のもののいずれかとすることができる。
【００１４】
また本発明の平面形放電ランプ点灯システムにおいては、前記シート状導電物質は、前記一対の電極の一方の電極の外側端縁と他方の電極の外側端縁との間より内側の領域に配置したものとすることができる。
【００１５】
さらに本発明の平面形放電ランプ点灯システムにおいては、前記シート状導電物質は、前記複数のスペーサの端部と前記面状放電容器を形成する側壁との間に形成される空隙部分より内側に対向する部分に配置することができる。
【００１６】
本発明のバックライトシステムは、上記いずれかの平面形放電ランプ点灯システムを筐体に収容したことを特徴とするものである。
【００１７】
また本発明のバックライトシステムにおいては、前記筐体は、非導電性物質とすることができる。
【００１８】
さらに本発明のバックライトシステムにおいては、前記シート状導電物質は、前記筐体の内面又は外面に形成することができる。
【発明の効果】
【００１９】
本発明の平面形放電ランプ点灯システム及びバックライトシステムによれば、背面基板側に近接して導体を配置したことによって放電空間部の始動性を向上させ、その結果として、電極部での放電回り込み現象を改善し、スペーサにて分割された放電空間の全てに放電路を形成し、発光面全体で発光させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【００２１】
図１は本発明の第１の実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムの基本構成を示す全体の斜視図であり、図２はそれからシート状導電物質８を取り除いた平面形蛍光ランプＬの前面基板１を上にした斜視図、図３は図２におけるＡ−Ａ線で切欠した斜視図であり、図４はその背面基板を上にした斜視図である。また、図５は本実施の形態の平面形放電ランプＬの分解斜視図である。本実施の形態の平面形放電ランプは、透光性のガラス板から構成される前面基板１と、側壁３とスペーサ５を一体的に形成した背面基板２を略一定の間隔で対向させて配置し、周辺部をフリットガラス７で封着して平面形放電容器を形成している。この平面形放電容器の内部には、放電媒体として、水銀蒸気、キセノン、クリプトン、アルゴン、ネオン、ヘリウムの内の１つを単独もしくは２種類以上を混合して、数ｋＰａから数１００ｋＰａの封入圧力で封入している。
【００２２】
封入ガスの一例としては、水銀蒸気とアルゴンとネオンの混合気体であり、ネオンとアルゴンガスの比率は、発光効率及びランプの低電圧始動を優先させる場合は５０：５０〜９９：１とネオンの配合比を多くした構成とし、発光の立ち上がり速度を優先させる場合は１：９９から５０：５０とアルゴンの配合比を多くした構成を採る。ガス圧力に関しては、１Ｔｏｒｒから７００Ｔｏｒｒの範囲であり、好ましくは、低電圧始動性、発光効率、寿命の観点から、２０〜１００Ｔｏｒｒの範囲に設定される。
【００２３】
前面基板１の外面には、放電容器の端部に沿って、高圧電圧を印加する外部電極６ａと低圧電圧を印加する外部電極６ｂとが、放電媒体と接触しないように配置してある。本実施の形態の場合、外部電極６ａ，６ｂと放電媒体との遮断は、前面基板１自身で行っているが、第２の実施の形態である図８、図９に示す平面形放電ランプシステムのように、誘電体層９を用いて遮断しても構わない。また本実施の形態では両方の電極６ａ，６ｂを放電媒体と遮蔽する構成にしているが、一方の電極を内部電極とし、他方の電極だけを放電媒体と遮断するような構成でも構わない。
【００２４】
また、本実施の形態では、外部電極６ａ，６ｂは前面基板１にのみ設けているが、その他の構成例として、外部電極を背面基板１のみに形成する構成、前面基板１と背面基板２との両面に形成する構成、あるいは、前面基板、背面基板及び前面基板と背面基板を接合する側面に形成する構成を採ることができる。
【００２５】
電極形成方法の一例としては、アルミニウムなどの導電性テープを、導電性接着剤を介して放電容器上に形成する方法、銀などの金属粉と溶剤とバインダとを混合させた導電性ペーストをスクリーン印刷、ディスペンサー塗布又は浸漬により放電容器表面に塗布した後、乾燥、焼成を行って形成する方法、あるいは、スズ、インジウム、ビスマス、鉛、亜鉛、アンチモン、又は銀を少なくとも１種類以上含む半田を加熱溶融したものを、例えば、超音波振動を加えながら浸漬により放電容器の表面に塗布する方法を採ることができる。電極層と放電容器との接着性を高めるために、電極が形成される位置の放電容器の表面を例えばサンドブラスト処理で凹凸粗面化する方法を採ることができる。電極の膜厚は電極材料の抵抗値や電極の塗布面積を考慮して例えば０．１〜３００μｍに設定される。
【００２６】
外部電極６ａ，６ｂの形状は、図示した帯形状とする以外に、スペーサで分離した各放電空間へ向かって凸部を形成するなど、多彩な異形状をとることができる。また、図２〜図５では一対の電極を示したが、複数対の電極構成とすることも可能である。
【００２７】
背面基板２に一体的に形成された細長状のスペーサ５は、所定の間隔で配置されており、前面基板１と背面基板２の間隔を一定に保つと共に、放電容器の内外気圧差によるランプの爆縮による破損を防止する。また、スペーサ５は、電極６ａ，６ｂに対して垂直方向に配置されており、電極６ａ，６ｂ間を複数の放電領域に分割している。さらに、後述する図１３に詳しいように、スペーサ５は、ランプの排気やガス導入を容易にするために、その両端部が側壁３に接しないように空隙３ａが形成されるように配置され、スペーサ５にて分割されたそれぞれの放電空間がこの空隙３ａを介して繋がるような構成としている。
【００２８】
スペーサ５の形状は、図に示す断面台形状以外に、図１０（ａ）に示すように波形状、図１０（ｂ）に示すように半楕円形状など任意形状をとることができる。また、図１０（ｃ）に示すように、前面基板１と背面基板２を平板形状とし、スペーサ５を別個に設けた構成とすることもできる。また、本実施の形態では、背面基板２を熱加工して一体的に形成しているが、図１０（ｄ）、（ｅ）に示すように前面基板１を熱加工して平板の背面基板２と張り合わせる構成や、図１０（ｆ）に示すように前面基板１と背面基板２を共に熱加工して張り合わせる構成もとることができる。スペーサ５によって分割された放電空間の大きさは、要求されるランプの始動電圧・管電圧及び光量に応じて設定され、例えば、放電空間の幅Ｗが０．５〜３０ｍｍの範囲で、放電空間の高さＨが０．５〜６ｍｍの範囲で設定される。図１０では、各放電空間の面積を全て同一にした場合を図示しているが、放電空間の断面積を場所によって異なる構成とすることも可能である。
