説明

床構造における木質床材と見切り材との配置構造

【課題】裏面緩衝材4を備えた木質床材2が床下地1に直貼りされている床構造において、表面意匠性を損なうことなく、床材相互のサネ接合部の表面突き上げあるいは床鳴りが生じるのをより完全に抑制する。
【解決手段】上記の床構造において、見切り材10に沿って床下地1に際根太15を固定する。際根太15に木質床材2の木質基材3が非拘束状態で乗った状態に置き、かつ、木質基材3の端面と見切り材10との間に隙間14を形成して、木質床材2を床下地1に固定する。そして、前記隙間14を見切り材10が備える被覆部材11により上から覆うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床構造における木質床材と見切り材との配置構造に関し、特に、裏面緩衝材を備えた木質床材が床下地に直貼りされている床構造における前記木質床材と見切り材との配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
床下地に多数枚の木質床材を敷き詰めて形成される床構造は知られており、敷き詰めた木質床材の周囲には見切り材が取り付けられる。敷き詰めた複数枚の木質床材を複数区画に区切るために、木質床材と木質床材の間に見切り材が配置されることもある。この種の見切り材は、その取り付け箇所や使用態様に応じて、床見切り材、敷居見切り材、木枠見切り材、あるいは上がり框見切り材等と、区別されて呼ばれることもある。
【0003】
木質床材は、合板や木質繊維板等で作られる木質基材のみからなるものと、木質基材の裏面に不織布や発泡樹脂のような材料からなる緩衝材を貼り付けたものとがある。後者の木質床材は、コンクリートスラブのような床下地に直貼り施工されて床構造とされる。この床構造では、木質床材を構成する裏面緩衝材は接着剤により床下地に直接固定されているが、木質基材は裏面緩衝材に対して固定されているにすぎない。そのために、含水率の変化により個々の木質基材が伸縮すると、床構造全体に木質基材の移動が生じる。敷き詰められた裏面緩衝材を備えた木質床材群の周縁が隙間のない状態で壁面や見切り材等に付き付け施工されていると、木質基材の前記伸縮により、床材相互のサネ接合部の表面突き上げあるいは床鳴りが生じることがある。
【0004】
それを回避するために、木質床材の端面と壁面との間に2〜5mm程度の隙間が形成されるようにして木質床材を敷き詰め、その隙間で木質基材の伸縮を吸収すると共に、隙間が外から見えないように、壁面に取り付けた幅木で隙間を覆うこと、また、そのような幅木の端面に軟質部材からなる舌片を付設することが行われる(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−83587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
床下地に、裏面緩衝材を備えた木質床材の多数枚を直貼りして構成される床構造において、木質床材の端面が壁面と対向している箇所では、前記のように、木質床材をその端面と壁面との間に隙間を設けるようにして施工し、かつ、幅木によりその隙間を目隠しすることにより、床材相互のサネ接合部の表面突き上げあるいは床鳴りを抑制することができ、また高い意匠性も維持することができる。しかし、木質床材の端面が敷居見切り材や上がり框見切り材等のいわゆる見切り材に対向する部分では、隙間を形成する施工を行った場合に、その隙間を目隠しすることができない。そのために、従来の床施工では、そのような部分に対しては、隙間を形成しない、いわゆる突き付け施工が行われており、より高い品質の床構造を構築するには、なお改善すべき点がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、裏面緩衝材を備えた木質床材が床下地に直貼りされている床構造において、床面表面での突き上げや床鳴りが生じるのをより完全に抑制することができ、それにより、より高い品質の床構造とすることのできる木質床材と見切り材との配置構造を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明による木質床材と見切り材との配置構造は、裏面緩衝材を備えた木質床材が床下地に直貼りされている床構造における前記木質床材と見切り材との配置構造であって、前記見切り材に沿って床下地に際根太が固定されており、該際根太には前記木質床材の木質基材が非拘束状態で乗った状態に置かれており、前記木質基材の端面と前記見切り材との間には隙間が形成されており、前記隙間は前記見切り材が備える被覆部材により覆われていることを特徴とする。
【0009】
本発明による木質床材と見切り材との配置構造では、木質床材を構成する木質基材の端面と見切り材との間には隙間が形成されており、木質基材の含水率の変化により生じる木質基材群の伸びは、前記隙間により吸収される。そのために、床面床材相互のサネ接合部の表面突き上げあるいは床鳴りが生じるのをより完全に抑制することができる。そして、前記隙間は、見切り材が備える被覆部材により上から覆われているので、外から見えることはなく、意匠性が低下することもない。
【0010】
さらに、前記木質床材の木質基材は、見切り材に沿って床下地に固定されている際根太に非拘束状態で乗った状態に置かれており、見切り材近傍における木質基材の沈み込みが抑制されると共に、木質基材の伸縮の自由度も確保されている。この点からも、床面表面での突き上げや床鳴りが生じるのは、効果的に抑制される。
【0011】
本発明において、前記被覆部材は、前記見切り材と一体成形されていてもよく、前記見切り材とは別部材として形成したものを接着剤等の適宜の固定手段により前記見切り材に一体に取り付けたものでもよい。
【0012】
