説明

幹細胞移植を補助するためにALDHbr細胞を使用する方法

本発明は、少なくとも2つの幹細胞集団を移植することによって、組織を修復、再生および再構築する方法に関し、個々で第1の幹細胞集団および第2の幹細胞集団は、約2〜約24時間の時間間隔を隔てて、被験体に導入される。第1の集団は臍帯由来の幹細胞を含む。第2の集団はALDHbr細胞を含む。これらのALDHbr細胞は、単離直後に患者に投与され得るか、または移植に先立って約2日間〜約7日間、サイトカインの組み合わせを使用して培養中で刺激され得る。本発明の方法は、骨髄破壊治療後の好中球生着および/または血小板生着および免疫再構築までの時間を加速するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、早期の前駆体細胞が豊富な幹細胞集団を使用して、組織を再構築、修復および再生するための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年間にわたって、臍帯血(UCB)移植は、移植治療で処置可能な難病(catastrophic disease)を有する被験体において造血細胞移植のため代替生存ドナー幹細胞供給源であることが示された。UCB細胞は、耐え難い急性または慢性の移植片対宿主病(GvHD)なしに、部分的にミスマッチのHLA障壁と交差し得る(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。従って、十分にマッチしている、血縁関係にあるかもしくは血縁関係にない、生存している骨髓または生体幹細胞のドナーがいない多くの被験体は、骨髄破壊性の(myeloablative)照射および/または化学療法の後に幹細胞を救うために、部分的にHLAがマッチしているUCB細胞を利用し得る。UCB細胞用量(レシピエントの体重1kgあたりで表される)は、UCB移植後の結果の最良の予測変数である(非特許文献4;非特許文献5)。結果と強く相関する細胞用量閾値は、同定された。低細胞用量を受容する被験体においては、恒久性の生着(engraftment)が最終的に生じる一方で、骨髓および血小板生着における顕著な遅延が存在し(せいぜい、より長期間の入院を生じる)、そして供給源利用において顕著な増大を生じ、最悪の場合には、感染およびレジメンに関連する毒性から早期の死亡が増大する。
【0003】
体重が<40kgの幼児および子供では、被験体の90%超において妥当な時間枠内で、首尾良い生着に重要な細胞用量(3×10e7個の有核細胞/kgとして定義される)を送達する、十分にマッチしているUCB単位を見いだすことは可能である。体重が>40kgのティーンエイジャーおよび成人では、これは、その時間の中でおそらく30〜50%である。UCB単位は、比較的固定数の総有核細胞を含むので、体重>70kgの被験体についての最適細胞投与量を送達する単位は、その時間の中で<15%で同定されるに過ぎない。UCBTに利用可能な細胞用量を増大しようとする試みは、エキソビボ増殖および組み合わせ単位移植を含んだ。エキソビボでのUCB細胞の増殖は可能である一方で、増殖した細胞の注入の以前の第I相研究は、生着時間の短縮を生じなかった(非特許文献6;非特許文献7)。同様に、1回の骨髄破壊性移植のための最大5UCBの組み合わせは、好中球または血小板生着までの時間を短縮しなかった。
【0004】
いくつかのストラテジーが、好中球および/血小板生着までの時間を短縮する目的で、移植に利用可能な細胞を増大させる方法に対処してきた。成功裏であれば、これらアプローチは、レジメン関連の毒性を少なくすることによって、移植手順の安全性を高めたであろう。UCBT後の生着は、総合的かつ事象なしの生存の主要な予測変数である。絶対好中球数(ANC)回復までの時間および/または総合的生着可能性を低下させることによって生着を促進し得る介入は、有利である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Wagnerら.Blood(1996)88(3):795−802
【非特許文献2】Rubinsteinら.N Engl J Med(1998)339(22):1565−1577
【非特許文献3】Rochaら.N Engl J Med(2000)342(25):1846−1854
【非特許文献4】Kurtzberg Jら.N Engl J Med(1996)335:157−166
【非特許文献5】Stevensら.Blood(2002)100(7):2662−2664
【非特許文献6】Jaroscakら.Blood(2003)101(12):5061−5067
【非特許文献7】McNieceら.Cytotherapy(2004)6(4):311−317
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
被験体における組織を再構築、修復および再生するにあたって使用するための方法が、本明細書に提供され、この方法は、少なくとも第1の細胞集団および第2の細胞集団を上記被験体に導入することによる。第1の幹細胞集団は臍帯由来の幹細胞を含む。第2の幹細胞集団は、臍帯から単離されたアルデヒドデヒドロゲナーゼ陽性(ALDHbr)細胞を含み、この細胞は、単離後、さらに操作せずに使用されるか、または被験体へ細胞を導入するのに先立って、約2日間〜約7日間、サイトカインの組み合わせを使用して培養中で刺激する(prime)。第2の細胞集団は、UCBの第1の集団の導入後、2時間と24時間との間に被験体に導入される。
【0007】
本発明の方法は、骨髄破壊性治療後に、好中球生着および/または血小板生着までの時間および免疫再構築を促進することにおいて特に有用である。
【0008】
図1〜4は、本明細書に記載のUCB移植手順(標識された「ALDHbr」)を受けている14名の患者について好中球生着および血小板生着についての暫定的な結果を示す。患者を種々の時点で登録し、治験は継続中である。したがって、分析の時に、患者の一部は、これらの図に示される生着エンドポイントに達していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、COBLT研究において代謝病について処置された69名の患者の歴史的コントロール(historical control)と比較した、処置群における60日目までの好中球生着の累積的な発生数を示す。好中球生着は、少なくとも500個の好中球/μlのANCに達することとして定義した。
【図2】図2は、COBLT研究において悪性疾患について処置された191名の患者の歴史的コントロールと比較した、処置群における14名の患者についての60日目までの好中球生着の予備的で累積的な発生数を示す。好中球生着は、少なくとも500個の好中球/μlのANCに達することとして定義した。
【図3】図3は、COBLT研究において代謝病について処置された69名の患者の歴史的コントロールと比較した、処置群における14名の患者についての200日目までの血小板生着の予備的で累積的な発生数を示す。血小板生着は、輸血の補助なく1μlの血液あたり少なくとも50,000個の血小板の血小板数を維持することとして定義した。
【図4】図4は、COBLT研究において悪性疾患について処置された191名の患者の歴史的コントロールと比較した、処置群における14名の患者についての200日目までの血小板生着の予備的で累積的な発生数を示す。血小板生着は、輸血の補助なく1μlの血液あたり少なくとも50,000個の血小板の血小板数を維持することとして定義した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
I.概観
幹細胞および前駆細胞(stem and progenitor cell)(SPC)は再生されかつ特定の生物学的シグナルが特定の細胞型もしくは組織型へと上記細胞を分化するように誘導するまで、発生的潜在能力を維持する。成人幹細胞および前駆細胞(adult stem and progenitor cell)(ASPC)は、誕生後に生物の組織において保持される小さなSPC集団であり、生涯にわたって連続的に再生される。本明細書において使用される場合、「幹細胞」とは、分化および自己再生の能力、ならびに組織を再生させる能力を有する細胞をいう。本明細書において使用される場合、「生着」および「インビボ再生」とは、移植された(implanted or transplanted)幹細胞が宿主生物においてそれら自身を再生し、そして/または分化した細胞子孫を生成し、ならびに/あるいは上記宿主における失われたもしくは損傷した細胞を置換する生物学的プロセスをいう。
【0011】
同種異系細胞治療は、種々の疾患もしくは病理学的状態を処置するために使用される。同種異系細胞治療は、いくつかのタイプの悪性疾患およびウイルス性疾患のための重要な治癒力のある治療である。同種異系細胞治療は、被験体への細胞の注入もしくは移植を要し、それによって、上記注入もしくは移植された細胞は、上記被験体以外のドナーから由来する。本明細書において使用される場合、用語「由来する(derive)」もしくは「〜に由来する(derived from)」とは、細胞もしくは目的の生物から物理的物質もしくは情報物質(目的の生物からの単離形態、収集物、および推論(inference)を含む)を得ることが意図される。