【００２９】
前面基板１、背面基板２、スペーサ５の内側には、それぞれ、蛍光体層４が形成されている。この蛍光体層４は、放電によって放電媒体から放射される紫外線を可視光に変換する。蛍光体層４は、一般照明、冷陰極蛍光ランプ、ＰＤＰに使用される蛍光体が用いられ、単独で又は発光色の異なる数種類の蛍光体が混合して塗布されている。尚、異なる発光色の蛍光体を個別に縞状に又はドット状に塗布して蛍光体層４を構成することもできる。
【００３０】
光を取り出す側の前面基板１の蛍光体層４は、背面基板２側からの蛍光体の光を損失なく透過させるために、例えば、平均粒径（１次粒子径）が約２．５μｍ以上の蛍光体粒子を、厚さ５〜１５μｍと薄く形成する構成とする。一方、光を取り出さない背面基板２の蛍光体層４は、光を前面基板１側に多く導くために、例えば、平均粒径が約２．５μｍ以下の蛍光体粒子を厚さ３０〜１００μｍと厚く形成して、反射輝度を高める構成とする。
【００３１】
また、図示していないが、電極が形成されている基板において、電極が形成される位置の基板内側に蛍光体層がある場合、蛍光体層が放電によりスパッタリングされて、ガスの消耗速度を速めることから、電極部が設けられる位置の基板内側には蛍光体層を設けない構成が一般的である。
【００３２】
この背面基板２と蛍光体層４との間には、微粒子の金属酸化物の反射層を形成することもできる。また、前面基板１及び背面基板２と蛍光体層４との間に、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどの金属酸化物の層を形成し、水銀がガラス表面に移動するのを防止したり、放電から発生する紫外線を吸収したりすることも可能である。尚、本実施の形態では、両方のガラス基板１，２の内面に蛍光体層４を設けているが、どちらか一方の蛍光体層を省略する構成にすることもできる。また、前面基板１と背面基板２の両方の蛍光体層４を省略して、放電媒体から放射される可視光を直接利用する形態も採ることができる。
【００３３】
図１に示すように、上記平面形蛍光ランプＬの背面基板側には、例えば、ＳＵＳ、Ｆｅなどの金属板、又はＡｇなどの導電ペーストを塗布した樹脂などのフィルム、シート又はプレートなどが近接した状態で配置されている。高電圧側の外部電極６ａと低電圧側の外部電極６ｂとの間に、周波数１０〜２００ｋＨｚの矩形波電圧、三角波電圧、正弦波電圧又はパルス電圧を印加すると、図７に示すように、スペーサ５によって分割された放電空間の全てに放電が形成される。
【００３４】
図１１に示すように、シート状導電物質８がランプＬのサイズと同等の大きさで、全面導電性物質でシート状に敷き詰められた構成の場合、ランプＬが大型化すると、ランプＬから近接導体への漏れ電流が大きくなって印加電圧が上昇する問題が発生する。
【００３５】
平面形蛍光ランプＬとシート状導電物質８との距離を増やすことによって漏れ電流を低減することができ、この離間距離は約０．１〜１０ｍｍまで増やしても、本発明の効果は得られる。また、シート状導電物質８の形状を変化させて、導電物質の面積を小さくすることによって漏れ電流の低減は可能である。シート形状の一例としては、図６（ａ）に示すように丸型形状の開口部８Ａを設けたもの、図６（ｂ）に示すように細長の開口部８Ｂを設けたもの、図６（ｃ）に示すようにメッシュ形状としたもの、図６（ｄ）に示すように電極近傍部にのみ櫛状の導電部８Ｃを設けたものなど、開口率（＝開口部面積／シートの外周面積）を大きくすると、ランプＬからシート状導電物質８への漏れ電流を低減できる。また、図６（ｅ）、（ｆ）に示すように、漏れ電流が特に大きくなる外部電極が形成される位置にシート状導電物質８を設けない構成も有効である。開口径、開口形状、開口数、配置、開口率は様々な形態をとることができる。また、シート状導電物質８は、接地状態にする場合と接地しない場合の両方の形態をとることができる。
【００３６】
本発明の第３の実施の形態として、上記第１の実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムを基本構成として利用したバックライトシステムの構成を図１２に示す。バックライトシステムの筐体９は、フロントフレーム９ａとバックフレーム９ｂから構成される。ランプＬが水銀放電を利用する場合、ランプの明るさが水銀蒸気圧に影響されるため、筐体９を樹脂などの非導電物質にして保温性を向上させて、発光効率や明るさの立ち上がり時間を改善することも可能である。バックライトシステムのバックフレーム９ｂの底面には、ランプＬとランプＬの背面基板に接触配置されたシート状導電物質８が、固定用部材１１ａ，１１ｂで固定されている。ランプＬの発光均一性をさらに向上させるために、ランプＬの前面基板側には約０．１〜３０ｍｍの間隔をおいて光透過率が４０％以上の拡散板１０が配置される。さらに、発光均一性や輝度を向上させる場合は、拡散板１０の上面に、拡散シート、集光シート、偏光反射シートが配置される。尚、図１２（ｂ）に詳しいように、本実施の形態で採用する平面形蛍光ランプＬにおいては、スペーサ５と放電容器を構成するガラス側壁３との間に僅かな空隙３ａが形成してある。
【００３７】
ランプＬ、シート状導電物質８、バックフレーム９ｂの位置関係は、図１３のように別の形態を採ることが可能である。図１３（ａ）は、ランプＬとシート状導電物質８を近接させた状態でこれらをバックフレーム９ｂの底面から０．ｌｍｍ〜５ｍｍ離間して配置した構成である。図１３（ｂ）は、シート状導電物質８をバックライト筐体９の底面に配置し、シート状導電物質８とランプＬの背面基板とを離間して配置した構成である。図１３（ｃ）は、バックフレーム９ｂの内側の底面にランプＬを近接して配置し、バックライト筐体９の底面の外側にシート状導電物質８を配置した構成である。図１３（ｄ）は、バックフレーム９ｂの内側の底面から０．１ｍｍ〜５ｍｍ離間してランプＬを配置し、バックライト筐体９の底面の外側にシート状導電物質９を配置した構成である。ランプＬが水銀放電を利用する場合、ランプＬの明るさが水銀蒸気圧に影響されるため、バックフレーム９ｂとランプＬとの間に空気層を設けて、ランプの保温性を向上させて、発光効率や明るさの立ち上がり時間を改善することが可能である。
