説明

広告処理装置及び方法

【課題】商業的価値が高い広告の引き当てを促進すること。
【解決手段】キーワードに対応する広告の評価値からキーワード評価値を算出し、それによりキーワードを選択の段階で絞り込むことにより、商業的価値を表す評価値の高い広告同士の競争で配信対象が選択されるので、商業的価値が高い広告の引き当てが促進できる。配信できない状態の広告をキーワード評価値算出の基礎から除くことにより、実際は引き当てられない広告の評価値の影響でキーワード評価値が過大評価されて他のキーワードに対応する商業的価値が高い広告の引き当てが妨げられる事態が回避できるので、商業的価値が高い広告の引き当てをより一層確実に促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネット広告に関する。
【背景技術】
【0002】
経済活動において、扱う対象をより商業的価値が高いものとすることは、より多くの社会的価値を生み出すために重要である。ウェブページに表示するインターネット広告についても、よりユーザの関心を惹くもの、広告主がより高い広告料を負担しても発信したいものを対象とすることは重要である。
【0003】
これに沿ったインターネット広告の一類型として、広告主がキーワードを指定して広告単価を入札しておき、ウェブページの内容(「コンテンツ」とも呼ぶ)の特徴を表すキーワードすなわちコンテンツとの関連度が高いキーワードを指定している広告を表示するものがあり(例えば、非特許文献1及び特許文献1参照)、リスティング広告やキーワード広告などの語がよく用いられる。
【0004】
この種の広告において、ウェブページに挿入する広告の選択(「引き当て」とも呼ばれる)は二段階からなる。第一段階はキーワードの取得で、すなわち、コンテンツに対し関連度が高く特徴をよく表しているキーワードを、tf-idfに代表される言語処理技術などで所定数選ぶ。第二段階は広告の選択で、具体的には、第一段階で選択されたうちの所定数のキーワードに関連するものについて、入札している広告から所定の評価値が高いものを所定数だけ、表示対象として選択する。
【0005】
ここで、キーワードの選択としては、例えば、コンテンツとの適合度の高い順に複数でもよいし、適合度の高い順に取得した例えば50個から、ランダムに数個ピックアップするなどが考えられる。また、上記の評価値は、広告ごとの商業的価値を表す指標で、その典型は、広告ごとに入札額とクリック率を掛けたeCPM(effective Cost Per Mill)である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ヤフー株式会社、「Yahoo!リスティング広告」、[online]、[2011年3月2日検索]、インターネット〈URL: http://listing.yahoo.co.jp/>
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−286833号
【特許文献2】特許第4431058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような従来技術では、キーワードを取得する第一段階では、コンテンツとの関連度だけが基準であり、そのキーワードに対応して評価値の高い広告があるかは考慮されていなかった。このため、コンテンツと関連度が高いキーワードでも、それに対応する広告の評価値が総じて低ければ、第二段階の広告選択は評価値が低い候補同士の競争となる一方、同じウェブページについて、評価値がより高い広告で指定されている他のキーワードがそのウェブページについて存在しても、広告選択のために第二段階でキーワードとして選択されない場合もあるため、従来では、必ずしも商業的価値の高い広告が引き当てられないという問題があった。
【0009】