【0012】
同種異系細胞治療プロトコルに利用された同種異系ドナーのタイプとしては、以下が挙げられる:ヒト白血球抗原(HLA)マッチしている同胞、マッチしている生物学的に血縁関係にないドナー、部分的にマッチしている生物学的に血縁関係にあるドナー、生物学的に血縁関係にある臍帯血ドナー、および生物学的に血縁関係にない臍帯血ドナー。上記同種異系ドナー細胞は、通常、骨髄採取、末梢血の回収物、もしくは誕生時の胎盤の臍帯血(placental cord blood)によって得られる。
【0013】
本発明の方法は、2つの細胞調製物(または「集団」)の投与もしくは導入を包含し、ここで各々の投与は、造血を促進するようにタイミングを合わせて隔てられる。「投与」もしくは「導入」とは、本明細書に記載される細胞集団を被験体に静脈内導入することをいう。いくつかの実施形態において、上記2つの細胞調製物の投与は、骨髄破壊性治療の後に続く。
【0014】
本発明の目的のために、一方の細胞調製物は、「第1の細胞集団」といわれ、他方の細胞調製物は、「第2の細胞集団」または「追加細胞集団(supplement cell population)」といわれる。上記第2の細胞集団は、第1の細胞集団のわずか約1時間後、わずか約1.5時間後、約2時間後、約2.5時間後、約3時間後、約3.5時間後、約4時間後、約4.5時間後、約5時間後、約5.5時間後、約6時間後、約6.5時間後、約7時間後、約7.5時間後、約8時間後、約8.5時間後、約9時間後、約9.5時間後、約10時間後、約11時間後、約12時間後、約13時間後、約14時間後、約15時間後、約16時間後、約17時間後、約18時間後、約19時間後、約20時間後、約21時間後、約22時間後、約23時間後、またはわずか約24時間後に被験体に投与される。
【0015】
上記の第1の集団は臍帯血細胞を含む。第2の細胞集団は、ALDHbrであり、したがって、幹細胞供給源に存在する大半または全ての幹細胞を含むSPCを含む。第1の細胞集団および第2の細胞集団は、同一のドナーまたは異なるドナーから得られ得るか、またはそれらに由来し得る。第1の細胞集団および第2の細胞集団が同一のドナーに由来する場合、そのドナーから収集されたUCBは、第1の細胞集団および第2の細胞集団について、それぞれ約80%/20%、約75%/25%、約60%/40%、約65%/35%、約60%/40%、約55%/45%または約50%/50%の分割物(split)に分配され得る。この分割物は、特定の時間に収集した細胞の1つのバッチの配分(apportionment)であり得る(例えば、ドナーから単一の臍帯単位(cord unit)を収集し、上記のパラメータにしたがって分割する)か、または、1名以上のドナーから収集しプールした臍帯血単位の配分であり得る。各注入に必要な有核細胞の数は、本明細書のどこかで議論される。
【0016】
一実施形態において、細胞のALDHbrの第2の集団は、被験体に細胞を導入する前に「刺激(prime)」される。「刺激される(primed)」または「刺激する(priming)」によって、移植前に、細胞を、約2日間〜約7日間サイトカインに曝露することが意図される。特定の実施形態において、細胞を、移植に先立って、SCF、IL−7およびFLT−3を含む、血清を含まない培養培地中で約5日間、培養において刺激する。
【0017】
したがって、臍帯血に由来する第1の細胞集団および第2の細胞集団を含む、本発明の組成物は、血液組織または他の幹細胞および前駆細胞機能を再構築する方法において有用であり、この方法は、第1の細胞集団の後、2時間と24時間との間に再構築を必要とする被験体に第2の細胞集団を導入することを含む。これらおよび他の実施形態において、少なくとも第2の集団は、富化されたALDHbr幹細胞集団である。
【0018】
II.適応症
本明細書に記載される細胞集団は、広く種々の処置プロトコルのために使用され得る。このプロトコルにおいて、身体の組織または器官は、これら細胞集団の生着、移植もしくは注入によって、増大させられるか、修復されるかまたは置換される。本明細書において使用される場合、「処置」とは、有益なもしくは望ましい臨床結果(すなわち、「治療的応答」)を得るためのアプローチである。本発明の目的に関して、有益なもしくは望ましい臨床結果としては、検出可能であろうと、検出不能であろうと、症状の緩和、疾患の事象の減少、疾患の安定化(すなわち、悪化していない)、疾患進行の遅延もしくは鈍化、上記疾患状態の改善もしくは軽減、および寛解(部分的であろうと完全であろうと)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置」とはまた、処置を受けていないかまたは異なる処置(すなわち、単一の細胞用量のみ、または24時間より長く間隔を空けて複数の細胞用量、または本明細書に包含されないいくつかの他の処置)を受けている場合に予期される生存と比較して、長期の生存を意味し得る。「処置」とは、治療的処置および予防的(prophylactic or preventative)手段の両方に言及する。処置を必要とするものは、障害を既に有するもの、および上記障害が予防されるべきものを包含する。疾患を「緩和」するとは、処置も異なる処置もない状況と比較して、疾患状態の程度および/または望ましくない臨床的発現が少なくされるか、そして/あるいはその進行の時間的推移が鈍化されるかまたは短縮されることを意味する。代表的には、上記「処置」は、上記被験体に、有効なSPCを付加的に投与して、組織(特に、造血細胞)を再生する工程を包含する。
【0019】
本明細書に記載される方法において有用な細胞集団は、種々の状況において利用され得る。一実施形態において、上記細胞は、血液学的な回復を促進するために、1種以上の疾患、処置、またはこれらの組み合わせから生じる血液機能が減少した被験体に投与され得る。
【0020】
例えば、本発明の方法は、以下を有する患者の処置に有用である:正常の血球生成および成熟がないことまたはその機能不全から生じる疾患、過剰増殖性幹細胞障害、再生不良性貧血、汎血球減少症、血小板減少症、赤血球無形成(red cell aplasia)、薬物、照射もしくは感染、突発性に起因するブラックファン−ダイアモンド症候群;造血性悪性疾患(急性リンパ芽球性(リンパ性)白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性悪性骨髄硬化症、多発性骨髄腫、真性赤血球増多症、原因不明の骨髄化生、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫が挙げられる);悪性の固形腫瘍(悪性の黒色腫、胃癌、卵巣癌、乳癌、小細胞肺癌、網膜芽細胞腫、精巣癌、神経膠芽細胞腫、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、リンパ腫が挙げられる)を有する被験体における免疫抑制;自己免疫疾患、関節リウマチ、糖尿病I型、慢性肝炎、多発性硬化症、および全身性エリテマトーデス;遺伝性(先天性)障害、貧血、家族性再生不良性ファンコニ症候群、ブルーム症候群、赤芽球癆(PRCA)、先天性角化異常症(dyskeratosis congenital)、ブラックファン−ダイアモンド症候群、先天性赤血球異形成症候群(congenital dyserythropoietic syndromes)I−IV、MPS I、MPS II、MPS III、MPS IV、MPS V、小児性(Infantile)クラッベ病、副腎脳白質ジストロフィー症、異染性白質ジストロフィー、テイ・サックス病、シュバッハマン−ダイアモンド症候群(Chwachmann−Diamond syndrome)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損症、ホルムアミノトランスフェラーゼ欠損症、レッシュ−ナイハン症候群、先天性球状赤血球症、先天性楕円赤血球症、先天性有口赤血球症、先天性Rhヌル病(Rh null disease)、発作性夜間血色素尿症、G6PD(グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、variants 1,2,3, ピルビン酸キナーゼ欠損症、先天性エリスロポエチン感受性欠損症、鎌状赤血球症および鎌状赤血球形成傾向、αサラセミア、βサラセミア、γサラセミア、メトヘモグロビン血症、免疫の先天性障害、重症複合型免疫不全症(SCID)、ベアリンパ球症候群、イオノフォア応答性複合型免疫不全症(ionophore−responsive combined, immunodeficiency)、キャッピング異常性を伴う複合型免疫不全症(combined immunodeficiency with a capping abnormality)、ヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症、顆粒球アクチン欠損症(granulocyte actin deficiency)、小児性顆粒球減少症、ゴーシェ病、アデノシンデアミナーゼ欠損症、コストマン症候群、細網異形成症、先天性白血球機能不全症候群;大理石骨病、骨髄硬化症、後天性溶血性貧血、後天性免疫不全症、リンパ球セットにおける不均化に拘わる障害および加齢している食細胞障害に起因する免疫機能障害、コストマン顆粒球減少症、慢性肉芽腫症、チェディアック−東症候群(Chediak−Higachi syndrome)、好中球アクチン欠損症(好中球 actin deficiency)、好中球膜GP−180欠損症(好中球 membrane GP−180 deficiency)、代謝性蓄積症(metabolic storage disease)、ムコ多糖沈着症、ムコリピドーシス、免疫機構に関する種々の障害、ウィスコット−アルドリッチ症候群、およびα1アンチトリプシン欠損症。