【００３８】
また、図１４に示すように、シート状導電物質８の外部電極６ａ，６ｂ間方向の長さについても調整することができる。図１４（ａ）は図１２（ｂ）と同様であり、ランプＬとランプＬの背面基板に接触配置されたシート状導電物質８を、バックライト筐体９の底面に固定用部材１１ａ，１１ｂにより固定している。そしてこの実施の形態においては、シート状導電物質８は一対の外部電極６ａ，６ｂ間方向の長さを、その両端縁部が一対の外部電極６ａ、６ｂの外縁部よりも外側まで延ばしている。
【００３９】
これに対して、図１４（ｂ）に示した実施の形態の場合、バックライト筐体９の底面に固定用部材１１ａ，１１ｂにより固定しているが、シート状導電物質８は一対の外部電極６ａ，６ｂより内側の領域に限定配置している。すなわち、シート状導電物質８の両端縁部は一対の外部電極６ａ、６ｂの外縁部とほぼ一致し、図１４（ａ）に示した実施の形態のように外側の領域にまでは延びていない。図１４（ｂ）に示されるように、一対の外部電極６ａ，６ｂの外側に対応するランプＬの内部においては、スペーサ５の端部と側壁３間に空隙３ａが形成してある。したがって、シート状導電物質８は、空隙３ａに対応する部分には配置されていない。
【００４０】
また、図１４（ｃ）に示す実施の形態では、図１４（ａ）に示した実施の形態と同様に、ランプＬとランプＬの背面基板に接触配置されたシート状導電物質８を、バックライト筐体９の底面に固定用部材１１ａ，１１ｂにより固定している。そしてシート状導電物質８は、一対の外部電極６ａ，６ｂ対して図１４（ｂ）に示した実施の形態の場合よりもさらに内側の領域に限定配置している。すなわち、シート状導電物質８の両端縁部は一対の外部電極６ａ，６ｂの内縁部とほぼ一致さてある。このような配置により、シート状導電物質８はランプＬの内部におけるスペーサ５の端部と側壁３との間に形成された空隙３ａからさらに離れた位置に配置されることになる。
【００４１】
シート状導電物質８を一対の外部電極６ａ，６ｂ間に設けることにより、一対の外部電極６ａ，６ｂ間に電圧が印加されると、シート状導電物質８への漏洩電流がスペーサ５により形成される放電空間の内側に伸びる。これによって、全ての放電空間の電極間距離が等価的に短くなり、放電開始電圧が一様に低下する。これによって、放電が繋がらない放電空間をなくすことができる。すなわち、本発明の実施の形態による平面形蛍光ランプＬにおいては、スペーサ５と放電容器を構成するガラス側壁３との間に僅かな空隙３ａを形成することにより、隣接する全ての放電空間が相互に連結され、放電容器の排気・封止を一箇所で行うことができるようにしている結果、個々の放電空間が分離絶縁されていない。したがって、従来技術の説明で述べたような、一部の放電空間にしか放電が生成されないという現象が生じ得る。しかし、図１４（ｂ）、図１４（ｃ）に示す実施の形態においては、放電路の端部の空隙３ａより内側に一対の外部電極６ａ，６ｂを形成することで、また、シート状導電物質８を一対の外部電極６ａ，６ｂ間とほぼ同じ長さに、或いはそれらよりも内側に来る長さにすることにより、外部電極６ａ，６ｂからシート状導電物質８に向かう漏洩電流が、全て一対の外部電極６ａ，６ｂの一方から他方に向かう。この結果、一対の外部電極６ａ，６ｂ間に電圧が印加された場合、放電路の端部の空隙３ａを介して隣接する放電路に放電する回り込み放電よりも、一対の外部電極６ａ，６ｂ間の放電路における放電の方が容易に生ずることになる。
【００４２】
この結果、高電圧側の外部電極６ａと低電圧側の外部電極６ｂとの間に、周波数１０ｋＨｚ〜２００ｋＨｚの矩形波電圧、三角波電圧、正弦波電圧又はパルス電圧を印加すると、ランプＬは図７に示すように、スペーサ５によって分割された放電空間の全てに放電路が形成されるため、バックライトは均一な発光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００４３】
【図１】本発明の第１の実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムの斜視図。
【図２】上記実施の形態における平面形放電容器の斜視図。
【図３】図２においてＡ−Ａ線で切断した状態の平面形放電容器の斜視図。
【図４】図２においてＡ−Ａ線で切断した状態の平面形放電容器の背面基板を上にした斜視図。
【図５】上記実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムの分解斜視図。
【図６】上記実施の形態で使用するシート状導電物質の形状例を示す説明図。
【図７】上記実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムの放電動作の説明図。
【図８】本発明の第２の実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムの平面図。
【図９】図８におけるＢ−Ｂ線の断面図。
【図１０】上記実施の形態における平面形放電容器の構成例を示す断面図。
【図１１】上記実施の形態におけるシート状導電物質の設置例の説明図。
【図１２】本発明の第３の実施の形態のバックライトシステムの説明図。
【図１３】本発明の他の実施の形態のバックライトシステムの説明図。
【図１４】本発明のさらに他の実施の形態のバックライトシステムの説明図。
【図１５】第１の従来例の平面形放電ランプの斜視図。
【図１６】第２の従来例の平面形放電ランプの斜視図。
【図１７】第３の従来例の平面形放電ランプの斜視図。
【図１８】上記第３の従来例の平面形放電ランプの平面図。
【図１９】従来例の平面形放電ランプの放電動作の説明図。
【符号の説明】
【００４４】
１ 前面基板
２ 背面基板
３ 側壁部
４ 蛍光体層
５ スペーサ
６ａ，６ｂ 外部電極
７ フリットガラス
８ シート状導電物質
Ｌ 平面形蛍光ランプ
【技術分野】
【０００１】
本発明は平面形放電ランプ点灯システム及びバックライトシステムに関する。
【背景技術】
【０００２】
