説明

床排水口用導水装置

【課題】床に溜まった水や洗浄水などを、フロアドライヤなどの水掃き用具を使用して排水口に効率良く掃き集めて排水できるようにする。
【解決手段】この装置1は、床面32上の水を排水口33に掃き集める際、掃いた水が排水口33に集中し易くなるようにその排水口33を中心にして床面32に沿って放射状に設けられる複数の導水板4を備えている。作業者は、この装置1を床面32に設置した後、フロアドライヤを使用して床面32上の水を排水口33に掃き集める作業を行う。排水口33に向けて掃いた水の一部が排水口33の脇に逸れてもそれが導水板4に遮られて排水口33に集められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床清掃関連の技術分野に属し、詳細には、床に溜まった水や洗浄水などを排水口に効率良く掃き集めて排水できるようにするための技術に属する。
【背景技術】
【0002】
床に溜まった水や洗浄水などを排水口に掃き集めて排水する作業は、フロアドライヤ(フロアワイパとも呼ばれる。)やフロアブラシなどの水掃き用具を用いて行われることが多い。この種の水掃き用具の中でも、屋外運動場、プール、オフィス、店舗、工場、駅などの広い床面を清掃する場合は、フロアドライヤが多く用いられる。図8に示すように、フロアドライヤ29は、柄30の先端に水切り(水掃き)用の幅広のへら31を備えており、そのへら31の先端部(下縁部)を床面32に接触させた状態で柄30を押す(あるいは引く)ことにより、床面32上の洗浄水などを掃き除くことができる(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、図9に示すように、床に設けられている排水口33の内径φは、フロアドライヤ29のへら31の幅Wよりも小さため、床面32上の洗浄水などをフロアドライヤ29を使用して排水口33に導入しようとしても、へら31によって押された洗浄水などの多くは排水口33に入ることなくその脇を通り過ぎてしまう。このため、排水口33の周りで洗浄水などを何度も行ったり来たりさせることになり、床清掃作業に多くの時間と手間を要していた。
【特許文献1】特開2000−33065号
【特許文献2】特開2000−5126号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、床に溜まった水や洗浄水などを、フロアドライヤなどの水掃き用具を使用して排水口に効率良く掃き集めて排水できるようにする床排水口用導水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の床排水口用導水装置は、床面上の水をその床面に開口した排水口に掃き集める際、掃いた水が排水口に集中し易くなるようにその排水口を中心にして床面に沿って放射状に設けられる複数の導水板を備えている。
【0006】
この装置を清掃する床に設置して、床に溜まった水や洗浄水などを、フロアドライヤなどの水掃き用具を使用して排水口に掃き集める作業を行えば、排水口に向けて掃いた水の一部が排水口の脇に逸れてしまった場合でも、その逸れてしまった水の一部が導水板に遮られて排水口に集められる。したがって、この装置を使用することにより、床に溜まった水や洗浄水などを、排水口に効率良く掃き集めて排水することができる。
【0007】
本発明の床排水口用導水装置は、上記構成に加えて、排水口上に立設される本体シャフトと、本体シャフトの下端部(設置した時に下になる方の端部)に固定された固定支持部材とを備え、前記複数の導水板は、固定支持部材を介して互いに回動自在に連結されており、不使用時や搬送時には本体シャフトの上端(設置した時に上になる方の端)側に回動させて畳んでおき、使用する際に放射状に広げることができるように構成されていることが望ましい。
【0008】
また、前記導水板は、設置される床面の勾配に合わせて傾きを調節可能であることが望ましい。
【0009】
また、前記本体シャフトの下端に、排水口に係合する係合部材が設けられていることが望ましい。
【0010】
また、前記係合部材は、排水口に接続された排水パイプの上端部外面または上端部内面に圧接した状態で係合する複数の弾性部材を有することが望ましい。弾性部材は、排水パイプを傷付けないようにして着脱できる構造・材質の弾性体(S字ばね、樹脂被覆ばね、硬質ゴム、等)であることが望ましい。
【0011】
