説明

床材

【課題】外観、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性(耐薬品性)等に優れた床材を提供する。
【解決手段】基材102上に、下記のシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)からなる表層104を積層してなることを特徴とする床材10とする。前記シラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)は、少なくともオレフィン系樹脂、ゴム成分、シラン化合物、ラジカル発生剤、シラノール縮合触媒および接着性樹脂を含有し、前記オレフィン系樹脂および前記ゴム成分の合計100質量部中、前記オレフィン系樹脂が20〜90質量部、かつ前記ゴム成分が10〜80質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床材に関するものであり、詳しくは、外観、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性(耐薬品性)等に優れた床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の床材の樹脂材料としては、主にポリ塩化ビニル系樹脂が使用されてきた。しかし、ポリ塩化ビニル系樹脂はその構成成分として塩素を含むため、不適切な条件下で燃焼するとダイオキシン等の有害物質が発生する恐れがある。また、通常可塑剤として使用されるジオクチルフタレートは環境ホルモンとして作用する恐れもあることから、近年、床材としてはポリ塩化ビニル系樹脂以外の、例えばオレフィン系樹脂を用いた製品が当業界で求められている。例えば、オレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の第1樹脂成分と酸変性樹脂からなる第2樹脂成分とを含有した樹脂と、層状珪酸塩と、金属水酸化物とを含有してなる樹脂組成物からなる層を備えた床材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、床材には、良好な外観、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性(耐薬品性)等が一般的に要求される。そして、床材は帯電防止性であることも求められる。例えば、半導体デバイス等の精密部品の製造工場では、床面に静電気が帯電すると、製品にダメージを及ぼす恐れがある。したがって、床材は、歩行による摩擦等でその表面が帯電することを最大限に防止しなければならない。例えば、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとα−オレフィンモノマーとの共重合体であって、カルボキシル基が部分的に1価及び/又は2価の金属との塩である共重合体を含む表面抵抗が10Ω以下の表面材用樹脂フィルム層と、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとα−オレフィンモノマーとの共重合体であって、カルボキシル基が実質的に未中和である共重合体を含む裏面材用樹脂シート層とを積層した床材が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−270193号公報
【特許文献2】特開2005−344247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の床材は、その外観、耐熱性、耐摩耗性および耐汚染性が市場の求めるレベルにまで到達していないというのが現状である。また、外観、耐熱性、耐摩耗性および耐汚染性と帯電防止性とを共に高い水準で満足する床材は、従来技術には存在しなかった。
そこで本発明の目的は、樹脂材料としてポリ塩化ビニル系樹脂を使用せず、外観、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性(耐薬品性)、帯電防止性等に優れた床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、基材上に特定のシラン架橋オレフィン系樹脂組成物からなる表層を積層することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の課題は下記〔1〕〜〔5〕により達成される。
〔1〕基材上に、下記のシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)からなる表層を積層してなることを特徴とする床材。
シラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1):少なくともオレフィン系樹脂、ゴム成分、シラン化合物、ラジカル発生剤、シラノール縮合触媒および接着性樹脂を含有し、前記オレフィン系樹脂および前記ゴム成分の合計100質量部中、前記オレフィン系樹脂が20〜90質量部、かつ前記ゴム成分が10〜80質量部である。
〔2〕前記オレフィン系樹脂および前記ゴム成分の合計100質量部に対し、前記シラン化合物を0.1〜5質量部、ラジカル発生剤を0.05〜1質量部、およびシラノール縮合触媒を0.05〜1質量部含有することを特徴とする前記〔1〕に記載の床材。
〔3〕前記シラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)が、さらに金属繊維を含有することを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の床材。
