説明

床暖房用ヒーターパネル

【課題】 ヒーターパネルAをコンクリートスラブC等の床下地に接着剤1を塗布して直貼りするときに、塗布した接着剤1がコネクタ31、32に付かないようにして、床暖房構造の施工を容易化する。
【解決手段】 木質基材20と、その裏面側に内蔵したコネクタ31、32を含む電気ヒーターセットと、この電気ヒーターセットを覆うようにして木質基材20の裏面に取り付けられた裏面材41とからなる床暖房用のヒーターパネルAにおいて、コネクタ31、32が位置する領域において裏面材41は部分的に切除されており、切除部を覆うようにして遮蔽シート3を裏面材41に貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材の裏面側に雌雄のコネクタを含む電気ヒーターセットを内蔵している床暖房用ヒーターパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材の裏面側に、線ヒーターや面ヒーターとそこに電気的に接続するコネクタ等からなる電気ヒーターセットを組み込んだヒーターパネルを用いて、電気式の床暖房構造を施工することは知られている(特許文献1、特許文献2等参照)。図2、図3はそのようなヒーターパネル40の一例を示しており、ここでは、木質基材20は、1800mm×75mm程度の大きさの5プライ合板である単位基材10が長手方向に位置をずらしながら4段に組み付けて造られており、各単位基材10同士の長手方向の組み付け面にはホットメルト系接着剤が塗布されて一体化されている。
【0003】
木質基材10の裏面には、組み込もうとする熱線ヒーター30の回路パターンに応じた凹溝13、15が形成され、さらに、雄コネクター31、雌コネクター32、サーモスタット33等を収容するための切り込み部17が形成されている。これらの凹溝や切り込み部を利用して、熱線ヒーター30や雌雄のコネクタ31、32あるいはサーモスタット33等で構成される電気ヒーターセットが電気的に接続した状態で木質基材10の裏面側に組み込まれる。その後、図3、図4に示すように、木質基材20の裏面のほぼ全面にアルミ箔からなる均熱板42も貼り付けられ、さらに、緩衝性シートのような裏面材41が取り付けられて、床暖房用のヒーターパネル40とされる。
【0004】
床暖房構造を施工するに際しては、上記のようなヒーターパネル40の多数枚が隣接するヒーターパネル40のコネクタ31、32同士を接続しながら床下地45の上に配置される。施工時のコネクタの接続作業をし易くするために、通常、いずれか一方のコネクタ(図示のものでは雌コネクタ32)は木質基材10のコネクタ収容凹部17aに収容された状態で引き出し不能に設置されるが、他方のコネクタ(図示のものでは雄コネクタ31)はコネクタ収容凹部17bに引き出し可能な状態で収容されている。さらに、図3に示すように、コネクタ31、32が位置する領域において裏面材41は部分的に切除されていて、作業者がコネクタ31を引き出したり、固定側のコネクタ32に接続する作業をし易くしている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−179876号公報
【特許文献2】特開2004−85119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなヒーターパネルを、大引きや根太を持つ床下地構造の場合でのように、根太間に発泡樹脂のような断熱材を入れ、その上に下地合板を不陸のないように貼り付け、根太等に木質基材に形成した実部を利用して釘打ち固定していくような施工態様の場合には、格別の問題は生じない。しかし、図5に示すように、床下地が集合住宅のようにコンクリートスラブCの場合に、ヒーターパネル40をコンクリートスラブ面に接着剤1を用いて直貼りすることが行われるが、そのときに不都合が生じる。
【0007】
すなわち、作業に当たっては、既に床下地上に貼り付けて配置してあるヒーターパネル40の上に、次に貼り付けようとするヒーターパネルを立てた姿勢でかつコネクタ同士が近接した状態で置き、既に貼り付けてあるヒーターパネル40からコネクタ31を引き出して、次に貼り付けようとするヒーターパネルのコネクタと接続させた後、当該ヒーターパネルを接着剤1が塗布されている床下地面(コンクリートスラブ面)に配置するようにしている。図3に示すように、接続作業を容易にするためにコネクタ31、32が位置する領域において裏面材41は部分的に切除されており、そこからコネクタは露出した状態にある。そのために、床下地上に配置したときに、コネクタ31、32に床下地に塗布した接着剤1が付着することが起こり得る。
