説明

広告システムおよび方法

【課題】略同一のエリア内の複数のユーザの属性に応じて、複数のユーザに向けた広告を行う。
【解決手段】広告システム10は、ユーザの属性を表すユーザ属性情報を複数のユーザについてそれぞれ記憶する属性情報記憶部と、広告媒体の広告範囲を表すエリア情報を記憶するエリア情報記憶部とを備えている。広告システム10は、複数のユーザの位置情報を取得し、この位置情報と前記エリア情報とに基づいて、そのエリア情報が示す広告範囲内に位置情報が含まれるユーザを複数特定する。そして、このように特定された複数のユーザの少なくとも一部に共通するユーザ属性情報を、属性情報記憶部を参照して特定し、そのユーザ属性情報に応じた広告情報を、広告媒体に表示する広告情報として特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの属性に応じて広告を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザの現在位置や、年齢、性別等の属性に応じて、ユーザの携帯電話やパーソナルコンピュータに広告を配信する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ユーザが1人の時には、そのユーザ自身の属性情報に基づく趣味・趣向に合ったコンテンツ情報を配信し、ユーザが同伴者と共にいる場合には、そのユーザに対して、同伴者の趣味・趣向に合ったコンテンツ情報を配信するコンテンツ配信システムが開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載のシステムでは、予めユーザの属性情報に、同伴者の候補を登録する必要があった。そのため、同伴者の候補がユーザの属性情報に登録されていない場合には、仮に、家族や友人等の同伴者がユーザと略同一のエリアに存在する場合であっても、その同伴者の趣味や趣向を勘案した広告を配信することができなかった。また、特許文献1に記載の技術では、ユーザに対しては同伴者に応じたコンテンツ情報が配信されるが、その同伴者に対してはそのコンテンツ情報は配信されなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−34743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、略同一のエリア内の複数のユーザの属性に応じて、複数のユーザに向けた広告を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]広告媒体に広告情報を表示して広告を行う広告システムであって、ユーザの属性を表すユーザ属性情報を複数のユーザについてそれぞれ記憶する属性情報記憶部と、前記広告媒体の広告範囲を表すエリア情報を記憶するエリア情報記憶部と、複数のユーザの位置情報を取得する位置情報取得部と、前記エリア情報と前記位置情報とに基づいて、前記エリア情報が示す広告範囲内に前記位置情報が含まれるユーザを複数特定するユーザ特定部と、前記特定された複数のユーザの少なくとも一部に共通する前記ユーザ属性情報を、前記属性情報記憶部を参照して特定する属性情報特定部と、前記特定されたユーザ属性情報に応じた広告情報を、前記広告媒体に表示する広告情報として特定する広告情報特定部とを備える広告システム。
【0008】
このような構成の広告システムでは、広告媒体の広告範囲内に位置情報が含まれる複数のユーザの属性情報に応じた広告情報を、その広告媒体に表示する広告情報として特定する。そのため、略同一のエリア内の複数のユーザの属性に応じて、複数のユーザに向けた広告を行うことが可能になる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の広告システムであって、前記広告情報と、該広告情報のターゲットとなるユーザの前記ユーザ属性情報とを対応付けて記憶する広告情報記憶部を備え、前記広告情報特定部は、前記属性情報特定部によって特定されたユーザ属性情報に応じた広告情報を前記広告情報記憶部から検索し、該検索された広告情報を、前記広告媒体に表示する広告情報として特定する広告システム。このような構成であれば、略同一のエリア内に存在する複数のユーザの属性に応じた広告を、広告情報記憶部に予め記憶された広告情報の中から検索して表示することができる。
