説明

広巾覆工エレメントを使用した地下構造物およびその構築方法

【課題】広巾覆工エレメントを使用した地下構造物およびその構築方法を提供すること。
【解決手段】基準管2の間に覆工エレメントを横方向に配設した地下構造物において、間隔をおいてコーナー部に設けられる基準管2の間に、その基準管2の外形寸法よりも薄い1枚の広巾覆工エレメント3が推進されて設置されている地下構造物。基準管の間に覆工エレメントを配設するようにする地下構造物の構築工法において、間隔をおいてコーナー部に設けられる基準管の間に、その基準管の外形寸法よりも薄い1枚の広巾覆工エレメントを推進するようにして設置することを特徴とする地下構造物の構築方法。
いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トンネル、人道、暗きょうなどの地下構造物を構築する場合に使用する広巾覆工エレメントを使用した地下構造物およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル、人道、暗きょうなどの地下構造物を構築する方法として、狭巾のプレストレスコンクリート部材を天井部または側壁部あるいは床部に多数配置するようにしたPCR工法(プレストレスト・コンクリート・ルーフ工法)が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
前記従来の工法の場合は、例えば、図12に示すように、先端部に掘削用カッター8を有すると共にその後部にオーガー9を備え、掘削装置を内臓し正面ほぼ正四角形である一定の大きさの掘削先管10を掘削進行方向の前方に設け、その後部に、順次鋼製先導管11を直列に接続し、鋼製先導管11の外形の大きさにほぼあわせて、狭巾のプレキャスト製のプレストレストコンクリート部材からなる覆工エレメント3aを接続し、覆工エレメント3aの後部に、推進装置12を係合して、前記覆工エレメント3aを推進して、図9および図10に示すような地下構造物1を構築していた。
【0004】
また、前記の場合に、鋼製先導管11の側部には、一対のアングル材等のガイド部材が設けられているため、これに覆工エレメント3aを係合させるために、図11に示すように、前記の覆工エレメント3aには、上下方向に間隔をおくと共に、部材長手方向に連続して、一対のアングル材等のガイド部材7が設けられて、覆工エレメント3a同士の間隔を確保するようにしている。
【0005】
また、地下構造物1のコーナー部には、断面矩形状の鋼製基準管2が埋め込み配置されている共に、その基準管2間に多数のプレキャスト覆工エレメント3aが、横方向あるいは上下方向に並べられて埋め込み配置されている。
【特許文献1】特許第1265325号明細書
【特許文献2】特許第1770220号明細書
【特許文献3】特許第1617697号明細書
【特許文献4】特許第2512374号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の工法の場合は、狭巾の多数の覆工エレメント3aを推進して、地下構造物1を構築していたため、覆工エレメント3a同士間が多数存在するため、覆工エレメント3a同士間の多くの目地部6が生じ、多数の各目地部6を洗浄し、モルタル等の充填材4を充填するという非常に手間のかかる作業を要していた。
【0007】
しかも、覆工エレメント3aよりも先行して配置される角形鋼管本体を有する鋼製先導管11には、その両側にアングル材材等のガイド部材が上下に間隔をおいて2箇所設けられて、これに係合する覆工エレメント3a同士の間隔を確保しているため、前記のように覆工エレメント3aにも一対のアングル材等のガイド部材7が設けられているため、これを推進して地中に埋設した状態では、1箇所の目地部6は、図10に示すように、上下方向にガイド部材上目地部6aと、ガイド部間目地部6bと、ガイド部材下目地部6cの3箇所に分断された状態になるために、各3箇所の上下方向に分割された各目地部6a〜6cの洗浄、各分割された目地部6a〜6c部分へのモルタル等の硬化性充填材4の充填という非常に煩雑な作業を行わなければならなかった。
【0008】
また、覆工エレメント3aは、トンネルの軸方向に推進する為、その軸直角方向には横締めPC鋼材5が緊張定着されて一体化される。そのため、横締めを行う前に、多数の各目地部6を確実に洗浄して、充填材4の充填を行い所定の強度を有していないと、必要とされるストレスが導入されない事になる。