〔4〕前記基材と前記表層との間に、少なくともオレフィン系樹脂、ゴム成分および導電性粉末を含有するオレフィン系樹脂組成物(2)からなる中間層を設けることを特徴とする前記〔3〕に記載の床材。
〔5〕前記基材が、繊維材料からなる基布から構成されることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の床材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の床材は、基材上に特定のシラン架橋オレフィン系樹脂組成物からなる表層を積層したので、外観、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性(耐薬品性)等に優れる。また、基材上に特定のオレフィン系樹脂組成物からなる中間層および特定のシラン架橋オレフィン系樹脂組成物からなる表層をこの順で積層した床材は、外観、耐熱性、耐摩耗性および耐汚染性と帯電防止性とを共に高い水準で満足することができる。さらに本発明の床材は、塩化ビニル系樹脂を使用していないので、人や環境に優しい製品である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の床材の第1実施形態の断面図である。
【図2】本発明の床材の第2実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の床材について詳細に説明する。
図1は、本発明の床材の第1実施形態の断面図である。図1に示したように、本発明の床材10は、基材102上に、シラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)からなる表層104を積層して構成される。
【0011】
基材102は、積層体の形態をなす床材における公知の基材であればよく、とくに制限されないが、施工時に公知の接着剤により容易に床下地との接着を可能にし、かつ床材の寸法安定性の向上や反りを防止するという観点から、基材102としては繊維材料からなる基布が好ましく、具体的には綿、麻、レーヨン、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維あるいはこれらの混合物等からなる基布が挙げられる。
基材102の厚さは、特に限定されず、所望の床材の厚みに応じて適宜選択すれば良いが、例えば0.05〜1.0mmが挙げられ、好ましくは0.05〜0.50mm、より好ましくは0.05〜0.25mmである。
【0012】
表層104を構成するシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)は、少なくともオレフィン系樹脂、ゴム成分、シラン化合物、ラジカル発生剤、シラノール縮合触媒および接着性樹脂を含有する。前記オレフィン系樹脂と前記ゴム成分とからなる重合体成分(以下、単に「主剤(1)」とも言う。)の合計100質量部中、オレフィン系樹脂は20〜90質量部含有され、ゴム成分は10〜80質量部含有される。
【0013】
オレフィン系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)等のポリ−α−オレフィン、上記各種α−オレフィン類同士の共重合体、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン−ジエンエラストマー等を挙げることができる。これらのオレフィン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
オレフィン系樹脂は、オレフィン系樹脂とゴム成分とからなる主剤(1)中、20〜90質量部含有され、30〜80質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。前記オレフィン系樹脂の含有量が、20質量部未満であると、耐熱性および耐汚染性(耐薬品性)が悪化するおそれがある。逆に90質量部を超えると、外観、耐熱性が悪化するおそれがある。
【0014】
ゴム成分としては、特に制限されないが、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム等を挙げることができる。これらのゴム成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ゴム成分は、主剤(1)中、10〜80質量部含有され、20〜70質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。前記オレフィン系樹脂の含有量が、10質量部未満であると、床材が硬くなり過ぎて柔軟性が低くなるおそれがある。逆に80質量部を超えると、床材の柔軟性が高くなり、柔らかくなりすぎて扱いにくくなるおそれがある。
【0015】
本発明において、オレフィン系樹脂組成物(1)は、オレフィン系樹脂とゴム成分とからなる重合体成分をシラン架橋により架橋して得られる。この架橋は公知の方法により行うことができ、例えば、シラン化合物、ラジカル発生剤およびシラノール縮合触媒を配合し、各成分を反応させることにより達成できる。使用されるシラン化合物、ラジカル発生剤およびシラノール縮合触媒も特に限定されるものではなく、それぞれ下記の化合物を適宜選択して用いることができる。
【0016】
シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシランなどのビニルアルコキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどのビニルカルボキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、シラン化合物の配合量は、一般に、前記主剤(1)100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましく、3〜5質量部がさらに好ましい。前記範囲であると良好に架橋反応が進行し、所望の耐熱性や耐磨耗性を得ることができる。
