説明

幼児用ゲート装置及び幼児用遊具設備

【課題】大人はロック解除を容易にできても幼児はロック解除できないチャイルドプルーフ性に優れた幼児用ゲート装置を提供する。
【手段】ゲート装置は、出入り口7を有するゲート用パネル2と、出入り口7に配置した扉3とを備えている。ゲート用パネル2は第1枠部8と第2枠部9とを備えており、扉3は第1枠部8にヒンジ装置16によって水平回動自在に連結されている。扉3の自由端側でかつ上部には、上昇させると前後スライドさせ得るように引手部材11が取付けられている。引手部材11は前進させると第2枠部9に嵌合して扉3は閉じた状態に保持される。扉3を開くために引手部材11を上昇させてから後退させるという2つの動作を行うことは幼児には行い難く、このためチャイルドプルーフ性に優れている。引手部材11にラッチ装置を設けると更に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、幼児用ゲート装置並びにこの幼児用ゲート装置を使用した幼児用遊具設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幼児用ゲート装置は幼児が一定のエリアの外に出ることを防止するためのものであり、家庭や幼児用施設(例えば保育園や幼稚園)に設置される。幼児用ゲート装置は一般に水平回動式の扉(ドア)を備えており、扉は引手部材(ハンドル、取手、操作具等の名称で呼ぶことも可能である)を備えており、その例として特許文献1には、引手部材(公報の名称はハンドル)を上向きに跳ね上げる回動式として、これにラッチ装置を設けることが記載されている。
【0003】
更に詳述すると、特許文献1では、扉は一方の支柱に水平回動自在に連結されていて、この扉の自由端部でかつ上端部に引手部材が上向きに跳ね上げできるように回動自在に連結されており、引手部材を下向きに回動させると引手部材が他方の支柱の上端部に嵌まることで扉は閉じ状態に保持されており、更に、引手部材にラッチ爪を設け、ラッチ爪が他方の支柱の係合部に係合することで扉のロック状態が保持されるようになっている。ラッチ爪は指先を当てて回動させることで他方の支柱の係合部から離脱するようになっている。
【0004】
他方、本願出願人が特許文献2に開示したように、四角形の壁パネルの多数枚を平面視で直線姿勢や直角姿勢に連結することで様々の形状・大きさの遊びエリアを構成できる幼児用遊具設備が存在しており、この遊具設備にも扉付きの出入り口を設けることがある。幼児用ゲート装置にしても特許文献2の遊具設備にしても高さは例えば500〜700mm程度の高さであり、開放性を有すると共に、大人が幼児の状態を外側から即座に視認できるようになっている。
【特許文献1】特開2000−245583号公報
【特許文献2】意匠登録第1206725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
幼児用ゲート装置については、幼児が引手部材に触っても操作はロック解除操作はできずに閉扉状態が保持される一方で大人は引手部材を簡単に操作して開扉できる、という安全機能(チャイルドプルーフ機能・幼児抵抗性)が求められることがある。この点、特許文献1のように引手部材にラッチ装置を設けるとある程度の安全機能は有すると言えるが、必ずしも十分とは言えない。
【0006】
つまり、幼児は手で物を押す・引く、指で何かを掴むといった単純な動きしかできないのが普通であるが、特許文献1の場合、ラッチ爪は水平状の軸線回りに回動するようになっているため、幼児が指を当てて押すだけでロック解除姿勢に回動することが有り得る一方、引手部材はその先端部が他方の支柱に上方から嵌まっていて引手部材はその側面に指先を当てて上向きに押すことでロック解除姿勢に回動させることも可能であり、このため、幼児の手・指の単純な動きによって引手部材がロック解除姿勢に回動してしまうということも懸念されるのである。
【0007】