また、前記係合部材は、排水口を塞いでいる通水目皿(通水蓋)に係合する爪部を有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の床排水口用導水装置によれば、これを床面に設置して清掃作業を行うことにより、床に溜まった水や洗浄水などを、フロアドライヤなどの水掃き用具を用いて排水口に効率良く掃き集めて排水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は本発明にかかる床排水口用導水装置の形態例を示す正面図(側面図)である。図2は図1の装置の導水板を畳んだ状態を示す正面図(側面図)である。図3は図1のA−A’断面図である。図4、図5および図6は図1の装置を床に設置した状態を示す要部縦断面図である。
【0015】
この床排水口用導水装置1は、排水口33上に立設される本体シャフト2と、本体シャフト2の下端部に固定された固定支持部材3と、固定支持部材3を介して互いに回動自在に連結された3枚の導水板4-1〜4-3と、これら3枚の導水板4-1〜4-3を同時に同じ方向に回動させて広げたり畳んだりするためのリンク機構5とを備えている。また、本体シャフト2の下端には、排水口33に係合する係合部材8が設けられている。
【0016】
本体シャフト2は、金属(アルミニウム、スチール)製のストレートパイプである。本体シャフト2の上端部には持手16が設けられている。
【0017】
固定支持部材3は、本体シャフト2の下端部外面に密に嵌合させて固定された円筒形の胴部3aと、胴部3aの外面から三方向に放射状に張り出したヒンジ部3bとを有する。これら3つのヒンジ部3bは、胴部3aの周方向に等間隔に設けられている。すなわち、胴部3aの中心点(仮想点)と互いに隣接する2つのヒンジ部3bの中心点(仮想点)とを結ぶ2本の線の間の角度は約120度である。
【0018】
各導水板4-1〜4-3は、固定支持部材3のヒンジ部3bに一端が支軸3cを介して連結されて上下方向に回動自在に保持された導水板本体4aと、導水板本体4aの下縁部に固定された導水ゴム4bとからなる。導水板本体4aは金属(アルミニウム、スチール)製あるいは硬質プラスチック製の部材である。導水ゴム4bは、合成ゴム、シリコン等の弾力性を有する材料からなる。導水ゴム4bは交換可能である。
【0019】
リンク機構5は、本体シャフト2にスライド自在に装着された可動支持部材6と、可動支持部材6と導水板本体4aとを各々連結する3本のリンク部材7とを備えて構成される。
【0020】
可動支持部材6は、本体シャフト2の外周面と接触してスライドする円筒形の胴部6aと、胴部6aの下部外面から三方向に放射状に張り出したヒンジ部6bとを有する。これら3つのヒンジ部6bは、胴部6aの周方向に等間隔に設けられている。すなわち、胴部6aの中心点(仮想点)と互いに隣接する2つのヒンジ部6bの中心点(仮想点)とを結ぶ2本の線の間の角度は約120度である。可動支持部材6の3つのヒンジ部6bと固定支持部材3の3つのヒンジ部3bは、本体シャフト2の軸方向において互いに重なった位置関係になっている。
【0021】
各リンク部材7の一端はヒンジ部6bに、他端は導水板本体4aの中間部に、それぞれ支軸6cを介して回動可能に連結されている。
【0022】
可動支持部材6の胴部6aの上端近傍には、ナット15が溶接固定されている。そして、胴部6aの側壁には、ナット15のねじ孔と連通する貫通孔6dが形成されている。ナット15のねじ孔には棒ねじ11が螺合して装着されている。棒ねじ11の外側端部には、ハンドル10が固定されており、ハンドル10を棒ねじ11が締まる向き(以下、固定方向と記す。)に回すことにより、可動支持部材6を本体シャフト2の任意の位置に固定でき、ハンドル10を棒ねじ11が締まる向きとは逆向き(以下、固定解除方向と記す。)に回すことにより、固定を解除できるようになっている。すなわち、ハンドル10を固定方向に回すと、棒ねじ11が胴部6a内に突出して、棒ねじ11の内側先端が本体シャフト2の外面に圧接し、その結果、可動支持部材6が本体シャフト2に固定された状態になる。一方、ハンドル10を固定解除方向に回すと、棒ねじ11の内側先端が本体シャフト2から離れ、本体シャフト2に対する可動支持部材6の固定が解除された状態になる。
【0023】
係合部材8は、目皿係合部材12と、パイプ係合部材13と、パイプ係合部材固定用蝶ねじ(以下、単に蝶ねじと記す。)14とを有している。
【0024】
