説明

広告電柱巡回ルート選定システム

【課題】 巡回目的に応じた広告電柱の巡回ルートを選定する。
【解決手段】 入力された巡回目的や巡回出発地などの巡回条件に適合する広告電柱の巡回ルートを、地理的情報データベース21の地理的情報と、広告情報データベース41の広告情報とに基づいて選定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広告電柱を巡視・巡回するための巡回ルートを選定・策定する広告電柱巡回ルート選定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電柱広告は、公道などに多数設置されている電柱に、巻看板や袖看板を取り付けることで宣伝・広告を行うものである。こうした電柱広告は広告管理会社により、破損の有無や、条例などの改正への適応、塗装の劣化やその他の異常の有無など、様々な目的に応じて点検が行われている。そして、これらの点検は、実際に作業員が広告電柱を巡回し点検する。このため、上記のように様々な目的に適合する点検を効率よく行うために、広告電柱の巡回ルートを選定しなければならない。
【0003】
また、電柱に設けられたICタグを使用し、無断広告や期限切れの広告などの有無をチェックできる電柱広告管理システムに関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
さらに、電柱番号に経路情報を関連付けて効率的に登録し、その経路情報を参照して、迅速に目的地へ到達可能にする地図情報システムおよび電柱識別番号による地図情報管理方法に関する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−331168号公報
【特許文献2】特開2005−274463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような巡回ルートの選定は、従来、担当者などが広告電柱の位置や周辺の道路状況などを確認しながら、行っていた。このため、選定に多大な時間と労力とを要するのみならず、選定される巡回ルートが担当者によって異なる場合があり、さらには、担当者の経験や能力などによっては、必ずしも適正な巡回ルートが選定されないおそれがある。また、特許文献1および2に記載のいずれの技術も、巡回目的などに応じた広告電柱の巡回ルートを選定することはできない。
【0007】
そこで、この発明は、前記の課題を解決し、巡回目的などに適合した巡回ルートを選定することが可能な広告電柱巡回ルート選定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、道路の敷設状態や電柱の設置場所などの地理的情報を記憶する地理的情報記憶手段と、広告電柱の設置位置や設置年月日、広告主などの広告情報を記憶する広告情報記憶手段と、巡回目的や巡回出発地、予定巡回時間などの巡回条件を入力する条件入力手段と、前記条件入力手段で入力された巡回条件に適合する広告電柱の巡回ルートを、前記地理的情報記憶手段に記憶された地理的情報と、前記広告情報記憶手段に記憶された広告情報とに基づいて選定する巡回ルート選定手段と、
を備えることを特徴とする広告電柱巡回ルート選定システムである。
【0009】
この発明によれば、条件入力手段で巡回目的や巡回出発地などを入力すると、予め記憶された道路の敷設状態や広告電柱の設置位置などに基づいて、巡回ルート選定手段によって、巡回目的や巡回出発地などに適合する巡回ルートが選定される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の広告電柱巡回ルート選定システムにおいて、広告電柱の設置位置における点検作業の安全度を示す安全値を記憶する安全値記憶手段を備え、前記巡回ルート選定手段は、前記条件入力手段で入力された巡回条件に適合し、かつ、安全値が所定値の広告電柱の巡回ルートを、前記地理的情報記憶手段に記憶された地理的情報と、前記広告情報記憶手段に記憶された広告情報と、前記安全値記憶手段に記憶された安全値とに基づいて選定する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の広告電柱巡回ルート選定システムにおいて、前記地理的情報記憶手段に記憶された地理的情報と、前記広告情報記憶手段に記憶された広告情報とに基づいて、広告電柱の設置位置における点検作業の安全度を示す安全値を策定する安全値策定手段を備え、前記巡回ルート選定手段は、前記条件入力手段で入力された巡回条件に適合し、かつ、安全値が所定値の広告電柱の巡回ルートを、前記地理的情報記憶手段に記憶された地理的情報と、前記広告情報記憶手段に記憶された広告情報と、前記安全値策定手段で策定された安全値とに基づいて選定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、条件入力手段で巡回目的や巡回出発地などを入力することで、巡回目的などに適合する広告電柱の巡回ルートが選定される。