【0010】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の広告システムであって、前記位置情報取得部は、前記複数のユーザの現在位置を前記位置情報として取得するものであり、前記ユーザ特定部は、前記現在位置と前記エリア情報とに基づき、前記特定を行う複数のユーザとして、前記エリア情報が示す広告範囲内に現在存在するユーザを複数特定する広告システム。このような構成であれば、広告媒体の広告範囲内にリアルタイムに存在するユーザに向けた広告を行うことができる。
【0011】
[適用例4]適用例1または適用例2に記載の広告システムであって、更に、前記位置情報取得部が取得した位置情報を記憶する移動履歴記憶部を備え、前記ユーザ特定部は、前記移動履歴記憶部に記憶された位置情報と前記エリア情報と基づき、前記特定を行う複数のユーザとして、前記エリア情報が示す広告範囲内に過去に存在したユーザを複数特定する広告システム。このような構成であれば、広告媒体の広告範囲内に過去に存在したユーザの属性を反映させた広告を行うことができる。
【0012】
本発明は、上述した広告システムとしての構成のほか、広告方法や、コンピュータプログラムとしても構成することができる。コンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例としての広告システム10の概略構成を示す説明図である。
【図2】移動履歴データベース241のデータ構造を示す図である。
【図3】エリア情報データベース243のデータ構造を示す図である。
【図4】ユーザ属性データベース242のデータ構造を示す図である。
【図5】広告データベース244のデータ構造を示す図である。
【図6】広告配信処理のフローチャートである。
【図7】属性情報生成処理のフローチャートである。
【図8】移動場所データベース245のデータ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.広告システムの概略構成:
B.広告配信処理:
C.属性情報生成処理:
【0015】
A.広告システムの概略構成:
図1は、本発明の実施例としての広告システム10の概略構成を示す説明図である。図1に示すように、本実施例の広告システム10は、測位機能を有する複数の携帯電話100と、携帯電話100から送信された位置データに基づいて、配信を行う広告の内容を特定するサーバ装置200と、サーバ装置200から配信された広告情報を表示する広告媒体としての表示装置300とから構成されている。携帯電話100は、複数のユーザにそれぞれ携帯されて種々の場所に持ち運ばれる。広告システム10を構成するこれらの装置は、インターネットや携帯電話網等からなる通信ネットワークNTによって相互に接続されている。なお、本実施例では、サーバ装置200は、携帯電話100から位置データを受信するが、GPS等を用いた測位機能を有し、通信ネットワークNTを介した通信が可能な装置であれば、携帯電話100以外にも、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)、PND(Personal Navigation Device)、カーナビゲーションシステム、ゲーム機等から位置データを取得してもよい。本実施例では、携帯電話100から位置データを受信する場合について詳細に説明する。
【0016】
図1には、表示装置300として、ビル等の外壁に設置される大型のモニタを示している。広告システム10には、このような大型モニタ以外にも、様々な形態の表示装置300が接続可能である。広告システム10に接続可能な表示装置300としては、例えば、列車内の客室に設置されるモニタや、街頭や店頭、店舗内等に設置されるモニタなどが挙げられる。これらの表示装置300にはコンピュータが接続されており、このコンピュータが、通信ネットワークNT経由でサーバ装置200から種々の広告情報を受信することで、その広告情報が表示装置300に表示される。
【0017】