本願発明は、このような現状を改善することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明にはゲート装置とこれを備えた遊具設備とが含まれている。このうちゲート装置の構成は請求項1,2に記載しており、遊具設備の構成は請求項3に記載している。
【0009】
請求項1の発明は、幼児の身長と同じ程度かそれよりも低い高さの扉と、前記扉を挟んで一方の側に配置された第1枠部と、前記扉を挟んで他方の側に配置された第2枠部とを備えており、前記扉はその一側部を中心にして水平回動するように第1枠部に連結されており、前記扉の自由端側の部分か又は第2枠部には、扉を閉じた状態と開き可能な状態とに切り替えるための引手部材が装着されており、前記引手部材は、当該引手部材の位置又は姿勢若しくは両方が変わることにより、閉扉状態が保持されるロック状態と開扉可能なフリー状態とに切り替わるようになっている。
【0010】
そして、特徴として、前記引手部材は、複数方向の動きの組み合わせによってロック状態とフリー状態とに切り替わるようになっているか、又は、ロック状態とフリー状態との移行は一方向の動きで行われるが大人の手でしかロック解除操作できないラッチ装置を備えている。
【0011】
なお、「大人の手でしかロック解除操作できない」とは、大人と幼児との手の大きさの違いと握力等の強さの違いとを利用したものであり、具体的には、ラッチ装置の操作部の位置や大きさとの関係で幼児が操作できない場合(例えば指先がラッチ装置の操作部に届かない)と、ラッチ装置の操作部をばね力に抗して操作するにおいてばねの強さが強いため幼児は操作できない場合とがある。
【0012】
請求項2の発明に係るゲート装置は、請求項1において、前記引手部材は、前記扉の上部でかつ自由端の側に、第2枠部に向けて前進・後退するように水平方向にスライド自在でかつ前進状態では下降動する状態に取付けられており、引手部材は、前進状態では第2枠部に表裏両側から嵌合してロック状態になり、後退し切ると第2枠部から離脱してフリー状態になるように設定されている。
【0013】
本願発明に係る遊具設備は、幼児の身長よりも低い高さで四角形の壁パネルの多数枚と、高さ及び横幅が前記壁パネルと略同じ大きさのゲート用パネルと、壁パネル同士又は壁パネルとゲート用パネルとを平面視で直線状に連結するための連結板と、壁パネル同士又は壁パネルとゲート用パネルとを平面視で直交した姿勢に連結するためのコーナー用連結材とを備えている。前記ゲート用パネルは上向きに開口した出入り口を有しており、このためゲート用パネルは出入り口を挟んで一方の側に位置した第1枠部と他方の側に位置した第2枠部と両枠部がその下部において連続する敷居部とを有しており、ゲート用パネルの第1枠部には扉が水平回動自在に連結されている。
【0014】
そして、前記ゲート用パネルにおける扉の上部でかつ自由端の側に、引手部材が第2枠部に向けて前進・後退するように水平方向にスライド自在でかつ前進状態では下降動する状態に取付けられており、前記引手部材は、前進状態では第2枠部に表裏両側から嵌合して扉を閉じた状態に保持し、後退し切ると第2枠部から離脱して扉を開閉自在と成すように設定されている。
【発明の効果】
【0015】
既述のように幼児が手を動かして何かを行う場合、物を手で押す・引くといった単純な動きは容易に行えるが、例えば、物の上げ下げと左右移動との組み合わせのような複雑な動作は苦手である。また、手は小さいため握ることのできる物の大きさには自ずと限度があり、更に、握力は大人に比べて著しく小さい。
【0016】
そして、本願発明では引手部材をロック状態からフリー状態に変えるための手段には、引手部材を複数方向に連続して動かすことと、大人の手でしかロック解除できないラッチ装置のロックを解除するとの2パターンがあるが、引手部材を方向が異なる方向に連続的に動かすのは幼児にとっては困難であり、また、大人しかロック解除操作できないラッチ装置をロック解除することは論理的にできない。従って、本願発明では扉を閉じた状態に保持できて高い安全機能を発揮できる。
【0017】
なお、引手部材はその性質上ある程度の大きさがあることが殆どであるため、幼児は引手部材を部分的に掴むことが可能であっても自在に動かせないのが普通であり、このように引手部材を自在に動かし難いことが引手部材をフリー状態に変えることの困難性(換言すると安全機能)を倍加させている。
