説明

床材用水系接着剤組成物

【課題】 塩化ビニルなどの素材からなる床シート、床タイルなどの床材に対して良好な接着性を有し、かつ施工時あるいは居住後のシックハウス症候群等の環境問題に対しても良好な床材用水系接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリル酸アルキルエステル類を主成分とするエチレン性不飽和単量体、架橋性基含有不飽和単量体、ウレタン樹脂、粘着付与剤からなる乳化液を用いて、ミニエマルション重合法によって得たウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)と、アクリル樹脂系エマルション(B)とからなる床材用水系接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塩化ビニルなどの素材からなる床シート、床タイル等の床材に対して良好な接着性を有する床材用水系接着剤組成物に係り、詳しくは接着剤の床に対する塗布性、床材を貼る際に必要な初期粘着性、経時に床材用水系接着剤に求められる耐水接着性にすぐれ、かつ施工時あるいは居住後のシックハウス症候群等の環境問題についても心配のない床材用水系接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
元来、床材用接着剤は溶剤型と水性型に大別され、溶剤型としては、酢酸ビニル樹脂系、ビニル共重合樹脂系、ゴム系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系等が、また水性型としては、酢酸ビニル樹脂系エマルション、ビニル共重合樹脂系エマルション、アクリル樹脂系エマルションやゴム系ラテックス等が知られている。
【0003】
そして、耐水性が必要とされる住宅1階床部や水周り部等の場所には溶剤型のエポキシ樹脂系あるいはウレタン樹脂系が使用され、水性型は耐水性に劣るため使用することができなかった。
【0004】
床材用耐水性接着剤として使用されているエポキシ樹脂系あるいはウレタン樹脂系の溶剤型接着剤は、メタノール、酢酸エチル等の揮発性有機溶剤を含有しており、施工時あるいは居住後のシックハウス症候群等の環境衛生上問題があった。これに対して水性型接着剤は、揮発性有機溶剤を殆ど含有せず、環境衛生上は良好であるが、耐水性がないため耐水性用接着剤としては使用できないという問題があった。
【0005】
上記した問題の解決を目的として、揮発性有機溶剤に代えて反応性希釈剤を使用した一液湿気硬化型ウレタン樹脂を主成分とするウレタン系接着剤が提案され(特許文献1)、また、本願と同じようなアクリル樹脂系エマルション型粘着剤組成物が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−301102号公報
【特許文献2】特開2003−96420号公報
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたウレタン系接着剤では、粘度が高いため床面に対して均一に塗布し難く、初期粘着力も弱く、床材を貼ったのち接着剤が硬化するまでの間に床材に部分的な浮き現象が発生したり、シート状床材が再びカール現象を起こして端部が浮くなど、作業性に難点を有すると同時に、接着剤として貯蔵安定性に欠けるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載されたアクリル樹脂系エマルション型粘着剤組成物のようなアクリル樹脂成分と粘着付与剤の混合ミセルからなる組成物では、粘着付与剤を含有した混合ミセルからなる組成物であるため、接着剤自体の凝集力が低く、特に床タイルに対する接着性が不十分であり、さらには貼付後の接着剤の硬度が低く、床に対する固着接着性が不十分であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑みてこの発明は、上述した従来の床材用接着剤が有する問題点を解決すべく検討の結果得られたもので、塩化ビニルなどの素材からなる床シート、床タイル等の現場接着施工において、接着剤の床に対する塗布性、床材を貼る際に必要な初期接着性、経時に床材用接着剤に求められる耐水接着性および水系接着剤としての貯蔵安定性にすぐれ、かつ揮発性有機溶剤を含まないためシックハウス症候群等の環境問題にも懸念のない床材用水系接着剤を提供することを目的とするものであって、特定のウレタン変性アクリル樹脂系エマルションに、特定の範囲のガラス転移点(Tg)を有するアクリル樹脂系エマルションを特定した比率で配合することにより、床材に対する接着性の向上を実現させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類を主成分とするエチレン性不飽和単量体、架橋性基含有不飽和単量体、ウレタン樹脂および粘着付与剤からなる乳化液を用いて、ミニエマルション重合法によって得たウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)と、アクリル樹脂系エマルション(B)とからなる床材用水系接着剤組成物を特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