このように、巡回ルートの選定が人によらないため、巡回ルートの選定に要する時間と労力を著しく削減することができるとともに、巡回ルートの選定精度にバラツキがなくなり、業務を高品質で平準化することができる。すなわち、人が地図などを見ながら巡回ルートを選定するものではないため、巡回が必要な広告電柱の見落としや、不必要な広告電柱の選択などがなく、適正な巡回ルートを選定することができる。
【0013】
請求項2および3に記載の発明によれば、広告電柱の安全値に基づいて巡回ルートを選定するため、安全で効率的な巡回を行うことが可能となる。すなわち、例えば、安全値(安全度)が高い広告電柱のみを対象とした巡回ルートを選定することで、安全な巡回が可能となる。また、安全値に応じて、巡回に必要な車両や工具などの装備や人員数などが異なる場合に、同一の安全値の広告電柱のみを対象とした巡回ルートを選定することで、同一の装備や人員数などで、効率的な巡回が可能となる。
【0014】
しかも、請求項3に記載の発明によれば、地理的情報と広告情報とに基づいて、安全値策定手段が安全値を策定するため、道路の敷設状態や広告電柱の設置位置などが変わった場合でも、最新で適正な安全値を得ることが可能となる。この結果、最新で適正な安全値に基づいて、より適正な巡回ルートを選定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態に係る広告電柱巡回ルート選定システムの概略構成ブロック図である。
【図2】図1の広告電柱巡回ルート選定システムの広告情報データベースに記憶されている広告情報テーブルの一例を示す図である。
【図3】広告電柱の設置場所と安全値とを説明する図である。
【図4】広告電柱の設置場所と安全値とを説明する図である。
【図5】図1の巡回ルート選定タスクによる処理を示すフローチャートである。
【図6】図5の安全値作成タスクによる処理を示すフローチャートである。
【図7】図5の巡回ルート延長処理を示すフローチャートである。
【図8】図1の広告電柱巡回ルート選定システムによって選定された巡回ルートが表示された周辺地図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態に係る広告電柱巡回ルート選定システム1の概略構成ブロック図である。この広告電柱巡回ルート選定システム1は、広告電柱の巡回ルートを選定するものであり、電力会社の電柱管理サーバ2、電柱広告管理会社の広告電柱管理端末3および広告電柱管理サーバ4とで構成されている。電柱管理サーバ2、広告電柱管理端末3、広告電柱管理サーバ4は、それぞれ通信部22、33、44を備え、通信網NWを介して相互に通信可能に接続されている。また、広告電柱管理端末3の台数は限定されないが、ここでは代表例として1台の場合を図示している。ここで、電柱には、電力会社が設置し配電などを目的とする電力柱や、通信会社が設置し通信ケーブルの支持を目的とする通信柱(電信柱)、電力会社と通信会社で共用される共架柱、さらには、電灯を支持するための電灯柱などが含まれる。
【0018】
電柱管理サーバ2は、地理的情報データベース(地理的情報記憶手段)21と、通信部22と、これらを制御する制御部23と、を備えている。
【0019】
地理的情報データベース(地理的情報記憶手段)21は、道路情報や電柱情報などの地理的情報が記憶されている。道路情報とは、道路の敷設状態を示すもので、例えば、道路ID、道路名称、道路の敷設位置(緯度、経度)、道路の形状、幅員、交差点の位置(緯度、経度)、信号機の設置位置(緯度、経度)などである。また、電柱情報とは、電柱の設置状態を示すもので、例えば、電柱番号、電柱種別、電柱の設置位置(緯度、経度)、設置道路IDなどである。
【0020】