【0021】
高用量化学療法剤の複数サイクルにより認められる血液毒性続発症は、自己由来造血性幹細胞の連結的な投与(conjunctive administration)によって軽減されることもまた示された。従って、本発明の方法は、骨髄破壊性化学療法後の幹細胞の再注輸が記載されてきた疾患(急性白血病、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、精巣癌、乳癌、多発性骨髄腫、サラセミア、および鎌状赤血球貧血が挙げられる)に有用である(Chesonら.(1989)Ann.Intern.Med.30 110:51;Wheelerら(1990)J.Clin.Oncol.8:648;Takvorianら(1987)N.Engl.J.Med.316:1499;Yeagerら(1986)N.Eng.J.Med.315:141;Bironら(1985)In Autologous Bone Marrow Transplantation:Proceedings of the First International Symposium,Dickeら編,p.203;p.189のPeters(1985)ABMT(同書);Barlogie,(1993)Leukemia 7:1095;Sullivan,(1993)Leukemia 7:1098−1099)。
【0022】
癌細胞を標的とし破壊するために使用される大部分の化学療法剤は、すべての増殖しつつある細胞(すなわち、細胞分裂を経験している細胞)を死滅させることによって作用する。骨髄は、身体において最も活動的に増殖している組織のうちの1つであるので、造血性幹細胞は、化学療法剤によって頻繁に損傷されるかまたは破壊され、結果として、血球生成は、減少されるかまたは中止される。従って、本発明は、化学療法後の血小板生着および好中球生着を促進することによって、骨髄破壊性移植の結果を改善するために有用である。
【0023】
III.細胞調製物の供給源
本発明の方法は、一般に、同種異系幹細胞治療の使用を包含する。同種異系細胞治療は、悪性疾患およびウイルス背得疾患のいくつかのタイプの重要な治癒力のある治療である。同種異系細胞治療は、被験体への細胞の注入もしくは移植(この注入もしくは移植される細胞は、上記被験体以外のドナーに由来する)を包含する。同種異系細胞治療プロトコルに利用されている同種異系ドナーのタイプとしては、以下が挙げられる:HLAがマッチしている同胞(sib)、マッチしていない血縁関係にないドナー、部分的にマッチしている家族構成員のドナー、血縁関係にある臍帯血ドナー、および血縁関係にない臍帯血ドナー。上記同種異系ドナー細胞は、通常、骨髄採取、末梢血回収または誕生時の胎盤の臍帯血回収によって得られる。
【0024】
同種異系細胞は、好ましくは、ヒト白血球抗原(HLA)適合性ドナーから選択される。一般に、HLA適合性リンパ球は、完全にHLAマッチした親族(例えば、両親、兄弟もしくは姉妹)から得られ得る。しかし、ドナーリンパ球は、同胞ドナーが単一遺伝子座ミスマッチであるとしても、望ましい結果を得るために、レシピエントと十分にHLA適合性であり得る。ドナーが上記レシピエントと血縁関係がなければ、好ましくは、上記ドナーリンパ球は、上記レシピエントと完全にHLAがマッチしている。一実施形態において、上記細胞は、6/6遺伝子座においてHLAがマッチしているドナーから得られる。別の実施形態において、上記細胞は、5/6遺伝子座においてHLAがマッチしているドナーから得られる。なお別の実施形態において、上記細胞は、4/6遺伝子座においてHLAがマッチしているドナーから得られる。A遺伝子座におけるミスマッチは、B遺伝子座におけるミスマッチよりも好ましい。B遺伝子座におけるミスマッチは、DR遺伝子座におけるミスマッチよりも好ましい。UCBを利用する種々の実施形態において、投与前に上記細胞のHLAタイプ分けすることは必ずしも必要ではない。
【0025】
従って、一実施形態において、本発明は、少なくとも1名(1つ)のドナーから回収された第1のSPC集団および第2のSPC集団を個体に投与する工程を包含する、上記個体を処置するための方法を提供する。この状況において「ドナー」とは、成人、小児、乳児または胎盤を意味する。別の実施形態において、上記方法は、複数のドナーから回収されかつプールされた第1のSPC集団および/または第2のSPC集団を上記個体に投与する工程を包含する。あるいは、上記第1のSPC集団および上記第2のSPC集団は、別々に複数のドナーから得られて、別個に投与されてもよい(例えば、1名(1つ)以上のドナーが、上記第1の細胞集団のために利用され、同じまたは異なるドナーのうちの1名(1つ)以上が、上記第2の細胞集団に利用される。
【0026】
IV.回収方法
臍帯血は、任意の医療的にまたは薬学的に受容可能な様式で回収され得る。臍帯血の回収のための種々の方法が、記載されている。例えば、Coe,米国特許第6,102,871号;Haswell,米国特許第6,179,819 B1号を参照のこと。UCBは、例えば、血液バッグ、移動用バッグ(transfer bag)、または滅菌プラスチックチューブに回収され得る。それらから由来するUCBまたは幹細胞は、投与のために単一の個体(すなわち、単一単位として)から回収されたのと同様に貯蔵され得るか、またはその後の投与のために他の単位とともにプールされ得る。
【0027】
凍結される場合、上記細胞は、適切な極低温の容器に移され、そして上記容器は、一般に、−120℃から−196℃まで温度が下げられ、その温度で維持される。必要とされる場合、上記細胞の温度(すなわち、極低温容器の温度)は、上記被験体への導入と適合する温度に上昇させられ(一般に、ほぼ室温からほぼ体温へ(例えば、約20℃から約37.6℃へ(両端含む)))、上記細胞は、以下で議論されるように被験体へ導入される。
【0028】
V.ALDHbr細胞
本発明の種々の実施形態において、少なくとも上記第2の細胞集団は、ALDHbrであるASPCを含む。ALDHbr細胞は、高レベルの酵素アルデヒドデヒドロゲナーゼを発現し、フローサイトメトリー分析において低い側方散乱シグナルを与える。これらの細胞は、造血前駆細胞において非常に富んでおり、新鮮に単離されたヒトUCBにおいて有核細胞のうちの約0.5%を構成する。ALDHbr細胞集団の種々の特性およびこれらを得る方法は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第6,537,807号;米国特許第6,627,759号;Stormsら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci USA 96:9118;PCT公開番号WO2005/083061;Stormsら(2005)Blood 106(1):95−102;およびHessら(2004)Blood 104(6):1648−55(これらの各々は、それら全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0029】
VI.エキソビボ刺激(ex vivo priming)
エキソビボ増殖した細胞集団を使用して生着を促進する以前の試みは失敗している。作用のあらゆる特定の機構に拘束されないが、このことは、細胞が、培養において最終的な分化をしており、インビボでの造血回復に寄与できなくなっているからであり得る。本発明の一実施形態において、被験体への投与に先立って、細胞の第2の細胞集団が刺激されるが、増殖はされない。エキソビボ刺激は、1種以上のサイトカインを含む適切な培養培地でのALDHbr UCBのインキュベーションを含む。好ましくは、細胞は、被験体への導入に先立って、7日間以内、6日間以内、5日間以内、4日間、3日間、または2日間以内、エキソビボ刺激される。
【0030】
