説明

床化粧材の敷設構造

【課題】床化粧材がバルコニーや屋上付近を吹く風を受けてめくれ上がらないようにすることができる床化粧材の敷設構造を提供する。
【解決手段】高層建築物のバルコニー又は中高層建築物の屋上の床面3に複数枚の床化粧材が敷きつめられる敷設構造において、この床面3と対面する裏面から表面にかけて貫通する風抜孔14を多数備えた風抜用床化粧材1が、少なくとも、この床面3を囲むように設けられている手摺り及び外部壁などの立ち上がり部5に近傍している最外周列とその一つ内周側の列とに敷設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層建築物のバルコニー又は中高層建築物の屋上の床面に複数枚の床化粧材が整列敷設される床化粧材の敷設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物のバルコニー及び屋上においては、美観を向上させるとともに足下に高級感を出すために複数枚の床化粧材をコンクリートの床面に敷きつめる工法が一般的となっている。具体的には、図5に示すように、上面に化粧面を有する床化粧材90がバルコニーや屋上のコンクリートの床面91全体にわたり、落下防止用の手摺りや外部壁の立ち上がり部92に近傍する位置まで敷きつめられている。
【0003】
また、近年、建築物のバルコニーや屋上に負担をかけることがないよう、合成樹脂で形成された軽量な床材が用いられるようになり、多くのバルコニーや屋上に敷きつめられている。
【0004】
しかし、軽量な床化粧材は、バルコニーや屋上付近を吹く風が裏面と床面との間に入り込むと裏面と表面との間に気圧の差が生じ、立ち上がり部92に近傍している最外周列の床化粧材から順番にめくれ上がるおそれがある。特に、高層建築物のバルコニーや中高層建築物の屋上付近を吹く風は、地上に比べて数倍の風力があるため、軽量な床化粧材をめくりあげて飛散させるおそれがある。
【0005】
そこで、従来、床化粧材をバルコニーや屋上の床面に接着剤で貼り付けるか、又は、床化粧材を床面から立ち上がる手摺りや外部壁に固定するかにより、床化粧材がめくれ上がらないようにしてある床化粧材の敷設構造が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−343722号公報
【特許文献2】特開平11−223007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、先に提案された床化粧材の敷設構造にあっては、共有部分であり原状回復が求められるバルコニーや屋上の床面に私物である床化粧材を接着剤で貼り付けることとなり、その後の取り外しが困難となることから、好ましくない。また、床化粧材を手摺りや外部壁に固定することは、新たな取付部品や取付構造が必要となり、これらの部品の手配作業や取付作業が頻雑となって取付費用が高騰することから、好ましくない。
【0008】
また、その他、床化粧材が逆翼型部材となり、捕らえた風でダウンフォースを生じさせることにより、自らがめくれ上がらないようにしてある敷設構造が提案されている。しかし、この敷設構造は、逆翼型部材が風を水平方向に捕らえた場合に効果がある一方、水平方向以外で捕らえた場合には全く効果がない。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、高層建築物のバルコニー又は中高層建築物の屋上の床面に複数枚の床化粧材が敷きつめられる敷設構造において、この床面と対面する裏面から表面にかけて貫通する風抜孔を多数備えた風抜用床化粧材が、少なくとも、この床面を囲むように設けられている手摺り及び外部壁などの立ち上がり部分に近傍している最外周列とその一つ内周側の列とに敷設されることにより、床化粧材がバルコニーや屋上付近を吹く風を受けた場合であってもめくれ上がらないようにすることができる床化粧材の敷設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る床化粧材の敷設構造は、高層建築物のバルコニー又は中高層建築物の屋上の床面に複数枚の床化粧材が整列敷設される床化粧材の敷設構造において、前記床面と対面する裏面から表面にかけて貫通する風抜孔を多数備える風抜用床化粧材が、少なくとも、前記床面を囲むように設けられている手摺り及び外部壁などの立ち上がり部分に近傍している最外周列とその一つ内周側の列とに敷設されることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、多数の風抜孔を備える風抜用化粧材が敷きつめられることにより、床化粧材の裏面と床面との間に吹き込んだ風が風抜孔を介して裏面から表面へ抜け、裏面側と表面側とに気圧の差が生じることがなく、床化粧材がめくれ上がることがない。