説明

幹細胞又は骨髄細胞を用いる組織の再生のための方法及び組成物

本発明は、血液、血小板又は血漿、及び、幹細胞又は骨髄細胞を主として含む、新規の重合可能な組成物に関し、当該組成物を用いた組織再生の方法にも関する。この種の混合物は、内因性又は外因性の重合因子、例えばトロンビン、カルシウムイオン又は細胞破片(cell detritus)の影響を受けて、重合させることができ、幹細胞又は骨髄細胞の発達及び組織特異的細胞への分化に非常に有利な粘性ゲルを得ることができる。この種のポリマーは、特に、更にエリスロポイエチン(EPO)、又は同様の作用を有する成長因子を含み、組織再生のための使用において、又は、骨欠損部の再生において優れた特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、血小板又は血漿、及び、幹細胞又は骨髄細胞を含む、新規の重合可能な組成物であって、適宜更に、血液由来の、脂肪組織由来の、又は、増殖若しくは再生される標的組織から生じる組織又は標的細胞に対応する組織由来の、細胞を含む組成物に関する。いずれかの所望の標的組織は、この血液/幹細胞調製法を利用する非常に短時間で標的とされる方法で生成されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
多くの損傷部及び疾患部において、欠陥が体内に存在し、進化的障壁(evolutionary barrier)のためにそれらを修復することができない。本発明の目的は、「マスターコピー」を、その生成能力で組織を処理するのに適したものとすること、そして、いずれかの所望の標的組織を生成できる方法を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この種の混合物は、内因性又は外因性の重合因子、例えばトロンビン、カルシウムイオン又は細胞破片(cell detritus)の影響を受けて、重合させることができ、幹細胞又は骨髄細胞の発達及び組織特異的細胞への分化に非常に有利な粘性ゲルが得られる。
この種のポリマーは、特に、更にエリスロポイエチン(EPO)、EPOの類似体又は誘導体(例えば、カルバミル化形態)又はEPOのペプチド配列、及び/又は、トロンボポイエチン又はトロンビンを含み、組織再生のために使用されるか、又は、骨欠陥部の再生において使用される際に、優れた特性を示す。また、GM-CSF又はG-CSFも単独で又はEPOと併用して、使用可能である。
【0004】
更に、本発明は、血液成分、幹細胞/骨髄、及び、好ましくは細胞成長及び細胞分化を促進する因子及び物質、特に、EPO及び生物活性誘導体及び/又はそれらのフラグメント、及び、GM-CSF又はG-CSF(適宜、更にビタミン、例えばビタミンC、又はホルモンを含む)のこれらのポリマーを用いて、組織を再生又は発生させるための方法に関する。
胎児幹細胞、新生児幹細胞(臍帯由来)及び成体幹細胞は、破壊組織及び器官の再生を可能とする新規の治療形態を期待させるものと考えられる。これらの細胞は、恐らく実際に、破壊細胞部分を修復する可能性があるが、特異的組織に関する内在するメカニズム及び実用的適用性は、いまだに議論されるディベートの議題である。
【0005】
用語「幹細胞」は、共通して少なくとも以下の2つの特性を有する異種のグループの細胞を包含する(幹細胞は、高度に分化させた細胞の前駆細胞である)。幹細胞の分裂の後、娘細胞は、専門家の意見に従うと、再度幹細胞になりうるし、組織特異的手段で、例えば心臓、神経、皮膚、又は、筋肉細胞に、分化させることもできる。
まず、早期胚発生において幹細胞が生じる。受精卵細胞(接合子)でさえ、全能幹細胞を意味し、早期胚段階を経て、その後、人体の全組織が全能幹細胞から形成する。従って、例えば、胚の結合組織の幹細胞(間葉細胞)は、胚形成の間、ある一定の成長因子の影響を受けて、筋細胞に発達する。幹細胞の娘細胞の特殊化が更に進むほど、異なる組織への分化可能な範囲が更に制限される。
【0006】
これに反して、他の幹細胞、いわゆる成体幹細胞は、特に、組織再生及び修復において一生を通じて重要な役割を果たす。それらは、分化細胞を補完し、ダメージを受けたか死んだ細胞の代わりとなることで、組織及び器官が機能する能力を維持する。例えば、骨髄由来の幹細胞は、短命の血液細胞を確実に補完する。
近年まで、有力な意見は、「成体幹細胞から、該細胞を得た対応する器官の細胞だけでなく、他の組織又は器官の細胞を作製できる」というものだった。例えば、骨髄は、新しい血液細胞を生み出すだけでなく、様々な体内組織、例えば骨、軟骨、アキレス腱、筋肉、肝臓の細胞を生み出す。
【0007】
しかしながら、最近の結果で、間葉幹細胞における分化転換は、単に未発達であるときか、又は、単にある一定の必要条件に従って生じるという、可能性が示されたため、「骨髄由来の成体幹細胞は、いずれかの所望の分化細胞に変わりうる」という意見は、該結果に基づいて争点となっている:完全に機能的に分化した組織細胞、例えば骨格筋細胞は、実際には、間葉幹細胞から作製される多くの場合で、これは存在する既に完全に分化した細胞と幹細胞との融合により生じる。実験により、これらの細胞は、ある一定の成長因子(細胞を作製する)と一緒に培養された場合において、例えば多くの心筋特異的又は骨格筋特異的な遺伝子を発現することが示されているが、細胞における形態変化は観察されたにもかかわらず、結局のところは完全な機能を有する筋細胞は確認できなかった。
従って、これまでに、インサイチュでの特異的組織の真の再生をもたらすヒトの幹細胞治療を行なうことはできなかった。例えば、成体幹細胞の心臓への移植により、脈管形成は増進したが、見たところ心筋組織の発達は起こらなかった。
【0008】