上記の課題に対し、本発明の目的は、商業的価値が高い広告の引き当てを促進することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的をふまえ、本発明の一態様(1)は、キーワードと対応付けられている広告から、コンテンツに合わせて配信する広告を選択する広告処理装置において、前記コンテンツに対応するキーワード候補を取得するキーワード取得手段と、取得された前記キーワード候補ごとに、対応する前記広告の入札に係る評価値である入札評価値に基づいて所定のキーワード評価値を算出するキーワード評価手段と、算出された前記キーワード評価値に基づいて前記キーワード候補の一部をキーワードとして選出するキーワード選出手段と、選出された前記キーワードに対応する前記広告から、広告の表示結果に係る評価値である結果評価値に基づいて、配信対象とする広告を選択する広告引当手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様(4)は、上記態様を方法のカテゴリで捉えたもので、コンピュータが、キーワードと対応付けられている広告から、コンテンツに合わせて配信する広告を選択する広告処理方法において、前記コンテンツに対応するキーワード候補を取得するキーワード取得処理と、取得された前記キーワード候補ごとに、対応する前記広告の入札に係る評価値である入札評価値に基づいて所定のキーワード評価値を算出するキーワード評価処理と、算出された前記キーワード評価値に基づいて前記キーワード候補の一部をキーワードとして選出するキーワード選出処理と、選出された前記キーワードに対応する前記広告から、広告の表示結果に係る評価値である結果評価値に基づいて、配信対象とする広告を選択する広告引当処理と、を含むことを特徴とする。
【0012】
このように、キーワードごとに対応する広告の入札状況を反映したキーワード評価値を算出し、それによりキーワードを選択の段階で絞り込むことにより、商業的価値を表す評価値の高い広告同士の競争で配信対象が選択されるので、商業的価値が高い広告の引き当てが促進できる。
【0013】
本発明の他の態様(2)は、上記いずれかの態様において、前記広告について、配信停止の指示を受け付ける手段と、予め設定された広告料の予算残高について更新を含む処理を行う手段と、を有し、前記キーワード評価手段は、前記配信停止が指示されている広告、前記広告料の予算残高が尽きている広告の少なくとも一方について、前記キーワード評価値の算出の基礎から排除することを特徴とする。
【0014】
このように、配信できない状態の広告をキーワード評価値算出の基礎から除くことにより、実際は引き当てられない広告の評価値の影響でキーワード評価値が過大評価されて他のキーワードに対応する商業的価値が高い広告の引き当てが妨げられる事態が回避できるので、商業的価値が高い広告の引き当てをより一層確実に促進することができる。
【0015】
本発明の他の態様(3)は、上記いずれかの態様において、配信機会を限定する配信条件の設定を受け付けるとともに広告の選択に反映させる手段を有し、前記キーワード評価手段は、前記配信条件が設定されている広告の前記入札評価値については、その限定に係る割合に基づいて前記キーワード評価値の算出に用いることを特徴とする。
【0016】
このように、性別や年代など配信対象者の属性や配信時間帯といった限られた条件下でのみ配信される広告の入札評価値について、その限定に係る割合に基づき、具体的にはその限定に係る割合を乗じてキーワード評価値に反映させることにより、引き当てても配信できない可能性がある広告の入札評価値がキーワード評価値に過大に反映される事態が回避できる。すなわち、限定条件のある広告の入札評価値も実質的な平均期待値の範囲でキーワード評価値に影響するので、キーワード評価値に基づくキーワードの選出が高精度となる。
【0017】
なお、上記の各態様と異なるカテゴリ(装置に対し方法、方法に対しプログラムなど)や、以下に説明するさらに具体的な各態様も本発明に含まれる。上記の各態様と異なるカテゴリについては、「手段」を「処理」又は「ステップ」のように適宜読み替えるものとする。また、処理やステップの実行順序は上記のものに限定されず、適宜変更したりまとめて処理するなど、変更可能である。さらに、方法やプログラムのカテゴリにおいて、個々の処理を実行する「コンピュータ」は共通でもよいし処理ごとに異なってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、商業的価値が高い広告の引き当てを促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【図3】本発明の実施形態におけるデータ(情報)を例示する図。
【図2】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート。
【図4】リスティング広告の画面表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の一例として、本発明を実施するための形態(「実施形態」と呼ぶ)について図に沿って説明する。なお、背景技術や課題などで既に述べた内容と共通の前提事項については適宜省略する。