携帯電話100は、GPS回路110と、無線通信回路120と、CPUやRAM、ROM等からなる制御マイコン130と、液晶モニタ140と、を備えている。GPS回路110は、GPS(Global Positioning System/全地球測位システム)を構成する人工衛星から電波を受信して携帯電話100の存在する現在位置を逐次測位する。制御マイコン130は、GPS回路110によって測位された現在位置を表す位置データを、無線通信回路120を介してサーバ装置200に送信する。この位置データには、GPS回路110によって測位された経緯度を表す経緯度データと、その経緯度が測位された時刻と、各携帯電話100に割り振られた固有のID(本実施例では、電話番号)と、その携帯電話100を所有するユーザのユーザIDとが含まれる。もちろん、携帯電話100は、上述した回路以外にも、音声通話やデータ通信を行うための回路を備えている。なお、本実施例では、携帯電話100の固有のIDとして、その携帯電話100の電話番号を用いるが、各携帯電話100を識別可能であれば、携帯電話100の製造番号やメールアドレスなど種々の情報を固有のIDとして用いてもよい。
【0018】
サーバ装置200は、CPU210と、RAM220と、通信ネットワークNTに対する通信を制御する通信インターフェース230と、制御プログラムや種々のデータベースを記憶するハードディスク240とを備えている。ハードディスク240には、データベースとして、移動履歴データベース241と、ユーザ属性データベース242と、エリア情報データベース243と、広告データベース244とが記憶されている。CPU210は、ハードディスク240に記憶された制御プログラムをRAM220にロードして実行することにより、図示する位置情報取得部211や、ユーザ特定部212、属性情報特定部213、広告情報特定部214、広告情報配信部215、として機能する。
【0019】
位置情報取得部211は、通信インターフェース230を介して携帯電話100から位置データを受信し、この位置データに含まれる経緯度データを、図2に示す移動履歴データベース241に記録する。
【0020】
図2は、移動履歴データベース241のデータ構造を示す図である。図2に示すように、移動履歴データベース241には、ユーザIDおよび電話番号ごとに、その携帯電話の現在位置を示す経緯度データが時系列的に記録されている。位置情報取得部211は、通信インターフェース230を介して携帯電話100から位置データを受信すると、受信した位置データに含まれる経緯度データを、位置データに含まれる時間情報に対応づけて、位置データに含まれる電話番号およびユーザIDごとに移動履歴データベース241に記録する。なお、本実施例では、経緯度データを、受信した位置データに含まれる時間情報に対応づけて移動履歴データベース241に記録しているが、サーバ装置200が位置データを受信した時刻に対応付けて記録することとしてもよい。また、移動履歴データベース241に記録したデータは、記録から一定期間(例えば、1年)経過したものから消去していくこととしてもよい。
【0021】
ユーザ特定部212は、図2に示した移動履歴データベース241と、図3に示すエリア情報データベース243とを参照し、表示装置300の広告範囲内に存在するユーザを特定する。
【0022】
図3は、エリア情報データベース243のデータ構造を示す図である。図3に示すように、エリア情報データベース243には、表示装置300を一意に示す表示装置IDと、その表示装置300によって広告が可能なエリア、すなわち、その表示装置300を視聴可能な位置範囲を示すエリアデータが記録されている。ユーザ特定部212は、エリアデータと移動履歴データベース241に記録された各ユーザの経緯度とを比較することで、表示装置毎に、その広告範囲内に存在するユーザを特定する。
【0023】
なお、表示装置300が、列車等の乗り物に設けられている場合には、エリアデータとして、その乗り物の位置(厳密には、その乗り物に設けられている表示装置300の位置)を基準とする相対的な位置範囲が記録されていてもよい。この場合、ユーザ特定部212は、乗り物の位置を、路線図データや時刻表データ、あるはGPSによって検出し、その乗り物の位置に、エリア情報データベース243に記録されたエリアを加算した範囲から、ユーザの検出を行う。
【0024】
属性情報特定部213は、ユーザ属性データベース242を参照して、ユーザ特定部212によって特定されたユーザに対応付けられた属性情報を検索し、検索された属性情報の中から各ユーザに共通する属性を特定する。
【0025】