広告電柱管理端末3は、巡回ルート作成業務を行う担当者によって操作されるコンピュータや、PDA(Personal Digital Assistant)などの端末であり、入力部31(条件入力手段)、表示部32、通信部33および、これらを制御などする制御部34を備えている。
【0021】
入力部31(条件入力手段)は、巡回エリアや、巡回目的、巡回の出発地、予定巡回時間などの巡回条件を入力する機器であり、例えば、キーボードやマウス等である。ここで、巡回エリアとは、巡回を実施するエリアを、例えば、表示された地図上で、円やひし形、三角形など任意の形状で指定する入力項目である。例えば、出発地を三角形の底辺上とし、目的地を三角形の頂点としてエリアを指定した場合、出発地側ではエリアが広いので、電柱をより多く巡回し、目的地に向かってエリアが狭まるので、巡回する電柱の数は少なくなる。また、巡回目的とは、所定の設置年月以降または以前の広告電柱を点検するという目的や、特定の広告主の広告電柱を点検するという目的などである。さらに、予定巡回時間とは、巡回の予定時間であり、予定巡回時間が入力された場合に、予定巡回時間を超過しない巡回ルートを選定し、予定巡回時間が入力されない場合は、最短の巡回ルートを選定するようになっている。さらに、予定巡回時間が入力された場合は、巡回する広告電柱が最多となる巡回ルートを選定するか、最短時間で巡回が終了する巡回ルートを選定するかの巡回パターンを指定可能となっている。
【0022】
このほか、巡回条件には、経路パターン、巡回手段、安全値などが含まれる。ここで、経路パターンとは、巡回ルートの経路のパターンを指定する必須の入力項目であり、(1)出発地から目的地へ向かう経路パターン、(2)出発地から経由地を通過し目的地へ向かう経路パターン、(3)出発地から出発地へ戻る経路パターンの3つである。これらの経路パターンは、入力された情報により自動的に定まるようになっている。すなわち、出発地と目的地が入力された場合は(1)の経路パターン、出発地と経由地、目的地が入力された場合は(2)の経路パターン、出発地のみが入力された場合は(3)の経路パターンと判定されるようになっている。
【0023】
巡回手段とは、巡回を徒歩で行うのか、車両を使用して行うのかを指定する必須の入力項目で、巡回手段によって移動速度が定まるようになっている。ここで、移動速度は、徒歩の場合には4km/h、車両の場合には20km/hに設定されている。また、徒歩の場合には、一人の作業員が巡回ルートに沿って歩きながら点検し、車両を使用して巡回する場合には、二人の作業員が巡回ルートに沿って車両で走行しながら、助手席側の作業員が点検することを基本的な巡回方法としている。さらに、徒歩で巡回する場合は、後述する巡回ルート選定タスク42によって、安全値の高い広告電柱のみが選定されるようになっている。
【0024】
安全値とは、巡回対象とする広告電柱を安全値で指定するための任意の入力項目であり、入力された場合には、後述する巡回ルート選定タスク42によって、その安全値の広告電柱のみが選定されるようになっている。ここで、安全値は、広告電柱の設置位置における点検作業の安全度を示す値であり、数値が小さいほど、安全度が低い(危険度が大である)ことを示している。具体的には、安全値「3」とか、安全値「2」または「3」のように指定する。安全値「1」を指定した場合、作業に際して安全対策を施すために、巡回ルート選定タスク42において、所要巡回時間が長く設定されるようになっている。また、巡回手段が徒歩の場合(一人で巡回する場合)に、安全値1を指定した場合には、巡回ルート選定タスク42において、警告を表示し注意喚起されるようになっている。
【0025】
表示部32は、制御部33の制御によって、入力部31に入力されたデータや、選出された広告電柱巡回ルートを表示する、LCD(液晶ディスプレイ)などの表示装置である。
【0026】
広告電柱管理サーバ4は、広告情報データベース(広告情報記憶手段、安全値記憶手段)41、巡回ルート選定タスク(巡回ルート選定手段)42、安全値策定タスク(安全値策定手段)43、通信部44および、これらを制御などする制御部45を備えている。
【0027】