【0021】
〔1.構成〕
本実施形態は、図1(構成図)に示す広告処理装置1(「本装置」又は「本装置1」とも呼ぶ)に関し、本装置1は、キーワードと対応付けられている広告から、コンテンツに合わせて配信する広告を選択するものであるが、本実施形態では、エンドユーザの端末T1への広告配信の機能まで有するものとする。このような本装置1は、図1に示すように、コンピュータの構成として少なくとも、CPUなどの演算制御部6と、主メモリや補助記憶装置等の記憶装置7と、通信ネットワークN(例えば、インターネット、携帯電話網、PHS網など)との通信手段8(通信ゲートウェイ装置、携帯電話網やPHS網との通信回路、無線LANアダプタなど)と、を有する。
【0022】
また、端末T(T1及びT2)は、据置型PC、モバイルPC、タブレットPC、スマートフォン、携帯電話端末などの電子情報機器で、上記のようなコンピュータの構成に加え、図示は省略するが、液晶表示パネルやタッチパネル、押ボタンなどを用いた入出力部を有する。端末T(T1及びT2)は、図1では少数を模式的に示すが、必要な数を用い、特に、一般のウェブサイト閲覧者などエンドユーザが用いる端末T1はユーザ数に応じた多数を想定する。
【0023】
また、本装置1では、記憶装置7に記憶(インストール)した所定のコンピュータ・プログラムが演算制御部6を制御することで、図1に示す各手段などの要素(20,30など)を実現する。それら各要素のうち、情報の記憶手段は、記憶装置7において各種のデータベース(「DB」とも表す)やファイル、配列等の変数、各種スタックやレジスタ、システム設定値など任意の形式で実現でき、図示や明記しないものを含め、各手段による処理に用いるデータや処理結果などを記憶する。
【0024】
記憶手段のうち、広告等記憶手段15は、広告ごとの情報(「広告データ」と呼ぶ)を記憶している手段であり、記憶されている広告データとしては、図2に例示するように、広告IDで識別される広告ごとに、広告入稿時に指定され広告と対応付けられているキーワードである入札キーワード、配信機会を限定する配信条件、CTR(クリック・スルー・レート:クリック率)、クリックされたときに課金される広告料の単価である入札額(すなわち入札単価)、広告料の予算残高、配信停止中を表す停止フラグ、広告の内容などがある。広告の内容は、ハイパーリンクを伴う文字列広告として表示する文字列(「タイトル」や「ディスクリプション」などと呼ばれる)、そのハイパーリンクのジャンプ先URLなど、任意である。
【0025】
なお、図中の矢印は(例えば図1)、データや制御などの流れについて主要な方向を補助的に示すもので、方向の限定を意味するものではない。例えばデータをある方向に取得するには、先立って逆方向のデータリクエスト送信がある。また、記憶手段以外の各手段は、以下に説明するような情報処理の機能・作用を実現・実行する処理手段であるが、これらは説明のために整理した機能単位であり、実際のハードウェア要素やソフトウェアモジュールとの一致は問わない。
【0026】
〔2.主な作用と効果〕
上記のように構成した本実施形態における本装置1の動作手順を図3のフローチャートに示す。
〔2−1.前提となる広告配信の態様〕
図3のフローチャートの前提として、本実施形態では、ユーザの端末T1にウェブページを配信しようとするウェブサーバWは、配信に先立ってウェブページ内の文字列をコンテンツとして、本装置1のキーワード取得手段20に送信し、それに応じて本装置1の広告配信手段70から送信される広告を、ウェブサーバWがコンテンツのウェブページに組み込んでユーザの端末T1に表示する。
【0027】
〔2−2.キーワード候補の取得〕
上記のような広告を配信する際、本装置1では図3のフローチャートに示すように、まず、ウェブサーバWから送信されたコンテンツに基づいて、キーワード取得手段20が、そのコンテンツに対応するキーワード候補を取得する(ステップS3)。ここで、キーワード候補は、ウェブサーバWから送信されたコンテンツに対し関連度が高く特徴をよく表しているキーワードすなわち特徴語を、tf-idfに代表される言語処理技術などで所定数選んだものが考えられる。但し、ウェブサーバWからコンテンツを本装置1へ送信することは必須ではなく、キーワード候補は、コンテンツに予めウェブサーバWや本装置1において対応付けられた特徴語などでもよい。