【0018】
請求項2,3では、引手部材をロック状態にするには、引手部材を上昇させてその上昇状態を保持したまま水平スライドさせねばならないが、幼児にとっては、引手部材を手で押したり持ち上げたりして上昇させることは可能であっても、上昇させた状態を保持しつつスライドさせるという手の使い方は難しい。このため、単純な構造ながら安全性を的確に確保することができる。この点は請求項2,3の利点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本願発明は特許文献2に開示されているのと同様の遊具設備に適用しており、図1〜6では第1実施形態を示し、図7以下では他の実施形態を示している。以下、順次説明する。
【0020】
(1).第1実施形態の概略
図1のうち(A)は第1実施形態に係る遊具設備の部分平面図、(B)は(A)を矢印Bの方向から見た概略斜視図である。この図1に示すように、遊具設備は、主要要素として、四角形(ほぼ一辺が600mm程度の正方形)に形成された木製の壁パネル1の多数枚と、壁パネル1と同じ大きさで扉3を有する木製のゲート用パネル2と、壁パネル1と壁パネル1又は壁パネル1とゲート用パネル2とを平面視で一直線状に連結するための連結板4と、壁パネル1と壁パネル1又は壁パネル1とゲート用パネル2とを平面視で直角姿勢に連結するための平面視L形のコーナー用連結材5とを備えている。
【0021】
連結板4及びコーナー用連結材5は木製であるが、金属板製とすることも可能である。また、連結板4はパネル1,2の外面に重ねて締結することも可能である。更に、パネル1,2はその上部と下部とが別々の連結板4で連結されているが、1枚の連結板4で連結することも可能である。
【0022】
壁パネル1及びゲート用パネル2には多数の取付け穴6が縦横に整列して空けられており、この取付け穴6を利用して連結板板4やコーナー用連結材5がボルトナット又は頭付きボルトで締結されている。また、取付け穴6を利用して様々な遊具を壁パネル1に締結することも可能である。連結壁パネル1及びゲート用パネル2は平面視T字状や十字状にも連結することも可能であり、従って、様々の大きさ・形状の遊具設備を構成できる。
【0023】
ゲート用パネル2は上向きに開口した出入り口7を有しており、このため、ゲート用パネル2は、出入り口7を挟んで左右反対側に位置した鉛直状の第1枠部8及び第2枠部9と、両枠部8,9がその下部において連続する敷居部10とを有している。換言すると、ゲート用パネル2は両枠部8,9と敷居部10とで上向き開口コ字状に形成されている。扉3は第1枠部8に水平回動自在に連結されており、また、扉3の自由端の上端部のうち自由端の側には引手部材11が装着されている。
【0024】
(2).ゲート用パネルの詳細
次に、図2以下の図面を参照してゲート用パネル2の詳細を説明する。図2はゲート用パネル2を中心とした正面図(引手部材11は仮想線で表示している)、図3のうち(A)は図2のA−A視断面図、(B)は図2のB−B視断面図、(C)は図2のC−C視断面図、(D)は図2のD−D視断面図、図4のうち(A)は要部の分離正面図、(B)は(A)のB−B平面図、図5のうち(A)は図2の V-V視断面図、(B)は(A)の一部抽出図、(C)は(A)のC−C視断面図、図6は動作状態を示す図で(A)は平面図、(B)は正面図である。
【0025】
図3(B)に示すように、ゲート用パネル2はコーナー用連結材5にボルト13及びナット14で締結されている。連結板4との締結もボルト13とナット14とで行っている。既述のように、ゲート用パネル2は出入り口7を画定する鉛直状(支柱状)の枠部8,9と水平状の敷居部10とを有しているが、図2に正確に表示しているように、第1枠部8の上端部には出入り口7に向けて突出して張り出し部8aが形成されており、このため、張り出し部8aと敷居部10との間は出入り口7に向けて開口した縦長凹所15が存在している。
【0026】
