説明

広がったπ共役系を有するフォトクロミック材料、並びにそれを含む組成物及び物品

本明細書に開示される種々の非限定的実施形態は、広がったπ共役系を有するフォトクロミック材料に関する。例えば、本発明に開示される種々の非限定的実施形態は、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含む、インデノ縮合ナフトピラン等のフォトクロミック材料を提供する。更に、本発明に開示される特定の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、従来のフォトクロミック材料に比べて電磁放射の濃色吸収を示す場合があり、及び/又は従来のフォトクロミック材料に比べて深色シフトした閉環体の吸収スペクトルを有する場合がある。他の非限定的実施形態は、例えば光学素子等、開示したフォトクロミック材料を使用して作製したフォトクロミック組成物及びフォトクロミック性物品、並びにそれらの作製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態は、広がったπ共役系を有するフォトクロミック材料に関する。他の非限定的実施形態は、例えば光学素子等、フォトクロミック材料を取り込むフォトクロミック組成物及びフォトクロミック性物品に関する。
【0002】
インデノ縮合ナフトピラン等の従来の多くのフォトクロミック材料が、特定の波長の電磁放射(又は「化学線放射」)に応答して、それぞれ特徴的な吸収スペクトルを有する、ある構造(又は状態)から別の構造へと変化する。本明細書で使用される「化学線放射」という用語は、フォトクロミック材料をある構造から別の構造へと変化させることができる電磁放射を指す。例えば、従来の多くのフォトクロミック材料が、化学線放射に応答して、「消色された」状態又は「非活性」状態に対応する閉環体から、「着色された」状態又は「活性」状態に対応する開環体へと変化することができ、更に化学線放射がなくても熱エネルギーに応答して閉環体へ戻ることが可能である。例えばメガネ用のフォトクロミックレンズ等、1つ以上のフォトクロミック材料を含むフォトクロミック組成物及びフォトクロミック性物品は、通常、それに含まれるフォトクロミック材料の状態に対応する透明で着色された状態を示す場合がある。
【0003】
通常、組成物又は物品に取り込まれる時に所望の光学効果を達成するのに必要となるフォトクロミック材料の量は、ある程度、フォトクロミック材料1分子当たりの吸収する化学線放射の量に依存する。即ち、フォトクロミック材料1分子当たりの吸収する化学線放射の量が多ければ、それだけフォトクロミック材料は閉環体から開環体へ変化しやすくなる(即ち、その可能性が高くなる)。化学線放射に対して比較的高いモル吸収係数(又は「吸光係数」)を有するフォトクロミック材料を使用して作製されるフォトクロミック組成物及びフォトクロミック性物品は、所望の光学効果を達成しつつも、通常、モル吸収係数の低いフォトクロミック材料より少ない濃度で使用される場合がある。
【0004】
用途によっては、物品の物理的な大きさのために、物品に取り込むことができるフォトクロミック材料の量に限界がある場合がある。そのような場合、比較的低いモル吸収係数を有する従来のフォトクロミック材料では、所望の光学効果を達成するのに必要な量のフォトクロミック材料を物品に添加することが物理的にできない可能性があるため、そのような物品への使用が実用的でない場合がある。更に、他の用途では、フォトクロミック材料自体のサイズ又は溶解性のために、物品に取り込むことができるフォトクロミック材料の量が制限される場合がある。加えて、更に別の用途においては、フォトクロミック材料が高価な場合等、経済的な理由から使用するフォトクロミック材料の量が制限される場合がある。
【0005】
従って、化学線放射に対して濃色吸収を示すことができるフォトクロミック材料は、所望の光学効果を達成しつつ、より低い濃度でフォトクロミック材料を使用することができるため、用途によっては、そのようなフォトクロミック材料の開発が都合がよい場合がある。本明細書で使用される「濃色吸収」という用語は、広がったπ共役系を有するフォトクロミック材料1分子当たりの電磁放射の吸収が、広がったπ共役系を有さない同様のフォトクロミック材料に比べて増加していることを指す。
【0006】
更に、前述の通り、閉環体と開環体の間の変化は、通常、フォトクロミック材料が特定の波長の電磁放射に曝されることを必要とする。従来の多くのフォトクロミック材料の場合、このような変化を起こす電磁放射の波長は、通常320ナノメートル(nm)〜390nmの範囲である。そのため、320nm〜390nmの範囲の電磁放射のかなりの量が遮蔽されるような用途での使用においては、従来のフォトクロミック材料が最適でない場合がある。例えば、従来のフォトクロミック材料を使用して製造されるメガネのレンズは、自動車で使用された時に完全に着色した状態にならない場合がある。これは、320nm〜390nmの範囲の電磁放射の大部分が、レンズのフォトクロミック材料によって吸収される前に自動車のフロントガラスによって吸収されるためである。従って、用途によっては、電磁放射の閉環体の吸収スペクトルがより長い波長にシフトした(即ち、「深色シフトした」)フォトクロミック材料の開発が望まれる。本明細書で使用される「閉環体の吸収スペクトル」という用語は、閉環体又は非活性状態のフォトクロミック材料の吸収スペクトルを指す。例えば、フォトクロミック材料をフロントガラスの裏側で使用するような用途では、フォトクロミック材料が390nmを超える波長の十分な電磁放射を吸収するように、フォトクロミック材料の閉環体の吸収スペクトルがシフトする場合、フォトクロミック材料が閉環体から開環体へ変化できるようにすると、好都合な場合がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(本開示の要旨)
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態は、(i)インデノ縮合ナフトピラン;並びに(ii)その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むフォトクロミック材料に関し、但し、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する基とインデノ縮合ナフトピランの10位又は12位に結合する基とが一緒に縮合基を形成する場合、この縮合基はベンゾ縮合基ではなく、かつ;インデノ縮合ナフトピランの13位は未置換、一置換又は二置換であるが、但し、インデノ縮合ナフトピランの13位が二置換の場合、それら置換基は一緒にノルボルニルを形成しない。
【0008】
他の非限定的実施形態は、インデノ縮合ナフトピランの13位が未置換、一置換又は二置換であるが、但し、インデノ縮合ナフトピランの13位が二置換の場合、それらの置換基は一緒にノルボルニルを形成せず、且つ320nm以上420nm以下の波長範囲におけるこのフォトクロミック材料の吸光係数と波長のプロットを積分して決定されるように、フォトクロミック材料が1.0×10nm×mol−1×cm−1を超える積分吸光係数を有する、インデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料に関する。
【0009】
更に他の非限定的実施形態は、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、インデノ[1’,2’:4,3]ナフト[2,1−b]ピラン、及びそれらの混合物から選択されるインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料に関し、インデノ縮合ナフトピランの13位が未置換、一置換又は二置換であるが、但し、インデノ縮合ナフトピランの13位が二置換の場合、それらの置換基が一緒にノルボルニルを形成せず;そして、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基であって、前記基が置換若しくは未置換アリール、置換若しくは未置換ヘテロアリール、又は−X=Y若しくは−X’≡Y’(式中、X、X’、Y及びY’は、本明細書に後述する通りであり、特許請求の範囲に記載される通りである)で表される基;或いは、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基は、インデノ縮合ナフトピランの12位に結合する基と一緒に、又はインデノ縮合ナフトピランの10位に結合する基と一緒に、縮合基を形成し、前記縮合基はインデノ、ジヒドロナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾピラン又はチアナフテンである。
【0010】
更に他の非限定的実施形態は、
【0011】
【化9】

又はそれらの混合物(式中、R、R、R、R、R、B及びB’は、本明細書に後述する通りであり、特許請求の範囲に記載される通りである)によって表されるフォトクロミック材料に関する。
【0012】
更に他の非限定的実施形態は、光学素子等のフォトクロミック組成物及びフォトクロミック性物品、並びにその製造方法に関するものであり、フォトクロミック組成物及びフォトクロミック性物品は、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料を含む。例えば、1つの特定の非限定的実施形態は、320nm〜390nmの範囲の電磁放射の大部分を遮蔽する基材の裏側での使用に適した光学素子に関し、この光学素子は、インデノ縮合ナフトピラン、並びに光学素子の少なくとも一部に結合し、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むフォトクロミック材料を含み;光学素子の少なくとも一部が、320nm〜390nmの範囲の電磁放射の大部分を遮蔽する基材を透過する、390nmを超える波長の電磁放射を十分な量吸収することによって、光学素子の少なくとも一部が第一状態から第二状態へと変化する。
【0013】
本明細書に開示される様々非限定的実施形態は、以下の図面と併せて読むとより理解が深まる場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」、「an」及び「the」は、一つの指示対象に明示的及び明確に限定されない限り、複数の指示対象を含む。
【0015】
更に、本明細書において、特に指示がない限り、本明細書で使用される成分量、反応条件及びその他の特性又はパラメータを表現する全ての数値は、常に「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるものとする。従って、特に指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは近似値であることが理解されなければならない。少なくとも、特許請求の範囲の均等論の適用を制限しようと試みることなく、数値パラメータは、有効桁数及び一般的な数値の丸め方の適用を考慮して読まなければならない。
【0016】
更に、本発明の範囲を説明する数値範囲及びパラメータは、上で考察した通り近似値であるが、実施例に記載の数値は、可能な限り正確に記載されている。但し、そのような数値は、測定機器及び/又は測定方法に起因する特定の誤差を本質的に含んでいるということが理解されなければならない。
【0017】
本発明の種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料について説明する。本明細書で使用される「フォトクロミック」という用語は、少なくとも可視光に対する吸収スペクトルを有し、その吸収スペクトルが少なくとも化学線放射の吸収に反応して変化することを意味する。更に、本明細書で使用される「フォトクロミック材料」という用語は、フォトクロミック特性を示すように構成された材料、即ち、少なくとも可視光放射に対する吸収スペクトルを有し、その吸収スペクトルが少なくとも化学線放射の吸収に反応して変化するように構成された材料を意味する。既に考察した通り、本明細書で使用される「化学線放射(actinic radiation)」という用語は、フォトクロミック材料を、ある構造から別の構造へ、又はある状態から別の状態へと変化させることができる電磁放射を意味する。
【0018】
本明細書で開示される種々の非限定的実施形態は、(i)インデノ縮合ナフトピランと;(ii)その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基とを含むフォトクロミック材料に関し、但し、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する基とインデノ縮合ナフトピランの10位又は12位に結合する基とが一緒に縮合基を形成する場合、前記縮合基はベンゾ縮合基ではなく;インデノ縮合ナフトピランの13位は未置換又は一置換又は二置換であるが、但し、インデノ縮合ナフトピランの13位が二置換の場合、それらの置換基は一緒にノルボルニル(ビシクロ[2.2.1]ヘプチル又は8,9,10−トリノルボルニルとしても知られる)を形成しない。本明細書で使用される「縮合」という用語は、少なくとも2つの位置で共有結合することを意味する。
【0019】
本明細書で使用される「10位」、「11位」、「12位」、「13位」等の用語は、インデノ縮合ナフトピランの環原子のそれぞれ10位、11位、12位、13位等の位置を意味する。例えば、1つの非限定的実施形態によれば、そのインデノ縮合ナフトピランがインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランであれば、インデノ縮合ナフトピランの環状の原子は以下の(I)のように番号が振られる。別の非限定的実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランがインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[2,1−b]ピランであれば、インデノ縮合ナフトピランの環状の原子は以下の(II)のように番号が振られる。
【0020】
【化10】

更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランは、ピラン環の酸素原子に隣接する結合可能な位置(即ち、上記の(I)の3位、又は上記の(II)の2位)に結合するインデノ縮合ナフトピランの開環体を安定化させることができる基を有していてもよい。例えば、1つの非限定的実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランは、インデノ縮合ナフトピランのピラン環の酸素原子の隣に結合してインデノ縮合ナフトピランの開環体のπ共役系を広げることができる基を有していてもよい。上記のようにピラン環に結合してもよい基の非限定的な例については、B及びB’に関連して本明細書の後述で詳細に説明する。
【0021】
更に、以下の本明細書でより詳細に考察する通り、本明細書で開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、インデノ縮環ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基に加えて、インデノ縮合ナフトピランの11位以外の種々の位置に結合又は縮合する追加の基を含む場合がある。
【0022】
本明細書で使用される「基」という用語は、1つ又は複数の原子の配列を意味する。本明細書で使用される「インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基」という語句は、インデノ縮合ナフトピランのπ共役系と共役しているパイ結合(π結合)を少なくとも1つ有している基を意味する。そのような系に詳しい当業者には、インデノ縮合ナフトピランのπ共役系のπ電子は、インデノ縮合ナフトピランのπ共役系とその共役系と共役しているπ結合を少なくとも1つ有する基との結合されたπ電子系全体に非局在化していることが理解されるであろう。共役結合系は、1つの一重結合によって隔てられた少なくとも2つの二重結合又は三重結合の配列によって表すことができ、お互いに入れ替わる二重結合(又は三重結合)と一重結合を有する系であって、この系は少なくとも2つの二重(又は三重)結合を有する。インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げることができる基の非限定的な例は、本明細書に開示される様々非限定的実施形態に従って、後述で詳細に記載する。
【0023】
既に考察した通り、フォトクロミック材料1分子が吸収する化学線放射の量が多ければ、それだけフォトクロミック材料は閉環体から開環体へ変化し易くなる。更に、既に考察した通り、1分子当たりの化学線放射の吸収量が多いフォトクロミック材料は、一般的に、1分子当たりの化学線放射の吸収量が少ないフォトクロミック材料より低い濃度で使用しても、所望の光学効果を得ることができる。
【0024】
本明細書において限定しないが、本明細書に開示される特定の非限定的実施形態によれば、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むインデノ縮合ナフトピランは、その11位に結合する同様のインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランよりも、1分子当たりの化学線放射の吸収量が多い場合があることが、本発明者によって認められている。即ち、本明細書に開示される特定の非限定的実施形態のインデノ縮合ナフトピランは、化学線放射に対する濃色吸収を示す場合がある。上で考察した通り、本明細書で使用される「濃色吸収」という用語は、広がったπ共役系を有するフォトクロミック材料1分子当たりの電磁放射の吸収が、広がったπ共役系を有さない同様のフォトクロミック材料に比べて、増加していることを意味する。従って、本明細書において限定しないが、本明細書に開示される特定の非限定的実施形態のインデノ縮合ナフトピランは、フォトクロミック材料の使用量を制限する必要がある場合や制限する方が望ましい場合等の多くの用途において好都合に使用される場合があることが考慮される。
【0025】
材料が吸収する放射線の量(又は材料の「吸光度」)は、分光光度計を使用して、特定の波長と強度の入射光を材料に照射し、材料を透過した放射線の強度と入射光の強度を比較することにより、測定することができる。測定を行った各波長に対する、材料の吸光度(「A」)は次の式で求められる。
A=log I/I
式中の「I」は入射光の強度であり、「I」は透過光の強度である。材料の吸収スペクトルは、材料の吸光度と波長とをプロットすることで得られる。同じ条件、即ち、濃度と電磁放射がサンプルを通過する透過距離(即ち、同じセル長又はサンプルの同じ厚さ)が同じである条件で測定したフォトクロミック材料の吸収スペクトルを比較することにより、片方の材料の所定の波長でのスペクトルのピーク強度の増加を、その材料のその波長での吸光度の増加と見なすことができる。
【0026】
図1に、2つの異なるフォトクロミック材料の吸収スペクトルを示す。吸収スペクトル1a及び1bは、測定するフォトクロミック材料0.0015モーラル(m)の溶液をモノマーブレンドに添加し、続いてその混合物を成形して作製した0.22cm×15.24cm×15.24cmのアクリルチップを測定して得られたものである。吸収スペクトル1cは、吸収スペクトル1aの測定に使用したのと同じフォトクロミック材料0.00075(m)の溶液を上記のモノマーブレンドに添加し成形して作製した0.22cm×15.24cm×15.24cmのアクリルチップを測定して得られたものである。アクリルの測定チップの作製方法は、実施例にて詳細に説明する。
【0027】
更に具体的には、吸収スペクトル1aは、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含む、本発明に開示される1つの非限定的実施形態によるインデノ縮合ナフトピランの「全濃度」(即ち、0.0015m)における吸収スペクトルである。具体的には、吸収スペクトル1aは、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−(フェニル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの吸収スペクトルである。このフォトクロミック材料の吸光度は、測定した波長範囲において検出限界の最大値を超えたため、吸収スペクトル1aで吸光度の頭打ちが観察された。吸収スペクトル1bは、その11位に結合する同様のインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランの「全濃度」(即ち、0.0015m)における吸収スペクトルである。具体的には、吸収スペクトル1bは、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの吸収スペクトルである。
【0028】
図1の吸収スペクトル1a及び1bから分かる通り、本明細書に開示される1つの非限定的実施形態による、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むインデノ縮合ナフトピラン(スペクトル1a)は、その11位に結合する同様のインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピラン(スペクトル1b)に比べて、320nm〜420nmの波長で電磁放射の吸収の増加を示す(即ち、電磁放射の濃色吸収を示す)。
【0029】
再び図1を参照すると、既に考察した通り、吸収スペクトル1cは、吸収スペクトル1aと同じインデノ縮合ナフトピランの吸収スペクトルであるが、吸収スペクトル1aを得るために使用した全濃度の半分の濃度のサンプルで測定したものである。図1の吸収スペクトル1c及び1bの比較から分かる通り、本明細書に開示される1つの非限定的実施形態による、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むインデノ縮合ナフトピランは、全濃度において、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を有さない同様のインデノ縮合ナフトピラン(スペクトル1b)に比べて、320nm〜420nmの波長で電磁放射の濃色吸収を示す。
【0030】
材料が吸収することのできる放射線の量についての他の指標には、その材料の吸光係数がある。材料の吸光係数(「ε」)は、次の式のように、その材料の吸光度に関係している。
ε=A/(c×l)
式中、「A」は特定の波長におけるその材料の吸光度であり、「c」はその材料の濃度であり1リットル当たりのモル量(mol/L)で表され、「l」は透過距離(又はセルの厚さ)でありセンチメートルで表される。更に、吸光係数と波長とをプロットして、その波長範囲にわたって積分
【0031】
【数1】