図１５は特公平６−５０６２４号公報（特許文献１）の図１に記載された、１種の面光源装置である平面形放電ランプの第１の従来例を示している。この従来例の平面形放電ランプは、当該公報の図によれば、発光面となる透光性を有する面板１１０と、該面板１１０の内面に形成された透明導電膜から成る電極１２０と、該透明導電膜１２０が外部電極とされる部分以外を覆って設けられた透光性を有する誘電体層１３０と、前記面板と対向配置された絶縁基板１４０と、該絶縁基板１４０に被着された蛍光体１６０からなり、前面基板１１０と前記絶縁基板１４０とが一体に封着され、内部に希ガスと水銀が封入され、前記絶縁基板１４０に設けられた放電路１５０の断面形状が、面板に向かって開くような勾配や曲面又はそれらを組み合わせた形状に形成したことを特徴としている。この場合、電極１２０は放電路１５０に対し直交して配置される構成である。
【０００３】
図１６は、特開平１０−２２２０８３号公報（特許文献２）に示された平面形放電ランプの第２の従来例の構成であり、電極１９０はスペーサ１００に対し垂直に方向に配置される基本構成は図１５の従来例と同じであるが、電極１９０は前面基板１１０の外壁に設置されている。
【０００４】
図１７は、特開２００３−２１７１５１７号公報（特許文献３）に示された平面形放電ランプの第３の従来例の斜視図であり、図１８はその底面２００の断面図である。この従来例の平面形放電ランプでは、第１電極２６０ａと第２電極２６０ｂの間の放電空間を複数の細型隔壁３００にて複数の放電領域に分割し、前記第１電極２６０ａと第２電極２６０ｂをこれらの分割放電領域と細型隔壁３００に対して垂直方向に配置した構成である。
【０００５】
この第３の従来例の平面形放電ランプの構成は、図１５の従来例、図１６の従来例と同じであるが、電荷集中度を向上して放電効率を向上することができるように、第１電極２６０ａ及び第２電極２６０ｂと一体に形成され、これら第１電極２６０ａ及び第２電極２６０ｂから分割放電領域それぞれの内部に向かって突出するように、互いに対向する第１突出部２６６ａ及び第２突出部２６６ｂを設けている。
【０００６】
ところが、これら第１〜第３の従来例の構成のように、線状のスペーサによって放電空間を多数に分割し、一対の電極を各放電空間の両端部に配置した構成の場合、図１９に示すような問題点があった。図１９は、スペーサ５と電極６ａ，６ｂとの相対的な位置関係を示した平面形放電ランプの断面図であり、電極６ａ，６ｂはランプ外壁に配置されるか、又はランプ内壁に塗布された後に誘電体層でコートされた構成がとられている。ランプの排気やガス導入を容易にするために、スペーサ５は、その両端部が側壁３に接しないように配置され、スペーサ５にて分割されたそれぞれの放電空間が繋がるような構成としているが、電極６ａ，６ｂ間に交流電圧を印加すると、図１９に示すように、分割された放電空間のすべてに放電路が形成されるのではなく、部分的に発光する問題が発生する。図１９で斜線を施した放電空間Ａは放電路が形成され、斜線を施していない放電空間Ｂは放電路が形成されていないことを示している。
【０００７】
この原因は、次の通りである。各放電空間の両端部に作用するように配置される電極６ａと６ｂに電圧を印加すると、全ての放電空間に電界が作用する。各放電空間は、ガラスや蛍光体の表面状態や電極の状態の差異によりランプ始動電圧が若干異なり、始動電圧が最も低い放電空間で放電路が形成される。この放電路が形成された放電空間Ａでは、両端の電極部の表面を覆っている誘電体層（ガラス部）に印加される電圧は、放電路が形成される前は印加電圧と逆極性の電圧が印加されていたが、放電路の形成により印加電圧と同極性に変化し、結果的に当該放電空間Ａに印加される電圧が低減して放電が終了する。
【０００８】
他方、放電空間Ａに隣り合う放電路が形成されていない放電空間Ｂの電極部の表面を覆っている誘電体層（ガラス）では、放電に至っていないので、印加電圧と逆極性の電圧が印加されたままであるが、空間Ａの誘電体層（ガラス）は先述したように同極性に変化しているため、空間Ａと空間Ｂの誘電体層（ガラス）との間に電圧差を生じ、両者の間で放電し、外観的には電極部で放電路が繋がっているように見えてしまう。そして、空間Ｂの誘電体層（ガラス部）の電圧は印加電圧と同極性になるため、結果的には、空間Ｂに作用する電圧が低減し、空間Ｂでは放電開始しない。同様な現象が管全体に発生し、放電空間のすべてに放電路が形成されるということがなく、部分的に発光する問題が発生する。このバリア放電型の平面形放電ランプに特有の上記の放電の回り込み現象は、放電空間で放電を形成するための始動電圧が高い場合に発生しやすい。
【特許文献１】特公平６−５０６２４号公報
【特許文献２】特開平１０−２２２０８３号公報
【特許文献３】特開２００３−２１７１５１７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、放電空間で放電を形成するための始動電圧を低減することで安定した点灯が可能な平面形放電ランプ点灯システム及びバックライトシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
本発明の平面形放電ランプ点灯システムは、透光性の前面基板と背面基板とを対向させて配置し、内部に放電媒体を封入し、前記前面基板と背面基板の少なくともどちらか一方の内側に蛍光体層を形成して面状放電容器を構成し、前記面状放電容器の内部又は外部に、かつ少なくとも一方が前記放電媒体に接触しないように少なくとも一対の電極を設置し、前記前面基板と背面基板との間で前記電極に対して直角方向へ所定の間隔を有するように配置され、前記電極間を複数の放電領域に分割すると共に、両端部が前記面状放電容器を形成する側壁に接しないように配置された複数のスペーサを具備した平面形蛍光ランプと、前記面状放電容器の背面基板に接して又は所定の間隔をあけて配置したシート状導電物質とを備えたことを特徴とするものである。
【００１１】
本発明の平面形放電ランプ点灯システムにおいては、前記一対の電極は、前記複数のスペーサの端部と前記面状放電容器を形成する側壁との間に形成される空隙部分より内側の位置に設けることができる。
【００１２】
また本発明の平面形放電ランプ点灯システムにおいては、前記一対の電極の一方を、前記前面基板又は背面基板の少なくとも一方の外側に設置することで前記放電媒体と接触しないようにすることができる。
【００１３】
また本発明の平面形放電ランプ点灯システムにおいては、前記シート状導電物質は、全面導電物質でシート状のもの、全面導電物質に開口部を設けたもの、又は導電性物質のメッシュ状のもののいずれかとすることができる。
【００１４】
