説明

床化粧材敷設構造

【課題】床化粧材本体直下の敷設面上に異物が堆積し得る面積を狭小にすることができる床化粧材敷設構造を提供する。
【解決手段】敷設面との間に排水空間を形成するための脚部14が設けられた平面視略矩形状の枠体とこの枠体の上面に取り付けられる一又は複数の床化粧材とを備えるユニット式の床化粧材本体1が、隣接する床化粧材との間に排水空間に臨む排水通路が形成されるように敷き並べられる床化粧材敷設構造において、床化粧材本体1の下面側に突き出た脚部14を、脚裏面が各々の床化粧材の四隅を除いて前記床化粧材本体1直下の敷設面を覆うように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷設面との間に排水空間を形成するための脚部が設けられた平面視略矩形状の枠体とこの枠体の上面に貼り付けられた床化粧材とを備えるユニット式の床化粧材本体が、隣接する床化粧材との間に床下空間を臨む目地隙間が形成されるように敷き並べられる床化粧材敷設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルコニ、ベランダ、テラス及び屋上などのコンクリート床に敷き並べられることにより、美観を向上させ、足もとを心地よく且つ高級感溢れるものに変化させる床化粧材が上市されている。
【0003】
床化粧材は、屋外のコンクリート床に敷き並べられることが多いため、雨水を排水する必要がある。そこで、コンクリート床との間に排水空間を形成するための脚部が設けられた枠体を介して床化粧材をコンクリート床に敷き並べるユニット式の床化粧材本体を用いた床化粧材敷設構造が提案されている。
【0004】
ユニット式の床化粧材本体を用いた床化粧材敷設構造は、隣接する床化粧材の床化粧材本体と床化粧材との間に目地隙間が形成され、この目地隙間から排水空間を介して雨水を排水する。しかしながら、雨水に紛れて汚泥などの異物が目地隙間から排水空間へ落下し、排水空間内に堆積するおそれがある。特に、床化粧材直下のコンクリート床付近は、目地隙間から落下した雨水が届かないため、堆積している異物が押し流されることなく、堆積と乾燥とを繰り返しながら、不衛生な状態になるおそれがある。
【0005】
即ち、従来のユニット式の床化粧材本体にあっては、後述する図7に示すよう、コンクリート床に異物が堆積する。まず、異物Dを含む雨水Wが目地隙間を含む排水通路Aを通って床化粧材90の下面側に存在する排水空間Sに落下する(図7(a))。次に、落下した異物Dが敷設面に到達する(図7(b))。次に、敷設面に堆積している異物Dが雨水Wにより流される。このとき、排水通路A直下の敷設面に堆積している異物Dが雨水Wとともに流れる。これに対して、床化粧材90直下の敷設面に堆積している異物Dは雨水Wが届かず堆積した状態となる(図7(c))。次に、床化粧材90直下の敷設面に堆積している異物Dが厚みを増してくる(図7(d))。排水通路A直下の敷設面に堆積している異物Dは、雨水Wにより流される(図(e))。
【0006】
そこで、床化粧材直下のコンクリート床付近に堆積する異物を簡単に除去することができる床化粧材敷設構造が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−336288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている床化粧材敷設構造にあっては、床化粧材本体の下面側に放水管を設け、放水管から放出した水により床化粧材本体の下面側に堆積する異物を洗い流す。そのため、部品点数が多く、部品の一体成形が困難となるため、製造コストが嵩み、また、床化粧材本体の下面側で放水管を連結させる作業が必要となるため、施工時間が長くなり、敷設費用が高騰するという問題を有している。
【0009】
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、床化粧材本体の下面側に突き出た脚部を、脚裏面が各々の床化粧材の四隅を除いて前記床化粧材本体直下の敷設面を覆うように形成することにより、床化粧材本体直下の敷設面上に異物が堆積し得る面積を狭小にすることができる床化粧材敷設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る床化粧材敷設構造は、敷設面との間に排水空間を形成するための脚部が設けられた平面視略矩形状の枠体と該枠体の上面に取り付けられた一又は複数の床化粧材とを備えるユニット式の床化粧材本体が、隣接する床化粧材との間に前記排水空間に臨む排水通路が形成されるように敷き並べられる床化粧材敷設構造において、前記脚部は、敷設面に接地する脚裏面が、各々の床化粧材の四隅を除いて前記床化粧材本体直下の敷設面を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、床化粧材本体の下方から突き出る脚部を各々の床化粧材の四隅を除いて前記床化粧材本体直下の敷設面を覆うように形成することにより、床化粧材本体直下の敷設面の大半が覆われ、覆われた敷設面に異物が堆積することがない。また、部品点数が増えないため、製造コストが嵩むことなく、特別な施工作業が必要でないため、施工時間が短縮され、敷設費用が抑えられる。