することにより、その材料の「積分吸光係数」を得ることができる。一般的に言えば、材料の積分吸光係数が大きくなるほど、その材料の1分子当たりの吸収する放射線も多くなる。
【0032】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、波長が320nm以上420nm以下の範囲におけるフォトクロミック材料の吸光係数と波長とのプロットを積分して積分吸光係数を求めると、1.0×10nm/(mol×cm)(即ち、nm×mol−1×cm−1)を超える積分吸光係数を有する場合がある。更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、波長が320nm以上420nm以下の範囲におけるフォトクロミック材料の吸光係数と波長とのプロットを積分して積分吸光係数を求めると、少なくとも1.1×10nm×mol−1×cm−1、又は少なくとも1.3×10nm×mol−1×cm−1以上の積分吸光係数を有する場合がある。例えば、種々の非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料は、波長が320nm以上420nm以下の範囲におけるフォトクロミック材料の吸光係数と波長とのプロットを積分して積分吸光係数を求めると、1.1×10nm×mol−1×cm−1から4.0×10nm×mol−1×cm−1(又はそれを超える)の範囲の積分吸光係数を有している場合がある。しかし、上に示した通り、一般的に言えば、フォトクロミック材料の積分吸光係数が大きくなるほど、そのフォトクロミック材料の1分子当たりの吸収する放射線も多くなる。従って、本明細書に開示されるその他の非限定的実施形態では、4.0×10nm×mol−1×cm−1を超える積分吸光係数を有するフォトクロミック材料が考慮される。
【0033】
既に考察した通り、従来の多くのフォトクロミック材料の場合、材料を閉環体(又は非活性状態)から開環体(又は活性状態)と変化させるために必要な電磁放射の波長は、320nm〜390nmの範囲であり得る。そのため、従来のフォトクロミック材料は、320nm〜390nmの範囲のかなりの量の電磁放射が遮蔽されるような用途で使用する場合、完全に着色された状態へと変化することができない可能性がある。本明細書において限定しないが、本明細書に開示される特定の非限定的実施形態によれば、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むインデノ縮合ナフトピランは、その11位に結合する同様のインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランに比べて、電磁放射の閉環体の吸収スペクトルが深色シフトする場合があることが、本発明者により認められている。上で考察した通り、本明細書で使用される「閉環体の吸収スペクトル」という用語は、閉環体又は非活性状態のフォトクロミック材料の吸収スペクトルを意味する。
【0034】
例えば、再び図1を参照すると、吸収スペクトル1aは、本明細書に開示される1つの非限定的実施形態のインデノ縮合ナフトピランの吸収スペクトルであるが、吸収スペクトル1bに比べて深色シフトしている(つまり、より長い波長に現れている)。吸収スペクトル1bに比べて、吸収スペクトル1aでは390nm〜420nmの範囲の吸収が増加しているため、吸収スペクトル1aのフォトクロミック材料は、320nm〜390nmの範囲の電磁放射のかなりの量が遮蔽またはブロックされるような用途(例えば、風防の裏側での使用が挙げられる)において好都合に使用できると考えられる。
【0035】
上で考察した通り、本発明に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランと、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含む。本発明に開示される種々の非限定的実施形態による基づく、インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げ得る基の非限定的な例には、置換又は未置換アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル及びフェナントラセニルだが、これらに限定されない);置換又は未置換ヘテロアリール基(例えば、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ビピリジル、ピリダジニル、シンノリニル、フタラジニル、ピリミジニル、キナゾリニル、ピラジニル、キノキサリニル、フェナントロリニル、トリアジニル、ピロリル、インドリル、フルフリル、ベンゾフルフリル、チエニル、ベンゾチエニル、ピラゾリル、インダゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、トリアゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソキサゾリル、ベンゾイソキサゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、チアトリアゾリル、プリニル、カルバゾリル及びアザインドリルだが、これらに限定されない);及び(III)又は(IV)(以下)で表される基が含まれる:
−X=Y(III) −X’≡Y’(IV)。
【0036】
上記の(III)に関して、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従って、Xが示し得る基の非限定的な例には、−CR、−N、−NO、−SR、−S(=O)R及び−P(=O)Rが含まれる。更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、Xが−CR又は−Nを表す場合、Yの表し得る基には、C(R、NR、O、及びSが含まれるが、これらに限定されない。更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、Xが−NO、−SR、−S(=O)R、又は−P(=O)Rを表す場合、Yの表し得る基には、例えばOが含まれるが、これに限定されない。Rの表し得る基の非限定的な例には、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基(例えば、−G−に関連して本明細書で後述するもの等)、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基(例えば、ピペラジノ、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジノ等)、反応性置換基、親和性置換基、及びフォトクロミック材料が含まれる。上で考察した各Rで表される基は独立して選択することができ、その非限定的な例には、Rに関して上で考察した基が含まれる。
【0037】
上記の(IV)に関して、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、これに限定されるものではないが、X’は−C又は−N(これらに限定されない)を含む基を表し得、Y’はCR又はN(これらに限定されない)を含む基を表し得る。Rで表され得る基の非限定的な例には、Rに関して上で考察した基が含まれる。
【0038】
或いは、上で考察した通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基は、インデノ縮合ナフトピランの12位に結合する基と一緒に、又はインデノ縮合ナフトピランの10位に結合する基と一緒に、縮合基を形成する場合があるが、但し、この縮合基はベンゾ縮合基ではない。別の非限定的実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する基は、12位又は10位に結合する基と一緒に、縮合基を形成する場合があるが、但し、その縮合基は、11位においてインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げるが、10位でも12位でもインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げない。例えば、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する基が、インデノ縮合ナフトピランの10位又は12位に結合する基と一緒に、縮合基を形成する場合、その縮合基は、インデノ、ジヒドロナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾピラン又はチアナフテンである場合がある。
【0039】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基は、置換又は未置換C−C20アルケニル;置換又は未置換C−C20アルキニル、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール;−C(=O)R(式中、Rは上に記載する通りの基を表す場合がある)、或いは−N(=Y)又は−N(≡Y’)(式中、Yは、C(R、NR、O及びS(これらに限定されない)等の基を表す場合があり、Y’は、CR及びN(これらに限定されない)等の基を表す場合があり、R及びRは上で考察したもののような基を表す場合がある)である場合がある。それらの置換C−C20アルケニル、置換C−C20アルキニル、置換アリール、及び置換ヘテロアリール基に結合する場合がある置換基としては、本明細書に開示されるこれら及び他の非限定的実施形態によれば、置換されていても又は未置換である場合があるが、例えば、アルキル、アルコキシ、オキシアルコキシ、アミド、アミノ、アリール、ヘテロアリール、アジド、カルボニル、カルボキシ、エステル、エーテル、ハロゲン、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、フェノキシ、ベンジルオキシ、シアノ、ニトロ、スルホニル、チオール、複素環式基、反応性置換基、親和性置換基、及びフォトクロミック材料が挙げられるが、これらに限定されない。更に、本明細書に開示される様々非限定的実施形態では、インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げることができる基が複数の置換基を有する場合、各置換基を独立に選択してもよい。
【0040】
例えば、1つの非限定的実施形態によれば、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基は、未置換のアリール基又は未置換のヘテロアリール基か、或いは、置換又は未置換アルキル、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アミド、置換又は未置換アミノ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、アジド、カルボニル、カルボキシ、エステル、エーテル、ハロゲン、ヒドロキシ、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、シアノ、ニトロ、スルホニル、チオール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基、又はフォトクロミック材料の内の少なくとも1つで置換される、アリール基又はヘテロアリール基である場合がある。更に、そのアリール基又はヘテロアリール基が複数の置換基を有する場合、各置換基は、残りの置換基の1つ以上と同じであるか、又は異なっていてもよい。
【0041】
別の非限定的実施形態によれば、その11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基は、−C(=O)Rである場合があり、Rは、アシルアミノ、アシルオキシ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、反応性置換基、又はフォトクロミック材料を表す場合がある。
【0042】
更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むフォトクロミック材料は、更に、そのインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基、又はフォトクロミック材料の別の位置に、直接的又は間接的に結合する他のフォトクロミック材料を有していてもよい。例えば、本明細書において限定しないが、図2aに示す通り、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基は−X=Yで表されてもよく、その場合のXは−CRを、YはOを表し(即ち、−C(=O)R)、Rはフォトクロミック材料(例えば、図2aに示すような3,3−ジフェニル−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン)で置換される複素環式基(例えば、図2aに示すようなピペラジノ基)を表す。図2bに示す別の非限定的実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基は、−X=Yである場合があり、その場合のXは−CRを、YはOを表し(即ち、−C(=O)Rである)、その場合のRはフォトクロミック材料(例えば、図2aに示すような3,3−ジフェニル−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン)で置換されるオキシアルコキシ(例えば、図2aに示すようなオキシエトキシ)を表す。
【0043】
本明細書において限定しないが、種々の非限定的実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むフォトクロミック材料が、このフォトクロミック材料に結合する別のフォトクロミック材料を有する場合、その別のフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むフォトクロミック材料に、絶縁基によって結合する場合がある。本明細書で使用される「絶縁基」という用語は、フォトクロミック材料のπ共役系を隔てる少なくとも2つ連続するシグマ(σ)結合を有する基を意味する。例えば、本明細書において限定しないが、図2a及び2bに示す通り、別のフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むフォトクロミック材料に、1つ以上の絶縁基によって結合する場合がある。具体的には、本明細書において限定しないが、絶縁基は、図2aに示す通りピペラジノ基のアルキル部分である場合があり、又、図2bに示す通りオキシアルコキシ基のアルキル部分である場合がある。
【0044】
更に、より詳細については後述するが、種々の非限定的実施形態によれば、11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基は、反応性置換基又は親和性置換基を有していてもよい。本明細書で使用される「反応性置換基」という用語は、配列の一部に反応性部分又はその残基を有するような原子の配列を意味する。本明細書で使用する、「反応性部分」の「部分」という用語は、特徴的な化学的特性を備えた有機分子の一部分を意味する。本明細書で使用される「反応性部分」という用語は、重合反応における中間体又はそれが含まれる高分子と反応して1つ以上の結合を形成することができる有機分子の一部分を意味する。本明細書で使用される「重合反応における中間体」という用語は、反応して他のモノマー単位と1つ以上の結合を形成し重合反応を継続することができる、或いは、フォトクロミック材料の反応性置換基の反応性部分と反応することができる、複数のモノマー単位の任意の組み合わせを意味する。例えば、本明細書において限定しないが、反応性部分は、重合反応のコポリマーのようなモノマー又はオリゴマーの重合反応における中間体と反応してもよく、又は例えば、これに限定するものではないが、中間体に付加する求核体又は求電子体として反応してもよい。或いは、反応性部分は、ポリマー上の基(例えば、ヒドロキシル基等であるが、これに限定されない)と反応してもよい。
【0045】
本明細書で使用される「反応性部分の残基」という用語は、反応性部分が保護基又は重合反応における中間体と反応した後の残りを意味する。本明細書で使用される「保護基」という用語は、その保護基を除去されるまで反応性部分を反応から保護するような反応性部分に除去可能に結合する基を意味する。所望により、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態の反応性置換基は、更に連結基を有していてもよい。本明細書で使用される「連結基」という用語は、反応性部分をフォトクロミック材料に結合する、1つ以上の置換基又は原子鎖を意味する。
【0046】
本明細書で使用される「親和性置換基」という用語は、フォトクロミック材料の別の材料又は溶媒への統合を促進し得る、原子の配列を意味する。例えば、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態による親和性置換基は、水、或いは親水性のポリマー材料、オリゴマー材料、又はモノマー材料への、フォトクロミック材料の混和性を増加させることにより、親水性材料に対するフォトクロミック材料の統合を促進し得る。別の非限定的実施形態によれば、親和性置換基は、親油性材料に対するフォトクロミック材料の統合を促進し得る。本明細書において限定しないが、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、親水性材料への統合を促進する親和性置換基を含むフォトクロミック材料は、少なくとも1リットル当たり1グラムの範囲で親水性材料内で混和性を示す場合がある。親和性置換基の非限定的な例には、−J基を有する置換基が含まれる(Jは、−K基又は水素を表し、それについては本明細書で後述する)。
【0047】
更に、置換基によっては、親和性置換基と反応性置換基の両方を有している場合もあることは、理解されるべきである。例えば、反応性部分をフォトクロミック材料に結合するための親水性の連結基を有する置換基は、反応性置換基と親和性置換基の両方であり得る。本明細書で使用するとき、そのような置換基は、反応性置換基又は親和性置換基のどちらか一方で記述される場合がある。
【0048】
上で考察した通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態は、インデノ縮合ナフトピランと、そのインデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むフォトクロミック材料であって、そのインデノ縮合ナフトピランの11位に結合する基と10位又は12位に結合する基とが一緒に縮合基を形成する場合は、前記縮合基はベンゾ縮合基ではなく、更にそのインデノ縮合ナフトピランの13位は未置換、一置換又は二置換であるが、但しインデノ縮合ナフトピランの13位が二置換の場合、それらの置換基が一緒にノルボルニルを形成しないフォトクロミック材料に関する。更に、他の非限定的実施形態によれば、このインデノ縮合ナフトピランは、インデノ縮合ナフトピランの13位にスピロ環基を有していなくてもよい。本明細書で使用される「13位にスピロ環基を有さない」という語句は、インデノ縮合ナフトピランの13位が二置換の場合、それらの置換基は一緒にスピロ環基を形成しないということを意味する。13位に結合してもよい好適な基の非限定的な例については、(XIV)及び(XV)の、R及びRに関連して本明細書で後述されている。
【0049】
更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態は、インデノ縮合ナフトピランと、そのインデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系広げる基を含むフォトクロミック材料に関するものであって(上で考察した通り)、そのインデノ縮合ナフトピランがインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランであり、その6位及び/又は7位は、それぞれ独立して、窒素含有基又は酸素含有基で置換されてもよく、そして13位は二置換でもよい。13位に結合する置換基の非限定的な例には、この非限定的実施形態によれば、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリール、置換又は未置換フェニル、置換又は未置換ベンジル、置換又は未置換アミノ及び−C(O)R30が含まれる。R30が表し得る基の非限定的な例には、水素、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、未置換、一置換又は二置換アリール基であるフェニル又はナフチル、フェノキシ、モノ(C−C)アルキル又はジ(C−C)アルキルで置換したフェノキシ、及びモノ(C−C)アルコキシ又はジ(C−C)アルコキシで置換したフェノキシが含まれる。本明細書に開示されるこれら又は他の非限定的実施形態によるインデノ縮合ナフトピランの6位及び/又は7位に存在し得る窒素含有基の好適な非限定的な例には、本明細書において後述する(XIV)及び(XV)のRに関連して記載されている基が含まれる。
【0050】
本明細書に開示される別の非限定的実施形態は、インデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料であって、そのインデノ縮合ナフトピランの13位が、未置換、一置換又は二置換であるが、但し、13位が二置換の場合は、それらの置換基が一緒にノルボルニルを形成せず、更に波長が320nm以上420nm以下の範囲におけるこのフォトクロミック材料の吸光係数と波長のプロットを積分して決定されるように、積分吸光係数が1.0×10nm×mol−1×cm−1を超える、フォトクロミック材料に関する。更に、これらの非限定的実施形態によれば、波長が320nm以上420nm以下の範囲におけるフォトクロミック材料の吸光係数と波長とのプロットを積分して積分吸光係数を求めると、その積分吸光係数は、1.1×10nm×mol−1×cm−1から4.0×10nm×mol−1×cm−1の範囲であり得る。更に、これらの非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含み得る。インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基の非限定的な例には、上で考察した基が含まれる。
【0051】
本明細書に開示される1つの非限定的実施形態では、(i)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、インデノ[1’,2’:4,3]ナフト[2,1−b]ピラン、及びそれらの混合物から選択されるインデノ縮合ナフトピランであって、そのインデノ縮合ナフトピランの13位が未置換、一置換又は二置換であるが、但し、13位が二置換の場合はそれらの置換基が一緒にノルボルニルを形成しないインデノ縮合ナフトピラン;及び(ii)インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基であって、前記基が、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、或いは−X=Y又は−X’≡Y’で表される基を含み得る、基を含むフォトクロミック材料を提供する。X、X’、Y及びY’で表される場合がある基の非限定的実施形態は、上に記載されている。
【0052】
或いは、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基が、そのインデノ縮合ナフトピランの12位又は10位に結合する基と一緒に、インデノ、ジヒドロナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾピラン、又はチアナフテンである縮合基を形成する。更に、この非限定的実施形態によれば、そのインデノ縮合ナフトピランは、13位にスピロ環基を有していなくてもよい。
【0053】
既に考察した通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、少なくとも1つの反応性置換基及び/又は親和性置換基を有していてもよい。更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料が複数の反応性置換基及び/又は複数の親和性置換基を有する場合、各反応性置換基及び各親和性置換基は、それぞれ独立して選択してもよい。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に関連して使用される反応性置換基及び/又は親和性置換基の非限定的な例は次の何れか1つで表される:
−A’−D−E−G−J(V);−G−E−G−J(VI);−D−E−G−J(VII)
−A’−D−J(VIII);−D−G−J(IX);−D−J(X)
−A’−G−J(XI);−G−J(XII);および−A’−J(XIII)。
【0054】
上記の(V)〜(XIII)に関して、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、−A’−で表され得る基の非限定的な例には、−O−、−C(=O)−、−CH−、−OC(=O)−、及び−NHC(=O)−が含まれるが、但し−A’−が−O−の場合、−A’−は−Jと少なくとも1つの結合を形成する。
【0055】
種々の非限定的実施形態に従って、−D−で表され得る基の非限定的な例には、ジアミン残基及びその誘導体であって、前記ジアミン残基の第一アミノ窒素原子が、−A’−、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基、インデノ縮合ナフトピランの置換基、又はインデノ縮合ナフトピランの置換基もしくは置換可能な位置と結合を形成してもよく、又、前記ジアミン残基の第二アミノ窒素原子が−E−、−G−、又は−J−と結合を形成する場合があるジアミン残基及びその誘導体;アミノアルコール残基又はその誘導体であって、前記アミノアルコール残基のアミノ窒素原子が、−A’−、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基、そのインデノ縮合ナフトピランの置換基、又はそのインデノ縮合ナフトピランの置換可能な位置と結合を形成してもよく、又、前記アミノアルコール残基のアルコール酸素原子が、−E−、−G−、又は−J−と結合を形成する場合があるアミノアルコール残基又はその誘導体が含まれる。或いは、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、前記アミノアルコール残基のアミノ窒素原子は−E−、−G−、又は−J−と結合を形成してもよく、前記アミノアルコール残基の前記アルコール酸素原子は、−A’−、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基、そのインデノ縮合ナフトピランの置換基、又はそのインデノ縮合ナフトピランの置換可能な位置と結合を形成する場合がある。
【0056】
−D−で表され得る好適なジアミン残基の非限定的な例には、脂肪族ジアミン残基、脂環式ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザ脂環式アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基、及び芳香族ジアミン残基が含まれる。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に関連して使用されるジアミン残基の具体的な非限定例には、以下のものが含まれる。
【0057】
【化11】

−D−で表され得る好適なアミノアルコール残基の非限定的な例には、脂肪族アミノアルコール残基、脂環式アミノアルコール残基、アザ脂環式アルコール残基、ジアザ脂環式アルコール残基、及び芳香族アミノアルコール残基が含まれる。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態と関連して使用され得るアミノアルコール残基の具体的な非限定例には、以下のものが含まれる。
【0058】
【化12】

引き続き上記の(V)〜(XIII)に関して、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、−E−はジカルボン酸残基又はその誘導体を表す場合があり、前記ジカルボン酸残基の第一カルボニル基は−G−又は−D−と結合を形成してもよく、更に前記ジカルボン酸残基の第二カルボニル基は−G−と結合を形成する場合がある。−E−で表され得る好適なジカルボン酸残基の非限定的な例には、脂肪族ジカルボン酸残基、脂環式ジカルボン酸残基及び芳香族ジカルボン酸残基が含まれる。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に関連して使用され得るジカルボン酸残基の具体的な非限定例には、以下のものが含まれる。
【0059】
【化13】

本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態によれば、−G−は、−[(OC)x(OC)y(OC)z]−O−なる基(ここでx、y及びzが0〜50の範囲でそれぞれ独立して選択され、更にx、y及びzの合計が1〜50の範囲である);ポリオール残基又はその誘導体(前記ポリオール残基の第一ポリオール酸素原子が、−A’−、−D−、−E−、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基、又はインデノ縮合ナフトピランの置換基又は置換可能な位置と結合を形成してもよく、更にポリオール残基の第二ポリオール酸素原子が−E−又は−J−と結合を形成する場合がある);或いは、それらの組み合わせ(前記ポリオール残基の第一ポリオール酸素原子が−[(OC)x(OC)y(OC)z]−なる基と結合を形成し(即ち、−[(OC)x(OC)y(OC)z]−O−を形成する)、更に第二のポリオール酸素原子が−E−又は−J−と結合を形成する)を表す場合がある。−G−で表され得る好適なポリオール残基の非限定的な例には、脂肪族ポリオール残基、脂環式ポリオール残基及び芳香族ポリオール残基が含まれる。
【0060】
本明細書に開示される非限定的実施形態によれば、−G−で表され得るポリオール残基を形成するポリオールの具体的な非限定例には、(a)平均分子量が500未満の低分子量ポリオール(例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028号の第4欄48〜50行及び第4欄55行〜第6欄5行に記載されているものであるが、これに限定されない);(b)ポリエステルポリオール(例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028号の第5欄7〜33行に記載されているものであるが、これに限定されない);(c)ポリエーテルポリオール(例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028号第5欄34〜50行に記載されているものであるが、これに限定されない);(d)アミド含有ポリオール(例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028号第5欄51〜62行に記載されているものであるが、これに限定されない);(e)エポキシポリオール(例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028号第5欄63欄〜第6欄3行に記載されているものであるが、これに限定されない);(f)多価ポリビニルアルコール(例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028号第6欄4〜12行に記載されているものであるが、これに限定されない);(g)ウレタンポリオール(例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028第6欄13〜43欄に記載されているものであるが、これに限定されない);(h)ポリアクリルポリオール(例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028号第6欄43行〜第7欄40行に記載されているものであるが、これに限定されない);(i)ポリカーボネートポリオール(例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028号第7欄41〜55行に記載されているものであるが、これに限定されない);及び(j)そのようなポリオールの混合物が含まれる。
【0061】
再び上記の(V)〜(XIII)に関して、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、−Jは、以下に限定されないが、例えば−CHCOOH、−CH(CH)COOH、−C(O)(CHCOOH(wは1〜18の範囲)、−CSOH、−C10SOH、−CSOH、−CSOH、−CSOH及び−SOH等のような基を表す−K基を表す場合がある。他の非限定的な実施形態にしたがって、−Jは、連結基の酸素または窒素と結合を形成し、反応性部分(例えば、−OHまたは−NH)を形成する水素を表し得る。例えば、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、−Jは水素を表す場合があるが、但しその場合、−Jは、−D−又は−G−の酸素原子、或いは−D−の窒素原子に結合する。
【0062】
更に別の非限定的実施形態によれば、−Jは−L基又はその残基を表してもよく、−Lは、反応性部分を表す場合がある。例えば、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、−Lは、これに限定されるものではないが、アクリル、メタクリル、クロチル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル又はエポキシ等の基でもよい。本明細書で使用する、アクリル、メタクリル、クロチル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル、及びエポキシという用語は、以下:
【0063】
【化14】

の構造をいう。
【0064】
既に考察した通り、−G−はポリオールの残基を表す場合があり、これは、例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028号の第7欄56行〜第8欄17行に記載されるもの等、ヒドロキシ含有炭水化物を含むものとして本明細書で定義されている。このポリオール残基は、例えば、1つ以上のポリオールヒドロキシル基と、−A’−の前駆体(例えば、カルボン酸又はメチレンハロゲン化物)、ポリアルコキシル化基の前駆体(例えば、ポリアルキレングリコール)、或いはインデノ縮合ナフトピランのヒドロキシル置換基との反応等によって形成される場合がある。ポリオールは、q−(OH)aで表す場合があり、ポリオールの残基は化学式−O−q−(OH)a−1(式中、qはポリヒドロキシ化合物の骨格または主鎖であり、「a」は少なくとも2である)で表され得る。
【0065】
更に、上で考察した通り、−G−の1つ以上のポリオール酸素原子は、−Jと結合を形成する場合がある(即ち、−G−Jなる基を形成する)。例えば、本明細書において限定しないが、反応性置換基及び/又は親和性置換基が−G−Jなる基を有する場合、−G−がポリオール残基を表し、且つ−Jがカルボキシル末端基を含む−K基を表すならば、−G−Jを生成するために、1つ以上のポリオールヒドロキシル基を反応させて−K基を形成し(例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028号の第13欄22行〜第16欄15行に反応B及び反応Cに関して考察する通り)、カルボキシル化ポリオール残基を生成してもよい。或いは、−Jが、スルホ基末端又はスルホニル基末端の基を含む−K基を表す場合、本明細書において限定しないが、−G−Jは、HOCSOH;HOC10SOH;HOCSOH;HOCSOH;HOCSOH;又はHSOのそれぞれと、1つ以上のポリヒドロキシル基との酸縮合によって作製してもよい。更に、本明細書において限定しないが、−G−がポリオール残基を表し、且つ−Jがアクリル、メタクリル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、及びエポキシの中から選択される−L基を表す場合、−Lはポリオール残基と、アクリロイルクロライド、メタアクリロイルクロライド、2−イソシアネートエチルメタクリレート、又はエピクロロヒドリンのそれぞれとの縮合によって付加させてもよい。
【0066】
上で考察した通り、本発明に開示される種々の非限定的実施形態によれば、反応性置換基及び/又は親和性置換基は、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基に結合する場合がある。例えば、上で考察した通り、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基は、反応性置換基及び/又は親和性置換基で置換されるアリール又はヘテロアリールでもよく、或いは−X=Y又は−X’≡Y’(X、X’、Y、及びY’基は、上で考察した通り、反応性置換基又は/及び親和性置換基を有していてもよい)で表される基である場合がある。例えば、図3aに示される1つの非限定的実施形態によれば、π共役系を広げる基は、−A’−G−J(上記で考察された)で表される反応性置換基(例えば、図3aに示すような(2−メタクリルオキシエトキシ)カルボニル)で置換されるアリール基(例えば、図3aに示すようなフェニル基)である場合があり、その場合の−A’−は−C(=O)=を表し、−G−は−[OC]O−を表し、Jはメタクリルを表す。
【0067】
更にか、または代替的に、反応性置換基及び/又は親和性置換基は、インデノ縮合ナフトピランの11位以外の置換基、又は11位以外の利用可能な位置に結合する場合がある。本明細書において限定しないが、例えば、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基に結合した反応性置換基及び/又は親和性置換基を有することに加え、又は、有する代わりに、インデノ縮合ナフトピランの13位が、反応性置換基及び/又は親和性置換基で一置換又は二置換されてもよい。更に、その13位が二置換の場合、各置換基が同じである場合もあれば、異なる場合もある。別の非限定的な例では、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基に結合した反応性置換基及び/又は親和性置換基を有することに加え、又は、有する代わりに、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの3位、インデノ{1’,2’:4,3]ナフト[2,1−b]ピランの2位、及び/或いはこれらのインデノ縮合ナフトピランの6位又は7位が反応性置換基及び/又は親和性置換基で置換されてもよい。更に、フォトクロミック材料が複数の反応性置換基及び/又は親和性置換基を有する場合、それぞれの反応性置換基及び/又は親和性置換基は、残りの1つ以上の反応性置換基及び/又は親和性置換基と同じである場合もあれば、異なる場合もある。
【0068】
例えば、図3bを参照すると、1つの非限定的実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基が置換アリール基(例えば、図3bで示されている4−(フェニル)フェニル基)である場合、フォトクロミック材料は、(上で考察した通り)−D−Jで表され得る反応性置換基(例えば、図3bで示されている3−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシメチレンピペリジノ−1−イル)をさらに有する。その場合、−D−はアザ脂環式アルコール残基を表し、そのアザ脂環式アルコール残基の窒素原子は、インデノ縮合ナフトピランの7位と結合を形成し、そのアザ脂環式アルコール残基のアルコール酸素原子は−Jと結合を形成し、−Jは2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミルを表す。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、7位に反応性置換基を含むフォトクロミック材料の別の非限定的な例は、3−(4−モルホリノフェニル)−3−フェニル−6−メトキシ−7−(3−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシメチレンピペリジノ−1−イル)−11−フェニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランである。
【0069】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、その3位に反応性置換基を含むフォトクロミック材料の1つの非限定的な例は、3−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルエトキシ)フェニル)−3−フェニル−6,7−ジメトキシ−11−フェニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランである。
【0070】
本明細書に記載のフォトクロミック材料と組み合わせて使用され得る反応性置換基についてのさらなる記載は、本明細書に参考として組み入れられている、本出願と同日に出願された「PHOTOCHROMIC MATERTALS WITH REACTIVE SUBSTITUENTS」と題する米国特許出願第11/_____号の第12〜43段落に記載されている。反応性置換基及び/又は親和性置換基の更に他の非限定的な例は、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,555,028号の第3欄45行〜第4欄26行、及び米国特許第6,113,814号の第3欄30〜64行に記載されている。
【0071】
本明細書に開示される別の非限定的実施形態は、(XIV)、(XV)(以下に示される)、又はそれらの混合物で表されるフォトクロミック材料を提供する。
【0072】
【化15】

