説明

床材および床構造

【課題】オスザネ突条22の上方端面23およびメスザネ凹溝26の上方端面27に同方向に傾斜した傾斜面23a,27aをそれぞれ形成している床材10において、当て木50による隣接する床材10(10A)への叩き込み時に、オスザネ部側の傾斜面23aの先端に破損を生じさせないようにする。
【解決手段】上記床材10において、オスザネ突条22の上方端面23における傾斜面23aの先端23bの位置を、オスザネ突条22の先端22aよりも大きく床材本体側に後退した位置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床材および床構造に関し、特に、床材に収縮が生じても、隣接する床材間に隙間を生じさせないようにした形態の床材とその床材を用いた床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木質材からなり、図2に示すように、本ザネ接合するオスザネ部とメスザネ部を両辺に備えた床材1は知られている(特許文献1等参照)。木質材からなる床材は、吸放湿による収縮を起こしやすい。特に、床下地とその上に敷き詰めた床材との間に電気ヒータや温水パイプである熱源を配置してなる床暖房構造においては、床材の収縮により隣接する床材1,1間の隙間Pが目立つようになりやすい。その傾向は、図2に例示するように、オスザネ突条2の上方端面3およびメスザネ凹溝4の上方端面5が垂直面とされている床材1では顕著であり、また、無垢材で作られる床材は、合板を基材とする床材よりも顕著となる。
【0003】
それを回避するために、図2に示す形状の床材において、オスザネ突条2の上方端面3およびメスザネ凹溝4の上方端面5に同方向に傾斜した傾斜面をそれぞれ形成するようにした床材が提案されている(特許文献2等参照)。この形態の床材では、隣接する床材同士に収縮が生じても、オスザネ突条の傾斜した上方端面は、メスザネ凹溝の傾斜した上方端面上を移動することから、上から見たときに、オスザネ突条に達するような隙間が形成されることはなく、床構造の表面意匠性は長期間にわたり維持される。
【0004】
【特許文献1】特開平11−141109号公報
【特許文献2】特開2004−124461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3は、上記したオスザネ突条2の上方端面3およびメスザネ凹溝4の上方端面5に同方向に傾斜した傾斜面をそれぞれ形成するようにした床材1aの一例を示している。すなわち、この床材1aにおいて、オスザネ突条2の上方端面3の一部がオスザネ突条2の先端側に向けて斜め上方に傾斜する傾斜面3aとされており、また、メスザネ凹溝4の上方端面5の一部であって、前記オスザネ突条2の上方端面3における傾斜面3aに対向する領域は、前記傾斜面3aと同方向にほぼ同じ角度で傾斜した傾斜面5aとされている。
【0006】
従来知られているこの形態の床材において、前記オスザネ部側の傾斜面3aの先端3bはオスザネ突条2の先端2bに達するか、図3に示すように、さらに距離sだけ前方に突き出ているのが通常である。
【0007】
床材を床下地に敷き詰めるときに、メスザネ側を壁面である基準面に当てて固定し、そのようにして固定された床材のオスザネ側に、隣接する床材のメスザネ部を仮嵌合した姿勢として、その床材のオスザネ側に当て木を当てて叩き込むことが行われる。図3に示した既存の形態の床材1aの場合、前記したように、前記オスザネ部側の傾斜面3aの先端3bがオスザネ突条2の先端2bよりも距離sだけ前方に突き出ており、そのために、当て木として厚さの薄いものを用いないと、当て木を当てて床材1aを叩き込むときに、傾斜面3aの先端3bが宛て木と衝突して、破損することが起こる。その破損は床材表面にも波及して表面意匠を損なうので、回避することが望まれる。
【0008】
オスザネ突条2の高さにまでしか達しない薄い当て木を用いれば、この不都合は回避できるが、叩き込み時の作業効率が大きく低下するので、実用的な解決策とはならない。このことは、前記オスザネ部側の傾斜面3aの先端3bとオスザネ突条2の先端2bと同じ位置まで達している場合でも、同様に起こる。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、本ザネ接合するオスザネ部とメスザネ部を両辺に備え、オスザネ突条の上方端面およびメスザネ凹溝の上方端面に同方向に傾斜した傾斜面をそれぞれ形成している床材において、床下地への敷き込み時に、叩き込み時の作業効率を低下させることなく、かつオスザネ部側の傾斜面の先端に破損を生じさせないようにした床材を開示することを課題とする。また、前記床材を用いた床構造を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による床材は、本ザネ接合するオスザネ部とメスザネ部を両辺に備え、オスザネ突条の上方端面およびメスザネ凹溝の上方端面に同方向に傾斜した傾斜面をそれぞれ形成している床材であって、オスザネ突条の上方端面における前記傾斜面の先端はオスザネ突条の先端よりも床材本体側に位置していることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
