幹細胞
【課題】単離された幹細胞が、CD34+であって、自己再生でき、外胚葉、中胚葉および内胚葉細胞に分化することができ、組織培養グレードプラスチックに付着することができることを特徴とする単離された幹細胞集団、細胞の単離方法、それらを培養し分化させる方法、分化の方法の結果物、利用とりわけ幹細胞およびそれらの分化子孫の治療的な利用を提供する。
【解決手段】単離された幹細胞が、CD34+であって自己再生でき、外胚葉、中胚葉および内胚葉細胞に分化することができ、組織培養グレードプラスチックに付着することができることを特徴とする、単離された幹細胞集団。
【解決手段】単離された幹細胞が、CD34+であって自己再生でき、外胚葉、中胚葉および内胚葉細胞に分化することができ、組織培養グレードプラスチックに付着することができることを特徴とする、単離された幹細胞集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は幹細胞に関し、具体的には骨髄および血液から単離できる新型幹細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、新しい細胞を産生して、生体におけるすべての組織に対する損傷を修復することができる。それゆえあらゆる種類の再生医学にとり計り知れない可能性を有する。幹細胞は、体のあらゆる組織および器官に存在するが、骨髄および血液のようなものは、他臓器、たとえば肝臓および脳よりも容易に入手し得る。しかしながら幹細胞は骨髄および血液においては極めて少数しか存在せず、臨床的に利用されるようになる前に、抽出されてから数を増大させる(「増大させる」)必要がある。現在、組織特異的な幹細胞移植を実施するために充分な数の幹細胞を提供する目標を達成するための多数の試みがなされている。
【0003】
幹細胞の供給源として骨髄に努力が集中してきた。これまでの証拠から、骨髄は2種類の幹細胞を含むことが示唆された。すなわち血液の製造を担っている造血幹細胞(HSC)ならびに体組織の限定された領域に属す細胞を産生できる間葉幹細胞(MSC)である。MSCは、正確には定義することができず、また単離もできない。したがって多種類の細胞を産生するためにMSCには限界があることを示している。MSCは、培養中に刺激に反応して骨芽細胞(osteoblasts)、軟骨芽細胞(chondroblasts)および脂肪細胞(adipocytes)を形成するが、肝細胞といったMSCが産生できない多種類の細胞もある。MSCの長期にわたる培養の結果、組織再生に最も広い可能性を有するとこれまで考えられている多能性成体前駆細胞(multipotent adult progenitor cells;MAPC)と称される細胞亜集団が伸張することとなる。しかしながら、MAPCが出現する前に長期にわたる組織培養および多数回の細胞分裂が必要であるということは、第一に遺伝上の損傷を蓄積してしまうかも知れないこと、第二にそれらが骨髄の正常な細胞成分を表すということを確証することは不可能であることを意味する。実際にはそれらが組織培養の人工的な生成物であるかも知れない。これらの重要な考察は、MAPCの臨床的な使用を禁忌とすることになるであろう。MAPCは、内胚葉、外胚葉または中胚葉のマーカーを有する細胞を形成できるが、培養中に造血細胞を実質上、産生しない。
【0004】
それらの天然タンパク質産物を生成するために幹細胞から派生した分化細胞を用いることは、遺伝子組換え体のタンパク質を生成する細胞の使用よりも有利である。特にタンパク質生成物のグリコシル化および翻訳後修飾を適切になし得るためである。
【発明の概要】
【0005】
本発明者は成体の骨髄および血液、たとえば末梢血液から、直接に単離することができ、外胚葉細胞、中胚葉細胞および内胚葉細胞に分化することができる特異な能力を有する新型の幹細胞を同定したのである。これらの細胞は、もし全能性でなければ明らかに多分化能性である。よって本明細書に記載される幹細胞は、組織の移植において自家移植の形態(自身から自身へ)で使用される新規な細胞供給源を提供する。さらに後記するようにこれらの幹細胞は長期間の組織培養を必要としない。
【0006】
本発明の幹細胞は、好ましくは成体の骨髄または成体由来の末梢血液といった、成体から採取されるサンプルより得ることができる。よって該細胞は、好ましくは成体の幹細胞である。かかる細胞は臍帯といった他のサンプルから得てもよい。よって本発明の細胞集団は、成体の細胞のみならず胎児の細胞を含む態様でもある。胎児からはたとえば胎児の肝臓または骨髄もまた使用される。
したがって本発明の一態様において、幹細胞の単離された細胞集団を提供する。該幹細胞は自己再生することができ、かつ外胚葉細胞、中胚葉細胞および内胚葉細胞、好ましくは造血細胞に分化することができ、CD34+である。そうした幹細胞は成体の幹細胞が好ましい。
【0007】
これらの幹細胞は、さらに培養中においてプラスチック(例:標準的な組織培養容器のプラスチック)に付着し得る能力によって特徴づけられる。よって該細胞は、本明細書で記載される培養方法において、さらに特別の条件または修飾が何らなくともプラスチックに付着する「能力」がある。適切な容器はコーニング社(New York, USA)によって製造されているものである。
【0008】
本発明の幹細胞は、「支持細胞層(feeder layers)」、すなわちその幹細胞の成長を支持してくれる細胞(その代表的なものは、ガンマ線照射により不活性化されて自らは増殖または分裂をしないが、重要な代謝物質を供給してくれる細胞)を必要としないという事実によっても特徴づけられるであろう。したがって本発明の幹細胞の培養中は、支持細胞層を使用しないことが好ましい。
【0009】
これらの幹細胞の主要な特徴で、かつ特別に有利といえる特徴は、外胚葉、中胚葉、内胚葉系の細胞を含む、きわめて広範な多種多様の型の細胞に分化し得る能力である。したがって本発明の幹細胞は、胚の3つの胚葉;外胚葉、中胚葉、内胚葉系から由来して増殖する種類の細胞に分化することができる。たとえば造血細胞および筋肉細胞は、中胚葉、神経細胞または上皮細胞は、外胚葉、ならびに腺上皮細胞または肝細胞は内胚葉細胞に由来する。
【0010】
前記細胞集団は、その集団が他の種類の細胞を実質的に含まないという点で、「単離」されている。CD33、CD38、HLA/DR、CD19およびCD3を発現する細胞の種類を実質的に含有しないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、実施例で提示される実験データと矛盾しないと解されるべきである。また、前記細胞集団は、専らある特定の直系系譜にのみ属している細胞および/またはそれに関係するマーカーを担持する細胞を含まないことである。該細胞集団は、特定の直系細胞系譜に係わる細胞を20%未満、好ましくは10%未満、たとえば5%未満で有することが望ましい。本発明の幹細胞集団の単離において、消極的な選別(細胞の除去)と積極的な選別(細胞の単離)とを結合させることは役に立つ。いずれの場合も抗体の結合が利用される。「単離された細胞」には、サンプルから直接に単離された細胞のみならず、培養された細胞、またはそのようなサンプルに由来する細胞も含まれる。
【0011】
幹細胞は、成体の骨髄で産生されると考えられているが、血液にも見出される。本発明の幹細胞は標準的な試料採取の技術に従ってこれらの供給源のいずれかから集めてもよい。血液サンプルは、循環系における幹細胞の数を増加させるためにG-CSFを用いて幹細胞を流動化させた後に入手することが好ましい。たとえば、5μg/kg体重/日を皮下に5日間投与してもよい。直接に骨髄サンプルを吸引で得ることも可能である。
【0012】
骨髄細胞は、骨髄の源、たとえば腸骨稜、脛骨、大腿骨、脊椎または他の骨の窩から得てもよい。骨髄は、常法の技術に従って、骨髄から吸引することも便利である。他の幹細胞の供給源として、成体の末梢血液および臍帯血を含む血液が挙げられる。
【0013】
該細胞は哺乳類起源であることが好ましく、すなわち哺乳類サンプルから単離してもよく、あるいはそのようなサンプルから単離された細胞に由来する。特に好ましい哺乳類は、ヒトおよびげっ歯類(マウス)である。好ましい哺乳類としてさらにウシ、ウマおよび伴侶動物(ペット動物)なども挙げられる。
【0014】
直系に専属する細胞(cells of dedicated lineage)を最初に除去することにより細胞を分離する目的に、様々な技術を使用することができる。モノクローナル抗体は、特定の直系細胞および/または分化の段階に関係するマーカー(膜表面タンパク質)を同定するために特に有用である。そうした抗体が固体支持体に付着され、大雑把な分離を可能とする。使用される分離技術は、収集される分画の生存活力保持が最大となるようにしなければならない。
【0015】
「比較的大雑把な」分離、つまり存在している全細胞の10%まで、通常は約5%を超えない、好ましくは約1%を超えない部分は該マーカーを有しないが、保持される細胞集団とともに残るかも知れない。異なる効能の様々な技術が利用されるためである。使用される具体的な技術は、分離の効率、方法論上の細胞毒性、実施の手軽さとスピード、精巧な装置および/または技術技能の必要性に依存するであろう。
【0016】
分離の操作には、磁気的分離、抗体でコートした磁性ビーズの利用、親和力クロマトグラフィー、モノクローナル抗体に加えられるか、またはモノクローナル抗体と一緒にして使用される細胞毒性の製剤(たとえば補体および細胞毒素)、ならびに固体マトリックス(たとえばプレート)に付着させた抗体を用いて洗いながら選別すること、または他の便利な技術が挙げられる。正確な分離を与える技術として、精巧さ、具体的には複数の色チャンネル、小さい角度で非鋭角的な光散乱を検出するチャンネル、インピーダンスチャンネルなどを種々の程度に変更できる蛍光活性化細胞ソーターが含まれる。
【0017】
特定タイプの細胞を容易に分離することを可能とするために、抗体を簡便には、直接分離を可能とするマーカー(磁性ビーズなど)、支持体に結合させたアビジンまたはストレプトアビジンを用いて除去することができるビオチン、蛍光活性化細胞ソーターとともに用い得る蛍光発色団などに結合させてもよい。いずれの技術も残っている細胞の生存活力に悪影響を与えることなく利用することができる。
【0018】
好ましくは血液または骨髄サンプルの単核成分は、Lymphoprep(登録商標、Axis Shield社)の密度勾配を利用して分離される。CD34+細胞は、その単核成分からMiniMACS (Miltenyi Biotec)技術を用いて分離することができる。
【0019】
本発明の幹細胞は、それらを得るために使用された諸方法によってさらに特徴づけることができる。かくして親和力精製と付着方法による選別との組み合わせによって該細胞を得ることができる。さらに具体的には、該細胞をCD34モノクローナル抗体(MAb)で標識し、次いで自らはCD34Mabに結合する(常)磁性ビーズと結合させる。
【0020】
あるいは自らはCD34Mab(このものは細胞に結合していく)で標識されるビーズを、用いてもよい。標識された、または結合された細胞は、次にカラムに適用され磁石で所定位置に保持される。よって標識されなかった細胞は溶出され、標識された細胞は磁石を取り除くことによって(あるいはその磁石からカラムを外すことによる)放出させることができる。
【0021】
このように放出されたCD34+細胞は、次に組織培養プラスチック容器内で適当な温度、たとえば35〜38℃、好ましくは37℃で、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも3時間、たとえば3〜5時間、インキュベートすることができ、この際、非付着性細胞はHBSS(Hanks balanced塩溶液)で洗浄することにより除去される。付着性CD34+細胞は本発明の幹細胞であり、全CD34+集団の1%未満で含まれる。好ましくはそれらの細胞が実質的に均一な集団であり、他の幹細胞の亜集団によっては通常汚染されていない。典型的には収集された細胞の30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは3%未満が、本発明の幹細胞以外のものである。しかしながら、後記実施例が示すように、個々のマーカーの全部が必ずしも単離された集団におけるいずれの細胞にも見出されないかも知れず、「均一な集団」という用語は、このことを心に留めて解するべきである。本発明の幹細胞集団は、好ましくはCD34発現に関して均一であり、組織培養グレードのプラスチックに対して付着し、小さいリンパ球様の形態である。「付着性の」細胞は、3回の活発な洗浄に抵抗して、固体支持体(特に組織培養グレードのプラスチックまたはガラス)から離れない細胞として定義される。CD34+細胞のうち、付着性サブセットの有利な性質は、付着性細胞が培養用細胞を調製する場合に普通は廃棄されるために驚くべきことである。
【0022】
本発明の幹細胞は、幹細胞の標準的な定義に一致して自己再生することができる。すなわち広範囲の様々なタイプの細胞に分化するのみならず、幹細胞は分裂して更に幹細胞を形成することができる。
【0023】
本発明の幹細胞は、さらにCD34+として確認され、すなわち幹細胞について、とりわけ骨髄で産生される幹細胞(HSCおよびMSC)について、抗原CD34(見出される糖タンパク質マーカー)を発現するがそればかりではない。本発明の幹細胞集団は、Thy-1マーカーを発現している細胞について富化されてもよい。つまり、Thy-1+である細胞の相当割合を含むようにである。したがって幹細胞の集団は、出発の細胞集団(サンプル)に対し、Thy-1について富化させることができる。実施例5は、平均して細胞の28.1%、しかしながら90%までがThy-1+であることを示している。
【0024】
もっと具体的にはそれらの細胞は、CD34+、CD38-、CD33-およびHLA-DR-として確認されるかも知れない。好ましくは該細胞集団がAC133+、Thy-l+および/またはc-met+について富化され、AC133+、Thy-l+および/またはc-met+が優勢であることがより好ましい。
【0025】
本発明の幹細胞はそれらが丸い単核の細胞であり、高い核:細胞質の比を有してむしろ小さい点でリンパ球様である。そうした形態は原始幹細胞と関係がある。
該細胞は、培養で16日未満、たとえば12-14日で分化した細胞を産生する能力によって特徴付けられる。好ましくはそうした分化が、14日未満、たとえば10日未満、より好ましくは7日未満、さらには4〜5日で観察される。
【0026】
本発明の幹細胞は、以下の工程によって得ることができると特徴づけられる:
(i) 造血組織(すなわち血液または骨髄サンプル)を密度勾配分離にかけること;
(ii) 低密度細胞をCD34用の親和性リガンド(常磁性ビーズに付着していることが好ましい)にさらす;
(iii) 該CD34リガンドに付着した細胞を回収する;
(iv) CD34+細胞亜集団を組織培養グレードのプラスチックにさらす;
(v) そのプラスチックに付着したCD34+細胞を取り戻す。
【0027】
本発明の幹細胞サンプルは、2004年9月24日、欧州培養細胞収集所(European Collection of Cell Cultures;ECACC),Health Protection Agency, Porton Down, Salisbury, SP40JG, UKに受託番号04092401号で寄託された。本寄託は発明者によってなされ、該細胞系列は「幹細胞Omnicyte」の名前が与えられた。
【0028】
本発明の幹細胞は、いずれの動物起源であってもよく、たとえば実験動物、家畜またはペット動物である。好ましくは霊長類であり、ヒトが最も好ましい。
さらなる態様で、本発明は、次の工程を含む培養物を提供する:
(i) 単離された成体の幹細胞集団で、この場合該幹細胞はCD34+であり、自己再生が可能であって、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができ、
(ii) 該幹細胞の成長を支え得る培地。
【0029】
好ましくは本発明は次の工程を含む培養物を提供する:
(i) (単離された)幹細胞集団で、この場合該幹細胞はCD34+であり、自己再生が可能であって、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができ、組織培養グレードのプラスチックに付着することができ、