)と、アクリル樹脂系エマルション(B)の使用比率が、各々の樹脂固形分重量比率で、(A):(B)=85:15〜65:35であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)が、固形分重量比率で(メタ)アクリル酸アルキルエステル類を主成分とするエチレン性不飽和単量体として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類50〜99重量%と、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類と重合可能なエチレン性不飽和単量体0〜30重量%、架橋性基含有不飽和単量体1〜20重量%とからなり、かつこのアクリル樹脂成分100重量部に対してウレタン樹脂5〜30重量部および粘着付与剤5〜200重量部を含有することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、アクリル樹脂系エマルション(B)のガラス転移点(Tg)が0℃〜50℃であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明の上記請求項に記載した床材用水系接着剤組成は、ウレタン樹脂を含むアクリル樹脂と粘着付与剤の混合ミセルからなる組成物に、アクリル系樹脂からなるエマルションを混合しているため、塩化ビニルなどからなる床シートや床タイルを耐水性が必要とされる個所に施工することが可能であり、かつ揮発性の有機溶剤を含まないため、シックハウス症候群等の懸念もなく、臭気も殆どないので作業上も好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明について詳細に説明する。この発明の床材用水系接着剤組成物は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂および粘着付与剤との混合ミセルからなるウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)と、アクリル樹脂により形成されたミセルからなるアクリル樹脂系エマルション(B)を含有する。
【0015】
まず、ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)を構成するアクリル樹脂成分およびアクリル樹脂系エマルション(B)は、エチレン性不飽和単量体が重合した樹脂を含むエマルションであり、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等に代表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等のエチレン性不飽和単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、等のエチレン性不飽和ニトリル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類およびこれらとの共重合可能な上記の官能基成分等に代表される(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なエチレン性不飽和単量体が使用でき、これらの単独または組み合わせて使用できる。
【0016】
ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)で使用される架橋性基含有不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等に代表されるカルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等に代表される水酸基含有単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等に代表されるエポキシ基含有単量体、γ−メタクリオキシプロピルトリメトキシシラン等に代表されるアルコキシシリル基含有単量体、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等に代表されるアミド基やメチロール基、ケト基を含有する単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等に代表される多官能性単量体等が挙げられ、これらを単独または組み合わせて使用できる。
【0017】
次に、ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)で使用されるウレタン樹脂としては、一般にウレタン樹脂、ウレタン尿素樹脂と呼ばれるものであり、有機イソシアネートと末端に活性水素を有する化合物を共重合することにより得られ、上記の
(メタ)アクリル酸エステル類に溶解または分散するものであればよい。
【0018】
有機イソシアネートとしては、2,4−および2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5′−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネートがあり、これらを単独または組み合わせて使用すればよい。