上記の(XIV)、(XV)を参照すると、本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態によれば、Rは、置換又は未置換アリール;置換又は未置換ヘテロアリール;或いは−X=Y又は−X’≡Y’によって表される基、を表す場合がある。X、X’、Y及びY’で表され得る基の非限定的実施形態は、上に記載されている。アリール置換基及びヘテロアリール置換基の好適な非限定的な例は、上に詳述されている。
【0073】
或いは、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、Rで表される基は、インデノ縮合ナフトピランの12位又は10位に結合したRで表される基と一緒に縮合基を形成する場合がある。好適な縮合基の例には、インデノ、ジヒドロナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾピラン、及びチアナフテンが含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
引き続き(XIV)及び(XV)を参照すると、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、「n」は0〜3の範囲である場合があり、「m」は0〜4の範囲である場合がある。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、nが少なくとも1であり、及び/又はmが少なくとも1の場合、各R及び/又は各Rで表される基は、独立して選択され得る。R及び/又はRで表され得る基の非限定的な例には、反応性置換基;親和性置換基;水素;C−Cアルキル;クロロ;フルオロ;C−Cシクロアルキル;置換又は未置換フェニル(前記フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシ);−OR10又は−OC(=O)R10(R10は、これに限定されるものではないが、S、水素、アミン、C−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、及びモノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキル等の基を表す場合がある);モノ置換フェニル(前記フェニルはパラ位に置換基を有し、その置換基は、ジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−(CH)−、−(CH−、又は−[O−(CH−であり、「t」は2〜6の範囲でもよく、「k」は1〜50の範囲でもよく、更に、その置換基は他のフォトクロミック材料上のアリール基に結合する場合がある);及び窒素含有基が含まれる。
【0075】
及び/Rで表され得る窒素含有基の非限定的な例には、−N(R11)R12(R11及びR12によって表される基は同じである場合もあれば異なる場合もある)が含まれる。R11及びR12で表され得る基の例には、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、水素、C−Cアルキル,フェニル、ナフチル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンゾピリジル、フルオレニル、C−Cアルキルアリール、C−C20シクロアルキル、C−C20ビシクロアルキル、C−C20トリシクロアルキル、及びC−C20アルコキシアルキルが含まれるが、これらに限定されない。或いは、種々の非限定的実施形態によれば、R11及びR12は、窒素原子と一緒にC−C20ヘテロビシクロアルキル環又はC−C20ヘテロトリシクロアルキル環を形成する基を表す場合がある。
【0076】
及び/又はRで表され得る窒素含有基の別の非限定的な例には、以下の(XVI)で表される窒素含有環が含まれる。
【0077】
【化16】

上記の(XVI)に関して、−M−で表され得る基の非限定的な例には、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従って、−CH−、−CH(R13)−、−C(R13−、−CH(アリール)−、−CH(アリール)−、及び−C(R13)(アリール)−が含まれる。−Q−で表され得る基の非限定的な例には、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従って、−M−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R13)−、及び−N(アリール)−について先に議論されたものが含まれる。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、各R13は、独立して、C−Cアルキルを表す場合があり、「(アリール)」指定された各基は、独立してフェニル又はナフチルを表す場合がある。更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、「u」は1〜3の範囲である場合があり、「v」は0〜3の範囲である場合があるが、但し、vが0の場合は、−Q−は、−M−に関して上で考察した基を表す。
【0078】
更に、R及び/又はRで表され得る適切な窒素含有基の別の非限定的な例には、以下の(XVIIA)又は(XVIIB)で表される基が含まれる。
【0079】
【化17】

本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、上記の(XVIIA)及び(XVIIB)において、それぞれR15、R16、及びR17で表される基は、互いに同じである場合もあれば、異なる場合もある。独立してR15、R16、及びR17が表す場合がある基の非限定的な例には、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従って、水素、C−Cアルキル、フェニル、及びナフチルが含まれる。或いは、種々の非限定的実施形態によれば、R15及びR16は、一緒に5〜8の炭素原子の環を形成する基を表す場合がある。更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、「p」は0〜3の範囲でもよく、そしてpが1を超える場合、R14で表される各基は、他の1つ以上のR14基と同じである場合もあれば、異なる場合もある。R14で表され得る基の非限定的な例には、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従って、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、フルオロ、及びクロロが含まれる。
【0080】
更に、R及び/又はRで表され得る窒素含有基の別の非限定的な例には、置換又は未置換C−C18スピロ二環式アミン及び置換又は未置換C−C18スピロ三環式アミンが含まれる。スピロ二環式アミン基及びスピロ三環式アミン置換基の非限定的な例には、アリール、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ及びフェニル(C−C)アルキルが含まれる。
【0081】
或いは、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、6位のRで表される基と7位のRで表される基とが一緒に、以下の(XVIIIA)又は(XVIIIB)で表される基を形成する場合がある。
【0082】
【化18】

(XVIIIA)又は(XVIIIB)において、Z基又はZ’基は、お互いに同じでもよく異なっていてもよい。Z又はZ’で表され得る基の非限定的な例には、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従って、酸素及び−NR11が含まれる。R11、R14、及びR16で表され得る基の非限定的な例には、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、上で考察したものが含まれる。
【0083】
再び(XIV)及び(XV)に関して、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、R及びRで表される基はそれぞれ、同じである場合もあれば、異なる場合もある。R及びRで表され得る基の非限定的な例には、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従って、反応性置換基;親和性置換基;水素;ヒドロキシ;C−Cアルキル;C−Cシクロアルキル;アリル;置換又は未置換フェニル又はベンジル(それぞれの前記フェニル基及びベンジル基である置換基は独立して、C−Cアルキル又はC−Cアルコキシである);クロロ;フルオロ;置換又は未置換アミノ;−C(O)R(Rは、例えば、これに限定されるものではないが、水素、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、未置換、一置換又は二置換フェニル又はナフチルであり、それぞれの前記置換基は独立してC−Cアルキル又はC−Cアルコキシ、フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ又はジ(C−C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェニルアミノ、及びモノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェニルアミノを表す場合がある);−OR18(R18は、例えば、これに限定されるものではないが、C−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、モノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキル、C−Cクロロアルキル、C−Cフルオロアルキル、アリル、及び−CH(R19)Tである場合があり、R19は水素又はC−Cアルキルを表す場合があり、TはCN、CF、又はCOOR20を表す場合があり、R20は水素又はC−Cアルキルを表す場合があり、又はR18は−C(=O)Uで表されてもよく、そのUは、例えば、これに限定されるものではないが、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、未置換、又は一置換又は二置換フェニル或いはナフチル(各前記置換基は独立して、C−Cアルキル又はC−Cアルコキシ)、フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ又はジ(C−C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェニルアミノ、又はモノ及びジ(C−C)アルコキシ置換フェニルアミノである場合がある);及び一置換フェニル(前記フェニルはパラ位に置換基を有しており、その置換基はジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−(CH)−、−(CH)t−、又は−[O−(CH−、その「t」は2〜6の範囲でもよく、「k」は1〜50の範囲でもよく、そしてその置換基は別のフォトクロミック材料のアリール基に結合する場合がある)が含まれる。
【0084】
或いは、R及びRは一緒に、オキソ基;3〜6個の炭素原子を含むスピロ炭素環基(但し、そのスピロ炭素環基はノルボルニルではない);又は1〜2個の酸素原子及びスピロ炭素原子を含む3〜6個の炭素原子を含むスピロ複素環基を形成する場合がある基を表す場合がある。更に、スピロ炭素環基とスピロ複素環基は、1つ又は2つのベンゾ環で付加されてもよければ、ベンゾ環で付加されなくてもよい。
【0085】
更に、種々の非限定的実施形態によれば、(XIV)及び(XV)のB及びB’で表される基は、同じである場合もあれば、異なる場合もある。B及び/又はB’で表され得る基の1つの非限定的な例には、本明細書に開示される非限定的実施形態に従って、反応性置換基及び/又は親和性置換基で一置換されるアリール基(例えば、本明細書において限定しないが、フェニル基又はナフチル基)が含まれる。
【0086】
B及び/又はB’で表され得る基の別の非限定的な例には、本明細書に開示される非限定的実施形態に従って、未置換、一置換、二置換又は三置換アリール基(例えば、フェニル又はナフチルであるが、これらに限定されない);9−ジュロリジニル(julolidinyl);ピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3‐イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾイル、ベンゾピリジル、インドリニル及びフルオレニルから選択される未置換、一置換又は二置換ヘテロ芳香族基が含まれる。好適なアリール置換基及びヘテロ芳香族置換基の例には、ヒドロキシ、アリール、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール、ハロアリール、C−Cシクロアルキルアリール、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルキルオキシ、C−Cシクロアルキルオキシ(C−C12)アルキル、C−Cシクロアルキルオキシ(C−C12)アルコキシ、アリール(C−C12)アルキル、アリール(C−C12)アルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシ(C−C12)アルキル、アリールオキシ(C−C12)アルコキシ、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール(C−C12)アルキル、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール(C−C12)アルキル、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール(C−C12)アルコキシ、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール(C−C12)アルコキシ、アミノ、モノ又はジ(C−C12)アルキルアミノ、ジアリールアミノ、ピペラジノ、N‐(C−C12)アルキルピペラジノ、N‐アリールピペラジノ、アジリジノ、インドリノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロキノリノ、テトラヒドロイソキノリノ、ピロリジル、C−C12アルキル、C−C12ハロアルキル、C−C12アルコキシ、モノ(C−C12)アルコキシ(C−C12)アルキル、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、及びハロゲンが含まれるが、これらに限定されない。好適なハロゲン置換基の非限定的な例には、ブロモ、クロロ及びフルオロが含まれる。好適なアリール基の非限定的な例には、フェニル及びナフチルが含まれる。
【0087】
好適なアリール置換基及びヘテロ芳香族置換基の別の非限定的な例には、−C(=O)R21で表されるものであって、R21は、例えば、これに限定されるものではないが、ピペリジノ又はモルホリノ等の基を表す場合があり、或いは、R21は−OR22又は−N(R23)R24で表されてもよく、R22は、例えば、これに限定されるものではないが、アリル、C−Cアルキル、フェニル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル及びC−Cハロアルキル等を表す場合がある。更に、R23及びR24で表される基は、同じである場合もあれば、異なる場合もあり、又、限定せずにC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、及び置換又は未置換フェニル(前記フェニル置換基はC−Cアルキル及びC−Cアルコキシを含む場合がある)等を含む場合がある。好適なハロゲン置換基の非限定的な例には、ブロモ、クロロ及びフルオロが含まれる。
【0088】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によればB及びB’で表され得る基の更に他の非限定的な例には、ピラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ピロリニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニル、及びアクリジニルから選ばれる未置換基又は一置換基(前記置換基は、C−C12アルキル、C−C12アルコキシ、フェニル又はハロゲンである場合がある);及び一置換フェニル(前記フェニルはパラ位に置換基を有し、その置換基はジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−(CH)−、−(CH−或いは−[O−(CH−であり、「t」は2〜6の範囲である場合があり、「k」は1〜50の範囲である場合があり、その置換基は別のフォトクロミック材料のアリール基に結合する場合がある)が含まれる。
【0089】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によればB又はB’で表され得る基の非限定的な例には、以下の(XXIXA)、(XXIXB)、又は(XXX)で表される基が含まれる。
【0090】
【化19】

上記の(XXIXA)及び(XXIXB)に関して、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によればVで表され得る基の非限定的な例には、−CH−及び−O−が含まれる。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従ってWで表され得る基の非限定的な例には、酸素及び置換窒素が含まれる。但し、Wが置換窒素の場合、Vは−CH−である。窒素置換基の好適な非限定的な例には、水素、C−C12アルキル及びC−C12アシルが含まれる。更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、「s」は0〜2の範囲である場合があり、sが1を超える場合、R25で表される各基は、他の1つ以上のR25と同じである場合もあれば、異なる場合もある。R25で表され得る基の非限定的な例には、C−C12アルキル、C−C12アルコキシ、ヒドロキシ及びハロゲンが含まれる。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従ってR26及びR27で表され得る基の非限定的な例には、水素及びC−C12アルキルが含まれる。
【0091】
上記の(XXX)に関して、R28が表す場合がある基の非限定的な例には、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、水素及びC−C12アルキルが含まれる。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従ってR29で表され得る基の非限定的な例には、未置換、一置換又は二置換ナフチル、フェニル、フラニル、又はチエニルが含まれ、前記置換基はC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、又はハロゲンである。
【0092】
或いは、B及びB’で表され得る基は、一緒にフルオレン−9−イリデン或いは一置換又は二置換フルオレン−9−イリデンを形成してもよく、前記フルオレン−9−イリデン置換基の各々は独立して、C−C12アルキル、C−C12アルコキシ、又はハロゲンである。
【0093】
既に考察した通り、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むフォトクロミック材料は、別のフォトクロミック材料に更に結合する場合があり、反応性置換基及び/又は親和性置換基(上に記載した置換基であるが、これらに限定されない)を更に含む場合がある。例えば、再び図2aを参照すると、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料が示されており、そのインデノ縮合ナフトピランは、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(例えば、上記の(XIV)で表されるような)であり、そのインデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基(例えば、Rで表される基)は−X=Yで表されてもよく、その場合、Xは−CRを表し、YはOであり(即ち、−C(=O)R)、Rはフォトクロミック材料(例えば、図2aに示されている3,3−ジフェニル−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン)で置換される複素環式基(例えば、図2aに示されているピペラジノ等)を表す。更に、本明細書で限定しないが、図2aに示す通り、Bで表される基(インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むインデノ縮合ナフトピラン上の基)は、−A’−D−Jで表され得る反応性置換基を有していてもよい。即ち、この非限定的実施形態によれば、Bで表される基は、−A’−D−J(A’は(−OC(=O)−であり、−D−はアミノ窒素原子が−A’−に結合しアルコール酸素原子が−Jに結合したアミノアルコールの残基であり、−Jはメタクリルである)で表されてもよい反応性置換基(例えば、図2aに示されているような(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシ)で一置換されるアリール基(例えば、図2aに示されているようなフェニル基等)である場合がある。
【0094】
別の非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料が上記の(XIV)又は(XV)、或いはその混合物で表される場合、6位のR、7位のR、B、B’、R、R、又はRで表される基の少なくとも1つが、反応性置換基及び/又は親和性置換基を有していてもよい。
【0095】
更に、別の非限定的実施形態によれば、そのフォトクロミック材料は、上記の(XIV)で表される[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランであり、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの7位のR及び6位のRで表される基のそれぞれが、独立して、−OR10で表される酸素含有基(R10は、C−Cアルキル、置換又は未置換フェニルであり、前記フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシである場合があり、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、及びモノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキル等の基を表す場合がある);−N(R11)R12で表される窒素含有基(R11及びR12は、同じ又は異なる基でもよく、又、これに限定されるものではないが、水素、C−Cアルキル、C−Cアルキルアリール、C−C20シクロアルキル、C−C20ビシクロアルキル、C−C20トリシクロアルキル及びC−C20アルコキシアルキル等である場合があり、前記アリール基はフェニル又はナフチルである場合がある);上記の(XVI)で表される窒素含有環(各−M−は、例えば−CH−、−CH(R13)−、−C(R13−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、又は−C(R13)(アリール)−を表し得、−Q−は、例えば−M−、−O−、−S−、−NH−、−N(R13)−、又は−N(アリール)−に関して上に記載したもの等の基を表す場合があり、その場合、各R13は独立してC−Cアルキルを表す場合があり、(アリール)指定した各基は独立してフェニル又はナフチルを表す場合があり、uは1〜3の範囲であり、vは0〜3の範囲であるが、但し、vが0の場合、−Q−は−M−に関して記載した基を表す);又は反応性置換基(但し、反応性置換基が、脂肪族アミノアルコール残基、脂環式アミノアルコール残基、アザ脂環式アルコール残基、ジアザ脂環式アルコール残基、ジアミン残基、脂肪族ジアミン残基、脂環式ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザ脂環式アミン残基、オキシアルコキシ基、脂肪族ポリオール残基又は脂環式ポリオール残基を有する結合基を有する場合、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの6位又は7位と結合を形成する)である場合がある。或いは、この非限定的実施形態によれば、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの6位のRで表される基と7位のRで表される基は、一緒に上記の(XVIIIA)又は(XVIIIB)で表される基を形成してもよく、その場合、Z及びZ’で表される基は、同じである場合もあれば、異なる場合もあり、酸素及び基−NR11を含んでもよく、R11は上に記載したような基を表す。
【0096】
更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、R及びRで表される基は、それぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリル、置換又は未置換フェニル、置換又は未置換ベンジル、置換又は未置換アミノ、及び基−C(O)Rでもよく、その場合のRは、これに限定されるものではないが、水素、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、未置換、一置換又は二置換アリール基であるフェニル又はナフチル、フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、及びモノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシである場合がある。
【0097】
更に、本明細書に開示される別の非限定的実施形態は、(i)ナフトピラン(前記ナフトピランはベンゾフラノ縮合ナフトピラン、インドロ縮合ナフトピラン、又はベンゾチエノ縮合ナフトピランの少なくとも何れか1つである)、及び(ii)そのナフトピランの11位に結合するナフトピランのπ共役系を広げる基を含むフォトクロミック材料に関する。本明細書において限定しないが、これらの非限定的実施形態によるナフトピランは、一般的に、以下の構造式(XXXI)及び(XXXII)で表されてもよく、その場合、X*は、O、N、又はSである。
【0098】
【化20】