(ii) 該幹細胞の成長を支え得る培地。
【0030】
いったん幹細胞が単離されれば、それらは間質細胞(stromal cells)、たとえば骨髄、胎児胸腺または胎児肝臓から得ることができ、幹細胞の維持に関係する成長因子の分泌をまかなうことが明らかにされているような間質細胞による馴化培地で成長させることにより増殖させてもよい。また幹細胞は、そのような間質細胞との同時培養、あるいは幹細胞の増殖を支える維持因子を含む培地での成長により増殖させてもよい。この場合、その間質細胞は、自己性(autologous)、同種異系(allogeneic)または異種(xenogeneic)であってもよい。同時培養において使用する前に、間質細胞混合調製物は、望まない細胞を除去するため、たとえば抗体-毒素複合物、抗体および補体などを利用し、適切なモノクローナル抗体を用いることによって造血細胞を含まないようになっているかも知れない。あるいはクローン化された間質細胞系(ここで同種異系または異種である)を使用してもよい。したがって「培地」に対する上記言及には間質細胞のような細胞を含むものとする。
【0031】
本発明幹細胞およびそれから由来する分化した細胞は、液体窒素中での凍結保存でも生き延び得る。
さらに別の態様において本発明は、成体の幹細胞集団を単離する方法を提供する。その幹細胞は、CD34+であって、自己再生可能であり、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができる。その方法において、血液または骨髄のサンプルを患者から採取し、その中から該細胞集団を抽出することを含む。本発明は、幹細胞集団を単離する方法を提供し、その幹細胞は、CD34+であって、自己再生可能であり、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができ、また組織培養グレードのプラスチックに付着することができることが好ましい。その方法において、血液または骨髄のサンプルを患者から採取し、その中から該細胞集団を抽出することを含む。好ましい抽出工程は上で論じられ、患者の血液をサンプリングする際には、幹細胞の可動化が典型的な最初のステップとなるが、これは患者にG-CSFを投与することによって実施されることが好ましい。
組織培養プラスチックへの付着は、骨髄間葉幹細胞、単球(monocytes)およびマクロファージを含む数種類の細胞の性質であるが、CD34陽性細胞の亜集団を確認するか単離するために使用されることはこれまでなかった。組織培養プラスチックへの付着は、原始幹細胞の選別にとり、複数抗体を標識する操作または他の手法に頼る必要もなく単純で、再現性があり、実用的な手段となることが見出された。本発明のCD34+細胞は、ガラスにも付着することができる。したがって本発明の方法において、組織培養グレードのプラスチックの代わりにガラスまたは他の適当な固体支持体を使用することもできる。
【0032】
本発明の幹細胞は、研究関連、たとえば幹細胞再生に関係した成長因子の検出と評価において有用性がある。該幹細胞は、遺伝疾患の治療においても、自己の幹細胞における遺伝子の修飾または置換によって直接的な有用性があるであろう。本発明の幹細胞は、特に造血細胞、たとえばβ-地中海貧血(thalassemia)、鎌状細胞貧血症といった造血細胞に関係する疾患の治療に使用することができる。その場合、野生型の遺伝子が幹細胞に導入される。かくして、本発明の別の態様として、単離された成体の幹細胞集団を提供する。それらの幹細胞は、CD34+であって、自己再生可能であり、造血細胞および間葉細胞に分化することができる。これらの細胞は、治療に使用される場合、治療用遺伝子を取り込む。
【0033】
好ましくは、本発明は、次なる単離された幹細胞集団を提供する。それらの幹細胞は、CD34+であって、組織培養グレードのプラスチックに付着することができ、自己再生可能であり、造血細胞および間葉細胞の両方に分化することができる。これらの細胞は、治療に使用される場合、治療用遺伝子を取り込む。
【0034】
同様にして本発明は遺伝子治療の方法を提供する。その方法は、それを必要としている患者に幹細胞集団を投与することを含む。その幹細胞はCD34+であって、自己再生可能であり、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができ、かつ治療用遺伝子を取り込むことができる。
【0035】
好ましくは、本発明は遺伝子治療の方法を提供し、それを必要としている患者に幹細胞集団を投与することを含む。その幹細胞はCD34+であって、組織培養グレードのプラスチックに付着することができ、自己再生可能であり、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができ、かつ治療用遺伝子を取り込むことができる。
【0036】
好適な治療用遺伝子として、患者において欠陥のある遺伝子の野生型または薬剤耐性の遺伝子が挙げられる。本発明の幹細胞は追加の治療用遺伝子がなくても、幹細胞が不足している患者の造血系を再生することにおいて依然として治療上の有用性を有している。
【0037】
多大な関心が向けられるさらなる有用性は、本発明の幹細胞から異なるタイプに分化した細胞の形成に関係している。これまでの図に示されているように、間葉細胞、造血細胞、血管内皮細胞、上皮細胞、管形成細胞および樹状突起形成細胞を、短いタイムスケールで有利に形成することが可能である。特に造血細胞および間葉細胞の調製は好ましい。
【0038】
細胞は、14日未満の日数もすると肝臓、神経、間葉系、血管内皮、上皮の細胞および造血細胞の出現で観察される。幹細胞は、所望する細胞のタイプに応じて、異なるサイトカインの混合物で培養される。
【0039】
該混合物は、典型的にはG-CSF、GM-CSF、IL-3および幹細胞因子を含み、またHGFおよびFGFが肝細胞の分化を刺激するために、ニコチンアミドおよびLY294002が、膵細胞の分化を刺激するために、ならびにFGFおよびジブチリルcAMP(dibutyryl cyclic AMP)が神経細胞の産生を促進させるために加えられる。他の成長因子が骨、軟骨、骨格筋および心筋、腎臓、肺、神経、皮膚および内分泌組織といった、他のタイプの細胞分化にも重要であることは当業者に知られている。このようにして産生される好ましい細胞のタイプは、肝細胞、膵細胞、造血細胞、神経細胞および乏突起膠細胞(オリゴデンドロサイト、oligodendrocyte)である。
【0040】
よって本発明の別の局面から、本発明の幹細胞を複数の成長因子とともに培養することを含む、標的とする種類の細胞産生の方法が提供される。実施例および図に示されるように、良好に分化していることは、視認、フローサイトメトリー、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)または免疫表現型解析(immunophenotyping)によって示されるかも知れない。CD34に加えて、たとえばアルブミン、α-フェトプロテイン、α1-アンチトリプシン、肝細胞成長因子レセプター(HGFレセプター-c-met)(肝細胞の性質)、ビメンチン(骨格筋細胞および神経細胞)および平滑筋アクチン(筋肉細胞)を発現している細胞が確認された。
【0041】
分化した細胞は好ましくは諸特徴を有し、たとえば形態、ならびに自然界にあるそれらの対応細胞の機能を持っている。しかしながら分化した細胞は、自然界にあって単離された細胞とは、それらの均一性により区別される。ここにおいて均一性は、正常な細胞サイクルにおける該細胞の位置に関係している。本発明の分化した細胞集団は、実質的に均一、すなわち、すべての細胞構成員が細胞サイクルにおいてほとんど同じ位置にあるであろう。これに対して自然界にある細胞集団は、この点について不均一である。
【0042】
分化した細胞は、それを必要とする患者に移植することができる。特筆すべき利点は、患者自身の幹細胞に由来する細胞または組織の移植に対して、分化した細胞を生成する可能性である。そのような技術は当業界で知られ、標的の特定組織に応じて異なる投与経路が用いられる。たとえば肝臓は健康な肝細胞集団を導入した後に自己再生が可能であり、この場合その肝臓は、肝炎に感染またはアルコール乱用の結果として損傷を受けたものである。免疫抑制は、リンパ球の投与により、筋肉消耗は、骨格筋細胞の導入により、糖尿病は、膵臓細胞を移植することにより処置されるであろう。
【0043】
上記細胞は、部位に限定した方式で投与することができる。たとえば直接に標的の器官、たとえば肝臓に注入されるであろう。あるいはその細胞は、たとえば経静脈的に導入して標的部位から遠隔の部位に投与してもよい。組織ターゲティングは、産生された型の細胞と、ターゲティング・リガンド、たとえばモノクローナル抗体、細胞付着分子およびそれらのリガンド、サイトカイン、ケモカインおよびトール様(toll-like)レセプターおよびそれらのリガンドとの間に複合体を形成させることにより達成できるであろう。そうした「複合体」には、細胞表面にターゲティング・リガンドを発現している細胞が含まれる。
【0044】
本発明の幹細胞は、再生および修復の方法を含む治療的な方法に直接使用されてもよい。細胞分化は、インビボで生起してもよい。幹細胞および分化した細胞を使用することにより、損傷器官は修復され、および/または器官再生が起きるかもしれない。また器官がそれ自体、「損傷」されていないが、通常の方式では成長しないような状況においても同様である。よって「再生」は、器官の成長または改善の方法をすべて含むように幅広く解される。
【0045】
好ましい態様において、移植細胞はインビボで追跡されるように適応する。すなわち、移植された細胞が、標識となる部分を取り込むことであり、これは体内において該細胞の場所を確認することができることを意味する。好都合なことに細胞は、鉄化合物、たとえば酸化鉄を取り込むであろう。それで移植された細胞の場所を確認するため、特に標的組織に到達したかどうかを確認するために、MRIを利用することができる。実施例4に示されるように、MR造影剤のレソビスト(登録商標、Resovist)は、それとともにインキュベーションすることで細胞によって取り込まれ得る好適な鉄含有化合物である。
【0046】
かくしてさらなる態様として、本発明は上記の方法に従って調製された分化した細胞集団、ならびに治療患者にこれらの分化した細胞の投与を含む臨床処置方法のみならず、これらの細胞利用のための細胞を提供する。
【0047】
特にその発明は、分化した細胞集団の移植のための方法を含み、該方法は、以下の工程を含む:
(i)本発明の幹細胞集団を、複数の成長因子とともに培養し、それらの分化を引き起こす;および
(ii)分化した該細胞を患者に移植すること
好ましくは、その患者はヒトであり、また分化した細胞を生じるように培養される幹細胞は、当の患者からのものであることが好ましい。患者からサンプルを採取し、投与のために分化した細胞を成長させるために必要とされる時間が短いことは、本発明によって与えられる特別の利点である。
【0048】
本発明の幹細胞およびそれに由来し、分化した細胞は、関心のあるタンパク質のインビトロ生産にも又使用してもよい。よって本発明の別の局面として、タンパク質生産のインビトロ方法が提供され、それは本発明の幹細胞またはそれに由来する分化した細胞系を培養すること、次いで該細胞を回収し、該細胞によって発現された1つ以上のタンパク質を
取り出すことを含む。
【0049】
動物細胞が、標的タンパク質、とりわけ治療用製剤のインビトロ生産のための優勢的なタンパク質発現系となっている。それらがタンパク質の翻訳後修飾(たとえばグリコシル化)をなし得る能力があるからである。本発明の幹細胞およびそれに由来し、分化した子孫細胞は、全部でないにしてもほとんどの治療用途となるタンパク質の生産において使用することができる。たとえばエリスロポイエチン、成長因子、インスリンといったタンパク質性のホルモンまたは合成タンパク質である。そうした細胞は、特定の標的タンパク質の生産を提供または増強するために遺伝的に改変してもよい。もっとも、適切なタイプの細胞(例として実質細胞)への分化が、遺伝子工学の技術を必要とせずに標的タンパク質を自然に生産するようになし得るのであれば、そのことは本発明によって可能となった細胞タイプの特に望ましい特徴となる。
【0050】
本発明の細胞(幹細胞および分化した細胞)の上記使用は、非タンパク性の産物、たとえばステロイドにも適用でき、いずれの場合も適切な培養および回収の技術は当業者に知られている。
【0051】
本発明の幹細胞は、ベクター、たとえばアデノウィルス、レトロウィルス、アデノ関連ウィルスなどを伝播するのに必要な細胞装置を有している。これは、そのようなベクターを調製する、現行適正製造基準(cGMP)にとり必須の工程である。したがってさらなる態様として本発明は、本明細書に規定され記載されたように、ベクター、とりわけウィルスベクターの調製における、本発明の幹細胞の使用を提供する。あるいはベクター調製の方法が提供される:関心のあるベクターは、本明細書に規定され記載されたように、本発明の幹細胞において伝播される。そのベクター(伝達者)は、典型的にはウィルスのベクター、たとえばアデノウィルス、レトロウィルス、またはアデノ関連ウィルスである。
[実施例]
以下の限定を意味しない実施例および図面に関して、本発明をさらに記載する。
セクションA
【実施例1】
【0052】
細胞抽出
造血細胞が、移植目的で正常な個人からの骨髄または流動化血液から入手された。全血から単核フラクションが、Lymphoprep(登録商標)密度勾配を使用して分離された。CD34+細胞が、その単核フラクションからMiniMACSテクノロジーを用いて分離された。細胞は最初にCD34モノクローナル抗体で標識され、次いで常磁性ビーズに結合された。標識細胞は、磁石上に保持されたカラムに充填され、非標識細胞は溶出され、標識細胞は、その磁石から該カラムを取り除くことにより放出された。CD34+細胞は、37℃で少なくとも2時間、組織培養プラスチック容器内でインキュベートされた。付着しない細胞をHBSSで洗浄することにより取り除いた。
【実施例2】
【0053】
細胞培養
細胞(2×105/mL)は、血清、100ng/mLの顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、5ng/mLインターロイキン-3 (IL-3)、20ng/mL 幹細胞因子(SCF)および1ng/mL 顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)を含有するメチルセルロース培地でインキュベートされた。このサイトカインの組み合わせは、「基本サイトカイン」または「GM-mix」とも言及される。その結果、細胞の不均一な集団となり、そのように特徴づけられた。選別された個々の集団は、適応させたサイトカイン混合物を用いて分化に至るように向けられた。
【実施例3】
【0054】
フローサイトメトリーおよび免疫細胞化学
フローサイトメトリー
培養で増殖した付着性の細胞集団は、培養皿をこすって落とした。細胞を4% パラホルムアルデヒドで固定し、透過性になるようにした。細胞をFITC結合モノクローナル抗体で標識し、Becton Dickinsonフローサイトメーターで分析した。
免疫細胞化学
培養で増殖した付着性の細胞集団は、培養皿をこすって落とした。細胞をガラススライド上にサイトスピンして、メタノールで固定した。細胞をモノクローナル抗体で標識し、APAAP(アルカリホスファターゼ・アンチアルカリホスファターゼ)反応を用いて可視化した。
【0055】
フローサイトメトリーおよび免疫細胞化学の結果が下記の表に示されている。
【0056】
【表1】
【0057】
* は、細胞集団中の陽性細胞の%を表す。
** は、細胞集団中の大細胞が陽性であり小細胞が陰性であることを示す。
アルブミン、αフェトプロテイン、α1アンチトリプシンおよびc-MET(HGFレセプター)は、肝細胞のマーカーであり、GFAP(神経膠星状細胞)は脳細胞のマーカー、および平滑筋アクチンは、間葉細胞のマーカーである。
【0058】
図12は、12日間培養した後に、肝細胞マーカーを現出している細胞を示す。
【実施例4】
【0059】