広告情報データベース41は、図2に示すように、電柱番号ごとに、広告電柱の設置位置、広告種類、設置年月日、広告主、広告目的、塗料状態、安全値などの広告情報などを記憶するデータベースである。電柱番号とは、電柱を識別する番号である。設置位置とは、広告電柱の設置された緯度、経度を示す値である。広告種類とは、巻看板か袖看板かの電柱広告の種類を示すものである。設置年月日とは電柱の設置された年月日である。広告主とは、電柱広告の広告依頼主の名称である。広告目的は、道案内か広告宣伝効果かの電柱広告の目的である。塗料状態は、電柱広告の塗料の状態を「良」、「普通」、「劣」のような評価で示すものであり、点検時に入力され、塗料の塗替や電柱広告の修繕完了時に更新される。安全値とは、広告電柱の設置位置における点検作業の安全度を示す値である。この安全値は、広告電柱の設置時に入力され、道路状況の変化などに応じて更新される。また、後述するように安全値策定タスク43が起動されることで、安全値が入力、更新されるようになっている。この安全値は、上記のように、最も危険な安全値「1」から最も安全な安全値「3」まで備え、図3、4に示すように、安全値「1」は、最も危険と想定される場所、例えば車道L1に設置された広告電柱P11に設定される。安全値「2」は、歩道L3が設置されていない車道L1の路肩L2側、路肩L2内に設置された広告電柱P21、P22に設定される。安全値「3」は、最も安全と想定される場所、例えば、私有地や歩道L3、路肩L2の歩道L3側に設置された広告電柱P32、P31に設定される。ここで、安全度「1」の電柱の点検作業は、上記のように安全度が低い、すなわち、危険性の高い場所で行う必要があるため、広告電柱P11の周囲の車道L1を通行止めにしたり、交通規制をするなどの安全対策をとる必要がある。
【0028】
巡回ルート選定タスク42は、入力部31で入力された巡回条件に適合する巡回ルートを、地理的情報データベース21に記憶された地理的情報と、広告情報データベース41に記憶された広告情報や安全値に基づいて選定するタスクであり、図5に示すフローチャートに基づいている。
【0029】
まず、巡回ルート選定タスク42が起動されると、巡回条件を入力する入力画面を出力し、入力待ちの状態となる(ステップS1)。ここでは、巡回条件として、巡回エリア、巡回目的、巡回の出発地、安全値、予定巡回時間などが入力された場合について、以下説明する。
【0030】
次に、巡回条件が入力されると(ステップS2)、入力された巡回ルートの出発地から目的地へ向かうルートを地理的情報データベース21から検索する(ステップS3)。このとき、例えば、同じ道を通るルートは選択しない、目的地から遠ざかるルートは選択しない、などの予め定められたルート探索条件に従ってルートが検索される。また、巡回エリア内のルートのみが検索される。
【0031】
そして、検索されたルートのひとつを取得し(ステップS4)、当該ルート上に設置されている広告電柱を広告情報データベース41から検索し(ステップS5)、電柱が検索できたか否かを判定する(ステップS6)。電柱が検索できなかった場合(「NO」の場合)、ステップS14へ進み、当該ルートの評価を「電柱なし」とする。電柱が検索できた場合(「YES」の場合)、後述する安全値策定タスク43によって、検索した電柱に対する安全値を策定する(ステップS7)。次いで、当該ルート上の電柱の中から、巡回条件として入力された安全値および巡回目的に適合する広告電柱を、ステップS7で策定された安全値と広告情報データベース41に基づいて選定する(ステップS8)。
【0032】
次に、広告電柱が選定できたか否かを判定する(ステップS9)。広告電柱が選定できなかった場合(「NO」の場合)、ステップS14へ進み、当該ルートの評価を「広告電柱なし」とする。広告電柱が検索できた場合(「YES」の場合)、当該広告電柱を巡回した場合の所要時間が、巡回条件として入力された予定巡回時間以内であるか否かを判定する(ステップS10)。ここで、所要時間は、(移動時間)+(点検時間)で算出される。移動時間は、(ルートの距離)/(移動速度)である。点検時間は、(電柱本数)×(1本当たりの点検時間)であり、例えば、1本当たりの点検時間は5分/本とする。
【0033】
予定巡回時間を超過した場合(「NO」の場合)、ステップS14へ進み、当該ルートの評価を「予定巡回時間を超過」とする。予定巡回時間以内の場合(「YES」の場合)、巡回ルートを更新し、巡回計画に広告電柱を登録する(ステップS11)。ここで、巡回ルートとは、巡回ルートの経路、分岐点、広告電柱などを示すものである。また、巡回計画とは、選定された広告電柱を巡回予定日とともに登録し、当該広告電柱の巡回が実施されたときに、削除されるようになっている。