【0012】
なお、他の手段として、本発明に係る床化粧材敷設構造は、前記脚部は、箱形形状をなし、該箱の側周面が前記枠体の側面に連なるように垂下するとともに、該側周面上に排水用の溝が前記枠体の側面から脚裏面にかけて垂下方向に刻設されているように構成してもよい。
【0013】
本発明にあっては、脚部を箱形形状とすることにより、床化粧材本体直下の排水空間を脚部で埋め尽くす。また、枠体の側面から連なる側周面に排水用の溝を刻み設けることにより、排水性が向上する。
【0014】
更にまた、本発明に係る床化粧材敷設構造は、前記脚部は、脚裏面に向かって窄む逆テーパ形状となるように形成されているように構成してもよい。
【0015】
本発明にあっては、脚部を逆テーパ形状とすることにより、脚部を含む床化粧材本体を一体形成する場合に金型からの抜けが良くなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にあっては、床化粧材直下の敷設面に異物が堆積し得る面積を狭くして異物を堆積し難くでき、敷設面上を衛生的に保つことができるとともに、これらの効果を奏するために必要な部品点数を抑えて、製造コストを抑えることができ、また、特別な施工作業を必要とすることなく、施工時間を短縮することができ、敷設費用を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る床化粧材敷設構造に用いる床化粧材本体の構造を示す平面図である。
【図2】図1の床化粧材本体の構造を示す底面図である。
【図3】図1の床化粧材本体の角部付近の構造を示す拡大斜視図である。
【図4】隣り合う床化粧材本体を連結する態様を示す拡大底面図である。
【図5】隣り合う床化粧材本体を連結する態様を示す拡大斜視図である。
【図6】図1の床化粧材本体において異物が堆積する過程を説明する模式図であり、(a)は異物を含む雨水が排水通路から落下する段階、(b)は異物が敷設面に到達した段階、(c)は敷設面に堆積している異物が雨水により流される段階、(d)は流れ残った異物が排水通路直下の敷設面付近に堆積している段階、(e)は異物を含む雨水が排水通路から落下する次段階である。
【図7】従来のユニット式の床化粧材本体において異物が堆積する過程を説明する模式図であり、(a)は異物を含む雨水が排水通路から落下する段階、(b)は異物が敷設面に到達した段階、(c)は敷設面に堆積している異物が雨水より流れる段階、(d)は流れ残った異物が敷設面に堆積している段階、(e)は異物を含む雨水が排水通路から落下する次段階である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る床化粧材敷設構造について実施の形態を示す図に基づいて以下説明する。床化粧材敷設構造は、複数の床化粧材本体1を備える。床化粧材本体1は、図1〜図3に示すように、床化粧材10と、床化粧材10を支持する枠体11と、枠体の側面から延び出る雌型嵌合部12と、枠体の下面から突き出る雄型嵌合部13と、雄型嵌合部13と異なる箇所から突き出る脚部14とを備える。
【0019】
床化粧材10は、耐候性の高いポリオレフィンやポリエステルなどの合成樹脂に木質粉体を混合した混合樹脂組成物を押出形成することにより形成されたものであり、100mm角、150mm角、300mm角などの様々な寸法の平面視略矩形の板状に形成される。なお、本実施の形態では、100mm角の床化粧材10を備える一例を説明する。
【0020】
枠体11は、床化粧材10を取付固定して支持するための部品であり、一辺の長さが床化粧材10(100mm角)を三つ並べた寸法に僅かな隙間幅を加算した合計となる平面視略矩形に形成されている。
【0021】
枠体11は、複数の枡を有する格子状に形成され、一つの升の上面に略同一面積の床化粧材10が一枚貼り付けられる。枠体11は、一つの升の四隅に接着用孔15が設けられている。接着用孔15は、床化粧材10が貼り付けられた状態で、粘度の高い接着剤が下面側から流され、流された接着剤が、接着用孔15内の十字リブと床化粧材10の裏面とを巻きこんで硬化する。
【0022】
枠体11は、床化粧材10との間に僅かな隙間が形成され、この隙間に複数の排水孔Hがあけられている。排水孔Hは、枠体11の下面側の排水空間Sに臨むように形成され、床化粧材10に溜まる雨水Wを排水空間Sに落下させるための排水通路Aとなる。
【0023】
雌型嵌合部12は、枠体11の矩形のコーナ部を挟んだ二つの辺に沿って所定の間隔をあけて枠体11の側面より外側の位置に形成されている。雌型嵌合部12は、中心部にあけられた嵌合孔120を備える。
【0024】
雄型嵌合部13は、雌型嵌合部12が形成されていない枠体11の辺に沿って所定の間隔をあけて設けられている。雄側嵌合部13は、枠体11の各升の隅付近から下方に突き出ている。雄型嵌合部13は、別途、枠体11の下面から突き出ている脚部14と共に、敷設面に載置され、枠体11の下面と敷設面との間に、排水空間Sを形成する。
