説明

平面状構造物

本発明は、支持層と視層とを有する平面状構造物に関し、その際に支持層はテキスタイルを有し、かつテキスタイルは生分解性ポリマー製ヤーンを有する。視層は、生分解性フィルムを有し、かつ別個の層として支持層上に施与されている。テキスタイルのヤーンは、DIN EN ISO 2062により測定して40cN/texよりも大きい強さを有する。さらに、本発明は、平面状構造物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面状構造物(Flaechengebilde)に関する。
【0002】
生分解性材料製の平面状構造物は一般的に知られている。刊行物EP 1 418 201には、例えば、繊維不織布、フィルム又はシートの形で形成されていてよい生分解性プラスチック組成物が提案されている。
【0003】
しかしながら、公知の平面状構造物の場合に不利であるのは、平面状構造物が、それらの全伸長にわたって一片状であり、かつ見たところ同じ性質を備えていることである。例えば、生分解性平面状構造物は、技術水準によれば、一様な安定性を有する。
【0004】
刊行物DE 43 20 041からは、テキスタイルファブリックの製造に使用されるモノフィラメントヤーンが知られている。モノフィラメントヤーンは、その際、生分解性ポリマーから製造されたものである。しかしながら、この刊行物に記載のモノフィラメントヤーンの場合に不利であるのは、モノフィラメントヤーンが、その大きな直径により、特に堅くかつ重く、かつ前記モノフィラメントから製造される支持材料が、柔軟性がありかつ軽い対象物用の支持材料としての使用には不十分にのみ適していることである。
【0005】
故に、本発明の課題は、特に少ない面積比質量を高い強さと同時に有し、かつ対象物にも適合できるように十分に柔軟性である平面状構造物を提供することであった。
【0006】
この課題は、請求項1の特性を有する平面状構造物によって解決される。
【0007】
少なくとも40cN/texの強さ(DIN EN ISO 2062もしくはASTM D 885により測定)を有するマルチフィラメントヤーンにより支持層を構成することによって、有利には、支持層の高い安定性は、支持層中での1cm当たり少数のヤーンを同時に使用する場合に達成されることができる。1cm当たりの少ない数のヤーンにより、有利には、支持層の面積比質量は減少され、かつ同時に製造方法が単純化され、かつ促進されることができる。マルチフィラメントヤーンの使用は、支持層として柔軟性のある − すなわち適合可能な対象物の製造を可能にする。マルチフィラメントヤーンにより、支持層は、例えば、支持層が破壊又は損傷されることなく、視層(Sichtschicht)を施与又は提供するために、より容易に曲げることができる。支持層を構成するためにモノフィラメント − これらは通例太い断面を有する − を使用する場合には、支持層の柔軟性は、支持層を損傷せずには、著しく低下される。
【0008】
本発明による平面状構造物の多層構成により、平面状構造物は、そのうえ、平面状構造物のそれぞれの使用目的により良好に適合されることができる。例えば、支持層のテキスタイルは、使用目的に応じて、さまざまに堅固に織られ、編まれ、又は置かれることができるので、視層用の同じフィルムの場合にさまざまに安定な平面状構造物が生じる。さらに、視層はさまざまに美的に形成されることができ、それにより、同じ支持層、しかし美的に異なる視層の使用の場合に、異なる平面状構造物が生じうる。そのような種類の"モジュール設計原理(Baukastenprinzips)"は、特に、生分解性平面状構造物の態様に関して高い変更可能性と同時に貯蔵コストの減少のために有利である。
【0009】
支持層は好ましくは、支持層が視層を、例えば折り曲がることなく保持できるように安定に形成されている。視層としてのフィルムの場合に、支持層は、例えば、フィルムと支持層との結合の際に、こうして形成された平面状構造物がひとりでに丸まらないように安定である。
【0010】