ベンゾフラノ縮合ナフトピラン、インドロ縮合ナフトピラン、及びベンゾチエノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げ得る11位の基の非限定的な例には、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、上で考察したインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げ得る11位の基が含まれる。例えば、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、ナフトピランの11位に結合するナフトピランのπ共役系を広げる基は、置換又は未置換アリール基(非限定的な例は上に記載)、置換又は未置換ヘテロアリール基(非限定的な例は上に記載)、或いは−X=Y又は−X’≡Y’(式中、X、Y、X’及びY’は、上に詳述したような基を表す場合がある)で表される基である場合がある。
【0099】
或いは、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、ベンゾフラノ縮合ナフトピラン、インドロ縮合ナフトピラン、又はベンゾチエノ縮合ナフトピランの11位に結合するナフトピランのπ共役系を広げる基が、前記ナフトピランの12位または10位に結合した基と一緒に縮合基を形成する場合がある。必須ではないものの、1つの非限定的実施形態によれば、11位に結合する基が12位又は10位に結合する基と一緒に縮合基を形成する場合、その縮合基は、ベンゾフラノ縮合ナフトピラン、インドロ縮合ナフトピラン、又はベンゾチエノ縮合ナフトピランのπ共役系を11位において広げ得るものであって、10位でも12位でも広げ得ない。そのような縮合基の好適な非限定的な例には、インデノ、ジヒドロナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾピラン及びチアナフテンが含まれる。
【0100】
更に、種々の非限定的実施形態によれば、そのインドロ縮合ナフトピランの13位は、未置換又は一置換である場合がある。13位の好適な置換基の非限定的な例には、上記の構造式(XIV)及び(XV)のR及びRに関連して説明したものが含まれる。
【0101】
種々の非限定的実施形態によれば、ベンゾフラノ縮合ナフトピラン、インドロ縮合ナフトピラン、又はベンゾチエノ縮合ナフトピランの、4位、5位、6位、7位、8位、9位、10位、及び12位に結合してもよい基の好適な非限定的な例には、上記の構造式(XIV)及び(XV)のR及びRに関連して説明した基が含まれる。種々の非限定的実施形態によれば、(XXXI)で表されるベンゾフラノ縮合ナフトピラン、インドロ縮合ナフトピラン、又はベンゾチエノ縮合ナフトピランの3位に結合してもよい基、又は、(XXXII)で表されるベンゾフラノ縮合ナフトピラン、インドロ縮合ナフトピラン、又はベンゾチエノ縮合ナフトピランの2位に結合してもよい基の好適な非限定的な例には、上記の構造式(XIV)及び(XV)のB及びB’に関連して説明したものが含まれる。
【0102】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料の作製方法を、図4〜8に示されている一般的な反応図式を参照しながら説明する。図4には、置換7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を作製するための反応図式を示す。この7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物は、更に図5〜8に示すような反応により、本明細書に開示される非限定的実施形態によるインデノ縮合ナフトピランとそのインデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むフォトクロミック材料を形成し得る。これらの反応図式は、図による説明のためのものであって、本明細書において限定されるものではないことが認識されるべきである。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料の作製方法の別の例については、実施例において説明する。
【0103】
図4では、図4の構造式(a)で表されるγー置換ベンゾイルクロライドと1つ以上の置換基γを有する場合がある、図4の構造式(b)で表される、ベンゼンとのメチレンクロライド溶液を反応フラスコに添加する。好適なγ−置換基には、例えば、ハロゲンが含まれるが、これに限定されない。好適なγ−置換基には、例えば、Rに関して上に記載したものが含まれるが、これらに限定されない。無水アルミニウムクロライドがフリーデル−クラフツ反応によるアシル化に触媒作用を及ぼし、図4の構造式(c)で表される置換ベンゾフェノンが得られる。この物質は、次にストッブ反応においてコハク酸ジメチルと反応して、ハーフエステルの混合物を生成する(その1つが図4の構造式(d)で示されている)。その後、ハーフエステルは無水酢酸及びトルエン中で高温で反応させ、再結晶後、置換ナフタレン化合物の混合物が得られる(その1つが図4の構造式(e)で示されている)。次に、その置換ナフタレン化合物の混合物をメチルマグネシウムクロライドと反応せさて、置換ナフタレン化合物の混合物を生成する(その1つが図4の構造式(f)で示されている)。次に、その置換ナフタレン化合物の混合物をドデシルベンゼンスルホン酸と反応させて環化し、7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物の混合物を生成する(その1つが図4の構造式(g)で示されている)。
【0104】
図5では、構造式(g)で表される7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物をシアン化銅と一緒に、無水1−メチル−2−ピロリジノン中で還流させ、後処理を行い、構造式(h)で表される9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を得る。図5の経路Aに示す通り、構造式(h)で表される化合物は、構造式(i)で表されるプロパギルアルコールと更に反応させて、本明細書に開示される非限定的実施形態に従うインデノ縮合ナフトピラン(図5の構造式(j)で表される)(インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げるシアノ基がその11位に結合する)を生成する場合がある。B及びB’で表され得る基の好適な非限定的な例はについて、上で考察している。
【0105】
或いは、図5の経路Bに示す通り、構造式(h)で表される化合物を、還流条件下で水酸化ナトリウム水溶液によって加水分解し、図5の構造式(k)で表される9−カルボキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を生成してもよい。図5に示す通り、構造式(k)で表される化合物は、更に構造式(i)で表されるプロパギルアルコールと反応させて、本明細書に開示される1つの非限定的実施形態によるインデノ縮合ナフトピラン(図5の構造式(l)で表される)を生成してもよい(そのインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げるカルボキシ基は、そのナフトピランの11位に結合する)。
【0106】
或いは、図5の経路Cに示す通り、構造式(k)で表される化合物を塩酸水溶液中でアルコール(図5のγOHで表される)とエステル化して、図5の構造式(m)で表される9−γカルボキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を生成してもよい。好適なアルコールの例には、メタノール、ジエチレングリコール、アルキルアルコール、置換又は未置換フェノール、置換及び未置換ベンジルアルコール、ポリオール、及びポリオール残基(例えば、−G−に関して上で考察したものであるが、これに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。構造式(m)で表される化合物を、更に、構造式(i)で表されるプロパルギルアルコールと反応させて、本明細書に開示される1つの非限定的実施形態に従って、図5の構造式(n)で表されるインデノ縮合ナフトピラン(そのインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げるカルボニル基は11位に結合する)を生成してもよい。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、11位に結合してもよいカルボニル基の非限定的な例には、メトキシカルボニル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシカルボニル、アルコキシカルボニル、置換及び未置換フェノキシカルボニル、置換及び未置換ベンジルオキシカルボニル及びポリオールのエステルが含まれる。
【0107】
図6に関して、構造式(g)で表される7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を、構造式(o)で表されるフェニルボロン酸(図6に示す通りγで表される基で置換されてもよい)と反応させて、図6の構造式(p)で表される9−(4−γ−フェニル)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を形成する場合がある。好適なボロン酸の例には、置換及び未置換フェニルボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、(4−ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸、ビフェニルボロン酸、並びに置換及び未置換アリールボロン酸が含まれるが、これらに限定されない。構造式(p)で表される化合物は、更に、構造式(i)で表されるプロパルギルアルコールと反応させて、図6の構造式(q)で表されるインデノ縮合ナフトピラン(そのπ共役系を広げるフェニル基は11位に結合する)を生成してもよい。必須ではないものの、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、図6にも示されているように、11位に結合するフェニル基は置換されてもよい。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、11位に結合してもよい置換フェニル基の非限定的な例には、4−フルオロフェニル、4−(ヒドロキシメチル)フェニル、4−(フェニル)フェニル基、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ハロフェニル、及びアルコキシカルボニルフェニルが含まれる。更に、11位の置換フェニルは、5つまで置換基を有していてもよく、またそれらの置換基は、インデノ縮合ナフトピランに対してオルト、メタ、又はパラ位での種々の異なる置換基である場合がある。
【0108】
図7に関して、構造式(g)で表される7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を、パラジウム触媒存在下で、図7に示すように、構造式(r)で表される末端アルキン基(この末端アルキン基は、γで表される基で置換されてもよい)と結合させて、図7の「(s)」で表される9−アルキニル−7H―ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を形成する場合がある。好適な末端アルキンの例には、アセチレン、2−メチル−3―ブチン―2−オール、フェニルアセチレン、及びアルキルアセチレンが含まれるが、これらに限定されない。更に、構造式「(s)」で表される化合物を、構造式(i)で表されるプロパルギルアルコールと反応させて、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げるアルキニル基を有するインデノ縮合ナフトピラン(図7の構造式(t)で表される)を生成してもよい。必須ではないものの、図7に示す通り、11位に結合するアルキニル基は、γで表される基で置換されてもよい。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、11位に結合してもよいアルキニル基の非限定的な例には、エチニル、3−ヒドロキシ−3−メチルブチニル、2−フェニルエチニル及びアルキルアセチレンが含まれる。
【0109】
図8を参照すると、構造式(g)で表される7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物は、構造式(u)で表されるアルケン(このアルケンは、図8に示す通りγで表される基で置換されていてもよい)と反応して、それは、図8の構造式(v)で表される9−アルケニル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を生成してもよい。好適なアルケンの例には、1−ヘキセン、スチレン、及びビニルクロライドが含まれるが、これらに限定されない。構造式「(v)」で表される化合物を、更に、構造式(i)で表されるプロパルギルアルコールと反応させて、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げるアルケニル基を有するインデノ縮合ナフトピラン(図8の構造式(w)で表される)を生成してもよい。必須ではないものの、図8に示す通り、11位に結合するアルケニル基は、3つ以内のγ基で置換されてもよい。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、11位に結合してもよいアルケニル基の非限定的な例には、置換及び未置換エチレン、2−フェニルエチレン、及び2−クロロエチレンが含まれる。
【0110】
更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるベンゾフラノ縮合ナフトピラン、インドロベンゾフラノ縮合ナフトピラン、及び/又はベンゾチエノベンゾフラノ縮合ナフトピランを作製する上で、(当業者によって適切であると見なされる修正を施され)有用であると思われる方法の非限定的な例は、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第5,651,923号第6欄43行〜第13欄48行;開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、国際特許出願公開第W098/28289A1号第7頁12行〜第9頁10行;及び開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、国際特許出願公開第WO99/23071A1号第9頁1行〜第14頁3行に記載されている。
【0111】
上で考察した通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、フォトクロミック組成物を形成するための有機材料(例えば、ポリマー材料、オリゴマー材料、又はモノマー材料等)の少なくとも一部に組み込まれてもよく、このようなフォトクロミック材料は、例えば、フォトクロミック性物品(例えば光学素子等)、及び種々の基材に適用できるコーティング組成物(これらに限定されない)へ使用してもよい。本明細書で使用される「ポリマー」及び「ポリマー材料」という用語は、ホモポリマー及びコポリマー(例えば、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、及び交互コポリマー等)、並びに、それらの混合物及び他との組み合わせを意味する。本明細書で使用される「オリゴマー」及び「オリゴマー材料」という用語は、別のモノマー単位と反応することができる、複数のモノマー単位の組み合わせを意味する。本明細書で使用される「組み込まれた」という用語は、物理的及び/又は化学的に結合した状態を意味する。例えば、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、例えば、フォトクロミック材料を有機材料に混合又は吸収させる(これに限定されない)により、少なくとも有機材料の一部と物理的に結合させてもよく;及び/又は、例えば、フォトクロミック材料を有機材料に共重合させることまたは別の方法で結合させること(これに限定されない)により、少なくとも有機材料の一部に化学的に結合させてもよい。
【0112】
更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、それぞれ単独で使用してもよければ、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態による他のフォトクロミック材料と組み合わせて使用される場合もあれば、又は適切な従来のフォトクロミック材料を相補的に組み合わせて使用される場合があることが考慮される。例えば、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、活性状態の吸収のピークの最大を300〜1000nmの範囲に有する従来のフォトクロミック材料と併用して使用してもよい。更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、相補的な従来の重合可能なフォトクロミック材料、又は適合性のあるフォトクロミック材料(例えば、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,113,814号(第2欄39〜第8欄41行)、及び第6,555,028号(第2欄65行〜第12欄56行)に記載のもの等)と組み合わせて使用してもよい。
【0113】
上で考察した通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、そのフォトクロミック組成物は、フォトクロミック材料の混合物を含有する場合がある。例えば、本明細書において限定するわけではないが、フォトクロミック材料の混合物を使用することにより、特定の活性状態の色(例えばニュートラルグレー(neutral gray)及びニュートラルブラウン(neutral brown)に近い色)を達成し得る。例えば、ニュートラルグレー色及びニュートラルブラウン色を定義するパラメータについて記述し、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第5,645,767号第12欄66行〜第13欄19行を参照されたい。
【0114】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態は、有機材料(前記有機材料は、ポリマー材料、オリゴマー材料、及びモノマー材料の少なくとも何れか1つ)、並びにその有機材料の少なくとも一部に組み込まれた前述の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料を含むフォトクロミック組成物を提供する。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、そのフォトクロミック材料は、有機材料又はその前駆体との混合又はこれらへの結合の少なくとも何れか1つの方法によって、その有機材料の一部に組み込まれていてもよい。フォトクロミック材料を有機材料に組み込む方法に関連して本明細書で使用される「混合する」及び「混合された」という用語は、そのフォトクロミック材料を少なくとも有機材料の一部と混ぜ合わせること(但しその有機材料と結合は形成しない)を意味する。更に、フォトクロミック材料を有機材料に組み込むことに関連して本明細書で使用される「結合する」及び「結合された」という用語は、そのフォトクロミック材料と少なくとも有機材料又はその前駆体の一部とが結合されることを意味する。例えば、本明細書において限定しないが、そのフォトクロミック材料は、反応性置換基を介して有機材料に結合する場合がある。
【0115】
1つの非限定的実施形態によれば、有機材料がポリマー材料の場合、フォトクロミック材料は、そのポリマー材料の少なくとも一部か、或いは、そのポリマー材料を形成するために使用されたモノマー材料又はオリゴマー材料の少なくとも一部に、組み込まれていてもよい。例えば、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、反応性置換基を含むフォトクロミック材料は、反応性部分が反応し得る基、又は、反応性部分が有機材料を形成する重合反応(例えば共重合のプロセス等)におけるコモノマーとして反応し得る基を有するモノマー、オリゴマー、又はポリマー等の有機材料、と反応してもよい。
【0116】
上で考察した通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、ポリマー材料、オリゴマー材料、及び/又はモノマー材料から選択される有機材料を有していてもよい。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に関連して使用してもよいポリマー材料の例には、ビス(アリルカルボナート)モノマー;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー;ジイソプロペニルベンゼンモノマー;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー;エチレングリコールビスメタクリレートモノマー;ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー;エトキシル化フェノールビスメタクリレートモノマー;アルコキシル化多価アルコールアクリレートモノマー(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー等);ウレタンアクリレートモノマー;ビニルベンゼンモノマー;及びスチレンのポリマーが含まれるが、これらに限定されない。好適なポリマー材料の他の非限定的な例には、多官能性、例えば、モノ−、ジ−又は多官能のアクリレート及び/又はメタクリレートモノマーのポリマー;ポリ(C−C12アルキルメタクリレート)(例えばポリ(メチルメタクリレート)等);ポリ(オキシアルキレン)ジメタクリレート;ポリ(アルコキシル化フェノールメタクリレート);セルロースアセテート;セルローストリアセテート;セルロースアセテートプロピオナート;セルロースアセテートブチレート;ポリ(酢酸ビニル);ポリビニルアルコール);ポリ(塩化ビニル);ポリ(塩化ビニリデン);ポリウレタン;ポリチオウレタン;熱可塑性ポリカーボネート;ポリエステル;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリスチレン;ポリ(α−メチルスチレン);スチレン及びメチルメタクリレートのコポリマー;スチレン及びアクリロニトリルのコポリマー;ポリビニルブチラール;及びジアリリデンペンタエリトリトールのポリマー、特にポリオール(アリルカルボナート)モノマー、例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカルボナート)、及びアクリレートモノマー、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、とのコポリマーが含まれる。前述のモノマーのコポリマー、及び前述のポリマー及びコポリマーと他のポリマーと組み合わせ及び混合物は、例えば、相互貫入した網目構造産物を形成することも考慮される。
【0117】
更に、種々の非限定的実施形態によれば、フォトクロミック組成物に透明性が求められる場合には、有機材料は透明なポリマー材料であり得る。例えば、種々の非限定的実施形態によれば、ポリマー材料は、熱可塑性ポリカーボネート樹脂(例えばLEXAN(登録商標)という商標で市販されている、ビスフェノールA及びホスゲンから誘導される樹脂);ポリエステル(例えばMYLAR(登録商標)という商標で市販されている材料);ポリ(メチルメタクリレート)(例えばPLEXIGLAS(登録商標)という商標で市販されている材料);ポリオール(アリルカルボナート)モノマーの重合体、特にジエチレングリコールビス(アリルカルボナート)(モノマーはGR−39(登録商標)という商標で市販されている);及びポリ尿素−ポリウレタン(ポリ尿素ウレタン)ポリマー(例えばポリウレタンオリゴマーとジアミン硬化剤の反応によって作製される、PPGインダストリーズ社(PPGIndustries)よりTRIVEX(登録商標)という商標で市販されているポリマーのための組成物)から作製される光学的に透明なポリマー材料である場合がある。好適なポリマー材料のその他の非限定的な例には、ポリオール(アリルカルボナート)のコポリマー(例えばジエチレングリコールビス(アリルカルボナート))と、他の共重合性モノマー物質(例えば、酢酸ビニルのコポリマー、末端ジアクリレート官能価を有するポリウレタンとのコポリマー、及びその末端部分にアリール又はアクリリル官能基を含有する脂肪族ウレタンとのコポリマー等)との重合体が含まれる。更に他の好適なポリマー材料には、ポリ(酢酸ビニル);ポリビニルブチラール;ポリウレタン;ポリチオウレタン;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシル化フェノールビスメタクリレートモノマー及びエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーから選択されるポリマー;セルロースアセテート;セルロースプロピオナート;セルロースブチレート;セルロースアセテートブチレート;ポリスチレン;並びにスチレンとメチルメタクリレート、酢酸ビニル及びアクリロニトリルとのコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。1つの非限定的実施形態によれば、ポリマー材料は、PPG Industries, Inc.よりCR名(例えば、CR−307、CR−407及びCR−607)で販売されている光学樹脂でもよい。
【0118】
1つの特定な非限定的実施形態によれば、有機材料は、ポリ(カルボナート)、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマー;エチレン及びビニルアルコールのコポリマー;エチレン、酢酸ビニル、及びビニルアルコールのコポリマー(例えば、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマーの部分的鹸化によって生成されるもの等);セルロースアセテートブチレート;ポリ(ウレタン);ポリ(アクリレート);ポリ(メタクリレート);エポキシ;アミノプラスト官能性ポリマー;ポリ(無水物);ポリ(尿素ウレタン);N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド官能性ポリマー;ポリ(シロキサン);ポリ(シラン);並びにそれらの組み合わせ及び混合物から選択されるポリマー材料である場合がある。
【0119】
既に考察した通り、本明細書に開示されるある非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料に比べて、320nm〜420nmの範囲の電磁放射の濃色吸収を示す場合があることが、本発明者によって認められている。従って、本明細書に開示されるある非限定的実施形態によるフォトクロミック材料を含むフォトクロミック組成物も、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランを有するフォトクロミック組成物に比べて、320nm〜420nmの範囲の波長を有する電磁放射の吸収の増加を示す場合がある。
【0120】
更に、既に考察した通り、本明細書に開示される特定の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、上で考察したような濃色特性を示す場合があるため、本明細書に開示される特定の非限定的実施形態によるフォトクロミック組成物中に存在するフォトクロミック材料の量又は濃度は、所望の光学作用を達成するために通常必要とされる従来のフォトクロミック材料の量又は濃度よりも低減され得ることが考慮される。本明細書に開示されるある非限定的実施形態によれば、そのフォトクロミック材料は、所定の光学特性を実現しつつ、従来のフォトクロミック材料より少ない量で使用することが可能であるため、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従って、そのようなフォトクロミック材料は、フォトクロミック材料の使用量を制限することを必要とするか、または制限することが望まれるような用途において、好都合に使用できる可能性がある。
【0121】
更に、既に考察した通り、本明細書に開示される特定の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランに比べて、320nm〜420nmまでの波長を有する電磁放射の閉環体の吸収スペクトルが深色シフトする場合があることが、本発明者によって認められている。従って、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料を含むフォトクロミック組成物も、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料を含むフォトクロミック組成物に比べて、320nm〜420nmまでの波長を有する電磁放射の閉環体の吸収スペクトルが深色シフトする場合がある。
【0122】
既に考察した通り、本発明は更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料及びフォトクロミック組成物を使用して作製したフォトクロミック性物品(例えば、光学素子等)も考慮している。本明細書で使用される「光学」という用語は、光及び/又は視覚に関する、又は関連することを意味する。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態による光学素子には、眼用素子、表示素子、窓、鏡、及び液晶セル素子が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「眼用」という用語は、眼及び/又は視覚に関する、又は関連することを意味する。眼用素子の非限定的な例には、シングルビジョンレンズ(single vision lens)又はマルチビジョンレンズ(multi−vision lens)(分割又は非分割マルチビジョンレンズ(例えば、二焦点レンズ、三焦点レンズ、又はプログレッシブレンズ(progressive lens)であるが、これらに限定されない)である場合がある)等の矯正用及び非矯正用レンズ、並びに(美容又はその用途における)視覚の矯正、保護又は強化に使用されるその他の素子(例えば、拡大レンズ、保護レンズ、バイザー、ゴーグル、又は光学機器(例えば、カメラ及び望遠鏡)用レンズ等)が含まれる。本明細書で使用される「表示」という用語は、用語、数、シンボル、デザイン、又は図等の情報を、視覚的又は機械可読的に表現することを意味する。表示素子の非限定的な例には、スクリーン、モニター、及びセキュリティマーク等のセキュリティ素子が含まれる。本明細書で使用される「窓」という用語は、放射線を通過させるために使用される開口部を意味する。窓の非限定的な例には、自動車及び航空機の透明物、風防、フィルター、シャッター、及び光学スイッチが含まれる。本明細書で使用される「鏡」という用語は、入射光の大部分を鏡面的に反射する表面を意味する。本明細書で使用される「液晶セル」という用語は、整列させることが可能な液晶材料を有する構造を意味する。液晶セル素子の1つの非限定的な例には、液晶ディスプレイが含まれる。
【0123】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態は、基材、並びにその基材の一部に接続される、上で考察した何れかの非限定的実施形態によるフォトクロミック材料を含むフォトクロミック性物品(例えば、光学素子等)を提供する。本明細書で使用する場合、この「接続した」という用語は、他の材料又は構造を通じて直接的又は間接的に関連付けられていることを意味する。
【0124】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、そのフォトクロミック性物品の基材がポリマー材料を有する場合、フォトクロミック材料を基材のポリマー材料の少なくとも一部に組み込むことによって、又はフォトクロミック材料を、基材を形成されるオリゴマー材料又はモノマー材料の少なくとも一部に組み込むことによって、フォトクロミック材料を少なくとも基材の一部に接続させてもよい。例えば、1つの非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料は、現場での成形(casting−in−place)や吸収等によって基材のポリマー材料に組み込まれてもよい。吸収及び現場での成形(casting−in−place)については後述する。
【0125】
更に他の非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料は、少なくとも基材の一部に接続した部分的コーティングの少なくとも一部として、フォトクロミック性物品の基材の少なくとも一部に接続していてもよい。この非限定的実施形態によれば、その基材は、ポリマー基材又は無機基材(例えば、ガラス基材であるが、これに限定されない)でもよい。更に、フォトクロミック材料は、コーティング組成物を基材に適用する前に、そのコーティング組成物の少なくとも一部に組み込まれてもよく、或いは、コーティング組成物を、少なくとも部分的に固定させて基材に適用し、その後、フォトクロミック材料をコーティングの少なくとも一部に吸収させてもよい。本明細書で使用される「固定」及び「固定する」という用語には、限定されるものではないが、硬化、重合、架橋、冷却、及び乾燥等が含まれる。
【0126】
フォトクロミック材料を有する少なくとも部分的なコーティングは、例えば、フォトクロミック材料を有するコーティング組成物を基材の表面の少なくとも一部に適用することにより、或いはコーティング組成物を少なくとも部分的に固定することにより、基材の少なくとも一部に接続されてもよい。更に、或いは、フォトクロミック材料を有するコーティングの少なくとも一部は、例えば、1つ以上の別のコーティングの少なくとも一部を通じて基材に接続されてもよい。例えば、本明細書において限定されるものではないが、種々の非限定的実施形態によれば、追加のコーティング組成物を少なくとも一部固定して基材の表面の一部に適用してもよく、その後、フォトクロミック材料を有するコーティング組成物をその追加のコーティングの上に少なくとも一部固定して適用してもよい。コーティング組成物を基材へ適用する非限定的な方法については、本明細書で後述する。
【0127】
本明細書に開示されるフォトクロミック性物品に関連して使用され得る追加のコーティング及びフィルムの非限定的な例には、プライマーコーティング及びフィルム;保護用コーティング及びフィルム(中間移行コーティング及びフィルム並びに耐摩耗性コーティング及びフィルムを含む);反射防止用コーティング及びフィルム;従来のフォトクロミック性コーティング及びフィルム;偏光コーティング及びフィルム;並びにそれらの組み合わせが含まれる。本明細書で使用される「保護用コーティング及びフィルム」という用語は、擦り切れ又は摩耗の防止、あるコーティング又はフィルムから別のコーティング又はフィルムへの特性の移行、重合反応の化学薬品の影響からの保護、及び/又は環境条件(例えば湿気、熱、紫外線、酸素等)による劣化からの保護、を提供できるコーティング又はフィルムを意味する。
【0128】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に関連して使用され得るプライマーコーティング及びフィルムの非限定的な例には、カップリング剤、カップリング剤の少なくとも部分的加水分解物、及びそれらの混合物、等を含むコーティング及びフィルムが含まれる。本明細書で使用される「カップリング剤」は、表面上の基と反応、結合、及び/又は会合することができる基を有する物質を意味する。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるカップリング剤には、例えば、シラン、チタン酸塩、ジルコニウム酸塩、アルミン酸塩、アルミン酸ジルコニウム、それらの加水分解物、及びそれらの混合物等の有機金属が含まれ得る。本明細書で使用される「カップリング剤の少なくとも部分的加水分解物」という語句は、カップリング剤の加水分解性の基の内の一部〜全てが加水分解されていることを意味する。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に関連して使用されるプライマーコーティングの別の非限定的な例には、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,025,026号第3欄3行〜第11欄40行及び米国特許第6,150,430第2欄39行〜第7欄58行に記載されているものが含まれる。
【0129】
本明細書で使用される「中間移行コーティング及びフィルム」という用語は、2つのコーティング又はフィルム間、或いはコーティングとフィルム間の特性における変化の形成を容易にするコーティング又はフィルムを意味する。例えば、本明細書において限定しないが、中間移行コーティングを使用することにより、比較的硬いコーティングと比較的柔らかいコーティングとの間の硬さにおける変化の形成を容易にすることができる。中間移行コーティングの非限定的な例には、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許出願公開第2003/0165686号第79〜173段落に記載されているような放射線硬化アクリレートベース薄膜が含まれる。
【0130】
本明細書で使用される「耐摩耗性コーティング及びフィルム」という用語は、振動サンド法を使用した透明プラスチック及びコーティングの耐摩耗性のためのASTM F−735標準試験方法(ASTM F−735 Standard Test Method for Abrasion Resistance of Transparent Plastics and Coatings Using the Oscillating Sand Method)に相当する方法によって試験した場合に、標準物質(例えば、PPG Industries Inc.より入手可能なCR−39(登録商標)モノマーで作製したポリマー等)よりも優れた耐摩耗性を示す保護ポリマー材料を意味する。耐摩耗コーティングの非限定的な例には、オルガノシランやオルガノシロキサンを含む耐摩耗性コーティング、無機材料(例えばシリカ、チタニア、及び/又はジルコニア等の)ベースの耐摩耗性コーティング、紫外線硬化性タイプの有機耐摩耗性コーティング、酸素遮断性コーティング、UV遮蔽性コーティング、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0131】
反射防止コーティング及びフィルムの非限定的な例には、金属酸化物、金属フッ化物、又は他の同様な金属の、単層、多層、又はフィルムが含まれ、それらは本明細書に開示される物品(又は物品に適用したフィルム)に、例えば、真空蒸着、スパッタリング等によって蒸着してもよい。従来のフォトクロミック性コーティング及びフィルムの非限定的な例には、従来のフォトクロミック材料を含むコーティング及びフィルムが含まれるが、これらに限定されない。偏光性コーティング及びフィルムの非限定的な例には、当該技術分野において既知の二色性化合物を有するコーティング及びフィルムが含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