【0017】
ラジカル発生剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(第三ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレート等のアゾ化合物等が挙げられる。これらのラジカル発生剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、ラジカル発生剤の配合量は、一般に、前記主剤(1)100質量部に対し、0.05〜1質量部が好ましく、0.1〜1質量部がより好ましく、0.5〜1質量部がさらに好ましい。前記範囲であると良好に架橋反応が進行し、所望の耐熱性や耐磨耗性を得ることができる。
【0018】
シラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、ジブチル錫メチルカプチド、酢酸第一錫、ナフテン酸鉛などの他、無機酸および脂肪酸などの酸、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミンなどの有機塩基等が挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。シラノール縮合触媒の配合量は、一般に、前記主剤(1)100質量部に対し、0.05〜1質量部が好ましく、0.1〜1質量部がより好ましく、0.5〜1質量部がさらに好ましい。前記範囲であると良好に架橋反応が進行し、所望の耐熱性や耐磨耗性を得ることができる。
【0019】
本発明において、シラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)は、さらに接着性樹脂を含有する。接着性樹脂を含有することにより、オレフィン系樹脂とゴム成分との間の相溶性(親和性)を高め、その結果、床材の耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性(耐薬品性)を向上することができる。
【0020】
接着性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。接着性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
接着性樹脂の配合量は、床材の耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性(耐薬品性)の観点から、前記主剤(1)100質量部に対し、3〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましく、8〜15質量部がさらに好ましい。前記範囲であると相溶性が十分高まり、所望の耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性が得られる。
【0021】
本発明において、シラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)にさらに導電性材料として金属繊維を配合し、優れた帯電防止性を付与することができる。金属繊維としては、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、ニッケル繊維、銅繊維等が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
また、金属繊維サイズとしては、繊維径が、1〜100μmのものを用いることが好ましく、1〜80μmがより好ましく、1〜50μmがさらに好ましい。前記範囲であると、シラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)中での金属繊維の分散性に優れ、十分な導電性を得ることができる。
【0023】
金属繊維の配合量は、前記主剤(1)100質量部に対し、1〜5質量部が好ましく、2〜5質量部がより好ましく、3〜5質量部がさらに好ましい。前記範囲であると十分な導電性を確保することができる。
【0024】
また、本発明におけるシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)には、必要に応じて顔料等の着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、滑剤等を配合することができる。とくに床材として意匠性を求められる場合は、前記着色剤を配合し、所望の意匠性を付与するのが好ましい。なお、シラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)が金属繊維を含む形態では、表層104が着色されることはなく、着色剤を配合することにより所望の意匠性を付与できる。また必要に応じて配合される上記各成分の配合量は、本発明の効果を損ねない限り、当業界で通常添加されている量であればよい。
【0025】
本発明におけるシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)の作製方法は、上記各組成物成分を、ヘンシェルミキサー、オープンロールミキサー、バンバリー混合機等の公知の混合手段を用いて、加熱しながら均一に混合することにより容易に行うことができる。具体的には、まず、シラン化合物、ラジカル発生剤およびシラノール縮合触媒、必要に応じて酸化防止剤を予めブレンドしておく。これとは別にヘンシェルミキサーによりオレフィン系樹脂を混練し、約70℃に温度上昇したところで上記ブレンドしておいたブレンド物を添加し、更に混合し、オレフィン系樹脂内に各種成分が吸収されドライブレンドとなった時点で取り出す。尚、ブレンド物を添加する温度は、オレフィン系樹脂の融点以下であることが好ましく、取り出し温度についてはベースポリマーの融点以下で、ブロッキング現象が起きない範囲で、表面に濡れがないように設定すればよい。
