広帯域インパルス生成装置
【課題】トリガ信号を調整してベースバンドのインパルスを波形整形し、これをアップコンバートすることで、特定の周波数のスペクトルを低減した広帯域インパルスを生成する広帯域インパルス生成装置を提供する。
【解決手段】 広帯域インパルス生成装置100では、他の無線システムと干渉する周波数fnが与えられると、演算部110において上り・立下り時間Trを次式
Tr=1/|fn−f0|
で算出してトリガ信号10を生成することにより、周波数fnのスペクトルを低減させたヌル周波数を有する広帯域インパルス40を生成することができる。
【解決手段】 広帯域インパルス生成装置100では、他の無線システムと干渉する周波数fnが与えられると、演算部110において上り・立下り時間Trを次式
Tr=1/|fn−f0|
で算出してトリガ信号10を生成することにより、周波数fnのスペクトルを低減させたヌル周波数を有する広帯域インパルス40を生成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域インパルス生成装置の技術分野に関するもので、特に他の無線機器との干渉を低減した広帯域インパルス生成装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新しいコンセプトの無線技術として、500MHz乃至数GHzの帯域を利用した超広帯域無線システムであるUWB(Ultra Wide Band)無線システムが注目されている。UWBを利用したシステムとして、UWBレーダ装置やUWB無線通信システム等が知られている。
【0003】
UWBは、広帯域を利用することでパルス幅がナノ秒程度かそれ以下の超短パルス波を生成して用いたインパルス無線方式である。このような広帯域インパルスを生成する従来の方法を、図8を用いて説明する。同図では、(a)にバースト発振器910を用いた方法、(b)に連続波発振器920とスイッチ921とを用いた方法、及び(c)にベースバンドインパルス901をミキサ931でアップコンバートする方法、をそれぞれ示している。
【0004】
図8(a)に示すバースト発振器910を用いた方法では、バースト発振器910に所定のトリガ信号900を入力してパルスを発振させている。この方法では、パルスの形状がバースト発振器910の設計によって決まってしまい、例えば内蔵する増幅器の性能によってパルスの立ち上がり時間等が決まってしまう。そのため、バースト発振器910でパルス形状を変更するのは困難であり、設計変更やハードウェアの変更等が必要になってしまう。
【0005】
図8(b)に示す連続波発振器920とスイッチ921とを用いた方法では、高速に開閉するスイッチ素子と外部回路とが必要となり、このスイッチ921の特性によってパルス形状が決定されてしまう。そのため、この方法でもパルス形状を変更するのは容易ではない。
【0006】
これに対し、図8(c)に示すベースバンドインパルス901をアップコンバートする方法では、ベースバインドインパルス901の生成を、ディジタル処理で行うことが可能であり、パルス発生の制御方法をソフトウェアで容易に変更することが可能となっている。このディジタル処理には、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いることができる。
【0007】
UWBを利用した無線システムでは、信号に用いるパルスの周波数帯域が他の無線システムで利用する周波数帯と重なって干渉してしまう恐れがある。その一方で、パルス幅を狭くするほど平均送信電力が小さくなって到達距離が短くなることから、広帯域化してパルス幅を狭めることで到達距離を短くし、これにより同じ周波数帯を使う他の無線機器との混信を低減させるといったことが可能となる。
【0008】
無線通信システムの性能を確保しつつ他の無線通信システムへの干渉を低減させる技術が、特許文献1に開示されている。ここでは、送信信号スペクトルの単位周波数あたりの電力値を低減させる技術が開示されており、これにより他の無線通信システムへの干渉を低減している。
【0009】
上記従来の方法によれば、パルススペクトルのピークを低減させることが可能となるが、特定の周波数帯のみを低減させるといった要求には対応できない。このような特定の周波数帯のスペクトルのみを低減させる方法としては、例えばノッチフィルタを用いる方法が従来から知られている。ノッチフィルタは、特定の周波数帯域のスペクトルのみを抑制することが可能となっている。
【0010】
【特許文献1】特開2006−115217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ノッチフィルタ等の帯域ろ波器を用いて特定の周波数帯を抑制する従来の方法では、特定の周波数帯のスペクトルに対し大きな抑制効果が得られるものの、時間領域で見たパルス波形への影響が大きく、この影響を抑制するのが極めて難しいといった問題があった。例えば、時間領域で矩形波形のパルスに対し、ノッチフィルタを用いて特定の周波数帯のスペクトルを抑制するよう波形整形した場合には、パルスの矩形波形が乱れるだけでなく、比較的長い時間にわたってサイドローブが発生してしまうといった問題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、トリガ信号を調整してベースバンドのインパルスを波形整形し、これをアップコンバートすることで、特定の周波数のスペクトルを低減した広帯域インパルスを生成する広帯域インパルス生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広帯域インパルス生成装置の第1の態様は、所定の立上り・立下り時間及び所定のパルス幅からなるトリガ信号を生成する演算部と、前記演算部から前記トリガ信号を入力して所定の周波数のスペクトル成分が低減されたヌル周波数を有する広帯域インパルスを生成する広帯域インパルス源と、を備え、前記演算部は、前記ヌル周波数をfnとし、前記トリガ信号の前記立上り時間をTrとするとき、前記Trを次式
[数1]
Tr=1/fn (式1)