【0008】
塗布されている接着剤1はこの時点では未硬化であり、コネクタ31に接着剤が付着しても、コネクタ31の引き出しができないことはない。しかし、引き出し作業が困難となり、また、コネクタ31、32同士の接続作業時に作業者の手にも接着剤が付着することが起こる。そのために、図5に示すように、ヒーターパネル40を貼り付けた直後に、適宜のシート2をコンクリートスラブCとヒーターパネル40との間に差し込むという作業を行うようにしており、施工現場での大きな作業負担となっている。
【0009】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、コンクリートスラブあるいはその上に敷設した捨て張り合板に接着剤を塗布してヒーターパネルを直貼りして電気式の床暖房構造を構築する際の作業負担を大きく低減することのできるヒーターパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるヒーターパネルは、木質基材と、その裏面側に内蔵したコネクタを含む電気ヒーターセットと、この電気ヒーターセットを覆うようにして木質基材の裏面に取り付けられた裏面材とからなる床暖房用のヒーターパネルであって、コネクタが位置する領域において裏面材は部分的に切除されており、切除部を覆うようにして遮蔽シートが裏面材に貼り付けられていることを特徴とする。より具体的な態様において、本発明によるヒーターパネルは、雌雄のコネクタを有し、一方のコネクタは木質基材の一方の端縁側に形成されたコネクタ収容凹部に収容された状態で引き出し不能に設置されており、他方のコネクタは木質基材における他方の端縁側に形成されたコネクタ収容凹部に引き出し可能に収容されており、少なくとも引き出し可能に収容されているコネクタ側での裏面材の切除部には当該切除部を覆うようにして遮蔽シートが裏面材に貼り付けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明において、ベースとなるヒーターパネルの構造は、例えば前記図2、図3等に基づき説明したような従来知られた任意のヒーターパネルと同様であってもよい。木質基材は単位基材が雁木上に組み付けられたものでもよく、一枚の板材で造られていてもよい。電気ヒーターセットは、線ヒーターあるいはPTCヒーターのような面ヒーターと、そこに給電するためのコネクタを少なくとも備えていればよく、他に、サーモスタットやヒューズ等の安全手段を備えるものであってもよい。アルミ箔のような均熱板を備えていてもよい。ヒーターパネルは、従来の貼り出しヒーターパネルのようにコネクタを1個のみを備えるものであってもよく、雌雄の対となる2個のコネクタを備えるものであってもよい。コネクタは、一方または双方が引き出し不能な状態でヒーターパネルに取り付けてあってもよく、一方または双方が引き出し可能な状態でヒーターパネルに取り付けてあってもよい。
【0012】
本発明において、裏面材は、コネクタが位置する領域において部分的に切除されていることを条件に、素材等は任意であり、不織布、緩衝性繊維シート、発泡樹脂材料等である緩衝性シートであってもよく、補強目的での合板あるいは中質繊維板(MDF)等であってもよい。両者を積層した構成のものであってもよい。
【0013】
本発明において、遮蔽シートは、ヒーターパネルに取り付けたコネクタが床下地に塗布した接着剤と直接接触するのを回避する目的で設けられるものであり、その目的を達成できることを条件に、適宜の樹脂シート、紙、金属箔等であってよい。遮蔽シートは、裏面材の切除部が複数個ある場合に、そのすべてに対して取り付けてもよいが、引き出し可能に収容されているコネクタがある場合には、少なくともそこに相当する裏面材の切除部を覆うようにして遮蔽シートが取り付けてあれば、充分に所期の目的は達成可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるヒーターパネルを用いて電気式の床暖房構造を施工する場合には、コンクリートスラブ等の床下地に接着剤を塗布してその上にヒーターパネルを直貼りする施工方法を採用する場合でも、切除部を覆うようにして裏面材に貼り付けてある遮蔽シートが存在することにより、ヒーターパネルに取り付けたコネクタが床下地に塗布されている接着剤と直接接触することはなく、コネクタに接着剤が付着するのを確実に回避することができる。そのために、隣接するヒーターパネル同士をコネクタ接続するときの作業が阻害されることはなく、作業者の手に接着剤が付くのも防止できる。そのために、床暖房構造の施工がきわめて容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明による床暖房用ヒーターパネルを実施の形態に基づき説明する。
