説明

床工事用レベル出し用具及びレベル出し工法

【課題】熟練した技術がなくても精度の高い仕上げ面の調整が可能になると共に、極めて効率の良い施工ができる床工事用レベル出し用具及びレベル出し工法を提供する。
【解決手段】硬化前のモルタルの塊からなる柔軟な基台10上に押し込むことで上端部が上塗り材料Pの仕上げ面に位置するように位置調整する調整駒体1を設ける。該調整駒体1の上端部に上塗り材料Pの仕上げ面を示すレベル部3を設ける。調整駒体1の下端部に前記基台10上に押し込み載置する底板2を設ける。該底板2を基台10上に押し込むときに、底板2下面の柔軟なモルタルを底板2上に通す逃げ孔2Aを底板2の盤面に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床面に打設するモルタル仕上げやセルフレベリング材の仕上げ面を調整するのに好適な床工事用レベル出し用具及びレベル出し工法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの床面にモルタル仕上げをする場合、このモルタル仕上げ面の高さが均一になるように仕上げ面のレベルを調整する。このレベルは、一般に水準器や糸張り等を利用して調整している。一方、平滑な床地面を作る方法として、セルフレベリング工法が行われている。この工法は、床工事において、石膏やセメント、あるいはエポキシ系樹脂剤等からなるセルフレベリング材をコンクリートスラブ上に流し込む工法で、自然硬化させたセルフレベリング材の表面が仕上げ面となるので、面倒なレベル調整は不要とされている。
【0003】
特許文献1には、水平台構築工法が記載されている。この工法では、捨てコンクリート上に、コンクリート基礎ブロック等を据付ける水平台を構築するもので、水平台構築器具を使用する。この水平台構築器具は、鏝板の上面に目盛り付き定規棒を設けたもので、捨てコンクリート上にモルタルを盛り上げ、そのモルタル上に、水平台構築器具を戴置し、モルタルが固化しない間にレベルにより定規棒を目視確認しつつ鏝板を押し下げて水平台を成形した後、水平台構築器具を取外す工法である。
【特許文献1】特公平8−14200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、水準器や糸張り等を利用してモルタル仕上げ面のレベルを調整するには熟練した技術が必要になり、仕上げ面のレベルの精度を高めるには、作業者の技術が重要になっていた。また、セルフレベリング材では、水平の床面については高い精度で仕上げることは可能でも、スロープなどの傾斜面を施工することができない。また、セルフレベリング材を床面に流し込む際に、材料の比重が重くなっていると、流し込んだ材料が均一に広がらず、仕上げ面に偏りが生じるおそれもある。このような場合は、偏りが生じたセルフレベリング材を均一に広げる作業が必要になる。このとき、仕上げ面のレベルを把握していないと、均一に広げることはできない。
【0005】
一方、スロープなどの仕上げ面を調整する場合には、水準器やレベル機器では仕上げ面の調整が困難になる。そこで従来では、仕上げ面に沿って斜めに糸張りを行い、モルタルを置き、糸の上に突出したモルタルの上部をカットしてレベルの目標点を出した上で、この目標点まで仕上げ材を塗り込む作業を行っている。したがって、より熟練した技術が必要になっていた。
【0006】
また、特許文献1のように、水平台構築器具を使用するものでは、この水平台構築器具の着脱作業や調整作業に多くの手間を要する。また、この水平台構築器具では、捨てコンクリートに盛り上げたモルタルに、一定の水平台を形成することは可能でも、
水平台形成後は、水平台構築器具を取り外す必要があるので、仕上げ面の基準に利用することは極めて困難である。