で算出して前記トリガ信号を設定していることを特徴とする。
【0014】
本発明の広帯域インパルス生成装置の他の態様は、前記パルス幅をTwとし、mを0を含まない自然数とするとき、前記Twを次式
[数2]
Tw=m/fn (式2)
で算出して前記トリガ信号を設定していることを特徴とする。
【0015】
本発明の広帯域インパルス生成装置の他の態様は、所定の立上り・立下り時間及び所定のパルス幅からなるトリガ信号を生成する演算部と、前記演算部から前記トリガ信号を入力して所定の周波数のスペクトル成分が低減されたヌル周波数を有する広帯域インパルスを生成する広帯域インパルス源と、所定の周波数の連続波を発振する連続波発振源と、前記広帯域インパルスと前記連続波とを入力し、これを混合することで前記広帯域インパルスをアップコンバートするミキサと、を備え、前記演算部は、前記ヌル周波数をfnとし、前記立上り時間をTrとし、さらに前記連続波の周波数をf0とするとき、前記Trを次式
[数3]
Tr=1/|fn−f0| (式3)
で算出して前記トリガ信号を設定していることを特徴とする。
【0016】
本発明の広帯域インパルス生成装置の他の態様は、前記パルス幅をTwとし、mを0を含まない自然数とするとき、前記Twを次式
[数4]
Tw=m/|fn−f0| (式4)
で算出して前記トリガ信号を設定していることを特徴とする。
【0017】
本発明の広帯域インパルス生成装置の他の態様は、前記広帯域インパルスの周波数帯域は、22GHz以上29GHz以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明の広帯域インパルス生成装置の他の態様は、前記広帯域インパルスは、帯域幅が少なくとも500MHz以上のUWB信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、トリガ信号を調整することにより、ベースバンドのインパルスを波形整形し、これをアップコンバートすることで、特定の周波数帯のスペクトルを低減したインパルスを生成する広帯域インパルス生成装置を提供することが可能となる。本発明の広帯域インパルス生成装置は、トリガ信号を調整するだけで特定の周波数帯のスペクトルを低減することができ、これにより他の無線システムとの干渉を容易に回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態における広帯域インパルス生成装置について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0021】
本発明の広帯域インパルス生成装置は、帯域幅が少なくとも500MHz以上の広帯域なUWBインパルスを生成するものであり、この帯域内に他の無線システムで利用している周波数が含まれている場合には、該無線システムとの干渉を避けるために、その周波数のスペクトル成分を低減させたインパルスを生成するよう構成されている。このように、スペクトル成分を低減させた周波数を、以下ではヌル周波数という。ここで、ヌル周波数の「ヌル」とは、ゼロを意味するものではなく、他の周波数のスペクトルに比べて十分低いことを意味している。
【0022】
本発明の実施の形態に係る広帯域インパルス生成装置の構成を、図1に示すブロック図を用いて以下に説明する。本実施形態の広帯域インパルス生成装置100は、所定のインパルスを発生させるためのトリガ信号10を生成する演算部110と、演算部110からトリガ信号10を入力してベースバンドで広帯域なインパルス20を生成する広帯域インパルス源120と、周波数一定の連続波30を発生させる連続波発振源130と、広帯域インパルス20と連続波30とを混合して広帯域インパルス20をアップコンバートするミキサ140とを備えている。
【0023】
本実施形態の広帯域インパルス生成装置100では、演算部110で生成したトリガ信号10に基づいて、広帯域インパルス源120で広帯域インパルス20を発生させるようにしているが、このトリガ信号10を調整することで所定のヌル周波数を有する広帯域インパルス20を発生させることが可能となっている。本実施形態では、ヌル周波数となる周波数を指定すると、この周波数に基づいてトリガ信号10を生成し、これを広帯域インパルス源120に入力することで、指定された周波数をヌル周波数とする広帯域インパルス20を生成することができる。
【0024】
ヌル周波数とする周波数を、本実施形態の広帯域インパルス生成装置100では、記憶手段111に記憶させるようにしている。あるいは、ヌル周波数を外部から指定できるようにしてもよい。演算部110は、記憶手段111からヌル周波数を読み込み、これをもとにトリガ信号10の波形を決定して出力している。
【0025】
広帯域インパルス源120は、ベースバンドで広帯域なインパルスを生成するものであり、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成することができる。FPGAを用いた場合には、演算部110からディジタルなトリガ信号10を入力し、これをもとに高精度な波形の広帯域インパルス20を生成して出力することができる。
【0026】
広帯域インパルス源120で生成されるベースバンドのインパルス20は、その時間波形や周波数スペクトルが演算部110から入力するトリガ信号10によって決定される。従って、演算部110でトリガ信号10を調整することによって、広帯域インパルス源120で生成される広帯域インパルス20の時間波形や周波数スペクトルを容易に調整することができる。
【0027】
ベースバンドで生成された広帯域インパルス20は、連続波発振源130で生成された連続波30とミキサ140で混合され、これにより連続波30の周波数を中心周波数とする帯域までアップコンバートして出力される。なお、ミキサ140によるアップコンバートを行わず、ベースバンドの広帯域インパルス20をそのまま出力して用いることも可能である。この場合でも、指定された周波数位置にヌル周波数を形成することができる。
【0028】