【0016】
図1は、本発明による床暖房用ヒーターパネルの一例を裏から見て示している。このヒーターパネルAの基本的構造は、前記図2、図3に示したヒーターパネル40と同じであり、木質基材20と、その裏面側に内蔵した熱線ヒーター30とコネクタ31、32等からなる電気ヒーターセットと、この電気ヒーターセットを覆うようにして木質基材20の裏面に取り付けた裏面材41とを有する。そして、コネクタ31、32が位置する領域において裏面材41は部分的に切除されている。
【0017】
本発明によるヒーターパネルAにおいて、裏面材41の前記切除部、すなわち、コネクタ31、32が位置する領域を覆うようにして遮蔽シート3が裏面材41に貼り付けられている点で、従来のヒーターパネル40と相違する。なお、図1に示す例では、固定側のコネクタ32が位置する領域と、引き出しできるようになっているコネクタ31が位置する領域の双方が遮蔽シート3で覆われているが、いずれか一方の領域を遮蔽シート3で覆うようにしてもよく、その場合、好ましくは、引き出し可能に収容されているコネクタ31側での裏面材41の切除部を覆うように、遮蔽シート3を裏面材41に貼り付けるようにされる。
【0018】
本発明によるヒーターパネルAを用いる場合には、図5に示すように、コンクリートスラブCに接着剤1を塗布して、その上に直にヒーターパネルAを置いても、コネクタ31、32が接着剤1に直接触れることはない。そのために、これまでのように、適宜のシート2をコンクリートスラブCとヒーターパネル40の間に差し込むという作業をすべて省略することができるようになり、施工現場での作業は大きく省力化される。
【0019】
遮蔽シート3の存在により、コネクタ31、32に塗布した接着剤が付くことはないので、次のヒーターパネルAとの間でコネクタ同士の接続作業を行うときに、作業者は既に貼り付けてあるヒーターパネルAからコネクタ31を容易に引き出すことができ、また、コネクタ同士に接続時に、作業者の手に接着剤が付着することもない。それにより、迅速な敷き詰め作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるヒーターパネルを裏から見て示す図。
【図2】従来のヒーターパネルをバッカー材を除去した状態で示す背面図。
【図3】従来のヒーターパネルの一例を示す背面図。
【図4】従来のヒーターパネルを床下地に貼り付けた状態を示す断面図。
【図5】従来のヒーターパネルをコンクリートスラブに直貼りする場合の一例を示す図。
【符号の説明】
【0021】
A…床暖房用ヒーターパネル、C…コンクリートスラブ、1…接着剤、3…遮蔽シート、20…木質基材、30…熱線ヒーター、31、32…コネクタ、41…裏面材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材と、その裏面側に内蔵したコネクタを含む電気ヒーターセットと、この電気ヒーターセットを覆うようにして木質基材の裏面に取り付けられた裏面材とからなる床暖房用のヒーターパネルであって、コネクタが位置する領域において裏面材は部分的に切除されており、切除部を覆うようにして遮蔽シートが裏面材に貼り付けられていることを特徴とするヒーターパネル。
【請求項2】
雌雄のコネクタを有し、一方のコネクタは木質基材の一方の端縁側に形成されたコネクタ収容凹部に収容された状態で引き出し不能に設置されており、他方のコネクタは木質基材における他方の端縁側に形成されたコネクタ収容凹部に引き出し可能に収容されており、少なくとも引き出し可能に収容されているコネクタ側での裏面材の切除部には当該切除部を覆うようにして遮蔽シートが裏面材に貼り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のヒーターパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−84138(P2006−84138A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270425(P2004−270425)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】