【0019】
末端に活性水素を有する化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールがあり、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、グリセリンプロピレンオキシド付加物、末端にエチレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール、ビニルモノマーグラフト化ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0020】
またポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール類と、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、トリメリット酸等のカルボン酸類とを末端がヒドロキシル基となるように反応して得られるものが挙げられ、これらを単独または組み合わせて使用することができる。
【0021】
さらには、ポリε−カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等を単独または組み合わせて使用しても良い。
【0022】
上記した単量体と有機ジイソシアネートとの反応においては、必要に応じて硬度調整剤および/または鎖延長剤としてヒドラジン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、水、無水ピペラジン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等を単独で、または組み合わせて使用すればよい。
【0023】
また、上記で得られるウレタン樹脂は、必要に応じてフッ素、アミノ酸、シリコーン等のモノマーと共重合した変性ポリウレタン樹脂であってもよい。ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)で使用されるウレタン樹脂は、上記した単量体成分を用いて、イソシアネート基が残らないように配合し反応させることによって得ることができる。
【0024】
ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)で使用される粘着付与剤としては、上記の(メタ)アクリル酸エステル類に溶解または分散するものであればよく、例えば重合ロジンエステル、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂、石油樹脂等が挙げられる。
【0025】
この発明のウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)およびアクリル樹脂系エマルション(B)を製造する際に使用される乳化剤としては、公知慣用の如何なる乳化剤を用いてもよいが、−SOX基、−SONH基、−OSOX基、−OSONH基(Xはアルカリ金属であり、好ましくはNaまたはK)、あるいはエチレンオキサイド鎖の中から選ばれる少なくとも1種の親水基と、重合可能なエチレン性不飽和基を有する乳化剤等に代表される反応性乳化剤が望ましい。
【0026】
この発明のウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)およびアクリル樹脂系エマルション(B)を製造する際に使用される重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチル)バレロニトリル等が挙げられる。
【0027】
この発明のウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)は、アクリル樹脂とウレタン樹脂と粘着剤に混合ミセルを形成させる目的でミニエマルション重合法によって製造される。このミニエマルション重合法については、2001年1月10日、日本化学情報株式会社発行の「水溶性・水分散型高分子材料の最新技術動向と工業応用」の358〜359頁に記載されている。
【0028】
この発明のウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)は、(メタ)アクリル酸エステル、共重合可能な単量体、架橋性基含有単量体、ウレタン樹脂、粘着付与剤等と水との混合物に乳化剤を加え、高圧ホモジナイザー処理、超音波処理等の乳化装置による処理により、油溶成分の平均粒子径を1.0μm以下とした後、触媒を添加して重合反応を行うことにより得られる。重合反応は40〜100℃で1〜8時間が適当である。また、各原料の仕込みは一括投入でもよいが,分割して投入することもできる。
【0029】
ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)を製造する際の各原料の配合量については、(メタ)アクリル酸エステル類50〜99重量%(好ましくは60〜99重量%)、架橋性基含有単量体1〜20重量%(好ましくは1〜10重量%)、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類と重合可能なエチレン性不飽和単量体0〜30重量%(好ましくは0〜20重量%)、かつこのアクリル樹脂成分100重量部に対し、ウレタン樹脂5〜30重量部(好ましくは5〜20重量部)、粘着付与剤5〜200重量部(好ましくは5〜100重量部)とすることが必要である。