その結果、既に対応して特化したか分化した開始細胞が、組織の再生で非常に頻繁に組織再生に使用されている。例えば、フィブリン異種組織や、例えばラットの尾のコラーゲンのようなマトリックス(自家移植起源を含む)は、先行技術に従って軟骨組織の再生に使用される。関節起点の軟骨細胞は、通常これらのポリマーマトリックスに導入される。これらは、患者の処置されるひざ関節から、生検後に得られ、体外展開法を用いて、常法(lege artis)でこれらのマトリックス上でコロニー化される。また、軟骨細胞は、既知の方法で、アルギナート、フィブリン、又は動物起源のコラーゲンマトリックス中で直接培養可能であり、培養から数週間で移植できる。同様の方法はまた、他の組織特異的細胞の作製で知られている。
これらの方法は、選択された特異的細胞の脱分化プロセスを起こすために長期の前培養時間が必要であるとの欠点を有し、その時、望まない特性を持つようになる。例えば、この種の誤った軟骨細胞分化プロセスは、ヒアリン軟骨の代わりに望まない繊維症軟骨の形成を助長する。
【0009】
これまでの通常の方法の更に重大な欠点は、今日使用されるポリマーマトリックスが、組織の再形成及び形質転換を助長せずに、望まない細胞活性を誘発するということにある。更に、宿主で、免疫学的不適合は、しばしばおこる。
ここで、本発明に従うと、前記欠点は、分化細胞の代わりに幹細胞を使用することによって回避することができる。その際、幹細胞はこれまで通常であったように再生される標的組織へ直接組み込まれずに、代わりに、幹細胞又はその前駆細胞が重合前に包埋された重合した血液又は血漿又は重合可能な血小板濃縮物又は調製物で本質的に構成される、マトリックスが用いられる。
このようにして、驚いたことに、血液又はその細胞の構成要素(赤血球、白血球、血小板)又は非細胞の構成要素(タンパク質、脂質、糖質など)をベースとしたこの種のポリマー、特に成体幹細胞を含むポリマーを使用することで、得られる分化特異的細胞は、上述の既知の方法を使用する(例えば開始細胞として組織細胞を使用する方法)よりもかなり高い収率と特質を生み出すことを示すことができる。
【0010】
驚いたことに、この作用は、あらかじめ重合させない対応する血液調製物と比べても、確認することができる。従って、重合させた血液又は血漿は、幹細胞において、組織特異的細胞に分化させて、分化形態で増殖させる能力に関して、液体血液サンプルと比較しても、非常にポジティブな作用を発揮する。
特に、重合促進剤、例えば、トロンビン、Ca++、又は、合成若しくは生物的なマトリックスフラグメント、例えば、コラーゲン配列又はRDG配列を含むペプチドは、重合に関与するだけでなく、重合後の血液の3D構造、血漿構造、又は、血小板調製物の構造における生物的な作用にも関与する。
この理由は、幹細胞への直接的な刺激作用を有する一連の成長因子が、それによって、遊離されることにある。これらは、EGF以外にTGFβも含む。しかしながら、これらの因子のほかに、細胞膜構成要素、マトリックス構成要素、細胞含有物構成要素、及び、複合鉱物元素(Na、K、Cl、Mg、亜鉛)が、標準的な合成材料中に通常生じない物質汚染を起こす。さらに、フィブリンポリマーも、微小媒体(micro medium)の複雑性のために、これらの役目を果たすことができない。
【0011】
更に、本発明に従って、重合された血液のこの作用は、特に、幹細胞の遊離、増殖、又は分化を促進する因子の存在下で生じることが分かった。これらは、幹細胞作製法で使用される通常のホルモン、ビタミン又は成長因子、例えばGM-CSF、G-CSFだけでなく、驚いたことに、特に、エリスロポイエチン(EPO)、その類似体、そのカルバミル化形態(carbamylated form)、又は、天然物質の配列を含むそのペプチドフラグメントでもある。
この理由は、本発明に従って、人工的に強化された創傷用媒体は、幹細胞又は前駆細胞と共に、本発明における血液ゲルの3D構造で生成され、該3D構造は、これらの条件下で生じる酸欠状態、及び、遊離される急性期サイトカイン、例えば、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-1(IL-1)及び腫瘍壊死因子(TNF)の局所的発生と共に幹細胞に関連するカスケード反応を誘発することが分かったためである。EPO/誘導体又は類似体での共刺激は、重要な許容作用を起こし、該作用は、実際のエフェクター細胞(幹細胞及び前駆細胞)が組織分化に移ることを可能とする。
【0012】
液体(ゾル)から固化した(重合した)ゲル構造への転換、及びその結果誘導されるゲル構造の更に有利な点は、化合物の粘着作用による、創腔又は創傷欠陥部におけるモデリング力、及び、局所適用への汎用力にある。従って、幹細胞は、創底の近くに非常に効果的に導入でき、従って欠陥部は、簡単な方法で充填されうる。
慢性疾患形態、例えば慢性状態での横断損傷(transverse injury)(局所的な外傷状態が既に陥没している)のような場合に関しては、又は、瘢痕治癒のために皮膚領域に化粧を用いて治療介入をしている場合、若しくは、繰り返して行なわれるか、3〜4日の間隔で局所的に行なわれる皮下注入による乳房再生術における充填物欠損の構築のために皮膚領域に化粧を用いて治療介入をしている場合に関しては、本発明に従ったこの適用カクテルにより、外傷状態を局所的に限定することもできる。これは、微小領域において、局所特異的組織発達を起こすための幹細胞刺激に理想的な環境を作り出す。3D構築物の浸透性により、周辺領域のホルモン及びパラクリンのシグナルは、幹細胞で更に作用することができ、それを刺激することができる。
【0013】
創傷部の自然な状態と比較して、これらの因子の組合せは、作用を増強させ、最高約50%まで創傷治癒を早めることができる。ゲル構造の更に有利な点は、自家移植のベースのほかに、合成成分(BMP、PDGF、EPO、GCSF、GM-CSF)、又は、合成マトリックス成分で完全に補完可能であるということである。
幹細胞を含み、好ましくは更にEPO及び/又はGM-CSF又はG-CSFを含む、血液ポリマー、骨髄ポリマー又は血小板濃縮物は、対応する組織、又は、対応する(欠陥のある)骨構造に導入され、標的組織の機能分化細胞を発生させる高度な強い能力を表す。
