説明

床暖房フロア

【課題】フロアユニットの放熱体または発熱体から放出される熱が少なくても、表面温度を十分に上昇させることができる床暖房フロアを提供する。
【解決手段】二重床構造の床下地10と、床下地10の上面に貼着される熱反射シート20と、熱反射シート20が貼着された床下地10の上に敷設されるフロアユニット30とから構成されており、フロアユニット30は、基材シートの上面に、温水が循環供給される放熱パイプが固着された床暖房シート31と、放熱パイプが嵌り込むパイプ収容溝が裏面に形成された床仕上材35とを備えている。床下地10は、コンクリートスラブ11上に所定の間隔をあけて配置された複数の支持脚12によって支持された下地基材13の上に捨貼材14が貼着されており、捨貼材14の上面に多数のディンプル14aをプレス加工することで、床下地10とフロアユニット30との間に、部分的に空間が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放熱体または発熱体を備えたフロアユニットが床下地の上に敷設されている床暖房フロアに関する。
【背景技術】
【0002】
温水式の床暖房フロアとしては、例えば、図7及び図8に示すようなものがある。この床暖房フロア50は、捨貼合板等によって形成された床下地51の上にフロアユニット52が敷設されたものであり、このフロアユニット52は、床下地51の上に載置される床暖房シート53と、床下地51の上に載置された床暖房シート53を覆うように床下地51の上に敷設される床仕上材54とから構成されている。
【0003】
前記床暖房シート53は、図8に示すように、温水が循環供給される放熱パイプ53aが、所定のパイプパターンに整形された状態で、基材シート53bの上面に固着されたものであり、床仕上材54の裏面には、床暖房シート53の放熱パイプ53aを収容するためのパイプ収容溝54aが形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−333147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような温水式の床暖房フロア50の場合は、通常、ガス焚きボイラーやオイル焚きボイラーといった温水暖房熱源機によって生成された55℃程度の温水が床暖房シート53の放熱パイプ53aに循環供給されるようになっているが、近年では、外気の保有熱を利用して効率よく温水を生成することができる電気式のヒートポンプユニットが温水暖房熱源機として徐々に使用され始めている。
【0006】
しかしながら、ヒートポンプユニットで温水を生成する場合、ガス焚きボイラー等の温水暖房熱源機のように、55℃といった比較的温度の高い温水を十分に供給することが難しく、55℃程度の温水を供給することによって定格の暖房能力を発揮するようになっている従来の床暖房フロアでは、その表面温度を十分に上昇させることができないので、低温(例えば、45℃程度)の温水を供給しても定格の暖房能力を十分に発揮させることができる床暖房フロアが望まれている。
【0007】
また、ガス焚きボイラー等の通常の温水暖房熱源機によって生成された温水を利用して床暖房を行う温水式の床暖房フロアや、線ヒータや自己温度制御特性を有する面状発熱体(所謂、PTCヒータ)等の電気ヒータを発熱体として使用する電気式の床暖房フロアにおいても、小さな放熱量や発熱量で、床暖房フロアの定格暖房能力を十分に発揮させることができれば、省エネルギの観点からも望ましい。
【0008】
そこで、この発明の課題は、フロアユニットの放熱体または発熱体から放出される熱が少なくても、表面温度を十分に上昇させることができる床暖房フロアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、放熱体または発熱体を備えたフロアユニットが床下地の上に敷設されている床暖房フロアにおいて、前記床下地と前記フロアユニットとの間には、部分的に空間が形成されていることを特徴とする床暖房フロアを提供するものである。
【0010】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明の床暖房フロアにおいて、前記床下地の表面を部分的に窪ませることによって、前記床下地と前記フロアユニットとの間に空間を形成するようにしたのである。
【0011】
また、請求項3にかかる発明は、請求項1にかかる発明の床暖房フロアにおいて、前記床下地の表面層として、網状シートまたは有孔シートを積層することによって、前記床下地と前記フロアユニットとの間に空間を形成するようにしたのである。
【0012】