そして、扉3は縦長凹所15に入り込んだ基部3aを有しており、このため、基部3aの上部は切欠き部3bになっていて扉3の上端面から段落ちしている。また、扉3における基部3aの上端部と下端部とはヒンジ装置16によって張り出し部8aと敷居部10とに連結されている。縦長凹所15の内側面部には、例えばEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)樹脂等の軟質樹脂から成る縦長保護エッジ17が装着されている。
【0027】
敷居部10には上向き開口した横長凹所18が形成されており、横長凹所18の底面部にもEVA樹脂等からなる横長保護エッジ19が装着されている。扉3と縦長保護エッジ17との間、及び、扉3の下面と横長保護エッジ19との間には幼児の指が遊びを持って入り得る隙間が空いている。なお、図1(B)では保護エッジ17,19は省略している。
【0028】
ヒンジ装置16は、上下逆方向に開口した上下一対のホルダー材20と、上下ホルダー材20を相対的に水平回転可能に連結するヒンジピン21とを備えており、上下ホルダー材20の間には異音発生防止及び滑らか回転のために樹脂製のスペーサを介在させている。ホルダー材20は扉3の基部3a、第1枠部8の張り出し部8a、敷居部10の上端部に鬼目ナット22を介してビス23で締結されている。言うまでもないが、上下ヒンジ装置16はヒンジピン21の軸心が一致するように配置されており、このため扉3はヒンジピン21の軸心回りに水平回動し得る。
【0029】
ゲート用パネル2における第2枠部9の上部には外端面に向けて入り込んで上切欠き部24が形成されている。他方、扉3の自由端でかつ上端部には、第2枠部9の上切欠き部24に入り込む上突出部3cが形成されている。第2枠部9の上切欠き部24は連結板4の端面よりも奥側まで入り込んでおり、このため上切欠き部24は連結板4によって片側から部分的に塞がれた状態になっており、更に、扉3の上突出部3cは上切欠き部24の奥まで延びている。このため、扉3は閉じた状態での上突出部3cが連結板4の片面に当たっている。
【0030】
従って、本実施形態では扉3はゲート用パネル2の外側にしか開くことができない。つまり、連結板4が扉3の開き方向を規制する戸当たり(ストッパー)の役割を果たしており、また、開いた扉3を閉じるにおいて上突出部3cが連結板4に当たることにより、扉3はその隣の壁パネル1と平面視で一直線に並んだ閉じ姿勢に自動的に保持される。本実施形態では扉3は遊具設備の内部に向けて回動する内開き方式であるが、図6(A)に二点鎖線で示すように連結板4をパネル1,2の外面に固定すると、扉3は内開き方式になる。
【0031】
また、例えば図2に明示するように、ゲート用パネル2とその隣の壁パネル1とを固定する連結板4は、第2枠部9の内端面よりもある程度の寸法Eだけ奥側(隣の壁パネル1の側)に位置している。換言すると、第2枠部9の上部は、連結板4と重ならない上露出部9aになっている。
【0032】
(3).引手部材の詳細
次に、引手部材11を説明する(なお、以下の説明で引手部材11の動き等に関して方向を示すため「前進」「後退」「前後」の文言を使用するが、「前進」は扉3の回動中心から外側に向いて水平スライドすることであり、「後退」はその逆で扉3の回動中心に向かって水平スライドすることをいう。また、ゲート用パネル2の出入り口7を外側から見た状態を基準にして正面視(正面図)の文言を使用しており、このため、引手部材11の動きに関する「前後」と正面視での「左右」とは共通している。
【0033】
引手部材11は左右横長の略長方形形状であり、図3(D)に示すように、扉3に上方から被さる金属製のインナー部材26と、インナー部材26の内外両外面に接着した樹脂製のアウター部材27とで構成されており、アウター部材27の上端部の外面には水平状に延びる外向きリブ27aを形成している。なお、表裏のアウター部材27をインナー部材26の上面箇所で一体に連結することも可能である。引手部材11は第2枠部9における上切欠き部24よりも下方までの延びる上下高さであり、引手部材11が第2枠部9の上露出部9aに外側から嵌合することによって扉3は閉じた状態に保持される。