目皿係合部材12は、本体シャフト2の下端に強固に固定された金属製の端板12aと、端板12aの下面(外面)より下方に突出した複数(この例では2つ)の爪12bとからなる。端板12aの中央部には、蝶ねじ14が螺合装着されるねじ孔12c(図6参照)が設けられている。
【0025】
パイプ係合部材13は、端板12aの下面に脱着自在に接合される金属製の基板13aと、基板13aの周縁部4箇所に固定されたS字ばね13bとで構成されている。基板13aの中央部には、蝶ねじ14が挿通される貫通孔13c(図4、図5参照)が設けられている。また、図7に示すように、基板13aの周縁部には、端板12aの爪12bを避ける位置に切欠部13dが設けられている。
【0026】
パイプ係合部材13は、その基板13aを目皿係合部材12の端板12aに重ねた状態で、蝶ねじ14を貫通孔13cを通して端板12aのねじ孔12cに挿入し締め付けることにより、本体シャフト2の下端部に固定されている。すなわち、パイプ係合部材13は、必要に応じて本体シャフト2から取り外したり取り付けたりできるようになっている。
【0027】
つぎに、この形態例の作用について説明する。
【0028】
この床排水口用導水装置1は、ハンドル10を固定解除方向に回して本体シャフト2に対する可動支持部材6の固定を解除した後、可動支持部材6を本体シャフト2に沿ってスライドさせることにより、3枚の導水板4-1〜4-3を同時に同じ方向に回動させて、図1および図3に示すように放射状に広げたり、図2に示すように畳んだりすることができる。
【0029】
床排水口用導水装置1を使用する際には、図1に示すように、導水板4-1〜4-3をほぼ最大に広げた状態で、ハンドル10を固定方向に回して、可動支持部材6を本体シャフト2にしっかりと固定する。そして、床排水口用導水装置1を清掃作業を行う床面32に設置する。床排水口用導水装置1は、3方に張り出した導水板4-1〜4-3によって自立する。このとき導水板4-1〜4-3は、導水ゴム4bが床面32に倣って変形することにより、多くの場合はそのまま状態で床面32にほぼ均一に接触するが、排水口33周りの床面32の勾配が大きい、不均一である、など何らかの理由で、床面32と導水ゴム4bとの間に大きな隙間ができた場合や、接触が不均一になっている場合は、可動支持部材6の固定を一旦解除して、導水板4-1〜4-3の導水ゴム4bが床面とできるだけ均等に接するように導水板4-1〜4-4の傾きを調節してから再度固定する。
【0030】
床排水口用導水装置1を床面に設置する際、排水口33に設けられている通水目皿35を取り外すことができるならば、図4または図5に示すように、排水口33から通水目皿35を取り外した後、本体シャフト2の下端に固定されている係合部材8のS字ばね13bの部分を排水口33に挿入して、4本のS字ばね13bを排水口33に接続された排水パイプ34の上端部外面34a(図4の場合)または上端部内面34b(図5の場合)に4方から圧接させて係合させる。図4は、排水口33内に排水トラップ36が形成されている場合(排水パイプが細い場合)であり、この場合、S字ばね13bの下側の湾曲部の内面が排水パイプ34の外面に圧接する。図5は、排水口33に排水パイプ34が直に接続されている場合(排水パイプが太い場合)であり、この場合、S字ばね13bの上側の湾曲部の外面が排水パイプ34の内面に圧接する。このように、本体シャフト2の下端部に設けられたS字ばね13bを排水口33内の排水パイプ34に4方から圧接させて係合させることにより、本体シャフト2を排水口33の中心部に配置できるとともに清掃作業中における装置1の位置ずれを防止できる。
【0031】
排水口33に設けられている通水目皿35を取り外すことができない場合は、蝶ねじ14を緩めてパイプ係合部材13を本体シャフト2から取り外し、図6に示すように目皿係合部材12の爪12bを通水目皿35の目地孔に係合させる。これにより清掃作業中における装置の位置ずれを防止できる。
【0032】
清掃作業者は、床排水口用導水装置1を床面32に設置した後、フロアドライヤなどの水掃き用具を使用して、床面32に溜まった水や洗浄水などを排水口33に掃き集める作業を行う。床排水口用導水装置1を床面32に設置して清掃作業を行うことにより、排水口33に向けて掃いた水が導水板4-1〜4-3によって集められて排水口33に流れ込むようになるため、清掃作業を能率良く行うことができる。
【0033】