【0034】
そして、巡回条件で、巡回する広告電柱が最多となる巡回ルートを選定するように巡回パターンが指定されているか否かを判定する(ステップS12)。指定されていない場合(「NO」の場合)、ステップS14に進む。指定されている場合(「YES」の場合)、後述する巡回ルート延長処理を行う(ステップS13)。
【0035】
ステップS14では、当該ルートの評価値を登録する。巡回ルートが選定された場合は、巡回ルートの移動距離、所要時間、広告電柱本数などの評価値を登録する。そして、次のルートがあるか否かを判定し(ステップS15)、次のルートがある場合(「YES」の場合)には、ステップS16でルートを取得し、ステップS5へ進む。次のルートがない場合(「NO」の場合)には、巡回ルートの評価値を比較し、最適ルートを選択する(ステップS17)。最適ルートの選択は、移動距離の最短のもの、広告電柱本数が最多のもの、などの条件で選択する。
【0036】
最後に、選定した巡回ルートを出力して(ステップS18)、処理を終了するものである。ここで、出力内容としては、図8に示すように、選択された電柱のほかに、選択されなかった電柱の安全値や設置年月日などを含む。例えば、選択された電柱を「●」、選択外の電柱を「○」のように出力する。また、あわせて出発地や目的地周辺の駐車場などランドマークを出力する。
【0037】
巡回ルート延長処理(ステップS13)は、巡回条件として、巡回する広告電柱が最多となる巡回ルートを選定するように巡回パターンが指定されている場合の処理であり、図7に示すフローチャートに基づいて、広告電柱が最多となるようにルートを延長する。まず、巡回条件として入力された巡回エリアの形状に基づいて、巡回ルート上で優先度が最も高い分岐点を取得する(ステップS200)。例えば、巡回エリアが略三角形で、巡回条件として入力された出発地がその三角形の底辺に位置する場合、出発地に近い分岐点を取得する。
【0038】
次に、この分岐点から巡回ルートに登録されていない道路を取得する(ステップS201)。続いて、地理的情報データベース21と広告情報データベース41とから、当該道路の当該分岐から隣接する分岐点の間に設置されている広告電柱を選択し(ステップS202)、電柱が検索できたか否かを判定する(ステップS203)。電柱が検索できなかった場合(「NO」の場合)、ステップS209へ進む。すなわち、当該道路は不採用とする。電柱が検索できた場合(「YES」の場合)、後述する安全値策定タスク43によって安全値を策定し(ステップS204)、上記のステップS8〜S11と同様にして、巡回条件に適合する広告電柱を選定し、巡回ルートおよび巡回計画の更新を行う(ステップS205〜S208)。
【0039】
その後、次の道路があるか否かを判定する(ステップS209)。次の道路がある場合は(「YES」の場合)、道路を取得し(ステップS210)、ステップS202へ進む。次の道路がない場合(「NO」の場合)、次の分岐があるか否かを判定し(ステップS211)、分岐がない場合(「NO」の場合)、処理を終了する。分岐がある場合(「YES」の場合)、巡回ルート上で次に優先度が最も高い分岐点を取得し(ステップS212)、ステップS201へ進む。このようにして、予定巡回時間を超過するまで巡回ルート延長S13を繰り返す。
【0040】
安全値策定タスク43は、道路の設置場所に応じた点検作業の安全度を策定するタスクであり、図6に示すフローチャートに基づいている。ここで、このタスク43の入力パラメータは、電柱番号である。
【0041】
まず、入力パラメータ上の最初の電柱番号を取得し(ステップS100)、当該電柱の設置位置が私有地であるか否かを判定する(ステップS101)。私有地の場合(「YES」の場合)、道路横であるか否かを判定する(ステップS102)。道路横でない場合(「NO」の場合)、安全値を「3」と設定する(ステップS103)。道路横の場合(「YES」の場合)、歩道側であるか否かを判定する(ステップS104)。歩道側の場合(「YES」の場合)、安全値を「3」と設定する(ステップS105)。歩道側ではない場合(「NO」の場合)、路肩側であるか否かを判定する(ステップS106)。路肩側の場合(「YES」の場合)、安全値を「2」と設定する(ステップS107)。路肩側ではない場合(「NO」の場合)、安全値を「1」と設定する(ステップS108)。
【0042】