更に有利な点が、ここで明らかにされる。すなわち、もはや単独で原状回復(restitutio ad integrum)又は原組織の再生ができない欠陥部サイズ又は欠陥部形態については、標的組織に類似し、それ故に適用カクテル中で活性化された幹細胞のリモデリングプロセスのための準「マスターコピー」に相当する、充填材料が、ここに組み込まれうる。マスターコピーの材料は、例えば、骨のための無機天然物、又は、歯科の場合における象牙質代替物でありうる。合成RGD類似体、コラーゲンペプチド(好ましくは動物性コラーゲン由来)は、骨の天然の組成物と混合可能であり、創傷部又は欠陥部で、ゲル重合させうる。
【0014】
従って、本発明は、好ましくは自家移植の、本質的には、ヒト又は動物の血液又は血液構成要素と全てのその変性した構成要素(例えば、細胞破片)を含むポリマーに関係し、該ポリマーは、幹細胞又は骨髄細胞、及び、幹細胞又は骨髄細胞を遊離、増殖若しくは分化させるか、又は、その遊離、増殖若しくは分化を促進させるか、進行させる、少なくとも1種の物質を含む、という事実で特徴づけられる。
幹細胞の成長と分化を促進する対応する物質は、成長ホルモン、例えば、HGH又はサイトカイン、例えば、インターロイキン、インターフェロン、TNFa又はG-CSF又はGM-CSFである。
特に、エリスロポイエチン(EPO)、又はその生物活性類似体、誘導体、及びフラグメントの1つが好ましい。エリスロポイエチン(EPO)は、骨髄における前駆細胞由来の赤血球の形成(赤血球形成)を制御する糖タンパク質ホルモンである。本プロセスにおいて、EPOは、全ての造血細胞で発現される、その受容体(EPO-R)と結合する。
【0015】
近年、様々な著者が、「EPOは非-造血作用も発揮し、EPO-Rも一定の非-造血細胞で対応して発現している」ということを報告している。従って、造血EPO受容体の直接発現に関係したいくつかの状況において、神経細胞、脳のニューロン細胞、及び内皮細胞へのEPOによる刺激が報告されている。
別の場合において、更なる非造血受容体の存在が示唆されている。特に、例えば、刺激を受けた内皮及び組織細胞の形成及び再生に関連する、エリスロポイエチン(EPO)の非-造血作用(長期間知られていなかった)は、次第に重要視されはじめている。
【0016】
従って、WO2004/001023には、とりわけ、新血管形成及び組織再生への刺激、及び例えば、手術後又は傷ついた後の創傷治癒の改善のためのEPO及びTPOの使用に関して記載されている。
WO 2005/063965では、標的とされる構造的に制御された外傷性組織の再生のためのEPOの使用を教示しており、該使用では、内皮細胞成長が刺激されるだけでなく、柔組織の再生、そして壁構造の形成が促進され、機能組織、器官、又はそれらの部分の発達のための協調した三次元の成長が起こる。従って、エリスロポイエチン及びEPO誘導体、又は、EPO模擬体は、全身投与されると、皮膚、粘膜が損傷を受けた場合に、又は、皮膚が開口して肉が切れた傷の場合、又は、熱傷又は火傷による皮膚炎の場合に、標的とされる方法で、処置される組織の再形成及び再生を開始し、制御するのに適していて、そして、最終的に治癒を促進し、早めることができるのに適していると見なされる。
WO 2005/070450及び当該発明者による別の論文には、週に90IU/kg(体重)未満の用量での、管及び組織の再生におけるEPOの使用、とりわけ、創部ケアの領域のためのEPOの使用について記載されている。この目的は、骨髄領域中の血液形成がより弱い刺激を受けるような状態にすることであるが、最近の教示によると、上記のように、血液中の内皮細胞の前駆細胞の活性化は可能である。血液中だけでなく、組織中での内皮細胞の前駆細胞の活性化、及び、内皮細胞の発達(血管の深層細胞層を形成する)は、血管新生の改善に関係し、それによる組織再生も促進されると考えられる。さしあたり、このことは火傷創傷に関する臨床試験で確認されている。
【0017】
ここで、本発明に従って、幹細胞発達及び分化における血液ポリマーにより既に促進された作用は、対応するポリマーが更にEPOを含む場合に、さらに約10〜50%向上しうることが分かった。このとき、EPO用量は、50〜500 IU/体重kgであり、好ましくは、100〜300 IU/体重kgである。この理由は、利用できる3D構造だけにあるのではなく、これまで先行技術に従って逆に解釈されてきた、驚くような相乗効果にもある。従って、生じた酸欠状態が、数ミクロンの層厚み(通常100〜500 μm)に組織形成を制限するので、組織工学においてより大きな層厚みを成しえないことが知られている。さらに、高純度の細胞集団を作り、いずれかの死細胞を含んではならない。
【0018】
しかしながら、この組合せの全体性により、驚いたことに、血液ポリマーに導入された幹細胞にとってポジティブな作用が示され、ここで、重合、層厚みの増加、細胞(例えば単核細胞の)減成、及び虚血状態下でのそれらの活性化は、ヘテロゲネシス幹細胞の急性期反応を促進し、ヘテロゲネシス幹細胞は、特にEPOと一緒に急激な誘発作用を起こす。次いで、細胞外媒体の選択的な「コピーできる(copyable)」成分が添加された場合に、真の「リモデリング」作用(デノボ組織形成をもたらす)が、本発明に従って起こる。欠陥部の形態とサイズにより単独で治癒が促されない場合には、この組織形成が起こりうる。
【0019】
従って、本発明は、特に、更に、好適な用量で、エリスロポイエチン(EPO)を含む、幹細胞又は骨髄細胞を含有する血液ポリマーに関する。この種のポリマーの使用には、組織特異的な適用に応じて、既に分化している組織細胞の使用に基づく標準的な方法と比較して10〜50%迅速に、かつ性質的/機能的に改善された方法で組織再生が起こるという効果がある。
好ましくは、自家移植血液又は血漿又は血小板をベースとした本発明に従ったEPO含有幹細胞ポリマーは、更に成長及び分化を促進する物質、特にGM-CSF、G-CSF又はTNFαを含んでもよい。
本発明に従って、血液/骨髄/血小板濃縮物、血漿、赤血球及び/又は白血球フラクションの重合プロセスと組み合わされて、EPO及びその生物活性誘導体は、幹細胞又はその前駆細胞を生存させて更に発達させ、外傷を受けた特異的な組織の再生の場合では、組織特異的に活性化させる。