広帯域インパルス源120に入力されるトリガ信号10と、これに基づいて生成される広帯域インパルス20の周波数スペクトルとの関係を以下に説明する。一例として、中心周波数26.5GHz、パルス幅1nsec(ナノ秒)のインパルスについて、その時間波形及び周波数スペクトルをそれぞれ図2(a)、(b)に示す。図2(a)に示すような完全な矩形波50では、パルス幅1nsecに対応して中心周波数26.5GHzから1GHz毎にヌル周波数(図中白矢印で示す)が周波数スペクトル51に形成されている。以下では、パルス幅に対応して形成されるヌル周波数をメイン・ヌル周波数という。
【0029】
このように、パルス幅に対応してメイン・ヌル周波数が生成されることから、パルス幅を調整することで所定の周波数位置にヌル周波数を生成させることが可能である。しかしながら、パルス幅は、例えばレーダに用いるインパルスでは距離分解能に大きく影響することから、これを自由に変更することはできない。そこで、本実施形態の広帯域インパルス生成装置100では、インパルスを生成するためのトリガ信号の立上り時間を変更することで、ヌル周波数を調整可能としている。
【0030】
本実施形態の帯域インパルス生成装置100では、所定の周波数位置にヌル周波数を有する広帯域インパルス20を生成するために、まず演算部110において図3に示すようなトリガ信号10を生成している。トリガ信号10は、台形状の信号(以下では台形波という)11を繰返し周期Tで発生させるように形成されている。台形波11の形状は、立上り・立下り時間Trと、パルス保持時間T1とから決定され、パルス幅(半値幅)Twとは以下の関係がある。なお、立下り時間については必ずしも立上り時間と等しくする必要はないが、以下では簡単のため立下り時間を立上り時間と同じTrとしている。
[数5]
Tw=T1+Tr (式5)
【0031】
広帯域インパルス源120は、立上り・立下り時間がTrのトリガ信号10を入力すると、周波数が1/Trの位置にヌル周波数fbを有するベースバンドの広帯域インパルス20を生成する。すなわち、立上り・立下り時間Trを次式
[数6]
Tr=1/fb (式6)
で決定することで、ベースバンドの周波数fbの位置にヌル周波数を生成することができる。
【0032】
また、パルス幅Twを次式
[数7]
Tw=m/fb (式7)
で算出して図3のトリガ信号を設定した場合には、メイン・ヌル周波数が周波数fnの位置にも形成されるようにすることができる。これにより、周波数fnのスペクトルをさらに低減させることができる。なお、(式7)において、mは0を含まない自然数(以下同様)を表しており、許容されるパルス幅の範囲において適宜設定することができる。
【0033】
ベースバンドにおける広帯域インパルス20のスペクトルを、模式的に図4に示す。広帯域インパルス20のスペクトルには、パルス幅Twに対応して形成されるヌル周波数(図中白矢印で示す)に加えて、周波数fbの位置にも立上り・立下り時間Trに対応してヌル周波数(図中黒矢印で示す)が形成されている。
【0034】
広帯域インパルス源120で生成されたベースバンドの広帯域インパルス20は、連続波30と混合されて所定の高周波帯域にアップコンバートされるが、このアップコンバートに用いる連続波30の周波数をf0とするとき、立上り・立下り時間Trに対応して形成されるヌル周波数は、次式で与えられる周波数位置fnに移動する。
[数8]
fn=f0+fb (式8)
【0035】
これより、他の無線システムと干渉する周波数がfnとして与えられたとき、立上り・立下り時間Trを次式
[数9]
Tr=1/|fn−f0| (式9)
で算出してトリガ信号10を生成することにより、周波数fnの位置にヌル周波数を形成することができる。
【0036】
また、パルス幅Twに対応するメイン・ヌル周波数を周波数fnに形成するためには、パルス幅Twを次式
[数10]
Tr=m/|fn−f0| (式10)
で算出し、これと(式9)で算出された上り・立下り時間Trを用いてトリガ信号10を生成することにより、周波数fnの位置にヌル周波数を形成することができる。
【0037】
上記の通り、本実施形態の広帯域インパルス生成装置では、他の無線システムと干渉する周波数fnが与えられると、(式9)に基づいて立上り・立下り時間Trを算出し、これを用いてトリガ信号10を生成することで、周波数fnのスペクトルを低減させたヌル周波数を有する広帯域インパルス40を生成することができる。
【0038】
また、パルス幅Twを(式10)に基づいて算出して用いることにより、メイン・ヌル周波数が周波数fnに位置する広帯域インパルス40を生成することができ、これにより周波数fnのスペクトルをさらに低減させることができる。
【0039】
本実施形態の広帯域インパルス生成装置100において、指定された周波数位置にヌル周波数を形成する方法を、図5に示す流れ図を用いてさらに詳細に説明する。図5(a)は、パルス幅Twが事前に設定されている場合であり、図5(b)は、パルス幅Twも演算部110で算出する場合を示している。
【0040】
図5(a)に示す流れ図において、ヌル周波数とする周波数fnが指定されると、これを演算部110に入力する(ステップS1)。本実施形態では、指定された周波数fnを記憶手段111に記憶させておき、これを演算部110が読み込むようにしている。
【0041】
次のステップS2では、アップコンバートに用いる連続波30の周波数f0を演算部110に入力している。本実施形態では、連続波30の周波数f0も記憶手段111に記憶させており、演算部110がこれを読み込むようにしている。
【0042】
ステップS3では、指定された周波数fnと連続波30の周波数f0とから、(式9)を用いて立上り・立下り時間Trを算出する。本実施例では、パルス幅Twが事前に決定されていることから、これと上記で算出したTrを用いて図3に示すトリガ信号10を生成する(ステップS4)。
【0043】
次に、パルス幅Twも演算部110で算出する図5(b)の場合には、ステップS13までの処理により、図5(a)と同様にして立上り・立下り時間Trを算出する。そして、次のステップS14において、(式10)を用いてパルス幅Twを算出する。ステップS15では、ステップS13で算出された立上り・立下り時間TrとステップS14で算出されたパルス幅Twとから、図3に示すトリガ信号を設定する。