【0028】
〔2−3.キーワード評価値の算出〕
そして、キーワード評価手段40が、取得されたキーワード候補ごとに、対応する広告の入札に係る評価値である入札評価値に基づいて、所定のキーワード評価値を算出する(ステップS4)。入札評価値の具体的内容や、キーワード評価値の具体的計算手法は自由であるが、入札評価値は、一又は二以上の広告の入札で少なくとも一部の要素が定まる評価値である。
【0029】
入札評価値の例としては、ある一つの広告が入札されたことをもって「1」とカウントするのでもよいし、一つの広告の入札金額、一群の広告の入札数や平均入札金額などでもよいし、それらと、広告の表示結果に係るCTRなどの評価値との双方を組み合わせて算出するものでもよい。入札評価値をそのままキーワード評価値とすることもできる。
【0030】
例えば、キーワード候補kに対応するキーワード評価値をeCPM(k)、キーワード候補kに対応する広告の平均入札単価をAveBid(k)、キーワード候補kに対応する広告の平均CTRをAveCTR(k)と表すとき、

eCPM(k)=AveBid(k)×AveCTR(k) …第一例

のように計算することが考えられる。この例では、入札評価値である平均入札単価AveBid(k)に、平均CTRであるAveCTR(k)を乗じてキーワード評価値であるeCPM(k)を得ている。
【0031】
他の例として、キーワード候補kに対応するキーワード評価値として所定の選出指標Selection(k)を用いるものとし、上記と同様に平均入札単価をAveBid(k)とし、キーワード候補kに対応して入札されている広告数をListingcount(k)と表すとき、

Selection(k)=AveBid(k)×Listingcount(k) …第二例

のように計算することが考えられる。この例では、それぞれが入札評価値である平均入札単価AveBid(k)と広告数Listingcount(k)とを乗じてキーワード評価値であるSelection(k)を得ている。
【0032】
〔2−4.キーワードの選出〕
次に、キーワード選出手段50が、上記のように算出されたキーワード評価値に基づいてキーワード候補の一部をキーワードとして選出する(ステップS5)。
【0033】
上記の第一例の場合、キーワード評価値eCPM(k)の大きい順にキーワード候補からキーワードを選出することができる。また、個々のキーワードkのキーワード評価値としたeCPM(k)が、全てのキーワード候補(大文字の「K」で表す)のキーワード評価値の合計
【数1】

のなかで占める割合の大きいものを優先して所定の選出数(例えば50、20など)までキーワードを選出してもよい。すなわち、
【数2】

の割合に比例した確率で各キーワードkを所定の選出数に達するまでキーワードとして選出すれば、キーワード評価値が相対的に小さいキーワード候補もキーワードとして選出されるチャンスが確保されるので、広告を取り巻く状況変化や広告の潜在的可能性にも対応する広告の引当てが実現できる。
【0034】
上記の第二例の場合、キーワード評価値である選出指標Selection(k)の大きい順にキーワード候補からキーワードを選出することができる。また、個々のキーワードkの選出指標Selection(k)が、全てのキーワード候補のキーワード評価値の合計
【数3】

のなかで占める割合の大きいものを優先して所定の選出数までキーワードを選出してもよい。すなわち、
【数4】

の割合に比例した確率で各キーワードkを所定の選出数に達するまでキーワードとして選出すれば、キーワード評価値が相対的に小さいキーワード候補もキーワードとして選出されるチャンスが確保されるので、広告を取り巻く状況変化や広告の潜在的可能性にも対応する広告の引当てが実現できる。
【0035】
キーワードの選出に用いるキーワード評価値として、CTRに基づくeCPMを用いる上記第一例(数式1(数1)や数式2(数2))を用いる場合、純粋にeCPMの期待値が高いものを選ぶことになるので、収益が高くなることが期待できる。これに対して入札数を用いる上記第二例(数式3(数3)や数式4(数4))を用いる場合は、入札額の高い沢山の広告が配信されることが期待できる。
【0036】
