説明

床暖房用床材

【課題】 寸法安定性とともに耐傷性の高い床暖房用床材を得る。
【解決手段】 突き板と木質繊維板と合板とがこの順で積層されている床暖房用床材において、木質繊維板として、ポリエチレングリコールモノメタクリレートの固形分100重量部に対し、20〜300重量部の2−ヒドロキシエチルモノメタクリレートを添加した、樹脂固形分20〜100%水溶液を含浸硬化させたものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水式あるいは電気式の床暖房構造で用いられる床暖房用床材に関する。
【背景技術】
【0002】
床下地面に配設した温水パイプに熱源としての温水を循環させるようにした温水式床暖房構造、あるいは熱線ヒータや面ヒータを熱源とする電気式床暖房構造は、フロア全面をほぼ等しく昇温させることができることから、一般住宅においても広く採用されている。床暖房構造において、床表面材として、基材である合板または木質繊維板の上に表面化粧層としての突き板を積層した2層構造の木質系床材、突き板と中間層としての木質繊維板と基材としての合板を積層した3層構造の木質系床材などが用いられるが、いずれの場合も、暖房用の熱による乾燥収縮が生じ易く、収縮応力により、表面に剥がれやクラックが生じたり、組み付けた床材同士の接合部に隙間が生じることが起こりやすい。それを防ぐために、何らかの寸法安定化処理が施されることが多く、また、隙間が発生するのを防止するために、床材同士の接合部に接着剤を塗布して接合することも行われる。
【0003】
寸法安定化処理の一つとして、木材あるいは木質繊維板にフェノール樹脂やポリエチレングリコールを塗布あるいは含浸させる化学的処理方法が知られており、例えば特許文献1には、バインダーとしてフェノール系樹脂を用いた木質繊維板において、木質繊維板にポリエチレングリコールメタアクリレートを、木質繊維板の重量に対して5〜60重量%となるように、塗布または含浸することが記載されている。このような寸法安定化処理を施した木質繊維板を床材の基材あるいは中間層として用いることにより、床材を床暖房用床材として用いても、木質繊維板の乾燥による寸法変化量を小さくすることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−337116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、木質繊維板の処理と製造および床暖房用床材の製造とその施工を行ってきているが、表面側に突き板などの表面化粧層を貼り合わせる木質繊維板として、上記したようなポリエチレングリコールメタアクリレートなどの寸法安定化剤を塗布あるいは含浸する処理を行った木質繊維板を用いて床材を作製することにより、それを床暖房用床材として用いても寸法変化量をある程度まで抑制することができるものの、木質繊維板表面の耐傷性が十分でなく、キャスターなどを使用したときに、床材表面に剥がれやしわが生じることを経験した。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、基材あるいは中間層として木質繊維板を用い、その表面に化粧層を貼り付けてなる床暖房用床材において、寸法安定性とともに、表面化粧層に剥がれやしわが発生するのを防止できるようにした床暖房用床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による床暖房用床材の第1の形態は、表面化粧層と木質繊維板とがこの順で積層されている床暖房用床材であって、木質繊維板は、ポリエチレングリコールモノメタクリレートの固形分100重量部に対し、20〜300重量部の2−ヒドロキシエチルモノメタクリレートを添加した、樹脂固形分20〜100%水溶液を含浸硬化させて得られたものであることを特徴とする。限定されるものではないが、好ましくは、表面化粧層は突き板であってその厚さは0.2〜3mmの範囲であり、木質繊維板の厚さは7〜12mmの範囲とされる。
【0008】
本発明による床暖房用床材の第2の形態は、表面化粧層と木質繊維板と合板とがこの順で積層されている床暖房用床材であって、木質繊維板は、ポリエチレングリコールモノメタクリレートの固形分100重量部に対し、20〜300重量部の2−ヒドロキシエチルモノメタクリレートを添加した、樹脂固形分20〜100%水溶液を含浸硬化させて得られたものであることを特徴とする。ここでも、限定されるものではないが、好ましくは、表面化粧層は突き板であって、その厚さは0.2〜3mmの範囲であり、木質繊維板の厚さは0.5〜5mmの範囲であり、合板の厚さは5〜10mmの範囲とされる。
【0009】
本発明では、寸法安定化処理剤としてのポリエチレングリコールモノメタクリレートに適量の2−ヒドロキシエチルモノメタクリレートを添加した、樹脂固形分20〜100%水溶液を、木質繊維板へ含浸硬化させるようにしており、本発明者らの実験では、この処理をした木質繊維板を使用した床材は寸法安定性とともに表面の耐傷性にも優れており、それを床暖房用床材として使用しても、床材相互の接合部に隙間が生じることはなく、また、床面でキャスターなど使用しても、表面化粧層に剥がれやしわが生じないことを確認できた。
【0010】
なお、2−ヒドロキシエチルモノメタクリレートの添加量が上記未満(20重量部未満)だと、木質繊維板に十分な耐傷性が得られず、上記の範囲を超過する(300重量部を越える)と寸法安定性に影響を与え、十分な寸法安定性が得られなかった。さらに、樹脂固形分が20%未満のポリエチレングリコールモノメタクリレート水溶液を用いる場合にも、十分な寸法安定性が得られなかった。
【0011】
本発明による第1の形態は、上記処理済みの木質繊維板の表面に表面化粧層を積層したものであり、そのままで床暖房用床材として用いられる。その場合、前記したように、好ましくは、表面化粧層の厚さは0.2〜3mmの範囲であり、木質繊維板の厚さは7〜12mmの範囲とされ、全体の厚みは7〜12mm前後とされる。