図4は、ユーザ属性データベース242のデータ構造を示す図である。図示するように、ユーザ属性データベース242には、ユーザ毎に固有のユーザIDが割り振られ、そのユーザID毎に、ユーザの電話番号、メールアドレス、性別、年齢層、職業、趣味、家族構成、収入、自宅位置、勤務先、がユーザの属性として記録される。図4に示した各ユーザ属性情報は、サーバ装置200が携帯電話100から位置データを受信することで自動的に生成することが可能である。このユーザ属性情報の生成方法の詳細は後述する。なお、携帯電話100を識別するための固有のIDとして、携帯電話100の製造番号を用いる場合には、ユーザの電話番号に替えて(あるいは加えて)、その製造番号をユーザ属性データベース242に登録してもよい。また、携帯電話100を識別するための固有のIDとして、メールアドレスを用いる場合には、ユーザの電話番号は、ユーザ属性データベース242から省略してもよい。
【0026】
広告情報特定部214は、属性情報特定部213によって特定された属性に合致する広告情報を広告データベース244から検索し、検索された広告情報を表示装置300に配信する広告として特定する。
【0027】
図5は、広告データベース244のデータ構造を示す図である。図示するように、広告データベース244には、広告データ毎に固有の広告IDが割り振られ、その広告データ毎に、性別、年齢層、職業、趣味、家族構成、収入、自宅位置、勤務先、がターゲット情報(広告対象とするユーザの属性)として記録されている。また、ターゲット情報に加えて、そのターゲット向けに配信する広告内容を表す広告情報の格納位置が記録されている。各広告情報は、その広告情報の配信を希望する事業者によって予め広告データベース244に登録されている。広告情報は、文字情報や画像情報、映像情報、音声情報など、種々の形式によって表すことが可能である。広告情報特定部214は、属性情報特定部213によって特定された属性情報と、広告データベース244に記録されたターゲット情報とを対比して、属性情報特定部213によって特定された属性をターゲット情報として含む広告を検索する。
【0028】
なお、本実施例では、上述のように広告データベース244から検索された広告情報を表示装置300に配信するが、属性情報特定部213によって特定された属性に関連する情報を、他のデータベースから検索して表示装置300に配信してもよい。例えば、属性情報特定部213によって、複数のユーザに共通する好きなミュージシャンが特定されれば、そのミュージシャンに関連するイベントやコンサートの日程等をレコード会社等が提供するサイトから取得して、その情報を広告情報として配信してもよい。もちろん、このような情報が広告データベース244に直接登録されていてもよい。
【0029】
広告情報配信部215は、広告情報特定部214が特定した広告データの広告情報を、表示装置300に配信する。広告情報特定部214が複数の広告情報を特定した場合には、所定の時間間隔で、各広告情報を順番に配信する。
【0030】
B.広告配信処理:
続いて、サーバ装置200によって実行される広告配信処理について説明する。
図6は、広告配信処理のフローチャートである。この広告配信処理は、所定の時間間隔(例えば、1時間おき)で実行される処理である。この広告配信処理が実行されると、まず、サーバ装置200のCPU210は、広告の配信先である表示装置300のID(図3参照)を特定する(ステップS100)。本実施例では、表示装置IDを「1」から昇順に特定する。
【0031】
広告の配信先である表示装置300のIDを特定すると、CPU210は、その表示装置IDに対応するエリアデータを、エリア情報データベース243(図3参照)から読み出す(ステップS102)。そして、CPU210のユーザ特定部212は、移動履歴データベース241(図2参照)を参照して、ステップS102で読み出したエリアデータが表すエリア内に最新の経緯度が含まれるユーザのユーザIDを特定する(ステップS104)。このステップS104の処理によって、広告の配信先の表示装置300の広告範囲に現在位置が存在するユーザが特定されることになる。
【0032】
表示装置300の広告範囲内に存在するユーザを特定すると、CPU210の属性情報特定部213は、特定された各ユーザのユーザIDに対応する属性情報をユーザ属性データベース242(図4参照)から読み出す(ステップS106)。そして、各ユーザに最も多く共通する属性を特定する(ステップS108)。例えば、ステップS104で特定されたユーザの中で、ユーザ属性データベース242内に、「会社員」という属性が記録されているユーザが最も多ければ、ステップS108では、「会社員」という属性が特定される。なお、ここで特定される属性は1つだけに限られず、複数の属性を特定してもよい。例えば、共通した属性を有するユーザの数が上位2番目や3番目までの属性が特定されてもよい。その他にも、ステップS104で特定されたユーザの中で、所定の閾値以上の人数、例えば、所定の人数(例えば、10人)や、所定の割合(例えば、50%)以上の人数に共通する属性を特定してもよい。