【0034】
また、扉3の上突出部3cは第2枠部9の上切欠き部24に深く入り込んでいるため、平面視において扉3の上突出部3cは第2枠部9の上露出部9aと重なっており、従って、閉扉状態で引手部材11は扉3の上突出部3cと第2枠部9の上露出部9aとに嵌合している。
【0035】
引手部材11を構成する表裏のアウター部材27の下部には、扉3を貫通する一対のガイドピン28(ボルトを使用している)がフランジ付き円筒形のナット29を介して固定されている一方、扉3において前記ガイドピン28が貫通する穴は、鉛直部30aと水平部30bとを有するL形のガイド穴30になっている。鉛直部30aの上端と水平部30bの前端とが連続している。
【0036】
従って、引手部材11は、ガイド穴30の鉛直部30aに沿って上下動自在であり、かつ、上向きに上昇させた状態で前後スライドさせることができる。そして、扉3を閉じて引手部材11を前進させると、引手部材11の前端部が第2枠部9の上露出部9aに嵌合することで扉3は閉じた状態に保持され、その状態で引手部材11をガイド穴30の鉛直部30aに沿って下降動させ得る。閉じた扉3を開けるには、引手部材11をいったん上向きに上昇させて(持ち上げて)、その状態を保持しつつ後退動させればよい。
【0037】
上切欠き部24は左右長さが例えば200mm程度で全体の最大厚さを55mm程度に設定している。すなわち、かなり大きな嵩を有しており、このため大人は手で掴んで簡単に操作はできても、手が小さくて握力が弱い幼児はしっかり掴むことを容易にはできない。つまり、引手部材11は幼児が掴んで動かそうとしても持て余すような大きさに設定されている。
【0038】
引手部材11においてアウター部材27はインナー部材26の上面から上向きに突出しており、このため引手部材11には上向きに開口した長溝30が形成されており、この長溝30の箇所にラッチ装置31が配置されている。ラッチ装置31は、図5に示すように、ケース32とラッチ爪33とばね34とで構成されており、ケース32は、インナー部材26の上面板に形成した穴に上方から嵌め込まれていてフランジ26aがインナー部材26の上面に重なっている。そして、図示していないが、ケース32の側面に形成した爪がインナー部材26における上面板に下方から当接することで抜け不能に保持されている。
【0039】
ラッチ爪33はケース32の内部に前後動自在に嵌め入れられており、前後動によって33aがケース32に設けた穴から出没するようになっている。また、先端部32の下面は最先端に行くに従って上方に行く傾斜面になっており、また、ラッチ爪33はケース32の上面部に空けた穴から上向きに露出する操作部33bを有しており、人は操作部33bに指を掛けて押すことでラッチ33をばね34に抗して後退させることができる。
【0040】
ラッチ装置31の大部分はインナー部材26の上面板の下方に突出しており、このため、扉3の上面部には、閉じた状態でラッチ装置31が上向きの入り込む切欠き35が形成されている。更に、扉3の上面のうち切欠き35の前方の部分には補強板36がビス37で固定されており、補強板36に切欠き35の前部において下向きに延びる垂下部36aを形成し、この垂下部36aにラッチ爪33の先端部33aが係脱する係合穴38を形成している。
【0041】
ラッチ装置31が扉3の上面から下向きに突出する寸法H1は引手部材11がガイド穴30の鉛直部30aに沿って上下動する寸法H2よりも小さい寸法になっている。このため、引手部材11は上昇させ切ると後退動させることで可能になっている。あえて述べるまでもないが、ラッチ爪33はばね34で前進方向に常に押されており、上昇位置で後退させた引手部材11を前進させてから下向き動させると、ラッチ爪33は補強板36のコーナー部に当たっていったん後退し、引手部材11が下降し切るのと同時に前進して先端部33aが係合穴38に嵌まり込む。これにより、引手部材11は上昇不能に保持(ロック)されている。
【0042】
(4).まとめ