好ましくは、支持層は工業用支持層として形成されている。工業用支持層は、主に及び好ましくは完全に工業用ヤーンからなる。工業用ヤーンは、テキスタイルヤーンと比べて、より高い強さを有する。工業用ヤーンの強さは、DIN EN ISO 2062(ASTM D 885)により測定して40cN/tex超である。
【0011】
支持層のマルチフィラメントヤーンは、好ましくは45cN/texより大きい、及び極めて特に好ましくは50cN/texより大きい強さを有する。さらに好ましくは、支持層のマルチフィラメントヤーンは、フィラメント210本を有する1100dtexのヤーンである。破壊力は、好ましくは54.1Nであり、かつ破壊強さ(単に強さとも呼ばれる)は好ましくは47.5cN/texである。さらに、破断伸びは好ましくは35%であり、かつ収縮は、1mN/texの予備張力で130℃で2分間にわたって測定して好ましくは3.5%である。破壊力、破断伸び及び破壊強さは、DIN EN ISO 2062により測定されたものである。
【0012】
特に好ましくは、支持層を製造するためのマルチフィラメントヤーンは、ヤーンDiolen (登録商標) 150 BT、1100 dtex f210である。挙げたヤーンは、ポリ乳酸からなり、かつPolyamid & Polyester High Performance社から販売されている。支持層は、同じように好ましくは少なくとも1種のヤーンからなってよく、その繊維は好ましくはNatureWorks LLC社製のポリマー4032 D及び/又は6400 Dから製造されている。
【0013】
視層は、好ましくは、平面状構造物の、観察者により見られるかもしくは見られるはずである層である。例えば、ポスターの印刷された表面は、視層である。視層は、好ましくは、既に挙げたフィルムのみからなり、そのために以下で、視層及びフィルムという概念は同義で使用される。
【0014】
支持層は、好ましい一実施態様において、専らテキスタイルからなる。支持層のテキスタイルは、例えばファブリック、メリヤス(Gewirke)、スクリム(Gelege)又はニット(Gestrick)(一方向又は多方向)又は不織布(Vlies)であってよい。
【0015】
特に好ましくは、支持層及び/又は視層は完全に生分解性ポリマーからなり、それにより、視層及び/又は支持層は生分解性である。
【0016】
生分解性の視層及び/又は支持層は、視層及び/又は支持層が本質的に完全に生分解性材料から製造される場合であると理解されるべきである。視層及び支持層は、視層及び/又は支持層の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは90%、極めて特に好ましくは100%が生分解性材料から製造されている場合に、本質的に完全に生分解性材料から製造される。
【0017】
生分解性材料は、DIN規格13432:2000-12のガイドラインに従い微生物、酵素又は加水分解により、約6〜10週かけて大コンポスト化装置中で分解されることができるあらゆる材料であると理解されるべきである。生分解性材料は、例えば再生可能原料由来のバイオプラスチック、添加剤の添加したポリオレフィンフィルム、例えばポリエチレン、並びに石油をベースとする材料、例えばBASF社製Ecoflexである。
【0018】
特に好ましくは、視層及び/又は支持層は完全にNatureWorks社製PLA(Polylactic Acid=ポリ乳酸)ポリマー4032D又はNatureWorks社製のポリマー6400D又はここで挙げたポリマーの混合物から製造される。同様に特に好ましくは、支持層は、PLAポリマー6400Dペレットを溶融させ、この溶融物をヤーンに紡糸することにより製造される。極めて特に好ましくは、視層は、PLAポリマー4032Dペレットを溶融させ、この溶融物をフィルムに加工することにより製造される。
【0019】
平面状構造物は、生分解性テキスタイルから及び生分解性視層から構成されていてよいので、以下で生分解性平面状構造物についても述べられている。その際に、生分解性平面状構造物が、前記の定義によれば生分解性ではない層又は材料も含有していてよいと理解される。好ましくは、支持層は、生分解性ポリ乳酸製ヤーン製のテキスタイルを有する。特に好ましくは、支持層は、その際、完全にテキスタイルからなり、その際にテキスタイルは完全にポリ乳酸製ヤーンからなる。ポリ乳酸の使用は特に有利である、それというのも、ポリ乳酸の製造及び加工は、既に良好に研究されており、かつポリ乳酸は本発明の範囲内の生分解性材料だからである。