ステップS101で私有地ではない場合(「NO」の場合)、道路か否かを判定する(ステップS109)。道路ではない場合(「NO」の場合)、その他地道路横か否かを判定する(ステップS110)。その他地道路横ではない場合(「NO」の場合)、安全値を「3」と設定する。その他地道路横の場合(「YES」の場合)、ステップS104へ進む。
【0043】
ステップS109で道路の場合(「YES」の場合)、車道か否かを判定する(ステップS112)。車道の場合(「YES」の場合)、ステップS104へ進む。車道ではない場合(「NO」の場合)、歩道の中または歩道の横か否かを判定し(ステップS113)、歩道の中または歩道の横の場合(「YES」の場合)、安全値を「3」と設定する(ステップS114)。歩道の中または歩道の横ではない場合(「NO」の場合)、路肩の中または路肩の横であるか否かを判定する(ステップS115)。路肩の中または路肩の横の場合(「YES」の場合)、安全値を「2」と設定し(ステップS116)、路肩の中あるいは路肩の横ではない場合(「NO」の場合)、安全値を「1」と設定する(ステップS117)。
【0044】
このようにして当該電柱の処理が終わると、ステップS118へ進み、次の電柱がある場合には(「YES」の場合)、次の電柱を取得し(ステップS119)、ステップS101に進む。次の電柱がない場合は、処理を終了する。また、このようにして策定された安全値は、その都度広告情報データベース41の安全値に登録される。
【0045】
次に、このような構成の広告電柱巡回ルート選定システム1の作用・動作について、説明する。
【0046】
まず、巡回計画を策定する担当者などが、広告電柱管理端末3から広告電柱管理サーバ4にアクセスし、巡回ルート選定タスク42を起動させる。次に、このタスク42上で、巡回条件を入力すると、上記のようにして巡回ルートが選定され、表示部32に表示される。例えば、図8に示すように、巡回条件として、出発地S、目的地G、巡回人数を一人、対象の広告電柱の安全値を「3」、予定巡回時間を1時間、巡回パターンを巡回する広告電柱が最多となる巡回ルートを選定する、などと入力すると、この入力条件に適合する巡回ルートが選定され、図中に太い実線で示すように表示される。
【0047】
また、例えば、巡回条件として、最短時間で巡回が終了する巡回パターンを入力すると、巡回ルート選定タスク42のステップS12の判定で、「NO」の場合となり、ステップS14へ進み、巡回ルートの延長処理ステップS13は実施されない。そして、ステップS17では、巡回ルートの評価値の中で所要時間が最短の巡回ルートが選定される。
【0048】
また、例えば、巡回条件として、出発地Sと予定巡回時間とを入力すると、経路パターン(3)と判定される。このとき、巡回エリアは、入力された出発地Sと予定巡回時間から、出発地Sを中心として、予定巡回時間内に往復可能な距離を半径とする円となる。そして、巡回ルート選定タスク42で、入力条件に適合する巡回エリア内の巡回ルートが選定され、出発地Sから出発し、出発地Sへ戻る巡回ルートが選定され、図8に二点鎖線で示すように表示される。
【0049】
また、例えば、巡回条件として、広告主がA社である広告電柱に限定して指定すると、巡回ルート選定タスク42によって、入力条件に適合する巡回ルート、すなわち、広告主がA社である広告電柱を対象とした巡回ルートが選定される。
【0050】
また、例えば、巡回条件として、安全値1を指定し、安全対策を施す時間を含めた1本当たりの点検時間を、例えば、1本当たり1時間とすると、巡回ルート選定タスク42によって、安全値1の広告電柱のみの巡回ルートが選定される。ここで、安全値1の広告電柱は、安全対策のために特別な工具などが必要であり、他の安全値の広告電柱とは別に、安全値1の広告電柱だけで巡回ルートを選出する必要がある。
【0051】
以上のように、この実施の形態に係る発明によれば、巡回目的や予定巡回時間などの巡回条件を入力すると、巡回目的などに適合する広告電柱の巡回ルートが選定される。つまり、人が地図を見ながら巡回ルートを選定するのではないため、巡回が必要な広告電柱を見落とすことや、不必要な広告電柱を選択することなどがなくなるので、適正な巡回ルートを迅速に選定できる。このように、巡回ルートの選定が人によらないため、巡回ルートの選定に要する時間を短縮し労力を削減でき、かつ、巡回ルートの選定にバラツキがなくなり業務を高品質で平準化できる。
【0052】