本発明は前記の課題を有利に解消することができる広巾覆工エレメントを使用した地下構造物およびその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の地下構造物においては、基準管の間に覆工エレメントを配設した地下構造物において、間隔をおいてコーナー部に設けられる基準管の間に、その基準管の外形寸法よりも薄い1枚の広巾覆工エレメントが推進されて設置されていることを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明の地下構造物において、基準管と前記広巾覆工エレメントの間に充填材を充填したことを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明または第2発明の地下構造物において、前記広巾覆工エレメントとこれを挟んでその両側の基準管間に渡って、PC鋼材が配置されると共にそのPC鋼材に緊張力を導入して定着されて、広巾覆工エレメントにプレストレスが導入されて前記各基準管と一体化されていることを特徴とする。
また、第4発明の地下構造物の構築方法においては、基準管の間に覆工エレメントを配設するようにする地下構造物の構築工法において、間隔をおいてコーナー部に設けられる基準管の間に、その基準管の外形寸法よりも薄い1枚の広巾覆工エレメントを推進するようにして設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によると、覆工エレメントを薄くすると同時に広巾とした、広巾覆工エレメントとしたので、従来のように基準管間に、狭巾の覆工エレメントを多数使用した場合のように、多数箇所の狭巾の覆工エレメント間の目地部を洗浄して充填材を充填することなく、広巾覆工エレメントの両側2箇所のみに充填材を充填すればよいので、目地部を大幅になくすことができ、基準管間には、1枚の広巾覆工エレメントであるので、基準管間の品質を安定させることができ、一定に施工期間を短縮することができ、また、施工コストを低減させることができる。
第2発明のよると、広巾覆工エレメントと基準管との間に充填材が充填されているので、広巾覆工エレメントと基準管とを一体化することができると共に、止水作用を発揮することができる。
第3発明によると、広巾覆工エレメントとその両側の基準管とが、緊張定着されたPC鋼材により一体化されているので、強固な地下構造物とすることができる。
第4発明によると、間隔をおいてコーナー部に設けられる基準管の間に、その基準管の外形寸法よりも薄い1枚の広巾覆工エレメントを推進するようにして設置するので、従来の狭巾の覆工エレメントを多数使用することなく、1枚ですむので施工性を格段に向上させることができる。また、従来の狭巾の覆工エレメントを多数使用した場合のように、多数箇所の狭巾の覆工エレメント間の目地部を洗浄して充填材を充填することなく、広巾覆工エレメントの両側2箇所のみに充填材を充填すればよいので、目地部を大幅になくすことができ、目地部施工効率を格段に向上させることができると共に、施工期間を短縮することができ、しかも施工コストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図6は本発明の一実施形態の地下構造物1を示すものであって、地下構造物1における4隅のコーナー部には、内部が補強リブ(図示を省略した)等により補強された角形鋼管本体を備えた基準管2を備えており、天井部および床部における間隔をおいて隣り合う基準管2間には、基準管2の上下方向の外形寸法よりも薄い1枚のプレキャスト製の薄型で広巾覆工エレメント3が配設され、基準管2と広巾覆工エレメント3との間にモルタル等の充填材4が充填され、一方の基準管2と広巾覆工エレメント3と他方の基準管2とに渡ってPCケーブル等の横締め用のPC鋼材5が挿通配置されて、前記PC鋼材5が基準管2の内側に緊張状態で定着されて、一体化されている。なお、基準管2と広巾覆工エレメント3との間にモルタル等の硬化性充填材4が充填される時には、必要に応じ予め目地部6に横締めPC鋼材挿通用ダクトが形成された後、充填材4が充填される。
【0013】