【0030】
上記において、(メタ)アクリル酸エステル類を50〜99重量%とするのは、50重量%未満では充分な初期粘着力が得られず、また99重量%を超えると接着性が低下して好ましくないためである。架橋性基含有単量体の量を1〜20重量%とするのは、1重量%未満では耐水性が低下し、20重量%を超えると重合が不安定になる恐れがあるためである。その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類と重合可能なエチレン性不飽和単量体は、30重量%を超えると接着性、初期粘着力が得られない。
【0031】
アクリル樹脂成分100重量部に対してウレタン樹脂を5〜30重量部とするのは、5重量部未満では接着性が低下し、30重量部を超えると初期粘着力が低下するためである。このアクリル樹脂成分100重量部に対して、粘着付与剤は5重量部未満では接着性が低下し、200重量部を超えると重合が不安定になることがあり、また接着性が低下する。
【0032】
この発明で用いる乳化剤の使用量は、樹脂固形分の合計量100重量部に対して、0.5〜5重量部が適当である。また、重合開始剤は、(メタ)アクリル酸エステル類、架橋性基含有単量体、およびその他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類と重合可能なエチレン性不飽和単量体の合計100重量部に対して0.05〜5重量部が適当である。
【0033】
一方、この発明で用いるアクリル樹脂エマルション(B)は、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、公知慣用の重合条件で製造することができる。また、上記の架橋性基含有単量体、共重合可能な単量体を使用することができる。このアクリル樹脂エマルション(B)としては、そのガラス転移点(Tg)が0〜50℃(好ましくは10〜40℃)の範囲にあるものが好ましい。これは、Tgが0℃より低いと、得られた床材用水系接着剤組成物の接着性向上の効果が見られず、また50℃を超えると、張付け可能時間が短くなって作業性に難点があるためである。
【0034】
この発明の床材用水系接着剤組成物は、ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)とアクリル樹脂エマルション(B)とをディスパー等の通常の混合攪拌機を使用して均一に混合することによって得ることができる。
【0035】
床材用水系接着剤組成物に含有されるウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)とアクリル樹脂エマルション(B)との使用比率は、両者の固形分重量比率で
(A):(B)=85:15〜65:35(望ましくは85:15〜70:30)が好ましい。これは、ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)が85重量%より多くなると接着性が低下し、65重量%より少なくなると初期粘着力が弱くなり、また張付け可能時間が短くなって好ましくないためである。
【0036】
この発明では床材用水系接着剤組成物を得るに当たって、上記した素材のほかに、必要に応じて塗布性改良剤、増粘剤、防腐・防黴剤、防錆剤、凍結融解安定剤、可塑剤、高沸点溶剤、顔料、充填材等を添加することができる。
【0037】
さらに、カルボジイミド系化合物、オキサゾリジン系化合物、アジリジン系化合物、ヒドラジン系化合物、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、エポキシ系化合物、金属塩や金属錯塩等の架橋剤を配合することもできる。
【0038】
以下、この発明を製造例および実施例にて詳細に説明するが、この発明はこれらの製造例および実施例によって何ら限定されるものではない。なお、部数はすべて重量部である。
(製造例1)ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A1)の製造
【0039】
アクリル酸2−エチルヘキシル42部、アクリル酸n−ブチル21部、メタクリル酸メチル7部、アクリル酸3部、ポリエステル系ウレタン樹脂(セイコー化成社製、ラックコート707)12部およびロジンエステル系粘着付与剤(荒川化学社製、スーパーエステルA−125)15部よりなる混合液を、乳化剤(花王社製、ラテムルS−180A)1.5部を水100部に溶解して得た水溶液に加え、ホモディスパーを用いて充分に攪拌混合させて予備乳化を行った。次いで、この乳化液を高圧ホモジナイザーを用いて圧力30MPaで処理し、油溶成分の平均粒子径が0.15μmの乳化液(1)を得た。
【0040】