この床材では、床下地面に敷き込むときに、オスザネ突条の先端を作業がしやすい高さの高い当て木を用いて叩き込む作業を行っても、当て木がオスザネ突条の上方端面に形成した傾斜面の先端に衝接することはなく、傾斜面先端に破損は生じない。そのために、床材表面の意匠性が損なわれることもない。
【0012】
本発明による床材は、通常の床構造で用いる床材であってもよく、床暖房構造で用いる床材であってもよい。また、合板やMDF等の木質繊維板からなる基材と表面化粧層からなる床材であってもよく、無垢材からなる床材であってもよい。
【0013】
本発明に係る床材の好ましい形態において、前記オスザネ部のオスザネ突条の上方端面はオスザネ突条の下方端面よりも床材本体側に位置するようにされる(請求項2)。この形態では、オスザネ突条の上面側での奥行き(先端から上方端面までの距離)が大きくなることに加え、前記上方端面の下方領域に切り欠かれた領域が存在しないことから、釘打ちによる床下地面への床材の仮固定が容易になる効果ももたらされる。
【0014】
本発明は、さらに、上記の床材の多数枚が本ザネ接合して床下地の上に敷き詰められている床構造をも開示する(請求項3)。さらに、床暖房用の熱源を備えた床下地の上に前記床材が敷き詰められている床構造も開示する(請求項4)。これらの床構造では、床材を床下地へ敷き詰めるときに、床材は表面の意匠性を損なうことなく行われるので、表面意匠性の高い床構造が得られる。また、床材に収縮が生じた場合でも、隣接する床材間にオスザネ突条が目視できるような隙間が生じることはないので、高い表面意匠性は長期にわたり維持される。電気ヒータや温水パイプのような床暖房用の熱源を備えた床下地の上に上記床材を敷き詰めた場合、床材の膨張収縮は特に大きくなるが、この場合でも、高い表面意匠性を長期にわたり保持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本ザネ接合するオスザネ部とメスザネ部を両辺に備え、オスザネ突条の上方端面およびメスザネ凹溝の上方端面に同方向に傾斜した傾斜面をそれぞれ形成している床材において、床下地への敷き込み時に、オスザネ部側の傾斜面の先端や床材表面に傷を付けることのない床材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は、本発明による床材の一形態を短手方向の断面で示すとともに、その床材を床下地の上に敷き込むときの作業状態を示している。
【0017】
この例において、床材10は、基材合板20とその表面に積層した化粧層である突板30とで構成される。基材合板20の周囲には、本ザネ接合するオスザネ部とメスザネ部が形成されており、図1では、長辺に沿って形成されたオスザネ部とメスザネ部とが図示されている。
【0018】
オスザネ部は、基材合板20の厚さ方向のほぼ中央に位置するオスザネ突条22と、オスザネ突条22の上方に位置するほぼ垂直な上方端面23と、オスザネ突条22の下方に位置するほぼ垂直な下方端面24とで構成されており、この例において、前記上方端面23は下方端面24よりも距離aだけ床材本体側に偏位している。
【0019】
上方端面23は、その上方側に、前記オスザネ突条22の先端側に向けて斜め上方に傾斜する傾斜面23aを有しており、その先端23bは、オスザネ突条22の先端22aから距離b(但し、距離b>距離a)だけ床材本体側に入り込んだ位置となっている。距離bは、床材の大きさにもよるが、3mm〜6mm程度の範囲であることが好ましい。前記傾斜面23aの先端23bから上方は、床材本体側に斜め上方に傾斜する傾斜面23cとされ、該傾斜面23cが床材10の表面にまで達している。
【0020】
床材1のメスザネ部は、基材合板20における前記オスザネ突条22が嵌入できる形状であるメスザネ凹溝26と、メスザネ凹溝26の先端上方に位置するほぼ垂直な上方端面27と、メスザネ凹溝26の下方に位置するほぼ垂直な下方端面28とで構成されており、下方端面28は上方端面27よりも床材本体側に偏位した位置となっている。
【0021】
メスザネ凹溝26の先端である上方端面27は、その上方側に、前記オスザネ突条22の上方端面23に形成した傾斜面23aに対向する位置に、傾斜面23aと同方向にほぼ同じ角度で傾斜した傾斜面27aを有しており、傾斜面27aの上方端は床材10の表面にまで達している。
【0022】