【0044】
本実施形態の広帯域インパルス生成装置100を用いて、所定の周波数位置にヌル周波数を形成した一実施例を、図6を用いて説明する。図6は、連続波30の周波数f0を26.5GHz、パルス幅Twを1nsecとし、ヌル周波数fnを23.85GHzに形成するよう指定されたときの、広帯域インパルス生成装置100で生成された広帯域インパルス40の時間波形60(図6(a))と周波数スペクトル61(図6(b))を示している。
【0045】
時間波形60は、トリガ信号10の波形に対応して、台形波を上下に対称に組み合わせた形状となる。また、図6(b)に示すスペクトル61では、白矢印で示すメイン・ヌル周波数62に加えて、黒矢印で示すヌル周波数63が形成されている。このヌル周波数63を形成するために、トリガ信号10の立上り・立下り時間Trを、周波数f0とヌル周波数fnとから(式9)を用いて算出しており、Tr=377psecとなる。このTrとパルス幅Tw=1nsecとから、図3に示すトリガ信号10を決定して用いている。
【0046】
本実施形態の広帯域インパルス生成装置100を用いて、所定の周波数位置にヌル周波数を形成した別の実施例を、図7を用いて説明する。ここでは、パルス幅Twも、指定されたヌル周波数fnに対応して決定した例を示している。連続波30の周波数f0及びヌル周波数fnは、上記と同じ26.5GHz及び23.85GHzとしている。この場合、立上り・立下り時間Trは、(式9)からTr=377psecと算出される。
【0047】
また、本実施例ではパルス幅Twを(式10)を用いて算出しており、ここではm=3としてTw=1132psecとしている。Tr=377psecとし、Tw=1132psecとして図3に示すトリガ信号を形成し、これを用いて広帯域インパルス生成装置100で生成した広帯域インパルス40の周波数スペクトル71を図7に示している。
【0048】
図7に示すように、ヌル周波数が指定された23.85GHzに形成され、さらにメイン・ヌル周波数も同じ23.85GHzに位置するようにしたことにより、ヌル周波数23.85GHzにおけるスペクトルがさらに低減されている。
【0049】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る広帯域インパルス生成装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における広帯域インパルス生成装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る広帯域インパルス生成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】広帯域インパルスの時間波形及び周波数スペクトルの例を示す図である。
【図3】本実施形態の広帯域インパルス生成装置で生成するトリガ信号を示す図である。
【図4】ベースバンドにおける広帯域インパルスのスペクトルを模式的に示す図である。
【図5】本実施形態の広帯域インパルス生成装置でヌル周波数を形成する方法を示す流れ図である。
【図6】本実施形態の広帯域インパルス生成装置で生成した広帯域インパルスの一実施例を示す図である。
【図7】本実施形態の広帯域インパルス生成装置で生成した広帯域インパルスの別の実施例を示す図である。
【図8】従来の広帯域インパルスを生成する方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0051】
10 トリガ信号
20 広帯域インパルス
30 連続波
40 広帯域インパルス
100 広帯域インパルス生成装置
110 演算部
111 記憶手段
120 広帯域インパルス源
130 連続波発振源
140 ミキサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域インパルス生成装置の技術分野に関するもので、特に他の無線機器との干渉を低減した広帯域インパルス生成装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新しいコンセプトの無線技術として、500MHz乃至数GHzの帯域を利用した超広帯域無線システムであるUWB(Ultra Wide Band)無線システムが注目されている。UWBを利用したシステムとして、UWBレーダ装置やUWB無線通信システム等が知られている。
【0003】
UWBは、広帯域を利用することでパルス幅がナノ秒程度かそれ以下の超短パルス波を生成して用いたインパルス無線方式である。このような広帯域インパルスを生成する従来の方法を、図8を用いて説明する。同図では、(a)にバースト発振器910を用いた方法、(b)に連続波発振器920とスイッチ921とを用いた方法、及び(c)にベースバンドインパルス901をミキサ931でアップコンバートする方法、をそれぞれ示している。
【0004】
図8(a)に示すバースト発振器910を用いた方法では、バースト発振器910に所定のトリガ信号900を入力してパルスを発振させている。この方法では、パルスの形状がバースト発振器910の設計によって決まってしまい、例えば内蔵する増幅器の性能によってパルスの立ち上がり時間等が決まってしまう。そのため、バースト発振器910でパルス形状を変更するのは困難であり、設計変更やハードウェアの変更等が必要になってしまう。
【0005】
図8(b)に示す連続波発振器920とスイッチ921とを用いた方法では、高速に開閉するスイッチ素子と外部回路とが必要となり、このスイッチ921の特性によってパルス形状が決定されてしまう。そのため、この方法でもパルス形状を変更するのは容易ではない。
【0006】