【0012】
本発明による第2の形態は、上記処理済みの木質繊維板の表面側に表面化粧層を積層し、裏面側に基材としての合板を積層したものである。基材としての合板は、従来の床材で用いられていたものを適宜選択して用いることができ、広葉樹合板でもよく、針葉樹合板でもよい。前記したように、この場合は、好ましくは、表面化粧層の厚さは0.2〜3mmの範囲であり、木質繊維板の厚さは0.5〜5mmの範囲であり、合板の厚さは5〜10mmの範囲とされ、全体の厚さはやはり7〜12mm前後とされる。
【0013】
本発明において、表面化粧層は突き板が好ましいが、従来、床材の表面化粧層で用いられている表面塗膜が耐摩耗性を有する化粧合成樹脂シートのようなものも適宜使用することができる。
【0014】
木質繊維板への樹脂水溶液の含浸方法に特に制限はないが、減圧含浸処理は迅速かつ均一な含浸が得られることから好ましく、その場合、減圧程度は、60〜5kPaの範囲で行うことが好ましい。60kPaよりも低い減圧度では、均一な含浸を短い時間で行うことができず、また、5kPaよりも高い減圧度とすることは、現状では技術的に困難である。
【0015】
なお、本発明において、ベースとなる木質繊維板の種類やその製造方法に特に制限はなく、植物繊維をフェノール樹脂、尿素−メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂をバインダーとして一体化する、従来法によって製造される任意の木質繊維板を適宜選択して用いることができる。例として、高密度繊維板(HB)や中密度繊維板(MDF)などを挙げることができるが、薬剤の含浸が容易である理由から、中密度繊維板(MDF)は最も好適である。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明を説明する。
[実施例]
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(分子量387〜467)(日本油脂社のブレンマーPE350)の固形分100重量部に対し、30重量部の2−ヒドロキシエチルモノメタクリレートを添加した、樹脂固形分30%水溶液を、バインダーとしてフェノール樹脂を用いた2.7mm厚の木質繊維板に、60kPaの減圧条件下で含浸させ、硬化させた。含浸時間は5分であり、含浸量は樹脂固形分の含有量が、木質繊維板の重量に対して12重量%となるようにした。
【0017】
得られた木質繊維板を用いて床材を作成した。床材の構成は、厚さ0.25mmのオーク材突き板と、上記木質繊維板と、厚さ9mmのラワン合板(5プライ)からなり、合板と木質繊維板の貼り合わせには、変性酢酸ビニル系接着剤を使用し、塗布量は15g/尺とした。突き板と木質繊維板の接着剤は、尿素・酢酸ビニル系接着剤を使用し、塗布量は10g/尺とした。
【0018】
作成した床材について、下記要領での耐キャスター試験を行った。その結果、床材表面には異常がまったく見られず(グレード3)、高い耐傷性が確認できた。
【0019】
[比較例]
2−ヒドロキシエチルモノメタクリレートを添加しないポリエチレングリコールモノメタクリレート(固形分30%水溶液)を含浸させた木質繊維板を用い、実施例と同様にして床材を作成し、かつ同様にして耐キャスター試験を行った。その結果、床材表面にクラックやしわが目視観察された。
【0020】
[耐キャスター試験要領]
製造後、1週間以上経過した上記床材から150mmの正方形状の試験片を調製する。試験片をキャスター試験機に固定し、25kgの荷重をかけ、その状態で、試験片を100mmの距離3000回往復させる。このとき、約17往復で試験片が1回転して、元の位置に戻るようにする。3000回往復後、試験片の表面層(突き板)の剥離を目視観察し、ノギスを用いて最大凹み量を1/100mmまで測定する。この試験では、突き板の剥離、割れ、浮き上がりのないものが、クレード3として合格レベルとなる。
【0021】
[考察]
上記の耐キャスター試験結果が示すように、本発明による床材はグレード3の合格レベルを満足しており、本発明の優位性が示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面化粧層と木質繊維板とがこの順で積層されている床暖房用床材であって、木質繊維板は、ポリエチレングリコールモノメタクリレートの固形分100重量部に対し、20〜300重量部の2−ヒドロキシエチルモノメタクリレートを添加した、樹脂固形分20〜100%水溶液を含浸硬化させて得られたものであることを特徴とする床暖房用床材。
【請求項2】
表面化粧層の厚さは0.2〜3mmの範囲であり、木質繊維板の厚さは7〜12mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の床暖房用床材。
【請求項3】
表面化粧層と木質繊維板と合板とがこの順で積層されている床暖房用床材であって、木質繊維板は、ポリエチレングリコールモノメタクリレートの固形分100重量部に対し、20〜300重量部の2−ヒドロキシエチルモノメタクリレートを添加した、樹脂固形分20〜100%水溶液を含浸硬化させて得られたものであることを特徴とする床暖房用床材。
【請求項4】
表面化粧層の厚さは0.2〜3mmの範囲であり、木質繊維板の厚さは0.5〜5mmの範囲であり、合板の厚さは5〜10mmの範囲であることを特徴とする請求項3に記載の床暖房用床材。
【請求項5】
含浸を60〜5kPaの範囲での減圧含浸で行ったものであることを特徴とする請求項1または3に記載の床暖房用床材。

【公開番号】特開2006−207215(P2006−207215A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19313(P2005−19313)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】