同様に側壁部における間隔をおいて隣り合う基準管2間には、基準管2の左右方向の外形寸法よりも薄い1枚のプレキャスト製の薄型で広巾覆工エレメント3が縦向きに配設されて、基準管2と広巾覆工エレメント3との間にモルタル等の充填材4が充填され、一方の基準管2と広巾覆工エレメント3と他方の基準管2とに渡ってPCケーブル等の縦締め用のPC鋼材5が挿通配置されて、前記PC鋼材5が基準管2の内側に緊張状態で定着されて、一体化されている。なお、前記と同様に基準管2と広巾覆工エレメント3との間にモルタル等の硬化性充填材4が充填される時には、予め目地部6に縦締めPC鋼材挿通用ダクトが形成される。
【0014】
なお、前記各基準管2には、地下構造物1における直角に隣り合う内空側よりの各片の内空側に偏心した位置に、間隔をおいて部材長手方向に延長する一対のガイド部材7が設けられているが、適宜内面覆基準管2と広巾覆工エレメント3との間にモルタル等の充填材4が充填され、基準管内部化粧仕上げがされて被覆される。
【0015】
次に、前記のような地下構造物1を構築する方法について説明する。
【0016】
本発明の場合も従来の場合と同じ部分があり、先ず、図1(a)(e)に示すように、先端部に掘削用カッター8を有すると共にその後部にオーガー9を備え、正面ほぼ正四角形であると共に狭巾で一定の大きさの掘削装置を内臓した掘削先管10を掘削進行方向の前方に設け、その後部に、順次鋼製先導管11を直列に接続する点は同様である。
【0017】
そして、発進側立坑から到達立坑に向って発進させるように、押圧用ジャッキ等を備えた推進装置12により順次推進されると共に排土されながら、図2に示すように、地中13に、コーナー部に位置する鋼製基準管2と、その間の鋼製先導管11が、地下構造物1の輪郭に沿って、多数矩形状に並べて圧入設置される点も、同様である。しかし、鋼製基準管2とこれに隣接する鋼製先導管11に設けられている一対のガイド部材7が、地下構造物1の内空側に変位した位置に設けられている点が相違している。
【0018】
一対のガイド部材7を鋼製基準管2およびこれに隣接する鋼製先導管11に設ける位置を、地下構造物1の内空側に変位した位置に設けた理由は、鋼製基準管2間の鋼製先導管11に後続して、鋼製先導管11に代わって置き換えられる置換部材を、地下構造物1の内空側に位置して、後に撤去される一つまたは複数の鋼製中空の仮支承部材14と、仮支承部材14の外側に位置して、地下構造物1の本体部分を構成するための薄型で広巾の1枚の広巾覆工エレメント3とにより構成するためである。
【0019】
なお、鋼製先導管11間に位置している鋼製先導管11に設けられるガイド部材7の取付け位置は、前記のように内空側に変位した位置に設けるようにしてもよく、あるいは従来と同様に鋼製先導管11の中心軸線を中心とした対称位置に設けるようにしてもよい。
【0020】
前記のガイド部材7は、一対のアングル材の一辺を間隔をおいて内向きに対向するように設置した雌型のガイド部材7と、一対のアングル材の一辺を間隔をおいて外向きに対向するように設置した雄型のガイド部材とのいずれかにより構成されている。
【0021】
仮支承部材14と広巾覆工エレメント3とは、推進方向の先端部外周面および後端部外周面が、バンド22等により仮結束されて一体化され、一体化された状態で、図1(b)に示すように、多数の鋼製先導管11の後端部の上板15および下板16の間に挿入されて、適宜着脱可能にボルト等により仮固定された状態で、発進立坑側から推進される。前記のバンド22が突出しないようにするために、仮支承部材14と覆工エレメント3に凹部を設けて収めるようにすると共にガイド部材7にバンド挿通孔を設けておくとよい。
【0022】
なお、発進立坑から到達立坑に向って直列に隣り合う鋼製先導管11相互、または鋼製先導管11と仮支承部材14との間、仮支承部材14相互を、図1(c)に示すように溶接により仮固定するようにしてもよい。
【0023】
前記の鋼製先導管11の後端部と広巾覆工エレメント3の先端部の仮固定、および仮支承部材14と広巾覆工エレメント3先端部および後端部の仮結束は、発進立坑17および到達立坑18に渡って鋼製先導管11に後続して広巾覆工エレメント3を推進配置した後、発進立坑17および到達立坑18内に位置した後、バンド22等による仮結束は解除される。
【0024】