既述のとおり、閉扉状態では引手部材11が第2枠部9の上露出部9aに嵌合していることで閉扉状態が保持されており、かつ、ラッチ爪33が係合穴38に嵌まっていることで引手部材11は上昇動不能に保持されている。すなわち引手部材11はロック状態になっており、その状態は図5(A)に示されている。
【0043】
そして、ラッチ爪33を後退させた状態を保持しつつ引手部材11を上昇させ、次いで引手部材11を上昇させた状態を保持して後退させる、という操作によって引手部材11は図6に示すようなフリー状態になって扉3を開くことができる。扉3の閉じた後のロック操作は逆き手順で行われる。そして、ラッチ装置31の係合解除→引手部材11の上昇操作→引手部材11の後退動、という操作は大人には簡単であっても幼児にとっては頗る厄介であり、このため高いチャイルドプルーフ機能を確保できるのである。
【0044】
ところで、引手部材11のうち扉3から突出したオーバーハング部のみを第2枠部9の嵌合させることで閉扉状態を保持することも可能であるが、この場合は、扉3にこれを開こうとする外力が作用するとその外力は引手部材11のオーバーハング部に対してモーメントとして作用し、このため耐久性が低下する虞がある。
【0045】
これに対して本実施形態のように扉3に上突出部3cを設けると、引手部材11が扉3の上突出部3cと第2枠部9の上露出部9aとに上下高さを変えて嵌合しているため、扉3にこれを開こうとする外力が作用しても引手部材11にはモーメントが生じることはなく、このため耐久性を向上できる。扉3の上突出部3aが連結板4に当たることで扉3の開き方向を決めると共に閉扉状態の姿勢決めを行える点は既述したとおりである。
【0046】
(5).第2実施形態(図7)
図7では第2実施形態を示している。(A)は正面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。この実施形態は、引手部材11を後退させてからその後端部を中心にして上向きに跳ね上げ回動させることでロック状態からフリー状態になるように設定している。具体的な構造は次のとおりである。
【0047】
引手部材11は、扉3に支軸40で跳ね上げ回動自在に連結されたインナー材11aと、インナー材11bにスライド自在で抜け不能に取付けられたアウター部材11bとで構成されている。インナー材11aは扉3に上方から被さる下向き開口コ字状の形態であり、その先端は扉3の先端(自由端)よりも奥側(回動中心の側)に位置している。
【0048】
他方、アウター部材11bも下向き開口コ字状であり、その内面にはインナー材11aに横長の凹所41が形成されており、これにより、アウター部材11bがインナー材11aに対して水平スライドすることが許容されている。アウター部材11bは所定のストロークSで水平動し得るが、後退した状態でも第2枠部9に嵌合した状態が保持されるように設定している。そして、アウター部材11bの先端部に前向きに開口の係合溝42が形成されている一方、第2枠部9には、引手部材11が前後スライドすることで係合溝42が嵌脱する係合ピン43が取付けられている。
【0049】
引手部材11は、後退させ切ると係合ピン43からは離脱しつつ第2枠部9には嵌まった状態が保持されている。従って、閉扉状態で引手部材11を後退させてから支軸40を中心にして跳ね上げ回動させると、扉3はロック状態からフリー状態になって開けることができる。扉3を閉じてからロック状態に移行させるのは逆の手順で行う。
【0050】
詳細は省略するが、(A)に示すように、引手部材11のアウター部材11bには第1実施形態と同様のラッチ装置31を設けるのが好ましい(この場合、ラッチ装置31のラッチ爪はインナー材11aに係合しても良いし扉3に係合しても良い。)。引手部材11又は扉33に、ばね力を利用して引手部材11を跳ね上げた状態に保持する弾性的姿勢保持手段を設けることも可能である。
【0051】