本発明の方法において有用な多くの種々のサイトカインは、ASPCのエキソビボ増殖において使用され、そして当該分野において周知であるサイトカインである。一実施形態において、細胞は、注入に先立って、血清を含まない培地中の幹細胞因子(SCF)、FLT−3およびインターロイキン7(IL−7)からなるサイトカインカクテルとともに5日間培養される。各サイトカインの濃度は、経験的に決定され得る。一実施形態において、各サイトカインの濃度は、約5ng/ml、約10ng/ml、約15ng/ml、約20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、65ng/ml、70ng/ml、75ng/ml、80ng/ml、85ng/ml、90ng/ml、95ng/mlまたは約100ng/mlである。
【0031】
当業者は、幹細胞の最初の調製に適切な増殖培地を決定することができる。幹細胞のために一般的に使用される増殖培地としては、Iscove’s modified Dulbecco’s Media(IMDM)培地、SCGMTM(Cambrex、Baltimore、MD)、DMEM、KO−DMEM、DMEM/F12、RPMI 1640培地 McCoy’s 5A培地、最小必須培地α培地(minimum essential medium alpha medium)(α−MEM)、F−12K栄養素混合培地(Kaighnの改変、F−12K)、X−vivo 20、Stemline、CC100、H2000、Stemspan、MCDB 131 Medium、Basal Media Eagle(BME)、Glasgow Minimum Essential Media、Modified Eagle Medium(MEM)、Opti−MEM I Reduced Serum Media、Waymouth’s MB 752/1 Media、Williams Media E、Medium NCTC−109、神経形質培地(neuroplasma medium)、BGJb Medium、Brinster’s BMOC−3 Medium、CMRL Medium、CO.sub.2−Independent MediumおよびLeibovitz’s L−15 Mediaなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
抗生物質、抗真菌剤または他の汚染防止化合物が、所望される場合、インキュベーション培地に添加され得る。例示的な化合物としては、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン(gentamycin)、フンギソンまたは当該分野で公知の他のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
VII.投与
本発明の方法において有用な細胞集団は、種々の治療レジメンおよび診断レジメンにおける適用を有する。それら細胞集団は、好ましくは、被験体への投与の前に、適切なキャリア(例えば、緩衝化生理食塩水)中に希釈される。上記細胞は、任意の生理学的に受容可能なビヒクルにおいて投与され得る。細胞は、患者の臨床的管理を促進するために、中心線を介して、注射、カテーテルなどによって、従来どおり、血管内に投与される。この投与経路は、肺血管系を介して、最初の通過循環(pass circulation)に細胞を送達する。通常、少なくとも約1×10個細胞/kgおよび好ましくは、約1×10個細胞/kg以上が、上記第1の細胞集団において、または上記第1の細胞集団および上記第2の細胞集団の組み合わせで、投与される。例えば、Sezerら(2000)J.Clin.Oncol.18:3319およびSienaら(2000)J.Clin.Oncol.18:1360を参照のこと。望ましい場合、さらなる薬物(例えば、5−フルオロウラシルおよび/または増殖因子)がまた、同時に導入され得る。適切な増殖因子としては、サイトカイン(例えば、IL−2、IL−3、IL−6、IL−11、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、γ−インターフェロン、およびエリスロポエチン)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の細胞集団は、有益なサイトカインの分泌および/または幹細胞増殖、ホーミングもしくは分化を誘導するシグナルを送達し得る細胞表面タンパク質の提示が挙げられるが、これらに限定されない任意の手段によって、生着を支援または高める他の細胞集団と組み合わせて投与され得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、第1の肝細胞集団および/または第2の幹細胞集団は、標準的方法を使用して凍結および融解された後に、赤血球および/または顆粒球の除去によって整えられ得る(condition)。
【0035】
上記第1の幹細胞集団および/または上記第2の幹細胞集団は、任意の薬学的にもしくは医療的に受容可能な様式において(注射または輸液によるものが挙げられる)被験体に投与され得る。上記細胞集団または追加される細胞集団は、任意の薬学的に受容可能なキャリアを含み得るか、またはこのようなキャリア中に含まれ得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、本明細書に記載されるように、1種以上の薬学的にまたは生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤もしくは賦形剤と組み合わせて、標的細胞集団を含み得る。このような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝化生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水など);炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースもしくはデキストラン、マンニトール);タンパク質;ポリペプチドもしくはアミノ酸(例えば、グリシン);抗酸化剤;キレート剤(例えば、EDTAもしくはグルタチオン);アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存剤を含み得る。本発明の組成物は、好ましくは、静脈内投与のために処方される。上記第1の幹細胞集団および/または上記第2の幹細胞集団は、任意の薬学的にもしくは医療的に受容可能な容器(例えば、血液バッグ、移動用バッグ、プラスチックチューブもしくはバイアル)の中に入れて収容され得るか、貯蔵され得るか、または輸送され得る。
【0036】
本発明の細胞組成物は、組織修復もしくは再生を達成するためにまたは望ましい疾患もしくは状態を処置するために十分な量で、被験体(好ましくは、ヒト)に導入されるべきである。好ましくは、少なくとも約2.5×10個細胞/kg、少なくとも約3.0×10個細胞/kg、少なくとも約3.5×10個細胞/kg、少なくとも約4.0×10個細胞/kg、少なくとも約4.5×10個細胞/kg、または少なくとも約5.0×10個細胞/kgが、上記第1の細胞集団、上記第2の集団、または上記第1の幹細胞集団と上記第2の幹細胞集団との組み合わせのいずれか一方において、任意の処置のために使用される。いくつかのドナーからの臍帯血が使用される場合、被験体に導入される臍帯血幹細胞の数は、より多い可能性がある。第1の細胞集団が、1kgあたり少なくとも約10個〜約10個の有核細胞を含む場合、第2の集団は、有意により少ない細胞を含み得る。種々の実施形態において、第2の集団は、1kgあたり少なくとも約10個または少なくとも約10個の有核細胞を含む。従って、本発明の方法は、血液学的な回復のために必要な移植細胞数を減少させ得る。この方法は、移植に利用可能な細胞数が制限される場合、特に有用である。
【0037】
「治療上有効な量」が示される場合、本発明の組成物の投与されるべき正確な量は、被験体の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染もしくは転移の程度、および被験体の状態の考慮事項とともに、当業者によって決定され得る。上記細胞は、当該分野で一般に公知である注入もしくは注射技術を使用することによって投与され得る。
【0038】
VIII.補助療法
本発明の方法における第1の幹細胞集団および第2の幹細胞集団の使用によれば、上記ドナー細胞の免疫学的拒絶を低下させるために上記宿主を処置し得る(例えば、米国特許第5,800,539号(1998年9月1日発行);および米国特許第5,806,529号(1998年9月15日発行)に記載されるもの(これらはともに、本明細書に参考として援用される))。
【0039】