【0020】
本発明は、幹細胞と組み合わせた血液又は血漿が、高粘性の粘稠度を有し、その結果形成されるであろう3D構造は、幹細胞の発達を助けるという基本的な発見に基づく。外因性ゲル形成剤を、血液/血漿、幹細胞、EPOなどの液体混合物に導入することで、更にこの作用を強めることができ、ゲル又は異なる強度のポリマーを形成可能とし、良好な処理特性を有するようになる。また、本発明に従う非常に好結果を示す扱いやすいゲル形成剤は、例えば、まだ液体状態の混合物に添加されうる、例えば(カルシウムイオン又はプロタミン添加又は無添加の)トロンビンであると証明されている。
具体的な適用方法は、例えば、シリンジの中の幹細胞を含む混合物を、それが液体である間に、「マスターコピー」を含む第二シリンジで強制混合することにより、シングルの適用カニューレに移し、適用部位で混合物を重合させるだけで、利用することができる。
【0021】
幹細胞又はその前駆細胞の発達における有益な作用を持つ、上述した意味での十分な重合作用は、重合させる混合物に細胞破片を添加することでも得られる。細胞破片は、例えば、単核細胞、赤血球及び白血球(leucocyte)、血液片(blood leaflet)又は幹細胞、前駆細胞、繊維芽細胞、内皮細胞、結合組織細胞、軟骨細胞、及びマクロファージの細胞死により得た細胞含有サンプルから、不足を補充するために、形成され、ポリマーの重合又は性質のための有利な性質を有する物質が有利に遊離される。従って、カルシウムイオンはまた、内生的に遊離され、それにより、外因性カルシウムの添加を全体的に又は部分的に過分にする。自家移植起源の細胞破片は、重合させる混合物に有利に添加される。
従って、本発明は、固定可能で適合した幹細胞の構造及びその発達を促進する内因性又は外因性の物質を含む、対応する血液含有ポリマーにも関係する。この種の物質は、トロンビン、カルシウムイオン、様々な種の細胞の細胞破片、好ましくは自家移植細胞の細胞破片、生物的コラーゲン、又はそれらのフラグメント、細胞外マトリックスの構成要素、フィブリン、フィブリン粘着物又はそのほかのゲル形成物質でありうる。
【0022】
重合は、代わりに、又は、付加的に、他の天然又は合成のポリマー形成剤、例えば、ゲル形成膨潤性ポリサッカライド、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース、及び/又は、カルボキシアルキルセルロース、又は、アクリラートベースの合成ポリマー形態、例えば、(ポリ)メタクリラート、(ポリ)メチルメタクリラート、ポリアクリルアミド、(ポリ)エトキシエチルメタクリラートによって起こりうる。
更に、凍結乾燥血液を混合物に添加して重合させることで、ポリマーの重合安定性、及び、組織再生作用に関係するその特性を改善し、促進することができることが明らかになった。また、イタヤガイ由来の天然型又は合成型の粘着性タンパク質を混合することができる。同様に、ニューロン前駆細胞を刺激するだけではなく、粘着作用を持続させる、セロトニンを添加することができる。
トロンビン、カルシウムイオン及び/又は細胞破片及び/又は他の好適なゲル形成剤及び/又は凍結乾燥血液を用いることで、血液/血漿及び幹細胞を含み、その結果驚いたことに幹細胞の発達と分化に影響する、混合物の重合特性を変更し、修正することができる可能性は高くなる。
【0023】
本発明に従って、幹細胞は、別々に単離される必要がない。個体の骨髄を直接使用し、これと好適な自家移植血液又は血漿と混合し、これを濃縮し(必要ならば、細胞成分に対して遠心分離、ろ過、又は沈殿により)、トロンビン、カルシウムイオン、及び/又は、細胞破片、マトリックス(材料、ペプチド、糖、脂質、及びそれらの組合せ)、及び、好ましくはEPOを添加し、該混合物をゲル形成物にしても、差し支えない。この種のゲルは、直接非常に広く様々な適用法で使用されうる。
従って、本発明は、組織又は骨、特に外傷性組織及び/又はとりわけ骨の再生のためにインビボで使用されうる、対応するポリマーに関する。
特に、本発明は、外傷性組織又は骨構造の再生のための対応するポリマーの使用に関し、ここで、ポリマーは、処置される外傷領域に、又はそのすぐ近くに導入され、又は、欠陥部の充填に使用されることが意図される。
【0024】
本発明に従った当該ポリマーは、骨欠陥部において、骨代用材料と組み合わせて特に有利に使用されうることが分かった。この場合に、重合開始直前の混合物及びまだ十分に重合していない骨代用材料を、骨欠陥部に同時に導入して、その後重合させるためにその場で混合することができる。これは、特に、例えば、ナノ結晶のヒドロキシアパタイト又は他のナノ結晶の鉱物又は生物的な材料(タンパク質、ペプチド、脂質、糖質、プラスチック)(乾燥形態又は水素化形態である)に有利である。この粉状又は粘性のある材料特性により、幹細胞によるコロニー化の能力は、制限され、あるいは、生物学的材料にとっての欠点にさえなる。従って、この種の材料(例えば「オスティム(Ostim)」)は、コロニー化させられないことが分かっている。
それにもかかわらず、驚いたことに、本発明に従うと、コロニー化できないとみなされているナノ結晶材料で高い幹細胞密度を達成することが可能である。
インビボでインプラントした後、これは、EPOを添加しないにもかかわらず、約50%骨発達を早める。局所形態でのEPOの追加的導入により、骨の発達を、10〜20%さらに早めることができる。代わりに、EPO、その誘導体、又は、ペプチドフラグメントを粉末としての骨格材料に添加することもできる。これは、保存能力において一層有利である。
【0025】