なお、本実施形態とは逆に、引手部材11を若干の角度だけ跳ね上げ回動してから後退動させるという手順でロック状態からフリー状態に移行させることも可能であり、この場合は、(A)に一点鎖線で模式的に示すように、引手部材11における係合溝42をL文字状の形態にしたら良い(但し、フリー状態からロック状態への移行をスムースに行うためには、引手部材11は撥ね上げた姿勢のままで前後動するように配慮する必要がある。)。
【0052】
(6).第3実施形態(図8)
図8は第3実施形態の概略図であり、この実施形態では引手部材11を第2枠部9に設けている。第2枠部9の横幅に余裕がある場合は、このような方式も採用可能である。引手部材11をロック状態とフリー状態とに切り替える動きは特に限定はない。この実施形態では、ヒンジ手段16は板材にヒンジピン21を有するものが使用されている。
【0053】
(7).第4実施形態(図9)
図9では第4実施形態を示している。この実施形態では引手部材11は前後方向にスライドすることでロック状態とフリー状態とに切り替わるようになっており、引手部材11の基本的な構造は第1実施形態や第2実施形態と同じで扉3に上方から被さる断面コ字状の形態になっている。引手部材11には前後複数本(2本)のガイドピン28が固定的に取付けられている一方、扉3にはガイドピン28が前後スライド自在に嵌まるガイド穴30が直線状に延びるように形成されている(他のガイド手段で前後スライドさせても良いのであり、この点は他の実施形態も同じである。)。
【0054】
この実施形態では引手部材11の内部には扉3に向けて開口した表裏一対の空所44が形成されており、空所44には左右(前後)横長で帯状のラッチ体45が配置されている。ラッチ体45は剛性を有する金属板製であり、前端は引手部材11の前端部まで延びており、前端部には第2枠部9に形成している係合穴46に係脱し得る係合爪47が切り起こし形成されている一方、後端部は上下幅寸法が大きい操作部45aになっており、操作部45aは引手部材11に形成した窓穴48から外部に露出している。
【0055】
更に、ラッチ体45のうち係合爪47が形成されている細幅部は扉3の外面に近接又は密接している一方、操作部45aは扉3の表裏面から大きく離反しており、細幅部の基端部に上下一対の水平片45bを設けての水平片45bが鉛直姿勢の枢支ピン49によって引手部材11に連結されている。更に、操作部45aと扉3との間には圧縮ばね50が配置されている。第2枠部9には係合穴46を形成するための補強板51が固定されている。また、ラッチ体45の先端は第2枠部9への嵌まり込みを容易ならしめるため平面視で外向きに傾斜している。
【0056】
この第4実施形態では、表裏ラッチ体45の操作部45aを外側から押さえてばね50に抗してラッチ体45を水平回動させることで扉3はロック状態からフリー状態に切り替わるが、特徴として、ばね50の強さを、一般成人(例えば成人女性)は容易に圧縮変形させることができるが幼児は圧縮変形させることができない弾性力(硬さ)としている。このようにばね50の強さによってチャイルドプルーフ機能を持たせることに代えて又はこれに加えて、操作部45aの位置を、大人は引手部材11を上方から掴んで指先を当てることはできても幼児には指が届かない位置に設定すること、或いは、引手部材11を大人は掴み得るが幼児は掴むことができない幅寸法に設定することも可能である。
【0057】
(8).第5実施形態(図10)
図10では第5実施形態を示すしている。この実施形態では、扉3のうち基端部の上下に外向き張り出し部3b′を形成してこの外向き張り出し部3b′を第1枠部8の内向き突部8′にヒンジ装置16で連結している。また、扉3のうち自由端部でかつ上端部に切欠き部3c″を形成して、第2枠部9には切欠き部3c″に入り込む突出部24′を形成しており、更に、連結板4に扉3の自由端部3c′が僅かながら重なるように設定している。
【0058】
この実施形態でも連結板4によって扉3の閉じ姿勢が自動的に規定されると共に、扉3と第2枠部9とは平面視で部分的に重なっている。
【0059】
(9).その他