前記の鋼製の仮支承部材14は、図3に示すように、鋼製箱型の一枚の仮支承部材14としてもよく、または図8に示すように、複数に分割された狭巾の仮支承部材14を、継ぎ手を兼ねたガイド部材7により連結してもよく、仮支承部材14の側壁相互をボルト等により着脱可能に強固に連結して一体化された広巾の仮支承部材14としてもよく、このようにすると地下構造物1の内空側掘削後の分解撤去が容易になる。
前記の仮支承部材14の両側部には、上下方向に間隔をおくと共に前後方向に延長する雌型または、雄型のガイド部材7が設けられている。一対の鋼製L型アングルの一辺が間隔をおいて前記の仮支承部材14の両側部に溶接等により固定されて、雌型または、雄型のガイド部材7が構成されている。
【0025】
広巾覆工エレメント3は、一枚もののプレキャスト製のプレストレストコンクリート版としてもよく、図7に示すように、複数のプレキャストコンクリート版3aを並列配置すると共に、これらの左右方向の横孔に渡って挿通配置されて緊張定着される左右方向のPC鋼材5a、および前後方向の横孔に渡って挿通配置されると共に適宜カプラー19により連結され、端部にて緊張定着される前後方向のPC鋼材5bとにより、版状に一体化されたものでもよい。なお、並列配置される各プレキャストコンクリート版3aには、横締めPC鋼材5を挿通するための挿通孔5cが予め設けられている。
【0026】
図7に示すような広巾覆工エレメント3に、仮支承部材14を仮結束した図1(d)に示すような覆工エレメント付き仮支承部材14aとした状態で、図1(e)に示すように、鋼製先導管11の後端部の受け部20に、覆工エレメント付き仮支承部材14aの先端部を嵌合配置し、必要に応じ、前記受け部20の上下の外側から、着脱可能なボルトを広巾覆工エレメント付き支承部材14aにおける広巾覆工エレメント3または仮支承部材14の雌ねじ部(図示を省略した)にねじ込み固定する。
【0027】
そして、図1(c)に示すように、広巾覆工エレメント付き支承部材14aの後端部に支承用キャップ等の支承部材を配置した状態で、発進立坑側の推進装置12により押圧推進して、天井部の鋼製基準管2間の鋼製先導管11全体を、前記広巾覆工エレメント付き仮支承部材14aに置き換える。
【0028】
以下同様にして、図4に示すように、側壁部および床版部の鋼製基準管2間の先導管11も同様に広巾覆工エレメント付き仮支承部材14aに置き換え、各コーナー部の鋼製基準管2と、広巾覆工エレメント3間の目地部6をウォータージェットにより洗浄すると共に真空吸引して排土し、天井部および床板部における、横方向の一方の基準管2と広巾覆工エレメント3と他方の基準管2とに渡って、PCケーブルなどの横締め用PC鋼材5を挿通配置する。
なお、前記の場合に、天井部の鋼製先導管11を推進した後に、これを仮支承部材14に置き換え、次に側壁部の鋼製先導管11を推進した後に、これを仮支承部材14に置き換え、次いで、床版部の鋼製先導管11を推進した後、これを仮支承部材14に置き換えた後、目地部6の洗浄を行うようにしてもよい。
【0029】
次いで、図5に示すように、天井部および床版部の左右両端部の各コーナー部の鋼製基準管2と、広巾覆工エレメント3間にモルタル等の充填材4を充填する。
【0030】
また、各側壁部における、上下方向の一方の基準管2と広巾覆工エレメント3と他方の基準管2とに渡って、PCケーブルなどの縦締め用PC鋼材5を挿通配置する。次いで、側壁部の上下両端部の各コーナー部の鋼製基準管2と、広巾覆工エレメント3間の目地部6にモルタル等の充填材4を充填する。
【0031】
各目地部6の充填材4が硬化した後、横締めPC鋼材5および縦締めPC鋼材5を緊張定着して、天井部および床版部並びに側壁部における基準管2と広巾覆工エレメント3の一体化を図り、仮支承部材付き地下構造物躯体21を構築する。
【0032】
その後、前記仮支承部材付き地下構造物躯体21の内側部分を掘削して、中空部を形成する。この時、必要に応じ、仮支承部材14を仮受けする支保工を適宜設置する。また、基準管2と仮支承部材14とのガイド部材7相互の係合を解除する。
【0033】
仮支承部材14におけるガイド部材7と鋼製基準管2とのガイド部材7の係合を解除する手段としては、発進立坑側および到達立坑側の仮支承部材14と広巾覆工エレメント3とのバンド等による仮結束を解除すると共に、仮支承部材14が広巾の1枚の場合には、発進立坑側に仮支承部材14を引き戻すようにして、係合を解除し、地下構造物1を構築する。
【0034】