【0025】
脚部14は、枠体11の一つの升から一つの脚部14が下方に突き出ている。脚部14は、一つの枠の四隅付近に設けられた接着用孔15及び雄型嵌合部13を避けるように切り欠いた平面視略八角形の箱形形状をなし、その箱の側周面140が枠体11の側面と連なるように形成されるとともに、その箱の底面(脚部12の脚裏面)の面積が一枚の床化粧材10の面積の大部分を占めるように形成されている。その結果、脚部14は、敷設された状態で、床化粧材10直下の排水空間Sの大半を埋め尽くし、床化粧材10直下の敷設面の大半を覆い隠す。また、脚部14は、床化粧材10に溜まる雨水Wを排水空間Sに導くための排水用溝141が箱の側周面140に刻まれ設けられている。また、脚部14は、脚裏面に向かって萎む逆テーパ形状となるように形成されている。また、脚部14は、脚裏面に緩衝材が貼り付けられ、敷設面に凹凸があっても密着するように工夫されている。なお、本実施の形態において、大半及び大部分とは、50%以上100%未満の範囲を示す。また、床化粧材10の四隅とは、枠体11の一つの升において、接着用孔15及び雄型嵌合部13が設けられた領域をいう。
【0026】
床化粧材本体1は、床化粧材10を除く部分、即ち、枠体11、雌型嵌合部12、雄型嵌合部13、脚部14及び接着用孔15がポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑製樹脂により形成され、射出形成することにより一体的に形成される。
【0027】
床化粧材敷設構造は、上述した構成を備える床化粧材本体1が用いられる。そこで、これらの構成を備える床化粧材本体1を敷き並べる方法について以下説明する。図4及び図5に示すように、敷設される床化粧材本体1は、隣接する床化粧材本体1の矩形の辺に揃うように敷き並べられる。このとき、床化粧材本体1は、隣接する床化粧材10との間に目地隙間Gが形成される。目地隙間Gは、枠体11の下面側の排水空間Sに臨むように形成され、上述した排水孔Hと同様、床化粧材10に溜まる雨水Wを排水空間Sに落下させるための排水通路Aとなる。
【0028】
また、敷設された床化粧材本体1は、雌型嵌合部12の嵌合孔120に、隣接する床化粧材本体1の雄型嵌合部13が上方から嵌り込む。その結果、隣接する床化粧材本体1と連結した状態となる。
【0029】
また、敷設された床化粧材本体1は、床化粧材10直下の敷設面に脚部の脚裏面が接地する。このとき、脚部14は、箱形形状のボディで床化粧材10直下の排水空間Sの大半を埋め尽くすとともに、脚裏面で床化粧材10直下の敷設面の大半を覆い隠す。その結果、床化粧材本体1の下面側には、排水通路A(排水孔H及び目地隙間G)と、脚部14の切り欠き部分(枠体1の升の四隅付近)との空間が形成され、これが排水のための空間として機能する。
【0030】
床化粧材敷設構造は、床化粧材本体1が上述した方法で敷き並べられることにより、図6に示すように、敷設面に異物Dが堆積し難くなる。まず、異物Dを含む雨水Wが目地隙間を含む排水空間Aを通って床化粧材10の下面側に存在する排水空間Sに落下する(図6(a))。次に、落下した異物Dが排水通路A直下の敷設面に到達する(図6(b))。このとき、床化粧材10直下の敷設面が脚部14の脚裏面により覆われているので、落下した異物Dは、床化粧材10直下の敷設面に堆積することがない。次に、排水通路A直下の敷設面に堆積している異物Aは、雨水Wにより流される(図6(c))。その後、再び、異物Dが落下しても、床化粧材10直下の敷設面には堆積しない(図6(d))。そして、異物Dは、雨水Wにより流される(図6(e))。
【符号の説明】
【0031】
1 床化粧材本体
10 床化粧材
11 枠体
12 雌型嵌合部
120 嵌合孔
13 雄型嵌合部
14 脚部
140 側周面
141 排水用溝
15 接着用孔
G 目地隙間
H 排水孔
A 排水通路
S 排水空間
D 異物
W 雨水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷設面との間に排水空間を形成するための脚部が設けられた平面視略矩形状の枠体と該枠体の上面に取り付けられた一又は複数の床化粧材とを備えるユニット式の床化粧材本体が、隣接する床化粧材との間に前記排水空間に臨む排水通路が形成されるように敷き並べられる床化粧材敷設構造において、
前記脚部は、敷設面に接地する脚裏面が、各々の床化粧材の四隅を除いて前記床化粧材本体直下の敷設面を覆うように形成されていることを特徴とする床化粧材敷設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−172324(P2012−172324A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32846(P2011−32846)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】