これに対し、図8(c)に示すベースバンドインパルス901をアップコンバートする方法では、ベースバインドインパルス901の生成を、ディジタル処理で行うことが可能であり、パルス発生の制御方法をソフトウェアで容易に変更することが可能となっている。このディジタル処理には、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いることができる。
【0007】
UWBを利用した無線システムでは、信号に用いるパルスの周波数帯域が他の無線システムで利用する周波数帯と重なって干渉してしまう恐れがある。その一方で、パルス幅を狭くするほど平均送信電力が小さくなって到達距離が短くなることから、広帯域化してパルス幅を狭めることで到達距離を短くし、これにより同じ周波数帯を使う他の無線機器との混信を低減させるといったことが可能となる。
【0008】
無線通信システムの性能を確保しつつ他の無線通信システムへの干渉を低減させる技術が、特許文献1に開示されている。ここでは、送信信号スペクトルの単位周波数あたりの電力値を低減させる技術が開示されており、これにより他の無線通信システムへの干渉を低減している。
【0009】
上記従来の方法によれば、パルススペクトルのピークを低減させることが可能となるが、特定の周波数帯のみを低減させるといった要求には対応できない。このような特定の周波数帯のスペクトルのみを低減させる方法としては、例えばノッチフィルタを用いる方法が従来から知られている。ノッチフィルタは、特定の周波数帯域のスペクトルのみを抑制することが可能となっている。
【0010】
【特許文献1】特開2006−115217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ノッチフィルタ等の帯域ろ波器を用いて特定の周波数帯を抑制する従来の方法では、特定の周波数帯のスペクトルに対し大きな抑制効果が得られるものの、時間領域で見たパルス波形への影響が大きく、この影響を抑制するのが極めて難しいといった問題があった。例えば、時間領域で矩形波形のパルスに対し、ノッチフィルタを用いて特定の周波数帯のスペクトルを抑制するよう波形整形した場合には、パルスの矩形波形が乱れるだけでなく、比較的長い時間にわたってサイドローブが発生してしまうといった問題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、トリガ信号を調整してベースバンドのインパルスを波形整形し、これをアップコンバートすることで、特定の周波数のスペクトルを低減した広帯域インパルスを生成する広帯域インパルス生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広帯域インパルス生成装置の第1の態様は、所定の立上り・立下り時間及び所定のパルス幅からなるトリガ信号を生成する演算部と、前記演算部から前記トリガ信号を入力して所定の周波数のスペクトル成分が低減されたヌル周波数を有する広帯域インパルスを生成する広帯域インパルス源と、を備え、前記演算部は、前記ヌル周波数をfnとし、前記トリガ信号の前記立上り時間をTrとするとき、前記Trを次式
[数1]
Tr=1/fn (式1)
で算出して前記トリガ信号を設定していることを特徴とする。
【0014】
本発明の広帯域インパルス生成装置の他の態様は、前記パルス幅をTwとし、mを0を含まない自然数とするとき、前記Twを次式
[数2]
Tw=m/fn (式2)
で算出して前記トリガ信号を設定していることを特徴とする。
【0015】
本発明の広帯域インパルス生成装置の他の態様は、所定の立上り・立下り時間及び所定のパルス幅からなるトリガ信号を生成する演算部と、前記演算部から前記トリガ信号を入力して所定の周波数のスペクトル成分が低減されたヌル周波数を有する広帯域インパルスを生成する広帯域インパルス源と、所定の周波数の連続波を発振する連続波発振源と、前記広帯域インパルスと前記連続波とを入力し、これを混合することで前記広帯域インパルスをアップコンバートするミキサと、を備え、前記演算部は、前記ヌル周波数をfnとし、前記立上り時間をTrとし、さらに前記連続波の周波数をf0とするとき、前記Trを次式
[数3]
Tr=1/|fn−f0| (式3)
で算出して前記トリガ信号を設定していることを特徴とする。
【0016】
本発明の広帯域インパルス生成装置の他の態様は、前記パルス幅をTwとし、mを0を含まない自然数とするとき、前記Twを次式
[数4]
Tw=m/|fn−f0| (式4)
で算出して前記トリガ信号を設定していることを特徴とする。
【0017】
本発明の広帯域インパルス生成装置の他の態様は、前記広帯域インパルスの周波数帯域は、22GHz以上29GHz以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明の広帯域インパルス生成装置の他の態様は、前記広帯域インパルスは、帯域幅が少なくとも500MHz以上のUWB信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、トリガ信号を調整することにより、ベースバンドのインパルスを波形整形し、これをアップコンバートすることで、特定の周波数帯のスペクトルを低減したインパルスを生成する広帯域インパルス生成装置を提供することが可能となる。本発明の広帯域インパルス生成装置は、トリガ信号を調整するだけで特定の周波数帯のスペクトルを低減することができ、これにより他の無線システムとの干渉を容易に回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態における広帯域インパルス生成装置について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0021】
本発明の広帯域インパルス生成装置は、帯域幅が少なくとも500MHz以上の広帯域なUWBインパルスを生成するものであり、この帯域内に他の無線システムで利用している周波数が含まれている場合には、該無線システムとの干渉を避けるために、その周波数のスペクトル成分を低減させたインパルスを生成するよう構成されている。このように、スペクトル成分を低減させた周波数を、以下ではヌル周波数という。ここで、ヌル周波数の「ヌル」とは、ゼロを意味するものではなく、他の周波数のスペクトルに比べて十分低いことを意味している。