本発明の特定の実施形態において、本発明の細胞は、薬剤(例えば、骨髄破壊性(高用量)化学療法)、化学療法、照射、免疫抑制剤(例えば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、ブスルファン、IVIG、メルファラン、メチルプレドニゾンロン、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸、およびFK506)、抗体、または他の免疫破壊性(immunoablative)薬剤(例えば、CAMPATH)、抗CD3抗体もしくは他の抗体治療、サイトキシン(cytoxin)、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および局所もしくは全身照射での処置の後に、被験体に投与される。これら薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリンを阻害する(シクロスポリンおよびFK506)か、または増殖因子誘導性シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)(Liuら,Cell 66:807−815,1991;Hendersonら,Immun.73:316−321,1991;Biererら,Curr.Opin.Immun.5:763−773,1993;Isoniemi(前出))。さらなる実施形態において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、いずれかの化学療法剤(例えば、フルダラビン)を使用するT細胞破壊性治療、外部ビーム放射療法(external−beam radiation therapy)(XRT)、シクロホスファミド、または抗体(例えば、OKT3もしくはCAMPATH)と組み合わせて(例えば、前、同時もしくは後)、被験体に投与される。別の実施形態において、本発明の細胞組成物は、B細胞破壊性治療(例えば、CD20と反応する薬剤(例えば、Rituxan))の後に投与される。例えば、一実施形態において、被験体は、高用量の化学療法による標準的な処置、続いて、幹細胞移植を受け得る。移植後、被験体は、本明細書に記載される2つの細胞集団の注入を受ける。
【0040】
被験体に投与されるべき上記処置の投与量は、処置される状態の正確な性質および処置の被験体によって変動する。ヒト投与のための投与量の概算は、当該分野で受け入れられている実務に従って行われ得る。
【0041】
IX.治療応答のモニタリング
被験体における治療応答をモニターするための方法は、被験体における、総合的かつ事象なしの生存、血小板生着、ANC生着、疾患の再発などのうちの1種以上の評価を包含する。処置に対する応答は、適切なコントロールに対して比較され得る。これら応答をモニターするための方法は、当該分野で周知であり、本明細書において例示される。
【0042】
本発明の目的のために、「被験体」とは、本発明の細胞調製物を投与している個体をいう。上記被験体は、ヒト、非ヒト霊長類、実験動物などであり得るが、好ましくは、ヒトである。「コントロール」とは、観察の性質に依存して、処置されていないか、偽処置されているか(例えば、上記個体は、第1の細胞集団および第2の細胞集団(ここで一方の集団および両方の集団は、本明細書に記載される細胞調製物を含まない)で処置されている)、生着を改善するためにおよび/または幹細胞移植に対する治療応答を改善するために、類似のまたは別個の方法で処置されているか、あるいは本明細書に記載される細胞集団とは異なる細胞集団で処置されている個体(または個体群)を包含し得る。例えば、エキソビボでサイトカインで刺激された第2の細胞集団で処置された上記被験体の治療応答を比較しようとする場合、適切なコントロールは、刺激されていない第2の細胞集団で処置された被験体を包含し得るか、または刺激剤を使用せずに第2の細胞集団が培養された被験体の治療応答を包含し得る。あるいは、コントロールは、歴史的コントロールであり得る。例えば、本発明の方法に対する上記被験体の応答は、生着を調節するためにおよび/または幹細胞移植に対する治療応答を改善するために、類似のまたは別個の手順を受けている被験体の以前に研究された集団において認められた応答に対して比較され得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、部分的には、T細胞集団を除去することによって、III期および/またはIV期の急性移植片対宿主病(GvHD)の発生率および/または重篤度の低下を生じる。本発明の幹細胞集団からのこの除去は、同種異系移植のレシピエントにおけるGvHDの発生率および重篤度を低下させることが予期され得る。例えば、Ho and Soiffer(2001)Blood 98:3192を参照のこと。GvHDは、ドナーT細胞が標的器官損傷(これは、しばしば死をもたらす)を引き起こす、正常宿主細胞上の抗原に対して反応する場合に生じる。GvHDの主要な標的器官は、免疫系、皮膚、肝臓および腸である。
【0044】
GvHDには2種類存在する:急性および慢性。急性GvHDは、移植後最初の3ヶ月以内に現れる。急性GvHDの徴候としては、皮膚剥離または皮膚水疱とともに、拡大しかつより重篤になり得る手および足上の赤らんだ皮膚の皮疹が挙げられる。GvHDは、その重篤度に基づいてランク付けされる:段階(stage)(または期(grade))1は軽度であり、段階(または期)4は重篤である。慢性GvHDは、移植後3ヶ月以降に発生する。慢性GvHDの症状は、急性GvHDのものに類似であるが、さらに、慢性GvHDはまた、眼の粘液腺、口の唾液腺、および胃の内層および腸を潤滑にする腺に影響を及ぼし得る。
【0045】
本明細書において記載される細胞集団の投与後に、上記被験体は、悪性細胞のレベルについて、すなわち、最小の後遺症(residual disease)の証拠についてモニターされ得る。このようなモニタリングは、再発の臨床的徴候についての被験体の追跡を含み得る。上記モニタリングはまた、適切である場合、いかなる残りの悪性細胞をも検出または定量するための種々の分子アッセイもしくは細胞アッセイを包含し得る。例えば、性別ミスマッチであるドナーおよびレシピエントの場合、残っている宿主由来の細胞は、適切な性別マーカー(例えば、Y染色体特異的核酸プライマーもしくはプローブ)の使用を介して検出され得る。ドナーとレシピエントとの間で単一のHLA遺伝子座がミスマッチの場合、残っている宿主細胞は、上記ドナーとレシピエントとの間で異なるクラスI遺伝子座もしくはクラスII遺伝子座のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析によって詳細に記録され得る。あるいは、腫瘍細胞に特異的な適切な分子マーカーが使用され得る。例えば、慢性骨髄性白血病におけるbcr/abl転座に対して、種々の腫瘍において活性な他の腫瘍遺伝子に対して、不活性化された腫瘍サプレッサ遺伝子、他の腫瘍特異的遺伝子、もしくは腫瘍細胞に対して特異的であることが公知の任意の他のアッセイ試薬に対して、特異的な核酸プライマーおよび/またはプローブが、使用され得る。これらもしくは機能的に匹敵する手順のいずれかが、残っている悪性細胞の証拠について上記被験体をモニターするために使用され得る。一実施形態において、本発明の方法は、コントロールと比較した場合、悪性細胞の存在において、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または少なくとも約100%の減少を生じる。
【0046】
本発明の方法に従う被験体の処置は、上記疾患、障害もしくは状態が、いずれかの方法で測定可能に改善される場合、有効であるとみなされ得る。このような改善は、多くの指標によって示され得る。測定可能な指標としては、例えば、特定の疾患、障害もしくは状態と関連した生理学的状態もしくは生理学的状態のセット(血圧、心拍数、呼吸率、種々の血球タイプの数、特定のタンパク質、炭水化物脂質もしくはサイトカインの血中レベル、または上記疾患、障害もしくは状態と関連した遺伝的マーカーの調節された発現が挙げられるが、これらに限定されない)における検出可能な変化が挙げられる。本発明の幹細胞もしくは追加細胞集団での個体の処置は、このような指標のうちのいずれか1つが、正常値範囲内もしくは正常値近くの値に変化することによってこのような測定に応答している場合、有効であるとみなされる。上記正常値は、種々の指標について当該分野で公知である正常範囲によって、またはコントロールにおけるこのような値に対する比較によって、確立され得る。医学においては、処置の有効性はまた、しばしば、個体の健康状態の個々の印象および主観的感覚によって特徴付けられる。従って、改善はまた、本発明の細胞集団の投与後に、主観的指標(例えば、個体の改善の主観的感覚、満足状態(well−being)の増大、健康状態の改善、エネルギーレベルの改善など)によって特徴付けられ得る。一実施形態において、本発明の方法は、コントロールと比較した場合に、上記の臨床的指標のうちの1種以上において、少なくとも約30%、少なくとも約35%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約125%、約150%、約175%、約200%、約250%、少なくとも約300%、またはそれ以上の改善を生じる。
【0047】