【0020】
支持層を形成するためのテキスタイルとして、例えば、メリヤス、不織布、ファブリック又はスクリムが使用されることができる。ファブリック及びスクリムは、格子構造の実施態様であり、かつ併せて格子とも呼ばれる。
【0021】
好ましくは、ファブリックとして亜麻織物(Leinwandgewebe)が使用される。亜麻織物は、好ましくは、約170g/m2の面積比質量でたて方向に7Fd/cm(1cm当たりのヤーン)及びよこ方向に7Fd/cm(7/7 たて/よこ)を有していてよい。ファブリックの製造のために、好ましくは、1100dtexの線密度及び475mN/texの強さを有するマルチフィラメントヤーンが使用される。
【0022】
メリヤスは、好ましくは、約170g/m2の面積比質量でたて方向及びよこ方向に7.1ヤーン/cm(もしくは18インチ/18インチ たて/よこ)を有していてよい。メリヤスの製造のために、好ましくは、1100dtexの線密度及び475mN/texの強さを有するマルチフィラメントヤーンが使用される。付加的に、たて及びよこについて使用されるヤーンと同じ収縮特性を有し、80dtexの線密度を有する結合ヤーンが使用される。
【0023】
スクリムは、好ましくは、約110g/m2の面積比質量で4.9ヤーン/cmを有していてよい。スクリムの製造のために、同様に好ましくは、1100dtexの線密度及び475mN/texの強さを有するマルチフィラメントヤーンが使用される。
【0024】
さらに好ましくは、視層のフィルムは、ポリ乳酸を有する。フィルムは、その際、例えばポリ乳酸グラニュール又は粉末から、熱成形してフィルムにする際に製造されることができる。特に好ましいのは、この場合に、完成したフィルムが完全にポリ乳酸及び/又はコハク酸及び1,4−ブタンジオールのポリエステル(生分解性脂肪族ポリエステル)からなる場合である。フィルムは、例えば30μm〜1mmの厚さを有する。
【0025】
生分解性平面状構造物の製造のために、視層として既に完成したフィルムが、既に完成して形成された支持層上に置かれることが理解できる。生分解性平面状構造物の形成に個々の層が使用されることを説明するために、呼称"別個のフィルム"もしくは"別個の視層"も使用される。
【0026】
適したフィルムは、インフレーションフィルム押出もしくはフィルムインフレーション法を用いて製造される。この種の方法は、当業者にそれ自体として知られている。フィルムをインフレートするために、押出機の端部にリングノズルが後接続される。可塑化されたプラスチック材料は、チューブへとプレスされ、空気で当初の直径の何倍にも膨脹され、かつ高められた速度で上へ向かって取り出される。長手方向及び横方向の引張だけでなく、冷却の時点も、フィルム厚を通じて決定する。平たく折り畳まれたチューブはついで、チューブフィルムとして又は同時に切断されて平面フィルムとしてのいずれかで巻き取られる。デンプンベースのフィルムは、大量にフィルムインフレーション押出機で製造される。
【0027】
好ましくは、視層の別個のフィルムは、積層(Laminieren)、貼合せ(Kaschieren)又はカレンダー加工により、生分解性平面状構造物の支持層上へ施与される。特に好ましくは、視層と支持層との結合は熱貼合せにより行われる。この場合に、視層及び支持層は圧力及び加熱下に、前記の2つの層の少なくとも1種が溶融し始め、かつ層間の接着剤として作用することによって、互いに融合する。したがって熱貼合せの場合に、別の接着剤は必要とされない。しかしながら、さらに、視層及び支持層が積層過程により互いに結合されることも考えられる。積層過程の際に、付加的な接着剤が使用され、その際に接着剤は積層過程において加熱され、かつそれにより粘着性になるか(熱積層)又は既に粘着性である(冷積層)。熱積層の場合に、視層及び/又は支持層は、好ましくは接着剤を有する付加的な接着層を有し、接着層は、視層及び/又は支持層と(積層過程の前に)接触される。
【0028】