【0022】
本発明の実施の形態に係る広帯域インパルス生成装置の構成を、図1に示すブロック図を用いて以下に説明する。本実施形態の広帯域インパルス生成装置100は、所定のインパルスを発生させるためのトリガ信号10を生成する演算部110と、演算部110からトリガ信号10を入力してベースバンドで広帯域なインパルス20を生成する広帯域インパルス源120と、周波数一定の連続波30を発生させる連続波発振源130と、広帯域インパルス20と連続波30とを混合して広帯域インパルス20をアップコンバートするミキサ140とを備えている。
【0023】
本実施形態の広帯域インパルス生成装置100では、演算部110で生成したトリガ信号10に基づいて、広帯域インパルス源120で広帯域インパルス20を発生させるようにしているが、このトリガ信号10を調整することで所定のヌル周波数を有する広帯域インパルス20を発生させることが可能となっている。本実施形態では、ヌル周波数となる周波数を指定すると、この周波数に基づいてトリガ信号10を生成し、これを広帯域インパルス源120に入力することで、指定された周波数をヌル周波数とする広帯域インパルス20を生成することができる。
【0024】
ヌル周波数とする周波数を、本実施形態の広帯域インパルス生成装置100では、記憶手段111に記憶させるようにしている。あるいは、ヌル周波数を外部から指定できるようにしてもよい。演算部110は、記憶手段111からヌル周波数を読み込み、これをもとにトリガ信号10の波形を決定して出力している。
【0025】
広帯域インパルス源120は、ベースバンドで広帯域なインパルスを生成するものであり、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成することができる。FPGAを用いた場合には、演算部110からディジタルなトリガ信号10を入力し、これをもとに高精度な波形の広帯域インパルス20を生成して出力することができる。
【0026】
広帯域インパルス源120で生成されるベースバンドのインパルス20は、その時間波形や周波数スペクトルが演算部110から入力するトリガ信号10によって決定される。従って、演算部110でトリガ信号10を調整することによって、広帯域インパルス源120で生成される広帯域インパルス20の時間波形や周波数スペクトルを容易に調整することができる。
【0027】
ベースバンドで生成された広帯域インパルス20は、連続波発振源130で生成された連続波30とミキサ140で混合され、これにより連続波30の周波数を中心周波数とする帯域までアップコンバートして出力される。なお、ミキサ140によるアップコンバートを行わず、ベースバンドの広帯域インパルス20をそのまま出力して用いることも可能である。この場合でも、指定された周波数位置にヌル周波数を形成することができる。
【0028】
広帯域インパルス源120に入力されるトリガ信号10と、これに基づいて生成される広帯域インパルス20の周波数スペクトルとの関係を以下に説明する。一例として、中心周波数26.5GHz、パルス幅1nsec(ナノ秒)のインパルスについて、その時間波形及び周波数スペクトルをそれぞれ図2(a)、(b)に示す。図2(a)に示すような完全な矩形波50では、パルス幅1nsecに対応して中心周波数26.5GHzから1GHz毎にヌル周波数(図中白矢印で示す)が周波数スペクトル51に形成されている。以下では、パルス幅に対応して形成されるヌル周波数をメイン・ヌル周波数という。
【0029】
このように、パルス幅に対応してメイン・ヌル周波数が生成されることから、パルス幅を調整することで所定の周波数位置にヌル周波数を生成させることが可能である。しかしながら、パルス幅は、例えばレーダに用いるインパルスでは距離分解能に大きく影響することから、これを自由に変更することはできない。そこで、本実施形態の広帯域インパルス生成装置100では、インパルスを生成するためのトリガ信号の立上り時間を変更することで、ヌル周波数を調整可能としている。
【0030】
本実施形態の帯域インパルス生成装置100では、所定の周波数位置にヌル周波数を有する広帯域インパルス20を生成するために、まず演算部110において図3に示すようなトリガ信号10を生成している。トリガ信号10は、台形状の信号(以下では台形波という)11を繰返し周期Tで発生させるように形成されている。台形波11の形状は、立上り・立下り時間Trと、パルス保持時間T1とから決定され、パルス幅(半値幅)Twとは以下の関係がある。なお、立下り時間については必ずしも立上り時間と等しくする必要はないが、以下では簡単のため立下り時間を立上り時間と同じTrとしている。
[数5]
Tw=T1+Tr (式5)
【0031】
広帯域インパルス源120は、立上り・立下り時間がTrのトリガ信号10を入力すると、周波数が1/Trの位置にヌル周波数fbを有するベースバンドの広帯域インパルス20を生成する。すなわち、立上り・立下り時間Trを次式
[数6]
Tr=1/fb (式6)
で決定することで、ベースバンドの周波数fbの位置にヌル周波数を生成することができる。
【0032】
また、パルス幅Twを次式
[数7]
Tw=m/fb (式7)
で算出して図3のトリガ信号を設定した場合には、メイン・ヌル周波数が周波数fnの位置にも形成されるようにすることができる。これにより、周波数fnのスペクトルをさらに低減させることができる。なお、(式7)において、mは0を含まない自然数(以下同様)を表しており、許容されるパルス幅の範囲において適宜設定することができる。
【0033】
ベースバンドにおける広帯域インパルス20のスペクトルを、模式的に図4に示す。広帯域インパルス20のスペクトルには、パルス幅Twに対応して形成されるヌル周波数(図中白矢印で示す)に加えて、周波数fbの位置にも立上り・立下り時間Trに対応してヌル周波数(図中黒矢印で示す)が形成されている。
【0034】