上で考察した通り、種々の非限定的実施形態によれば、本明細書に開示される非限定的実施形態によるフォトクロミック材料を含むコーティングを基材上に形成する前に、別の、少なくとも部分的なコーティング又はフィルムを基材上に形成する場合がある。例えば、ある非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料を含むコーティング組成物を適用する前にプライマーコーティングを基材上に形成する場合がある。更に、或いは、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料を含むコーティングを基材上に形成した後で、例えば、保護膜のように、別の少なくとも部分的なコーティング又はフィルムを基材上に形成する場合がある。例えば、ある非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料を含むコーティングの上から中間移行コーティングを形成してもよく、更に中間移行コーティングの上から耐摩耗性コーティングを形成する場合がある。
【0133】
別の非限定的実施形態は、320nm〜390nmの範囲の電磁放射の大部分を遮蔽する基材の裏側での使用に適した光学素子であって;インデノ縮合ナフトピラン、及び光学素子の少なくとも一部に結合し、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含むフォトクロミック材料を含み;光学素子の少なくとも一部が、320nm〜390nmの範囲の電磁放射の大部分を遮蔽する基材を透過する、390nmを超える波長の電磁放射を十分な量吸収することによって、光学素子の少なくとも一部が第一状態から第二状態へと変化する、光学素子を提供する。例えば、この非限定的実施形態によれば、第一状態が消色状態であり、第二状態が組み込まれたフォトクロミック材料の着色状態に対応する着色状態である場合がある。
【0134】
既に考察した通り、従来の多くのフォトクロミック材料が、閉環体から開環体へ(例えば、消色状態から着色状態へ)と変化するために320nm〜390nmの範囲の波長を有する電磁放射を必要とする。そのため、従来のフォトクロミック材料は、320nm〜390nmの範囲の電磁放射のかなりの量が遮蔽されるような用途で使用する場合には、完全に着色された状態へ変化しない場合がある。更に、既に考察した通り、本明細書に開示されるある非限定的実施形態によるフォトクロミック材料では、濃色特性と深色特性の両方を示す場合があることが本発明者によって認められている。即ち、本明細書に開示される特定の非限定的実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を有するインデノ縮合ナフトピランは、既に考察した通り電磁放射の濃色吸収を示す場合があるだけでなく、320nm〜420nmの範囲の波長の電磁放射の閉環体の吸収スペクトルが、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランに比べて、深色シフトする場合がある。従って、本明細書に開示されるある非限定的実施形態によるフォトクロミック材料は、320nm〜390nmの範囲の波長の電磁放射のかなりの量を遮蔽する基材を透過する、電磁放射の十分な量を吸収し得、それによって、そのフォトクロミック材料は閉環体から開環体へ変化する場合がある。即ち、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料によって吸収される390nmより長い波長の電磁放射の量は、そのフォトクロミック材料は閉環体から開環体へ変化させることができ、それにより320nm〜390nmの範囲の波長で電磁放射のかなりの量を遮蔽する基材の裏側でそれらのフォトクロミック材料を使用することを可能にする。
【0135】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に従って、フォトクロミック組成物及びフォトクロミック性物品(例えば光学素子等)を作製する非限定的な方法について説明する。1つの非限定的実施形態は、フォトクロミック組成物の作製方法、即ち、フォトクロミック材料を有機材料の少なくとも一部に組み込むことからなる方法を提供する。フォトクロミック材料を有機材料に組み込む非限定的な方法には、例えば、ポリマー材料、オリゴマー材料、又はモノマー材料の溶液又は溶融物にフォトクロミック材料を混合し、続いて、ポリマー材料、オリゴマー材料、又はモノマー材料を少なくとも部分的に固定する(フォトクロミック材料を有機材料に結合させる場合もあれば結合させない場合もある)工程;及びフォトクロミック材料を有機材料に吸収させる工程(フォトクロミック材料を有機材料に結合させる場合もあれば結合させない場合もある)が含まれる。
【0136】
別の非限定的実施形態は、上で考察した非限定的実施形態によるフォトクロミック材料を、基材の少なくとも一部へ結合することをからなる、フォトクロミック性物品の作製方法を提供する。例えば、その基材がポリマー材料を含む場合、フォトクロミック材料は、現場での成形(casting−in−place)法および吸収のうちの少なくとも1つによって、基材の少なくとも一部に結合されていてもよい。例えば、現場での成形法では、フォトクロミック材料をポリマー溶液又はポリマー溶融物、或いは、他のオリゴマー及び/又はモノマーの溶液又は混合物と混合してもよく、それらは続いて、基材を形成するために所望の形状の型に成形され、少なくとも部分的に固定される。この非限定的実施形態によれば、所望により、フォトクロミック材料を、例えば、そのポリマー材料のモノマー前駆体と共重合させること等により、基材のポリマー材料の一部に結合させてもよい。吸収法では、基材を形成した後で、例えば加熱し、又は加熱せずに、基材をフォトクロミック材料を含む溶液に漬すことにより、フォトクロミック材料を基材のポリマー材料の中に拡散させてもよい。その後、必須ではないものの、フォトクロミック材料はポリマー材料と結合させてもよい。
【0137】
本明細書に開示される別の非限定的実施形態は、インモールドキャスティング、コーティング、及び成層のうちの少なくとも1つの方法によって、基材の少なくとも一部にフォトクロミック材料を結合することからなる、光学素子の作製方法を提供する。例えば、1つの非限定的実施形態によれば、基材がポリマー材料を含む場合、フォトクロミック材料をインモールドキャスティングによって基材の少なくとも一部と結合させてもよい。この非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料を含むコーティング組成物は、液体コーティング組成物、粉末コーティング組成物である場合があり、型の表面に適用され少なくとも部分的に固定される。その後、ポリマー溶液又はポリマー溶融物、或いはオリゴマー又はモノマーの溶液又は混合物を、そのコーティングの上に成形して、少なくとも部分的に固定する。固定した後、コーティングされた基材を型から取り外す。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料が使用される場合がある粉末コーティングの非限定的な例については、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第6,068,797号の第7欄50行〜第19欄42行に記載されている。
【0138】
更に、別の非限定的実施形態によれば、基材がポリマー材料又は無機材料(例えば、ガラス等)を含む場合、フォトクロミック材料をコーティングによって基材の少なくとも一部と結合してもよい。好適なコーティング方法の非限定的な例には、スピンコーティング法、スプレーコーティング法(例えば、液体コーティング又は粉末コーティングを使用)、カーテンコーティング、ロールコーティング、スピン及びスプレーコーティング、オーバーモールド(over−molding)、及びそれらの組み合わせが含まれる。例えば、1つの非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料をオーバーモールドによって基材に結合させてもよい。この非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料を含むコーティング組成物(既に考察した通り、液体コーティング組成物又は粉末コーティング組成物である場合がある)を型に適用した後、基材を型に置き、コーティングと接するように配置され、そうすることでコーティング組成物が基材の表面の少なくとも一部に広がるようにする場合がある。その後、そのコーティング組成物を、少なくとも部分的に固定し、そのコーティングされた基材を型から取り出すことができる。或いは、開口領域が基材と型との間に規定されるように基材を型に置き、その後、フォトクロミック材料を含むコーティング組組成物をその開口領域に注入することによりオーバーモールドを行ってもよい。その後、そのコーティング組成物は、少なくとも部分的に固定され、そのコーティングされた基材を型から取り出すことができる。
【0139】
更に又は或いは、コーティング組成物(フォトクロミック材料を含むか、または含まない)を(例えば、前述の何れかの方法によって)基材に適用し、そのコーティング組成物を、少なくとも一部固定した後、フォトクロミック材料を(既に考察した通り)コーティング組成物に吸収させる場合もある。
【0140】
更に別の非限定的実施形態によれば、基材がポリマー材料又は無機材料(例えば、ガラス等)を含む場合、成層によってフォトクロミック材料を基材の少なくとも一部と結合させてもよい。この非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料を含むフィルムは基材の一部に固着又はその他の方法で結合させてもよく、その場合に、粘着剤を使用しても使用しなくてもよく、並びに/又は加熱及び加圧を行っても行わなくてもよい。その後、所望であれば、第二基材を第一基材の上に適用してもよく、2つの基材の間にフォトクロミック材料を含むフィルムが挿入された状態で、その2つの基材を一緒に成層して(すなわち、加熱及び加圧により)、素子を形成する場合がある。フォトクロミック材料を含むフィルムの形成方法には、例えば、フォトクロミック材料をポリマー溶液又はオリゴマー溶液或いはその混合物と混合し、それよりフィルムを成形又は押し出しを行い、必要に応じて少なくとも部分的にフィルムに固定する方法が含まれるが、これに限定されない。更に又は或いは、(フォトクロミック材料を使用するか、または使用しない)フィルムを形成して、(上で考察した通り)フォトクロミック材料で吸収させる場合もある。
【0141】
更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態は、前述の種々の方法を組み合わせて使用して、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック性物品を形成すること考慮している。例えば、本明細書において限定しないが、1つの非限定的実施形態によれば、フォトクロミック材料を、基材が形成される有機材料に組み込むことによって(例えば、現場での成形(casting−in−place)及び/又は吸収によって)、基材に結合させた後、フォトクロミック材料(前述のフォトクロミック材料と同じである場合もあれば、異なる場合もある)を、上で考察したインモールドキャスティング、コーティング法及び/又は成層法によって基材の一部に結合する場合がある。
【0142】
更に、当業者には、種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック組成物及びフォトクロミック性物品は、その組成物又は物品の加工、及び/又は性能に役立つような他の添加剤を含んでもよいことが理解されるであろう。そのような添加物の非限定的な例には、光開始剤、熱開始剤、重合防止剤、溶媒、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン光安定化剤(HALS)のような光安定化剤であるが、これらに限定されない)、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤(例えば、界面活性剤等)、フリーラジカル捕捉剤、接着促進剤(例えば、ヘキサンジオールジアクリレート及びカップリング剤)、並びにそれらの組み合わせ及び混合物が含まれる。
【0143】
種々の非限定的実施形態によれば、本明細書に開示されるフォトクロミック材料は、フォトクロミック材料の組み込まれている、或いは他の方法で結合されている有機材料又は基材を、所望の光学特性を示すような量(又は比率)において使用することが可能である。例えば、フォトクロミック材料が閉環体時(即ち、消色状態時、又は非活性状態時)に有機材料又は基材が透明または無色となるように、そして、フォトクロミック材料が開環体時(即ち、化学線放射による活性状態時)に所望の色を示すように、フォトクロミック材料の量及び型を選択することができる。本明細書に記載の種々のフォトクロミック組成物及びフォトクロミック性物品に利用されるフォトクロミック材料の正確な量は決定的ではないが、但し、所望の効果を得るために十分な量のフォトクロミック材料を使用してもよい。使用されるフォトクロミック材料の特定の量は、種々の因子、例えば、フォトクロミック材料の吸収特性、活性状態において所望する色彩及び強度、並びにフォトクロミック材料を基材に組み込む又は結合するのに使用される方法(これらに限定されない)に依存し得ることは理解されなければならない。本明細書において限定しないが、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、有機材料に組み込まれるフォトクロミック材料の量は、有機材料の重量に対して0.01〜40重量パーセントの範囲となる場合がある。
【0144】
次に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態を、以下の非限定的な実施例で例示する。
【実施例】
【0145】
実施例の第1部では、実施例1〜15において、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料の作製に使用した合成手順について説明し、比較例(CE)1〜4において、比較のための4つのフォトクロミック材料の作製に使用した手順について説明する。第2部では、試験手順と結果について説明する。第3部では、モデリングしたフォトクロミック材料の吸収特性について説明する。
【0146】
第1部:合成手順
(実施例1)
手順1
1,2−ジメトキシベンゼン(31.4g)、及び4−ブロモベンゾイルクロライド(50.0g)のメチレンクロライド溶液500mLを、窒素雰囲気下で固体添加ロートを備えた反応フラスコに添加した。氷浴/水浴で反応混合物を時々冷却しながら、固体無水アルミニウムクロライド(60.0g)を反応混合物に添加した。生じた混合物を室温で3時間攪拌した。反応混合物を、氷と1NのHClとの1:1混合物300mLに注ぎ、15分間激しく攪拌した。混合物を、メチレンクロライド100mLで2回抽出した。有機抽出物を合わせ、50mLの10wt%NaOHで洗浄し、更に水50mLで洗浄した。メチレンクロライド溶媒を回転蒸発で除去し、黄色固体75.0gを得た。核磁気共鳴(「NMR」)スペクトルの結果、産物は3,4−ジメトキシ−4’−ブロモベンゾフェノンと一致する構造を有することが示された。
【0147】
手順2
カリウムt−ブトキシド(30.1g)及び手順1の3,4−ジメトキシ−4’−ブロモベンゾフェノン(70.0g)を、窒素雰囲気下で500mLのトルエンを含有する反応フラスコに添加した。混合物を加熱還流し、コハク酸ジメチル(63.7g)を1時間かけて滴下した。混合物を5時間還流し、室温に冷ました。生じた混合物を、水300mLに注ぎ、20分間激しく攪拌した。水相と有機相とを分離し、有機層を水100mLで3回抽出した。合わせた水層を150mLのクロロホルムで3回洗浄した。水層を6NのHClによりpH2に酸性化すると、沈殿物が生成した。水層を100mLのクロロホルムで3回抽出した。有機抽出物を合わせ、回転蒸発によって濃縮した。得られた油分のNMRスペクトルの結果、産物が(E−及びZ−異性体)4−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−(4−ブロモフェニル)−3−メトキシカルボニル−3−ブテン酸の混合物と一致する構造を有することが判明した。
【0148】
手順3
手順2からの粗ハーフエステル(100.0g)、無水酢酸60mL、及びトルエン300mLを窒素雰囲気下で反応フラスコに添加した。反応混合物を110℃で6時間加熱し、室温まで冷まし、回転蒸発で溶媒(トルエン及び無水酢酸)を除去した。得られた残渣をメチレンクロライド300mLと水200mLに溶解させた。固体NaCOを、泡立ちが止むまでその二相混合物に添加した。層を分離し、その水層を50mLのメチレンクロライドで抽出した。有機抽出物を合わせ、回転蒸発で溶媒を除去して、深赤色の油分を得た。その油分を温メタノールに溶解させ、0℃で2時間冷却した。得られた結晶を吸引濾過で収集し、冷メタノールで洗浄して、1−(4−ブロモフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6,7−ジメトキシナフタレン及び1−(3,4−ジメトキシフェニル−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6−ブロモナフタレンの混合物を得た。生成混合物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0149】
手順4
手順3の混合物(50.0g)を秤量し、窒素雰囲気下で反応フラスコに添加し、300mLの無水THFを添加した。メチルマグネシウムクロライド(3.0MのTHF溶液200mL)を反応混合物に1時間かけて添加した。反応混合物を一晩撹拌し、その後、氷と1NのHClとの1:1混合物300mlに注いだ。混合物をクロロホルムで抽出した(300mLで3回)。有機抽出物を合わせ、飽和NaCl水溶液(400mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥した。回転蒸発で溶媒を除去し、40.0gの1−(4−ブロモフェニル)−2−(ジメチルヒドロキシメチル)−4−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシナフタレン及び1−(3,4−ジメトキシフェニル−2−(ジメチルヒドロキシメチル)−4−ヒドロキシ−6−ブロモナフタレンを得た。
【0150】
手順5
手順4の産物(30.0g)を、ディーン・スタークトラップを備えた反応フラスコに添加し、150mLのトルエンを添加した。この反応混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、ドデシルベンゼンスルホン酸(約0.5mL)を添加した。反応混合物を2時間加熱還流し、室温まで冷ました。混合物を室温まで24時間冷却した際に、白色固体が析出した。NMRスペクトルの結果、産物は2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−ブロモ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールと一致する構造を有することが示された。この材料を、更に生成することなく、そのまま次の手順に使用した。
【0151】
手順6
手順5の混合物(10.0g)を窒素雰囲気下で反応フラスコに添加し、100mLの無水1−メチル−2−ピロリジノンを添加した。反応混合物にCuCN(4.5g)を添加した。反応混合物を4時間加熱還流し、室温まで冷ました。得られた混合物に6NのHClを100mL添加し、混合物を10分間攪拌した。その混合物を150mLの酢酸エチルで3回洗浄した。有機抽出物を合わせ、回転蒸発で溶媒を除去すると、7.2gの灰色固体が得られた。NMRスペクトルの結果、産物は2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールと一致する構造を有することが示された。
【0152】
手順7
手順6の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(10g)、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール(8.0g、開示内容が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第5,458,814号の実施例1手順1の産物)、ドデシルベンゼンスルホン酸(0.5g)、及びクロロホルム(250mL、ペンテンで保存)を反応フラスコ内で混合し、室温で5時間攪拌した。反応混合物を50%飽和NaHCO水溶液(200mL)で洗浄し、有機層を無水NaSOで乾燥した。溶媒を回転蒸発で除去した。得られた残渣に温メタノールを添加し、その溶液を室温まで冷ました。得られた沈殿物を吸引濾過で収集し、冷メタノールで洗浄し、14.0gの3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−シアノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(即ち、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げるシアノ基を含むインデノ縮合ナフト[1,2−b]ピラン)を得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0153】
(実施例2)
手順1
実施例1手順6の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(10.0g)を窒素雰囲気下でフラスコに入れ、NaOH(20g)を添加した。その混合物に、エタノール(100mL)及び水(100mL)を添加した。その反応混合物を24時間加熱還流し、室温まで冷ました。生じた混合物を、氷と6NのHClとの1:1混合物200mLに注ぎ、15分間激しく攪拌した。その混合物を150mLの酢酸エチルで3回洗浄した。有機抽出物を合わせ、回転蒸発で溶媒を除去し、9.0gの白色固体を得た。NMRスペクトルの結果、産物は2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−カルボキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールと一致する構造を有することが示された。
【0154】
手順2
2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールの代わりに手順1の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−カルボキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを使用すること以外は、実施例1手順7の手順に従い、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−カルボキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを生成した。
【0155】
(実施例3)
手順1
実施例2手順1の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−カルボキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(5.0g)、1.0mLのHCl水溶液、及び100mLのメタノールをフラスコで混合し、24時間加熱還流した。その反応混合物を冷まし、得られた沈殿物を吸引濾過により収集し、冷メタノールで洗浄して、4.9gの白色固体を得た。NMRスペクトルの結果、産物は2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−メトキシカルボニル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールと一致する構造を有することが示された。
【0156】
手順2
2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールの代わりに手順1の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−メトキシカルボニル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを使用すること以外は、実施例1手順7の手順に従い、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−メトキシカルボニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを生成した。
【0157】
(実施例4)
実施例2手順2の3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−カルボキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(1.8g)、ジエチレングリコール(0.2g)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.2g)、4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(0.01g)、及びジクロロメタン(10mL)をフラスコに添加し、24時間加熱還流した。生成した固体を濾過により除き、残存した溶媒を回転蒸発により除去した。得られた残渣にエーテルを添加し、その溶液を室温まで冷ました。得られた沈殿物を吸引濾過により収集し、ジエチルエーテルで洗浄して、2.1gの3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシカルボニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを得た。
【0158】
(実施例5)
手順1
実施例1手順5の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−ブロモ−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(1.4g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.12g)、4−フルオロフェニルボロン酸(0.6g)、炭酸ナトリウム(1.06g)、エチレングリコールジメチルエーテル(50mL)、及び水(50mL)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合し、室温で1時間攪拌した。その後、その混合物を24時間加熱還流した。その後、その混合物を濾過し、酢酸エチルで抽出した(300mLで3回)。有機抽出物を合わせ、回転蒸発で溶媒を除去し、1.2gの白色固体を得た。NMRスペクトルの結果、産物は2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(4−フルオロフェニル)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールと一致する構造を有することが示された。
【0159】
手順2
2,3−ジメトキシ−5−ヒドロキシ−7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールの代わりに、手順1の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(4−フルオロフェニル)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを使用すること以外は、実施例1手順7の手順に従い、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−フルオロフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを生成した。
【0160】
(実施例6)
手順1
4−フルオロフェニルボロン酸の代わりに4−フェニル−フェニルボロン酸を使用すること以外は、実施例5手順1の手順に従い、2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(4−(フェニル)フェニル)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを生成した。
【0161】
手順2
2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールの代わりに手順1の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(4−(フェニル)フェニル)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを使用すること以外は、実施例1手順7の手順に従い、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−(フェニル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを生成した。
【0162】
(実施例7)
手順1
4−フルオロフェニルボロン酸の代わりに4−(ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸を使用すること以外は、実施例5手順1の手順に従い、2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを生成した。
【0163】
手順2
2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールの代わりに、手順1の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを使用すること以外は、実施例1手順7の手順に従い、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを生成した。
【0164】
(実施例8)
手順1
実施例1手順5の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−ブロモ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(5.0g)、トリフェニルホスフィン(0.16g)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.12g)、ヨウ化銅(0.06g)、2−メチル−3−ブチン−2−オール(1.56g)、及びジイソプロピルアミン(30mL)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合し、室温で1時間攪拌した。その後、その混合物を80℃で24時間加熱した。その後、固体をシリカゲルのショートパッドで濾別し、溶液を減圧濃縮した。NMRスペクトルの結果から、得られた白色固体は2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチン)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールと一致する構造を有することが確かめられた。
【0165】
手順2
2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールの代わりに手順1の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチン)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを使用すること以外は、実施例1手順7の手順に従い、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチン)−13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを生成した。
【0166】
(実施例9)
手順1
2−メチル−3−ブチン−2−オールの代わりにフェニルアセチレンを使用すること以外は、実施例8の手順1の手順に従い、2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(2−フェニルエチニル)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを生成した。
【0167】
手順2
2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールの代わりに手順1からの2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(2−フェニルエチニル)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを使用すること以外は実施例1の手順7の手順に従い、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(2−フェニルエチニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを生成した。
【0168】
(実施例10)
手順1
4−ビフェニルカルボニルクロライド(150g)、1,2−ジメトキシベンゼン(88mL)、及びジクロロメタン(1.4L)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合した。反応フラスコを氷浴で冷却し、無水アルミニウムクロライド(92.3g)を、固体添加ロートを使用して30分間かけて緩徐に添加した。氷浴を外し、反応混合物を室温に温まるまで放置した。追加の1,2−ジメトキシベンゼン(40mL)とアルミニウムクロライド(30g)を反応フラスコに添加した。1.5時間後、反応混合物に飽和NHCl水溶液と氷の混合物(1.5L)を緩徐に注いだ。層を分離し、その水層を750mLのジクロロメタンで2回抽出した。有機層部分を合わせ、NaHCOの50%飽和水溶液(1L)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、回転蒸発によって濃縮した。得られた残渣を温t−ブチルメチルエーテルに溶解させ、放置して緩徐に室温まで冷ました。沈殿した白色固体を吸引濾過により収集し、冷t−ブチルメチルエーテルで洗浄して、208gの3,4−ジメトキシ−4’−フェニルベンゾフェノンを得た。
【0169】
手順2
手順1からの3,4−ジメトキシ−4’−フェニルベンゾフェノン(200g)、カリウムtert−ブトキシド(141g)、及びトルエン(3L)を窒素雰囲気下でフラスコ内で混合し、加熱し始めた。これに、コハク酸ジメチル(144mL)を45分間かけて滴下した。反応混合物を70℃で1.5時間加熱し、室温まで冷ました。その反応混合物を、飽和NaCl水溶液と氷の混合液(3L)に注いだ。層を分離し、その水層を1Lのジエチルエーテルで2回抽出した。有機層を取り除き、水層をpH1まで濃塩酸で酸性化した。ジクロロメタン(2L)を添加してその混合物を抽出し、層を分離した。水層を1Lのジクロロメタンで2回抽出した。有機抽出物を集めて水(2L)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、回転蒸発で濃縮して287gの(E−及びZ−異性体)3−メトキシカルボニル−4−(4−フェニル)フェニル−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−ブテン酸のオレンジ色の油分を得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0170】
手順3
手順2からの(E−及びZ−異性体)3−メトキシカルボニル−4−(4−フェニル)フェニル−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−ブテン酸(272g)と無水酢酸(815mL)の混合物を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合し、13時間加熱還流した。反応混合物を室温に冷まし、その後、氷水(1L)に緩徐に注いだ。その混合物を3時間攪拌し、そして飽和NaHCO水溶液(2L)に緩徐に添加した。追加の重炭酸ナトリウム(750g)を緩徐に少量ずつ添加した。その混合物にジクロロメタン(2.5L)を添加し、濾過して、濾液層を分離した。水層をジクロロメタン(1L)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥して、回転蒸発によって濃縮して暗赤色固体を得た。その赤色固体を温エタノールでスラリー状にし、室温まで冷まして、吸引濾過により収集し、冷エタノールで洗浄して、1−(4−フェニル)フェニル−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6,7−ジメトキシナフタレンと1−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6−フェニルナフタレンの混合物187.5gを得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0171】
手順4
1−(4−フェニル)フェニル−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6,7−ジメトキシナフタレと1−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6−フェニルナフタレンの手順3からの混合物(172g)、水(1035mL)、メタノール(225mL)、及び水酸化ナトリウム(258g)を反応フラスコ内で混合し、5時間加熱還流した。反応混合物を室温に冷まし、その後、水(1.5L)、濃塩酸(500mL)、及び氷の混合液に緩徐に注いだ。白色固体が沈殿し、それを濾過して水で洗浄した。その固体を少量の無水テトラヒドロフランに溶解させ、t−ブチルメチルエーテルで希釈した。この溶液を飽和NaCl水溶液で洗浄し、その有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して、回転蒸発で濃縮し、明るいオレンジ色の固体を得た。その固体を温トルエンでスラリー状にし、室温まで冷まして、濾過し、冷トルエンで洗浄して、127gの白色固体(1−(4−フェニル)フェニル−2−カルボキシ−4−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシナフタレン)を得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0172】
手順5
手順4の1−(4−フェニル)フェニル−2−カルボキシ−4−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシナフタレン(25g)、無水酢酸(29mL)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(115mg)、及び1,2,4−トリメチルベンゼン(500mL)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合し、50℃で1時間加熱した。ドデシルベンゼンスルホン酸(10.3g)を反応混合物に添加し、それを144℃まで加熱した。28時間後、反応混合物を緩徐に室温まで冷まし、固体を沈殿させた。反応混合物を濾過し、トルエンで洗浄して、23.0gの赤色固体(2,3−ジメトキシ−5−アセトキシ−11−フェニル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−7−オン)を得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0173】
手順6