血液学的な回復の主な尺度は、好中球数である。好中球は、通常、血中の全白血球のうちの約45〜75%を構成する。上記好中球数が、血液1μlあたり1,000個細胞未満に低下すると、感染の危険性がある程度高まる;上記好中球数が1μlあたり500個細胞未満に低下すると、感染の危険性は、大きく高まる。好中球によって提供される重要な防御がない場合、感染制御は問題になり、そして被験体は、感染によって死亡する危険性がある。従って、臨床的状況(例えば、移植の状況)では、好中球数が早く回復するほど、被験体が病院から早く解放され得る。従って、好中球の臨床的に直接関連するレベルを達成するためにかかる時間の任意の短縮は、上記被験体にとって有益であり、血液学的な回復の促進として本明細書において企図される。本発明の目的のために、好中球生着は、少なくとも500個の好中球/μlの絶対好中球数(ANC)として定義される。上記好中球数は、個々の被験体(または複数の被験体の平均)がANC閾値に達する日付として、または移植後特定の日数までに500個好中球/μlのANCを有する被験体の割合(通常は、42日目あたり)として、またはある個体が特定の日付までに特定の閾値に達する確率として報告され得る。一実施形態において、本発明の方法は、10日目以前、11日目以前、12日目以前、13日目以前、14日目以前、15日目以前、16日目以前、17日目以前、18日目以前、19日目以前、20日目以前、21日目以前、22日目以前、23日目以前、24日目以前、25日目以前、26日目以前、27日目以前、28日目以前、29日目以前、30日目以前、31日目以前、32日目以前、33日目以前、34日目以前、35日目以前、36日目以前、37日目以前、38日目以前、39日目以前、40日目以前、41日目以前、42日目以前、43日目以前、44日目以前、45日目以前、46日目以前、47日目以前、または48日目以前に、好中球生着を生じる。別の実施形態において、正常とみなされる基準ANC数に患者が達する日数は、コントロール患者群に対して、5日間、6〜10日間、11〜20日間、または20日間超まで促進される。
【0048】
血液学的な回復はまた、血小板の臨床的に直接関連する回復によって測定され得る(当業者によって認識されるように、血液1μl単位で150,000〜450,000個の間の血小板が通常存在する)。従って、血小板の臨床的に直接関連する回復の速度の任意の増加は有利であり、本明細書で企図される。本発明の目的のために、血小板生着は、輸液の支援なしで、少なくとも50,000個の血小板/血液1μlの血小板数の維持として定義される。上記血小板数は、個々の被験体(または複数の被験体の平均)が上記血小板数閾値に達する日付として、または移植後特定の日数までに(通常、約180日目)少なくとも50,000個血小板/μl血液の血小板数を有する上記被験体の割合(または少なくとも50,000個血小板/μl血液の血小板数に達する被験体の確率)として報告され得る。一実施形態において、本発明の方法は、50日目以前、55日目以前、60日目以前、65日目以前、70日目以前、75日目以前、80日目以前、85日目以前、90日目以前、95日目以前、または100日目以前に、血小板生着を生じる。別の実施形態において、患者が正常であるとみなされる基準血小板数を達成する日数は、コントロール患者群に対して、5日間、6〜10日間、11〜20日間、または20日間超まで促進される。
【0049】
特定の実施形態において、T細胞回復の速度はまた、血液学的な回復の促進の指標である。T細胞回復の指標は、上記被験体におけるPHA誘導性増殖に対する応答および/またはCD4+細胞数の増加が挙げられ得る。上記CD4+の数は、個々の被験体(または複数の被験体の平均)がCD4+数の閾値に達する日付として、または移植後特定の基準日数までに(通常は、100日目)、閾値CD4+数を有する上記被験体の割合(または被験体が閾値CD4+数に達する確率)として報告され得る。一実施形態において、本発明の方法は、100日目に、コントロール集団の患者における数より少なくとも約25%〜100%以上であるT細胞数を生じる。別の実施形態において、患者が基準CD4数を達成する移植後日数は、コントロール群の患者が同じ基準CD4数を達成する日数よりも、約10〜約20日間早いか、約20〜約30日間早いか、約30〜約40日間早いか、約40〜約50日間早いか、または50日間を超えて早い。
【0050】
治療的応答はまた、総合的および/または事象なしの生存に関して測定され得る。事象なしの生存(EFS)は、移植から最初の事象の日までの時間として定義される。事象は、移植失敗、自己再構築(autologous reconstitution)、再発、または死亡として定義される。白血病被験体における再発は、標準的基準によって決定される。第3のエンドポイントは、急性GvHDの発生率の説明、および非再発死亡率の他の尺度が挙げられる。GvHDは、標準的基準に従ってスコア付けされる(Przepiorkaら.(1995)Bone Marrow Transplant.15:825−828)。一実施形態において、本発明の方法は、報告されるコントロールより少なくとも約30%、少なくとも約35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、少なくとも約300%、またはそれ以上の%改善された総合的および/または事象なしの生存(例えば、より少ない事象の発生率または事象のない(特に、III期および/またはIV期の急性GvHD)、生存日数の数の増大、および/またはコントロール集団と比較した場合に移植後特定の日付まで生存している患者数がより多いこと)を生じる。
【0051】
治療応答の別の包括的尺度は、180日目での総合的な生存である。この測定基準において、本発明に従って移植された患者群における生存は、従来の方法によって処置されたコントロール群における総合的な生存と比較される。本発明の一実施形態において、患者は、コントロール患者と比較して、少なくとも約5%の総合的な生存、少なくとも約6〜10%の総合的な生存、少なくとも約11〜15%の総合的な生存、少なくとも約16〜20%の総合的な生存、または20%超の総合的な生存の改善を示す。
【0052】
以下の実施例は、例示のために提供されるのであって、限定のために提供されるのではない。
【実施例】
【0053】
(実験)
実施例1:血縁関係にないミスマッチのUCB移植後の免疫再構築
免疫再構築は、UCB移植の約100名の生存者において評価し、650日間のメジアン(範囲は121〜2450日間)で追跡した。この研究の結果は、Kleinら(2001)Biol Blood and Marrow Trans 7:454−466において見いだされ得る。簡潔には、機能的パラメーターおよび免疫表現型パラメーターは、移植後3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、24ヶ月および36ヶ月で、移植した患者の末梢血においてアッセイした。患者を、一般に、移植後最初の3ヶ月間にわたってメチルプレドニゾロン(methyprednisolone)、および移植後最初の1年間にわたってシクロスポリンで維持した。移植後2年間および3年間に、免疫化を再び設けた。活動性の慢性のGvHDがない全ての生存している患者は、通常のCDC推奨に従って、死滅ワクチンおよび生ワクチンの完全な量(full complement)を受けた。乳児および2歳齢未満の幼児は、CD4数およびPHA応答によって測定される場合、移植後6ヶ月までにT細胞免疫機能を回復した。2歳〜12歳の小児は、移植後9〜12ヶ月までに同様の機能を回復した。対照的に、ティーンエイジャーおよび成人は、移植後3年までに免疫機能を回復した。上記宿主の胸腺は、上記UCB移植片からの免疫再構成に寄与するようである。患者が若くかつ胸腺が健康であるほど(例えば、移植前に放射線に曝露されていない)、胸腺の回復はより早くかつ上記移植片からの免疫再構築により早く寄与する。小児は、移植後1年までに正常化した一方で,成人は、移植後3年で年齢に対する正常の下限に近づいた。その間に、成人は、末梢機構によってT細胞を再構築した。より早い免疫再構築を有するそれらの患者は、全体的に、移植でより好転した。彼らは、移植後最初の2〜4ヶ月で、日和見感染症を発症させる可能性が低かった。この分類の患者は、優れた生存を有した。CD4細胞%は、日和見感染症なしという最良の予測変数であった(p=<0.001)。
【0054】
実施例2:先天性の代謝の間違い(Inborn Errors of Metabolism)を有する小児患者におけるUCB移植の臨床結果
臍帯血移植研究(COBLT)(複数施設の、見込みのある、NIHにより支援された、血縁関係にないドナー臍帯血移植の治験)からの最近の結果は、UCBTの分野をさらに進化させた。Kurtzbergら.(2005)Biology of Blood and Marrow Transplantation 11(2):2(abst 6);Kurtzbergら.(2005)Biology of Blood and Marrow Transplantation 11(2):82(Abst 242)を参照のこと。