【0007】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、熟練した技術がなくても精度の高い仕上げ面の調整が可能になると共に、極めて効率の良い施工ができる床工事用レベル出し用具及びレベル出し工法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明レベル出し用具の第1の手段は、床工事の下地コンクリートQに上塗り材料Pを施工する際に、下地コンクリートQ上に所定間隔で配置された硬化前のモルタルの塊からなる柔軟な基台10に載置する床工事用レベル出し用具において、該基台10上に押し込むことで上端部が上塗り材料Pの仕上げ面に位置するように位置調整する調整駒体1を設け、該調整駒体1の上端部に上塗り材料Pの仕上げ面を示すレベル部3を設けたことにある。
【0009】
前記用具の第2の手段は、前記調整駒体1の下端部に前記基台10上に押し込み載置する底板2を設け、該底板2を基台10上に押し込むときに、底板2下面の柔軟なモルタルを底板2上に通す逃げ孔2Aを底板2の盤面に形成する。
【0010】
前記用具の第3の手段は、前記調整駒体1の上端部に設けたレベル部3の下方で、下地用モルタルRの施工レベルを示す下地用基準板4を調整駒体1側面に設ける。
【0011】
本発明レベル出し工法の第4の手段は、床工事の下地コンクリートQに上塗り材料Pを施工する床工事用レベル出し工法において、下地コンクリートQ上に所定間隔で硬化前のモルタルの塊からなる柔軟な基台10を配置し、該基台10上に押し込むことで上端部が上塗り材料Pの仕上げ面を示す調整駒体1を設け、該調整駒体1を基台10に押し込んで調整駒体1の上端部に設けたレベル部3が上塗り材料Pの仕上げ面に位置するように調整し、該レベル部3まで上塗り材料Pを施工することにある。
【0012】
前記工法の第5の手段は、調整駒体1の側面に下地用モルタルRの施工レベルを示す下地用基準板4を設け、該下地用基準板4まで下地用モルタルRを施工する第1工程と、該下地用モルタルR硬化後に、前記セルフレベリング材の上塗り材料Pを前記レベル部3まで施工する第2工程とからなる工法とすることを課題解消のための手段とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1、4により、調整駒体1の上端部に設けたレベル部3が上塗り材料Pの仕上げ面を示すので、このレベル部3まで上塗り材料Pを施工することで正確且つ簡単に床工事を仕上げることができる。この結果、熟練した技術がなくても効率の良く、精度の高い仕上げ面の調整が可能になる。
【0014】
請求項2により、底板2の盤面に形成した逃げ孔2Aが、調整駒体1の位置調整作業を容易にするとともに、位置調整した調整駒体1を基台10の柔軟なモルタルで固定することになる。したがって、調整駒体1の安定性が高くなり、精度の高い調整が可能になる。
【0015】
請求項3、5では、調整駒体1の側面に設けた下地用基準板4が、上塗り材料P施工前の下地用モルタルRの施工レベルを示すことが可能になるから、モルタル仕上げ工法やセルフレベリング工法のいずれにも適用し、合理的な仕上げ工事ができるものである。
【0016】
このように、本発明によると、熟練した技術がなくても精度の高い仕上げ面の調整が可能になると共に、極めて効率の良い施工ができるなどといった優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明レベル用具の最良の形態は、硬化前のモルタルの塊からなる柔軟な基台10上に押し込むことで上端部が上塗り材料Pの仕上げ面に位置するように位置調整する調整駒体1を設ける。該調整駒体1の上端部に上塗り材料Pの仕上げ面を示すレベル部3を設ける。調整駒体1の下端部に前記基台10上に押し込み載置する底板2を設ける。該底板2を基台10上に押し込むときに、底板2下面の柔軟なモルタルを底板2上に通す逃げ孔2Aを底板2の盤面に形成することで、当初の目的を達成するものである。
【実施例】
【0018】
本発明レベル出し用具は、基台10上に押し込むことで上端部が上塗り材料Pの仕上げ面に位置するように位置調整する調整駒体1を使用する(図1、3、5参照)。該調整駒体1の上端部には、上塗り材料Pの仕上げ面を示すレベル部3を設けており、この位置まで上塗り材料Pを施工することで、仕上げ面を正確なレベルに調整するものである。図示例の調整駒体1は、いずれも調整駒体1の下端部に底板2を設けている。