細胞中への酸化鉄の取り込みと常磁性ビーズを用いた細胞の標識
CD34+(106および5×105)細胞を、37℃で0.25mmolレゾビスト(Schering AGから入手できるFerrixan(カルボキシデキストランでコートした酸化鉄ナノ粒子)の登録商標名)と2時間および24時間インキュベートし、MRIで分析した。両方ともにMRIで陽性のシグナルが得られ、インビボでCD34+細胞を検出するのにレゾビストが使えることを示唆している。図11の結果から、そうした粒子が該細胞に取り込まれることが可能であり、それらが体内を動きまわるか、標的組織に位置するにつれ、CD34+細胞またはその分化した子孫細胞を追跡するのに用い得ることが示された。
【0060】
レゾビストのインビトロ毒性もまた、トリパンブルー排除アッセイにより試験され、有意の影響がないと実証された(<4%)。この実験結果が図11に示されている。
セクションB(追加実施例)
【実施例5】
【0061】
ASC34の供給源
健康な提供者から吸引により得られた骨髄、また一定量の顆粒球コロニー-刺激因子(G-CSF)が投与された健康な提供者から、白血球除去輸血により得られた流動化末梢血液(PB)、および臨月での正常分娩から得られた臍帯血液(UCB)が、通常、ASC34の供給源として用いられる。すべての場合に、説明と同意(Informed consent)および研究倫理委員会の承認が必要となる。
【0062】
ASC-34活性は成体の造血組織および臍帯血液に見出されるばかりでなく、成体の骨髄、満期出産の臍帯血、胎児肝臓(在胎週齢11.6〜13.8週間)および胎児骨髄(12.7〜15.4週間)においても検出される。これらの細胞は、胚性幹細胞と相違する。なぜなら胚は、受胎後の8週間において胎児になると見なされるからである。
【実施例6】
【0063】
付着性のCD34陽性ヒト幹細胞(ASC34)均一集団の精製
初めに幹細胞を均一になるまで精製することは、自己再生、分化およびインビボ生着についての可能性をその後に調べるために望ましいことである。かかる細胞集団は、逐次密度勾配分離、免疫磁性ビーズによる選別と差分的付着によって得られ、CD34発現、組織培養グレードのプラスチックまたはガラスに対する付着性ならびに小リンパ球様の形態に関して均一である。
【0064】
単核細胞(MNC)フラクションが、サンプル全体から、Lymphoprepを通す密度勾配遠心分離によって分離され、またCD34-陽性細胞フラクションが、MiniMACSテクノロジー(Miltenyi Biotech社)を用いてMNCから分離された。そのためには細胞はまず抗-CD34モノクローナル抗体で標識され、次に常磁性マイクロビーズに付けられた。標識された細胞は、磁石上に保持されたカラムに充填され、非標識細胞は溶出され、標識細胞は、その磁石から該カラムを取り除くことにより放出された。精製された(>98%)CD34陽性細胞は、15%血清を追加したアルファ培地(alpha medium)で、2×105/mLに希釈された。
【0065】
付着性のCD34-陽性幹細胞(ASC34)は、組織培養プラスチック容器内でCD34-陽性細胞懸濁液を少なくとも2時間、37℃でインキュベートすることによって得られた。非付着性のCD34-陽性細胞は、その組織培養容器をHanks'Balanced塩溶液(HBSS)中で洗うことにより除去した。
【0066】
付着性CD34陽性幹細胞は、培養を開始するために用いた造血組織(BM,PB,UCB)の如何を問わず、全CD34-陽性細胞集団の約1%を構成する。未分化のCD34+付着性幹細胞(ASC34)は、一様な小リンパ球様の形態を有しており、核:細胞質の比が高い。培養の開始時に、それらの細胞は組織培養の表面上に一つ一つの細胞として間隔を空けて広く配置している。当初の該細胞は明らかにCD34陽性である。抗Thy-1モノクローナル抗体を用いる抗体枯渇(depletion)は、実質的にすべての付着性CD34+細胞の活性を除いた。これは読出し情報としてミエロイドコロニー形成細胞の産生を利用して測定することに基づく。6個の別々のサンプルから単離された細胞を用いた免疫細胞化学の結果によれば、平均して28.1%、しかし90%までがThy-1を発現した。また該細胞は核内に局在化するAC133およびc-metを発現するが、CD3またはCD19を発現しない。さらにCD33、CD38またはHLA-DRを発現しない。それらは細胞サイクルに作用する薬剤、5-フルオロウラシルを用いる処理に対して抵抗的である非サイクル性の細胞である。
【0067】
表2は、ASC34がCD33、CD38およびHLA-DRの発現に関して、非付着性CD34-陽性細胞よりも有意により均一であることを示している。
表2:付着性および非付着性のフラクションにおける抗原陰性CD34陽性細胞のパーセント
【0068】
【表2】
【0069】
* 平均±SEM(標準誤差)
** Mann-Whitney U 検定,付着性と非付着性のCD34+細胞を比較する。
n=テストしたサンプルの数
【実施例7】
【0070】
選別マーカーとして、組織培養プラスチックへの付着性の使用
組織培養プラスチックへの付着は、骨髄間葉幹細胞、単球およびマクロファージを含む数種類の細胞の性質であるが、以前においてCD34陽性細胞の亜集団を特徴付けるために使用されなかったものである。組織培養プラスチックへの付着は、複数の抗体を用いる標識処理または他の操作に頼ることなく、原始的な幹細胞を選別するための、単純でかつ再現性があり、実用的な手段であることが見出された。該細胞が、プラスチックを最初から成長基質として利用し、精製後に別の培養環境に移す必要がないことももう一つの利点である。
【0071】
培養培地に懸濁されたCD34陽性細胞は、組織培養プラスチック容器に5×105細胞/mL濃度で移される。その容器は、5% CO2含有加湿大気中で37℃にてインキュベートされる。全CD34陽性細胞集団の99%を構成する非付着性CD34陽性細胞は、培養培地を用いて洗浄することにより除去される。ASC34は、容易にガラスに結合するが、組織培養グレードではないプラスチックには結合しない。
【0072】
ASC34は、組織培養プラスチックから細胞スクレーパ(scraper)を用いて機械的に除去することによりその後の研究または操作のために回収することができる。トリプシンおよびAccutaseは有効ではなかった。
【実施例8】
【0073】
付着性CD34陽性ヒト幹細胞(ASC34)の供給源として流動化血液の使用
培養を開始するために利用できる細胞数は、培養された幹細胞から組織再生を進行させるときの制限因子となる。骨髄および臍帯血液は好適な供給源である。しかしPBPC(末梢血液先駆細胞)収集物は、培養を開始するための細胞をより多くもたらし、このため増幅の程度および臨床的に役に立つ産物を生み出すのに必要な時間を少なくする。
【0074】
ドナー(自己または同種異系(allogeneic))は、G-CSFを連続して一週間、5mg/kgで皮下的に投与されて処置される。細胞をプログラム化アフェレーシス(apheresis)装置を用いて白血球除去輸血により回収される。典型的な細胞収量は、5〜10×1010の範囲であり、そのほとんどが単核細胞であり、約1%(5〜10×108)がCD34+である。CD34-陽性細胞はCliniMacsシステム(MiniMacsのスケールアップ版)を用いて分離される。直接の観察によれば、ASC34はCD34-陽性集団の約1%(5〜10×106)である。
【0075】
この評価は、ASC34活性の限界希釈法(limiting dilution analysis)により、読出し情報として造血性コロニー形成細胞のアッセイを用いて確認された。したがって1〜2週間の期間には達成できる3〜4対数的増殖は、臨床応用のために5〜100×109細胞をもたらすであろう。
【実施例9】
【0076】
ASC34の培養
第1のフェーズの条件:
培養の最初の局面は、付着性細胞を増大させることからなる。ASC34は、血清含有メチルセルロース(Methocult H4230; Metachem Diagnostics社, Northampton, UK)およびサイトカイン基本混合物(100 ng/mL G-CSF(中外製薬、ロンドン、英国)、1ng/mL GM-CSF、5ng/mL IL-3、20ng/mL SCF(全部、次から入手;First Link社, West Midlands, UK)とともに重層される。培養は、5% CO2含有加湿大気中で37℃にてインキュベートされる。ASC34は、分裂し自己再生して、間葉性、上皮、血管性および神経細胞のタイプに特徴的な形態を示す付着性幹細胞のコロニーおよび次いで付着性細胞のコロニーを形成する。付着性細胞数において40倍の増大が、培養第1週において達成される。加えて非付着性細胞は、造血細胞(白血球)の大きいコロニーが見出されるメチルセルロース中に放出される。
【0077】
培養の環境からメチルセルロースを省くと、細胞産生が60%低下した。播種したCD34+細胞の数をいつもの5×105/mLを超えて上昇させても、細胞産生の相応の向上にはつながらなかった。細胞数は4mM塩化リチウムの添加により改善しなかった。
フェーズ2の条件:
第2のフェーズでは、細胞を液体培養状態に移して、サイトカインをさらに添加し、必要とする選択的な細胞分化を誘導する。異なる方向に分化させるために適切なサイトカインが下記にリストされている。
表3:指向された分化のための適切な条件
【0078】
【表3】
【0079】
図13に見られるように、あるサイトカインでは培養の7日目に添加される方が培養の0日または3日目に添加される場合よりもより有効であった。表4は、様々なサイトカインおよび組み合わせの、2週間の培養における細胞総数への効果を示している。
表4:異なるサイトカインおよびサイトカインの組み合わせが細胞収率*に及ぼす効果
【0080】
【表4】
【0081】
* GM mixのみに対しての細胞収率、すなわち添加したサイトカインが存在する場合の細胞収率とGM-mixだけ存在する際の細胞収率との比率
追加したサイトカインが、全体の細胞数に目立った影響を及ぼさないことをデータは示している。より重要であるのは、分化を誘導させるように意図された組み合わせ(HGF+EGF+βセルリン+アクチビンA/KGF+ニコチンアミド+グルコース)が細胞収率を低下させなかったことである。培養物が60日間、フェーズ2の条件に維持され得ることを示す(図14)。
【実施例10】
【0082】
テロメラーゼ(Telomerase)活性
テロメラーゼ活性がTRAPアッセイを用いて測定された。細胞は、l×CHAPS緩衝液に移され、生じた細胞溶解物は、DCアッセイ(Bio-Rad社)を用いてタンパク質濃度がアッセイされ、77ng/μLに正規化され、CHAPS緩衝液で1:10、1:40および1:160に希釈された。細胞溶解物はTRAPezeテロメラーゼ検出キット(Intergen社)を用いて分析された。TSプライマーが、37℃で20分間標識化され、85℃で5分間、加熱変性された。次いでPCRが、59℃のアニーリング温度で28サイクル実施された。生じたTRAP産物はTRAP担持色素(loading dye)で希釈し、ならびに12.5%アクリルアミド-0.5×TBEゲルで泳動し、乾燥してからX線フィルムに露出した。
【0083】
培養の開始時点で、TRAPアッセイによって評価したところ、細胞はテロメラーゼ活性を発現しなかった。このことは単離の際、該細胞の不活発な特性と一致している。顕著なテロメラーゼ活性が、培養7日の細胞において明白となった(図15)。これはその段階での細胞増殖と一貫している。
【実施例11】
【0084】
ポリメラーゼ連鎖反応
基本サイトカインにおいて、あるいはHGFまたはEGFを「略語一覧」示されるように添加して、ASC34(0日)から、あるいは培養の7日後および14日後にASC34に由来する細胞から、細胞溶解物が調製された。さらなる実験において細胞は、培養35日間までについて分析された。別々の溶解物が、培養細胞の付着性および非付着性の細胞フラクションから調製された。遺伝子発現がPCRによって分析された。
0日でのASC34による遺伝子発現
自己再生および多能性マーカー
Rex-1 レドックス-感知転写リプレッサー
Oct 4 オクタマー-結合転写因子-4
Nanog ホメオドメインタンパク質(ES細胞自己再生を促進)
造血細胞マーカー
CD34 造血幹細胞マーカー
CD133 コレステロール-結合タンパク質プロミニン1. 脂質 ラフト マーカー RECAM 血小板-血管内皮付着分子
VWF von Willibrand 因子. 凝固
TAL-1 T細胞急性白血病-1. 塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス
タンパク質
CXCR4 SDF-1用ケモカインレセプター.幹細胞ホーミングおよび生着に重要
アンジオポイエチン1 Tie 2のリガンド. 造血幹細胞の静態(quiescence)を維持
Tie 2 アンジオポイエチン1のレセプター. 造血幹細胞の静態を維持
骨格筋 マーカー
TNNT1 骨格の遅トロポニン1
デスミン 筋肉の主要な介在フィラメントタンパク質
ネブリン 横紋筋の筋節フィラメントの構造要素
心臓
コネキシン43 心筋細胞におけるギャップ結合の成分
GATA-4 心筋細胞におけるFOG2への zinc フィンガー転写因子の結合
神経
CXCR4 神経系前駆体でのSDF-1のケモカインレセプター
コネキシン43 神経膠星状細胞でのギャップ結合成分
内皮
CD34 造血幹細胞 マーカー. 血管内皮細胞によっても発現
CD133 コレステロール結合タンパク質 プロミニン1. 脂質 ラフト マーカー
VEGF 血管の血管内皮成長因子
KDR キナーゼインサートドメインレセプター. VEGFのレセプター
アンジオポイエチン1 血管形成因子. Tie 2のリガンド
アンジオポイエチン2 血管形成因子. Tekのリガンド
Tie 2 アンジオポイエチン1のレセプター
CXCR4 SDF-1のケモカインレセプター、血管新生に重要
PECAM 血小板-血管内皮細胞付着分子
ICAM 2 細胞間付着分子2. 白血球の血管外遊出を仲介
VEカドヘリン 付着結合の形成
TAL-1 T細胞急性白血病-1.
VWF von Willibrand 因子. 凝固因子
肝臓
Alpha-1 アンチトリプシン
サイトケラチン18
ネスチン
ビメンチン
c-met 肝細胞成長因子のレセプター
CD34 造血幹細胞抗原. 候補の肝臓幹細胞でも発現.
膵臓
NGN-3 β細胞分化におけるpdx-1の標的
培養14日間後のASC34産生細胞による遺伝子発現.
造血細胞マーカー
CD133 コレステロール-結合タンパク質 プロミニン1. 脂質 ラフト マーカー
PECAM 血小板-血管内皮細胞付着分子
VWF von Willibrand 因子. 凝固
TAL-1 T細胞急性白血病-1. 塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス タンパク質
CXCR4 SDF-1ケモカインレセプター. 幹細胞ホーミングおよび生着に重要
アンジオポイエチン1 Tie2リガンド. 造血幹細胞の静態を維持
骨格筋マーカー
ネブリン 巨大細胞骨格タンパク質. 横紋筋の筋節フィラメントの構造要素
心臓
トロポニン複合体のトロポニン1サブユニット
ネブリン 巨大細胞骨格タンパク質
神経
CXCR4 神経系前駆体での SDF-1のケモカインレセプター
内皮
CD133 コレステロール-結合タンパク質 プロミニン1. 脂質 ラフト マーカー
VEGF 血管内皮成長因子
アンジオポイエチン1 血管形成因子. Tie 2のリガンド
アンジオポイエチン2 血管形成因子. Tek のリガンド
CXCR4 SDF-1のケモカインレセプター. 血管新生に重要
PECAM 血小板-血管内皮細胞付着分子
ICAM 2 細胞間付着分子2. 白血球の血管外遊出を仲介
VWF von Willibrand 因子. 凝固
TAL-1 T細胞急性白血病-1. 塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックスタンパク質
ネブリン 巨大細胞骨格タンパク質
肝臓
α-1 アンチトリプシン プロテアーゼ阻害剤
サイトケラチン18 細胞骨格構成要素
LDLR 低密度リポタンパク質レセプター.