【0026】
続いて押出機を用いて該ドライブレンド物、ゴム成分、接着性樹脂、必要に応じて金属繊維等の各種その他成分を混練し、例えばリボン状(すなわち、短冊状)に押し出す。この押し出し成形後にシラン架橋反応が進み、架橋体が得られる。
【0027】
表層104の厚さは、特に限定されず、所望の床材の厚みに応じて適宜選択すれば良いが、例えば0.1〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.5mmである。
【0028】
得られたシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)は、基材102とともに例えばプレス成形することにより積層し、表層104を形成し、本発明の床材10が得られる。具体的には、ステンレス板の上に、基材102とシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)を積層し、その上からステンレス板を載せてステンレス板で挟みこんだ状態とし、170〜190℃程度に設定したプレス機に投入する。100〜150kg/mmで5〜10分程度加熱した後冷却し、本発明の床材を得ることができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明の床材の第2実施形態について説明する。
図2は、本発明の床材の第2実施形態の断面図である。図2に示したように、本発明の床材12は、基材102上に、オレフィン系樹脂組成物(2)からなる中間層106と、シラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)からなる表層104とを、この順で積層して構成される。つまり、上記第1実施形態において、基材102と表層104との間に中間層106を備えるものである。
【0030】
中間層106を構成するオレフィン系樹脂組成物(2)は、少なくともオレフィン系樹脂、ゴム成分、および導電性材料としての導電性粉末を含有する。中間層106に導電性粉末を含有させることで、導電性および帯電防止性に優れた床材とすることができる。
【0031】
オレフィン系樹脂組成物(2)において、オレフィン系樹脂の種類は、前述のシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)と同様のものを用いることができる。オレフィン系樹脂は、オレフィン系樹脂とゴム成分とからなる重合体成分(以下、単に「主剤(2)」とも言う。)の合計100質量部中、20〜90質量部含有されるのが好ましく、30〜80質量部がより好ましく、40〜60質量部がさらに好ましい。上記範囲であると十分な耐熱性を備えることができるため好ましい。
【0032】
ゴム成分は、前述のシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)と同様のものを用いることができる。ゴム成分は、主剤(2)中、10〜80質量部含有されるのが好ましく、20〜70質量部がより好ましく、40〜60質量部がさらに好ましい。上記範囲であると床材に適度な柔軟性を付与することができるため好ましい。
【0033】
前記導電性粉末としては、例えば、銅、銀、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、ステンレス等の金属粉末、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、導電性酸化亜鉛、導電性酸化チタン、酸化インジウム等の無機化合物粉末等が挙げられる。
導電性粉末の平均粒径は、帯電防止性の観点から、20〜60nmが好ましく、20〜50nmがより好ましく、20〜40nmがさらに好ましい。
また、導電性粉末の配合量は、主剤(2)100質量部に対し、15〜80質量部が好ましく、30〜80質量部がより好ましく、50〜80質量部がさらに好ましい。前記範囲であると中間層106が十分な導電性を備えるので、帯電防止性に優れた床材とすることができる。
【0034】
また、オレフィン系樹脂組成物(2)には、耐熱性、耐摩耗性および耐汚染性(耐薬品性)の観点から、接着性樹脂を配合するのが好ましい。接着性樹脂の種類および配合量は、前述のシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)と同様であり、好ましい範囲も同じである。
【0035】
また、オレフィン系樹脂組成物(2)には、必要に応じて難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、滑剤等を配合することができる。中でも炭酸カルシウムのような無機充填剤を配合することにより、製造コストが減少し、好ましい。無機充填剤の配合量は、前記主剤(2)100質量部に対し、10〜80質量部が好ましく、10〜50質量部がより好ましい。
【0036】