これに反してカレンダー加工の際に、溶融物は、重なり合って配置され、加熱された複数の鋼製ロールのシステムを通り抜ける。その際に、25〜1000μmのフィルム厚が生じる。
【0029】
好ましくは、視層のフィルム(すなわちフィルム)は、印刷可能な表面を有する。フィルムの表面は、印刷インキをより良好に収容することができるように特別に加工されていてよい。例えば、フィルムは、特別なコーティング/塗膜を有していてよいので、フィルムはインクジェットプリンターの使用に適している。他の一例において、フィルムは、フィルムのさらなる加工をスクリーン印刷又はプロッター印刷を用いて可能にするために、表面の一方を粗面化することができる。
【0030】
フィルムが生分解性平面状構造物の形成のために支持層上に置かれるか又は生分解性平面状構造物がその製造後にはじめて印刷される場合に、フィルムが既に印刷されていることが考えられる。印刷の保護のために、印刷の上に(及び印刷の下にも)、例えば、印刷を損傷前に − 例えば視層と支持層との結合の製造中に − 保護する保護層が設けられていてよい。そのような保護層は、例えば、視層と支持層との結合の製造後又はフィルムの規定位置での生分解性平面状構造物の取り付け後に除去されることができるか又はその結合の製造の際に − 例えば溶融又は蒸発により溶解されることができる。
【0031】
支持層及び視層は、同じ材料から構成されていてよく、及び/又は同じ融点を有していてよい。熱貼合せの場合に、視層及び支持層を均一に加熱する際、この場合に視層並びに支持層が溶け始めることになり、それにより、視層及び支持層の溶融物から、挙げた層間の結合が生じる。
【0032】
もちろん、層間の結合を製造するために、層のうちの1つのみが加熱され、かつ溶け始めることも考えられる。
【0033】
しかし、好ましくは、視層は、支持層とは異なる融点を有する。例えば、支持層は、視層の生分解性ポリマーよりも高い融点を有する生分解性ポリマーからなっていてよい。これにより、視層は、支持層がまだ溶融しない温度で溶融する。そのような視層及びそのような支持層の熱貼合せの場合に、視層は支持層上に置かれ、かつ双方の層は、視層の融点を上回る温度で加圧下に短期間、互いにプレスされることになる。選択される温度により、視層は、表面上(加熱の短期間のみの選択による)溶融し始めるのに対し、支持層は溶融し(始め)ない。視層の製造される溶融物は、視層と支持層との接着剤として利用される。
【0034】
視層よりも低い融点を有する生分解性ポリマー製の支持層からなることも考えられる。この場合に、熱貼合せの場合に支持層は少なくとも表面上溶融し始めることができ(それに対し視層は溶融しない)、それにより、支持層の溶融物は、視層と支持層との結合の製造のための接着剤として利用される。
【0035】
貼合せ、積層の際並びにカレンダー加工の際に、層(視層又は支持層)のうちの1つのみが加熱され、それに反して他の層は加熱されないことが考えられる。例えば、生分解性平面状構造物の製造のために支持層は、加熱可能な第一プレス上に及び視層は、加熱可能でないか又はむしろ冷却可能な第二プレス上に置かれることができる。第一及び第二のプレスは、層間の結合の製造のために重なり合ってプレスされる。
【0036】
視層及び支持層の結合は、結合の製造のための挙げた全ての方法の場合に堅固なので、視層及び支持層が、もはや力作用(及び前記層のうち少なくとも1つの破壊)なしでは、互いに分離されることができない。
【0037】
本発明のさらなる対象は、これまで記載された生分解性平面状構造物の製造方法であり、その際に前記方法は請求項8の特徴を有する。
【0038】
好ましくは、生分解性平面状構造物を製造するために、第一工程において支持材料としてのテキスタイルが生分解性ポリマー製のヤーンから製造される。ヤーンは、一段階又は二段階の方法においてポリ乳酸から製造されることができる。
【0039】
ヤーンを製造するための一段階の製造方法は、次のように記載されることができる:
一段階の方法の場合に、好ましくは、1100dtexの線密度及びフィラメント210本を有するヤーンが生じる。使用されるポリ乳酸(NatureWorks製ポリマー4032D又は6400D)は、210℃で溶融され、引き続き押し出されたヤーンは、1:4.3の比で延伸される。こうして製造されたヤーンの巻き取り速度は、毎分1618mであり、かつ緩和は、1:0.92である。こうして製造されたヤーンは、43.6cN/texの強さ及び37.6%の伸びを有する。150℃での収縮(hot-air-shrinkage)は19.2%である。
【0040】
ヤーンを製造するための2段階の製造方法は、次のように記載されることができる:
二段階の方法の場合に、好ましくは、1100dtexの線密度及びフィラメント210本を有するヤーンが生じる。使用されるポリ乳酸(NatureWorks製ポリマー4032D又は6400D)は、210℃で溶融され、引き続き押し出されたヤーンは、1:4.2の比で延伸される。こうして製造されたヤーンの巻き取り速度は、毎分800mであり、かつ緩和は、1:0.93である。こうして製造されたヤーンは、47.5cN/texの強さ及び35%の伸びを有する。150℃での収縮(熱風収縮)は15%である。1:5.35の延伸及び1:0.93の緩和の場合に、二段階の製造方法からのヤーンは、52.3cN/texの強さ及び33.1%の伸びを有する。収縮(熱風収縮)は、この場合に150℃で4.6%である。
【0041】
さらに、好ましくは第二工程において、視層はフィルムの形で生分解性材料から製造される。第三工程において、視層及び支持層は、重なり合って置かれ、かつ互いに結合される。支持層のテキスタイル及び視層のフィルムの態様については、既に挙げた可能性があてはまる。
【0042】
視層として、次の生分解性ポリマーフィルムが使用されることができる:
Ecoflex(BASF、融点115℃、フィルム厚50μm〜100μm)
PLAフィルム(融点170℃)、例えばPLAポリマー4032 D。
Bionolle; Showa Highpolymer(融点115℃)
Mater-Bi(融点 115℃)。
【0043】
好ましくは、視層及び支持層の結合は互いに、層(支持層及び視層)の貼合せ、積層又はカレンダー加工により行われる。
【0044】
層の貼合せ、積層又はカレンダー加工のために、好ましくは、支持層及び/又は視層は加熱される。熱貼合せの場合に、その際、層のうちの1つが少なくとも部分的に溶融し始め、それに反して他の層が溶融しない場合が特に好ましい。
【0045】
一実施態様において、結合の製造のために、視層は加熱される。ここでも、(ここで記載されたように)視層のみが加熱されることができ、又は視層及び支持層は加熱され、その際に視層のみが溶融し始めるか又は(視層の)接着層が溶融する。この実施態様において、支持層は溶融しない、すなわち、支持層は溶融し始めもしない。他の実施態様において、支持層のみが加熱されるか又は支持層及び視層が加熱され、その際に支持層(又は支持層の接着層)のみが溶融するかもしくは溶融し始める。さらに他の実施態様において、視層並びに支持層は貼合せ、積層又はカレンダー加工のために、視層並びに支持層が部分的に溶融し始めるように加熱される。視層の溶融物及び支持層の溶融物は、その際に、熱貼合せの場合の接着剤として作用する。積層の場合に、視層並びに支持層は、付加的な接着層を有していてよく、接着層は、双方の層の加熱の際に、双方の層自体が溶融することなく溶融する。
【0046】
好ましくは、生分解性平面状構造物の観察者にとって可視の視層の表面は、支持層との結合に処理される。しかしながら、視層は − 支持層と結合される前に − 処理にかけられることも考えられる。そのような処理は、例えば、視層の可視の表面の印刷であってよく、又は印刷のための準備及び引き続き視層の印刷及び/又は視層の可視の表面のシールであってよい。
【0047】
本明細書に記載される生分解性平面状構造物は、好ましくは、印刷方法、例えばインクジェットプリンター用の支持材料として使用される。例えば、製造される生分解性平面状構造物は、印刷装置中へ導入され、かつこの装置により印刷されることができる。生分解性平面状構造物は、この場合に印刷の支持体であるので、これに関連して印刷方法のための支持材料についても述べられる。
【0048】