コレステロールホメオスタシスでの役割
アルブミン ステロイド, 脂肪酸および甲状腺ホルモンの運搬タンパク質
HGF 肝細胞成長因子
HNF3-B 肝細胞核因子3 ベータ転写因子
トランスフェリン 鉄運搬体
AFP αフェトプロテイン
膵臓
Pax-6
Pdx-1
インスリン 高血糖症を抑制し脂肪生成を刺激
IGF-1 インスリン-様成長因子1. ソマトメジン
HNF3-B 肝細胞核因子3 ベータ グルカゴン-産生の島細胞で発現される転写因子
NeuroD-1 インスリン遺伝子発現を調節
NGN3
基本のサイトカイン(GM-mix)で培養された細胞によるインスリン、PDX-1、Neuro D-1およびNGN3遺伝子の発現が、週間隔で調べられた。その結果、インスリンは7〜35日、PDX-1は7日〜35日、Neuro D-1は14日〜35日、および NGN3は21日〜35日に発現することが示された。よってインスリン生産に関係する遺伝子の発現が、培養3-4週間は持続性であり、培養3-5週間で最も包括的に生じている発現であった。したがって本発明の幹細胞の好ましい態様において、インスリン生産に関与する遺伝子(インスリン、PDX-1、Neuro D-1およびNGN3)を発現する後継細胞を生成することが可能である。
【実施例12】
【0085】
ASC34の造血細胞への分化
14日間の培養物から回収された細胞をコロニー形成性造血細胞の標準アッセイに置いた。典型的には約103の顆粒球-マクロファージ・コロニーが形成され、培養物中の全細胞の略1%を占めている。造血性コロニーアッセイにおいて、ASC34由来の細胞を回収して増殖させると、赤血球系BFU-e、巨核細胞性(Mk-CFC)および多能性(GEMM)コロニー形成性細胞もまた顕在化する。さらに重要であるのは、ASC34は、事前形成された培養ストローマ(stroma)上に接種すると、芽細胞コロニー/"玉石(cobblestone)"区域を形成する骨髄間質-付着性の幹/前駆細胞を生成し、インビトロのインキュベーションを長くすると(5週間)、長期間の造血細胞生産が可能となる。
【0086】
細胞のサイトスピン調製物が作成され、Romanowsky細胞化学染料で染色された。これにより、顆粒球、単球-マクロファージ、巨核細胞および赤血球系細胞の分化の形態学的な証拠が明らかとなった。
【実施例13】
【0087】
動物モデルにおける生着
実験1:ヌードマウスにASC34由来の細胞、多数(1×106)を静脈内、または皮下に注射をしたところ、死亡または認め得る罹患をひき起さなかった。
実験2:肝臓毒素(1g/kg チオアセタミド)で処置したヌードマウスは、脾臓中への直接注射によってASC34由来の肝細胞候補を含む細胞、1×106を受けた。該毒素だけを受けたヌードマウスは、コントロールとした。コントロールのマウスはすべて、7日までに死亡したが、細胞を投与されたマウスは、シクロスポリン(CsA)で処置されたか、されなかったを問わず、全員生き延びた。(表5)
表5:肝臓障害をもつマウスにASC34由来細胞を移植した結果
【0088】
【表5】
【0089】
* 肝毒素
実験3:3つの実験群が用意された。グループ1, TA + 細胞; グループ2, TA + CsA + 細胞; グループ3, TA のみ。CsAの投与分が、グループ2の動物に一週間に2回投与された。グループ3の全マウスはTAを用いる治療後に、2日間以内に死亡した。グループ1および2の動物は、組織サンプル採取のために犠死させるまで(1日、8日および15日)、すべて生き延びた。
【0090】
グループ2のマウス肝臓切片は、ヒトのサイトケラチン18(肝臓に特異的なマーカー)について陽性に染色され、ヒトASC34由来の細胞が存在することを示す。コントロールの動物では、切片の染色が見られなかった(図16)。
実験4:抗Fas抗体JO2が、肝不全の進行する慢性病態を誘導するために用いられた。各動物は、脾臓中に4週間にわたり250μgのJO2/kg/週を、ならびに最初のJO2注入後24時間において1×106細胞を投与された。CsAが週に2回投与された。12匹の動物で、2日後に操作
に関係した2匹の死亡があり、1匹は82日間生き延びた。残りの動物は、検査のために儀死させた(2日に1匹、8日に2匹、13日に3匹および21日に3匹)。
【0091】
図16〜20に提示された分析は、ヒト細胞がマウス肝臓に生着し、アルブミンおよびサイトケラチン18を産生することを表している。
【実施例14】
【0092】
冷凍保存および貯蔵
細胞(再生された付着性CD34陽性フラクション、あるいは培養によって生成したそれらの後継細胞)が、凍結保存用バイアルにある30%血清/10%DMSO中に懸濁され、一晩、-80℃のアルコール冷却浴に置かれた。次いで凍結バイアルは、保管のために液体窒素の蒸気相に移された。細胞はそのバイアルを37℃の水浴中に漬けて急速に解凍し、凍結から戻した。内容物を培地で希釈し、細胞を洗浄した。
【0093】
処理する前に、白血球除去血輸血産物を、その後のインビトロで、細胞の活力または成長(データは示さず)に何ら悪影響をおよぼすことなく37℃、24時間保存することが可能である。付着性細胞が精製されてから、10% DMSOプラス30〜50%血清中で冷凍保存され、次に解凍された場合、該細胞は92±4.8%(平均±SD)の活力を保持しており、インビトロの成長にも何ら影響はなかった(図21)。
【0094】
これらの結果は、次の実用的な含みがある。
1. 処理する前:白血球除去血輸血産物を、処理前に4℃、24時間保存することが可能である。それゆえ冷却した白血球除去血輸血製剤を、世界中、採取センターから処理センターへ輸送することができる。
2. 精製後:ASC34は、10% DMSO/30〜50% 血清中に懸濁させ、液体窒素中に冷凍させることができる。解凍すると、それらは90〜100%の生存活力を保持し、組織培養プラスチックに再び付着し、新 鮮細胞のように培養で増殖することができる。したがって単離された機能的なASC34は、世界中に輸送でき、あるいは長期間貯蔵することも可能である。
3. 培養後:14日間培養された細胞が、冷凍保存され、解凍され、再び培養された。14日間培養された細胞は周囲の温度に置いてもよく、それらの生存活力を保持する。よって培養された細胞は、世界中に輸送でき、あるいは長期間貯蔵することも可能である。
【実施例15】
【0095】
ASC34および間葉幹細胞(MSC)間の相違のまとめ
間葉幹細胞は、成体の骨髄に由来している別個の細胞集団である。MSC(多能性成体前駆細胞-MAPCとも呼称される)およびASC-34細胞(本発明の 細胞)は、下記に要約したように重要な差異を示している。MSC/MAPC細胞は、CD34を発現しないことも特筆される。
【0096】
【表6】
【0097】
* 参考文献: Java(登録商標)zon, Beggs and Flake. Exp Hematol 2004, 32: 414.
1 MAPCは、長期化した培養の後でのみ見出される。新鮮な骨髄サンプルには確認されなかった。
2 ASC34細胞は、5−フルオロウラシルに抵抗性がある。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明の幹細胞の培養開始での写真を示す。
【図2】図2は、培養3日目の本発明の幹細胞(付着性細胞)の写真を示す。
【図3】図3は、間葉細胞へ分化した本発明の幹細胞の写真を示す。
【図4】図4は、造血細胞へ分化した本発明の幹細胞の写真を示す。
【図5】図5は、間葉細胞へ分化した(14日目)本発明の幹細胞の写真を示す。
【図6】図6は、間葉細胞へ分化した(14日目)本発明の幹細胞の写真を示す。
【図7】図7は、上皮様細胞へ分化した本発明の幹細胞の写真を示す。
【図8】図8は、上皮様細胞へ分化した(14日目)本発明の幹細胞の写真を示す。
【図9】図9は、管形成細胞へ分化した本発明の幹細胞の写真を示す。
【図10】図10は、樹状突起形成細胞へ分化した本発明の幹細胞の写真を示す。
【図11】図11は、CD34+細胞が実施例4に記載されたプロトコルに従って、如何にレゾビスト(登録商標、Schering AG)を取り込むことができたかを示す写真である。この図において、個々のスポットは、次を表している:1. 106細胞, 0.25 mmol レゾビスト, 一晩のインキュベーション 2. 106細胞, 0.25 mmol レゾビスト + ビーズ, 一晩のインキュベーション 3. 106細胞, ビーズ, 一晩のインキュベーション 4. 106細胞, ネガティブコントロール (染色なし) 5. 5×105細胞, ネガティブコントロール (染色なし) 6. 5×105細胞, 0.25 mmol レゾビスト, 一晩のインキュベーション 7. 5×105細胞, 0.25 mmol レゾビスト + ビーズ, 一晩のインキュベーション 8. 5×105細胞, ビーズ, 一晩のインキュベーション 9. 106細胞, 0.25 mmol レゾビスト, 2hのインキュベーション 10. 106細胞, 0.25 mmol レゾビスト + ビーズ, 2hのインキュベーション 11. 106細胞, ビーズ, 2hのインキュベーション 12. 5×105細胞, 0.25 mmol レゾビスト, 2h インキュベーション 13. 5×105細胞, 0.25 mmol レゾビスト + ビーズ, 2hのインキュベーション 14. 5×105細胞, ビーズ、2hのインキュベーション 15. ビーズのみで細胞なし.
【図12】図12は、幹細胞の肝細胞への分化を示す写真である。これは肝細胞マーカー、アルブミンおよびαフェトプロテインの存在により実証される。
【図13】図13は、培養のインキュベーション、7日において基本のサイトカイン(GM-mix)(GM-mix/基本サイトカインは、G-CSF,GM-CSF, IL-3および幹細胞因子の組み合わせである)に、肝細胞成長因子(HGF)および上皮成長因子(EGF)を添加すると、0日または3日に添加するよりも より大きい影響を細胞数に及ぼすことを示しているグラフである。
【図14】図14は、基本のサイトカインで60日間維持された培養物における実際の細胞数および累積細胞数を示すグラフである。
【図15】図15は、培養7日間後における細胞のテロメラーゼ(telomerase)活性を示すゲルのオートラジオグラフである。
【図16】図16は、免疫ペルオキシダーゼ免疫細胞化学により展開されたスライド調製物の顕微鏡写真である。コントロールマウスの肝臓からはヒト・サイトケラチン18がないが、移植マウスからの肝臓ではサイトケラチン18が陽性であることを示している。
【図17】図17は、免疫ペルオキシダーゼ免疫細胞化学により展開されたスライド調製物の顕微鏡写真である。コントロールマウスの肝臓からはヒト・アルブミンがないが、移植マウスからの肝臓ではアルブミンが陽性であることを示している。
【図18】図18は、サイトケラチン18およびアルブミンの二重染色を示す3色免疫蛍光イメージの写真である。
【図19】図19は、コントロールおよび移植マウスからの肝臓切開面の写真である。ヒト核に対する抗体で染色された細胞の存在及び不在を表す。
【図20】図20は、移植されたマウスからのヒト肝臓染色体についてin situハイブリダイゼーション分析における蛍光を表す写真である。
【図21】図21は新規に単離されたASC34を様々な血清濃度で冷凍保存したことが、培養におけるその後の成長に及ぼす効果を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は幹細胞に関し、具体的には骨髄および血液から単離できる新型幹細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、新しい細胞を産生して、生体におけるすべての組織に対する損傷を修復することができる。それゆえあらゆる種類の再生医学にとり計り知れない可能性を有する。幹細胞は、体のあらゆる組織および器官に存在するが、骨髄および血液のようなものは、他臓器、たとえば肝臓および脳よりも容易に入手し得る。しかしながら幹細胞は骨髄および血液においては極めて少数しか存在せず、臨床的に利用されるようになる前に、抽出されてから数を増大させる(「増大させる」)必要がある。現在、組織特異的な幹細胞移植を実施するために充分な数の幹細胞を提供する目標を達成するための多数の試みがなされている。
【0003】
幹細胞の供給源として骨髄に努力が集中してきた。これまでの証拠から、骨髄は2種類の幹細胞を含むことが示唆された。すなわち血液の製造を担っている造血幹細胞(HSC)ならびに体組織の限定された領域に属す細胞を産生できる間葉幹細胞(MSC)である。MSCは、正確には定義することができず、また単離もできない。したがって多種類の細胞を産生するためにMSCには限界があることを示している。MSCは、培養中に刺激に反応して骨芽細胞(osteoblasts)、軟骨芽細胞(chondroblasts)および脂肪細胞(adipocytes)を形成するが、肝細胞といったMSCが産生できない多種類の細胞もある。MSCの長期にわたる培養の結果、組織再生に最も広い可能性を有するとこれまで考えられている多能性成体前駆細胞(multipotent adult progenitor cells;MAPC)と称される細胞亜集団が伸張することとなる。しかしながら、MAPCが出現する前に長期にわたる組織培養および多数回の細胞分裂が必要であるということは、第一に遺伝上の損傷を蓄積してしまうかも知れないこと、第二にそれらが骨髄の正常な細胞成分を表すということを確証することは不可能であることを意味する。実際にはそれらが組織培養の人工的な生成物であるかも知れない。これらの重要な考察は、MAPCの臨床的な使用を禁忌とすることになるであろう。MAPCは、内胚葉、外胚葉または中胚葉のマーカーを有する細胞を形成できるが、培養中に造血細胞を実質上、産生しない。
【0004】
それらの天然タンパク質産物を生成するために幹細胞から派生した分化細胞を用いることは、遺伝子組換え体のタンパク質を生成する細胞の使用よりも有利である。特にタンパク質生成物のグリコシル化および翻訳後修飾を適切になし得るためである。
【発明の概要】
【0005】
本発明者は成体の骨髄および血液、たとえば末梢血液から、直接に単離することができ、外胚葉細胞、中胚葉細胞および内胚葉細胞に分化することができる特異な能力を有する新型の幹細胞を同定したのである。これらの細胞は、もし全能性でなければ明らかに多分化能性である。よって本明細書に記載される幹細胞は、組織の移植において自家移植の形態(自身から自身へ)で使用される新規な細胞供給源を提供する。さらに後記するようにこれらの幹細胞は長期間の組織培養を必要としない。
【0006】
本発明の幹細胞は、好ましくは成体の骨髄または成体由来の末梢血液といった、成体から採取されるサンプルより得ることができる。よって該細胞は、好ましくは成体の幹細胞である。かかる細胞は臍帯といった他のサンプルから得てもよい。よって本発明の細胞集団は、成体の細胞のみならず胎児の細胞を含む態様でもある。胎児からはたとえば胎児の肝臓または骨髄もまた使用される。
したがって本発明の一態様において、幹細胞の単離された細胞集団を提供する。該幹細胞は自己再生することができ、かつ外胚葉細胞、中胚葉細胞および内胚葉細胞、好ましくは造血細胞に分化することができ、CD34+である。そうした幹細胞は成体の幹細胞が好ましい。
【0007】
これらの幹細胞は、さらに培養中においてプラスチック(例:標準的な組織培養容器のプラスチック)に付着し得る能力によって特徴づけられる。よって該細胞は、本明細書で記載される培養方法において、さらに特別の条件または修飾が何らなくともプラスチックに付着する「能力」がある。適切な容器はコーニング社(New York, USA)によって製造されているものである。
【0008】
本発明の幹細胞は、「支持細胞層(feeder layers)」、すなわちその幹細胞の成長を支持してくれる細胞(その代表的なものは、ガンマ線照射により不活性化されて自らは増殖または分裂をしないが、重要な代謝物質を供給してくれる細胞)を必要としないという事実によっても特徴づけられるであろう。したがって本発明の幹細胞の培養中は、支持細胞層を使用しないことが好ましい。
【0009】
これらの幹細胞の主要な特徴で、かつ特別に有利といえる特徴は、外胚葉、中胚葉、内胚葉系の細胞を含む、きわめて広範な多種多様の型の細胞に分化し得る能力である。したがって本発明の幹細胞は、胚の3つの胚葉;外胚葉、中胚葉、内胚葉系から由来して増殖する種類の細胞に分化することができる。たとえば造血細胞および筋肉細胞は、中胚葉、神経細胞または上皮細胞は、外胚葉、ならびに腺上皮細胞または肝細胞は内胚葉細胞に由来する。
【0010】
前記細胞集団は、その集団が他の種類の細胞を実質的に含まないという点で、「単離」されている。CD33、CD38、HLA/DR、CD19およびCD3を発現する細胞の種類を実質的に含有しないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、実施例で提示される実験データと矛盾しないと解されるべきである。また、前記細胞集団は、専らある特定の直系系譜にのみ属している細胞および/またはそれに関係するマーカーを担持する細胞を含まないことである。該細胞集団は、特定の直系細胞系譜に係わる細胞を20%未満、好ましくは10%未満、たとえば5%未満で有することが望ましい。本発明の幹細胞集団の単離において、消極的な選別(細胞の除去)と積極的な選別(細胞の単離)とを結合させることは役に立つ。いずれの場合も抗体の結合が利用される。「単離された細胞」には、サンプルから直接に単離された細胞のみならず、培養された細胞、またはそのようなサンプルに由来する細胞も含まれる。