この形態の床材10、10をオスザネ部とメスザネ部とを本ザネ接合した状態で隣接させると、一方の床材の前記メンザネ側の傾斜面27aの上にオスザネ側の傾斜面23aが乗った形となる。そのために、床材10,10に僅かな収縮が生じても、その収縮による前記傾斜面23aの先端23bの移動は、メンザネ側の傾斜面27a上での移動に制限されるので、隣接する床材10,10の間に、オスザネ突条22の上面が目視できるような隙間が生じることはない。
【0023】
上記床材を床下地40の上に敷き詰めて床構造とするに当たり、最初に、床材10のメスザネ側を裁断して垂直面としたボーダー床材10Aを作り、裏面に接着剤を塗布して、前記切断面を壁面に当接した状態とする。そして、オスザネ突条22の上面と上方端面23との交差部近傍から、釘41を斜め下方に打ち込み、床材10Aを床下地に仮固定する。床下地面に接着剤を塗布しておいてもよい。本発明による床材においては、前記したように、オスザネ側の下方端面24は上方端面23よりも、オスザネ突条22の先端側に偏位しており、前記釘打ち領域の下方近傍はすべて基材合板20が占めている。そのために、釘打ちによる仮固定作業は容易である。
【0024】
次に、固定したボーダー床材10Aを基準材とし、そのオスザネ側に隣接する床材10を取り付ける。オスザネ部やメスザネ部に接着剤を塗布しておくこともできる。床材10を床下地40の上に置き、滑らせながらそのメスザネ凹溝26とボーダー床材10Aのオスザネ突条22とを一部が嵌合した姿勢とする。本ザネ接合の場合、メスザネ凹溝26とオスザネ突条22との間の摩擦力は大きく、手で押した程度では完全な接合状態が得られない。そのために当て木50を用いて叩き込み作業が行われる。
【0025】
叩き込みに際して、図1に示すように、当て木50を床材10のオスザネ突条22の先端面22aに当接した状態とし、金槌等で当て木50を叩き込む。それにより、床材10はボーダー床材10Aに向けて移動していき、完全な本ザネ接合が得られる。前記したように、本発明による床材10(あるいはボーダー床材10A)において、オスザネ突条22の上方端面23における傾斜面23aの先端23bは、オスザネ突条22の先端22aよりも距離bだけ床材本体側に入り込んだ位置となっており、当て木50による叩き込み時に、前記傾斜面23aの先端23bが当て木50に衝接することはなく、傾斜面領域が破損することはない。結果として、床材表面の意匠性が損なわれることはない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による床材の一形態を短手方向の断面で示すとともに、その床材を床下地の上に敷き込むときの作業状態を示している。
【図2】本ザネ接合するオスザネ部とメスザネ部を両辺に備えた床材の接合状態を説明するための図。
【図3】オスザネ突条の上方端面およびメスザネ凹溝の上方端面に同方向に傾斜した傾斜面をそれぞれ形成するようにした床材の接合状態を説明するための図。
【符号の説明】
【0027】
10…床材、20…基材合板、22…オスザネ突条、22a…オスザネ突条の先端、23…オスザネ突条の上方端面、23a…上方端面側の傾斜面、23b…傾斜面の先端、24…オスザネ突条の下方端面、b…オスザネ突条の先端と傾斜面の先端との距離、26…メスザネ凹溝、27…メスザネ凹溝の上方端面、28…メスザネ凹溝の下方端面、27a…上方端面の傾斜面、40…床下地、41…釘、50…当て木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本ザネ接合するオスザネ部とメスザネ部を両辺に備え、オスザネ突条の上方端面およびメスザネ凹溝の上方端面に同方向に傾斜した傾斜面をそれぞれ形成している床材であって、オスザネ突条の上方端面における前記傾斜面の先端はオスザネ突条の先端よりも床材本体側に位置していることを特徴とする床材。
【請求項2】
オスザネ部のオスザネ突条の上方端面はオスザネ突条の下方端面よりも床材本体側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の床材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の床材の多数枚が本ザネ接合して床下地の上に敷き詰められている床構造。
【請求項4】
床暖房用の熱源を備えた床下地の上に床材が敷き詰められている請求項3に記載の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−240349(P2008−240349A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82053(P2007−82053)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】