次に、還流冷却装置、攪拌装置と窒素ガスブロー管を備えた重合容器に上記で得た乳化液(1)を仕込み、攪拌開始後温度を80℃に昇温したのち、過硫酸ナトリウム0.15部を添加した。その後80℃で5時間保持した後冷却した。次いで、5%アンモニア水を加え、pH7.8、粒子径0.15μmのエマルションを得た。さらに、このエマルション100部に架橋剤としてカルボジイミド系化合物(日清紡績社製、V−04)を2部添加混合し、固形分49%、粘度(B型粘度計を使用、以下同じ)1700mPa・s/30℃のウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A1)を得た。
(製造例2)ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A2)の製造
【0041】
アクリル酸2−エチルヘキシル39部、アクリル酸n−ブチル19部、メタクリル酸メチル3部、アクリル酸3部、ダイアセトンアクリルアミド9部、ポリエステル系ウレタン樹脂(ラックコート707)12部およびロジンエステル系粘着付与剤(スーパーエステルA−125)15部よりなる混合液を、乳化剤(ラテムルS−180A)1.5部を水100部に溶解して得た水溶液に加え、ホモディスパーを用いて充分に攪拌混合させて予備乳化を行った。次いで、この乳化液を高圧ホモジナイザーを用いて圧力30MPaで処理し、油溶成分の平均粒子径が0.16μmの乳化液(2)を得た。
【0042】
次に、還流冷却装置、攪拌装置と窒素ガスブロー管を備えた重合容器に上記で得た乳化液(2)を仕込み、攪拌開始後温度を80℃に昇温したのち、過硫酸ナトリウム0.15部を添加した。その後80℃で5時間保持した後冷却した。次いで、5%アンモニア水を加え、pH7.9、粒子径0.17μmのエマルションを得た。さらに、このエマルション100部に架橋剤としてヒドラジン系化合物(日本ヒドラジン工業社製、ADH)を1部添加混合し、固形分50%、粘度1600mPa・s/30℃のウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A2)を得た。
(製造例3)ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A3)の製造
【0043】
アクリル酸2−エチルヘキシル39部、アクリル酸n−ブチル20部、メタクリル酸メチル6部、アクリル酸3部、ポリエステル系ウレタン樹脂(ラックコート707)18部およびロジンエステル系粘着付与剤(スーパーエステルA−125)14部よりなる混合液を、乳化剤(ラテムルS−180A)1.5部を水100部に溶解して得た水溶液に加え、ホモディスパーを用いて充分に攪拌混合させて予備乳化を行った。次いで、この乳化液を高圧ホモジナイザーを用いて圧力30MPaで処理し、油溶成分の平均粒子径が0.17μmの乳化液(3)を得た。
【0044】
次に、還流冷却装置、攪拌装置と窒素ガスブロー管を備えた重合容器に上記で得た乳化液(3)を仕込み、攪拌開始後温度を80℃に昇温したのち、過硫酸ナトリウム0.15部を添加した。その後80℃で5時間保持した後冷却した。次いで、5%アンモニア水を加え、pH8.0、粒子径0.16μmのエマルションを得た。さらに、このエマルション100部に架橋剤としてカルボジイミド系化合物(V−04))を2部添加混合し、固形分49%、粘度1800mPa・s/30℃のウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A3)を得た。
(製造例4)ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A4)の製造
【0045】
アクリル酸2−エチルヘキシル20部、アクリル酸n−ブチル10部、メタクリル酸メチル3部、アクリル酸2部、ポリエステル系ウレタン樹脂(ラックコート707)5部およびロジンエステル系粘着付与剤(スーパーエステルA−125)60部よりなる混合液を、乳化剤(ラテムルS−180A)1.5部を水100部に溶解して得た水溶液に加え、ホモディスパーを用いて充分に攪拌混合させて予備乳化を行った。次いで、この乳化液を高圧ホモジナイザーを用いて圧力30MPaで処理し、油溶成分の平均粒子径が0.14μmの乳化液(4)を得た。
【0046】
次に、還流冷却装置、攪拌装置と窒素ガスブロー管を備えた重合容器に上記で得た乳化液(4)を仕込み、攪拌開始後温度を80℃に昇温したのち、過硫酸ナトリウム0.15部を添加した。その後80℃で5時間保持した後冷却した。次いで、5%アンモニア水を加え、pH7.8、粒子径0.15μmのエマルションを得た。さらに、このエマルション100部に架橋剤としてカルボジイミド系化合物(V−04)を2部添加混合し、固形分49%、粘度1700mPa・s/30℃のウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A4)を得た。
(製造例5)ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A5)の製造
【0047】
アクリル酸2−エチルヘキシル32部、アクリル酸n−ブチル16部、メタクリル酸メチル5部、アクリル酸3部、スチレン4部、ポリエステル系ウレタン樹脂(ラックコート707)10部およびテルペンフェノール系粘着付与剤(ヤスハラケミカル社製、YSポリスターT−115)30部よりなる混合液を、乳化剤(ラテムルS−180A)1.5部を水100部に溶解して得た水溶液に加え、ホモディスパーを用いて充分に攪拌混合させて予備乳化を行った。次いで、この乳化液を高圧ホモジナイザーを用いて圧力30MPaで処理し、油溶成分の平均粒子径が0.16μmの乳化液(5)を得た。