【0011】
幹細胞は、成体の骨髄で産生されると考えられているが、血液にも見出される。本発明の幹細胞は標準的な試料採取の技術に従ってこれらの供給源のいずれかから集めてもよい。血液サンプルは、循環系における幹細胞の数を増加させるためにG-CSFを用いて幹細胞を流動化させた後に入手することが好ましい。たとえば、5μg/kg体重/日を皮下に5日間投与してもよい。直接に骨髄サンプルを吸引で得ることも可能である。
【0012】
骨髄細胞は、骨髄の源、たとえば腸骨稜、脛骨、大腿骨、脊椎または他の骨の窩から得てもよい。骨髄は、常法の技術に従って、骨髄から吸引することも便利である。他の幹細胞の供給源として、成体の末梢血液および臍帯血を含む血液が挙げられる。
【0013】
該細胞は哺乳類起源であることが好ましく、すなわち哺乳類サンプルから単離してもよく、あるいはそのようなサンプルから単離された細胞に由来する。特に好ましい哺乳類は、ヒトおよびげっ歯類(マウス)である。好ましい哺乳類としてさらにウシ、ウマおよび伴侶動物(ペット動物)なども挙げられる。
【0014】
直系に専属する細胞(cells of dedicated lineage)を最初に除去することにより細胞を分離する目的に、様々な技術を使用することができる。モノクローナル抗体は、特定の直系細胞および/または分化の段階に関係するマーカー(膜表面タンパク質)を同定するために特に有用である。そうした抗体が固体支持体に付着され、大雑把な分離を可能とする。使用される分離技術は、収集される分画の生存活力保持が最大となるようにしなければならない。
【0015】
「比較的大雑把な」分離、つまり存在している全細胞の10%まで、通常は約5%を超えない、好ましくは約1%を超えない部分は該マーカーを有しないが、保持される細胞集団とともに残るかも知れない。異なる効能の様々な技術が利用されるためである。使用される具体的な技術は、分離の効率、方法論上の細胞毒性、実施の手軽さとスピード、精巧な装置および/または技術技能の必要性に依存するであろう。
【0016】
分離の操作には、磁気的分離、抗体でコートした磁性ビーズの利用、親和力クロマトグラフィー、モノクローナル抗体に加えられるか、またはモノクローナル抗体と一緒にして使用される細胞毒性の製剤(たとえば補体および細胞毒素)、ならびに固体マトリックス(たとえばプレート)に付着させた抗体を用いて洗いながら選別すること、または他の便利な技術が挙げられる。正確な分離を与える技術として、精巧さ、具体的には複数の色チャンネル、小さい角度で非鋭角的な光散乱を検出するチャンネル、インピーダンスチャンネルなどを種々の程度に変更できる蛍光活性化細胞ソーターが含まれる。
【0017】
特定タイプの細胞を容易に分離することを可能とするために、抗体を簡便には、直接分離を可能とするマーカー(磁性ビーズなど)、支持体に結合させたアビジンまたはストレプトアビジンを用いて除去することができるビオチン、蛍光活性化細胞ソーターとともに用い得る蛍光発色団などに結合させてもよい。いずれの技術も残っている細胞の生存活力に悪影響を与えることなく利用することができる。
【0018】
好ましくは血液または骨髄サンプルの単核成分は、Lymphoprep(登録商標、Axis Shield社)の密度勾配を利用して分離される。CD34+細胞は、その単核成分からMiniMACS (Miltenyi Biotec)技術を用いて分離することができる。
【0019】
本発明の幹細胞は、それらを得るために使用された諸方法によってさらに特徴づけることができる。かくして親和力精製と付着方法による選別との組み合わせによって該細胞を得ることができる。さらに具体的には、該細胞をCD34モノクローナル抗体(MAb)で標識し、次いで自らはCD34Mabに結合する(常)磁性ビーズと結合させる。
【0020】
あるいは自らはCD34Mab(このものは細胞に結合していく)で標識されるビーズを、用いてもよい。標識された、または結合された細胞は、次にカラムに適用され磁石で所定位置に保持される。よって標識されなかった細胞は溶出され、標識された細胞は磁石を取り除くことによって(あるいはその磁石からカラムを外すことによる)放出させることができる。
【0021】
このように放出されたCD34+細胞は、次に組織培養プラスチック容器内で適当な温度、たとえば35〜38℃、好ましくは37℃で、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも3時間、たとえば3〜5時間、インキュベートすることができ、この際、非付着性細胞はHBSS(Hanks balanced塩溶液)で洗浄することにより除去される。付着性CD34+細胞は本発明の幹細胞であり、全CD34+集団の1%未満で含まれる。好ましくはそれらの細胞が実質的に均一な集団であり、他の幹細胞の亜集団によっては通常汚染されていない。典型的には収集された細胞の30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは3%未満が、本発明の幹細胞以外のものである。しかしながら、後記実施例が示すように、個々のマーカーの全部が必ずしも単離された集団におけるいずれの細胞にも見出されないかも知れず、「均一な集団」という用語は、このことを心に留めて解するべきである。本発明の幹細胞集団は、好ましくはCD34発現に関して均一であり、組織培養グレードのプラスチックに対して付着し、小さいリンパ球様の形態である。「付着性の」細胞は、3回の活発な洗浄に抵抗して、固体支持体(特に組織培養グレードのプラスチックまたはガラス)から離れない細胞として定義される。CD34+細胞のうち、付着性サブセットの有利な性質は、付着性細胞が培養用細胞を調製する場合に普通は廃棄されるために驚くべきことである。
【0022】
本発明の幹細胞は、幹細胞の標準的な定義に一致して自己再生することができる。すなわち広範囲の様々なタイプの細胞に分化するのみならず、幹細胞は分裂して更に幹細胞を形成することができる。
【0023】
本発明の幹細胞は、さらにCD34+として確認され、すなわち幹細胞について、とりわけ骨髄で産生される幹細胞(HSCおよびMSC)について、抗原CD34(見出される糖タンパク質マーカー)を発現するがそればかりではない。本発明の幹細胞集団は、Thy-1マーカーを発現している細胞について富化されてもよい。つまり、Thy-1+である細胞の相当割合を含むようにである。したがって幹細胞の集団は、出発の細胞集団(サンプル)に対し、Thy-1について富化させることができる。実施例5は、平均して細胞の28.1%、しかしながら90%までがThy-1+であることを示している。
【0024】
もっと具体的にはそれらの細胞は、CD34+、CD38-、CD33-およびHLA-DR-として確認されるかも知れない。好ましくは該細胞集団がAC133+、Thy-l+および/またはc-met+について富化され、AC133+、Thy-l+および/またはc-met+が優勢であることがより好ましい。
【0025】
本発明の幹細胞はそれらが丸い単核の細胞であり、高い核:細胞質の比を有してむしろ小さい点でリンパ球様である。そうした形態は原始幹細胞と関係がある。
該細胞は、培養で16日未満、たとえば12-14日で分化した細胞を産生する能力によって特徴付けられる。好ましくはそうした分化が、14日未満、たとえば10日未満、より好ましくは7日未満、さらには4〜5日で観察される。
【0026】
本発明の幹細胞は、以下の工程によって得ることができると特徴づけられる:
(i) 造血組織(すなわち血液または骨髄サンプル)を密度勾配分離にかけること;
(ii) 低密度細胞をCD34用の親和性リガンド(常磁性ビーズに付着していることが好ましい)にさらす;
(iii) 該CD34リガンドに付着した細胞を回収する;
(iv) CD34+細胞亜集団を組織培養グレードのプラスチックにさらす;
(v) そのプラスチックに付着したCD34+細胞を取り戻す。
【0027】
本発明の幹細胞サンプルは、2004年9月24日、欧州培養細胞収集所(European Collection of Cell Cultures;ECACC),Health Protection Agency, Porton Down, Salisbury, SP40JG, UKに受託番号04092401号で寄託された。本寄託は発明者によってなされ、該細胞系列は「幹細胞Omnicyte」の名前が与えられた。
【0028】
本発明の幹細胞は、いずれの動物起源であってもよく、たとえば実験動物、家畜またはペット動物である。好ましくは霊長類であり、ヒトが最も好ましい。
さらなる態様で、本発明は、次の工程を含む培養物を提供する:
(i) 単離された成体の幹細胞集団で、この場合該幹細胞はCD34+であり、自己再生が可能であって、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができ、
(ii) 該幹細胞の成長を支え得る培地。
【0029】
好ましくは本発明は次の工程を含む培養物を提供する:
(i) (単離された)幹細胞集団で、この場合該幹細胞はCD34+であり、自己再生が可能であって、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができ、組織培養グレードのプラスチックに付着することができ、
(ii) 該幹細胞の成長を支え得る培地。
【0030】
いったん幹細胞が単離されれば、それらは間質細胞(stromal cells)、たとえば骨髄、胎児胸腺または胎児肝臓から得ることができ、幹細胞の維持に関係する成長因子の分泌をまかなうことが明らかにされているような間質細胞による馴化培地で成長させることにより増殖させてもよい。また幹細胞は、そのような間質細胞との同時培養、あるいは幹細胞の増殖を支える維持因子を含む培地での成長により増殖させてもよい。この場合、その間質細胞は、自己性(autologous)、同種異系(allogeneic)または異種(xenogeneic)であってもよい。同時培養において使用する前に、間質細胞混合調製物は、望まない細胞を除去するため、たとえば抗体-毒素複合物、抗体および補体などを利用し、適切なモノクローナル抗体を用いることによって造血細胞を含まないようになっているかも知れない。あるいはクローン化された間質細胞系(ここで同種異系または異種である)を使用してもよい。したがって「培地」に対する上記言及には間質細胞のような細胞を含むものとする。
【0031】
本発明幹細胞およびそれから由来する分化した細胞は、液体窒素中での凍結保存でも生き延び得る。
さらに別の態様において本発明は、成体の幹細胞集団を単離する方法を提供する。その幹細胞は、CD34+であって、自己再生可能であり、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができる。その方法において、血液または骨髄のサンプルを患者から採取し、その中から該細胞集団を抽出することを含む。本発明は、幹細胞集団を単離する方法を提供し、その幹細胞は、CD34+であって、自己再生可能であり、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができ、また組織培養グレードのプラスチックに付着することができることが好ましい。その方法において、血液または骨髄のサンプルを患者から採取し、その中から該細胞集団を抽出することを含む。好ましい抽出工程は上で論じられ、患者の血液をサンプリングする際には、幹細胞の可動化が典型的な最初のステップとなるが、これは患者にG-CSFを投与することによって実施されることが好ましい。
組織培養プラスチックへの付着は、骨髄間葉幹細胞、単球(monocytes)およびマクロファージを含む数種類の細胞の性質であるが、CD34陽性細胞の亜集団を確認するか単離するために使用されることはこれまでなかった。組織培養プラスチックへの付着は、原始幹細胞の選別にとり、複数抗体を標識する操作または他の手法に頼る必要もなく単純で、再現性があり、実用的な手段となることが見出された。本発明のCD34+細胞は、ガラスにも付着することができる。したがって本発明の方法において、組織培養グレードのプラスチックの代わりにガラスまたは他の適当な固体支持体を使用することもできる。
【0032】
本発明の幹細胞は、研究関連、たとえば幹細胞再生に関係した成長因子の検出と評価において有用性がある。該幹細胞は、遺伝疾患の治療においても、自己の幹細胞における遺伝子の修飾または置換によって直接的な有用性があるであろう。本発明の幹細胞は、特に造血細胞、たとえばβ-地中海貧血(thalassemia)、鎌状細胞貧血症といった造血細胞に関係する疾患の治療に使用することができる。その場合、野生型の遺伝子が幹細胞に導入される。かくして、本発明の別の態様として、単離された成体の幹細胞集団を提供する。それらの幹細胞は、CD34+であって、自己再生可能であり、造血細胞および間葉細胞に分化することができる。これらの細胞は、治療に使用される場合、治療用遺伝子を取り込む。
【0033】
好ましくは、本発明は、次なる単離された幹細胞集団を提供する。それらの幹細胞は、CD34+であって、組織培養グレードのプラスチックに付着することができ、自己再生可能であり、造血細胞および間葉細胞の両方に分化することができる。これらの細胞は、治療に使用される場合、治療用遺伝子を取り込む。
【0034】
同様にして本発明は遺伝子治療の方法を提供する。その方法は、それを必要としている患者に幹細胞集団を投与することを含む。その幹細胞はCD34+であって、自己再生可能であり、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができ、かつ治療用遺伝子を取り込むことができる。
【0035】
好ましくは、本発明は遺伝子治療の方法を提供し、それを必要としている患者に幹細胞集団を投与することを含む。その幹細胞はCD34+であって、組織培養グレードのプラスチックに付着することができ、自己再生可能であり、外胚葉、中胚葉および内胚葉の細胞に分化することができ、かつ治療用遺伝子を取り込むことができる。
【0036】
好適な治療用遺伝子として、患者において欠陥のある遺伝子の野生型または薬剤耐性の遺伝子が挙げられる。本発明の幹細胞は追加の治療用遺伝子がなくても、幹細胞が不足している患者の造血系を再生することにおいて依然として治療上の有用性を有している。
【0037】
多大な関心が向けられるさらなる有用性は、本発明の幹細胞から異なるタイプに分化した細胞の形成に関係している。これまでの図に示されているように、間葉細胞、造血細胞、血管内皮細胞、上皮細胞、管形成細胞および樹状突起形成細胞を、短いタイムスケールで有利に形成することが可能である。特に造血細胞および間葉細胞の調製は好ましい。
【0038】
細胞は、14日未満の日数もすると肝臓、神経、間葉系、血管内皮、上皮の細胞および造血細胞の出現で観察される。幹細胞は、所望する細胞のタイプに応じて、異なるサイトカインの混合物で培養される。
【0039】
該混合物は、典型的にはG-CSF、GM-CSF、IL-3および幹細胞因子を含み、またHGFおよびFGFが肝細胞の分化を刺激するために、ニコチンアミドおよびLY294002が、膵細胞の分化を刺激するために、ならびにFGFおよびジブチリルcAMP(dibutyryl cyclic AMP)が神経細胞の産生を促進させるために加えられる。他の成長因子が骨、軟骨、骨格筋および心筋、腎臓、肺、神経、皮膚および内分泌組織といった、他のタイプの細胞分化にも重要であることは当業者に知られている。このようにして産生される好ましい細胞のタイプは、肝細胞、膵細胞、造血細胞、神経細胞および乏突起膠細胞(オリゴデンドロサイト、oligodendrocyte)である。
【0040】
よって本発明の別の局面から、本発明の幹細胞を複数の成長因子とともに培養することを含む、標的とする種類の細胞産生の方法が提供される。実施例および図に示されるように、良好に分化していることは、視認、フローサイトメトリー、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)または免疫表現型解析(immunophenotyping)によって示されるかも知れない。CD34に加えて、たとえばアルブミン、α-フェトプロテイン、α1-アンチトリプシン、肝細胞成長因子レセプター(HGFレセプター-c-met)(肝細胞の性質)、ビメンチン(骨格筋細胞および神経細胞)および平滑筋アクチン(筋肉細胞)を発現している細胞が確認された。
【0041】
分化した細胞は好ましくは諸特徴を有し、たとえば形態、ならびに自然界にあるそれらの対応細胞の機能を持っている。しかしながら分化した細胞は、自然界にあって単離された細胞とは、それらの均一性により区別される。ここにおいて均一性は、正常な細胞サイクルにおける該細胞の位置に関係している。本発明の分化した細胞集団は、実質的に均一、すなわち、すべての細胞構成員が細胞サイクルにおいてほとんど同じ位置にあるであろう。これに対して自然界にある細胞集団は、この点について不均一である。