また、例えば、シリンジの形態の2種の適用容器の使用において、EPOをシリンジ中で凍結乾燥形態にて調製でき、該シリンジは血液、骨髄幹細胞混合物に適応する。更に、自家移植起源のマトリックス(足場)成分(凍結乾燥血液又は血漿、フィブリン、トロンビン)及び合成起源のマトリックス(足場)成分(マトリックスタンパク質のペプチドフラグメント、自己会合するペプチド構造(RADA)、ホスファチジルコリン、スフィンゴ脂質、レシチン、HDL(高比重リポタンパク質)、及びグルコース、グルコサミン、硫酸グルコサミン、ヒアルロン酸、キトサン、絹タンパク質、イタヤガイ由来の粘着性タンパク質、コラーゲン、及びそのフラグメント、並びに、ペプチドが、同様にこの系で存在しうる(シリンジ2)。
この適用方法により、幹細胞を最適に配置でき、そして、異種の「足場」構造(外側から侵入経路を経由して、骨組織が直接成長して該構造になり、逐次それに取って代わる)が、例えば骨代用マトリックス内部に得られうる。従って、それにより形成された相互接続間隙は、ゼラチン状構造で幹細胞にて最初から(ab initio)充満されている。これは、非常に大きな層厚みにもかかわらず、最適な成長状態を作り出す。
【0026】
一般的な教示に反して、この状況において、EPO、GM-CSF又はG-CSFを、但し特にEPOを添加すると、最適化された媒体中で幹細胞又は前駆細胞の、特に効果的な刺激がもたらされる。このことにより、適用部位外での前駆細胞の対応する展開法(expansion method)(診療所、手術室にて)を省くことができ、実際の外科的介入(手術中)と同時に幹細胞治療を行うことができる。このことは、意義のある制御的かつ経済上の利点(経費削減)を有し、リスクを最小にし、質的に意義のある改善を意味する。
しかしながら、特別に大きな欠陥部の場合に、幹細胞ゲルの前展開法は、有利でありうる。但し、本発明に従って、その際、この培養は、3Dの血液ゲル又は血漿ゲルで、直ちに行うことができる。この目的のために、インビトロでの創傷用媒体を作るために、重合をインビトロで起こしても良く、その際、直径で厚み数ミリメートルから厚み数センチメートルまで増加させた層厚みのせいで、酸欠状態で、パラクリン刺激媒体中で幹細胞/前駆細胞のための理想的な成長状態が生じる。手術中(intra-operative)における変更がある場合に、数秒から数分でさえ、幹細胞の必須の刺激プロセスを同時に起こすのに十分である(IL-6、EPO、GM-CSF、G-CSF、マトリックス)。
【0027】
従って、本発明は、この点で、骨代用材料と組み合わせたポリマーの使用に関し、特に、欠陥したか、外傷性か、又は病気を患った骨構造又は骨組織の再生及び再構築のためのインビトロ、インビボ、又は、生体外でのポリマーの使用に関する。
ここで、骨代用材料の鉱物成分は、当然、骨欠陥部の充填部を支持するために好適なものである。好適な骨代用材料としては、例えば、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムなどが挙げられる。
本発明に従ったポリマーは、外傷又は疾患に起因して組織又は骨欠陥部が生じる、非常に広範な様々な医学的用途に対して好適である。特に、それらは、歯及び顎欠陥部の場合における歯科領域で使用されうるが、皮膚又は粘膜に損傷を受けた場合に、局所領域でも使用されうる。
更に、本発明は、ヒト又は動物の血液並びにヒト又は動物の幹細胞又は骨髄細胞を含む対応するポリマーの調製方法に関し、その方法では、前記成分は、液体状態で互いに混合され、この混合物は、ゲル形成剤によって、特に、カルシウムイオン、トロンビン、フィブリン、又は、生体起源の細胞外マトリックスの構成要素、又は、細胞破片(適宜更に凍結乾燥血液)の添加によって、重合され、又は固体化され、ここで、特定の態様において、幹細胞又は骨髄細胞を遊離、増殖、又は分化させるか、又は、その遊離、増殖若しくは分化を促進する1種以上の物質が、重合前に液体混合物に添加される。
【0028】
更に、本発明は、インビトロ又は生体外での組織又は骨構造の再生のための方法であって、
(i)単離された幹細胞又は骨髄細胞の準備、
(ii)血液又は血漿サンプルへの、又は、血小板濃縮物への、前記細胞の導入、
(iii)(ii)のサンプルの重合、
(iv)細胞の成長及び所望の組織への分化を起こし、及び/又は、促進する好適な媒体での細胞の培養の工程を含む方法に関する。
更に、本発明は、組織又は骨構造の再生のための方法であって、
(i)単離された幹細胞又は骨髄細胞の準備、
(ii)血液又は血漿サンプルへの前記細胞の導入、又は、骨髄の直接の使用、及び、EPO、GCSF、GM-CSFとの混合、
(iii)例えば、Ca++又はプロトロンビン、プロタミン(適宜、更なる因子、例えば「複写材料」、及び合成又は天然起源の分化因子と共に)を用いた、(ii)のサンプルの重合、
(iv)損傷し、疾患した、体の変性領域の欠陥部への、サンプルの直接導入の工程を含む方法に関する。
【0029】
上記分化因子は、TGFβ又はパラトルモン(軟骨形成)、又は、ビタミンC(神経発芽の誘導用)でありうる。
「組織処理」を改良するための重要な添加物として、標的組織のフラグメント又は粒子もまた合わせられる。これらは、理想的には、約100〜200μmの厚みで、約200〜300μmの直径である。より大きいか、又はより小さいフラグメントも可能である。粉砕は、理想的には、外科用メスか鋭いナイフを用いて行われる。長所は、この調製プロセスが、非常に少ない時間しか要さないことである。従って、この全工程は、実際の手術と同時に好ましい形態で行なわれうる。
骨髄に存在する細胞の完全な混合物に代わるものとして、単離された幹細胞又は前駆細胞集団、例えば、CD31、CD71及びCD134、並びにCD90-ポジティブ細胞を用いることも可能である。
特に、本発明の対象は、血液又は血漿サンプルの重合がカルシウムイオン、及び/又は、天然又は合成のゲル形成物質、及び/又は、細胞破片の添加によって行われる、インビボ、インビトロ、及び、生体外での方法である。
【0030】
更に本発明の対象は、成長因子、及び/又は、ホルモン、及び/又は、成長又は分化を促進する物質、及び/又は、細胞が添加され、特にEPO、GM-CSF、G-CSF、GH、結合組織細胞、繊維芽細胞、マクロファージ、細胞破片からなる群から選択されるものが添加される、インビボ、インビトロ、及び、エクスビボでの方法である。