【0048】
次に、還流冷却装置、攪拌装置と窒素ガスブロー管を備えた重合容器に上記で得た乳化液(5)を仕込み、攪拌を開始後温度を80℃に昇温したのち、過硫酸ナトリウム0.15部を添加した。その後80℃で5時間保持した後冷却した。次いで、5%アンモニア水を加え、pH7.9、粒子径0.16μmのエマルションを得た。さらに、このエマルション100部に架橋剤としてカルボジイミド系化合物(V−04)を2部添加混合し、固形分49%、粘度1600mPa・s/30℃のウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A5)を得た。
(製造例6)アクリル樹脂系エマルション型粘着剤組成物(A6)の製造
【0049】
アクリル酸2−エチルヘキシル49部、アクリル酸n−ブチル24部、メタクリル酸メチル7部、アクリル酸3部およびロジンエステル系粘着付与剤(スーパーエステルA−125)17部よりなる混合液を、乳化剤(ラテムルS−180A)1.5部を水100部に溶解して得た水溶液に加え、ホモディスパーを用いて充分に攪拌混合させて予備乳化を行った。次いで、この乳化液を高圧ホモジナイザーを用いて圧力30MPaで処理し、油溶成分の平均粒子径が0.17μmの乳化液(6)を得た。
【0050】
次に、還流冷却装置、攪拌装置と窒素ガスブロー管を備えた重合容器に上記で得た乳化液(6)を仕込み、攪拌開始後温度を80℃に昇温したのち、過硫酸ナトリウム0.15部を添加した。その後80℃で5時間保持した後冷却した。次いで、5%アンモニア水を加え、pH7.8、粒子径0.15μmのエマルションを得た。さらに、このエマルション100部に架橋剤としてカルボジイミド系化合物(V−04)を2部添加混合し、固形分50%、粘度1500mPa・s/30℃のアクリル樹脂系エマルション型粘着剤組成物(A6)を得た。
(製造例7)アクリル樹脂系エマルション(B1)の製造
【0051】
還流冷却装置、攪拌装置と窒素ガスブロー管を備えた重合容器に水100部、乳化剤(ラテムルS−180A)1部、メタクリル酸メチル38部、スチレン25部、アクリル酸2−エチルヘキシル35部、アクリル酸2部を仕込み、攪拌開始後80℃に昇温し、過硫酸ナトリウム0.1部を添加した。その後80℃で6時間保持してから冷却した。次いで、5%アンモニア水を加え、pH8.0、固形分50%、粘度150mPa・s/30℃、ガラス転移温度(Tg)25℃を有するアクリル樹脂系エマルション(B1)を得た。
(製造例8)アクリル樹脂系エマルション(B2)の製造
【0052】
還流冷却装置、攪拌装置と窒素ガスブロー管を備えた重合容器に水100部、乳化剤(ラテムルS−180A)1部、メタクリル酸メチル50部、スチレン25部、アクリル酸2−エチルヘキシル23部、アクリル酸2部を仕込み、攪拌開始後80℃に昇温し、過硫酸ナトリウム0.1部を添加した。その後80℃で6時間保持してから冷却した。次いで、5%アンモニア水を加え、pH7.8、固形分50%、粘度160mPa・s/30℃、ガラス転移温度(Tg)44℃を有するアクリル樹脂系エマルション(B2)を得た。
(製造例9)アクリル樹脂系エマルション(B3)の製造
【0053】
還流冷却装置、攪拌装置と窒素ガスブロー管を備えた重合容器に水100部、乳化剤(ラテムルS−180A)1部、メタクリル酸メチル25部、スチレン25部、アクリル酸2−エチルヘキシル48部、アクリル酸2部を仕込み、攪拌開始後80℃に昇温し、過硫酸ナトリウム0.1部を添加した。その後80℃で6時間保持してから冷却した。次いで、5%アンモニア水を加え、pH7.9、固形分50%、粘度200mPa・s/30℃、ガラス転移温度(Tg)−4℃であるアクリル樹脂系エマルション(B3)を得た。
(製造例10)アクリル樹脂系エマルション(B4)の製造
【0054】
還流冷却装置、攪拌装置と窒素ガスブロー管を備えた重合容器に水100部、乳化剤(ラテムルS−180A)1部、メタクリル酸メチル55部、スチレン25部、アクリル酸2−エチルヘキシル18部、アクリル酸2部を仕込み、攪拌開始後80℃に昇温し、過硫酸ナトリウム0.1部を添加した。その後80℃で6時間保持してから冷却した。次いで、5%アンモニア水を加え、pH8.0、固形分50%、粘度150mPa・s/30℃、ガラス転移温度(Tg)66℃であるアクリル樹脂系エマルション(B4)を得た。
【実施例】
【0055】
上記の製造例1〜10で得たウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A1)〜(A5)、アクリル樹脂系エマルション型粘着剤組成物(A6)、およびアクリル樹脂系エマルションの(B1)〜(B4)をそれぞれ用いて表1の実施例No.1〜6に示すように配合し、それらに増粘剤として変性ポリアクリル系(サンノブコ社製、SNシックナー364)、充填剤として炭酸カルシウムを加え、粘度25000mPa・s/25℃に調整した床材用水系接着剤組成物を得た。また、比較例としても表1に示すようにNo.1〜4の配合の床材用水系接着剤組成物を調整した。なお、配合比は樹脂固形分に対する重量部である。