【0033】
各ユーザに共通する属性を特定すると、続いて、CPU210の広告情報特定部214は、広告データベース244(図5参照)を参照して、ステップS108で特定された属性を含むターゲット情報を有する広告データを検索する(ステップS110)。こうして、広告データベース244から、広告データを検索すると、CPU210の広告情報配信部215は、検索された広告データに含まれる広告情報をステップS100において特定した表示装置300に対して送信する(ステップS112)。最後に、CPU210は、エリア情報データベース243を参照して、他の表示装置IDがエリア情報データベース243に登録されているかを判断し(ステップS114)、他の表示装置IDが登録されていれば、処理をステップS100に戻して、他の表示装置IDついて上述した一連の処理を繰り返す。他の表示装置IDが登録されていなければ、当該広告配信処理を終了する。
【0034】
以上、本実施例の広告システム10の構成および処理内容について説明した。本実施例の広告システム10では、表示装置300毎に予め定められたエリア(広告範囲)内に存在する複数のユーザに共通する属性が特定され、その複数のユーザに共通する属性に応じた広告情報が各表示装置300に対して配信される。そのため、表示装置300付近に存在する集団の嗜好や特徴、特性、性質に適した広告が表示装置300に表示されることになる。しかも、本実施例では、表示装置300付近にリアルタイムに現在位置が存在するユーザの属性を広告の特定に反映させる。そのため、その表示装置300付近に正に現在存在するユーザに適した広告が表示装置300によって表示されることになる。
【0035】
なお、本実施例では、上述のように、表示装置300付近にリアルタイムに現在位置が存在する複数のユーザの属性を広告の特定に反映させることとした。しかし、表示装置300付近に過去に存在した複数のユーザの属性を広告の特定に反映させてもよい。具体的には、図6に示した広告配信処理のフローチャートのステップS104において、移動履歴データベース241を参照して、過去にそのエリア内に存在したユーザを所定期間(例えば、1ヶ月)に遡って特定し、こうして特定された各ユーザに共通する属性を広告の特定に反映させる。こうすることで、その表示装置300付近に訪れるユーザの傾向を統計的に反映させた広告を表示することが可能になる。また、時間帯別に、そのエリア内に存在するユーザの属性を特定してもよい。このようにすることで、広告の配信を行う時間帯に応じた広告を配信することが可能になる。
【0036】
C.属性情報生成処理:
最後に、図4に示したユーザ属性情報を自動的に生成する処理について説明する。
図7は、サーバ装置200が実行する属性情報生成処理のフローチャートである。この属性情報生成処理は、サーバ装置200が携帯電話100から受信した位置データに基づいて、ユーザの属性情報を生成するための処理である。この属性情報生成処理が実行されると、まず、サーバ装置200のCPU210は、ユーザ属性情報を生成する対象のユーザIDを特定する(ステップS200)。ユーザIDを特定すると、CPU210は、そのユーザIDに対応する移動履歴のデータを、過去1ヶ月分、移動履歴データベース241から読み込む(ステップS202)。
【0037】
移動履歴のデータを移動履歴データベース241から読み込むと、CPU210は、読み込んだ1ヶ月分の移動履歴から、ユーザが移動した移動場所をその移動日時とともに1ヶ月分特定する(ステップS204)。この処理において、CPU210は、図8に示す移動場所データベース245に記録された各移動場所の存在位置(範囲)と、移動履歴として記録されたユーザの経緯度とを対比して、ユーザの移動場所の特定を行う。
【0038】