以下の実施例は、更に本発明を説明することを意図し、本発明を制限しない。特に、上述された特定の方法ステップ、方法パラメータ、物質、組織サンプル、及び適用法は制限されることはなく、本分野の当業者が容易に置き換える理由を理解できる場合には、同じ作用を有する他の方法ステップ、方法パラメータ、物質、組織サンプル、及び適用法と置き換えることができる。
【実施例】
【0031】
<実施例1>
神経損傷、特に横断損傷の治療
急性横断損傷に関しては、処置される神経領域での減圧術を行なわなければならない。
本発明に従って、ここでエリスロポイエチンを、骨髄及び血液と合わせて添加し、損傷部に軟膏又はゲルのように適用する。
理想を言えば、ゲルは、層厚みが約1〜2mmであり、約100,000細胞を含む。
脊柱管における欠陥部が比較的大きい場合には、骨髄を、凍結乾燥血液と混合してもよく、又は、代わりに粉砕したコラーゲンスポンジと混合してもよい。これは、比較的大きな塊で基準構造の形成を促進する。天然又は凍結乾燥形態の血小板濃縮物を、同様にこの塊に添加することができる。同時に、ビタミンC(10〜20 mg)を全体に添加する。
【0032】
<実施例2>
鉱物と組合せた骨発達
本発明の重要な利点の一つとしては、本質的にコロニー形成できない、最終製品、例えば水溶液中の骨代用材料には、本質的にコロニー形成できないにも関わらず、非常に効果的な方法で、幹細胞が提供されうることである。
この目的を達成するために、タンデム型シリンジ系で、標準的な骨代用材料を第一シリンジで用い、血液/幹細胞混合物を、EPO添加又は無添加にて、カルシウムイオン、細胞破片などを添加又は無添加して、第二シリンジで用いる。詳しくは、EPOの凍結乾燥品(lyophilisate)(例えば、体重70 kgのヒトあたり10,000 IU)、更に、Ca++ (結晶型で1 mg、又は、1 mol/l)を、空のシリンジに入れる。1〜2 mlの骨髄に、1 mlの血小板濃縮物を添加し、このシリンジに吸い込む。次いで、第二シリンジ中の混合物を、タンデムシリンジ系の強制混合スクリューにより、第一シリンジ中のまだ変形可能な骨代用材料と平行して同時に骨欠陥部に接触させ、混合して、その場で重合させる。
第二シリンジは、更に、合成又は生物的なコラーゲン又はそれらのフラグメント、細胞外マトリックスの構成要素、又は他の物質、例えばRGDペプチドを含みうる。更に、凍結乾燥形態又は天然型のBMP又は血小板又は血液濃縮物を濃縮物として混合できる。
【0033】
<実施例3>
骨嚢胞の充填:
腔を充填するためのペースト状の柔軟な塊の調製は、以下の手順のとおりである:約10 mlの骨髄を、凍結乾燥のエリスロポイエチン、凍結乾燥の血漿、及び、ナノ結晶のヒドロキシアパタイト又はリン酸三カルシウムを含むチューブ/シリンジに導入する。
短時間で、高いペースト状で粘着性のある塊が形成され、塊はスパチュラを用いて、又は、カニューレによって、骨の欠陥領域に導入される。
更に、細胞外マトリックス、例えばフィブロネクチン又はコラーゲンの合成成分を添加し、細胞系の統合用の成長領域(growth zone)を更に早く形成又は発達させる。
【0034】
<実施例4>
心筋組織の再生:
約500 mlの末梢血液を採取し、50gで5分間遠心分離する。次いで、上澄みを再度800gで5分間遠心分離し、ペレットを前回のペレットと合わせる。末梢血液からこの方法で得られた全ての細胞を250ユニット/体重kgのEPOを含むシリンジ[空洞(lacuna)]に入れて、幹細胞を、5分間のインキュベーション時間の後のインプラント用に、そして、EPO受容体の活性化用に準備する。代わりに、又は、合わせて、5〜10mlの骨髄を、凍結乾燥EPOと共にシリンジに導入してもよい。
同様の手順を、筋繊維が切れた後に傷ついた部位に幹細胞を接触させるために使用できる。注入部位あたり約1〜2 mlを、この目的で使用する。
【0035】
<実施例5>
乳腺組織の再生:
遠心分離した骨髄を、ひざ関節領域由来の2〜3 mlの脂肪組織に添加し、250 ユニット/kg/体重で局所的に適用する。約10秒〜5分間のインキュベーション時間の後に、幹細胞を注入用に準備する。注入液は、凍結乾燥させたトロンビン及びCa++を含んでもよい。幹細胞混合物を、皮下脂肪組織の発達のために、そして、皮膚の皺取り及び若返りのために同様に使用できる。遠心分離の後に、トロンビン、及び/又は、Ca++を骨髄(10ml〜)又は末梢血液(100ml〜)由来の幹細胞に添加し、この幹細胞を注入部位あたり約500μlの体積で皮下投与する。この手順を、3〜4日ごとに、又は、週に一度繰り返すことができる。
【0036】
<実施例6>
椎間板の再生
急性又は慢性椎間板損傷の場合において、処置される神経領域の減圧法を行なわなければならない。腐骨の切除の場合に、この神経領域は減圧される。極端に小さな組織フラグメントは、機械的粉砕によりこの腐骨材料から作製することができる。骨髄 (2 ml)(天然でも、濃縮形態でもよい)は、そこに添加され(±0.5ml)、同時に、凍結乾燥EPO、凍結乾燥形態のGM-CSF又はG-CSFを体重に対する通常の推奨投与量に従って、添加する。しかしながら、ここでの投与は全身性ではなく、代わりに好ましくは局所的である。1〜2mlの血小板濃縮物は、好ましくは、凍結乾燥形態であり、混合物全体に添加されうる。
本発明に従って、エリスロポイエチンをここで骨髄、及び/又は、血液と合わせて添加し、消毒済みのシリンジを用いて、ゲルのように椎間板領域に注入する。
ゲルは、理想的には、約100,000〜1,000,000細胞を含むが、多くても少なくても可能である。
椎間板領域における欠陥部が比較的大きい場合において、骨髄は、凍結乾燥血液と混合されうるか、又は、粉砕コラーゲンスポンジと混合されうる。このことは、比較的大きな塊及び構造基準の形成を促進する。天然又は凍結乾燥形態の血小板濃縮物は、同様にこの塊に添加されうる。同時に、ビタミンC (10-20 mg)を全体に添加する。
【0037】
<実施例7>
軟骨組織の再生