手順5の2,3−ジメトキシ−5−アセトキシ−11−フェニル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−7−オン(4.22g)と無水テトラヒドロフラン(85mL)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合し、氷浴で冷やした。これに、13.5mLの臭化エチルマグネシウム溶液(3.0Mのジエチルエーテル溶液)を20分間かけて滴下した。反応混合物を室温まで温め、その後、飽和NHCl水溶液と氷の混合液(100mL)に注いだ。その混合物を酢酸エチル(40mL)で希釈し、層を分離した。水層を70mLの酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO水溶液(100mL)で洗浄し、NaSO乾燥して、回転蒸発により濃縮してオレンジ色の固体を得た。その固体を温t−ブチルメチルエーテルでスラリー状にし、室温まで冷やして、濾過し、冷t−ブチルメチルエーテルで洗浄して、2.6gの明るいオレンジ色の固体(2,3−ジメトキシ−7−ヒドロキシ−7−エチル−11−フェニル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール)を得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0174】
手順7
手順6の2,3−ジメトキシ−7−ヒドロキシ−7−エチル−11−フェニル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(2.59g)、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール(2.19g、米国特許第5,458,814号の実施例1手順1の産物)、及びジクロロメタン(52mL)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合した。これに、トリフルオロ酢酸(41mg)を添加した。2時間後、p−トルエンスルホン酸一水和物(29mg)を反応フラスコに添加した。更に45分後、その反応混合物をジクロロメタン(25mL)で希釈し、50%飽和NaHCO水溶液(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、回転蒸発によって濃縮した。得られた残渣に温アセトニトリルを添加すると、固体が沈殿した。混合物を室温まで冷まし、吸引濾過し、冷アセトニトリルで洗浄して、3.43gの明るい緑色の固体(3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−フェニル−13−エチル−13−ヒドロキシ−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン)を得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0175】
手順8
手順7の3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−フェニル−13−エチル−13−ヒドロキシ−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(3.4g)、無水メタノール(35mL)、トルエン(34mL)、及びp−トルエンスルホン酸一水和物(75mg)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合し加熱還流した。4時間後、反応混合物を室温まで冷まし、トルエン(35mL)で希釈した。反応混合物を35mLの50%飽和NaHCO水溶液で2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、回転蒸発によって濃縮した。得られた残渣に温メタノールを添加すると、固体が沈殿した。混合物を室温まで冷まし、吸引濾過して、得られた固体を冷メタノールで洗浄し、3.06gの明るい黄色固体を得た。質量スペクトル(「MS」)分析及びNMRスペクトルの結果、産物は3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−フェニル−13−エチル−13−メトキシ−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0176】
(実施例11)
手順1
実施例1手順5の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−ブロモ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(5g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.43g)、4−メトキシカルボニルフェニルボロン酸(2.5g)、炭酸ナトリウム(3g)、エチレングリコールジメチルエーテル(90mL)、及び水(30mL)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合し、室温で1時間攪拌した。その後、その混合物を24時間加熱還流した。水(60mL)及び水酸化ナトリウム(1g)を添加し、反応混合物を20時間加熱還流した。この後、混合物を室温まで冷まし、混合物を攪拌しながらHCl水溶液(10%)を添加し、混合物を濾過し、酢酸エチル(100mLで3回)とジクロロメタン(100mLで3回)で抽出した。有機抽出物を集め、溶媒を回転蒸発で除去し、5gの黄色固体(2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール)を得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0177】
手順2
手順1からの2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(7.5g)、1−フェニル−1−(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール(4.0g、米国特許第5,458,814号の実施例1手順1に記述されているように作製)、ドデシルベンゼンスルホン酸(0.2g)及びクロロホルム(ペンテンで保存、70mL)を反応フラスコ内で混合し、室温で2時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、残渣にアセトン(100mL)を添加し、そのスラリーを濾過して、6.5gの緑色固体を得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0178】
手順3
手順2からの3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(0.2g)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(0.5mL)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.2g)、4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(0.04g)、及びジメチルホルムアミド(20mL)をフラスコに添加し、55〜58℃で3時間加熱した。その反応混合物に水を添加し、沈殿物を濾過し、0.27gのオフグリーンの固体を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−(2−メタクリルオキシエトキシ)カルボニルフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。
【0179】
(実施例12)
手順1
実施例1手順5の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−ブロモ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(4.7g)、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール(3.5g、米国特許第5,458,814号の実施例1手順1の産物)、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(0.15g)、オルトギ酸トリメチル(3.5mL)、及びクロロホルム(ペンテンで保存、100mL)を反応フラスコ内で混合し、還流させて半時間攪拌した。その反応混合物を濃縮した。残渣にアセトンを添加し、そのスラリーを濾過して、7.7gのオフホワイトの固体を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−ブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0180】
手順2
4−フルオロフェニルボロン酸の代わりに4−フェニルフェニルボロン酸を使用すること以外は、実施例5の手順1の手順に従い、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−フェニルフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを生成した。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0181】
手順3
手順2(上記)の3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−(フェニル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(6g)、3−ピペリジンメタノール(1.3g)、及びテトラヒドロフラン(60mL)を窒素雰囲気下で乾燥した反応フラスコ内で混合し、攪拌しながら反応フラスコにブチルリチウム(10mL,2.5Mヘキサン溶液)をカニューレで添加した。その混合物を室温で30分間攪拌し、その後、注意深く氷水に注いだ。その混合物を酢酸エチルで抽出した(100mLで3回)。抽出物を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。その溶液をNaSOで乾燥し、濾過した。溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1)。主要な画分をカラムから収集し、濃縮して5gの紫色の泡を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−((3−ヒドロキシメチレンピペリジノ)−1−イル)−11−(4−フェニル)フェニル))−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0182】
手順4
手順3からの3、3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−((3−ヒドロキシメチレンピペリジノ)−1−イル)−11−(4−フェニル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(5g)、2−イソシアネートエチルメタクリレート(1mL)、ジブチルスズジラウレート(1適)、及び酢酸エチル(50mL)を大気開放型冷却管を備えた反応フラスコ内で混合した。その混合物を20分間加熱還流した。メタノール(5mL)を混合物に添加して、過剰な2−イソシアネートエチルメタクリレートをクエンチングした。反応混合物は濃縮され、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1)。主要な画分をカラムから収集し、濃縮して6gの紫色の泡を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−((3−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシ−メチレンピペリジノ)−1−イル)−11−(4−(フェニル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。
【0183】
(実施例13)
手順1
3,4−ジメトキシ−4’−ブロモベンゾフェノンの代わりに4−ブロモ−4’−メトキシベンゾフェノンを使用すること以外は、実施例1の手順に従い、3−メトキシ−9−ブロモ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを生成した。
【0184】
手順2
4−ヒドロキシベンゾフェノン(100g)、2−クロロエタノール(50g)、水酸化ナトリウム(20g)、及び水(500mL)を反応フラスコに添加した。その混合物を6時間加熱還流した。油分層を分離し、冷却して結晶化させ、その結晶性物質を水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、続いて真水で洗浄し、乾燥させて、オフホワイトの固体85gを得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0185】
手順3
手順2の産物(30g)を、オーバーヘッド攪拌器を備えた反応フラスコで無水ジメチルホルムアミド(250mL)に溶解させた。激しく攪拌しながら、ナトリウムアセチリドのトルエンペースト(15g、〜9wt%)を反応フラスコに添加した。反応が完了した後、その混合物を水(500mL)に添加し、その溶液をエチルエーテルで抽出した(500mLで2回)。抽出物を合わせ、塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、溶液を濾過し濃縮して、暗色残渣をシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1)。主要な画分をカラムから収集し濃縮して、33gの白色固体(1−フェニル−1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−プロピン−1−オール)を得た。
【0186】
手順4
手順1の3−メトキシ−9−ブロモ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(5g)、手順3からの1−フェニル−1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−プロピン−1−オール(4g)、ドデシルベンゼンスルホン酸(2滴)、及びクロロホルム(40mL)を反応フラスコに添加し混合した。その混合物を1時間加熱還流し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1)。主要な画分をカラムから収集し、濃縮して7gの膨張した緑色の泡を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3−フェニル−3−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−6−メトキシ−11−ブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。
【0187】
手順5
手順4の3−フェニル−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−11−ブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(3.5g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.12g)、フェニルボロン酸(1.05g)、炭酸ナトリウム(1.33g)、エチレングリコールジメチルエーテル(50mL)、及び水(10mL)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合し、室温で1時間攪拌した。その後、その混合物を28時間加熱還流した。その後、その混合物に水(30mL)を添加した。混合物を酢酸エチル(200mL)で抽出し、抽出物を水と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1.5)。主要な画分を酢酸エチル/ヘキサン(v/v:1/2)で再結晶させて、1.6gの黄緑色固体を得た。NMRスペクトルの結果は、3−フェニル−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−11−フェニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの構造であることを示す。
【0188】
手順6
手順5からの3−フェニル−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−11−フェニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(1g)、2−イソシアネートエチルメタクリレート(0.8mL)、ジブチルスズジラウレート(1滴)、及び酢酸エチル(20mL)を大気開放型冷却管を備えた反応フラスコ内で混合した。その混合物を1時間加熱還流した。メタノール(4mL)を混合物に添加して、過剰な2−イソシアネートエチルメタクリレートをクエンチングした。反応混合物は濃縮され、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した(ジクロロメタン/ヘキサン/アセトン(v/v/v):10/5/1)。主要な画分をカラムから収集し、濃縮して膨張した青緑色の泡を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3−フェニル−3−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−11−フェニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。
【0189】
(実施例14)
手順1
3,4−ジメトキシ−4’−ブロモベンゾフェノンの代わりに4,4’−ジメトキシベンゾフェノンを使用すること以外は実施例1の手順に従い、3,9−ジメトキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]−フルオレン−5−オールを生成した。
【0190】
手順2
手順1からの3,9−ジメトキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(3g)、実施例13の手順3からの産物である1−フェニル−1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−プロピン−1−オール(5g)、p−トルエンスルホン酸(0.2g)、及びクロロホルム(ペンテンで保存、10mL)を反応フラスコ内で混合し、室温で半時間攪拌した。その反応混合物を濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1)。主要な画分をカラムから収集し、濃縮して、その残渣にメタノールを添加し、沈殿物を濾過して、3gの黄緑色固体を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3−フェニル−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。
【0191】
手順3
実施例2手順1からの産物2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−カルボキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(0.77g)、1−フェニル−1−(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール(1g、米国特許第5,458,814号の実施例1手順1に記述されているように作製)、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(0.04g)、オルトギ酸トリメチル(0.5mL)、及びクロロホルム(ペンテンで保存、50mL)を反応フラスコ内で混合し、還流させて22時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、その残渣にアセトンとt−ブチルメチルエーテル(v/v:1:1)を添加し、そのスラリーを濾過して、1gの黄緑色固体を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−カルボキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0192】
手順4
手順2からの3−フェニル−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(0.7g)、手順3からの3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−カルボキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(0.5g)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(1g)、4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(0.17g)、及びジクロロメタン(50mL)をフラスコに添加し、27時間加熱還流した。反応混合物を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した(ジクロロメタン/ヘキサン/メタノール(v/v/v):10/10/1)。主要な画分をカラムから収集し、濃縮して、0.7gの青緑色の泡を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−11−(2−(4−(3−フェニル−6,11−ジメトキシ−13,13ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン−3−イル)フェノキシ)エトキシカルボニル)−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。
【0193】
(実施例15)
手順1
p−ヒドロキシベンゾフェノン(45g)、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(30mL)、ドデシルベンゼンスルホン酸(10滴)、及びジクロロメタン(450mL)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合した。混合物を室温で2時間攪拌し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液に注いだ。ジクロロメタン層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥した。その溶液を濾過し、濃縮した。残渣は、精製せずに次の反応に使用した。
【0194】
手順2
手順1からの産物(80g)を、オーバーヘッド攪拌器を備えた反応フラスコで無水ジメチルホルムアミド(130mL)に溶解させ、激しく攪拌しながらナトリウムアセチリドのトルエン溶液(35g、〜9wt%)を反応フラスコに添加した。反応が完了した後、その混合物を水(200mL)に注ぎ、その溶液をエチルエーテルで抽出した(200mLで3回)。抽出物を合わせ、塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。その溶液を濾過し、濃縮した。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0195】
手順3
手順2からの産物(80g)、p−トルエンスルホン酸(0.14g)、及び無水メタノール(50mL)を反応フラスコ内で混合した。混合物を室温で30分間攪拌し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(15mL)/水(150mL)に注ぎ、その混合物を酢酸エチルで抽出し(200mLで3回)、その抽出物を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥した。その溶液を濾過し、濃縮した。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0196】
手順4
実施例2手順1の産物(2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−カルボキシ−7H−ベンゾ[C]−フルオレン−5−オール、1g)、手順3からの産物(3g)、ドデシルベンゼンスルホン酸(5滴)、テトラヒドロフラン(5mL)、及びクロロホルム(40mL)を反応フラスコ内で混合し、その混合物を2時間加熱還流し、その後、濃縮した。その残渣にメタノールを添加し、そのスラリーを濾過して、0.7gのオフホワイトの固体を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3−フェニル−3−(4−ヒドロキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−カルボキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。
【0197】
手順5
4−フルオロベンゾフェノン(30g)、ピペラジン(23g)、トリエチルアミン(23mL)、炭酸カリウム(22g)、及びジメチルスルホキシド(50mL)を反応フラスコ内で混合し、その混合物を20時間加熱還流した。その後、混合物を冷却して水に注ぎ、そのスラリーをクロロホルムで抽出し、そのクロロホルム層を水で2回洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。その溶液を濃縮して45gのオレンジ色の油分を得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0198】
手順6
手順1からの産物の代わりに、手順5の産物を使用すること以外は、手順2の手順に従った。作業完了後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した(酢酸エチル/メタノール(v/v):1/1)。主要な画分をカラムから収集し、濃縮して、17gの黄色を帯びた固体を得た。
【0199】
手順7
実施例14手順1の3,9−ジメトキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(1g)、手順6(上記)からの産物(3g)、p−トルエンスルホン酸(0.2g)、及びクロロホルム(70mL)を反応フラスコ内で混合し、その混合物を室温で20分間攪拌し、その後、飽和炭酸カリウム水溶液(20mL)に注ぎ、そのクロロホルム層を分離して硫酸ナトリウムで乾燥した。その溶液を濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した(酢酸エチル/メタノール(v/v):1/1)。青色の画分を収集し、濃縮して、その残渣にメタノールを添加し、スラリーを濾過して、0.6gの緑色固体を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3−フェニル−3−(4−ピペラジノフェニル)−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0200】
手順8
手順4からの3−フェニル−3−(4−ヒドロキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−カルボキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(0.45g)、2−イソシアネートエチルメタクリレート(1.5mL)、ジブチルスズジラウレート(1滴)、及びジメチルホルムアミド(3mL)を反応フラスコ内で混合し、その混合物を80℃で2時間加熱した。その混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。抽出物を水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。.その溶液を濾過し、濃縮した。その残渣にアセトンとメタノール(v/v:1:1)を添加し、そのスラリーを濾過して、0.6gの黄色固体を得た。
【0201】
手順9
手順7からの3−フェニル−3−(4−ピペラジノフェニル)−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(0.5g)、手順8からの3−フェニル−3−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−カルボキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(0.7g)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.5g)、4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(0.08g)、及びジメチルホルムアミド(10mL)をフラスコに添加し、80℃で18時間加熱した。その混合物を水に注ぎ、スラリーを濾過し、その固体(0.5g)を更にシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した(酢酸エチル/メタノール(v/v):1/1)。純粋な画分を濃縮して、130mgの膨張した青緑色の泡を得た。質量スペクトル(MS)分析の結果は、3−フェニル−3−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−11−((l−(4−(3−フェニル−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン−3−イル)フェニル)ピペラジノ−4−イル)カルボニル)−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量であることを示す。
【0202】
比較例CE1
手順1
カリウムt−ブトキシド(50.0g)及びベンゾフェノン(100.0g)を窒素雰囲気下で500mLのトルエンを含有する反応フラスコに添加した。その混合物に、コハク酸ジメチル(150.0g)を1時間かけて滴下した。その混合物を室温で5時間攪拌した。得られた混合物を300mLの水に注ぎ、20分間激しく攪拌した。水層と有機層を分離し、有機層を100mLの水で3回抽出した。合わせた水層を150mLのクロロホルムで3回洗浄した。水層を6NのHClによりpH2に酸性化すると、沈殿物が生成した。水層を100mLのクロロホルムで3回抽出した。有機抽出物を合わせて回転蒸発によって濃縮した。NMR分析の結果、産物は4,4−ジフェニル−3−メトキシカルボニル−3−ブテン酸と一致する構造を有することが示された。
【0203】
手順2
手順1の粗ハーフエステル(100.0g)、無水酢酸60mL、及びトルエン300mLを窒素雰囲気下で反応フラスコに添加した。反応混合物を110℃で6時間加熱し、室温まで冷まして、回転蒸発で溶媒(トルエン及び酢酸)を除去した。得られた残渣を300mLのメチレンクロライドと200mLの水に溶解させた。固体NaCOを、泡立ちが止むまでその二相混合物に添加した。層を分離し、その水層を50mLのメチレンクロライドで抽出した。有機抽出物を合わせ、回転蒸発で溶媒を除去して、深赤色の油分を得た。その油分を温メタノールに溶解させ、0℃で2時間冷却した。得られた結晶を減圧濾過によって収集し、冷メタノールで洗浄して、1−フェニル−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−ナフタレンを生成した。生成混合物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0204】
手順3
手順2からの1−フェニル−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−ナフタレン(100g)、水(100mL)、メタノール(200mL)、及び水酸化ナトリウム(100g)を反応フラスコ内で混合し、5時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷まし、その後、水(1.5L)、濃塩酸(500mL)、及び氷の混合液に緩徐に注いだ。白色固体が沈殿し、それを濾過して水で洗浄した。その固体を少量の無水テトラヒドロフランに溶解させ、t−ブチルメチルエーテルで希釈した。この溶液を飽和NaCl水溶液で洗浄し、その有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して、回転蒸発で濃縮し、明るいオレンジ色の固体を得た。NMR分析の結果、産物は1−フェニル−2−カルボキシ−4−ヒドロキシ−ナフタレンの構造を有することが示された。
【0205】
手順4
手順3からの1−フェニル−2−カルボキシ−4−ヒドロキシ−ナフタレン(50g)、無水酢酸(60mL)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(200mg)、及び1,2,4−トリメチルベンゼン(500mL)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合し、50℃で1時間加熱した。ドデシルベンゼンスルホン酸(5.0g)を反応混合物に添加し、それを144℃まで加熱した。28時間後、反応混合物を緩徐に室温まで冷まし、固体を沈殿させた。反応混合物を濾過し、トルエンで洗浄して、40.0gの赤色固体(5−アセトキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−7−オン)を得た。産物は、精製せずに次の反応に使用した。
【0206】
手順5
手順4からの5−アセトキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−7−オン(10g)及び無水テトラヒドロフラン(150mL)を窒素雰囲気下で反応フラスコ内で混合し、氷浴で冷却した。これに2gのNaHを添加した。反応混合物を室温に温まるまで放置し、その後、飽和NHCl水溶液と氷の混合液(100mL)に注いだ。その混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、層を分離した。水層を50mLの酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO水溶液(100mL)で洗浄し、NaSO乾燥して、回転蒸発により濃縮して5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−7−オールを得た。
【0207】
手順6
手順5からの5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(2.40g)、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール(2.19g、米国特許第5,458,814号実施例1手順1の産物)、ドデシルベンゼンスルホン酸(0.12g)、及びクロロホルム(52mL)を反応フラスコ内で混合し、室温で5時間攪拌した。反応混合物を、50%飽和NaHCO水溶液(200mL)で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を回転蒸発により除去し、産物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル:2/1)により単離した。NMR分析の結果、産物は3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−13−ヒドロキシ−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの構造を有することが示された。
【0208】
比較例CE2
ベンゾフェノンの代わりに4,4’−ジメチルベンゾフェノンを使用すること以外は、比較例(CE)1の手順に従い、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11−ジメチル−13−ヒドロキシ−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]−ナフト[1,2−b]ピランを生成した。
【0209】
比較例CE3
手順1
3,4−ジメトキシ−4’−ブロモベンゾフェノンの代わりにナフトベンゾフェノンを使用すること以外は実施例1手順2〜5の手順に従い、13,13−ジメチル−ジベンゾ[a,g]フルオレン−11−オールを生成した。
【0210】
手順2
手順1の13,13−ジメチル−ジベンゾ[a,g]フルオレン−11−オール(2.50g)、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール(2.19g、米国特許第5,458,814号実施例1手順1の産物)、ドデシルベンゼンスルホン酸(0.12g)、及びクロロホルム(52mL)を反応フラスコ内で混合し、室温で5時間攪拌した。反応混合物を、50%飽和NaHCO水溶液(200mL)で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を回転蒸発により除去し、産物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル:85/15、R=0.3)により単離した。NMR分析の結果、産物は3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−ベンズ[p]−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの構造を有することが示された。
【0211】
比較例CE4:
手順1
ブロモベンゾイルクロライドの代わりにベンゾイルクロライドを使用すること以外は実施例1手順1〜5の手順に従い、2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを生成した。
【0212】
手順2
2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−シアノ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールの代わりに手順1の2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを使用すること以外は、実施例1手順7の手順に従い、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを生成した。
【0213】
第2部:試験
吸収試験
実施例1〜15及び比較例CE1〜CE4のフォトクロミック材料、並びに、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含む別の11種のフォトクロミック材料(以下の表1に記載の実施例16〜26)について、そのフォトクロミック性能を以下のようにセットアップされた光学ベンチ(optical bench)を使用して試験した。当業者は、本明細書において開示される教示及び実施例に従って、当業者には明白であろう適当な変更付加を施して実施例16〜26のフォトクロミック材料を作製することが可能であることが理解できるであろう。更に、当業者は、実施例1〜26のフォトクロミック材料の作製において、開示される方法、及びその他の方法に種々の変更付加を施すことが可能であることを認識するであろう。
【0214】
モル吸光度の試験に先立って、表1に示してある濃度にて各フォトクロミック材料のクロロホルム溶液を作製した。各溶液を厚さ1cmの個々の試験セルに入れ、300nm〜440nmの波長範囲にわたり、Cary 4000 UV分光光度計を使用して試験セルの吸光度を測定し、波長に対する吸光度のプロットを作製したものを得た。試験した各材料の積分吸光係数は、吸収測定値を吸光係数に変換し、得られた320〜420nmの範囲のプロットをIgorプログラム(WaveMetricsにより頒布)を使用して決定した。
【0215】
(表1:吸収試験データ)
【0216】
【表1−1】