また、風抜孔が裏面から表面にかけて貫通していることにより、いずれの方向から風を受ける場合であっても、風が床面に当たりはね返るときに風抜孔を介して裏面から表面に抜けていく。また、風抜用化粧材を少なくとも最外周列とその一つ内周側の列との合計二列に敷きつめることにより、風抜孔がより多く確保され、地上に比べて数倍の風力で吹いている高層建築物のバルコニーや中高層建築物の屋上付近の風を受けた場合であっても、風が多数の風抜孔を介して効率良く逃げていく。
【0012】
また、本発明に係る床化粧材の敷設構造は、前記風抜用床化粧材は、多数の前記風抜孔が格子状に形成されているように構成してもよい。
【0013】
本発明にあっては、風抜孔が格子状に形成されていることにより、床面と裏面との間に吹き込んだ風が裏面から表面に抜けるとともに、少なくとも歩行者のつま先が風抜孔に嵌り込むことにより歩行者が転倒するおそれがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、地上に比べて数倍の風力で吹いている高層建築物のバルコニーや中高層建築物の屋上付近の風を受けた場合であっても、その風を多数の風抜孔を介して効率良く逃がして、床化粧材がめくれ上がらないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る床化粧材の敷設構造が備える風抜用床化粧材の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る床化粧材の敷設構造を床化粧材の厚み方向に切断したときの側面視断面図である。
【図3】本発明に係る床化粧材の敷設構造を床化粧材の床面側から見た平面図である。
【図4】図3とは異なる態様で敷きつめられた床化粧材の敷設構造を床化粧材の床面側から見た平面図である。
【図5】従来の床化粧材の敷設構造を床化粧材の厚み方向に切断したときの側面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
本発明に係る床化粧材の敷設構造について、実施の形態を示す図に基づいて以下説明する。図1〜4において、1は、風抜用床化粧材である。風抜用床化粧材1は、合成樹脂で形成された厚みのある板材であり、上面10と、第1側面11と、第2側面12と、裏面13とを備える。
【0017】
上面10(及び裏面13)は、一辺30cm程度の平面視(及び底面視)略四角形状に形成されている。また、上面10には、硬質合成樹脂で形成された表面化粧部材が貼り付けられており、梨地に処理されるか又は木目調に印刷処理されるかなどの美観を起こさせるための美的処理がなされている。また、上面10は、複数の風抜孔14が平面視縦方向及び横方向に沿って等間隔に開口し、格子状をなしている。各風抜孔14は、風抜用床化粧材1の厚み方向に、上面10から裏面13にかけて貫通して裏面13に開口している。
【0018】
第1側面11は、平面視略四角形状の上面10の四辺のうち、隣接する二辺から垂れ下がる側面である。第1側面11は、裏面13寄りの位置から水平方向に複数の連結雌部110が突き出ている。連結雌部110は、風抜用床化粧材1の厚み方向に開口する環状に形成されており、後述する連結雄部131又は231が嵌り込むようにされている。また、第1側面11は、連結雌部110の突出位置より上面10寄りの位置から第1バンパー111が水平方向に突き出ている。第1バンパー111は、風抜用床化粧材1及び後述する一般床化粧材2(以下、両方を示すときは単に「床化粧材」という。)が後述するコンクリートの床面3に敷きつめられたときに隣接する別の床化粧材の第2バンパー120又は220と接触し、この床化粧材との間に僅かな目地隙間を形成する。
【0019】