また本発明の平面形放電ランプ点灯システムにおいては、前記シート状導電物質は、前記一対の電極の一方の電極の外側端縁と他方の電極の外側端縁との間より内側の領域に配置したものとすることができる。
【００１５】
さらに本発明の平面形放電ランプ点灯システムにおいては、前記シート状導電物質は、前記複数のスペーサの端部と前記面状放電容器を形成する側壁との間に形成される空隙部分より内側に対向する部分に配置することができる。
【００１６】
本発明のバックライトシステムは、上記いずれかの平面形放電ランプ点灯システムを筐体に収容したことを特徴とするものである。
【００１７】
また本発明のバックライトシステムにおいては、前記筐体は、非導電性物質とすることができる。
【００１８】
さらに本発明のバックライトシステムにおいては、前記シート状導電物質は、前記筐体の内面又は外面に形成することができる。
【発明の効果】
【００１９】
本発明の平面形放電ランプ点灯システム及びバックライトシステムによれば、背面基板側に近接して導体を配置したことによって放電空間部の始動性を向上させ、その結果として、電極部での放電回り込み現象を改善し、スペーサにて分割された放電空間の全てに放電路を形成し、発光面全体で発光させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【００２１】
図１は本発明の第１の実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムの基本構成を示す全体の斜視図であり、図２はそれからシート状導電物質８を取り除いた平面形蛍光ランプＬの前面基板１を上にした斜視図、図３は図２におけるＡ−Ａ線で切欠した斜視図であり、図４はその背面基板を上にした斜視図である。また、図５は本実施の形態の平面形放電ランプＬの分解斜視図である。本実施の形態の平面形放電ランプは、透光性のガラス板から構成される前面基板１と、側壁３とスペーサ５を一体的に形成した背面基板２を略一定の間隔で対向させて配置し、周辺部をフリットガラス７で封着して平面形放電容器を形成している。この平面形放電容器の内部には、放電媒体として、水銀蒸気、キセノン、クリプトン、アルゴン、ネオン、ヘリウムの内の１つを単独もしくは２種類以上を混合して、数ｋＰａから数１００ｋＰａの封入圧力で封入している。
【００２２】
封入ガスの一例としては、水銀蒸気とアルゴンとネオンの混合気体であり、ネオンとアルゴンガスの比率は、発光効率及びランプの低電圧始動を優先させる場合は５０：５０〜９９：１とネオンの配合比を多くした構成とし、発光の立ち上がり速度を優先させる場合は１：９９から５０：５０とアルゴンの配合比を多くした構成を採る。ガス圧力に関しては、１Ｔｏｒｒから７００Ｔｏｒｒの範囲であり、好ましくは、低電圧始動性、発光効率、寿命の観点から、２０〜１００Ｔｏｒｒの範囲に設定される。
【００２３】
前面基板１の外面には、放電容器の端部に沿って、高圧電圧を印加する外部電極６ａと低圧電圧を印加する外部電極６ｂとが、放電媒体と接触しないように配置してある。本実施の形態の場合、外部電極６ａ，６ｂと放電媒体との遮断は、前面基板１自身で行っているが、第２の実施の形態である図８、図９に示す平面形放電ランプシステムのように、誘電体層９を用いて遮断しても構わない。また本実施の形態では両方の電極６ａ，６ｂを放電媒体と遮蔽する構成にしているが、一方の電極を内部電極とし、他方の電極だけを放電媒体と遮断するような構成でも構わない。
【００２４】
また、本実施の形態では、外部電極６ａ，６ｂは前面基板１にのみ設けているが、その他の構成例として、外部電極を背面基板１のみに形成する構成、前面基板１と背面基板２との両面に形成する構成、あるいは、前面基板、背面基板及び前面基板と背面基板を接合する側面に形成する構成を採ることができる。
【００２５】
電極形成方法の一例としては、アルミニウムなどの導電性テープを、導電性接着剤を介して放電容器上に形成する方法、銀などの金属粉と溶剤とバインダとを混合させた導電性ペーストをスクリーン印刷、ディスペンサー塗布又は浸漬により放電容器表面に塗布した後、乾燥、焼成を行って形成する方法、あるいは、スズ、インジウム、ビスマス、鉛、亜鉛、アンチモン、又は銀を少なくとも１種類以上含む半田を加熱溶融したものを、例えば、超音波振動を加えながら浸漬により放電容器の表面に塗布する方法を採ることができる。電極層と放電容器との接着性を高めるために、電極が形成される位置の放電容器の表面を例えばサンドブラスト処理で凹凸粗面化する方法を採ることができる。電極の膜厚は電極材料の抵抗値や電極の塗布面積を考慮して例えば０．１〜３００μｍに設定される。
【００２６】
外部電極６ａ，６ｂの形状は、図示した帯形状とする以外に、スペーサで分離した各放電空間へ向かって凸部を形成するなど、多彩な異形状をとることができる。また、図２〜図５では一対の電極を示したが、複数対の電極構成とすることも可能である。
【００２７】
背面基板２に一体的に形成された細長状のスペーサ５は、所定の間隔で配置されており、前面基板１と背面基板２の間隔を一定に保つと共に、放電容器の内外気圧差によるランプの爆縮による破損を防止する。また、スペーサ５は、電極６ａ，６ｂに対して垂直方向に配置されており、電極６ａ，６ｂ間を複数の放電領域に分割している。さらに、後述する図１３に詳しいように、スペーサ５は、ランプの排気やガス導入を容易にするために、その両端部が側壁３に接しないように空隙３ａが形成されるように配置され、スペーサ５にて分割されたそれぞれの放電空間がこの空隙３ａを介して繋がるような構成としている。
【００２８】
スペーサ５の形状は、図に示す断面台形状以外に、図１０（ａ）に示すように波形状、図１０（ｂ）に示すように半楕円形状など任意形状をとることができる。また、図１０（ｃ）に示すように、前面基板１と背面基板２を平板形状とし、スペーサ５を別個に設けた構成とすることもできる。また、本実施の形態では、背面基板２を熱加工して一体的に形成しているが、図１０（ｄ）、（ｅ）に示すように前面基板１を熱加工して平板の背面基板２と張り合わせる構成や、図１０（ｆ）に示すように前面基板１と背面基板２を共に熱加工して張り合わせる構成もとることができる。スペーサ５によって分割された放電空間の大きさは、要求されるランプの始動電圧・管電圧及び光量に応じて設定され、例えば、放電空間の幅Ｗが０．５〜３０ｍｍの範囲で、放電空間の高さＨが０．５〜６ｍｍの範囲で設定される。図１０では、各放電空間の面積を全て同一にした場合を図示しているが、放電空間の断面積を場所によって異なる構成とすることも可能である。