【0055】
COBLT研究の異なる階層は、先天性の代謝の間違いを有する69名の小児において臍帯血移植の有効性を評価した。小児性クラッベ病およびハーラー症候群(MPS I)を有する赤ん坊におけるUCBTの結果の事前および未決のままの報告が増加した。通常のプロトコルは、予備レジメン(ブスルファン、シクロホスファミド、ATG)およびGvHD予防(シクロスポリン、ステロイド)について使用した。MPS 1−V(n=36、20名は以前に報告した)、グロボイド細胞型白質ジストロフィー(クラッベ病、n=16)、副腎脳白質ジストロフィー症(n=8)、異染性白質ジストロフィー(n=6)およびテイ・サックス病(n=3)を有し、メジアン年齢1.8歳(範囲は0.1〜11.7歳)およびメジアン体重12.3kg(範囲3.9〜42.3kg)の患者に、部分的にHLAがミスマッチの、血縁関係にないドナー臍帯血(COBLT(83%)もしくは他の(17%)バンクから選択されたメジアン8.7x10e7個有核細胞/kg(範囲2.8〜38.8個細胞/kg)を与える)を移植した。CBUを、保菌者ドナー(carrier donor)の使用を防ぐために、酵素活性についてスクリーニングした。患者の64%が男性、77%が白色人種であった。HLAクラスI A&Bで低分解能タイプ分けおよびHLAクラスII DRB1で高分解能タイプ分けすることによって測定される場合、上記患者のほぼ半数(48%)が、4/6でHLA遺伝子座がマッチしているUCB単位を受けた。
【0056】
好中球生着(ANC 500/μL、100日目までで90%のドナーキメラ現象を伴う)の累積発生率は、78%であった(メジアンは26日間で起こった)。急性のII期〜IV期のGvDHの累積発生率は、46%であった。180日間および1年間での生存確率は、それぞれ、80%および72%であった。レシピエントとドナーとの間のHLA不均衡のレベルは、生着にも、GvHDにも、総合的な生存にも影響を及ぼさなかった。MPS、TSD、GLDおよびMLDを有する生存している患者は全て、移植後の巧妙さ(skill)を安定化したおよび/または増した。ALDを有する8名の患者(そのうちの全員が、移植の紹介の時点で軽度から中程度の臨床的症状を有した)のうちの3名は、安定化の前に、神経学的悪化とともに疾患進行を経験した。症状の発生前に移植した、ハーラー症候群の重篤な表現型を有する赤ん坊(Kurtzberg,2005(前出)およびDexterら(1977)J Cell Physiol 91:335−344)およびクラッベ病を有する新生児(Gartnerら(1980)Gartner Proc Natl Acad Sci 77:4756−4759)における結果は、年齢にあった正常な思考力指数を有する患者の大部分で前例がなかった。移植時の年齢が若いほどかつ上記疾患の過程において早期であるほど、総合的結果はよりよくなる。従って、臍帯血移植が、先天性の代謝の間違いを有する乳児、幼児および小児の早期の処置のための速やかに入手可能なドナー供給源を提供することは明らかである。
【0057】
実施例3:ALDHbr UCB細胞を富化するための事前の精製工程
移植のために選択された臍帯血単位を、細胞、ヘスパン(hespan)および10% DMSOの合計25mlで、2区画の低温保存バッグ(20%/80% 分割)中に保存した。移植の−5日目に、その20%(5ml)画分を、液体窒素から取り出し(手順 5D.160.01)、どろどろした粘稠性になるまで37℃で融解した。デキストラン/アルブミンを添加して、最初の容積の4倍に希釈し、上記細胞を洗浄し、ペレット化し、ALDESORT(登録商標)アッセイ緩衝液/100U/ml DNase I(Aldagen,Inc.,Durham,NC)中に再懸濁した。赤血球 対 白血球の比を、<1x10e8個細胞/mlに調節した。上記細胞は、細胞を標識するために、EASYSEP(登録商標)(StemCell Technologies)抗グリコホリンAおよびCD14カクテルで除去した系統であった。上記標識した細胞を、EASYSEP(登録商標)磁性ナノ粒子と混合し、室温で10分間インキュベートした。次いで、上記サンプルを、系統陽性細胞を除去するEASYSEP(登録商標)磁性に露出した。残っている系統除去細胞を、コニカルチューブの中へと穏やかに吸引した。RBC:WBC比をチェックすると、<1:10であるはずである。RBC:WBC比がより高ければ、上記EASYSEP(登録商標)除去を反復した。
【0058】
実施例4:高速FACSソーティングによるALDHbr UCB細胞の単離
上記系統除去細胞を、活性化ALDESORT(登録商標)試薬で染色し、37℃で15分間インキュベートした。上記反応を停止させ、コントロールを調製して、上記ALDHbr細胞を、FACSAriaソーター(BD Biosciences)での高速フローソーティングによって単離した。ALDHbr細胞を単離するための方法は、Stormsら,1999(前出)およびPCT公開番号WO 2005/083061(これらはともに、それらの全体が本明細書に参考として援用される)中により十分に記載される。上記細胞を凍結し得るか、注入し得るか、または実施例5に記載されるようにさらに刺激し得る。
【0059】
実施例5:ALDHbr細胞の融解、分類、刺激および注入
予定した従来のUCB移植(UCBT)の5日前に、UCB細胞を融解し、ALDHbr分類(ALDHbr sorted)し、そしてサイトカイン刺激した。簡潔にいうと、UCB単位の20%部分を保存から取り出し、37℃の水浴で融解し、デキストランおよびアルブミンと混合し、そして洗浄した。生じた細胞ペレットを、EASYSEP(登録商標)培地(Stem Cell Technologies)に再懸濁して、系統陽性細胞を除去した。残余の系統陰性細胞は、<1:10のWBC:RBC比を達成するように除去したRBC細胞であった。この細胞集団を、FACSaria(Becton Dickenson)上で分類し、ALDHbr細胞の精製した集団を単離した。このALDHbr細胞を、血清を含まない培地中におけるSCF 50ng/ml、FLT−3 10ng/mlおよびIL−7 10ng/mlからなるサイトカインカクテル(Cellgenix SCGM)を使用して培養に置き、拡散交換バッグ(diffusion exchange bag)(American Fluoseal)において5日間、37℃、5% CO2で培養した。培養の完了時に、刺激されたALDHbr細胞を、注入用のノーマルセーラインの付属バッグを備えた標準的な移動パックに移した。
【0060】
0日目(移植日)に、従来のUCB移植片を注入して約4時間後、サイトカイン刺激されたALDHbr UCB細胞を採取し、計数し、生存性およびグラム染色についてチェックし、注入セットに接続し、注入のための骨髄移植ユニットへと運んだ。
【0061】
実施例6:従来からの操作していない移植片(第1の細胞集団)についてのUCB融解および注入
UCBのバッグを、フード下で無菌技術を使用して、実験室で融解した。上記UCBを37℃のウォーターバス中で融解し、5% アルブミン/デキストラン溶液[アルブミン25%(12.5gms/50ml)(500mlデキストラン中に25gms)]を使用して1:1容積まで希釈して、細胞生存性を保った。上記5% アルブミン/デキストラン溶液を、ストップコック付き移動用バッグを使用して、上記融解したUCBにゆっくりと添加し、穏やかに混合した。上記融解しかつ希釈したUCBを次に秤量し、遠心分離した(4℃で2000rpm×20分間)。標本を、細胞数および生存性、培養、クローン産生性アッセイ、ならびに表現型のために得た。DMSOおよび上記アルブミン/デキストラン溶液を含む上清を除去し、上記UCBペレットを、5% アルブミン/デキストラン溶液を使用して1:1容積まで再び再懸濁した。上記UCBを患者同定情報で標識し、注入のためにベッドサイドに移動した。上記UCBを、上記患者の中心静脈カテーテルを介して、1〜3ml/分の速度で注入した。UCBを、インラインフィルターなしで注入し、照射しなかった。上記患者が胸部締め付けまたは他の症状を発生した場合、注入の残りを続行する前に、短期間の休憩(1〜2分間)をとらせた。大容積のUCB(>15ml/kg)が注入されるべきである場合、上記UCBの半分を注入し得、続いて、30分間の休憩がとられ、次いで、上記UCBのその残りが注入した。バイタルサインを、注入が完了して2時間後まで、15分ごとにとる。水和(2.5〜3.0ml/kg/時間)を、UCB注入が完了して12時間後にわたって維持する。容積過負荷または減少した尿排出が生じる場合、フロセミド(0.5〜1.0mg/kg/用量)を与える。
【0062】
実施例7:悪性状態を有する患者のコンディショニング(Conditioning)