第2側面12は、平面視略四角形状の上面10の四辺のうち、第1側面11以外の隣接する二辺から垂れ下がる側面である。第2側面12には、複数の第2バンパー120が水平方向に突き出ている。第2バンパー120は、床化粧材がコンクリートの床面3に敷きつめられたときに隣接する別の床化粧材の第1バンパー111又は211と対向する位置に形成されている。
【0020】
裏面13には、風抜孔14の開口を避けるようにして複数の脚部130及び連結雄部131が下方に突き出ている。連結雄部131は、床化粧材がコンクリートの床面3に敷きつめられたときに隣接する別の床化粧材の連結雌部110又は210と嵌り合う位置に形成されている。また、裏面13には、上面10の上を歩く歩行者が帯電することのないように一面にカーボン繊維が貼り付けられている(図示せず)。
【0021】
図2〜4において、2は、一般床化粧材である。本発明において、一般床化粧材2は、特定の床化粧材に限ることなく、広く一般的な床化粧材であればよい。但し、一般床化粧材2は、少なくとも、以下の構成を備えている。
【0022】
一般床化粧材2は、上述する風抜用床化粧材1と同様に合成樹脂で形成された厚みのある板材であり、上面20と、第1側面21と、第2側面22と、裏面23とを備える。
【0023】
上面20(及び裏面23)は、風抜用床化粧材1と同じく一辺30cm程度の平面視(及び底面視)略四角形状に形成されている。また、上面20には、硬質合成樹脂で形成された表面化粧部材が貼り付けられており、梨地に処理されるか又は木目調に印刷処理されるかなどの美観を起こさせるための美的処理がなされている。
【0024】
第1側面21は、平面視略四角形状の上面20の四辺のうち、隣接する二辺から垂れ下がる側面である。第1側面21は、裏面寄りの位置から水平方向に複数の連結雌部210が突き出ている。連結雌部210は、一般床化粧材2の厚み方向に開口する環状に形成されており、隣接する別の床化粧材の連結雄部131又は231が嵌り込むようにされている。また、第1側面は、連結雌部210の突出位置より上面10寄りの位置から第1バンパー211が水平方向に突き出ている。
【0025】
第2側面22は、平面視略四角形状の上面の四辺のうち、第1側面21以外の隣接する二辺から垂れ下がる側面である。第2側面21には、複数の第2バンパー220が水平方向に突き出ている。第2バンパー220は、床化粧材がコンクリートの床面3に敷きつめられたときに隣接する別の床化粧材の第1バンパー111又は211と対向する位置に形成されている。
【0026】
裏面23には、複数の脚部230及び連結雄部231が下方に突き出ている。連結雄部231は、床化粧材がコンクリートの床面3に敷きつめられたときに隣接する別の床化粧材の連結雌部110又は210と嵌り合う位置に形成されている。
【0027】
図2〜4において、3は、バルコニー又は屋上における床面である。床面3は、バルコニー又は屋上に敷きつめられたコンクリートの床面である。床面3は、これを囲むように排水溝4が形成され、更に外周側に立ち上がり部5が設けられ、この立ち上がり部5から転落防止用の手摺り50又は外部壁51が立ち上がって床面3を囲んでいる。
【0028】
このように、本発明に係る床化粧材の敷設構造は、複数の部材が構成要素となっている。以下、これらの部材により構成される床化粧材の敷設構造について説明する。
【0029】
図3は、例えば、高層建築物のバルコニー又は中高層建築物の屋上に床化粧材を敷きつめた一例を示している。本発明において、高層建築物とは、国土交通省の法令運用などに基づき、6階以上の建築物を示し、中層建築物とは、3階以上5階以下の建築物を示すものとする。床化粧材は、脚部130又は230で支えるようにして床面3の上に置かれ、裏面13又は23と床面3との間に空間を形成する。床化粧材は、床面3の上で平面視縦方向及び横方向に規則正しく並ぶように敷きつめられる。このとき、床化粧材は、自らの連結雌部110又は210に隣接する別の床化粧材の連結雄部131又は231が嵌り込むことにより、お互いの位置がずれないように固定される。また、床化粧材は、自らの第1バンパー111又は211と、隣接する別の床化粧材の第2バンパー120又は220とが接触することにより、対向する側面の間に目地隙間を形成する。
【0030】
また、このとき、床化粧材は、図3に示すよう、立ち上がり部5に近傍している最外周列とその1つ内周側の列との合計二列には風抜用床化粧材1が敷きつめられ、この二列より内周側の領域には一般床化粧材2が敷きつめられる。また、建築物Bに近傍している外周列については、一般床化粧材2が敷きつめられる。