また、請求項4にかかる発明は、請求項2または3にかかる発明の床暖房フロアにおいて、前記床下地の表面に、熱反射シートを貼着したのである。
【0013】
また、請求項5にかかる発明は、請求項1、2、3または4にかかる発明の床暖房フロアにおいて、前記放熱体として、温水が循環供給される放熱パイプを備えた前記フロアユニットを採用したのである。
【0014】
また、請求項6にかかる発明は、請求項5にかかる発明の床暖房フロアにおいて、前記フロアユニットを、基材シートの表面に前記放熱パイプが固着された床暖房シートと、前記床暖房シートを覆う床仕上材とによって構成し、前記床仕上材の裏面には、前記床暖房シートの前記放熱パイプが嵌り込むパイプ収容溝を形成したのである。
【0015】
また、請求項7にかかる発明は、請求項1、2、3、4、5または6にかかる発明の床暖房フロアにおいて、前記床下地として二重床構造を採用したのである。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、請求項1にかかる発明の床暖房フロアは、床下地とフロアユニットとの間に、部分的に空間が形成されているので、その空間内に存在している断熱性能の高い空気層によって、放熱体または発熱体から放出された熱が床下地側に逃げにくく、放熱体または発熱体から放出された熱の多くが床仕上材の加熱に使用されることになるので、放熱体または発熱体から放出される熱が少なくても、床暖房フロアの表面温度を十分に上昇させることができる。
【0017】
具体的には、請求項2にかかる発明の床暖房フロアのように、床下地の表面を部分的に窪ませたり、請求項3にかかる発明の床暖房フロアのように、床下地の表面層として、網状シートまたは有孔シートを積層したりすることによって、床下地とフロアユニットとの間に空間を形成することができる。
【0018】
また、請求項4にかかる発明の床暖房フロアでは、床下地の表面に熱反射シートが貼着されているので、放熱体または発熱体から放出される輻射熱をフロア表面側に反射させることができ、暖房効率をさらに向上させることができる。
【0019】
また、放熱体を備えたフロアユニットとしては、請求項5にかかる発明の床暖房フロアのように、温水が循環供給される放熱パイプを備えたフロアユニットを採用することができる。
【0020】
また、請求項6にかかる発明の床暖房フロアが採用しているフロアユニットでは、床暖房シートの放熱パイプが、床仕上材の裏面に形成されたパイプ収容溝に嵌り込むので、断熱材の上面側に形成されたパイプ収容溝に放熱パイプを嵌め込んだ床暖房マットを、床仕上材によって覆うフロアユニットを採用する場合に比べて、放熱パイプと床仕上材との接触面積が大きくなると共に放熱パイプが床仕上材の表面側に近づくので、床仕上材の加熱効率が向上し、フロア表面を必要温度まで昇温させるための温水の供給温度をさらに下げることができる。
【0021】
また、床下地としては、請求項7にかかる発明の床暖房フロアのように、二重床構造を採用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1及び図2に示す温水式の床暖房フロア1は、二重床構造の床下地10と、この床下地10の上面に貼着される熱反射シート20と、この熱反射シート20が貼着された床下地10の上に敷設されるフロアユニット30とから構成されており、熱反射シート20は、厚さ50μmのアルミニウム箔によって形成されている。
【0023】
前記床下地10は、図1及び図2に示すように、コンクリートスラブ11上に所定の間隔をあけて配置された複数の支持脚12と、この支持脚12によって支持された厚さ20mmのパーティクルボードからなる下地基材13と、この下地基材13の上に貼着された厚さ12mmの合板からなる捨貼材14とから構成されており、捨貼材14の上面には、プレス加工することによって、深さ0.5〜1.0mmの多数のディンプル14aが分散された状態で形成されている。従って、このディンプル14aの形成部分については、床下地10と熱反射シート20との間に、空間(空気層)が形成されることになる。なお、ディンプル14aは、その延べ面積が捨貼材14の上面の全面積の60%程度に設定されている。
【0024】
前記フロアユニット30は、図1及び図2に示すように、床下地10の上に載置される床暖房シート31と、床下地10の上に載置された床暖房シート31を覆うように床下地10の上に敷設される厚さ12mmの床仕上材35とから構成されている。
【0025】