図8は、移動場所データベース245のデータ構造を示す図である。図8に示すように、移動場所データベース245には、店舗や建物、会社、施設、観光地、などの種々の場所(移動場所)ごとに、その場所の属性を表す情報(以下、「移動場所情報」という)が記録されている。各移動場所には、少なくとも、対象とするユーザの性別と年齢、および、その場所の存在位置に関する情報が記録されている。例えば、移動場所が店舗であれば、図7に示すように、店舗の名称や種別(衣料品店や飲食店など)、対象とする客の性別、利用者の年齢層、客単価、営業時間、その店舗の存在位置(経緯度の範囲)などが記録され、移動場所が会社であれば、その会社名、ジャンル(一般企業や官公庁などの種別)、従業員の性別(多くの場合は、男女)、平均年齢、平均年収、勤務時間、その会社の存在位置などが記録されている。また、移動場所が観光地やレジャー施設であれば、その名称、種別(例えば、山、ゴルフ場、キャンプ場、海水浴場など)、利用者の性別、利用者の年齢層、営業時間、存在位置などが記録されている。この移動場所データベース245は、予めサーバ装置200のハードディスク240に記憶されている。
【0039】
上記ステップS204によって移動場所の特定が終了すると、CPU210は、移動場所データベース245を参照して、ステップS204で特定された各移動場所に対応付けられた性別情報(図8参照)を読み込み、この性別情報に基づいて、ユーザの性別を特定する(ステップS206)。このとき、CPU210は、各移動場所に対応付けられた性別情報を、男性、女性別に集計し、集計された数の多い方の性別を統計的に求めてユーザの性別として特定する。なお、例えば、性別情報として「男性」あるいは「女性」と対応付けられた場所を利用したことが移動履歴から判別された場合には、性別情報の集計を行うことなく、その場所に対応付けられた性別を、ユーザの性別として特定してもよい。また、例えば、ユーザが、理容店に行ったことが移動履歴から判別されれば、性別を「男性」と特定することも可能である。
【0040】
性別の特定を終えると、CPU210は、ユーザの勤務先(あるいは通学先)と職業と収入とを特定する(ステップS208)。具体的には、CPU210は、平日(月〜金)の日中(10時〜17時)のユーザの移動場所を、そのユーザの勤務先であるとみなし、その勤務先が移動場所情報に一般企業と登録されていれば会社員、官公庁と登録されていれば公務員などとその職業を特定する。このとき、例えば、勤務先が病院であれば医師、看護師、医療事務員などと、法律事務所であれば弁護士、法律事務員などと職業を特定することも可能である。また、職業の特定の際に、その特定の正確性を向上させるため、複数の移動場所に基づいて職業を特定してもよい。例えば、学校に移動した後に長時間その学校に滞在し、その後、自宅に帰宅し、更に塾に移動すれば「学生(生徒)」と特定することができる。また、学校に移動した後に職員室に長く留まり、その後に、各種店舗に移動すれば、「教師」と特定することができる。つまり、最初の移動場所において、大まかな職業を特定しておき(前述の例では、例えば、「学校関係者」)、続いて移動した移動場所によって、詳細な職業(前述の例では、教師または学生)を特定することが可能である。大まかな職業と詳細な職業とは予めその対応関係をテーブルに登録しておく。こうすることで、前述のような複数の移動場所に基づく多段階の職業の特定処理が可能になる。
【0041】
CPU210は、本実施例では、移動場所データベース245に記録されている平均年収をユーザの収入として特定する。このとき、ユーザの勤務先とみなした移動場所に収入が対応付けられていない場合には、収入の特定は省略することとする。なお、CPU210は、各種店舗に対応付けられた客単価に基づき、ユーザの収入を推定してもよい。例えば、ユーザが1ヶ月間に利用した店舗の平均客単価と収入との対応関係を示すテーブルを用意しておき、このテーブルを参照することで、例えば、そのユーザが1ヶ月間に利用した店舗の平均客単価が1万円であれば、そのユーザの月収は30万円程度であると特定することが可能である。
【0042】
職業および収入を特定すると、続いて、CPU210は、休日(土、日)の日中(10時〜17時)のユーザの移動場所に対応する移動場所情報に基づいて、ユーザの趣味を特定する(ステップS210)。例えば、休日の日中に、ゴルフ場やゴルフショップにユーザが移動していれば、趣味を「ゴルフ」と特定する。また、移動場所が、デパートや各種店舗であれば、趣味を「ショッピング」と特定する。その他にも、例えば、移動場所が映画館であれば「映画鑑賞」、コンサート会場であれば、「音楽鑑賞」、釣り具店や海、川などであれば、「釣り」などと特定することができる。趣味の特定は1種類に限られず、1人のユーザに対して複数の趣味を特定してもよい。また、趣味の特定の正確性を向上させるため、複数の移動場所に基づいて趣味を特定してもよい。例えば、コンサート会場だけではなく、レコード店やオーディオ店に移動した履歴があった場合に、趣味を「音楽鑑賞」と特定することができる。また、映画館だけではなく、レンタルビデオ店等に移動した履歴があった場合に、趣味を「映画鑑賞」と特定することができる。