広帯域インパルス源120で生成されたベースバンドの広帯域インパルス20は、連続波30と混合されて所定の高周波帯域にアップコンバートされるが、このアップコンバートに用いる連続波30の周波数をf0とするとき、立上り・立下り時間Trに対応して形成されるヌル周波数は、次式で与えられる周波数位置fnに移動する。
[数8]
fn=f0+fb (式8)
【0035】
これより、他の無線システムと干渉する周波数がfnとして与えられたとき、立上り・立下り時間Trを次式
[数9]
Tr=1/|fn−f0| (式9)
で算出してトリガ信号10を生成することにより、周波数fnの位置にヌル周波数を形成することができる。
【0036】
また、パルス幅Twに対応するメイン・ヌル周波数を周波数fnに形成するためには、パルス幅Twを次式
[数10]
Tr=m/|fn−f0| (式10)
で算出し、これと(式9)で算出された上り・立下り時間Trを用いてトリガ信号10を生成することにより、周波数fnの位置にヌル周波数を形成することができる。
【0037】
上記の通り、本実施形態の広帯域インパルス生成装置では、他の無線システムと干渉する周波数fnが与えられると、(式9)に基づいて立上り・立下り時間Trを算出し、これを用いてトリガ信号10を生成することで、周波数fnのスペクトルを低減させたヌル周波数を有する広帯域インパルス40を生成することができる。
【0038】
また、パルス幅Twを(式10)に基づいて算出して用いることにより、メイン・ヌル周波数が周波数fnに位置する広帯域インパルス40を生成することができ、これにより周波数fnのスペクトルをさらに低減させることができる。
【0039】
本実施形態の広帯域インパルス生成装置100において、指定された周波数位置にヌル周波数を形成する方法を、図5に示す流れ図を用いてさらに詳細に説明する。図5(a)は、パルス幅Twが事前に設定されている場合であり、図5(b)は、パルス幅Twも演算部110で算出する場合を示している。
【0040】
図5(a)に示す流れ図において、ヌル周波数とする周波数fnが指定されると、これを演算部110に入力する(ステップS1)。本実施形態では、指定された周波数fnを記憶手段111に記憶させておき、これを演算部110が読み込むようにしている。
【0041】
次のステップS2では、アップコンバートに用いる連続波30の周波数f0を演算部110に入力している。本実施形態では、連続波30の周波数f0も記憶手段111に記憶させており、演算部110がこれを読み込むようにしている。
【0042】
ステップS3では、指定された周波数fnと連続波30の周波数f0とから、(式9)を用いて立上り・立下り時間Trを算出する。本実施例では、パルス幅Twが事前に決定されていることから、これと上記で算出したTrを用いて図3に示すトリガ信号10を生成する(ステップS4)。
【0043】
次に、パルス幅Twも演算部110で算出する図5(b)の場合には、ステップS13までの処理により、図5(a)と同様にして立上り・立下り時間Trを算出する。そして、次のステップS14において、(式10)を用いてパルス幅Twを算出する。ステップS15では、ステップS13で算出された立上り・立下り時間TrとステップS14で算出されたパルス幅Twとから、図3に示すトリガ信号を設定する。
【0044】
本実施形態の広帯域インパルス生成装置100を用いて、所定の周波数位置にヌル周波数を形成した一実施例を、図6を用いて説明する。図6は、連続波30の周波数f0を26.5GHz、パルス幅Twを1nsecとし、ヌル周波数fnを23.85GHzに形成するよう指定されたときの、広帯域インパルス生成装置100で生成された広帯域インパルス40の時間波形60(図6(a))と周波数スペクトル61(図6(b))を示している。
【0045】
時間波形60は、トリガ信号10の波形に対応して、台形波を上下に対称に組み合わせた形状となる。また、図6(b)に示すスペクトル61では、白矢印で示すメイン・ヌル周波数62に加えて、黒矢印で示すヌル周波数63が形成されている。このヌル周波数63を形成するために、トリガ信号10の立上り・立下り時間Trを、周波数f0とヌル周波数fnとから(式9)を用いて算出しており、Tr=377psecとなる。このTrとパルス幅Tw=1nsecとから、図3に示すトリガ信号10を決定して用いている。
【0046】
本実施形態の広帯域インパルス生成装置100を用いて、所定の周波数位置にヌル周波数を形成した別の実施例を、図7を用いて説明する。ここでは、パルス幅Twも、指定されたヌル周波数fnに対応して決定した例を示している。連続波30の周波数f0及びヌル周波数fnは、上記と同じ26.5GHz及び23.85GHzとしている。この場合、立上り・立下り時間Trは、(式9)からTr=377psecと算出される。
【0047】
また、本実施例ではパルス幅Twを(式10)を用いて算出しており、ここではm=3としてTw=1132psecとしている。Tr=377psecとし、Tw=1132psecとして図3に示すトリガ信号を形成し、これを用いて広帯域インパルス生成装置100で生成した広帯域インパルス40の周波数スペクトル71を図7に示している。
【0048】
図7に示すように、ヌル周波数が指定された23.85GHzに形成され、さらにメイン・ヌル周波数も同じ23.85GHzに位置するようにしたことにより、ヌル周波数23.85GHzにおけるスペクトルがさらに低減されている。
【0049】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る広帯域インパルス生成装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における広帯域インパルス生成装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る広帯域インパルス生成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】広帯域インパルスの時間波形及び周波数スペクトルの例を示す図である。
【図3】本実施形態の広帯域インパルス生成装置で生成するトリガ信号を示す図である。