【００２９】
前面基板１、背面基板２、スペーサ５の内側には、それぞれ、蛍光体層４が形成されている。この蛍光体層４は、放電によって放電媒体から放射される紫外線を可視光に変換する。蛍光体層４は、一般照明、冷陰極蛍光ランプ、ＰＤＰに使用される蛍光体が用いられ、単独で又は発光色の異なる数種類の蛍光体が混合して塗布されている。尚、異なる発光色の蛍光体を個別に縞状に又はドット状に塗布して蛍光体層４を構成することもできる。
【００３０】
光を取り出す側の前面基板１の蛍光体層４は、背面基板２側からの蛍光体の光を損失なく透過させるために、例えば、平均粒径（１次粒子径）が約２．５μｍ以上の蛍光体粒子を、厚さ５〜１５μｍと薄く形成する構成とする。一方、光を取り出さない背面基板２の蛍光体層４は、光を前面基板１側に多く導くために、例えば、平均粒径が約２．５μｍ以下の蛍光体粒子を厚さ３０〜１００μｍと厚く形成して、反射輝度を高める構成とする。
【００３１】
また、図示していないが、電極が形成されている基板において、電極が形成される位置の基板内側に蛍光体層がある場合、蛍光体層が放電によりスパッタリングされて、ガスの消耗速度を速めることから、電極部が設けられる位置の基板内側には蛍光体層を設けない構成が一般的である。
【００３２】
この背面基板２と蛍光体層４との間には、微粒子の金属酸化物の反射層を形成することもできる。また、前面基板１及び背面基板２と蛍光体層４との間に、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどの金属酸化物の層を形成し、水銀がガラス表面に移動するのを防止したり、放電から発生する紫外線を吸収したりすることも可能である。尚、本実施の形態では、両方のガラス基板１，２の内面に蛍光体層４を設けているが、どちらか一方の蛍光体層を省略する構成にすることもできる。また、前面基板１と背面基板２の両方の蛍光体層４を省略して、放電媒体から放射される可視光を直接利用する形態も採ることができる。
【００３３】
図１に示すように、上記平面形蛍光ランプＬの背面基板側には、例えば、ＳＵＳ、Ｆｅなどの金属板、又はＡｇなどの導電ペーストを塗布した樹脂などのフィルム、シート又はプレートなどが近接した状態で配置されている。高電圧側の外部電極６ａと低電圧側の外部電極６ｂとの間に、周波数１０〜２００ｋＨｚの矩形波電圧、三角波電圧、正弦波電圧又はパルス電圧を印加すると、図７に示すように、スペーサ５によって分割された放電空間の全てに放電が形成される。
【００３４】
図１１に示すように、シート状導電物質８がランプＬのサイズと同等の大きさで、全面導電性物質でシート状に敷き詰められた構成の場合、ランプＬが大型化すると、ランプＬから近接導体への漏れ電流が大きくなって印加電圧が上昇する問題が発生する。
【００３５】
平面形蛍光ランプＬとシート状導電物質８との距離を増やすことによって漏れ電流を低減することができ、この離間距離は約０．１〜１０ｍｍまで増やしても、本発明の効果は得られる。また、シート状導電物質８の形状を変化させて、導電物質の面積を小さくすることによって漏れ電流の低減は可能である。シート形状の一例としては、図６（ａ）に示すように丸型形状の開口部８Ａを設けたもの、図６（ｂ）に示すように細長の開口部８Ｂを設けたもの、図６（ｃ）に示すようにメッシュ形状としたもの、図６（ｄ）に示すように電極近傍部にのみ櫛状の導電部８Ｃを設けたものなど、開口率（＝開口部面積／シートの外周面積）を大きくすると、ランプＬからシート状導電物質８への漏れ電流を低減できる。また、図６（ｅ）、（ｆ）に示すように、漏れ電流が特に大きくなる外部電極が形成される位置にシート状導電物質８を設けない構成も有効である。開口径、開口形状、開口数、配置、開口率は様々な形態をとることができる。また、シート状導電物質８は、接地状態にする場合と接地しない場合の両方の形態をとることができる。
【００３６】
本発明の第３の実施の形態として、上記第１の実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムを基本構成として利用したバックライトシステムの構成を図１２に示す。バックライトシステムの筐体９は、フロントフレーム９ａとバックフレーム９ｂから構成される。ランプＬが水銀放電を利用する場合、ランプの明るさが水銀蒸気圧に影響されるため、筐体９を樹脂などの非導電物質にして保温性を向上させて、発光効率や明るさの立ち上がり時間を改善することも可能である。バックライトシステムのバックフレーム９ｂの底面には、ランプＬとランプＬの背面基板に接触配置されたシート状導電物質８が、固定用部材１１ａ，１１ｂで固定されている。ランプＬの発光均一性をさらに向上させるために、ランプＬの前面基板側には約０．１〜３０ｍｍの間隔をおいて光透過率が４０％以上の拡散板１０が配置される。さらに、発光均一性や輝度を向上させる場合は、拡散板１０の上面に、拡散シート、集光シート、偏光反射シートが配置される。尚、図１２（ｂ）に詳しいように、本実施の形態で採用する平面形蛍光ランプＬにおいては、スペーサ５と放電容器を構成するガラス側壁３との間に僅かな空隙３ａが形成してある。
【００３７】
ランプＬ、シート状導電物質８、バックフレーム９ｂの位置関係は、図１３のように別の形態を採ることが可能である。図１３（ａ）は、ランプＬとシート状導電物質８を近接させた状態でこれらをバックフレーム９ｂの底面から０．ｌｍｍ〜５ｍｍ離間して配置した構成である。図１３（ｂ）は、シート状導電物質８をバックライト筐体９の底面に配置し、シート状導電物質８とランプＬの背面基板とを離間して配置した構成である。図１３（ｃ）は、バックフレーム９ｂの内側の底面にランプＬを近接して配置し、バックライト筐体９の底面の外側にシート状導電物質８を配置した構成である。図１３（ｄ）は、バックフレーム９ｂの内側の底面から０．１ｍｍ〜５ｍｍ離間してランプＬを配置し、バックライト筐体９の底面の外側にシート状導電物質９を配置した構成である。ランプＬが水銀放電を利用する場合、ランプＬの明るさが水銀蒸気圧に影響されるため、バックフレーム９ｂとランプＬとの間に空気層を設けて、ランプの保温性を向上させて、発光効率や明るさの立ち上がり時間を改善することが可能である。
【００３８】