前記床暖房シート31は、図3に示すように、粘着剤付アルミニウム箔からなる厚さ0.1mmの基材シート32と、この基材シート32の上面に、所定のパイプパターンに整形された状態で固着された、架橋ポリエチレンからなる外径7.2mm(内径5.0mm)の放熱パイプ33と、この放熱パイプ33を覆う、基材シート32の上面に固着された、ポリプロピレンからなる厚さ0.3mmの保護カバー34とを備えており、放熱パイプ33には、温水暖房熱源機によって生成された温水が循環供給されるようになっている。
【0026】
前記床仕上材35は、図4に示すように、5プライ合板や3プライ合板等の木質板によって形成されたパネル基材36と、このパネル基材36の表面に貼着された突板等の表面化粧材37とから構成されており、パネル基材36の裏面には、保護カバー34によって覆われた、床暖房シート31の放熱パイプ33が嵌り込むパイプ収容溝36aが形成されている。
【0027】
以上のように、この床暖房フロア1では、床下地10の上面に多数のディンプル14aを形成することによって、床下地10とフロアユニット30との間に、部分的に空間を形成するようにしたので、その空間内に存在している断熱性能の高い空気層によって、床暖房シート31の放熱パイプ33内を流れる温水から放出された熱が床下地10側に逃げにくく、放熱パイプ33内を流れる温水から放出された熱の多くが、床仕上材35の加熱に使用されることになるので、放熱パイプ33に循環供給される温水の温度を低くしても、床暖房フロア1の表面温度を十分に上昇させることが可能になる。
【0028】
従って、この床暖房フロア1では、ヒートポンプユニットを温水暖房熱源機として使用することが可能になると共に、ガス焚きボイラー等の温水暖房熱源機を使用する場合は、温水を生成するための消費エネルギを削減することができる。
【0029】
また、この床暖房フロア1では、床下地10の表面に熱反射シート20が貼着されているので、床暖房シート31からの輻射熱をフロア表面側に反射させることができ、暖房効率をさらに向上させることができる。
【0030】
なお、上述した実施形態では、床下地10の上に敷設するフロアユニット30を、基材シート32の表面に放熱パイプ33が固着された床暖房シート31と、この床暖房シート31を覆う、裏面にパイプ収容溝36aが形成された床仕上材35とによって構成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、所定の厚みを有する断熱材の上面側に形成されたパイプ収容溝に放熱パイプを嵌め込んだ床暖房マットと、この床暖房マットを覆う床仕上材とによってフロアユニットを構成することも可能である。
【0031】
ただし、上述したようなフロアユニット30では、床暖房シート31の放熱パイプ33が、床仕上材35の裏面に形成されたパイプ収容溝36aに嵌り込むので、断熱材の上面側に形成されたパイプ収容溝に放熱パイプを嵌め込んだ床暖房マットを、床仕上材によって覆うフロアユニットに比べて、放熱パイプ33と床仕上材35との接触面積が大きくなると共に放熱パイプ33が床仕上材35の表面側に近づくので、床仕上材35の加熱効率が向上し、フロア表面を必要温度まで昇温させるための温水の供給温度をさらに下げることができるという効果が得られる。
【0032】
また、上述した実施形態では、床下地10を構成している捨貼材14の表面に多数のディンプル14aをプレス加工することによって、床下地10とフロアユニット30との間に、部分的に空間を形成しているが、これに限定されるものではなく、捨貼材14の表面に多数の溝や各種形状の凹部を切削加工することによって、床下地10とフロアユニット30との間に、部分的に空間を形成することも可能である。
【0033】
しかしながら、床下地10とフロアユニット30との間に、部分的に空間を形成するために、捨貼材14の表面をプレス加工することによって窪ませたり、溝や凹部を切削加工すると、製造コストが高くなるので、例えば、図5及び図6(a)、(b)に示すように、捨貼材14の表面に網状シート15を貼着したり、合成樹脂製のシートに複数の孔が形成された有孔シート(図示せず)を貼着することによって、床下地10とフロアユニット30との間に、部分的に空間を形成すると、同等の機能を確保しながら、製造コストの削減を図ることができる。使用する網状シート15としては、例えば、ポリオレフィン(ポリプロピレン)やガラス繊維等によって形成された、厚さ0.6mm、20メッシュのネットを使用することができる。
【0034】
また、上述した実施形態では、床下地10を構成している捨貼材14として合板を採用しているが、これに限定されるものではなく、硬質繊維板(HB)、中質繊維板(MDF)等の木質系ボード、プラスチック系ボードまたは無機質系ボード等を採用することも可能である。
【0035】