オレフィン系樹脂組成物(2)は、公知の各種混合装置を用いて各種成分を混合することにより容易に調製することができる。具体的には、まず、オレフィン系樹脂、ゴム成分、必要に応じて接着性樹脂を溶融状態(すなわち、流動性のある状態)になるまで混練する。その後、必要に応じて、各種充填剤や酸化防止剤等を投入して均一になるまで混練する。その後、混練物と導電性材料をロール機に投入して混練し、シート状にして取り出す。尚、中間層106の厚さは、特に限定されず、所望の床材の厚みに応じて適宜選択すれば良いが、例えば0.1〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.5mmである。
【0037】
このようにして作製したオレフィン系樹脂組成物(2)からなる中間層106を、基材102上に積層した後、前記のシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)をこの中間層106上にさらに積層し、これらを例えばプレス成形することにより、基材102、中間層106および表層104がこの順で積層した本発明の第2実施形態の床材12が得られる。
【0038】
このように構成された床材12は、表層104が金属繊維を含有する場合、静電気が該金属繊維から中間層106に含まれる導電性粉末に良好に伝導し、帯電防止性がさらに高まる。また同時に、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性(耐薬品性)も向上する。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0040】
下記表1〜表3に示す配合割合(質量部)において、下記に示すように各種成分を混合し、レーヨンおよびポリエステル繊維の混合物からなる基材上に中間層および表層の順で積層することにより、床材を得た。なお、基材の厚さは1mm、中間層の厚さは1mm、表層の厚さは1mmとした。
なお、表中で使用した材料の詳細を以下に記載する。
【0041】
・オレフィン系樹脂A:ポリエチレン(商品名:NUCG−9301、ダウ・ケミカル日本株式会社製)
・オレフィン系樹脂B:エチレン−酢酸ビニル共重合体(商品名:EV170、三井デュポンポリケミカル製)
・ゴム成分:エチレン−プロピレンゴム(商品名:JSR EP11、JSR株式会社製)
・接着性樹脂:マレイン酸変性ポリプロピレン(商品名:ユーメックス1001、三洋化成株式会社製)
・シラン化合物:KBM−1003(商品名、信越化学工業株式会社製)
・ラジカル発生剤:PERKADOX BC(商品名、化薬アクゾ株式会社製)
・シラノール縮合触媒:U−100(商品名、日東化成株式会社製)
・酸化防止剤:イルガノックス1010(商品名、チバ・スペシャルティケミカルズ社製)
・着色剤:PE−M G−59(商品名、大日精化工業株式会社製)
・金属繊維:ステンレス繊維(商品名:4C 82SPN、日本精線株式会社製)
・充填剤:炭酸カルシウム(商品名:MSK−PO、丸尾カルシウム株式会社製)
・導電性材料:ケッチェンブラックEC−300J(商品名、ライオン株式会社製)
【0042】
<表層の作製>
1) 表1〜表3に示す配合割合(質量部)において、各種成分を計量した。シラン化合物、ラジカル発生剤、シラノール縮合触媒、酸化防止剤については予めブレンドした。
2) オレフィン系樹脂Aをヘンシェルミキサー(株式会社三井三池製作所製)に投入し、約70℃になるまで回転させた。次に、ブレンドしておいたブレンド物を添加し、更に混合した。樹脂内部に添加剤が吸収され、ドライブレンドとなったところで取り出した。
3) ドライブレンド物とゴム成分、接着性樹脂、金属繊維、着色剤を混合し、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)のホッパーに投入した。180℃で短冊状に押し出した。
【0043】
<中間層の作製>
1) 表1〜表3に示す配合割合(質量部)において、各種成分を計量した。
2) オレフィン系樹脂B、ゴム成分、接着性樹脂をミックスラボ(株式会社モリヤマ製)に投入し、約5分間混合した。その後、充填剤、酸化防止剤を投入して約5分間混合し、取り出した。
3) 2)で混合した混合物と、導電性粉末をロール機(株式会社上島製作所製)にて混合し、シート状にして取り出した。
【0044】
<床材の作製>
1) 前記作製した中間層のシート材、並びに基材をそれぞれ、縦約150mm×横約150mmに裁断した。
2) ステンレス板の上に基材と中間層のシート材料とを積層し、中間層の表面に前記作製した短冊状の表層を並べた。その上からステンレス板を載せて表層、中間層および基材をステンレス板で挟み込んだ状態とし、180℃に設定したプレス機(日新科学株式会社製)に投入した。120kg/mm、180℃で加圧・加熱した後、常温まで冷却して床材を得た。
【0045】
得られた各種床材(試験片)について、下記試験により、外観、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性(耐薬品性)、帯電防止性について評価した。結果を併せて表1〜表3に示す。
【0046】
<外観の評価項目>
外観について、目視にて確認し、凹凸や表面の荒れ、汚れ、傷、色ムラ等が無いものを「○」、凹凸や表面の荒れ、汚れ、傷、色ムラ等が確認されるものを「×」と評価した。
【0047】
<耐熱性試験>
耐熱性試験として、JIS A 1454:2005の6.7項に従って加熱による長さ変化試験を行った。具体的には、試験片を試験台(ステンレス鋼板)の上に置き、温度20±2℃、湿度65±10%の試験室内に12時間以上静置した後、試験片の縦横両方方向それぞれ3本の標線の長さを測定し、それぞれ平均値を求めた。試験片を攪拌機付高温槽の中に水平に置き、温度80±2℃で6時間保った後に取り出し、室内に約1時間静置した。その後、それぞれの標線の長さを測定し、試験前の長さに対する変化率を下記式より求めた。長さの変化率が、0.25%以下のものを「○」、0.25%より大きいものを「×」とした。