そして、短期的な観点で見るとCTRに基づく上記第一例(数式1や数式2)による選出が望ましいと考えられるが、フリークエンシー(広告露出回数)が上がって同じ広告が出続けることによるCTRの低下、少数の広告主の広告が偏って表示されることによって広告が出ない広告主の不利益や予算総額の低下などの懸念も考慮すると、長期的には、入札数を用いる上記第二例(数式3や数式4)による選出により、潜在的な収益の高い多くの種類の広告を出した方が有利と思われる。
【0037】
そこで、状況に応じてこれら両者のバランスを取るために、新たな指標として

Extended_eCPM(k)=AveBid(k)×AveCTR(k)×Listingcount(k) …第三例

というようなものを計算して、これを元にキーワードを選出することも考えられる。このようにすれば、CTRが高く、かつ入札数の多いキーワードほど優先的に使われるので、CTRと入札数の両面からみて商業的価値が高い広告の引当てが促進できる。
【0038】
さらに、上記第三例に含まれる各項AveBid(k)、AveCTR(k)やListingcount(k)に任意の係数を乗じるようにすれば、平均入札単価、平均CTR、入札広告数のそれぞれをどの程度重視してキーワード評価値に反映させるかのバランスをきめ細かく微調整できるので、目的や状況など事情に適合した本発明の適用が実現できる。
【0039】
〔2−5.広告の選択と配信〕
そのうえで、広告引当手段60が、選出されたキーワードに対応する広告から、広告の表示結果に係る評価値である結果評価値に基づいて、配信対象とする広告を選択する(ステップS6)。この選択に用いる結果評価値は、例えばeCPM、CPA(Cost Per Action)、CPC(Cost Per Click)、CR(Conversion Rate)など任意に選択でき、広告評価手段30が、予め記録した配信数やクリックの履歴などからその場で計算してもよいし、バックグラウンドやバッチの処理などで定常的に用意しておいてもよい。
【0040】
例えばeCPMは、広告のCTRと入札額の積で、図2の広告ID「A12」の例では、CTR:0.08に入札額¥800を乗じて¥64となる。また、入札評価値と結果評価値を算出する手段は、広告評価手段30など一つの手段でもよいし、互いに異なる手段でもよい。
【0041】
上記のように選択された広告を、別途の広告配信サーバなど広告配信手段70が、例えばウェブサーバWを経由してユーザの端末T1へ配信する(ステップS7)。図4は、本来のコンテンツCと組み合わせて、配信されたハイパーリンクを伴う文字広告である広告ADが表示されている状態を示す。これら広告ADは、コンテンツCのタイトルや本文に複数回登場する「ハイブリッドカー」や「燃費」などの特徴語を入札キーワードとしている広告である。
【0042】
また、配信した広告が配信先であるユーザの端末T1でクリックされるか否かに応じて、CTR更新手段80が、広告等記憶手段15に記憶されているCTRを更新する(ステップS8)。なお、図示は省略するが実際には、広告ごとに実際の配信数とクリック数を記憶しておいてそれらが更新されるたびにそれらから新たなCTR(図2)を計算してそれまでのCTRと置き換える。このように更新されたCTRを結果評価値や入札評価値の計算に用いるが、CTR以外にも、結果評価値や入札評価値として用いる値(例えば、キーワードの平均CTRであるAveCTR(k)、eCPM、CPA、CPC、CRなど)に応じた値を更新し記憶しておくようにすればよい。
【0043】
上記のように本実施形態では、キーワードごとに対応する広告の入札状況を反映したキーワード評価値を算出し、それによりキーワードを選択の段階で絞り込むことにより、商業的価値を表す評価値の高い広告同士の競争で配信対象が選択されるので、商業的価値が高い広告の引き当てが促進できる。
【0044】
〔2−6.例〕
上記を単純化した例を示す。あるコンテンツのキーワード候補が「ハイブリッドカー」と「燃費」の二つであるが、うち一つだけのキーワードを選出して一本だけの広告を引き当てて表示する場合を考える。この場合、「燃費」の方がコンテンツへの適合度の点では勝るが、対応する広告の平均CTRなどのキーワード評価値では「ハイブリッドカー」の方が勝るとする。このような場合、従来技術では、コンテンツへの適合度で勝る「燃費」が優先され、それに対応する広告のみが表示される結果、eCPMは低く留まるが、本実施形態では、キーワード評価値で勝る「ハイブリッドカー」が優先され、それに対応する広告のみが表示される結果、優れたeCPMが実現される。
【0045】
〔3.算出基礎から排除する広告〕