また、仮支承部材14におけるガイド部材7と鋼製基準管2とのガイド部材7の係合を解除する別の手段としては、仮支承部材14が広巾の1枚の場合には、仮支承部材14のガイド部材7を適宜溶断したり、鋼製基準管2のガイド部材7を適宜溶断して、仮支承部材14と鋼製基準管2の係合を解除し、地下構造物1を構築する。
【0035】
また、仮支承部材14が、図8に示すようなガイド部材7を備えた多数の小型仮支承部材ユニット14cを結合一体化したものである場合には、内空側地盤を掘削した状態で、隣り合う小型仮支承部材ユニット14cにおけるガイド部材7相互の係合部に遊びがあるので、その遊び間隙を利用して、中央部の一つの小型仮支承部材ユニット14cを内空側中央よりに引寄せるように天井部あるいは側壁部全体を撓ませて取外したり、発進立坑側に引き戻すことにより、仮支承部材14を撤去し、地下構造物1を構築する。
【0036】
前記のように構築された地下構造物1の内面は適宜、化粧仕上げされて地下構造物1が構築される。
【0037】
なお、前記した施工手順を含めて全体の概略施工手順を略記すると、以下のような工程になる。
(1)発進立坑(または縦孔あるいは凹部)および到達立坑(または縦孔あるいは凹部)を形成し、発進立坑側に推進架台を設ける。
(2)発進立坑側において、基準となる角コーナー部の角形基準管の前に掘削機を取り付ける。
(3)掘削機を始動し、推進装置で角形基準管2を到達立坑に向って推進する。
(4)掘削機の前方に地中障害物が無ければ、反対側の到達立坑まで推進する。地中障害があった場合には、掘削機のみを後方に引抜き、人力で障害物を取り除く(なお、この作業空間として、断面で850mm×850mmの空間を有する角形基準管が必要となる)。
(5)先行の基準管2が推進された後、基準管2の間全てに先行先導管を推進する。
(6)後方の架台の上に、広巾覆工エレメントを支承する仮支承部材14が配置または適宜組立配置され、その仮支承部材14の上に、1枚の広巾覆工エレメント3が載置または組立配置される。広巾覆工エレメント3が、運搬のため複数に分割されている場合には、接合のために必要な本数のPC鋼材(5a,5b)を緊張して接合する。軸方向、軸直角方向ともに緊張接合する。また、仮支承部材14が、運搬のため軸方向に複数に分割されている場合には、ボルト等により接合する。幅方向に複数の仮支承部材14である場合には、継ぎ手部材を兼ねたガイド部材7により係合連結するか、ガイド部材7がない場合には、着脱可能なボルトあるいは仮止め手段等により部材軸直角方向の仮連結または仮接合を図る。
(7) 先導管(先行鋼管)11の後端を、広巾覆工エレメント3と仮支承部材14が入る程度のキャップ状の受け部20に差し込まれて嵌合固定されるか、又は受け部20の外側からボルトを広巾覆工エレメント3または仮支承部材14に着脱自在に固定しても良い。
広巾覆工エレメント3後部と、推進装置12の押圧部との接触部を同じようにキャップ状の受け部を設けて嵌合固定またはボルトにより着脱自在に固定する。また、広巾覆工エレメント3と仮支承部材14を帯状バンドで縛るようにして一体化するか、ボルト止めして一体化する。
(8) 広巾覆工エレメント3と仮支承部材14を複数の推進装置12で推進方向に押して、到達立坑18側に押し出される先導管11を到達立坑18から順次搬出する。広巾覆工エレメント3および仮支承部材14が、到達立坑18に到着するまで繰り返す。
(9) 基準管2と広巾覆工エレメント3の間の目地部6をウオータージェットにより洗浄すると共に真空吸引して排土する。天井部および床部(または側壁部)の基準管2と広巾覆工エレメント3の横方向に横締めPC鋼材5(縦締めPC鋼材5)を挿入する。
(10) 洗浄された目地部6にモルタル(グラウト)などの充填材4を充填する。グラウトの所定の強度が確認された後、横締めPC鋼材5および縦締めPC鋼材5を緊張し、基準管2内壁に定着する。
(11) 基準管内に配筋し、基準管2内にコンクリートを打設する。
(12) 広巾覆工エレメント3と仮支承部材14による仮支承部材付き地下構造物1が形成された後、その構造物1内部の土砂を掘削する。多数の仮支承部材ユニットをガイド部材により遊嵌連結された仮支承部材14では、掘削につれて取り外しやすくなっている仮支承部材ユニットを順次取り除き、広巾覆工エレメント3を露出させる。