急性又は慢性の軟骨損傷及び関節症の場合において、ポリマーは、重合がその場で生じるように、固形化処理の直前にやわらかい、例えばシリコーンのチューブを用いてわずかに開いた関節領域に導入される。腐骨を切除する場合、それらは、機械的粉砕で極端に小さな組織フラグメントに変えることができる。骨髄(2 ml)(天然でも、濃縮形態でもよい)は、その中に添加され(±0.5 ml)、そして、同時に、凍結乾燥EPO、凍結乾燥形態のGM-CSF又はG-CSFを体重に関して通常の推奨投与量に従って、添加される。しかしながら、ここでの投与は全身性ではなく、代わりに好ましくは局所的である。1〜2mlの血小板濃縮物は、好ましくは、凍結乾燥形態であり、混合物全体に添加されうる。
【0038】
本発明に従って、エリスロポイエチンをここで骨髄、及び/又は、血液と合わせて添加し、消毒済みのシリンジを用いて、ゲルのように椎間板領域に注入する。
ゲルは、理想的には、約100,000〜1,000,000細胞を含むが、多くても少なくても可能である。
軟骨領域における欠陥部が比較的大きい場合に、骨髄は、凍結乾燥血液と混合されうるか、又は、代わりに粉砕コラーゲンスポンジと混合されうる。このことは、比較的大きな塊及び構造基準の形成を促進する。天然の、又は、凍結乾燥形態の血小板濃縮物は、同様にこの塊に添加されうる。同時に、ビタミンC (10-20 mg)を全体に添加する。このことにより、非常に大きな関節領域を供給することもできる。上肢関節領域における関節間隙のために、血小板濃縮物が階層法(layered manner)で次第に使用されてきている。ある状況において、TGFβ及び/又はパラトルモンは、軟骨形成を促進するために使用されうる。
【0039】
<実施例8>
腱組織及び関節間軟骨の再生
傷ついた腱組織(例えば、ヒト及びウマのアキレス腱)又は関節間軟骨の場合において、EPO及びGCSF又はGM-CSFが添加された濃縮された骨髄を損傷部位に注入する。離開部は、理想的には、縫合により通常の方法で接合される。組織フラグメントを採取した領域から作製し、重合ゲルに導入し、その後、離開領域とその周りに再注入する。
内耳小骨又は網膜の再生も同様に行われる。
【0040】
<実施例9>
胸部のプロテーゼにおけるカプセル繊維症を予防するためのインプラント表面の改善:
胸部プロテーゼのインプラントにおける主要な問題のひとつは、カプセル繊維症がインプラントの周りで発達することである。本発明に従って、微小構造が、インプラント表面に適用され、該インプラント表面は、これらの表面上での幹細胞の内部成長反応を可能とする。この微小構造は、理想的に4〜5μmの小さな直径の孔と25〜250μmの大きな孔を有する。理想的には、この孔構造は、結合チャネル構造と理想的に結合可能であり、該構造は、血管床の自己組織化を可能とする。理想的には、骨髄から新たに採取した後に、孔のなかで、骨髄による直接的なコロニー形成は、行なわれる。細胞を濃縮するために、約30〜50 gで遠心分離して、穏やかな条件で濃縮できる。重合を起こして、組織の再形成をするために、トロンビンを添加する。
【0041】
血液と混合された骨髄由来の細胞は、トロンビンの添加によりゲル形成されて、微小構造中で重合化される。血液と組み合わせたトロンビン混合物/幹細胞混合物は、特定の再生において穏やかな作用を有する。インプラント部位での局所の創傷領域とともに、これは、おおよそ50%繊維症を減少させる成長プロセスを誘発する。有利な局所的なエリスロポイエチンの適用との組み合わせにおいて、局所的な刺激作用が起こり、結果として、導入されて局所的な前駆細胞の直接作用が起こる。これらは、脂肪生成の、及び、腺の前駆細胞を含む。表面マーカーは、CD 90、SCA1、CD 71であり、これらの前駆細胞で確認される。カプセル繊維症はまた、ヘルニア後の網状組織のインプラント又は胃壁欠陥部の閉包において、重要な役割(治療過程を悪化させること)を果たしている。
表面を微小構造化された別のインプラントは、その場でポリマー化される、幹細胞血液ゲル(EPO/誘導体/類似体添加又は無添加)で同様に提供される。
股関節部プロテーゼ及び他の関節プロテーゼの治療は、同様に行なわれる。
【0042】
<実施例10>
歯科インプラント:
根管治療後の象牙質の再生は、EPO添加又は無添加の、また、幹細胞添加又は無添加の、ヒドロキシルアパタイト又はリン酸三カルシウムを含むナノ構造の幹細胞血液ゲルの導入により、本発明に従ってなされうる。ここで、顆粒サイズ又は鉱物サイズは、理想的には5〜100μmであり、ここで、上流肥大(upward enlargement)は、ドリルチャネル(drill channel)中の流動性が損なわれていることを意味する。
【0043】
<実施例11>
他のインプラントは、上述の実施例と同様に行なわれうる:例えば、心臓ペースメーカー、胃壁網、気管代用、血管代用、又は心臓弁代用。
【0044】
<実施例12>
火傷、床擦れ又は糖尿病性腫瘍、感染創傷の再生
急性又は慢性皮膚損傷の場合において、幹細胞ゲルは、次のように調製され、創底を清潔にしたあとに、局所的に与えられる。
極小の皮膚フラグメントを、傷ついていない皮膚の領域から機械的に粉砕して、上記方法のように原則として作製する。骨髄(2 ml)(天然でも濃縮形態でもよい)をそこに添加し(±0.5 ml)、同時に、凍結乾燥EPO、GM-CSF又はG-CSFを、体重に対して推奨される常用量に従って添加した。しかしながら、ここで投与は、全身ではなく、代わりに、好ましくは局所的になされる。1〜2 mlの血小板濃縮物(このましくは凍結乾燥形態)は、混合物全体に添加されうる。
【0045】
本発明に従って、ここで、エリスロポイエチンは骨髄及び/又は血液と合わせて添加され、殺菌されたシリンジ又はスパチュラによってゲルのように創傷領域に適用される。ゲルは、理想的には、約100,000〜1,000,000細胞/10cm2含むが、多くても少なくても可能である。