また、適正な巡回ルートを選出して巡回を実施できるので、広告電柱の点検忘れがなく、法令を確実に遵守できる。また、広告電柱の点検を確実に実施することで、広告電柱の破損などを早期に発見することができ、公衆安全を損なう危険性を低減できる。
【0053】
また、広告電柱の安全値に基づいて巡回ルートを選定するため、安全で効率的な巡回を行うことが可能となる。すなわち、例えば、安全値(安全度)が高い広告電柱のみを対象とした巡回ルートを選定することで、安全な巡回が可能となる。また、安全値が低い電柱のみを対象とした巡回ルートを選定することで、安全対策に必要な車両や工具などの装備品や人員配置を計画的に準備できるので、効率的な巡回が可能となる。
【0054】
また、地理的情報データベース21と広告情報データベース41とに基づいて、安全値策定タスク43が安全値を策定するため、道路の敷設状態や広告電柱の設置位置などが変わった場合でも、最新で適正な安全値を得ることが可能となる。この結果、最新で適正な安全値に基づいて、現実にそくした、より適正な巡回ルートを選定することが可能となる。
【0055】
さらに、広告電柱管理端末3としてPDAなどの移動体端末を使用することで、巡回時に広告電柱管理端末3で巡回ルートを確認しながら移動できる。また、選定された巡回ルート上の任意の地点を、カーナビゲーションシステムに経由地や目的地として入力することで、巡回ルートに沿った移動が容易になり、不慣れな地域でも巡回の効率をあげることができる。
【0056】
また、広告情報データベース21を広告情報以外に、例えば、接地極配設の有無を示す接地極情報や変圧器配設の有無を示す変圧器情報などを管理し、巡回条件として指定可能にすることで、接地抵抗・漏洩電流の測定作業や変圧器の点検・保守作業など、電柱に配設された設備の点検・保守作業の巡回ルートの選定にも応用することが可能である。
【0057】
(実施の形態2)
この実施の形態では、広告電柱管理サーバ4は、規制情報データベース(図示しない)を備えている点で、実施の形態1の広告電柱巡回ルート選定システム1と構成が異なる。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素、データおよび処理には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。
【0058】
規制情報データベースは、電柱広告に関する規制情報が記憶され、電柱広告の設置を規制する道路法や屋外広告物法(屋外広告物条例)などの規制種別や、規制種別ごとの規制対象エリアおよび規制内容などの規制情報が記憶されている。具体的には、例えば、規制種別として「屋外広告物条例○条」、規制対象エリアとして「○○県△△市□□町○丁目」、「○○県△△市□□町△丁目」、規制内容として「設置禁止」などのように記憶されている。
【0059】
そして、巡回条件として規制種別や巡回エリアを指定すると、図5に示すフローチャートに基づく巡回ルート選定タスク42によって、入力条件に適合する巡回ルート、すなわち、規制情報データベースを参照して、巡回エリア内で当該規制種別の規制対象エリアに設置されている広告電柱を対象とした巡回ルートが選定される。
【0060】
このように、この実施の形態によれば、法改正などで規制対象エリアが変更になったり、規制内容が変更になったりした場合でも、巡回条件として規制種別や巡回エリアを指定することで、設置されている広告電柱が法改正に対応しているか否かを点検する巡回ルートを選定することができる。つまり、法改正に迅速に対応し、確実に法令を遵守することができる。
【0061】
(実施の形態3)
この実施の形態では、広告電柱管理サーバ4は、新規顧客データベース(図示しない)を備える処理が行われる点で、実施の形態1の広告電柱巡回ルート選定システム1と構成が異なる。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素、データおよび処理には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。
【0062】
新規顧客データベースは、名称や住所、業種などの新規顧客に関する情報が記憶され、地域雑誌などから新規店舗の開店情報などを入手した場合に登録される。
【0063】