また、図１４に示すように、シート状導電物質８の外部電極６ａ，６ｂ間方向の長さについても調整することができる。図１４（ａ）は図１２（ｂ）と同様であり、ランプＬとランプＬの背面基板に接触配置されたシート状導電物質８を、バックライト筐体９の底面に固定用部材１１ａ，１１ｂにより固定している。そしてこの実施の形態においては、シート状導電物質８は一対の外部電極６ａ，６ｂ間方向の長さを、その両端縁部が一対の外部電極６ａ、６ｂの外縁部よりも外側まで延ばしている。
【００３９】
これに対して、図１４（ｂ）に示した実施の形態の場合、バックライト筐体９の底面に固定用部材１１ａ，１１ｂにより固定しているが、シート状導電物質８は一対の外部電極６ａ，６ｂより内側の領域に限定配置している。すなわち、シート状導電物質８の両端縁部は一対の外部電極６ａ、６ｂの外縁部とほぼ一致し、図１４（ａ）に示した実施の形態のように外側の領域にまでは延びていない。図１４（ｂ）に示されるように、一対の外部電極６ａ，６ｂの外側に対応するランプＬの内部においては、スペーサ５の端部と側壁３間に空隙３ａが形成してある。したがって、シート状導電物質８は、空隙３ａに対応する部分には配置されていない。
【００４０】
また、図１４（ｃ）に示す実施の形態では、図１４（ａ）に示した実施の形態と同様に、ランプＬとランプＬの背面基板に接触配置されたシート状導電物質８を、バックライト筐体９の底面に固定用部材１１ａ，１１ｂにより固定している。そしてシート状導電物質８は、一対の外部電極６ａ，６ｂ対して図１４（ｂ）に示した実施の形態の場合よりもさらに内側の領域に限定配置している。すなわち、シート状導電物質８の両端縁部は一対の外部電極６ａ，６ｂの内縁部とほぼ一致さてある。このような配置により、シート状導電物質８はランプＬの内部におけるスペーサ５の端部と側壁３との間に形成された空隙３ａからさらに離れた位置に配置されることになる。
【００４１】
シート状導電物質８を一対の外部電極６ａ，６ｂ間に設けることにより、一対の外部電極６ａ，６ｂ間に電圧が印加されると、シート状導電物質８への漏洩電流がスペーサ５により形成される放電空間の内側に伸びる。これによって、全ての放電空間の電極間距離が等価的に短くなり、放電開始電圧が一様に低下する。これによって、放電が繋がらない放電空間をなくすことができる。すなわち、本発明の実施の形態による平面形蛍光ランプＬにおいては、スペーサ５と放電容器を構成するガラス側壁３との間に僅かな空隙３ａを形成することにより、隣接する全ての放電空間が相互に連結され、放電容器の排気・封止を一箇所で行うことができるようにしている結果、個々の放電空間が分離絶縁されていない。したがって、従来技術の説明で述べたような、一部の放電空間にしか放電が生成されないという現象が生じ得る。しかし、図１４（ｂ）、図１４（ｃ）に示す実施の形態においては、放電路の端部の空隙３ａより内側に一対の外部電極６ａ，６ｂを形成することで、また、シート状導電物質８を一対の外部電極６ａ，６ｂ間とほぼ同じ長さに、或いはそれらよりも内側に来る長さにすることにより、外部電極６ａ，６ｂからシート状導電物質８に向かう漏洩電流が、全て一対の外部電極６ａ，６ｂの一方から他方に向かう。この結果、一対の外部電極６ａ，６ｂ間に電圧が印加された場合、放電路の端部の空隙３ａを介して隣接する放電路に放電する回り込み放電よりも、一対の外部電極６ａ，６ｂ間の放電路における放電の方が容易に生ずることになる。
【００４２】
この結果、高電圧側の外部電極６ａと低電圧側の外部電極６ｂとの間に、周波数１０ｋＨｚ〜２００ｋＨｚの矩形波電圧、三角波電圧、正弦波電圧又はパルス電圧を印加すると、ランプＬは図７に示すように、スペーサ５によって分割された放電空間の全てに放電路が形成されるため、バックライトは均一な発光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００４３】
【図１】本発明の第１の実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムの斜視図。
【図２】上記実施の形態における平面形放電容器の斜視図。
【図３】図２においてＡ−Ａ線で切断した状態の平面形放電容器の斜視図。
【図４】図２においてＡ−Ａ線で切断した状態の平面形放電容器の背面基板を上にした斜視図。
【図５】上記実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムの分解斜視図。
【図６】上記実施の形態で使用するシート状導電物質の形状例を示す説明図。
【図７】上記実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムの放電動作の説明図。
【図８】本発明の第２の実施の形態の平面形放電ランプ点灯システムの平面図。
【図９】図８におけるＢ−Ｂ線の断面図。
【図１０】上記実施の形態における平面形放電容器の構成例を示す断面図。
【図１１】上記実施の形態におけるシート状導電物質の設置例の説明図。
【図１２】本発明の第３の実施の形態のバックライトシステムの説明図。
【図１３】本発明の他の実施の形態のバックライトシステムの説明図。
【図１４】本発明のさらに他の実施の形態のバックライトシステムの説明図。
【図１５】第１の従来例の平面形放電ランプの斜視図。
【図１６】第２の従来例の平面形放電ランプの斜視図。
【図１７】第３の従来例の平面形放電ランプの斜視図。
【図１８】上記第３の従来例の平面形放電ランプの平面図。
【図１９】従来例の平面形放電ランプの放電動作の説明図。
【符号の説明】
【００４４】
１ 前面基板
２ 背面基板
３ 側壁部
４ 蛍光体層
５ スペーサ
６ａ，６ｂ 外部電極
７ フリットガラス
８ シート状導電物質
Ｌ 平面形蛍光ランプ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
透光性の前面基板と背面基板とを対向させて配置し、内部に放電媒体を封入し、前記前面基板と背面基板の少なくともどちらか一方の内側に蛍光体層を形成して面状放電容器を構成し、前記面状放電容器の内部又は外部に、かつ少なくとも一方が前記放電媒体に接触しないように少なくとも一対の電極を設置し、前記前面基板と背面基板との間で前記電極に対して直角方向へ所定の間隔を有するように配置され、前記電極間を複数の放電領域に分割すると共に、両端部が前記面状放電容器を形成する側壁に接しないように配置された複数のスペーサを具備した平面形蛍光ランプと、