欠陥部が比較的大きい場合に、骨髄は、凍結乾燥血液と混合されうるか、又は、粉砕コラーゲンスポンジと混合されうる。このことは、比較的大きな塊及び構造基準の形成を促進する。天然又は凍結乾燥形態の血小板濃縮物は、同様にこの塊に添加されうる。同時に、ビタミンC(10-20 mg)を全体に添加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞又は骨髄細胞、
及び、
幹細胞又は骨髄細胞を遊離、増殖若しくは分化させるか、又は、その遊離、増殖若しくは分化を促進する、少なくとも1種の物質を含む、
ヒト又は動物の血液、血漿又は血小板濃縮物含有ポリマー。
【請求項2】
促進物質が、成長因子、ホルモン又はサイトカインである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
促進物質が、エリスロポイエチン(EPO)、GM-CSF、G-CSF若しくは生物活性誘導体、又は、それらのフラグメントである、請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
促進物質が、EPO若しくは対応する生物活性誘導体、又は、それらのフラグメントである、請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
更に、凍結乾燥血液又は血漿を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー。
【請求項6】
更に、天然又は合成のポリマー及び/又はカルシウムイオン及び/又はトロンビン及び/又はプロタミンを含む、請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー。
【請求項7】
フィブリン、又はフィブリンをベースとした粘着物である、請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
自家移植幹細胞又は骨髄細胞が使われる、請求項1〜7のいずれかに記載のポリマー。
【請求項9】
細胞破片、
及び/又は、
更に、繊維芽細胞、内皮細胞、結合組織細胞、軟骨細胞、及び、マクロファージからなる群から選択される、標的組織由来の自家移植細胞又は異種細胞を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のポリマー。
【請求項10】
インビボでの、組織又は骨の再生、特に、外傷性組織/骨の再生のための、請求項1〜9のいずれかに記載のポリマー。
【請求項11】
組織の再生、特に外傷性組織の再生、又は、外傷性骨構造の再生のための薬剤を調製するための請求項1〜10のいずれかに記載のポリマーの使用。
【請求項12】
傷ついた皮膚の局所治療のための請求項11に記載の使用。
【請求項13】
外傷性組織又は骨構造の再生のための請求項11に記載の使用であって、
ポリマーは処置される外傷領域又はそのすぐ近くに導入されることが意図される、使用。
【請求項14】
更に、骨代用材料が適用される請求項13に記載の使用。
【請求項15】
インビボ又は生体外での、組織、特に外傷性組織の再生、又は、外傷性若しくは欠陥のある骨構造の再生のための請求項1〜9のいずれかに記載のポリマーの使用。
【請求項16】
骨欠陥の充填部を支持する鉱物成分を添加する、骨欠陥の再生のための請求項15に記載の使用。
【請求項17】
インビトロ又は生体外での組織又は骨構造の再生のための方法であって、
(i)単離された幹細胞又は骨髄細胞の準備、
(ii)血液又は血漿サンプルへの、又は、血小板濃縮物への、前記細胞の導入、
(iii)(ii)のサンプルの重合、
(iv)細胞の成長及び所望の組織への分化を起こす、及び/又は、促進する好適な媒体での細胞の培養の工程を含む方法。
【請求項18】
血液又は血漿サンプルの重合、又は、血小板濃縮物の重合が、カルシウムイオン、及び/又は、天然若しくは合成のゲル形成物質、及び/又は、細胞破片、及び/又は、トロンビンを添加して行なわれる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
凍結乾燥血液又は血漿を添加する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
成長因子、及び/又は、ホルモン、及び/又は、成長若しくは分化を促進する物質、及び/又は、標的組織由来の細胞を添加する、請求項17〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
EPO、GM-CSF、G-CSF、GH、結合組織細胞、繊維芽細胞、マクロファージ、細胞破片からなる群から選択される、1種以上の物質、因子又は細胞を添加する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ヒト又は動物の血液、血漿又は血液片、
及び、
ヒト又は動物の幹細胞又は骨髄細胞を含むポリマーを調製する方法であって、
液体状態でこれら双方の成分を混合し、
ゲル形成剤を用いて、特にカルシウムイオン、トロンビン、フィブリン、又は、生体起源の細胞外マトリックスの構成要素を添加して、この混合物を重合させる、方法。
【請求項23】
更に、凍結乾燥血液を添加する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
幹細胞又は骨髄細胞を遊離、増殖若しくは分化させるか、又は、その遊離、増殖若しくは分化を促進する1種以上の物質を重合前に液体混合物に添加する、請求項22又は23に記載の方法。

【公表番号】特表2011−516436(P2011−516436A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502260(P2011−502260)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002135
【国際公開番号】WO2009/121503
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(509128568)
【Fターム(参考)】