同種異系BMTを受けているALLを有する患者のための標準的細胞減少(cytoreduction)は、シクロホスファミド(100〜200mg/kg)および全身照射(TBI、1,000〜1440cGy)を包含する。これらのレジメンを用いると、事象のない生存率は、2回目の軽減において、ALLを有する小児の20〜45%および成人の20%で、およびマッチしている血縁関係のある同種異系BMTを受けているANLLを有する患者の最大60%で達成され得る。その後の軽減では、事象のない生存は、再発で移植した場合に治癒した患者のうちのわずか8%で減少した。ATGは、さらなる免疫抑制治療のために使用した;メチルプレドニゾロンは、患者がATGを許容できない場合の代わりにした。
【0063】
COBLT研究からの生着速度、GvHD、再発および生存(Kleinら.2001(前出))を歴史的コントロールとして使用して、上記移植の成功をベンチマーク問題でテストする(benchmark)。
【0064】
実施例8:非悪性状態を有する患者のコンディショニング
同種異系BMTを受けている非悪性状態を有する患者についての標準的細胞減少は、4日間にわたってブスルファン16mg/kg(m2あたりの投与に対して小児患者について調節され、そして第1の用量PKによる目的レベルで追跡される)、4日間にわたってシクロホスファミド200mg/kgおよび3日間にわたってATG 90mg/kgを含む。このレジメンを使用する血縁関係のないドナー臍帯血による生着速度は、80〜90%の間に及ぶ。TBIは、後期の有害事象(例えば、増殖遅延、内分泌機能不全、認知障害、慢性肺疾患または心筋症)を最小にするために避けた。
【0065】
実施例9:刺激後のALDHbr UCB細胞のエキソビボ増殖
ALDHbr サイトカイン刺激されたUCB細胞の能力を評価するために、5日間の培養物を採取し、さらに2週間、増殖培地中でインキュベートした。TNC、生存性、クローン性の造血前駆細胞の増殖およびALDHbr、系統陰性細胞の増殖をスコア付けした。7個の別個の実験において、総有核細胞の平均の増殖は、10.74±10.62倍であった。個々の結果は、以下の表1に示される。形態学的な試験において、増殖した集団のうち約50%が、芽細胞の外観を有した。
【0066】
表1. 12日目における倍数増殖(Fold Expansion)。5日目〜12日目まで、サンプルを、IMDM/10% FCS/10% HS、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、50ng/ml SCF、10ng/ml IL−7、10ng/ml FLT3−L、10ng/ml TPOおよび10ng/ml GM−CSF中で培養した。
【0067】
【表1】

実施例10:生着の評価
末梢血サンプルを、キメラ現象について+30日またはそのあたり、60日またはそのあたり、および100日またはそのあたりで試験した。骨髄吸引液および生検を、細胞質状(cellularity)およびドナーキメラ現象について、41〜44日目に、上記患者がこのときまでに好中球回復を示していなければ行った。次いで、血小板数、ANCおよび成功裏の生着の種々の他の臨床的指標を、当該分野で公知のように評価した。刺激したサンプルおよび刺激していないサンプルについての結果を、生着の統計学的評価のために合わせた。好中球生着の速度を図1および図2に示す。血小板生着の速度を図3および図4に示す。
【0068】
本明細書に記載される、本発明の多くの改変および他の実施形態は、前述の詳細な説明および関連する図面において示される技術の恩恵を受ける、これら発明が属する分野の当業者にとって想起される。従って、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるのではなく、かつ改変および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲および本明細書に開示される実施形態一覧の範囲内に含まれることが意図されることは、理解されるべきである。特定の用語が本明細書において使用されるが、それらは、広い意味でかつ説明の意味でのみ使用されるのであって、限定目的で使用されるのではない。
【0069】
本明細書で言及される全ての刊行物および特許出願は、本発明が属する分野の当業者のレベルを示す。全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が具体的にかつ個々に参考として援用されることを示されるかのように同程度まで、本明細書に参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における血液組織を再構築するための方法であって、該方法は、該被験体に、臍帯血由来の第1の細胞集団および第2の細胞集団を導入する工程を包含し、ここで該第2の細胞集団は、該第1の細胞集団の2時間後から24時間後に導入され、そして少なくとも該第2の集団は富化されたALDHbr幹細胞集団である、方法。
【請求項2】
前記第2の細胞集団は、前記第1の細胞集団の約4時間後に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の細胞集団および前記第2の細胞集団が、同一の臍帯血単位またはドナーに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の細胞集団および前記第2の細胞集団が、異なるドナーに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体は、骨髓破壊(bone marrow ablation)後に造血再構築(hematopoietic reconstitution)の必要がある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
癌を有する被験体における骨髄破壊性処置後の血液機能を回復させるための方法であって、該方法は、第1の細胞集団および第2の細胞集団を該被験体に導入する工程を包含し、ここで該第2の細胞集団は、該第1の細胞集団の2時間後から24時間後に導入され、そして少なくとも該第2の集団は富化されたALDHbr幹細胞集団である、方法。
【請求項7】
前記被験体は、癌治療に関連した後遺症のための処置が必要である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
骨髄破壊後の被験体における造血回復を加速するための方法であって、該方法は、第1の細胞集団および第2の細胞集団を該被験体に導入する工程を包含し、ここで該第2の細胞集団は、該第1の細胞集団の2時間後から24時間後に導入され、そして少なくとも該第2の集団はALDHbr幹細胞集団である、方法。
【請求項9】
前記被験体における好中球生着までの時間は、コントロール被験体における好中球生着までの時間と比較して短縮される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
血小板生着までの時間は、コントロール被験体における血小板生着までの時間と比較して短縮される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
遺伝性障害を有する被験体における骨髄破壊性処置後の血液機能を回復させるための方法であって、該方法は、第1の細胞集団および第2の細胞集団を該被験体に導入する工程を包含し、ここで該第2の細胞集団は、該第1の細胞集団の2時間後から24時間後に導入され、そして少なくとも該第2の集団は富化されたALDHbr幹細胞集団である、方法。
【請求項12】
癌を有する被験体における骨髄破壊性処置後の骨髄の幹細胞もしくは前駆細胞の活性を回復させるための方法であって、該方法は、第1の細胞集団および第2の細胞集団を該被験体に導入する工程を包含し、ここで該第2の細胞集団は、該第1の細胞集団の2時間後から24時間後に導入され、そして少なくとも該第2の集団は富化されたALDHbr幹細胞集団である、方法。
【請求項13】
遺伝性障害を有する被験体における骨髄破壊性処置後の骨髄の幹細胞もしくは前駆細胞の活性を回復させるための方法であって、該方法は、第1の細胞集団および第2の細胞集団を該被験体に導入する工程を包含し、ここで該第2の細胞集団は、該第1の細胞集団の2時間後から24時間後に導入され、少なくとも該第2の集団は富化されたALDHbr幹細胞集団である、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−509360(P2010−509360A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536471(P2009−536471)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084022
【国際公開番号】WO2008/067126
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(506274442)アルダジェン, インコーポレイテッド (5)
【出願人】(502347087)デューク・ユニバーシティ (19)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】