【0042】
分化した細胞は、それを必要とする患者に移植することができる。特筆すべき利点は、患者自身の幹細胞に由来する細胞または組織の移植に対して、分化した細胞を生成する可能性である。そのような技術は当業界で知られ、標的の特定組織に応じて異なる投与経路が用いられる。たとえば肝臓は健康な肝細胞集団を導入した後に自己再生が可能であり、この場合その肝臓は、肝炎に感染またはアルコール乱用の結果として損傷を受けたものである。免疫抑制は、リンパ球の投与により、筋肉消耗は、骨格筋細胞の導入により、糖尿病は、膵臓細胞を移植することにより処置されるであろう。
【0043】
上記細胞は、部位に限定した方式で投与することができる。たとえば直接に標的の器官、たとえば肝臓に注入されるであろう。あるいはその細胞は、たとえば経静脈的に導入して標的部位から遠隔の部位に投与してもよい。組織ターゲティングは、産生された型の細胞と、ターゲティング・リガンド、たとえばモノクローナル抗体、細胞付着分子およびそれらのリガンド、サイトカイン、ケモカインおよびトール様(toll-like)レセプターおよびそれらのリガンドとの間に複合体を形成させることにより達成できるであろう。そうした「複合体」には、細胞表面にターゲティング・リガンドを発現している細胞が含まれる。
【0044】
本発明の幹細胞は、再生および修復の方法を含む治療的な方法に直接使用されてもよい。細胞分化は、インビボで生起してもよい。幹細胞および分化した細胞を使用することにより、損傷器官は修復され、および/または器官再生が起きるかもしれない。また器官がそれ自体、「損傷」されていないが、通常の方式では成長しないような状況においても同様である。よって「再生」は、器官の成長または改善の方法をすべて含むように幅広く解される。
【0045】
好ましい態様において、移植細胞はインビボで追跡されるように適応する。すなわち、移植された細胞が、標識となる部分を取り込むことであり、これは体内において該細胞の場所を確認することができることを意味する。好都合なことに細胞は、鉄化合物、たとえば酸化鉄を取り込むであろう。それで移植された細胞の場所を確認するため、特に標的組織に到達したかどうかを確認するために、MRIを利用することができる。実施例4に示されるように、MR造影剤のレソビスト(登録商標、Resovist)は、それとともにインキュベーションすることで細胞によって取り込まれ得る好適な鉄含有化合物である。
【0046】
かくしてさらなる態様として、本発明は上記の方法に従って調製された分化した細胞集団、ならびに治療患者にこれらの分化した細胞の投与を含む臨床処置方法のみならず、これらの細胞利用のための細胞を提供する。
【0047】
特にその発明は、分化した細胞集団の移植のための方法を含み、該方法は、以下の工程を含む:
(i)本発明の幹細胞集団を、複数の成長因子とともに培養し、それらの分化を引き起こす;および
(ii)分化した該細胞を患者に移植すること
好ましくは、その患者はヒトであり、また分化した細胞を生じるように培養される幹細胞は、当の患者からのものであることが好ましい。患者からサンプルを採取し、投与のために分化した細胞を成長させるために必要とされる時間が短いことは、本発明によって与えられる特別の利点である。
【0048】
本発明の幹細胞およびそれに由来し、分化した細胞は、関心のあるタンパク質のインビトロ生産にも又使用してもよい。よって本発明の別の局面として、タンパク質生産のインビトロ方法が提供され、それは本発明の幹細胞またはそれに由来する分化した細胞系を培養すること、次いで該細胞を回収し、該細胞によって発現された1つ以上のタンパク質を
取り出すことを含む。
【0049】
動物細胞が、標的タンパク質、とりわけ治療用製剤のインビトロ生産のための優勢的なタンパク質発現系となっている。それらがタンパク質の翻訳後修飾(たとえばグリコシル化)をなし得る能力があるからである。本発明の幹細胞およびそれに由来し、分化した子孫細胞は、全部でないにしてもほとんどの治療用途となるタンパク質の生産において使用することができる。たとえばエリスロポイエチン、成長因子、インスリンといったタンパク質性のホルモンまたは合成タンパク質である。そうした細胞は、特定の標的タンパク質の生産を提供または増強するために遺伝的に改変してもよい。もっとも、適切なタイプの細胞(例として実質細胞)への分化が、遺伝子工学の技術を必要とせずに標的タンパク質を自然に生産するようになし得るのであれば、そのことは本発明によって可能となった細胞タイプの特に望ましい特徴となる。
【0050】
本発明の細胞(幹細胞および分化した細胞)の上記使用は、非タンパク性の産物、たとえばステロイドにも適用でき、いずれの場合も適切な培養および回収の技術は当業者に知られている。
【0051】
本発明の幹細胞は、ベクター、たとえばアデノウィルス、レトロウィルス、アデノ関連ウィルスなどを伝播するのに必要な細胞装置を有している。これは、そのようなベクターを調製する、現行適正製造基準(cGMP)にとり必須の工程である。したがってさらなる態様として本発明は、本明細書に規定され記載されたように、ベクター、とりわけウィルスベクターの調製における、本発明の幹細胞の使用を提供する。あるいはベクター調製の方法が提供される:関心のあるベクターは、本明細書に規定され記載されたように、本発明の幹細胞において伝播される。そのベクター(伝達者)は、典型的にはウィルスのベクター、たとえばアデノウィルス、レトロウィルス、またはアデノ関連ウィルスである。
[実施例]
以下の限定を意味しない実施例および図面に関して、本発明をさらに記載する。
セクションA
【実施例1】
【0052】
細胞抽出
造血細胞が、移植目的で正常な個人からの骨髄または流動化血液から入手された。全血から単核フラクションが、Lymphoprep(登録商標)密度勾配を使用して分離された。CD34+細胞が、その単核フラクションからMiniMACSテクノロジーを用いて分離された。細胞は最初にCD34モノクローナル抗体で標識され、次いで常磁性ビーズに結合された。標識細胞は、磁石上に保持されたカラムに充填され、非標識細胞は溶出され、標識細胞は、その磁石から該カラムを取り除くことにより放出された。CD34+細胞は、37℃で少なくとも2時間、組織培養プラスチック容器内でインキュベートされた。付着しない細胞をHBSSで洗浄することにより取り除いた。
【実施例2】
【0053】
細胞培養
細胞(2×105/mL)は、血清、100ng/mLの顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、5ng/mLインターロイキン-3 (IL-3)、20ng/mL 幹細胞因子(SCF)および1ng/mL 顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)を含有するメチルセルロース培地でインキュベートされた。このサイトカインの組み合わせは、「基本サイトカイン」または「GM-mix」とも言及される。その結果、細胞の不均一な集団となり、そのように特徴づけられた。選別された個々の集団は、適応させたサイトカイン混合物を用いて分化に至るように向けられた。
【実施例3】
【0054】
フローサイトメトリーおよび免疫細胞化学
フローサイトメトリー
培養で増殖した付着性の細胞集団は、培養皿をこすって落とした。細胞を4% パラホルムアルデヒドで固定し、透過性になるようにした。細胞をFITC結合モノクローナル抗体で標識し、Becton Dickinsonフローサイトメーターで分析した。
免疫細胞化学
培養で増殖した付着性の細胞集団は、培養皿をこすって落とした。細胞をガラススライド上にサイトスピンして、メタノールで固定した。細胞をモノクローナル抗体で標識し、APAAP(アルカリホスファターゼ・アンチアルカリホスファターゼ)反応を用いて可視化した。
【0055】
フローサイトメトリーおよび免疫細胞化学の結果が下記の表に示されている。
【0056】
【表1】
【0057】
* は、細胞集団中の陽性細胞の%を表す。
** は、細胞集団中の大細胞が陽性であり小細胞が陰性であることを示す。
アルブミン、αフェトプロテイン、α1アンチトリプシンおよびc-MET(HGFレセプター)は、肝細胞のマーカーであり、GFAP(神経膠星状細胞)は脳細胞のマーカー、および平滑筋アクチンは、間葉細胞のマーカーである。
【0058】
図12は、12日間培養した後に、肝細胞マーカーを現出している細胞を示す。
【実施例4】
【0059】
細胞中への酸化鉄の取り込みと常磁性ビーズを用いた細胞の標識
CD34+(106および5×105)細胞を、37℃で0.25mmolレゾビスト(Schering AGから入手できるFerrixan(カルボキシデキストランでコートした酸化鉄ナノ粒子)の登録商標名)と2時間および24時間インキュベートし、MRIで分析した。両方ともにMRIで陽性のシグナルが得られ、インビボでCD34+細胞を検出するのにレゾビストが使えることを示唆している。図11の結果から、そうした粒子が該細胞に取り込まれることが可能であり、それらが体内を動きまわるか、標的組織に位置するにつれ、CD34+細胞またはその分化した子孫細胞を追跡するのに用い得ることが示された。
【0060】
レゾビストのインビトロ毒性もまた、トリパンブルー排除アッセイにより試験され、有意の影響がないと実証された(<4%)。この実験結果が図11に示されている。
セクションB(追加実施例)
【実施例5】
【0061】
ASC34の供給源
健康な提供者から吸引により得られた骨髄、また一定量の顆粒球コロニー-刺激因子(G-CSF)が投与された健康な提供者から、白血球除去輸血により得られた流動化末梢血液(PB)、および臨月での正常分娩から得られた臍帯血液(UCB)が、通常、ASC34の供給源として用いられる。すべての場合に、説明と同意(Informed consent)および研究倫理委員会の承認が必要となる。
【0062】
ASC-34活性は成体の造血組織および臍帯血液に見出されるばかりでなく、成体の骨髄、満期出産の臍帯血、胎児肝臓(在胎週齢11.6〜13.8週間)および胎児骨髄(12.7〜15.4週間)においても検出される。これらの細胞は、胚性幹細胞と相違する。なぜなら胚は、受胎後の8週間において胎児になると見なされるからである。
【実施例6】
【0063】
付着性のCD34陽性ヒト幹細胞(ASC34)均一集団の精製
初めに幹細胞を均一になるまで精製することは、自己再生、分化およびインビボ生着についての可能性をその後に調べるために望ましいことである。かかる細胞集団は、逐次密度勾配分離、免疫磁性ビーズによる選別と差分的付着によって得られ、CD34発現、組織培養グレードのプラスチックまたはガラスに対する付着性ならびに小リンパ球様の形態に関して均一である。
【0064】
単核細胞(MNC)フラクションが、サンプル全体から、Lymphoprepを通す密度勾配遠心分離によって分離され、またCD34-陽性細胞フラクションが、MiniMACSテクノロジー(Miltenyi Biotech社)を用いてMNCから分離された。そのためには細胞はまず抗-CD34モノクローナル抗体で標識され、次に常磁性マイクロビーズに付けられた。標識された細胞は、磁石上に保持されたカラムに充填され、非標識細胞は溶出され、標識細胞は、その磁石から該カラムを取り除くことにより放出された。精製された(>98%)CD34陽性細胞は、15%血清を追加したアルファ培地(alpha medium)で、2×105/mLに希釈された。
【0065】
付着性のCD34-陽性幹細胞(ASC34)は、組織培養プラスチック容器内でCD34-陽性細胞懸濁液を少なくとも2時間、37℃でインキュベートすることによって得られた。非付着性のCD34-陽性細胞は、その組織培養容器をHanks'Balanced塩溶液(HBSS)中で洗うことにより除去した。
【0066】
付着性CD34陽性幹細胞は、培養を開始するために用いた造血組織(BM,PB,UCB)の如何を問わず、全CD34-陽性細胞集団の約1%を構成する。未分化のCD34+付着性幹細胞(ASC34)は、一様な小リンパ球様の形態を有しており、核:細胞質の比が高い。培養の開始時に、それらの細胞は組織培養の表面上に一つ一つの細胞として間隔を空けて広く配置している。当初の該細胞は明らかにCD34陽性である。抗Thy-1モノクローナル抗体を用いる抗体枯渇(depletion)は、実質的にすべての付着性CD34+細胞の活性を除いた。これは読出し情報としてミエロイドコロニー形成細胞の産生を利用して測定することに基づく。6個の別々のサンプルから単離された細胞を用いた免疫細胞化学の結果によれば、平均して28.1%、しかし90%までがThy-1を発現した。また該細胞は核内に局在化するAC133およびc-metを発現するが、CD3またはCD19を発現しない。さらにCD33、CD38またはHLA-DRを発現しない。それらは細胞サイクルに作用する薬剤、5-フルオロウラシルを用いる処理に対して抵抗的である非サイクル性の細胞である。
【0067】
表2は、ASC34がCD33、CD38およびHLA-DRの発現に関して、非付着性CD34-陽性細胞よりも有意により均一であることを示している。
表2:付着性および非付着性のフラクションにおける抗原陰性CD34陽性細胞のパーセント
【0068】
【表2】
【0069】
* 平均±SEM(標準誤差)
** Mann-Whitney U 検定,付着性と非付着性のCD34+細胞を比較する。
n=テストしたサンプルの数
【実施例7】
【0070】
選別マーカーとして、組織培養プラスチックへの付着性の使用
組織培養プラスチックへの付着は、骨髄間葉幹細胞、単球およびマクロファージを含む数種類の細胞の性質であるが、以前においてCD34陽性細胞の亜集団を特徴付けるために使用されなかったものである。組織培養プラスチックへの付着は、複数の抗体を用いる標識処理または他の操作に頼ることなく、原始的な幹細胞を選別するための、単純でかつ再現性があり、実用的な手段であることが見出された。該細胞が、プラスチックを最初から成長基質として利用し、精製後に別の培養環境に移す必要がないことももう一つの利点である。
【0071】
培養培地に懸濁されたCD34陽性細胞は、組織培養プラスチック容器に5×105細胞/mL濃度で移される。その容器は、5% CO2含有加湿大気中で37℃にてインキュベートされる。全CD34陽性細胞集団の99%を構成する非付着性CD34陽性細胞は、培養培地を用いて洗浄することにより除去される。ASC34は、容易にガラスに結合するが、組織培養グレードではないプラスチックには結合しない。
【0072】
ASC34は、組織培養プラスチックから細胞スクレーパ(scraper)を用いて機械的に除去することによりその後の研究または操作のために回収することができる。トリプシンおよびAccutaseは有効ではなかった。
【実施例8】
【0073】
付着性CD34陽性ヒト幹細胞(ASC34)の供給源として流動化血液の使用
培養を開始するために利用できる細胞数は、培養された幹細胞から組織再生を進行させるときの制限因子となる。骨髄および臍帯血液は好適な供給源である。しかしPBPC(末梢血液先駆細胞)収集物は、培養を開始するための細胞をより多くもたらし、このため増幅の程度および臨床的に役に立つ産物を生み出すのに必要な時間を少なくする。
【0074】
ドナー(自己または同種異系(allogeneic))は、G-CSFを連続して一週間、5mg/kgで皮下的に投与されて処置される。細胞をプログラム化アフェレーシス(apheresis)装置を用いて白血球除去輸血により回収される。典型的な細胞収量は、5〜10×1010の範囲であり、そのほとんどが単核細胞であり、約1%(5〜10×108)がCD34+である。CD34-陽性細胞はCliniMacsシステム(MiniMacsのスケールアップ版)を用いて分離される。直接の観察によれば、ASC34はCD34-陽性集団の約1%(5〜10×106)である。
【0075】
この評価は、ASC34活性の限界希釈法(limiting dilution analysis)により、読出し情報として造血性コロニー形成細胞のアッセイを用いて確認された。したがって1〜2週間の期間には達成できる3〜4対数的増殖は、臨床応用のために5〜100×109細胞をもたらすであろう。
【実施例9】
【0076】
ASC34の培養
第1のフェーズの条件:
培養の最初の局面は、付着性細胞を増大させることからなる。ASC34は、血清含有メチルセルロース(Methocult H4230; Metachem Diagnostics社, Northampton, UK)およびサイトカイン基本混合物(100 ng/mL G-CSF(中外製薬、ロンドン、英国)、1ng/mL GM-CSF、5ng/mL IL-3、20ng/mL SCF(全部、次から入手;First Link社, West Midlands, UK)とともに重層される。培養は、5% CO2含有加湿大気中で37℃にてインキュベートされる。ASC34は、分裂し自己再生して、間葉性、上皮、血管性および神経細胞のタイプに特徴的な形態を示す付着性幹細胞のコロニーおよび次いで付着性細胞のコロニーを形成する。付着性細胞数において40倍の増大が、培養第1週において達成される。加えて非付着性細胞は、造血細胞(白血球)の大きいコロニーが見出されるメチルセルロース中に放出される。