また、本実施形態では、キーワード評価値の算出において、配信停止中や予算の尽きた広告の評価値は算出基礎から排除する。すなわち、入稿配信制御手段90は、広告について、広告主など所定の者の用いる広告主等端末T2から、又は所定の電子情報処理組織から、配信停止の指示を受け付け、また、予め設定された広告料の予算残高について更新を含む処理を行う。
【0046】
ここで、配信停止の指示の例は、広告主、広告代理店、本装置1の運営者など所定の操作者(以下「広告主等」と総称する)が、所定の設定画面(図示省略)にログインして配信停止の操作を行うと次に配信再開の操作を行うまで配信が停止されるとか、そのような設定画面で曜日や時間帯などを指定した配信停止の設定を予め入力しておくなどが考えられる。図2の例では、配信停止の操作を行うと停止フラグが「1」にセットされ、次に配信再開の操作を行うと「0」にリセットされ、停止フラグ「1」の広告は配信が停止される。
【0047】
また、広告料の予算残高は、上記のような設定画面で広告主等が、広告ごとや広告のグループ(「キャンペーン」などと呼ばれる)ごとに設定するもので、広告がクリックして課金されるたびにリアルタイム又はそれに準じたタイミングで減額されてゆき、尽きると(ゼロやマイナスになったり、又は所定の残額以下になるなど)配信は停止となる。そして、キーワード評価手段40は、上記のように配信停止が指示されている広告、広告料の予算残高が尽きている広告の少なくとも一方について、キーワード評価値の算出の基礎から排除する。
【0048】
上記のように、本実施形態では、配信できない状態の広告をキーワード評価値算出の基礎から除くことにより、実際は引き当てられない広告の評価値の影響でキーワード評価値が過大評価されて他のキーワードに対応する商業的価値が高い広告の引き当てが妨げられる事態が回避できるので、商業的価値が高い広告の引き当てをより一層確実に促進することができる。
【0049】
〔4.配信条件の考慮〕
また、キーワード評価値の算出では、広告に設定されている配信条件を考慮することができる。すなわち、入稿配信制御手段90が、配信機会を限定する配信条件の設定を受け付けるとともに広告の選択に反映させる。その具体的態様は自由であるが、例えば、配信条件の設定を受け付けると、図2に例示するように広告等記憶手段15に記憶させ、その配信条件を広告引当手段60が読み出して広告の選択に反映させる。一方、キーワード評価手段40は、前記配信条件が設定されている広告の評価値については、その限定に係る割合に基づき、具体的にはその限定に係る割合を乗じてキーワード評価値の算出に用いる。
【0050】
配信条件は、例えば、配信対象者の性別(例えば男性に限定、女性に限定など)や、年代、アクセス元の地域、ウェブサイト閲覧などネット上での行動履歴などの属性、配信する時間帯(例えば18時から24時など)、曜日など自由である。限定に係る割合(図2中「実質入札数」として示す)は、例えば、配信対象者の男女比が概ね同等の場合、男性に限定する配信条件であれば1/2(すなわち50%)、時間帯を10時から18時に限定する配信条件については8/24(約33%)などとなる。
【0051】
例えば、既に述べた第二例の場合に、キーワード評価値を算出する際、キーワードに対応する個々の広告ごとに入札評価値「1件」とカウントし、その合計である広告数Listingcount(k)を得る場合、図2の広告(広告ID:「A12」)は1/2件(0.5件)、広告ID「B53」の広告は1/3件(約0.33件)とカウントして、キーワード評価値である広告数Listingcount(k)を算出する。
【0052】
上記のように、本実施形態では、性別や年代など配信対象者の属性や配信時間帯といった限られた条件下でのみ配信される広告の入札評価値について、その限定に係る割合に基づき、具体的にはその限定に係る割合を乗じてキーワード評価値に反映させることにより、引き当てても配信できない可能性がある広告の入札評価値がキーワード評価値に過大に反映される事態が回避できる。すなわち、限定条件のある広告の入札評価値も実質的な平均期待値の範囲でキーワード評価値に影響するので、キーワード評価値に基づくキーワードの選出が高精度となる。
【0053】
〔5.他の実施形態〕