【図4】ベースバンドにおける広帯域インパルスのスペクトルを模式的に示す図である。
【図5】本実施形態の広帯域インパルス生成装置でヌル周波数を形成する方法を示す流れ図である。
【図6】本実施形態の広帯域インパルス生成装置で生成した広帯域インパルスの一実施例を示す図である。
【図7】本実施形態の広帯域インパルス生成装置で生成した広帯域インパルスの別の実施例を示す図である。
【図8】従来の広帯域インパルスを生成する方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0051】
10 トリガ信号
20 広帯域インパルス
30 連続波
40 広帯域インパルス
100 広帯域インパルス生成装置
110 演算部
111 記憶手段
120 広帯域インパルス源
130 連続波発振源
140 ミキサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の立上り・立下り時間及び所定のパルス幅からなるトリガ信号を生成する演算部と、
前記演算部から前記トリガ信号を入力して所定の周波数のスペクトル成分が低減されたヌル周波数を有する広帯域インパルスを生成する広帯域インパルス源と、を備え、
前記演算部は、前記ヌル周波数をfnとし、前記トリガ信号の前記立上り時間をTrとするとき、前記Trを次式
[数1]
Tr=1/fn
で算出して前記トリガ信号を設定している
ことを特徴とする広帯域インパルス生成装置。
【請求項2】
前記パルス幅をTwとし、mを0を含まない自然数とするとき、前記Twを次式
[数2]
Tw=m/fn
で算出して前記トリガ信号を設定している
ことを特徴とする請求項1に記載の広帯域インパルス生成装置。
【請求項3】
所定の立上り・立下り時間及び所定のパルス幅からなるトリガ信号を生成する演算部と、
前記演算部から前記トリガ信号を入力して所定の周波数のスペクトル成分が低減されたヌル周波数を有する広帯域インパルスを生成する広帯域インパルス源と、
所定の周波数の連続波を発振する連続波発振源と、
前記広帯域インパルスと前記連続波とを入力し、これを混合することで前記広帯域インパルスをアップコンバートするミキサと、を備え、
前記演算部は、前記ヌル周波数をfnとし、前記立上り時間をTrとし、さらに前記連続波の周波数をf0とするとき、前記Trを次式
[数3]
Tr=1/|fn−f0|
で算出して前記トリガ信号を設定している
ことを特徴とする広帯域インパルス生成装置。
【請求項4】
前記パルス幅をTwとし、mを0を含まない自然数とするとき、前記Twを次式
[数4]
Tw=m/|fn−f0|
で算出して前記トリガ信号を設定している
ことを特徴とする請求項3に記載の広帯域インパルス生成装置。
【請求項5】
前記広帯域インパルスの周波数帯域は、22GHz以上29GHz以下である
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の広帯域インパルス生成装置。
【請求項6】
前記広帯域インパルスは、帯域幅が少なくとも500MHz以上のUWB信号である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の広帯域インパルス生成装置。
【請求項1】
所定の立上り・立下り時間及び所定のパルス幅からなるトリガ信号を生成する演算部と、
前記演算部から前記トリガ信号を入力して所定の周波数のスペクトル成分が低減されたヌル周波数を有する広帯域インパルスを生成する広帯域インパルス源と、を備え、
前記演算部は、前記ヌル周波数をfnとし、前記トリガ信号の前記立上り時間をTrとするとき、前記Trを次式
[数1]
Tr=1/fn
で算出して前記トリガ信号を設定している
ことを特徴とする広帯域インパルス生成装置。
【請求項2】
前記パルス幅をTwとし、mを0を含まない自然数とするとき、前記Twを次式
[数2]
Tw=m/fn
で算出して前記トリガ信号を設定している
ことを特徴とする請求項1に記載の広帯域インパルス生成装置。
【請求項3】
所定の立上り・立下り時間及び所定のパルス幅からなるトリガ信号を生成する演算部と、
前記演算部から前記トリガ信号を入力して所定の周波数のスペクトル成分が低減されたヌル周波数を有する広帯域インパルスを生成する広帯域インパルス源と、
所定の周波数の連続波を発振する連続波発振源と、
前記広帯域インパルスと前記連続波とを入力し、これを混合することで前記広帯域インパルスをアップコンバートするミキサと、を備え、
前記演算部は、前記ヌル周波数をfnとし、前記立上り時間をTrとし、さらに前記連続波の周波数をf0とするとき、前記Trを次式
[数3]
Tr=1/|fn−f0|
で算出して前記トリガ信号を設定している
ことを特徴とする広帯域インパルス生成装置。
【請求項4】
前記パルス幅をTwとし、mを0を含まない自然数とするとき、前記Twを次式
[数4]
Tw=m/|fn−f0|
で算出して前記トリガ信号を設定している
ことを特徴とする請求項3に記載の広帯域インパルス生成装置。
【請求項5】
前記広帯域インパルスの周波数帯域は、22GHz以上29GHz以下である
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の広帯域インパルス生成装置。
【請求項6】
前記広帯域インパルスは、帯域幅が少なくとも500MHz以上のUWB信号である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の広帯域インパルス生成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2008−252396(P2008−252396A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89776(P2007−89776)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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