【0019】
この底板2は、基台10上に押し込み載置する部材であり、底板2の盤面には、該底板2を基台10上に押し込むときに、底板2下面の柔軟なモルタルを底板2上に通す逃げ孔2Aを形成している(図2、4、6参照)。すなわち、調整駒体1の高さを調整するために、調整駒体1を基台10の上部に押し込むと、基台10が潰れて調整駒体1のレベル部3が一定の高さになる。このとき、逃げ孔2Aから基台10のモルタルが底板2の上部に移動して、調整駒体1の押し込み操作を容易ならしめている。また、底板2の上部に移動したモルタルが、錘となって底板2を固定する作用も奏する。図示の底板2は円板状を成し、図に示す斜線部を切り抜いて逃げ孔2Aを形成しているが、この底板2や逃げ孔2Aの形状は任意に変更することができる。
【0020】
図1及び図2に示す調整駒体1は、略円柱形状をなし、この調整駒体1の側面に、下地用基準板4を設けている。この下地用基準板4は、レベル部3の下方に位置し、下地用モルタルRの施工レベルを示すもので、図示例では円板状を成している。この下地用基準板4の形状も任意に変更することができる。また、調整駒体1の側面と下端部とに逃げ孔1Aを開穿している。この逃げ孔1Aは、前記底板2の逃げ孔2Aと同様に、底板2を基台10上に押し込むときに、底板2下面の柔軟なモルタルを通すことで、調整駒体1を押し込む抵抗をできるだけ少なくするものである。更に、図3及び図4に示す如く、円筒状をなす調整駒体1を形成し、該調整駒体1の側面に逃げ孔1Aを開穿してもよい。
【0021】
一方、図5及び図6に示す調整駒体1は、略三角錐状を形成する三本の支柱で調整駒体1を形成している。そして、支柱の頂部に平坦なレベル部3を設け、支柱の下端に底板2を設けている。このように、調整駒体1の形状や底板2、レベル部3の形状は任意に変更できるものである。
【0022】
基台10は、床工事の下地コンクリートQに上塗り材料Pを施工する際に、下地コンクリートQ上に所定間隔に配するもので、硬化前の柔軟なモルタルの塊で形成する。この基台10は、目分量で設置するもので、本発明の調整駒体1を基台10に埋め込んで、レベルを調整できる高さに盛り上げておくものである。
【0023】
次に、本発明レベル出し工法について説明する。図7に示す工法は、主にモルタル仕上げを施工する際に適している。まず、下地コンクリートQ上に所定間隔で硬化前のモルタルの塊からなる柔軟な基台10を配置する(同図(イ)参照)。次に、該基台10上に調整駒体1を設置し(同図(ロ)参照)、該調整駒体1を基台10上に押し込むことで上塗り材料Pの仕上げ面に調整駒体1上端部のレベル部3を合わせる(同図(ハ)参照)。更に、レベル部3の高さまで上塗り材料Pを施工する。施工後の調整駒体1は上塗り材料P内に埋設される。上塗り材料Pは、モルタルを鏝で均してもよく、また、セルフレベリング材をレベル部3まで流し込んでも良い。
【0024】
図8に示す工法は、主に、上塗り材料Pとして、エポキシ系樹脂剤を用いたセルフレベリング材を施工する際に適している。まず、下地コンクリートQ上に下地用モルタルRを施工する(同図(イ)参照)。次に、この下地用モルタルRの上に、所定間隔で前記基台10を配置する(同図(ロ)参照)。後の工程は図7の施工方法と同じ工程となり、該基台10上に調整駒体1を設置し(同図(ハ)参照)、該調整駒体1を基台10上に押し込むことで上塗り材料Pの仕上げ面に調整駒体1上端部のレベル部3を合わせる(同図(ニ)参照)。更に、レベル部3の高さまで上塗り材料Pを施工する(同図(ホ)参照)。このように施工すると、上塗り材料Pの量が少なくて済むので、高価なエポキシ系樹脂剤からなるセルフレベリング材を上塗り材料Pとして使用するのに好適である。
【0025】