【0043】
CPU210は、ユーザの趣味を特定すると、続いて、平日の夜間位置および休日の移動場所に基づいて、ユーザの家族構成を特定する(ステップS212)。具体的には、CPU210は、平日の夜間(22時〜5時)において、現在位置がほぼ同一(例えば、10m四方内)となるユーザのユーザIDを、移動履歴データベース241から検索し、検索されたユーザの数を、そのユーザの家族の人数として特定する。このとき、検索された他のユーザのユーザIDも特定し、ユーザ属性情報に含ませる。このステップS212の処理によれば、同じ家族として特定された各ユーザには、共通した家族構成の情報(ユーザIDや人数)がユーザ属性情報に記録されることになる。CPU210は、更に、休日の移動場所に、子供向け店舗(例えば、子供向け衣料品店)や子供向け施設(例えば、児童館や子供向けの公園)が含まれている場合に、そのユーザに子供がいると特定する。このように、休日の移動場所に基づいて家族構成を解析すれば、携帯電話100が与えられていない子供の有無までも特定することができる。
【0044】
CPU210は、ユーザの家族構成を特定すると、続いて、平日(月〜金)の夜間(22時〜5時)のユーザの現在位置を、ユーザの自宅の位置として特定する(ステップS214)。最後に、CPU210は、上述したステップS206〜S214において特定した情報をユーザ属性データベース242に記録する。以上で説明した一連の処理により、属性情報生成処理は終了し、ユーザ属性情報が自動的に生成されることになる。なお、上述したステップS206〜S214の処理の実行順序は任意であり、他の順序で実行してもよい。なお、本実施例では、過去1ヶ月分の移動履歴に基づいて、ユーザの属性情報を生成するが、この期間は任意であり、これよりも長い期間や短い期間に基づいて生成してもよい。
【0045】
以上で説明した属性情報生成処理が実行されることによって、ユーザの属性情報が、そのユーザの移動履歴に基づいて自動的に生成される。そのため、ユーザに負担を掛けることなく、ユーザの属性情報を生成することができる。この結果、ユーザや広告システム10を運営する事業者が特別な登録作業などを行うことなく、そのユーザに適した広告を配信することが可能になる。なお、上述した属性情報生成処理は、定期的(例えば、1ヶ月間隔)に実行してもよい。このように、定期的に属性情報生成処理を実行すれば、ユーザの属性情報を定期的に最新の情報に更新することができるので、例えば、引っ越し、転職、結婚、出産などの要因によってユーザの行動範囲が変動する場合であっても、自動的にその変動によるユーザの属性情報の変化をユーザ属性データベース242に反映させることができる。
【0046】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェアによって実現するものとしてもよい。また、上記実施例では、画像や映像を表示する表示装置300に対して広告を配信することとしたが、街頭や建物内に設置されたスピーカによって音声を再生する音声再生装置に、音声データによって表された広告を配信することとしてもよい。また、広告を行う媒体は表示装置や音声再生装置に限られず、コンピュータや携帯電話の表示画面でもよい。また、例えば、ユーザの過去の移動履歴に応じて広告する内容を決定するのであれば、広告情報特定部214によって特定された広告情報を、看板やチラシ、張り紙、のぼり、街頭で配布されるティッシュペーパー、などの非電子的手段によって広告することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…広告システム
100…携帯電話
110…GPS回路
120…無線通信回路
130…制御マイコン
140…液晶モニタ
200…サーバ装置
210…CPU
211…位置情報取得部
212…ユーザ特定部
213…属性情報特定部
214…広告情報特定部
215…広告情報配信部
220…RAM
230…通信インターフェース
240…ハードディスク
241…移動履歴データベース
242…ユーザ属性データベース
243…エリア情報データベース
244…広告データベース
245…移動場所データベース