【0056】
得られたそれぞれの接着剤組成物について、塗布性、初期粘着力、引張接着強さ、貯蔵安定性などのテストを行った。その結果は表1に示した。なお、テストは貯蔵安定性を除き全て標準状態(23±2℃、湿度50±10%RH)の雰囲気で行った。テスト項目とテスト方法は以下の通りである。
【0057】
塗布性:JIS A5430に規定するスレート板(厚さ8mmのフレキシブル板、以下フレキシブル板という)上に、JIS A5536に規定する高分子系張り床材試験用くし目ごて(以下、くし目ごてという)を使用して試料を塗布したときの塗布状態を次のように判定した。
○・・・塗りやすく、くし目の山が崩れない
×・・・塗り難い、またはくし目の山が崩れる
【0058】
初期粘着力:フレキシブル板上に、くし目ごてを使用して試料を約300g/mで塗布し、塗布後20分後に、JIS A5705に規定する厚さ2mmのビニル床シート(以下、ビニル床シートという)(寸法25mm×150mm)を張付け、ハンドローラーで約50Nの荷重で2回往復して圧着し、その後垂直方向に持ち上げて剥がし、その時の最高強度を測定し、以下のように判定した。
○・・・2N/25mm以上
△・・・1N/25mm以上、2N/25mm未満
×・・・1N/25mm未満
【0059】
張付可能時間:フレキシブル板上にくし目ごてを使用して、試料を約300g/mで塗布し、JIS A5705に規定する厚さ2mmのビニル床タイル(以下、ビニル床タイルという)を25mm×25mmの広さのところに張付け、このタイルが接着可能な時間を張付可能時間として、以下の通り判定した。
○・・・60分以上
△・・・40分以上、60分未満
×・・・40分未満
【0060】
引張接着強さ(常態):JIS A5536の引張接着強さ(常態)試験に準拠した。
即ち、フレキシブル板(70mm×70mm)上にくし目ごてを使用して、試料を約300g/mで塗布し、塗布後10分後にビニル床タイル(寸法40mm×40mm)を張付け、質量1Kgのおもりを5秒間載せて圧着し、168時間養生し、その後引張接着強さを測定した。その結果を次のように判定した。
○・・・0.8N/mm以上
△・・・0.5N/mm以上、0.8N/mm未満
×・・・0.5N/mm未満
【0061】
引張接着強さ(耐水):JIS A5536の引張接着強さ(水中浸漬)試験に準拠した。即ち、上記の引張接着強さ(常態)と同様にして作製した試験体を168時間養生後、水中に168時間浸漬し、その後引張接着強さを測定した。その結果を以下のように判定した。
○・・・0.5N/mm以上
△・・・0.3N/mm以上、0.5N/mm未満
×・・・0.3N/mm未満
【0062】
貯蔵安定性:50℃の雰囲気中に2週間置き、以下に示す式による粘度の変化率を測定し、以下のように判定した。
【0063】
【数1】

○・・・30%以下
△・・・30%より大きく、50%以下
×・・・50%より大きい
【0064】
【表1】

【0065】
上記表1の結果から、この発明の実施例のNo.1〜6の配合よりなるものは、塗布性、初期粘着力、張付け可能時間、引張接着強さ(常態)、引張接着強さ(耐水)、貯蔵安定性の何れにも優れ、総合的な性能が改善されていることが認められた。これに対し、比較例No.1〜4の配合においては、その性能が不十分であり、総合的に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル類を主成分とするエチレン性不飽和単量体、架橋性基含有不飽和単量体、ウレタン樹脂および粘着付与剤からなる乳化液を用いて、ミニエマルション重合法によって得たウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)と、アクリル樹脂系エマルション(B)とからなることを特徴とする床材用水系接着剤組成物。
【請求項2】
ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)とアクリル樹脂系エマルション(B)の使用比率が、各々の樹脂固形分重量比率で(A):(B)=85:15〜65:35であることを特徴とする請求項1に記載の床材用水系接着剤組成物。
【請求項3】
ウレタン変性アクリル樹脂系エマルション(A)が、固形分重量比率で(メタ)アクリル酸アルキルエステル類を主成分とするエチレン性不飽和単量体として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類50〜99重量%と、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類と重合可能なエチレン性不飽和単量体0〜30重量%と、架橋性基含有不飽和単量体1〜20重量%とからなり、かつこのアクリル樹脂成分100重量部に対してウレタン樹脂5〜30重量部、および粘着付与剤5〜200重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の床材用水系接着剤組成物。
【請求項4】
アクリル樹脂系エマルション(B)は、そのガラス転移点(Tg)が0℃〜50℃であることを特徴とする請求項1に記載の床材用水系接着剤組成物。