加熱による長さ変化率(%)={試験前長さ(mm)−試験後長さ(mm)}/試験前長さ(mm)×100
【0048】
<耐摩耗性試験>
耐摩耗性試験として、JIS A 1453:1973に準じて1,000回転摩擦試験を行った。具体的には、試験片を摩耗試験機の試験片取り付け位置に固定し、荷重をかけながら試験片を試験機の磨耗輪に1,000回転当てた後、摩耗減量を測定した。摩耗減量が、0.25g以下のものを「◎」、0.25g〜0.30gのものを「○」、0.30gより大きいものを「×」とした。
【0049】
<耐汚染性(耐薬品性)試験>
耐汚染性(耐薬品性)試験として、JIS A 1454:2005の6.12項に従って外観の試験を行った。具体的には、試験片の表面を乾燥した布で拭き、汚染材料(潤滑油、2%水酸化ナトリウム水溶液、5%塩酸)を約2mL滴下し、時計皿で覆って24時間静置した。その後、中性洗剤を含む水で洗い、更にアルコールで洗い、試験片の表面を乾燥したガーゼで拭き取ってから1時間静置後、目視により滴下部分の色、光沢の変化や膨れの有無などを観察した。外観について、著しい色、光沢の変化及び膨れが無いものを「○」、色、光沢の変化及び膨れが見られるものを「×」とした。
【0050】
<帯電防止性試験>
帯電防止性試験として、NFPA 99 3−3.6.2項に従って2点間表面抵抗値を求めた。具体的には、温度23±3℃、湿度65±10%の室内にて、試験片を試験台の上に置き、試験片の上に電極を載せ、絶縁抵抗計にて2点間の抵抗を測定した。2点間表面抵抗値が、1×10Ω以下のものを「◎」、1×10Ω〜1×10Ωのものを「○」、1×10Ωより大きいものを「×」とした。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
表1〜表3の結果から、実施例の床材は、基材上に特定のシラン架橋オレフィン系樹脂組成物からなる表層を積層したので、外観、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性(耐薬品性)のすべての項目について優れていることがわかった。また実施例において、表層に金属繊維を配合し、中間層に導電性粉末を配合した床材(実施例1〜22)は、外観、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性(耐薬品性)に加え、優れた帯電防止性をも有することがわかった。
【0055】
これに対し、表層において、オレフィン系樹脂およびゴム成分の合計100質量部中、前記オレフィン系樹脂が20〜90質量部、かつ前記ゴム成分が10〜80質量部の条件を満たさない比較例1,2は、外観、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性をすべて満たすことはできなかった。また、シラン化合物、ラジカル発生剤、シラノール縮合触媒または接着性樹脂のいずれかを含まない比較例においても、外観、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性をすべて満たすことはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の床材は、半導体、電子部品、食品、医薬品等の製造工場やクリーンルーム等の静電気により帯電を防止する性能が求められる場所に好適に施工できる。
【符号の説明】
【0057】
10,12 本発明の床材
102 基材
104 表層
106 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、下記のシラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)からなる表層を積層してなることを特徴とする床材。
シラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1):少なくともオレフィン系樹脂、ゴム成分、シラン化合物、ラジカル発生剤、シラノール縮合触媒および接着性樹脂を含有し、前記オレフィン系樹脂および前記ゴム成分の合計100質量部中、前記オレフィン系樹脂が20〜90質量部、かつ前記ゴム成分が10〜80質量部である。
【請求項2】
前記オレフィン系樹脂および前記ゴム成分の合計100質量部に対し、前記シラン化合物を0.1〜5質量部、ラジカル発生剤を0.05〜1質量部、およびシラノール縮合触媒を0.05〜1質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の床材。
【請求項3】
前記シラン架橋オレフィン系樹脂組成物(1)が、さらに金属繊維を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の床材。
【請求項4】
前記基材と前記表層との間に、少なくともオレフィン系樹脂、ゴム成分および導電性粉末を含有するオレフィン系樹脂組成物(2)からなる中間層を設けることを特徴とする請求項3に記載の床材。
【請求項5】
前記基材が、繊維材料からなる基布から構成されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の床材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−237078(P2012−237078A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107528(P2011−107528)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】