なお、上記実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下に例示するものやそれ以外の他の実施態様も含むものである。例えば、本出願における構成図、データの図、フローチャートなどは例示に過ぎず、各要素の有無、その配置や処理実行などの順序、具体的内容などは適宜変更可能である。一例として、上記実施形態では、本装置1は広告配信手段を含むものとしたが、広告の引当てのみを行う構成としてもよい。また、広告については、文字広告に限らずバナー広告など画像や動画の広告でもよい。さらに、広告は、ウェブサーバWを経由せずユーザの端末T1で解釈表示されるHTML記述などに基づいて本装置1から端末T1へ直接配信するようにしてもよい。
【0054】
また、図1などに示した個々の手段を、相互に別個独立の設備で実現する構成も一般的であるし、サーバでも端末でも機能によっては、外部のプラットフォーム等をAPI(アプリケーション・プログラム・インタフェース)やネットワークコンピューティング(いわゆるクラウドなど)で呼び出して実現するなど、構成は柔軟に変更できる。例えば、図1に示した本装置とウェブサーバWは、適宜一体化してもよい。さらに、本発明に関する手段などの各要素は、コンピュータの演算制御部に限らず物理的な電子回路など他の情報処理機構で実現してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 広告処理装置
6 演算制御部
7 記憶装置
8 通信手段
15 広告等記憶手段
20 キーワード取得手段
30 広告評価手段
40 キーワード評価手段
50 キーワード選出手段
60 広告引当手段
70 広告配信手段
80 CTR更新手段
90 入稿配信制御手段
AD 広告
C コンテンツ
LAN 無線
N 通信ネットワーク
T(T1,T2) 端末
W ウェブサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーワードと対応付けられている広告から、コンテンツに合わせて配信する広告を選択する広告処理装置において、
前記コンテンツに対応するキーワード候補を取得するキーワード取得手段と、
取得された前記キーワード候補ごとに、対応する前記広告の入札に係る評価値である入札評価値に基づいて所定のキーワード評価値を算出するキーワード評価手段と、
算出された前記キーワード評価値に基づいて前記キーワード候補の一部をキーワードとして選出するキーワード選出手段と、
選出された前記キーワードに対応する前記広告から、広告の表示結果に係る評価値である結果評価値に基づいて、配信対象とする広告を選択する広告引当手段と、
を有することを特徴とする広告処理装置。
【請求項2】
前記広告について、配信停止の指示を受け付ける手段と、予め設定された広告料の予算残高について更新を含む処理を行う手段と、を有し、
前記キーワード評価手段は、前記配信停止が指示されている広告、前記広告料の予算残高が尽きている広告の少なくとも一方について、前記キーワード評価値の算出の基礎から排除することを特徴とする請求項1記載の広告処理装置。
【請求項3】
配信機会を限定する配信条件の設定を受け付けるとともに広告の選択に反映させる手段を有し、
前記キーワード評価手段は、前記配信条件が設定されている広告の前記入札評価値については、その限定に係る割合に基づいて前記キーワード評価値の算出に用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の広告処理装置。
【請求項4】
コンピュータが、キーワードと対応付けられている広告から、コンテンツに合わせて配信する広告を選択する広告処理方法において、
前記コンテンツに対応するキーワード候補を取得するキーワード取得処理と、
取得された前記キーワード候補ごとに、対応する前記広告の入札に係る評価値である入札評価値に基づいて所定のキーワード評価値を算出するキーワード評価処理と、
算出された前記キーワード評価値に基づいて前記キーワード候補の一部をキーワードとして選出するキーワード選出処理と、
選出された前記キーワードに対応する前記広告から、広告の表示結果に係る評価値である結果評価値に基づいて、配信対象とする広告を選択する広告引当処理と、
を含むことを特徴とする広告処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−20461(P2013−20461A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153488(P2011−153488)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)