また、上述した実施形態では、支持脚12によって支持された下地基材13の上に捨貼材14を貼着するようにしているが、これに限定されるものではなく、下地基材と捨貼材とが一体化された単一の下地材を採用することも可能であり、その場合は、下地材の表面を窪ませたり、溝や凹部を切削加工したり、下地材の表面に網状シート15や有孔シート等を貼着したりすることによって、床下地10とフロアユニット30との間に、部分的に空間を形成する必要がある。
【0036】
また、上述した実施形態では、床下地10の上面にアルミニウム箔からなる熱反射シート20を貼着しているが、熱反射シート20はアルミニウム箔に限定されるものではなく、熱反射特性を有する各種素材によって形成されたシートを採用することができると共に、熱反射シート20自体を省略することも可能である。
【0037】
また、上述した実施形態では、二重床構造の床下地10を採用した床暖房フロア1について説明したが、これに限定されるものではなく、根太の上に捨貼合板を貼った一般的な戸建て住宅の床下地の上にフロアユニットを敷設する床暖房フロアについても、本発明を適用することができることはいうまでもない。
【0038】
また、上述した実施形態では、温水式の床暖房フロアについて説明したが、これに限定されるものではなく、線ヒータやPTCヒータ等の電気ヒータを発熱体として使用する電気式の床暖房フロアについても、本発明を適用することができ、その場合は、発熱体である電気ヒータの消費電力を削減することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明にかかる床暖房フロアの一実施形態を示す断面図である。
【図2】同上の床暖房フロアを示す分解断面図である。
【図3】同上の床暖房フロアのフロアユニットを構成している床暖房シートを示す分解断面図である。
【図4】同上の床暖房フロアのフロアユニットを構成している床仕上材を示す分解断面図である。
【図5】他の実施形態である床暖房フロアの床下地を示す断面図である。
【図6】(a)は同上の床下地を構成している捨貼材及び網状シートを示す斜視図、(b)は同上の捨貼材に同上の網状シートを貼着した状態を示す斜視図である。
【図7】背景技術としての温水式床暖房フロアを示す断面図である。
【図8】同上の温水式床暖房フロアを示す分解断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 床暖房フロア
10 床下地
11 コンクリートスラブ
12 支持脚
13 下地基材
14 捨貼材
14a ディンプル
15 網状シート
20 熱反射シート
30 フロアユニット
31 床暖房シート
32 基材シート
33 放熱パイプ
34 保護カバー
35 床仕上材
36 パネル基材
36a パイプ収容溝
37 表面化粧材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱体または発熱体を備えたフロアユニットが床下地の上に敷設されている床暖房フロアにおいて、
前記床下地と前記フロアユニットとの間には、部分的に空間が形成されていることを特徴とする床暖房フロア。
【請求項2】
前記床下地の表面を部分的に窪ませることによって、前記床下地と前記フロアユニットとの間に空間を形成するようにした請求項1に記載の床暖房フロア。
【請求項3】
前記床下地の表面層として、網状シートまたは有孔シートを積層することによって、前記床下地と前記フロアユニットとの間に空間を形成するようにした請求項1に記載の床暖房フロア。
【請求項4】
前記床下地の表面には、熱反射シートが貼着されている請求項2または3に記載の床暖房フロア。
【請求項5】
前記フロアユニットは、前記放熱体として、温水が循環供給される放熱パイプを備えている請求項1、2、3または4に記載の床暖房フロア。
【請求項6】
前記フロアユニットは、基材シートの表面に前記放熱パイプが固着された床暖房シートと、前記床暖房シートを覆う床仕上材とから構成されており、
前記床仕上材の裏面には、前記床暖房シートの前記放熱パイプが嵌り込むパイプ収容溝が形成されている請求項5に記載の床暖房フロア。
【請求項7】
前記床下地が二重床構造を有している請求項1、2、3、4、5または6に記載の床暖房フロア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−83681(P2006−83681A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340691(P2004−340691)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】