印刷インキが同様に生分解性である場合が好ましい。生分解性着色剤は、例えば、鉱物、植物及び/又は動物から取得された着色剤、例えばインジゴ、パープル(Purpur)又はカルミンである。
【0049】
印刷(捺印)の設けられた生分解性平面状構造物は、好ましくは、広告面、情報面、又は装飾面又は物体として使用されることができる。例えば、印刷された生分解性平面状構造物は、競技場におけるフェンス広告として使用されることができる。さらに、生分解性平面状構造物が、掲示板、広告塔又は一時的なバリケード用のポスターとして使用されることが考えられる。しかし印刷されたナプキン、テーブルクロス、衝立又はカバーシェル(防水シート等)も、本発明の意味での生分解性平面状構造物でありうる。
【0050】
生分解性平面状構造物は有利に、できるだけあまり廃棄費用がかからずに平面状構造物の短期の使用のみが望まれるあらゆるところで使用されることができる。フェンス広告又はポスター広告の場合に、広告メッセージ又は情報は僅かな期間にわたってのみ伝えられるべきである(例えばプレイシーズンが終わるか又はコンサートが過ぎるまで)。この期間が終わった後に、平面状構造物についての使用はもはやなく、そのために繁雑でなく環境にやさしい廃棄が望ましい。本発明による平面状構造物の場合に、平面状構造物は単純にかつ問題なくコンポスト化されることができ、その際に生分解性平面状構造物の腐朽は数(einige)週間かかるに過ぎない。費用がかかりかつ費用集約的な廃棄工程は有利に回避されることができる。
【0051】
本発明は、以下に図面に基づいてより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】異なるヤーンの強さを示すグラフ。
【図2】引張伸びに依存した異なるヤーンの強さを示すグラフ。
【図3】温度に依存した異なるヤーンの収縮を示すグラフ。
【0053】
図1には、伸びに依存した異なるヤーンの強さが示されている。参照番号1でHTポリエステルヤーン(HT=high Tenacity)の曲線を示した。参照番号2はリオセルヤーンの曲線を示し、3は木綿ヤーンの曲線を示し、4はビスコースヤーンの曲線を示し、5はポリ乳酸製ヤーンの曲線を示し、かつ6は羊毛ヤーンの曲線を示す。図1に示された全てのヤーンは、いわゆるテキスタイルヤーンである。テキスタイルヤーンは、工業用ヤーンとは、工業用ヤーンよりも少ない強さ及びより高い破断伸びを有することにより相違する。
【0054】
図2には、工業用ヤーンの破断伸びが、工業用ではない(すなわちテキスタイル)ポリ乳酸ヤーンと比較して示されている。参照番号7を有する曲線は、呼称174ST及びフィラメント210本で1100dtexを有する標準Diolen (登録商標) ヤーン(ポリエチレンテレフタラート、ポリ乳酸ヤーンではない)に属する。参照番号8を有する曲線は、同様に呼称170ST及びフィラメント210本で1100dtexを有する標準Diolen (登録商標) ヤーン(ポリエチレンテレフタラート、ポリ乳酸ヤーンではない)に属する。参照番号9で、ポリ乳酸から製造されており、かつ工業用ヤーンと呼ばれうるヤーンの曲線が示されている。このヤーンは、フィラメント210本で1100dtexを有するDiolen (登録商標) 150BTである。前記の工業用ヤーン7、8及び9の曲線と比較して、テキスタイルヤーンも曲線10で示されている。テキスタイルヤーンは、テキスタイルポリ乳酸ヤーンである。
【0055】
図3には、1100dtex、フィラメント210本を有する工業用ポリ乳酸ヤーンDiolen (登録商標) 150BTの収縮が示されている。曲線11は、1mN/texでの予備張力でのヤーンの収縮を示し、かつ曲線12は、5mN/texでの予備張力での収縮を示す。
【符号の説明】
【0056】
1 HTポリエステルヤーン、 2 リオセルヤーン、 3 木綿ヤーン、 4 ビスコースヤーン、 5 ポリ乳酸製ヤーン、 6 羊毛ヤーン、 7,8 標準Diolen (登録商標) ヤーン、 9 Diolen (登録商標) 150BT ヤーン、 10 テキスタイルヤーン、 11 1mN/texでの予備張力、 12 5mN/texでの予備張力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層と視層とを有し、ここで支持層が生分解性ポリマー製ヤーン製のテキスタイルを有し、視層が、生分解性フィルムを有し、かつ別個の層として支持層上に施与されている平面状構造物であって、