【0077】
培養の環境からメチルセルロースを省くと、細胞産生が60%低下した。播種したCD34+細胞の数をいつもの5×105/mLを超えて上昇させても、細胞産生の相応の向上にはつながらなかった。細胞数は4mM塩化リチウムの添加により改善しなかった。
フェーズ2の条件:
第2のフェーズでは、細胞を液体培養状態に移して、サイトカインをさらに添加し、必要とする選択的な細胞分化を誘導する。異なる方向に分化させるために適切なサイトカインが下記にリストされている。
表3:指向された分化のための適切な条件
【0078】
【表3】
【0079】
図13に見られるように、あるサイトカインでは培養の7日目に添加される方が培養の0日または3日目に添加される場合よりもより有効であった。表4は、様々なサイトカインおよび組み合わせの、2週間の培養における細胞総数への効果を示している。
表4:異なるサイトカインおよびサイトカインの組み合わせが細胞収率*に及ぼす効果
【0080】
【表4】
【0081】
* GM mixのみに対しての細胞収率、すなわち添加したサイトカインが存在する場合の細胞収率とGM-mixだけ存在する際の細胞収率との比率
追加したサイトカインが、全体の細胞数に目立った影響を及ぼさないことをデータは示している。より重要であるのは、分化を誘導させるように意図された組み合わせ(HGF+EGF+βセルリン+アクチビンA/KGF+ニコチンアミド+グルコース)が細胞収率を低下させなかったことである。培養物が60日間、フェーズ2の条件に維持され得ることを示す(図14)。
【実施例10】
【0082】
テロメラーゼ(Telomerase)活性
テロメラーゼ活性がTRAPアッセイを用いて測定された。細胞は、l×CHAPS緩衝液に移され、生じた細胞溶解物は、DCアッセイ(Bio-Rad社)を用いてタンパク質濃度がアッセイされ、77ng/μLに正規化され、CHAPS緩衝液で1:10、1:40および1:160に希釈された。細胞溶解物はTRAPezeテロメラーゼ検出キット(Intergen社)を用いて分析された。TSプライマーが、37℃で20分間標識化され、85℃で5分間、加熱変性された。次いでPCRが、59℃のアニーリング温度で28サイクル実施された。生じたTRAP産物はTRAP担持色素(loading dye)で希釈し、ならびに12.5%アクリルアミド-0.5×TBEゲルで泳動し、乾燥してからX線フィルムに露出した。
【0083】
培養の開始時点で、TRAPアッセイによって評価したところ、細胞はテロメラーゼ活性を発現しなかった。このことは単離の際、該細胞の不活発な特性と一致している。顕著なテロメラーゼ活性が、培養7日の細胞において明白となった(図15)。これはその段階での細胞増殖と一貫している。
【実施例11】
【0084】
ポリメラーゼ連鎖反応
基本サイトカインにおいて、あるいはHGFまたはEGFを「略語一覧」示されるように添加して、ASC34(0日)から、あるいは培養の7日後および14日後にASC34に由来する細胞から、細胞溶解物が調製された。さらなる実験において細胞は、培養35日間までについて分析された。別々の溶解物が、培養細胞の付着性および非付着性の細胞フラクションから調製された。遺伝子発現がPCRによって分析された。
0日でのASC34による遺伝子発現
自己再生および多能性マーカー
Rex-1 レドックス-感知転写リプレッサー
Oct 4 オクタマー-結合転写因子-4
Nanog ホメオドメインタンパク質(ES細胞自己再生を促進)
造血細胞マーカー
CD34 造血幹細胞マーカー
CD133 コレステロール-結合タンパク質プロミニン1. 脂質 ラフト マーカー RECAM 血小板-血管内皮付着分子
VWF von Willibrand 因子. 凝固
TAL-1 T細胞急性白血病-1. 塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス
タンパク質
CXCR4 SDF-1用ケモカインレセプター.幹細胞ホーミングおよび生着に重要
アンジオポイエチン1 Tie 2のリガンド. 造血幹細胞の静態(quiescence)を維持
Tie 2 アンジオポイエチン1のレセプター. 造血幹細胞の静態を維持
骨格筋 マーカー
TNNT1 骨格の遅トロポニン1
デスミン 筋肉の主要な介在フィラメントタンパク質
ネブリン 横紋筋の筋節フィラメントの構造要素
心臓
コネキシン43 心筋細胞におけるギャップ結合の成分
GATA-4 心筋細胞におけるFOG2への zinc フィンガー転写因子の結合
神経
CXCR4 神経系前駆体でのSDF-1のケモカインレセプター
コネキシン43 神経膠星状細胞でのギャップ結合成分
内皮
CD34 造血幹細胞 マーカー. 血管内皮細胞によっても発現
CD133 コレステロール結合タンパク質 プロミニン1. 脂質 ラフト マーカー
VEGF 血管の血管内皮成長因子
KDR キナーゼインサートドメインレセプター. VEGFのレセプター
アンジオポイエチン1 血管形成因子. Tie 2のリガンド
アンジオポイエチン2 血管形成因子. Tekのリガンド
Tie 2 アンジオポイエチン1のレセプター
CXCR4 SDF-1のケモカインレセプター、血管新生に重要
PECAM 血小板-血管内皮細胞付着分子
ICAM 2 細胞間付着分子2. 白血球の血管外遊出を仲介
VEカドヘリン 付着結合の形成
TAL-1 T細胞急性白血病-1.
VWF von Willibrand 因子. 凝固因子
肝臓
Alpha-1 アンチトリプシン
サイトケラチン18
ネスチン
ビメンチン
c-met 肝細胞成長因子のレセプター
CD34 造血幹細胞抗原. 候補の肝臓幹細胞でも発現.
膵臓
NGN-3 β細胞分化におけるpdx-1の標的
培養14日間後のASC34産生細胞による遺伝子発現.
造血細胞マーカー
CD133 コレステロール-結合タンパク質 プロミニン1. 脂質 ラフト マーカー
PECAM 血小板-血管内皮細胞付着分子
VWF von Willibrand 因子. 凝固
TAL-1 T細胞急性白血病-1. 塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス タンパク質
CXCR4 SDF-1ケモカインレセプター. 幹細胞ホーミングおよび生着に重要
アンジオポイエチン1 Tie2リガンド. 造血幹細胞の静態を維持
骨格筋マーカー
ネブリン 巨大細胞骨格タンパク質. 横紋筋の筋節フィラメントの構造要素
心臓
トロポニン複合体のトロポニン1サブユニット
ネブリン 巨大細胞骨格タンパク質
神経
CXCR4 神経系前駆体での SDF-1のケモカインレセプター
内皮
CD133 コレステロール-結合タンパク質 プロミニン1. 脂質 ラフト マーカー
VEGF 血管内皮成長因子
アンジオポイエチン1 血管形成因子. Tie 2のリガンド
アンジオポイエチン2 血管形成因子. Tek のリガンド
CXCR4 SDF-1のケモカインレセプター. 血管新生に重要
PECAM 血小板-血管内皮細胞付着分子
ICAM 2 細胞間付着分子2. 白血球の血管外遊出を仲介
VWF von Willibrand 因子. 凝固
TAL-1 T細胞急性白血病-1. 塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックスタンパク質
ネブリン 巨大細胞骨格タンパク質
肝臓
α-1 アンチトリプシン プロテアーゼ阻害剤
サイトケラチン18 細胞骨格構成要素
LDLR 低密度リポタンパク質レセプター.
コレステロールホメオスタシスでの役割
アルブミン ステロイド, 脂肪酸および甲状腺ホルモンの運搬タンパク質
HGF 肝細胞成長因子
HNF3-B 肝細胞核因子3 ベータ転写因子
トランスフェリン 鉄運搬体
AFP αフェトプロテイン
膵臓
Pax-6
Pdx-1
インスリン 高血糖症を抑制し脂肪生成を刺激
IGF-1 インスリン-様成長因子1. ソマトメジン
HNF3-B 肝細胞核因子3 ベータ グルカゴン-産生の島細胞で発現される転写因子
NeuroD-1 インスリン遺伝子発現を調節
NGN3
基本のサイトカイン(GM-mix)で培養された細胞によるインスリン、PDX-1、Neuro D-1およびNGN3遺伝子の発現が、週間隔で調べられた。その結果、インスリンは7〜35日、PDX-1は7日〜35日、Neuro D-1は14日〜35日、および NGN3は21日〜35日に発現することが示された。よってインスリン生産に関係する遺伝子の発現が、培養3-4週間は持続性であり、培養3-5週間で最も包括的に生じている発現であった。したがって本発明の幹細胞の好ましい態様において、インスリン生産に関与する遺伝子(インスリン、PDX-1、Neuro D-1およびNGN3)を発現する後継細胞を生成することが可能である。
【実施例12】
【0085】
ASC34の造血細胞への分化
14日間の培養物から回収された細胞をコロニー形成性造血細胞の標準アッセイに置いた。典型的には約103の顆粒球-マクロファージ・コロニーが形成され、培養物中の全細胞の略1%を占めている。造血性コロニーアッセイにおいて、ASC34由来の細胞を回収して増殖させると、赤血球系BFU-e、巨核細胞性(Mk-CFC)および多能性(GEMM)コロニー形成性細胞もまた顕在化する。さらに重要であるのは、ASC34は、事前形成された培養ストローマ(stroma)上に接種すると、芽細胞コロニー/"玉石(cobblestone)"区域を形成する骨髄間質-付着性の幹/前駆細胞を生成し、インビトロのインキュベーションを長くすると(5週間)、長期間の造血細胞生産が可能となる。
【0086】
細胞のサイトスピン調製物が作成され、Romanowsky細胞化学染料で染色された。これにより、顆粒球、単球-マクロファージ、巨核細胞および赤血球系細胞の分化の形態学的な証拠が明らかとなった。
【実施例13】
【0087】
動物モデルにおける生着
実験1:ヌードマウスにASC34由来の細胞、多数(1×106)を静脈内、または皮下に注射をしたところ、死亡または認め得る罹患をひき起さなかった。
実験2:肝臓毒素(1g/kg チオアセタミド)で処置したヌードマウスは、脾臓中への直接注射によってASC34由来の肝細胞候補を含む細胞、1×106を受けた。該毒素だけを受けたヌードマウスは、コントロールとした。コントロールのマウスはすべて、7日までに死亡したが、細胞を投与されたマウスは、シクロスポリン(CsA)で処置されたか、されなかったを問わず、全員生き延びた。(表5)
表5:肝臓障害をもつマウスにASC34由来細胞を移植した結果
【0088】
【表5】
【0089】
* 肝毒素
実験3:3つの実験群が用意された。グループ1, TA + 細胞; グループ2, TA + CsA + 細胞; グループ3, TA のみ。CsAの投与分が、グループ2の動物に一週間に2回投与された。グループ3の全マウスはTAを用いる治療後に、2日間以内に死亡した。グループ1および2の動物は、組織サンプル採取のために犠死させるまで(1日、8日および15日)、すべて生き延びた。
【0090】
グループ2のマウス肝臓切片は、ヒトのサイトケラチン18(肝臓に特異的なマーカー)について陽性に染色され、ヒトASC34由来の細胞が存在することを示す。コントロールの動物では、切片の染色が見られなかった(図16)。
実験4:抗Fas抗体JO2が、肝不全の進行する慢性病態を誘導するために用いられた。各動物は、脾臓中に4週間にわたり250μgのJO2/kg/週を、ならびに最初のJO2注入後24時間において1×106細胞を投与された。CsAが週に2回投与された。12匹の動物で、2日後に操作
に関係した2匹の死亡があり、1匹は82日間生き延びた。残りの動物は、検査のために儀死させた(2日に1匹、8日に2匹、13日に3匹および21日に3匹)。
【0091】
図16〜20に提示された分析は、ヒト細胞がマウス肝臓に生着し、アルブミンおよびサイトケラチン18を産生することを表している。
【実施例14】
【0092】
冷凍保存および貯蔵
細胞(再生された付着性CD34陽性フラクション、あるいは培養によって生成したそれらの後継細胞)が、凍結保存用バイアルにある30%血清/10%DMSO中に懸濁され、一晩、-80℃のアルコール冷却浴に置かれた。次いで凍結バイアルは、保管のために液体窒素の蒸気相に移された。細胞はそのバイアルを37℃の水浴中に漬けて急速に解凍し、凍結から戻した。内容物を培地で希釈し、細胞を洗浄した。
【0093】
処理する前に、白血球除去血輸血産物を、その後のインビトロで、細胞の活力または成長(データは示さず)に何ら悪影響をおよぼすことなく37℃、24時間保存することが可能である。付着性細胞が精製されてから、10% DMSOプラス30〜50%血清中で冷凍保存され、次に解凍された場合、該細胞は92±4.8%(平均±SD)の活力を保持しており、インビトロの成長にも何ら影響はなかった(図21)。
【0094】
これらの結果は、次の実用的な含みがある。
1. 処理する前:白血球除去血輸血産物を、処理前に4℃、24時間保存することが可能である。それゆえ冷却した白血球除去血輸血製剤を、世界中、採取センターから処理センターへ輸送することができる。
2. 精製後:ASC34は、10% DMSO/30〜50% 血清中に懸濁させ、液体窒素中に冷凍させることができる。解凍すると、それらは90〜100%の生存活力を保持し、組織培養プラスチックに再び付着し、新 鮮細胞のように培養で増殖することができる。したがって単離された機能的なASC34は、世界中に輸送でき、あるいは長期間貯蔵することも可能である。
3. 培養後:14日間培養された細胞が、冷凍保存され、解凍され、再び培養された。14日間培養された細胞は周囲の温度に置いてもよく、それらの生存活力を保持する。よって培養された細胞は、世界中に輸送でき、あるいは長期間貯蔵することも可能である。
【実施例15】
【0095】
ASC34および間葉幹細胞(MSC)間の相違のまとめ
間葉幹細胞は、成体の骨髄に由来している別個の細胞集団である。MSC(多能性成体前駆細胞-MAPCとも呼称される)およびASC-34細胞(本発明の 細胞)は、下記に要約したように重要な差異を示している。MSC/MAPC細胞は、CD34を発現しないことも特筆される。
【0096】
【表6】
【0097】
* 参考文献: Java(登録商標)zon, Beggs and Flake. Exp Hematol 2004, 32: 414.
1 MAPCは、長期化した培養の後でのみ見出される。新鮮な骨髄サンプルには確認されなかった。
2 ASC34細胞は、5−フルオロウラシルに抵抗性がある。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明の幹細胞の培養開始での写真を示す。
【図2】図2は、培養3日目の本発明の幹細胞(付着性細胞)の写真を示す。
【図3】図3は、間葉細胞へ分化した本発明の幹細胞の写真を示す。
【図4】図4は、造血細胞へ分化した本発明の幹細胞の写真を示す。
【図5】図5は、間葉細胞へ分化した(14日目)本発明の幹細胞の写真を示す。
【図6】図6は、間葉細胞へ分化した(14日目)本発明の幹細胞の写真を示す。
【図7】図7は、上皮様細胞へ分化した本発明の幹細胞の写真を示す。
【図8】図8は、上皮様細胞へ分化した(14日目)本発明の幹細胞の写真を示す。
【図9】図9は、管形成細胞へ分化した本発明の幹細胞の写真を示す。
【図10】図10は、樹状突起形成細胞へ分化した本発明の幹細胞の写真を示す。
【図11】図11は、CD34+細胞が実施例4に記載されたプロトコルに従って、如何にレゾビスト(登録商標、Schering AG)を取り込むことができたかを示す写真である。この図において、個々のスポットは、次を表している:1. 106細胞, 0.25 mmol レゾビスト, 一晩のインキュベーション 2. 106細胞, 0.25 mmol レゾビスト + ビーズ, 一晩のインキュベーション 3. 106細胞, ビーズ, 一晩のインキュベーション 4. 106細胞, ネガティブコントロール (染色なし) 5. 5×105細胞, ネガティブコントロール (染色なし) 6. 5×105細胞, 0.25 mmol レゾビスト, 一晩のインキュベーション 7. 5×105細胞, 0.25 mmol レゾビスト + ビーズ, 一晩のインキュベーション 8. 5×105細胞, ビーズ, 一晩のインキュベーション 9. 106細胞, 0.25 mmol レゾビスト, 2hのインキュベーション 10. 106細胞, 0.25 mmol レゾビスト + ビーズ, 2hのインキュベーション 11. 106細胞, ビーズ, 2hのインキュベーション 12. 5×105細胞, 0.25 mmol レゾビスト, 2h インキュベーション 13. 5×105細胞, 0.25 mmol レゾビスト + ビーズ, 2hのインキュベーション 14. 5×105細胞, ビーズ、2hのインキュベーション 15. ビーズのみで細胞なし.