(13) 必要に応じ内面を化粧仕上げして、トンネルなどの地下構造物1を完成させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態の地下構造物を構築する場合を説明するため説明図であって、(a)は掘削装置と鋼製先導管と広巾覆工エレメント付き支承部材と推進装置を直列に編成した状態を示す側面図、(b)は鋼製先導管の後端部の受け部に広巾覆工エレメント付き支承部材の先端部を差し込んでいる状態を示す一部縦断側面図、(c)は鋼製先導管の後端部と広巾覆工エレメント付き支承部材を溶接により仮固定する形態を示す側面図、(d)は覆工エレメント付き支承部材相互を直列に連結する場合の形態を示す概略側面図、(e)は掘削装置と鋼製先導管と広巾覆工エレメント付き支承部材と推進装置を直列に編成した状態を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態の地下構造物を構築する場合の施工工程を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態の地下構造物を構築する場合の施工工程を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態の地下構造物を構築する場合の施工工程を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の地下構造物を示す縦断正面図である。
【図6】本発明の一実施形態の地下構造物を示す縦断正面図である。
【図7】複数のプレキャストコンクリート版を並列配置して一枚の版状体に一体化した形態を示す平面図である。
【図8】小型仮支承部材ユニットを連結して地下構造物を構築する本発明の他の形態の縦断正面図である。
【図9】従来の地下構造物の一形態を示す縦断正面図である。
【図10】従来の地下構造物のコーナー部を拡大して示す縦断正面図である。
【図11】従来の覆工エレメント相互のガイド部材を係合して連結している状態およびガイド部材により目地部が分断されることを説明するための斜視図である。
【図12】従来の方法により地下構造物を構築する場合の形態を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 地下構造物
2 基準管
3 広巾覆工エレメント
3a 覆工エレメント
4 充填材
5 PC鋼材
5a PC鋼材
5b PC鋼材
6 目地部
6a 目地部
6b 目地部
6c 目地部
7 ガイド部材
8 掘削用カッター
9 オーガー
10 掘削先管
11 鋼製先導管
12 推進装置
13 地中
14 仮支承部材
14a 広巾覆工エレメント付き仮支承部材
15 上板
16 下板
17 発進立坑
18 到達立坑
19 カプラー
20 受け部
21 仮支承部材付き地下構造物躯体
22 バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準管の間に覆工エレメントを配設した地下構造物において、間隔をおいてコーナー部に設けられる基準管の間に、その基準管の外形寸法よりも薄い1枚の広巾覆工エレメントが推進されて設置されていることを特徴とする地下構造物。
【請求項2】
基準管と前記広巾覆工エレメントの間に充填材を充填したことを特徴とする請求項1に記載の地下構造物。
【請求項3】
前記広巾覆工エレメントとこれを挟んでその両側の基準管間に渡って、PC鋼材が配置されると共にそのPC鋼材に緊張力を導入して定着されて、広巾覆工エレメントにプレストレスが導入されて前記各基準管と一体化されていることを特徴とする請求項1または2に記載の地下構造物。
【請求項4】
基準管の間に覆工エレメントを配設するようにする地下構造物の構築工法において、間隔をおいてコーナー部に設けられる基準管の間に、その基準管の外形寸法よりも薄い1枚の広巾覆工エレメントを推進するようにして設置することを特徴とする地下構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−247285(P2007−247285A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73061(P2006−73061)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【出願人】(593025446)日本ケーモー工事株式会社 (6)
【Fターム(参考)】