【0217】
【表1−2】

表1のデータから分かる通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料(実施例1〜26)は全て、1.0×10nm×mol−1×cm−1を超える積分吸光係数を有するが、比較例CE1〜CE4のフォトクロミック材料はそうではない。
【0218】
フォトクロミック性能試験
実施例1〜15及び比較例CE1〜CE4のフォトクロミック材料、並びに11種の追加のフォトクロミック材料(以下の表1に記載の実施例16〜26)について、そのフォトクロミック性能を以下のように試験した。
【0219】
1.5×10−3モル溶液が得られるように計算された量の試験用フォトクロミック材料を、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート(BPA 2EO DMA)4部、ポリ(エチレングリコール)600ジメタクリレート1部、及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)0.033重量%のモノマー混合物50gを含有するフラスコに添加した。上記フォトクロミック材料を、撹拌及び穏やかに加熱することによって、モノマー混合物中に溶解させた。透明な溶液を得た後、この溶液を真空脱気処理してから、内部寸法2.2mm×6インチ(15.24cm)×6インチ(15.24cm)を有するフラットシートの型に注いだ。この型を密封し、5時間の間隔で温度を40℃から95℃に上げ、温度を95℃で3時間維持し、その後少なくとも2時間温度を60℃に下げるようにプログラムされた水平気流のプログラム可能な炉に入れた。型を開いた後、ポリマーシートをダイアモンドブレード鋸を使用して2インチ(5.1cm)四方の試験正方形にカットした。
【0220】
上記のようにして作製したフォトクロミック正方形試料を、光学ベンチ上でフォトクロミック応答について試験した。光学ベンチでの試験に先立って、フォトクロミック試験正方形を365nmの紫外線に約15分間曝露して、フォトクロミック材料を非活性状態(又は消色状態)から活性状態(又は着色状態)に変化させ、次に、75℃の炉に約15分間入れて、フォトクロミック材料を消色状態に戻した。次いで、正方形試料を室温まで冷まし、少なくとも2時間蛍光室内光に曝露し、次に73°F(22.8℃)に維持した光学ベンチ上で、試験前に少なくとも2時間カバーして(すなわち、暗環境下に)放置した。ベンチに、300ワットのキセノンアーク灯、リモートコントロールシャッター、紫外線及び赤外線の波長を変更しヒートシンクとしても機能するMelles Griot KG2フィルター、減光フィルター、及び水浴内に設置し試験する正方形を挿入するサンプルホルダー、を取り付けた。タングステンランプからの光の平行光線を、正方形試料に対し垂直な小角度(約30°)で正方形試料を通過させた。正方形試料を通過した後に、タングステン灯からの光が集光体(collection sphere)に向けられ、その光がブレンドされて、Ocean Optics S2000分光計に当たり、測定光線のスペクトルが収集され解析される。λmax−visは、正方形試料中で活性化された(着色した)形態のフォトクロミック化合物が最大吸収を示す可視スペクトル中の波長である。λmax−vis波長は、Varian Cary 300 UV−Visible分光光度計において、フォトクロミック正方形試料を試験することによって決定した。それは、光学ベンチでS2000分光計によって得られたスペクトルから計算することもできる。
【0221】
各正方形試料の飽和光学密度(「Sat’d OD」)は、キセノンランプからのシャッターを開き、試験片をUV放射に30分間曝露させた後の透過率を測定することによって決定した。Sat’d ODでのλmax−visは、光学ベンチでS2000分光計によって測定した活性化状態のデータから計算した。初期退色半減期(「T 1/2」)は、正方形試料中のフォトクロミック材料の活性状態の吸光度が、活性化光源の除去後に室温(73°F、22.8℃)でSat’d ODの吸光度の二分の一に到達するまでの時間間隔(秒)である。フォトクロミック材料の試験結果を以下の表2に一覧する。
【0222】
(表2:フォトクロミック試験データ)
【0223】
【表2】

第3部:モデル系
モデリングした3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン
3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11位でのUV吸収及び強度に関する置換基効果は、Gaussian98ソフトウェア(Gaussian Inc.[米国コネティカット州ウォリンフォードシティ]から購入)に実装されている密度関数理論を使用して計算した。モデル系は、インデノ縮合ナフトピランの11位に置換基を有する3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランをベースにして設計した(モデリングを簡単にするために、3位の置換基は水素原子で置き換えてある)。形状は、最初に、Beckeのパラメータ関数にLee−Yang−Parrの相関関数(LYP)と6−31G(d)の基底系とを組み合わせて使用して(B3LYP/6−31G(d))、最適化した。吸収スペクトルは、時間依存密度関数理論(TDDFT)をB3LYP関数と6−31+G(d)の基底系とを使用して計算した。TDDFT/6−31+G(d)によって計算した最大吸収(λmax)及びその強度を以下の表3に示す。全ての構造はB3LYP/6−31G(d)を使用して最適化した。
【0224】
(表3:モデルフォトクロミック材料の閉環体のモデリングした強度データ)
【0225】
【表3】

モデリングデータから、3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11位に結合するπ共役系を広げる基は、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を有さないフォトクロミック材料に比べて、λmaxのモデリングした強度を増加し深色シフトさせることが分かる(例えば、MPM1)。
【0226】
更に、モデリングしたフォトクロミック材料(例えば、MPM5、MPM9、及びMPM10等)が、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するが11位においてそのインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げるものではない基を有する場合、MPM1に比べて、モデリングした強度において有効な増加を有するようには見られない。インデノ縮合ナフトピランの11位と10位の両方、又は、11位と12位の両方に結合した縮合基を含むフォトクロミック材料であって、その縮合基が両方の結合位置でそのインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる場合(例えば、MPM11及びMPM12)、そのモデリングした強度は、一般的に、インデノ縮合ナフトピラン11位においてのみそのナフトピランのπ共役系を広げる縮合基を有するモデリングしたフォトクロミック材料(例えば、MPM3及びMPM4)、又はπ共役系を広げる基が11位のみに結合するインデノ縮合ナフトピランを有するモデリングしたフォトクロミック材料よりも増加が小さい。MPM2、MPM8及びMPM12のモデリングした強度データは、上で考察した通り同様の化合物の積分吸光係数の測定値と一致する。
【0227】
モデリングした2H,13H−インデノ[1’,2’:4,3]ナフト[2,1−b]ピラン
2H,13H−インデノ[1’,2’:4,3]ナフト[2,1−b]ピランの11位でのUV吸収及び強度に関する置換基効果は、3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの場合と同じ手順で計算した。モデル系は、インデノ縮合ナフトピランの11位に置換を有する2H,13H−インデノ[1,2’:4,3]ナフト[2,1−b]ピランをベースにして設計した(モデリングを簡単にするために、2位の置換基は水素原子で置き換えている)。吸収スペクトルは、時間依存密度関数理論(TDDFT)にB3LYP関数と6−31+G(d)基底系とを組み合わせて使用して計算した。TDDFT/6−31+G(d)によって計算した最大吸収(λmax)及びその強度を以下の表4に示す。全ての構造はB3LYP/6−31G(d)を使用して最適化した。表4に示す通り、11位において共役を広げることにより、吸収強度が増加する。
【0228】
(表4:モデルフォトクロミック材料の閉環体のモデリングした強度データ)
【0229】
【表4】

表4から分かる通り、MPM17及びMPM18の両方(インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げるシアノ基とフェニル基のそれぞれを有している)は、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まないMPM16に比べて、モデリングした強度が増加しλmaxは深色シフトしている。
【0230】
モデリングした3H,13H−ベンゾチエノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン
3H,13H−ベンゾチエノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11位の置換基のUV吸収及び強度に関する置換基効果は、3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの場合と同じ手順で計算した。モデル系は、ベンゾチエノ縮合ナフトピランの11位の置換を有する3H,13H−ベンゾチエノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランをベースにして設計した(モデリングを簡単にするために、3位の置換基は水素原子で置き換えてある)。吸収スペクトルは、時間依存密度関数理論(TDDFT)にB3LYP関数と6−31+G(d)基底系とを組み合わせて使用して計算した。TDDFT/6−31+G(d)によって計算した最大吸収(λmax)及びその強度を以下の表5に示す。全ての構造はB3LYP/6−31G(d)を使用して最適化した。表5に示す通り、11位で共役を広げることにより、吸収強度が増加する。
【0231】
(表5:モデルフォトクロミック材料の閉環体のモデリングした強度データ)
【0232】
【表5】

表5から分かる通り、MPM20(ベンゾチエノ縮合ナフトピランの11位に結合するベンゾチエノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げるフェニル基を含む)は、MPM19(インデノ縮合ナフトピランの11位に結合するベンゾチエノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない)に比べて、モデリングした強度が増加しλmaxは深色シフトしている。
【0233】
本説明は、本発明の明瞭な理解のために本発明の態様を例示することが理解されるものとする。そのため、当業者に明らかであると思われる本発明の特定の態様は、本説明を簡素化するため、提示されていない発明の理解を深めるのに役立たない場合がある。ここまで特定の実施形態に関連して本発明を説明してきたが、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義される通り、本発明の趣旨及び適用範囲に属する変更を包含するものとして意図される。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1】図1は、本明細書に開示される1つの非限定的実施形態によるフォトクロミック材料の、2種類の濃度で得られる吸収スペクトル、及び従来のフォトクロミック材料の吸収スペクトルを示す。
【図2】図2aおよび2bは、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料である。
【図3】図3a及び3bは、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料である。
【図4】図4は、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料の形成に使用される場合がある中間材料を作製するための反応図式の概略図である。
【図5】図5は、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料の作製に使用される反応図式の概略図である。
【図6】図6は、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料の作製に使用される反応図式の概略図である。
【図7】図7は、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料の作製に使用される反応図式の概略図である。
【図8】図8は、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック材料の作製に使用される反応図式の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)インデノ縮合ナフトピラン;及び
(ii)その11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げるが、但し、該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する基と、該インデノ縮合ナフトピランの10位又は12位に結合する基とが一緒に縮合基を形成する場合、該縮合基はベンゾ縮合基でない、基を含む、フォトクロミック材料であって、
該インデノ縮合ナフトピランの13位が未置換、一置換又は二置換であるが、但し、該インデノ縮合ナフトピランの該13位が二置換の場合、該置換基が一緒にノルボルニルを形成しない、フォトクロミック材料。
【請求項2】
前記フォトクロミック材料が、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、インデノ[1’,2’:4,3]ナフト[2,1−b]ピラン、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項3】
320nm以上420nm以下の波長範囲における前記フォトクロミック材料の吸光係数と波長のプロットを積分して決定されるように、該フォトクロミック材料が1.0×10nm×mol−1×cm−1を超える積分吸光係数を有する、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項4】
前記積分吸光係数が少なくとも1.3×10nm×mol−1×cm−1である、請求項3に記載のフォトクロミック材料。
【請求項5】
前記積分吸光係数が1.1×10nm×mol−1×cm−1〜4.0×10nm×mol−1×cm−1の範囲である、請求項3に記載のフォトクロミック材料。
【請求項6】
前記フォトクロミック材料が、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する同様のインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料に比べて、320nm〜420nmの波長を有する電磁放射の濃色吸収を示す、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項7】
前記フォトクロミック材料の有する電磁放射の閉環体の吸収スペクトルが、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する同様のインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料の電磁放射の閉環体の吸収スペクトルに比べて深色シフトした、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項8】
前記インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランの該π共役系を広げる基が、置換又は未置換アリール;置換又は未置換ヘテロアリール;或いは−X=Y又は−X’≡Y’で表される基であって、式中:
(i)Xが、−CR、−N、−NO、−SR、−S(=O)R、又は−P(=O)Rであり、式中、Rは、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基、又はフォトクロミック材料であるが、但し:
(a)Xが−CR又は−Nの場合、YはC(R、NR、O、又はSであり、式中、各Rは、何れの場合にも、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基、及びフォトクロミック材料からそれぞれ独立して選択され;及び
(b)Xが−NO、−SR、−S(=O)R、又は−P(=O)Rの場合、YはOであり;そして
(ii)X’が−C又は−Nであり、Y’がCR又はNであり;式中、Rはアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基又はフォトクロミック材料であるか;或いは、
該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基が、該インデノ縮合ナフトピランの12位に結合する基と一緒に、或いは該インデノ縮合ナフトピランの10位に結合する基と一緒に、縮合基を形成し、該縮合基がインデノ、ジヒドロナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾピラン、又はチアナフテンである、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項9】
前記インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基が:置換又は未置換C−C20アルケニル;置換又は未置換C−C20アルキニル;置換又は未置換アリール;置換又は未置換ヘテロアリール;−C(=O)R;或いは−N(=Y)又は−N(≡Y’)であり、式中、YはC(R、NR、O、又はSであり、Y’はCR又はNである、請求項8に記載のフォトクロミック材料。
【請求項10】
前記インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基が、未置換であるか、或いは置換又は未置換アルキル、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アミド、置換又は未置換アミノ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、アジド、カルボニル、カルボキシ、エステル、エーテル、ハロゲン、ヒドロキシ、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、シアノ、ニトロ、スルホニル、チオール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基、又はフォトクロミック材料の内の少なくとも1つで置換されるアリール基又はヘテロアリール基であるが、但し、該アリール基又は該ヘテロアリール基が複数の置換基を含む場合は、各置換基が独立して選択される場合がある、請求項9に記載のフォトクロミック材料。
【請求項11】
前記インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基が、−C(=O)Rであり、式中、Rは、アシルアミノ、アシルオキシ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、反応性置換基、又はフォトクロミック材料である、請求項9に記載のフォトクロミック材料。
【請求項12】
前記フォトクロミック材料が、反応性置換基及び親和性置換基の内の少なくとも1つを含み、該反応性置換基又は該親和性置換基はそれぞれ独立して:
−A’−D−E−G−J ; −G−E−G−J ; −D−E−G−J;
−A’−D−J ; −D−G−J ; −D−J;
−A’−G−J ; −G−J ;及び−A’−J;
の内の1つによって表され、
式中:
(i)各−A’−は独立して、−O−、−C(=O)−、−CH−、−OC(=O)−、又は−NHC(=O)−であるが、但し、−A’−が−O−の場合、−A’−が−Jとの結合を少なくとも1つ形成し;
(ii)各−D−は独立して:
(a)ジアミン残基又はその誘導体であって、該ジアミン残基は、脂肪族ジアミン残基、脂環式ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザ脂環式アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基、又は芳香族ジアミン残基であり、該ジアミン残基の第一アミノ窒素原子が、−A’−、該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基、又は該インデノ縮合ナフトピランの置換基又は結合可能な位置との結合を形成し、且つ該ジアミン残基の第二アミノ窒素原子が、−E−、−G−、又は−Jと結合を形成する、ジアミン残基又はその誘導体;或いは
(b)アミノアルコール残基又はその誘導体であって、該アミノアルコール残基が、脂肪族アミノアルコール残基、脂環式アミノアルコール残基、アザ脂環式アルコール残基、ジアザ脂環式アルコール残基、又は芳香族アミノアルコール残基であり、該アミノアルコール残基のアミノ窒素原子が、−A’−、該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基、又は該インデノ縮合ナフトピランの置換基又は結合可能な位置との結合を形成し、且つ該アミノアルコール残基のアルコール酸素原子が、−E−、−G−、又は−Jと結合を形成するか、或いは該アミノアルコール残基のアミノ窒素原子が、−E−、−G−、又は−Jと結合を形成し、更に該アミノアルコール残基のアルコール酸素原子が、−A’−、該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基、又は該インデノ縮合ナフトピランの置換基又は結合可能な位置との結合を形成する、アミノアルコール残基又はその誘導体であり;
(iii)各−E−が独立して、ジカルボン酸残基又はその誘導体であり、該ジカルボン酸残基は、脂肪族ジカルボン酸残基、脂環式ジカルボン酸残基、又は芳香族ジカルボン酸残基であり、該ジカルボン酸残基の第一カルボニル基が、−G−又は−D−と結合を形成し、且つ該ジカルボン酸残基の第二カルボニルが−G−と結合を形成し;
(iv)各−G−が独立して:
(a)−[(OC(OC(OC]−O−であって、式中、x、y及びzはそれぞれ独立して選択され、0〜50の範囲であり、x、y及びzの合計が1〜50の範囲である、−[(OC(OC(OC]−O−;
(b)ポリオール残基又はその誘導体であって、該ポリオール残基が、脂肪族ポリオール残基、脂環式ポリオール残基、又は芳香族ポリオール残基であり、該ポリオール残基の第一ポリオール酸素原子は、−A’−;−D−;−E−;該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基;又は該インデノ縮合ナフトピランの置換基又は結合可能な位置との結合を形成し、且つ該ポリオール残基の第二ポリオール酸素原子は、−E−又は−Jと結合を形成する、ポリオール残基又はその誘導体;或いは
(c)それらの組み合わせであって、この場合、該ポリオール残基の該第一ポリオール酸素原子は、−[(OC(OC(OC]−基と結合を形成し、且つ該第二ポリオール酸素原子は、−E−又は−Jと結合を形成する、それらの組み合わせであり;
(v)各−Jは独立して:
(a)−K基であって、−Kは、−CHCOOH、−CH(CH)COOH、−C(O)(CHCOOH、−CSOH、−C10SOH、−CSOH、−CSOH、−CSOH、又は−SOHであり、式中、wは1〜18の範囲である、−K基;
(b)水素であって、但し、−Jが水素の場合、−Jは、−D−又は−G−の酸素原子、或いは−D−の窒素原子に結合する、水素;或いは、
(c)−L基又はその残基であって、この場合、−Lは、アクリル、メタクリル、クロチル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル、又はエポキシである、
請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項13】
前記フォトクロミック材料が、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを含み、該6位、該7位、該13位、該3位、並びに該インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11位に結合する該インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランのπ共役系を広げる基、の内の少なくとも1つが反応性置換基を含む、請求項12に記載のフォトクロミック材料。
【請求項14】
前記インデノ縮合ナフトピランが、該インデノ縮合ナフトピランの13位にスピロ環基を含まない、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項15】
前記インデノ縮合ナフトピランがインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランであり、この場合:
(i)該インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの該6位が、窒素含有基又は酸素含有基で置換されており;
(ii)該インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの該7位が、窒素含有基又は酸素含有基で置換されており;且つ
(iii)該インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの該13位が二置換であるが、但し、該13位の該置換基がそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリル、置換又は未置換フェニル、置換又は未置換ベンジル、置換又は未置換アミノ、又は−C(O)R30であり、ここで式中、R30は水素、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、未置換、一置換又は二置換フェニル又はナフチル、フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェノキシ、又はモノ若しくはジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシである、
請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項16】
有機材料の少なくとも一部に組み込まれた請求項1のフォトクロミック材料を含むフォトクロミック組成物であって、該有機材料が、ポリマー材料、オリゴマー材料、モノマー材料、又はそれらの混合物又は組み合わせである、組成物。
【請求項17】
前記有機材料がポリマー材料であり、該ポリマー材料が、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマー;エチレン及びビニルアルコールのコポリマー;エチレン、酢酸ビニル、及びビニルアルコールのコポリマー;セルロースアセテートブチレート;ポリ(ウレタン);ポリ(アクリレート);ポリ(メタクリレート);エポキシ;アミノプラスト官能性ポリマー;ポリ(無水物);ポリ(尿素ウレタン);N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド官能性ポリマー;ポリ(シロキサン);ポリ(シラン);或いはそれらの混合物又は組み合わせである、請求項16に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項18】
前記フォトクロミック組成物が、同様のインデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該同様のインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック組成物に比べて、320nm〜420nmの波長を有する電磁放射の吸収の増加を示す、請求項16に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項19】
前記フォトクロミック組成物が、同様のインデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該同様のインデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含まない同様のインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック組成物の電磁放射の吸収スペクトルに比べて、電磁放射の吸収スペクトルが深色シフトする、請求項16に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項20】
前記フォトクロミック組成物が、相補的なフォトクロミック材料、光開始剤、熱開始剤、重合防止剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤、フリーラジカル捕捉剤、及び接着促進剤の内の少なくとも1つを含む、請求項16に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項21】
前記フォトクロミック組成物がコーティング組成物である、請求項16に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項22】
基材と、該基材の少なくとも一部に接続した請求項1に記載のフォトクロミック材料を含む、フォトクロミック性物品。
【請求項23】
前記フォトクロミック性物品が光学素子であり、該光学素子が、眼用素子、表示素子、窓、鏡、及び液晶セル素子の内の少なくとも1つである、請求項22に記載のフォトクロミック性物品。
【請求項24】
前記光学素子が眼用素子であり、該眼用素子が、矯正用レンズ、非矯正用レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、バイザー、ゴーグル、又は光学機器用レンズの内の少なくとも何れか1つである、請求項23に記載のフォトクロミック性物品。
【請求項25】
前記基材がポリマー材料を含み、前記フォトクロミック材料が該ポリマー材料の少なくとも一部に組み込まれる、請求項22に記載のフォトクロミック性物品。
【請求項26】
前記フォトクロミック材料が、前記ポリマー材料の少なくとも一部と混合されるか、該ポリマー材料の少なくとも一部に結合するか、或いは、該ポリマー材料の少なくとも一部に吸収されるかの内の少なくとも1つの状態である、請求項25に記載のフォトクロミック性物品。
【請求項27】
前記フォトクロミック性物品が、前記基材の少なくとも一部に接続された少なくとも部分的なコーティングを含み、該少なくとも部分的なコーティングが前記フォトクロミック材料を含む、請求項22に記載のフォトクロミック性物品。
【請求項28】
前記基材がポリマー材料又はガラスである、請求項27に記載のフォトクロミック性物品。
【請求項29】
少なくとも部分的なコーティング又はフォルムの少なくとも1つが、前記基材の少なくとも一部に接続され、該少なくとも部分的なコーティング又はフィルムの少なくとも1つが、プライマーコーティング又はフィルム、保護用コーティング又はフィルム、反射防止用コーティング又はフィルム、従来のフォトクロミック性コーティング又はフィルム、及び偏光コーティング又はフィルムの内の少なくとも1つである、請求項22に記載のフォトクロミック性物品。
【請求項30】
前記フォトクロミック性物品が、相補的なフォトクロミック材料、光開始剤、熱開始剤、重合防止剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤、フリーラジカル捕捉剤、及び接着促進剤の内の少なくとも1つを含む、請求項22に記載のフォトクロミック物品。
【請求項31】
フォトクロミック性物品を作製するための方法であって、
請求項1に記載のフォトクロミック材料を基材の少なくとも一部に接続する工程を包含し、ここで、該フォトクロミック材料を該基材の少なくとも一部に接続する工程が、インモールドキャスティング、コーティング、吸収、成層、及び現場での成形(casting−in−place)のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項32】
インデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料であって、該インデノ縮合ナフトピランの13位が未置換、一置換又は二置換であるが、但し、該インデノ縮合ナフトピランの13位が二置換の場合、該置換基は一緒にノルボルニルを形成せず、且つ320nm以上420nm以下の波長範囲における該フォトクロミック材料の吸光係数と波長のプロットを積分して決定されるように、該フォトクロミック材料が1.0×10nm×mol−1×cm−1を超える積分吸光係数を有する、材料。
【請求項33】
前記積分吸光係数が1.1×10nm×mol−1×cm−1〜4.0×10nm×mol−1×cm−1の範囲である、請求項32に記載のフォトクロミック材料。
【請求項34】
前記フォトクロミック材料が、該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基を含み、該基が、置換又は未置換アリール;置換又は未置換ヘテロアリール;或いは−X=Y又は−X’≡Y’で表される基であり、式中:
(i)Xが、−CR、−N、−NO、−SR、−S(=O)R、又は−P(=O)Rであり、式中、Rは、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基、又はフォトクロミック材料であるが、但し:
(a)Xが−CR又は−Nの場合、YはC(R、NR、O、又はSであり、式中、各Rは、何れの場合にも、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基、及びフォトクロミック材料からそれぞれ独立して選択され;及び
(b)Xが−NO、−SR、−S(=O)R、又は−P(=O)Rの場合、YはOであり;そして
(ii)X’が−C又は−Nであり、Y’がCR又はNであり;式中、Rはアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基又はフォトクロミック材料であるか;或いは、
該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基が、該インデノ縮合ナフトピランの12位に結合する基と一緒に、或いは該インデノ縮合ナフトピランの10位に結合する基と一緒に、縮合基を形成し、該縮合基がインデノ、ジヒドロナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾピラン、又はチアナフテンである、請求項32に記載のフォトクロミック材料。
【請求項35】
(i)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、インデノ[1’,2’:4,3]ナフト[2,1−b]ピラン、及びその混合物から選択されるインデノ縮合ナフトピランであって、該インデノ縮合ナフトピランの13位は未置換、一置換又は二置換であるが、但し、該インデノ縮合ナフトピランの13位が二置換の場合、該置換基群は一緒にノルボルニルを形成しない、インデノ縮合ナフトピランと、
(ii)該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基であって、該基は、置換又は未置換アリール;置換又は未置換ヘテロアリール;或いは−X=Y又は−X’≡Y’で表される基であり、式中:
(a)Xは、−CR、−N、−NO、−SR、−S(=O)R、又は−P(=O)Rであり、式中、Rは、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基、又はフォトクロミック材料であるが、但し:
(1)Xが−CR又は−Nの場合、YはC(R、NR、O、又はSであり、式中、各Rは、何れの場合にも、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基、及びフォトクロミック材料からそれぞれ独立して選択され;且つ
(2)Xが−NO、−SR、−S(=O)R、又は−P(=O)Rの場合、YはOであり;そして
(b)X’が−C又は−Nであり、Y’はCR又はNであり;式中、Rはアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基又はフォトクロミック材料であるか;或いは、
該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基が、該インデノ縮合ナフトピランの12位に結合する基と一緒に、或いは該インデノ縮合ナフトピランの10位に結合する基と一緒に、縮合基を形成し、該縮合基がインデノ、ジヒドロナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾピラン、又はチアナフテンである、該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基と
を含むフォトクロミック材料。
【請求項36】
以下の化学式:
【化1】