【図12】図12は、幹細胞の肝細胞への分化を示す写真である。これは肝細胞マーカー、アルブミンおよびαフェトプロテインの存在により実証される。
【図13】図13は、培養のインキュベーション、7日において基本のサイトカイン(GM-mix)(GM-mix/基本サイトカインは、G-CSF,GM-CSF, IL-3および幹細胞因子の組み合わせである)に、肝細胞成長因子(HGF)および上皮成長因子(EGF)を添加すると、0日または3日に添加するよりも より大きい影響を細胞数に及ぼすことを示しているグラフである。
【図14】図14は、基本のサイトカインで60日間維持された培養物における実際の細胞数および累積細胞数を示すグラフである。
【図15】図15は、培養7日間後における細胞のテロメラーゼ(telomerase)活性を示すゲルのオートラジオグラフである。
【図16】図16は、免疫ペルオキシダーゼ免疫細胞化学により展開されたスライド調製物の顕微鏡写真である。コントロールマウスの肝臓からはヒト・サイトケラチン18がないが、移植マウスからの肝臓ではサイトケラチン18が陽性であることを示している。
【図17】図17は、免疫ペルオキシダーゼ免疫細胞化学により展開されたスライド調製物の顕微鏡写真である。コントロールマウスの肝臓からはヒト・アルブミンがないが、移植マウスからの肝臓ではアルブミンが陽性であることを示している。
【図18】図18は、サイトケラチン18およびアルブミンの二重染色を示す3色免疫蛍光イメージの写真である。
【図19】図19は、コントロールおよび移植マウスからの肝臓切開面の写真である。ヒト核に対する抗体で染色された細胞の存在及び不在を表す。
【図20】図20は、移植されたマウスからのヒト肝臓染色体についてin situハイブリダイゼーション分析における蛍光を表す写真である。
【図21】図21は新規に単離されたASC34を様々な血清濃度で冷凍保存したことが、培養におけるその後の成長に及ぼす効果を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された幹細胞が、CD34+であって自己再生でき、外胚葉、中胚葉および内胚葉細胞に分化することができ、組織培養グレードプラスチックに付着することができることを特徴とする、単離された幹細胞集団。
【請求項2】
前記の細胞集団が、単離後3時間は組織培養グレードプラスチックに付着することができ、さらに少なくとも72時間は付着を持続できる能力を特徴とする、請求項1に記載の幹細胞集団。
【請求項3】
前記細胞がCD33-、CD38-、HLA-DR-、CD3-およびCD19-である、請求項1または2に記載の幹細胞集団。
【請求項4】
Thy-1+でもある細胞について富化されている、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項5】
AC133+および/またはc-met+でもある細胞について富化されている、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項6】
Rex-1, Oct 4, Nanog, CD34, CD133, PECAM, VWF, Tal-1, CXCR4, アンジオポイエチン1, Tie 2, TNNT1, デスミン, ネブリン, コネクシン-43, GATA-4, VEGF, KDR, アンジオポイエチン2, ICAM-2, VEカドヘリン, アルファ-1-アンチトリプシン, サイトケラチン 18, ネスチン, ビメンチンおよび c-metをコードする遺伝子を発現する、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項7】
培養後に生成された後継細胞がCD133, PECAM, VWF, Tal-1, CXCR4, アンジオポイエチン1, ネブリン, トロポニン1, VEGF, アンジオポイエチン2, ICAM 2, アルファ-1-アンチトリプシン, サイトケラチン18, LDLR, アルブミン, HGF, HNF-3β, トランスフェリン, αフェトプロテイン, Pax-6, Pdx=1, インスリン, IGF-1, NeuroD-1 およびNGN3をコードする遺伝子を発現する、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項8】
後継細胞がインスリン生産に関係する遺伝子を発現する、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項9】
前記幹細胞が、成体幹細胞であることを特徴とする、請求項1〜8にいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項10】
前記幹細胞集団が臍帯血サンプルという非胎児性サンプルから得られる胎児細胞を含む、請求項1〜8にいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項11】
前記細胞が、受託番号04092401号でECACCに寄託された細胞の特徴を有する、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項12】
哺乳類起源である、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項13】
ヒト起源である、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項14】
げっ歯類、ウマまたはウシ起源である、請求項1〜12のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項15】
ペット動物から採取されたサンプルより単離され、または由来する、請求項1〜12のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項16】
培養中に支持細胞層を必要としない、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項17】
以下の工程:
(i) 造血組織を密度勾配分離にかけること;
(ii) 低密度細胞をCD34用の親和性リガンドにさらす;
(iii) 該CD34リガンドに付着した細胞を取り戻す;
(iv) CD34+亜集団を、組織培養グレードプラスチックにさらす;
(v) そのプラスチックに付着したCD34+細胞を取り戻す。
によって得ることができ、自己再生でき、外胚葉、中胚葉および内胚葉細胞に分化することができることを特徴とする、単離された幹細胞集団。
【請求項18】
(i) 幹細胞が、CD34+であって組織培養グレードプラスチックに付着することができ、自己再生でき、外胚葉、中胚葉および内胚葉細胞に分化することができる幹細胞;
(ii) 該幹細胞の成長を支持することができる培地;
を含むことを特徴とする培養物。
【請求項19】
幹細胞が、CD34+であって組織培養グレードプラスチックに付着することができ、自己再生でき、外胚葉、中胚葉および内胚葉細胞に分化することができ、被験者から血液または骨髄のサンプルを採取し、それより該幹細胞集団を抽出することを含む、幹細胞集団を単離する方法。
【請求項20】
以下の工程:
(i) 造血組織を密度勾配分離にかけること;
(ii) 低密度細胞をCD34用の親和性リガンドにさらす;
(iii) 該CD34リガンドに付着した細胞を取り戻す;
(iv) CD34+亜集団を固体支持体にさらす;
(v) そのプラスチックに付着したCD34+細胞を取り戻す;
を含むことを特徴とする、請求項19に記載の単離方法。
【請求項21】
固体支持体が組織培養グレードのプラスチックまたはガラスから選択されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
単離された幹細胞の集団を培養する工程をさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれかに記載された幹細胞集団を、該幹細胞集団の分化をひき起こす複数の成長因子と一緒に培養することを含む、標的細胞集団を産生する方法。
【請求項24】
前記標的細胞が、肝臓, 膵臓, 造血,神経および乏突起膠細胞からなる群より選択されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
幹細胞集団の増殖を促進、および/または保持する複数の成長因子と該集団とを接触させることを含む、請求項1〜17のいずれかに記載の幹細胞集団を培養する方法。
【請求項26】
請求項19〜25のいずれかに記載の方法によって生産された細胞集団。
【請求項27】
前記細胞が凍結保存を生きぬくことが可能である、請求項1〜17および26のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項28】
前記ゲノムが核酸の一領域を挿入することにより変更されたことを特徴とする、請求項1〜17, 26または27のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項29】
前記ゲノムがDNAウィルス, RNAウィルスまたはレトロベクターを用いるDNAの挿入により変更されることを特徴とする請求項28に記載の細胞集団。
【請求項30】
前記ゲノムの一部が、アンチセンス核酸分子、リボザイム配列または阻害的RNA配列の存在によって不活性化されることを特徴とする、請求項1〜17または26または27のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項31】
治療に使用される、請求項1〜17または26〜30のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項32】
器官の再生または損傷された器官の修復に使用される、請求項1〜17または26〜30のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項33】
請求項1〜17または26〜30のいずれかに記載の細胞を、患者に投与することを含む、患者の器官の再生または損傷された器官の修復の方法。
【請求項34】
前記器官が造血系または免疫系, 肝臓, 肺, 膵臓, 骨, 軟骨, 筋肉, 皮膚, 脳または神経系および心臓または循環器系からなる群より選択されることを特徴とする、請求項32または33に記載の細胞集団または方法。
【請求項35】
前記細胞が追跡可能なマーカー、好ましくは酸化鉄または常磁性ビーズで標識されることを特徴とする、請求項32〜34のいずれかに記載の細胞集団または方法。
【請求項36】
請求項1〜17または26〜30のいずれかに記載の細胞集団を導入することを含む、細胞移植の方法。
【請求項37】
請求項23または24に記載の方法により産生された細胞を薬剤に曝すことにより器官特異的作用について薬剤をスクリーニングする方法。
【請求項38】
前記薬剤が器官特異的な毒性を疑われる毒素であることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記薬剤が器官特異的な毒性を疑われる薬剤もしくは治療剤であることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記薬剤が器官特異的な利得作用を問題とされる薬剤もしくは治療剤であることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
請求項1〜17のいずれかの幹細胞またはそれより分化した細胞を培養すること、ならびに該細胞により発現される1以上のタンパク質を回収することを含む、タンパク質生産のインビトロ方法。
【請求項1】
単離された幹細胞が、CD34+であって自己再生でき、外胚葉、中胚葉および内胚葉細胞に分化することができ、組織培養グレードプラスチックに付着することができることを特徴とする、単離された幹細胞集団。
【請求項2】
前記の細胞集団が、単離後3時間は組織培養グレードプラスチックに付着することができ、さらに少なくとも72時間は付着を持続できる能力を特徴とする、請求項1に記載の幹細胞集団。
【請求項3】
前記細胞がCD33-、CD38-、HLA-DR-、CD3-およびCD19-である、請求項1または2に記載の幹細胞集団。
【請求項4】
Thy-1+でもある細胞について富化されている、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項5】
AC133+および/またはc-met+でもある細胞について富化されている、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項6】
Rex-1, Oct 4, Nanog, CD34, CD133, PECAM, VWF, Tal-1, CXCR4, アンジオポイエチン1, Tie 2, TNNT1, デスミン, ネブリン, コネクシン-43, GATA-4, VEGF, KDR, アンジオポイエチン2, ICAM-2, VEカドヘリン, アルファ-1-アンチトリプシン, サイトケラチン 18, ネスチン, ビメンチンおよび c-metをコードする遺伝子を発現する、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項7】
培養後に生成された後継細胞がCD133, PECAM, VWF, Tal-1, CXCR4, アンジオポイエチン1, ネブリン, トロポニン1, VEGF, アンジオポイエチン2, ICAM 2, アルファ-1-アンチトリプシン, サイトケラチン18, LDLR, アルブミン, HGF, HNF-3β, トランスフェリン, αフェトプロテイン, Pax-6, Pdx=1, インスリン, IGF-1, NeuroD-1 およびNGN3をコードする遺伝子を発現する、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項8】
後継細胞がインスリン生産に関係する遺伝子を発現する、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項9】
前記幹細胞が、成体幹細胞であることを特徴とする、請求項1〜8にいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項10】
前記幹細胞集団が臍帯血サンプルという非胎児性サンプルから得られる胎児細胞を含む、請求項1〜8にいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項11】
前記細胞が、受託番号04092401号でECACCに寄託された細胞の特徴を有する、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項12】
哺乳類起源である、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項13】
ヒト起源である、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項14】
げっ歯類、ウマまたはウシ起源である、請求項1〜12のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項15】
ペット動物から採取されたサンプルより単離され、または由来する、請求項1〜12のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項16】
培養中に支持細胞層を必要としない、先行する請求項のいずれかに記載の幹細胞集団。
【請求項17】
以下の工程:
(i) 造血組織を密度勾配分離にかけること;
(ii) 低密度細胞をCD34用の親和性リガンドにさらす;
(iii) 該CD34リガンドに付着した細胞を取り戻す;
(iv) CD34+亜集団を、組織培養グレードプラスチックにさらす;
(v) そのプラスチックに付着したCD34+細胞を取り戻す。
によって得ることができ、自己再生でき、外胚葉、中胚葉および内胚葉細胞に分化することができることを特徴とする、単離された幹細胞集団。
【請求項18】
(i) 幹細胞が、CD34+であって組織培養グレードプラスチックに付着することができ、自己再生でき、外胚葉、中胚葉および内胚葉細胞に分化することができる幹細胞;
(ii) 該幹細胞の成長を支持することができる培地;
を含むことを特徴とする培養物。
【請求項19】
幹細胞が、CD34+であって組織培養グレードプラスチックに付着することができ、自己再生でき、外胚葉、中胚葉および内胚葉細胞に分化することができ、被験者から血液または骨髄のサンプルを採取し、それより該幹細胞集団を抽出することを含む、幹細胞集団を単離する方法。
【請求項20】
以下の工程:
(i) 造血組織を密度勾配分離にかけること;
(ii) 低密度細胞をCD34用の親和性リガンドにさらす;
(iii) 該CD34リガンドに付着した細胞を取り戻す;
(iv) CD34+亜集団を固体支持体にさらす;
(v) そのプラスチックに付着したCD34+細胞を取り戻す;
を含むことを特徴とする、請求項19に記載の単離方法。
【請求項21】
固体支持体が組織培養グレードのプラスチックまたはガラスから選択されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
単離された幹細胞の集団を培養する工程をさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれかに記載された幹細胞集団を、該幹細胞集団の分化をひき起こす複数の成長因子と一緒に培養することを含む、標的細胞集団を産生する方法。
【請求項24】
前記標的細胞が、肝臓, 膵臓, 造血,神経および乏突起膠細胞からなる群より選択されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
幹細胞集団の増殖を促進、および/または保持する複数の成長因子と該集団とを接触させることを含む、請求項1〜17のいずれかに記載の幹細胞集団を培養する方法。
【請求項26】
請求項19〜25のいずれかに記載の方法によって生産された細胞集団。
【請求項27】
前記細胞が凍結保存を生きぬくことが可能である、請求項1〜17および26のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項28】
前記ゲノムが核酸の一領域を挿入することにより変更されたことを特徴とする、請求項1〜17, 26または27のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項29】
前記ゲノムがDNAウィルス, RNAウィルスまたはレトロベクターを用いるDNAの挿入により変更されることを特徴とする請求項28に記載の細胞集団。
【請求項30】
前記ゲノムの一部が、アンチセンス核酸分子、リボザイム配列または阻害的RNA配列の存在によって不活性化されることを特徴とする、請求項1〜17または26または27のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項31】
治療に使用される、請求項1〜17または26〜30のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項32】
器官の再生または損傷された器官の修復に使用される、請求項1〜17または26〜30のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項33】
請求項1〜17または26〜30のいずれかに記載の細胞を、患者に投与することを含む、患者の器官の再生または損傷された器官の修復の方法。
【請求項34】
前記器官が造血系または免疫系, 肝臓, 肺, 膵臓, 骨, 軟骨, 筋肉, 皮膚, 脳または神経系および心臓または循環器系からなる群より選択されることを特徴とする、請求項32または33に記載の細胞集団または方法。
【請求項35】
前記細胞が追跡可能なマーカー、好ましくは酸化鉄または常磁性ビーズで標識されることを特徴とする、請求項32〜34のいずれかに記載の細胞集団または方法。
【請求項36】
請求項1〜17または26〜30のいずれかに記載の細胞集団を導入することを含む、細胞移植の方法。
【請求項37】
請求項23または24に記載の方法により産生された細胞を薬剤に曝すことにより器官特異的作用について薬剤をスクリーニングする方法。
【請求項38】
前記薬剤が器官特異的な毒性を疑われる毒素であることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記薬剤が器官特異的な毒性を疑われる薬剤もしくは治療剤であることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記薬剤が器官特異的な利得作用を問題とされる薬剤もしくは治療剤であることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
請求項1〜17のいずれかの幹細胞またはそれより分化した細胞を培養すること、ならびに該細胞により発現される1以上のタンパク質を回収することを含む、タンパク質生産のインビトロ方法。
【図13】
【図14】
【図21】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図14】
【図21】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−39128(P2013−39128A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185019(P2012−185019)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2006−544560(P2006−544560)の分割
【原出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(506207554)オムニサイト リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2006−544560(P2006−544560)の分割
【原出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(506207554)オムニサイト リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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