なお、上記の例では導水板を3枚備えた装置構成を示したが、導水板を4枚以上あるいは2枚だけ備えた装置構成とすることも可能である。
【0034】
また、上記の例では導水板の導水ゴムを交換可能としたが、導水板自体を他のサイズの導水板に交換できるように構成してもよい。また、導水ゴムの素材は合成ゴムでも天然ゴムでもよい。床面に倣って変形し得るものであり且つ複数回の使用に耐え得る耐久性を有するものであれば、どのような材質のものを使用してもよい。また、導水ゴムの代わりにブラシ状の導水部材を使用してもよい。
【0035】
また、導水板の導水板本体と導水ゴムとを一体化させてもよい。この形態には、導水板を硬質の部材のみで構成したもの、導水板を床面に倣って変形し得る部材のみで構成したもの、導水ゴムが導水板本体に完全に一体化させて固定(交換不能に固定)されているもの、等が含まれる。
【0036】
また、排水パイプに係合する部材としてS字ばねを用いたが、コイルばねや板ばねなどその他のばねを用いてもよいし、排水パイプに安定に係合得るものであれば、ゴム、プラスチックなどその他の素材からなる部材を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明にかかる床排水口用導水装置の形態例を示す正面図
【図2】図1の装置の導水板を畳んだ状態を示す正面図
【図3】図1のA−A’断面図
【図4】図1の装置を床に設置した形態例を示す要部縦断面図
【図5】図1の装置を床に設置した形態例を示す要部縦断面図
【図6】図1の装置を床に設置した形態例を示す要部縦断面図
【図7】図1の装置の係合部材の構造を示す底面図
【図8】(a)はフロアドライヤの構造を示す部分斜視図、(b)はフロアドライヤを押して床面の水を掃いている様子を示す概念図、(c)はフロアドライヤを引いて床面の水を掃いている様子を示す概念図
【図9】排水口の径とフロアドライヤの幅の大小関係を示す図
【符号の説明】
【0038】
1 床排水口用導水装置
2 本体シャフト
3 固定支持部材
4-1〜4-3 導水板
4a 導水板本体
4b 導水ゴム
5 リンク機構
6 可動支持部材
7 リンク部材
8 係合部材
10 ハンドル
12 目皿係合部材
12b 爪
13 パイプ係合部材
13b S字ばね
14 パイプ係合部材固定用蝶ねじ
32 床面
33 排水口
34 排水パイプ
35 通水目皿
36 排水トラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床清掃作業時に床に設置される清掃用具であって、
床面上の水をその床面に開口した排水口に掃き集める際、掃いた水が排水口に集中し易くなるようにその排水口を中心にして床面に沿って放射状に設けられる複数の導水板を備えたことを特徴とする床排水口用導水装置。
【請求項2】
排水口上に立設される本体シャフトと、
本体シャフトの下端部に固定された固定支持部材とを備え、
前記複数の導水板は、固定支持部材を介して互いに回動自在に連結され、不使用時や搬送時には本体シャフトの上端側に回動させて畳んでおき、使用する際に放射状に広げることができるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の床排水口用導水装置。
【請求項3】
前記複数の導水板は、設置される床面の勾配に合わせて傾きを調節可能であることを特徴とする請求項1または2記載の床排水口用導水装置。
【請求項4】
前記本体シャフトの下端に、排水口に係合する係合部材が設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の床排水口用導水装置。
【請求項5】
前記係合部材は、排水口内の排水パイプの上端部外面または上端部内面に圧接した状態で係合する複数の弾性部材を有することを特徴とする請求項4記載の床排水口用導水装置。
【請求項6】
前記係合部材は、排水口を塞いでいる通水目皿に係合する爪部を有していることを特徴とする請求項4または5記載の床排水口用導水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−87624(P2006−87624A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275956(P2004−275956)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(504358539)