本願発明は上記した各実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、第1枠部と第2枠部とは互いに分離していても良く、家庭に設置する場合は、左右の枠部を建物の壁等に固定したら良い。また、扉及び枠部とも板状である必要性はなく、格子状などを採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態に係る遊具設備の外観を示す図で、(A)は部分平面図、(B)は(A)を矢印Bの方向から見た概略斜視図である。
【図2】ゲート用パネルを中心にした正面図である。
【図3】図2のA−A視断面図、B−B視断面図、C−C視断面図、D−D視断面図である。
【図4】(A)は要部の分離正面図、(B)は(A)のB−B平面図である。
【図5】(A)は図2の V-V視断面図、(B)は(A)の一部抽出図、(C)は(A)のC−C視断面図である。
【図6】動作状態を示す図で(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図7】第2実施形態を示す図である。
【図8】第3実施形態を示す図である。
【図9】第4実施形態を示す図である。
【図10】第5実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 遊具設備を構成する壁パネル
2 遊具設備を構成するゲート用パネル
3 扉
4 連結板
5 コーナー用連結材
7 出入り口
8 第1枠部
9 第2枠部
11 引手部材
16 ヒンジ装置
31 ラッチ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幼児の身長と同じ程度かそれよりも低い高さの扉と、前記扉を挟んで一方の側に配置された第1枠部と、前記扉を挟んで他方の側に配置された第2枠部とを備えており、前記扉はその一側部を中心にして水平回動するように第1枠部に連結されており、前記扉の自由端側の部分か又は第2枠部には、扉を閉じた状態と開き可能な状態とに切り替えるための引手部材が装着されており、前記引手部材は、当該引手部材の位置又は姿勢若しくは両方が変わることにより、閉扉状態が保持されるロック状態と開扉可能なフリー状態とに切り替わるようになっている、
という構成において、
前記引手部材は、複数方向の動きの組み合わせによってロック状態とフリー状態とに切り替わるようになっているか、又は、ロック状態とフリー状態との移行は一方向の動きで行われるが大人の手でしかロック解除操作できないラッチ装置を備えている、
幼児用ゲート装置。
【請求項2】
前記引手部材は、前記扉の上部でかつ自由端の側に、第2枠部に向けて前進・後退するように水平方向にスライド自在でかつ前進状態では下降動する状態に取付けられており、引手部材は、前進状態では第2枠部に表裏両側から嵌合してロック状態になり、後退し切ると第2枠部から離脱してフリー状態になるように設定されている、
請求項1に記載した幼児用ゲート装置。
【請求項3】
幼児の身長よりも低い高さで四角形の壁パネルの多数枚と、高さ及び横幅が前記壁パネルと略同じ大きさのゲート用パネルと、壁パネル同士又は壁パネルとゲート用パネルとを平面視で直線状に連結するための連結板と、壁パネル同士又は壁パネルとゲート用パネルとを平面視で直交した姿勢に連結するためのコーナー用連結材とを備えており、
前記ゲート用パネルは上向きに開口した出入り口を有しており、このためゲート用パネルは出入り口を挟んで一方の側に位置した第1枠部と他方の側に位置した第2枠部と両枠部がその下部において連続する敷居部とを有しており、ゲート用パネルの第1枠部には扉が水平回動自在に連結されており、
前記ゲート用パネルにおける扉の上部でかつ自由端の側に、引手部材が第2枠部に向けて前進・後退するように水平方向にスライド自在でかつ前進状態では下降動する状態に取付けられており、前記引手部材は、前進状態では第2枠部に表裏両側から嵌合して扉を閉じた状態に保持し、後退し切ると第2枠部から離脱して扉を開閉自在と成すように設定されている、
幼児用遊具設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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