前記面状放電容器の背面基板に接して又は所定の間隔をあけて配置したシート状導電物質とを備えたことを特徴とする平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項２】
前記一対の電極は、前記複数のスペーサの端部と前記面状放電容器を形成する側壁との間に形成される空隙部分より内側の位置に設けたことを特徴とする請求項１に記載の平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項３】
前記一対の電極の一方を、前記前面基板又は背面基板の少なくとも一方の外側に設置することで前記放電媒体と接触しないようにしたことを特徴とする請求項１又は２に記載の平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項４】
前記シート状導電物質は、全面導電物質でシート状のもの、全面導電物質に開口部を設けたもの、又は導電性物質のメッシュ状のもののいずれかであることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項５】
前記シート状導電物質は、前記一対の電極の一方の電極の外側端縁と他方の電極の外側端縁との間より内側の領域に配置したことを特徴とする請求項４に記載の平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項６】
前記シート状導電物質は、前記複数のスペーサの端部と前記面状放電容器を形成する側壁との間に形成される空隙部分より内側に対向する部分に配置したことを特徴とする請求項４に記載の平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項７】
請求項１〜６のいずれかに記載の平面形放電ランプ点灯システムを筐体に収容して成るバックライトシステム。
【請求項８】
前記筐体は、非導電性物質であることを特徴とする請求項７に記載のバックライトシステム。
【請求項９】
前記シート状導電物質は、前記筐体の内面又は外面に形成したことを特徴とする請求項８に記載のバックライトシステム。
【請求項１】
透光性の前面基板と背面基板とを対向させて配置し、内部に放電媒体を封入し、前記前面基板と背面基板の少なくともどちらか一方の内側に蛍光体層を形成して面状放電容器を構成し、前記面状放電容器の内部又は外部に、かつ少なくとも一方が前記放電媒体に接触しないように少なくとも一対の電極を設置し、前記前面基板と背面基板との間で前記電極に対して直角方向へ所定の間隔を有するように配置され、前記電極間を複数の放電領域に分割すると共に、両端部が前記面状放電容器を形成する側壁に接しないように配置された複数のスペーサを具備した平面形蛍光ランプと、
前記面状放電容器の背面基板に接して又は所定の間隔をあけて配置したシート状導電物質とを備えたことを特徴とする平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項２】
前記一対の電極は、前記複数のスペーサの端部と前記面状放電容器を形成する側壁との間に形成される空隙部分より内側の位置に設けたことを特徴とする請求項１に記載の平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項３】
前記一対の電極の一方を、前記前面基板又は背面基板の少なくとも一方の外側に設置することで前記放電媒体と接触しないようにしたことを特徴とする請求項１又は２に記載の平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項４】
前記シート状導電物質は、全面導電物質でシート状のもの、全面導電物質に開口部を設けたもの、又は導電性物質のメッシュ状のもののいずれかであることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項５】
前記シート状導電物質は、前記一対の電極の一方の電極の外側端縁と他方の電極の外側端縁との間より内側の領域に配置したことを特徴とする請求項４に記載の平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項６】
前記シート状導電物質は、前記複数のスペーサの端部と前記面状放電容器を形成する側壁との間に形成される空隙部分より内側に対向する部分に配置したことを特徴とする請求項４に記載の平面形放電ランプ点灯システム。
【請求項７】
請求項１〜６のいずれかに記載の平面形放電ランプ点灯システムを筐体に収容して成るバックライトシステム。
【請求項８】
前記筐体は、非導電性物質であることを特徴とする請求項７に記載のバックライトシステム。
【請求項９】
前記シート状導電物質は、前記筐体の内面又は外面に形成したことを特徴とする請求項８に記載のバックライトシステム。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１２】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図１１】
【図１３】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１２】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図１１】
【図１３】
【公開番号】特開２００７−１８９９９（Ｐ２００７−１８９９９Ａ）
【公開日】平成１９年１月２５日（２００７．１．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−６６４９７（Ｐ２００６−６６４９７）
【出願日】平成１８年３月１０日（２００６．３．１０）
【出願人】（０００１１１６７２）ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年１月２５日（２００７．１．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年３月１０日（２００６．３．１０）
【出願人】（０００１１１６７２）ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Ｆターム（参考）】
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