図9もまた、図8と同様に、下地用モルタルRと上塗り材料Pとを併用する工法を示している。まず、下地コンクリートQ上に所定間隔で前記基台10を施工する(同図(イ)参照)。次に、図1に示す下地用基準板4を設けた調整駒体1を基台10の上に載置し(図9(ロ)参照)、該調整駒体1を基台10上に押し込むことで上塗り材料Pの仕上げ面に調整駒体1上端部のレベル部3を合わせる。そして、仕上げの第1の工程として、下地用基準板4に合わせて下地用モルタルRを施工する(同図(ハ)参照)。この下地用モルタルRが固化した後に、仕上げの第2の工程として、レベル部3の高さまで上塗り材料Pを施工する(同図(ニ)参照)。この工法によっても、上塗り材料Pの量が少なくて済むので、高価なエポキシ系樹脂剤からなるセルフレベリング材を上塗り材料Pとして使用するのに好適である。また、モルタル仕上げを施工する場合でも、二度の工程で仕上げを施すことになるので、極めて見栄えの良好な仕上げになる効果もある。
【0026】
尚、本発明における工法や、図示例の各構成は、本発明の一実施例に過ぎず、調整駒体1の形状や底板2の有無など、本発明の要旨を変更しない範囲において自由に変更することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明用具の一実施例を示す正面図である。
【図2】本発明用具の一実施例を示す平面図である。
【図3】本発明用具の他の実施例を示す正面図である。
【図4】図3に示す本発明用具の底面図である。
【図5】本発明用具の他の実施例を示す正面図である。
【図6】図5に示す本発明用具の平面図である。
【図7】本発明工法の一実施例を示す工程図である。
【図8】本発明工法の他の実施例を示す工程図である。
【図9】本発明工法の他の実施例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0028】
P 上塗り材料
Q 下地コンクリート
R 下地用モルタル
1 調整駒体
1A 逃げ孔
2 底板
2A 逃げ孔
3 レベル部
4 下地用基準板
10 基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床工事の下地コンクリートに上塗り材料を施工する際に、下地コンクリート上に所定間隔で配置された硬化前のモルタルの塊からなる柔軟な基台に載置する床工事用レベル出し用具において、該基台上に押し込むことで上端部が上塗り材料の仕上げ面に位置するように位置調整する調整駒体を設け、該調整駒体の上端部に上塗り材料の仕上げ面を示すレベル部を設けたことを特徴とする床工事用レベル出し用具。
【請求項2】
前記調整駒体の下端部に前記基台上に押し込み載置する底板を設け、該底板を基台上に押し込むときに、底板下面の柔軟なモルタルを底板上に通す逃げ孔を底板の盤面に形成した請求項1記載の床工事用レベル出し用具。
【請求項3】
前記調整駒体の上端部に設けたレベル部の下方で、下地用モルタルの施工レベルを示す下地用基準板を調整駒体の側面に設けた請求項1又は2記載の床工事用レベル出し用具。
【請求項4】
床工事の下地コンクリートに上塗り材料を施工する床工事用レベル出し工法において、下地コンクリート上に所定間隔で硬化前のモルタルの塊からなる柔軟な基台を配置し、該基台上に押し込むことで上端部が上塗り材料の仕上げ面を示す調整駒体を設け、該調整駒体を基台に押し込んで調整駒体の上端部に設けたレベル部が上塗り材料の仕上げ面に位置するように調整し、該レベル部まで上塗り材料を施工することを特徴とする床工事用レベル出し工法。
【請求項5】
前記工法において、前記調整駒体の側面に下地用モルタルの施工レベルを示す下地用基準板を設け、該下地用基準板まで下地用モルタルを施工する第1工程と、該下地用モルタル硬化後に、前記セルフレベリング材の上塗り材料を前記レベル部まで施工する第2工程とからなる請求項4記載の床工事用レベル出し工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−322162(P2006−322162A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144174(P2005−144174)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(591151358)有限会社鈴木左官タイル工店 (1)
【Fターム(参考)】