テキスタイルのヤーンがマルチフィラメントヤーンであり、かつDIN EN ISO 2062により測定して40cN/texよりも大きい強さを有する
ことを特徴とする、平面状構造物。
【請求項2】
支持層のテキスタイルが、生分解性ポリ乳酸製のマルチフィラメントヤーンからなり、前記ヤーンがDIN EN ISO 2062により測定して40cN/texよりも大きい強さを有する、請求項1記載の平面状構造物。
【請求項3】
視層のフィルムがポリ乳酸からなる、請求項1又は2記載の平面状構造物。
【請求項4】
支持層のテキスタイルが、ファブリック、メリヤス、スクリム、ニット又は不織布である、請求項1から3までのいずれか1項記載の平面状構造物。
【請求項5】
視層のフィルムが、支持層上に積層されているか、貼り合わされているか、又はカレンダー加工されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の平面状構造物。
【請求項6】
視層のフィルムが、印刷可能な表面を有するか又は印刷されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の平面状構造物。
【請求項7】
支持層が、視層よりも高い融点又は低い融点を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の平面状構造物。
【請求項8】
平面状構造物を、支持材料としてのテキスタイルを生分解性ポリマー製ヤーンから製造しかつ視層を生分解性フィルムから製造し、その後形成された視層を形成された支持層と結合させることにより、製造する方法であって、
支持材料を、DIN EN ISO 2062 ?により測定して40cN/texの強さを有するヤーンから製造する
ことを特徴とする、平面状構造物の製造方法。
【請求項9】
支持層及び視層の結合を、貼合せ、積層又はカレンダー加工により行う、請求項8記載の方法。
【請求項10】
貼合せ、カレンダー加工又は積層のために、支持層を加熱する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
貼合せ、積層又はカレンダー加工のために、視層を加熱する、請求項9記載の方法。
【請求項12】
貼合せ、積層又はカレンダー加工のために、視層並びに支持層を加熱する、請求項9記載の方法。
【請求項13】
視層の表面を、貼合せ、カレンダー加工又は積層の後に処理するか、又は貼合せ、カレンダー加工又は積層の前に処理する、請求項7から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
印刷方法用の支持材料としての、請求項1から7までのいずれか1項記載の生分解性平面状構造物の使用。
【請求項15】
広告面、情報面又は装飾面又は物体としての、請求項1から7までのいずれか1項記載の生分解性平面状構造物の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−503063(P2013−503063A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527281(P2012−527281)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062360
【国際公開番号】WO2011/023707
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(311004142)ポリエステル ハイ パフォーマンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】Polyester High Performance GmbH
【住所又は居所原語表記】Industrie Center Obernburg,D−63784 Obernburg,Germany
【Fターム(参考)】