巡回条件として、巡回出発地や予定巡回時間などとともに、営業提案の巡回であることを指定すると、巡回ルート選定タスク42によって巡回ルートを作成する際に、新規顧客データベースに基づいて、巡回ルート上の新規顧客をあわせて取得する(図示しない)。そして、新規顧客が取得された場合には、所要時間に、巡回途中で新規顧客に対して営業提案を行うための時間(営業提案時間)を加算して、予定巡回時間の判定を行う。ここで、営業提案時間は例えば30分とする。このようにして、所要時間に営業提案時間が加算された上で、入力条件に適合する巡回ルートが選定される。また、巡回ルートを表示する際には、新規顧客の名称をあわせて表示する。
【0064】
このように、この実施の形態によれば、巡回条件として営業提案を行う巡回であることが指定された場合でも、営業提案時間を加算して適切な巡回ルートを選定することができる。また、巡回途中に新規顧客に対する営業提案を行うことができるようになるので、効率よく営業提案を行うことができる。
【0065】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、電柱管理サーバ2と広告電柱管理サーバ4とをそれぞれ別々のサーバとしたが、同一のサーバ上にあってもよい。また、地理的情報データベース21や、広告情報データベース41などは構成が違っていてもよく、地理的情報データベース21が広告電柱管理サーバ4にあってもよい。また、移動速度、1本当たりの点検時間は入力画面または定義ファイルなどで変更できるようになっていてもよい。
【0066】
また、巡回ルート選定タスク42において、安全値策定タスク43で策定された安全値を用いているが、広告情報データベース41に記憶された安全値を用いてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 広告電柱巡回ルート選定システム
2 電柱管理サーバ(電力会社)
3 広告電柱管理端末(広告管理会社)
4 広告電柱管理サーバ(広告管理会社)
21 地理的情報データベース(地理的情報記憶手段)
31 入力部(条件入力手段)
32 表示部
41 広告情報データベース(広告情報記憶手段)
42 巡回ルート選定タスク(巡回ルート選定手段)
43 安全値策定タスク(安全値策定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の敷設状態や電柱の設置場所などの地理的情報を記憶する地理的情報記憶手段と、
広告電柱の設置位置や設置年月日、広告主などの広告情報を記憶する広告情報記憶手段と、
巡回目的や巡回出発地、予定巡回時間などの巡回条件を入力する条件入力手段と、
前記条件入力手段で入力された巡回条件に適合する広告電柱の巡回ルートを、前記地理的情報記憶手段に記憶された地理的情報と、前記広告情報記憶手段に記憶された広告情報とに基づいて選定する巡回ルート選定手段と、
を備えることを特徴とする広告電柱巡回ルート選定システム。
【請求項2】
広告電柱の設置位置における点検作業の安全度を示す安全値を記憶する安全値記憶手段を備え、
前記巡回ルート選定手段は、前記条件入力手段で入力された巡回条件に適合し、かつ、安全値が所定値の広告電柱の巡回ルートを、前記地理的情報記憶手段に記憶された地理的情報と、前記広告情報記憶手段に記憶された広告情報と、前記安全値記憶手段に記憶された安全値とに基づいて選定する、ことを特徴とする請求項1に記載の広告電柱巡回ルート選定システム。
【請求項3】
前記地理的情報記憶手段に記憶された地理的情報と、前記広告情報記憶手段に記憶された広告情報とに基づいて、広告電柱の設置位置における点検作業の安全度を示す安全値を策定する安全値策定手段を備え、
前記巡回ルート選定手段は、前記条件入力手段で入力された巡回条件に適合し、かつ、安全値が所定値の広告電柱の巡回ルートを、前記地理的情報記憶手段に記憶された地理的情報と、前記広告情報記憶手段に記憶された広告情報と、前記安全値策定手段で策定された安全値とに基づいて選定する、ことを特徴とする請求項1に記載の広告電柱巡回ルート選定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−180633(P2011−180633A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41447(P2010−41447)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)