300…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広告媒体に広告情報を表示して広告を行う広告システムであって、
ユーザの属性を表すユーザ属性情報を複数のユーザについてそれぞれ記憶する属性情報記憶部と、
前記広告媒体の広告範囲を表すエリア情報を記憶するエリア情報記憶部と、
複数のユーザの位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記エリア情報と前記位置情報とに基づいて、前記エリア情報が示す広告範囲内に前記位置情報が含まれるユーザを複数特定するユーザ特定部と、
前記特定された複数のユーザの少なくとも一部に共通する前記ユーザ属性情報を、前記属性情報記憶部を参照して特定する属性情報特定部と、
前記特定されたユーザ属性情報に応じた広告情報を、前記広告媒体に表示する広告情報として特定する広告情報特定部と
を備える広告システム。
【請求項2】
請求項1に記載の広告システムであって、
前記広告情報と、該広告情報のターゲットとなるユーザの前記ユーザ属性情報とを対応付けて記憶する広告情報記憶部を備え、
前記広告情報特定部は、前記属性情報特定部によって特定されたユーザ属性情報に応じた広告情報を前記広告情報記憶部から検索し、該検索された広告情報を、前記広告媒体に表示する広告情報として特定する
広告システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の広告システムであって、
前記位置情報取得部は、前記複数のユーザの現在位置を前記位置情報として取得するものであり、
前記ユーザ特定部は、前記現在位置と前記エリア情報とに基づき、前記特定を行う複数のユーザとして、前記エリア情報が示す広告範囲内に現在存在するユーザを複数特定する
広告システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の広告システムであって、
更に、前記位置情報取得部が取得した位置情報を記憶する移動履歴記憶部を備え、
前記ユーザ特定部は、前記移動履歴記憶部に記憶された位置情報と前記エリア情報と基づき、前記特定を行う複数のユーザとして、前記エリア情報が示す広告範囲内に過去に存在したユーザを複数特定する
広告システム。
【請求項5】
コンピュータが広告媒体に表示する広告情報を特定する方法であって、
コンピュータが、複数のユーザの位置情報を取得する位置情報取得工程と、
コンピュータが、前記広告媒体の広告範囲を表すエリア情報を記憶するエリア情報記憶部を参照し、該エリア情報記憶部に記憶された前記エリア情報と前記位置情報とに基づいて、前記エリア情報が示す広告範囲内に前記位置情報が含まれるユーザを複数特定するユーザ特定工程と、
コンピュータが、ユーザの属性を表すユーザ属性情報を複数のユーザについてそれぞれ記憶する属性情報記憶部を参照して、前記特定された複数のユーザの少なくとも一部に共通する前記ユーザ属性情報を特定するユーザ属性情報特定工程と、
コンピュータが、前記特定されたユーザ属性情報に応じた広告情報を、前記広告媒体に表示する広告情報として特定する広告情報特定工程と
を含む方法。
【請求項6】
コンピュータが広告媒体に表示する広告情報を特定するためのコンピュータプログラムであって、
複数のユーザの位置情報を取得する位置情報取得機能と、
前記広告媒体の広告範囲を表すエリア情報を記憶するエリア情報記憶部を参照し、該エリア情報記憶部に記憶された前記エリア情報と前記位置情報とに基づいて、前記エリア情報が示す広告範囲内に前記位置情報が含まれるユーザを複数特定するユーザ特定機能と、
ユーザの属性を表すユーザ属性情報を複数のユーザについてそれぞれ記憶する属性情報記憶部を参照して、前記特定された複数のユーザの少なくとも一部に共通する前記ユーザ属性情報を特定するユーザ属性情報特定機能と、
前記特定されたユーザ属性情報に応じた広告情報を、前記広告媒体に表示する広告情報として特定する広告情報特定機能と
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−237305(P2010−237305A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83097(P2009−83097)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】