【0031】
本発明に係る床化粧材の敷設構造は、このような構造を備えることにより、以下の作用効果を奏する。
【0032】
多数の風抜孔14を備える風抜用化粧材1が敷きつめられることにより、風抜用床化粧材1の裏面13と床面3との間に吹き込んだ風が風抜孔14を介して裏面13から上面10へ抜け、裏面13側と上面10側とに気圧の差が生じることがなく、床化粧材がめくれ上がることがない。
【0033】
また、風抜孔14が裏面13から上面10にかけて貫通していることにより、いずれの方向から風を受けた場合であっても、その風が床面3に当たってはね返ってきたとき、その風が風抜孔14を介して逃げていく。
【0034】
また、風抜用化粧材2を少なくとも最外周列とその一つ内周側の列との合計二列に敷きつめることにより、風抜孔14がより多く確保され、地上に比べて数倍の風力で吹いている高層建築物のバルコニーや中高層建築物の屋上付近の風を受けた場合であっても、その風が多数の風抜孔14を介して効率良く逃げていく。
【0035】
実施の形態2.
上述した実施の形態1において、風抜用床化粧材1は、床面3に敷きつめられた床化粧材のうちの、立ち上がり部5に近傍している最外周列とその1つ内周側の列との合計二列に配置された一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、少なくとも、最外周列とその1つ内周側の列との合計二列に風抜用床化粧材1が敷きつめられていれば、この二列より内周側の領域には一般床化粧材2でなく風抜用床化粧材1が敷きつめられてもよい。以下、その形態を実施の形態2として説明する。
【0036】
図4は、例えば、中高層建築物の屋上に床化粧材を敷きつめた一例を示している。床化粧材は、図4に示すように、立ち上がり部5に近傍している最外周列とその1つ内周側の列との合計二列に風抜用床化粧材1が敷きつめられ、更に、この二列より内周側の全ての領域に風抜用床化粧材1が敷きつめられる。
【0037】
本発明に係る床化粧材の敷設構造は、このような構造を備えることにより、床化粧材がめくれ上がることを確実に防ぐことができる。
【0038】
なお、その他の構造及び作用について、実施の形態1と同様であるから、対応する箇所に同一の符号を付することにより、その説明を省略する。
【0039】
また、上述する実施の形態において、風抜用床化粧材1は、複数の風抜孔14が平面視縦方向及び横方向に沿って等間隔に格子状に形成されている一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、歩行者のつま先が嵌り込むことがなければ、例えば、平面視縦方向又は横方向に沿って等間隔にスリット状に形成されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 風抜用床化粧材
10 上面
13 裏面
14 風抜孔
2 一般床化粧材
3 床面
4 排水溝
5 立ち上がり部
50 手摺り
51 外部壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高層建築物のバルコニー又は中高層建築物の屋上の床面に複数枚の床化粧材が整列敷設される床化粧材の敷設構造において、
前記床面と対面する裏面から表面にかけて貫通する風抜孔を多数備える風抜用床化粧材が、少なくとも、前記床面を囲むように設けられている手摺り及び外部壁などの立ち上がり部分に近傍している最外周列とその一つ内周側の列とに敷設されることを特徴とする床化粧材の敷設構造。
【請求項2】
前記風抜用床化粧材は、多数の前記風抜孔が格子状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の床化粧材の敷設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−77443(P2012−77443A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220607(P2010−220607)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】