又はその混合物で表されるフォトクロミック材料であって、式中:
(i)Rは、置換又は未置換アリール;置換又は未置換ヘテロアリール;或いは−X=Y又は−X’≡Y’で表される基であり、式中:
(a)Xは、−CR、−N、−NO、−SR、−S(=O)R、又は−P(=O)Rであり、式中、Rは、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基、又はフォトクロミック材料であるが、但し:
(1)Xが−CR又は−Nの場合、YはC(R、NR、O、又はSであり、式中、各Rは、何れの場合にも、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基、及びフォトクロミック材料からそれぞれ独立して選択され;並びに
(2)Xが−NO、−SR、−S(=O)R、又は−P(=O)Rの場合、YはOであり;且つ
(b)X’が−C又は−Nであり、Y’はCR又はNであり;式中、Rはアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アシルオキシ、アシルアミノ、置換又は未置換C−C20アルキル、置換又は未置換C−C20アルケニル、置換又は未置換C−C20アルキニル、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、酸素、ポリオール残基、置換又は未置換フェノキシ、置換又は未置換ベンジルオキシ、置換又は未置換アルコキシ、置換又は未置換オキシアルコキシ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、置換又は未置換アリール、置換又は未置換ヘテロアリール、置換又は未置換複素環式基、反応性置換基、親和性置換基又はフォトクロミック材料であるか;或いは、
が、R基と一緒に該インデノ縮合ナフトピランの12位に結合して、又はR基と一緒に該インデノ縮合ナフトピランの10位に結合して、縮合基を形成し、該縮合基がインデノ、ジヒドロナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾピラン、又はチアナフテンであり;
(ii)nが0〜3の範囲であり;
(iii)mが0〜4の範囲であり;
(iv)各R及びRが、何れの場合にも:
反応性置換基;親和性置換基;水素;C−Cアルキル;クロロ;フルオロ;C−Cシクロアルキル;置換又は未置換フェニルであって、該フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシである、置換又は未置換フェニル;−OR10又は−OC(=O)R10であって、式中、R10はS、水素、アミン、C−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、又はモノ(C−C)アルキル置換(C−C)シクロアルキルである、−OR10又は−OC(=O)R10;一置換フェニルであって、該フェニルがパラ位に置換基を有し、該置換基がジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−(CH)−、tが2〜6の範囲であり、kが1〜50の範囲である−(CH−、又は−[O−(CH−であって、該置換基は他のフォトクロミック材料のアリール基に結合する、一置換フェニル;−N(R11)R12であって、式中、R11及びR12はそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、フェニル、ナフチル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンゾピリジル及びフルオレニル、C−Cアルキルアリール、C−C20シクロアルキル、C−C20ビシクロアルキル、C−C20トリシクロアルキル、又はC−C20アルコキシアルキルであるか、或いはR11及びR12は一緒に窒素原子に結合してC−C20ヘテロ−ビシクロアルキル環又はC−C20ヘテロ−トリシクロアルキル環を形成する、−N(R11)R12;以下の化学式で表される窒素含有環:
【化2】

ここで式中、各−M−は、何れの場合にも、−CH−、−CH(R13)−、−C(R13−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、及び−C(R13)(アリール)−から独立して選択され、−Q−は−M−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R13)−、又は−N(アリール)−であり、各R13は独立して、C−Cアルキルであり、各(アリール)は独立して、フェニル又はナフチルであり、uは1〜3の範囲であり、vは0〜3の範囲であるが、但し、vが0の場合、−Q−は−M−である、窒素含有環;以下の化学式で表される基:
【化3】

ここで式中、各R15、R16、及びR17は独立して、水素、C−Cアルキル、フェニル、又はナフチルであるか、或いはR15及びR16が一緒に炭素原子数5〜8の環を形成し、各R14が独立して、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、フルオロ、又はクロロであり、及びpは0〜3の範囲である、基;及び置換又は未置換C−C18スピロ二環式アミン、又は置換又は未置換C−C18スピロ三環式アミンであり、この場合、該置換基は独立して、アリール、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、又はフェニル(C−C)アルキルである、置換又は未置換C−C18スピロ二環式アミン、又は置換又は未置換C−C18スピロ三環式アミン;から独立して選択され、又は、
該6位のR基及び該7位のR基が一緒に、以下の化学式で表される基を形成し:
【化4】

ここで式中、各Z及びZ’は独立して、酸素又は基−NR11−であり、この場合、R11、R14、及びR16は上に記載した通りであり、
(v)R及びRはそれぞれ独立して:
反応性置換基;親和性置換基;水素;ヒドロキシ;C−Cアルキル;C−Cシクロアルキル;アリル;置換又は未置換フェニル又はベンジルであって、ここで、該フェニル及びベンジル置換基のそれぞれは、独立して、C−Cアルキル又はC−Cアルコキシである、置換又は未置換フェニル又はベンジル;クロロ;フルオロ;置換又は未置換アミノ;−C(O)Rであって、式中、Rは、水素、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、未置換、一置換或いは二置換フェニル又はナフチルであって、この場合、該置換基のそれぞれは、独立して、C−Cアルキル又はC−Cアルコキシである、一置換或いは二置換フェニル又はナフチル、フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ又はジ(C−C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェニルアミノ、又はモノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェニルアミノである、−C(O)R;−OR18であって、式中、R18は、C−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、モノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキル、C−Cクロロアルキル、C−Cフルオロアルキル、アリル、又は−CH(R19)Tであり、ここで式中、R19は水素又はC−Cアルキルであり、TはCN、CF又はR20が水素もしくはC−CアルキルであるCOOR20であるか、或いはR18は−C(=O)Uであり、ここで式中、Uが水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、未置換フェニル又はナフチル、置換基のそれぞれが独立してC−CアルキルもしくはC−Cアルコキシである一置換或いは二置換フェニル又はナフチル、フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ又はジ(C−C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェニルアミノ、又はモノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェニルアミノである、−OR18;及び一置換フェニルであって、該フェニルはパラ位に置換基を有し、該置換基が、ジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−(CH)−、tは2〜6の範囲であり、kは1〜50の範囲である−(CH−、又は−[O−(CH−、該置換基は別のフォトクロミック材料のアリール基に結合する、一置換フェニル;から選択されるか;或いは、
及びRが一緒に、オキソ基;炭素原子3〜6個を有するスピロ炭素環基であって、但し、該スピロ炭素環基はノルボルニルではない、スピロ炭素環基;又は酸素原子1〜2個及び該スピロ炭素原子を含む炭素原子3〜6個を有するスピロ複素環基であって、該スピロ炭素環基とスピロ複素環基は、0〜2つのベンゼン環で付加され、を形成し;
(vi)B及びB’がそれぞれ独立して:
反応性置換基又は親和性置換基で一置換されるアリール基;未置換、一置換、二置換、又は三置換アリール基;9−ジュロリジニル;ピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾイル、ベンゾピリジル、インドリニル、及びフルオレニルのうちから選択される、未置換、一置換又は二置換ヘテロ芳香族基;
この場合、該アリール及びヘテロ芳香族置換基は、それぞれ独立して:
ヒドロキシ、アリール、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール、ハロアリール、C−Cシクロアルキルアリール、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルキルオキシ、C−Cシクロアルキルオキシ(C−C12)アルキル、C−Cシクロアルキルオキシ(C−C12)アルコキシ、アリール(C−C12)アルキル、アリール(C−C12)アルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシ(C−C12)アルキル、アリールオキシ(C−C12)アルコキシ、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール(C−C12)アルキル、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール(C−C12)アルキル、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール(C−C12)アルコキシ、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール(C−C12)アルコキシ、アミノ、モノ又はジ(C−C12)アルキルアミノ、ジアリールアミノ、ピペラジノ、N−(C−C12)アルキルピペラジノ、N−アリールピペラジノ、アジリジノ、インドリノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロキノリノ、テトラヒドロイソキノリノ、ピロリジル、C−C12アルキル、C−C12ハロアルキル、C−C12アルコキシ、モノ(C−C12)アルコキシ(C−C12)アルキル、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、ハロゲン、又は−C(=O)R21であって、式中、R21は、−OR22、−N(R23)R24、ピペリジノ又はモルホリノであり、ここでR22は、アリル、C−Cアルキル、フェニル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル又はC−Cハロアルキル、並びに、R23及びR24は、それぞれ独立して、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル又は置換又は未置換フェニルであって、該フェニル置換基は独立して、C−Cアルキル又はC−Cアルコキシである、−C(=O)R21である、
ピラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ピロリニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニル及びアクリジニルから選択される未置換又は一置換基であって、該置換基はC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、フェニル又はハロゲンである、未置換又は一置換の基;一置換フェニルであって、ここで、該フェニルはパラ位に置換基を有し、該置換基はジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−(CH)−、tが2〜6の範囲であり、kが1〜50の範囲である−(CH−、又は−[O−(CH−であり、更に該置換基は他のフォトクロミック材料のアリール基に結合する、一置換フェニル;以下:
【化5】

で表される基であって、式中、Vは−CH−又は−O−であり、Wは酸素又は置換窒素であるが、但し、Wが置換窒素の場合、Vは−CH−であり、この場合、該置換窒素置換基は水素、C−C12アルキル、又はC−C12アシルであり、各R25は独立してC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、ヒドロキシ、又はハロゲンであり、R26及びR27はそれぞれ独立して、水素又はC−C12アルキルであり、sは0〜2の範囲である、基;又は以下:
【化6】

で表される基であって、式中、R28は水素又はC−C12アルキルであり、R29は未置換、一置換又は二置換ナフチル、フェニル、フラニル、又はチエニルであり、該置換基はC−C12アルキル、C−C12アルコキシ又はハロゲンである、基;又は、
B及びB’は一緒にフルオレン−9−イリデン或いは一置換又は二置換フルオレン−9−イリデンを形成し、該フルオレン−9−イリデン置換基はそれぞれ独立して、C−C12アルキル、C−C12アルコキシ、又はハロゲンである、
フォトクロミック材料。
【請求項37】
前記フォトクロミック材料が、反応性置換基及び親和性置換基の内の少なくとも1つを含み、該反応性置換基又は該親和性置換基はそれぞれ独立して:
−A’−D−E−G−J;−G−E−G−J;−D−E−G−J;
−A’−D−J;−D−G−J; −D−J;
−A’−G−J;−G−J;及び −A’−J;
の内の1つによって表され、
式中:
(i)各−A’−は独立して、−O−、−C(=O)−、−CH−、−OC(=O)−、又は−NHC(=O)−であるが、但し、−A’−が−O−の場合、−A’−が−Jとの結合を少なくとも1つ形成し;
(ii)各−D−は独立して:
(a)ジアミン残基又はその誘導体であって、該ジアミン残基は、脂肪族ジアミン残基、脂環式ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザ脂環式アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基、又は芳香族ジアミン残基であり、該ジアミン残基の第一アミノ窒素原子が、−A’−;該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基;又は該インデノ縮合ナフトピランの置換基又は結合可能な位置と結合を形成し、且つ該ジアミン残基の第二アミノ窒素原子が、−E−、−G−、又は−Jと結合を形成する、ジアミン残基又はその誘導体;或いは
(b)アミノアルコール残基又はその誘導体であって、ここで、該アミノアルコール残基が、脂肪族アミノアルコール残基、脂環式アミノアルコール残基、アザ脂環式アルコール残基、ジアザ脂環式アルコール残基、又は芳香族アミノアルコール残基であり、該アミノアルコール残基のアミノ窒素原子が、−A’−;該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基;又は該インデノ縮合ナフトピランの置換基又は結合可能な位置、と結合を形成し、且つ該アミノアルコール残基のアルコール酸素原子が、−E−、−G−、又は−Jと結合を形成するか、或いは該アミノアルコール残基のアミノ窒素原子が、−E−、−G−、又は−Jと結合を形成し、更に該アミノアルコール残基のアルコール酸素原子が、−A’−;該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基;又は該インデノ縮合ナフトピランの置換基又は結合可能な位置と結合を形成する、アミノアルコール残基又はその誘導体であり;
(iii)各−E−が独立して、ジカルボン酸残基又はその誘導体であって、該ジカルボン酸残基は、脂肪族ジカルボン酸残基、脂環式ジカルボン酸残基、又は芳香族ジカルボン酸残基であり、該ジカルボン酸残基の第一カルボニル基が、−G−又は−D−と結合を形成し、且つ該ジカルボン酸残基の第二カルボニルが−G−と結合を形成し;
(iv)各−G−が独立して:
(a)−[(OC(OC(OC]−O−であって、式中、x、y及びzはそれぞれ独立して選択され、0〜50の範囲であり、x、y及びzの合計が1〜50の範囲である、−[(OC(OC(OC]−O−;
(b)ポリオール残基又はその誘導体であって、該ポリオール残基が、脂肪族ポリオール残基、脂環式ポリオール残基、又は芳香族ポリオール残基であり、この場合、該ポリオール残基の第一ポリオール酸素原子は、−A’−;−D−;−E−;該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基;又は該インデノ縮合ナフトピランの置換基又は結合可能な位置と結合を形成し、且つ前該ポリオール残基の第二ポリオール酸素原子は、−E−又は−Jと結合を形成する、ポリオール残基又はその誘導体;或いは
(c)それらの組み合わせであって、この場合、該ポリオール残基の第一ポリオール酸素原子は、−[(OC(OC(OC]−基と結合を形成し、且つ該第二ポリオール酸素原子は、−E−又は−Jと結合を形成する、組み合わせであり;
(v)各−Jは独立して:
(a)−K基であって、−Kは、−CHCOOH、−CH(CH)COOH、−C(O)(CHCOOH、−CSOH、−C10SOH、−CSOH、−CSOH、−CSOH、又は−SOHであり、式中、wは1〜18の範囲である、−K基;
(b)水素であるが、但し、−Jが水素の場合、−Jは、−D−又は−G−の酸素原子、或いは−D−の窒素原子に結合する、水素;或いは、
(c)−L基又はその残基であって、この場合、−Lは、アクリル、メタクリル、クロチル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル、又はエポキシである、−L基又はその残基である、
請求項35に記載のフォトクロミック材料。
【請求項38】
前記6位のR基、該7位のR基、B、B’、R、R、及びRの内の少なくとも1つが反応性置換基を有する、請求項36に記載のフォトクロミック材料。
【請求項39】
前記インデノ縮合ナフトピランがインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランであり、この場合:
(i)該インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの7位のR基及び6位のR基のそれぞれが、独立して、−OR10であって、ここで式中、R10は、C−Cアルキル、フェニル置換基がC−CアルキルもしくはC−Cアルコキシである置換又は未置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、又はモノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキルである、−OR10;−N(R11)R12であって、式中、R11及びR12はそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルキルアリール、C−C20シクロアルキル、C−C20ビシクロアルキル、C−C20トリシクロアルキル、又はC−C20アルコキシアルキルであり、該アリール基はフェニル又はナフチルである、−N(R11)R12;以下:
【化7】

で表される窒素含有環であって、式中、各−M−は、何れの場合にも、−CH−、−CH(R13)−、−C(R13−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、及び−C(R13)(アリール)−から独立して選択され、、−Q−は−M−、−O−、−S−、−NH−、−N(R13)−、又は−N(アリール)−であり、この場合、各R13は独立してC−Cアルキルであり、各(アリール)は独立してフェニル又はナフチルであり、uは1〜3の範囲であり、vは0〜3の範囲であるが、但し、vが0の場合、−Q−は−M−である、窒素含有環;或いは、反応性置換基又は親和性置換基であるが、但し、該反応性置換基又は該親和性置換基は、該インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと6位又は7位に結合を形成する、脂肪族アミノアルコール残基、脂環式アミノアルコール残基、アザ脂環式アルコール残基、ジアザ脂環式アルコール残基、ジアミン残基、脂肪族ジアミン残基、脂環式ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザ脂環式アミン残基、オキシアルコキシ基、脂肪族ポリオール残基、又は脂環式ポリオール残基を有する連結基、を有する、反応性置換基又は親和性置換基;又は、
(ii)該インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの6位のR基及び7位のR基が一緒に以下:
【化8】

で表される基を形成し、式中、各Z及びZ’はそれぞれ独立して、酸素又は−NR11−であり、この場合、R11は上の(i)に記載した通りである、請求項35に記載のフォトクロミック材料。
【請求項40】
前記フォトクロミック材料が、(i)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−シアノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(ii)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−カルボキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(iii)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−メトキシカルボニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(iv)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシカルボニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(v)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−フルオロフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(vi)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−(フェニル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(vii)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(viii)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチン)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(ix)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(2−フェニルエチニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(x)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−フェニル−13−エチル、13−メトキシ−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xi)3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−(2−メタクリルオキシエトキシ)カルボニルフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xii)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−((3−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシメチレンピペリジノ)−1−イル)−11−(4−(フェニル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xiii)3−フェニル−3−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−11−フェニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xiv)3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−11−(2−(4−(3−フェニル−6,11−ジメトキシ−13,13ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン−3−イル)フェノキシ)エトキシカルボニル)−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xv)3−フェニル−3−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−11−((1−(4−(3−フェニル−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン−3−イル)フェニル)ピペラジノ−4−イル)カルボニル)−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xvi)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−11−メトキシカルボキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xvii)3−(4−モルホリノフェニル)−3−フェニル−6,7−ジメトキシ−11−カルボキシ−13,13−ジメチル−3H、13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xviii)3−(4−モルホリノフェニル)−3−フェニル−6,7−ジメトキシ−11−メトキシカルボニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xix)3−(4−モルホリノフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−フルオロフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xx)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−シアノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xxi)3−(4−モルホリノフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−11−(2−フェニルエチニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xxii)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−ジメチルアミノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xxiii)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−(4−メトキシフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xxiv)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−11−フェニル−13−ブチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xxv)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−11−フェニル−13−ブチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xxvi)3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−11−シアノ−13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xxvii)3−(4−モルホリノフェニル)−3−フェニル−6−メトキシ−7−(3−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシメチレンピペリジノ−1−イル)−11−フェニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;(xxviii)3−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルエトキシ)フェニル)−3−フェニル−6,7−ジメトキシ−11−フェニル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;及びそれらの混合物から選択される、請求項35に記載のフォトクロミック材料。
【請求項41】
320nm〜390nmの範囲の電磁放射の大部分を遮蔽する基材の裏側での使用に適した光学素子であって、該光学素子は、フォトクロミック材料を含み、該フォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランと、該インデノ縮合ナフトピランの11位に結合する該インデノ縮合ナフトピランのπ共役系を広げる基とを含み、該基は、該光学素子の少なくとも一部に結合しており、該光学素子の少なくとも一部が、320nm〜390nmの範囲の電磁放射の大部分を遮蔽する該基材を透過する、390nmを超える波長の電磁放射を十分な量吸収して、該光学素子の少なくとも一部が第一状態から第二状態へと変化する、光学素子。
【請求項42】
320nm〜390nmの範囲の電磁放射の大部分を遮蔽する前記基材が風防であり、前記光学素子の第一状態が消色状態であり、前記光学素子の第二状態が着色状態である、請求項40に記載の光学素子。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−535971(P2008−535971A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505302(P2008−505302)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/006016
【国際公開番号】WO2006/110221
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】