また、本発明において、見切り材の種類には制限はなく、従来の床構造で用いられている任意の見切り材、すなわち、床見切り材、敷居見切り材、木枠見切り材、または上がり框見切り材、等のいずれであってもよい。また、壁際の部分においては、従来の幅木を用いる施工構造を併用してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明による床構造における木質床材と見切り材との配置構造の一実施の形態を説明する概略断面図であり、図2は他の実施の形態を説明する概略断面図である。
【0014】
図において、1は床下地であり、ここではコンクリートスラブである。床下地1はコンクリートスラブに限らず、その上に捨て貼り合板(不図示)を貼り付けた形態などであってもよい。
【0015】
2は木質床材であり、合板等である木質基材3とその裏面に貼り付けた裏面緩衝材4とからなる。木質基材3と裏面緩衝材4との間に、温水パイプや電気ヒータのような発熱源(不図示)を備えた暖房用床材であってもよい。裏面緩衝材4としては、一例として、ポリエチレン繊維からなる不織布やPETの発泡体、等が挙げられる。
【0016】
10は見切り材であり、図1の例では、図で右側の木質床材群2aと左側の木質床材群2bを仕切る床見切り材として、長手方向を紙面に垂直方向として、床下地1に固定されている。この例において、見切り材10は樹脂の押出し成形品であり、見切り材10の底面から前記木質床材2の厚さ(高さ)と同じかあるいはわずかに高い位置に、上縁の左右から張り出すようにして、所定幅の被覆部材11,11が一体成形されている。好ましくは、前記被覆部材11は先端側が下向きの断面形状とされる。被覆部材11の張り出し幅は、限定されるものではないが5mm程度であってよい。
【0017】
前記見切り材10の長手方向(紙面に垂直方向)に沿うようにして、かつ、見切り材10の側面との間に適宜幅の隙間13を形成するようにして、左右の際根太15,15が床下地1に固定されている。際根太15は適宜の材料で作ることができ、施工現場で発生する端材などを用いることもできる。際根太15の厚さは、前記木質床材2を構成する裏面緩衝材4の厚さとほぼ等しくされる。
【0018】
床構造を施工するに際して、前記見切り材10に隣接して配置される木質床材2については、見切り材10側に位置する側縁に沿って、その裏面から裏面緩衝材4を所定幅に亘って除去する。床下地1の表面に接着剤を塗布するか、残っている裏面緩衝材4の裏面に接着剤を塗布した後、裏面緩衝材4を除去したことによって顕れた木質基材3の裏面部分を前記際根太15の上に乗せた姿勢とする。その際に、木質基材3の裏面部分と際根太15との間に接着剤は塗布しない。その状態で、木質床材2を見切り材10に向けて移動させ、その木質基材3の端面と見切り材10の側面との間に2〜4mm程度の隙間14が形成される位置で木質床材2の位置決めをし、接着剤の硬化を待つ。それにより、本発明による、裏面緩衝材4を備えた木質床材2が床下地1の面に直貼りされている床構造における木質床材2と見切り材10との配置構造が完成する。以降、そのようにして固定された木質床材2に隣接させながら、床下地1の面に他の木質床材2を順次貼り付けていくことにより、床構造全体が完成する。
【0019】
この木質床材2と見切り材10との配置構造では、木質基材3の端面と見切り材10との間に隙間14が形成されており、各木質基材3の含水率の変化により、床下地1に敷き詰めた木質基材群に伸びが生じても、その伸びは前記隙間14により吸収される。そのために、床材相互のサネ接合部の表面突き上げあるいは床鳴りが生じることはない。さらに、前記隙間14は、見切り材10が備える前記被覆部材11により上から覆われるので、外から見えることはなく、意匠性が低下することもない。
【0020】
図2は、本発明による木質床材と見切り材との配置構造の他の形態を示している。この態様では、敷き詰める木質床材2と際根太15の構成は、図1に示したものと同じであるが、見切り材10aと被覆部材11aの構成が相違する。この形態で、見切り材10aは木製であり、例えば上がり框見切り材である。見切り材10aの側面には、樹脂材料等で形成される断面L字状である長尺状の被覆部材11aが、接着剤あるいはビス止め等である適宜の固定手段で一体に取り付けられている。被覆部材11aの取り付け位置と木質床材2との関係は、図1に基づき説明したものと同じである。
【0021】
この形態の配置構造では、断面L字状である長尺状の被覆部材11aを別途用意するのみで、従来の床構造の施工構造を本発明の配置構造に変更することができる。この場合、床構造の意匠性をより向上させるために、被覆部材11aの表面に対して、見切り材10aの表面模様と同様な模様を施すことが推奨される。
【0022】
図示しないが、見切り材10が、床見切り材、敷居見切り材あるいは木枠見切り材等であっても、被覆部材11aを用いて、図2に示したと同様な施工を行えることは説明を要しない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による床構造における木質床材と見切り材との配置構造の一実施の形態を説明する概略断面図。
【図2】本発明による床構造における木質床材と見切り材との配置構造の他の実施の形態を説明する概略断面図。
【符号の説明】
【0024】
1…床下地、2…木質床材、3…木質基材、4…裏面緩衝材、10、10a…見切り材、11、11a…被覆部材、13、14…隙間、15…際根太

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面緩衝材を備えた木質床材が床下地に直貼りされている床構造における前記木質床材と見切り材との配置構造であって、
前記見切り材に沿って床下地に際根太が固定されており、該際根太には前記木質床材の木質基材が非拘束状態で乗った状態に置かれており、前記木質基材の端面と前記見切り材との間には隙間が形成されており、前記隙間は前記見切り材が備える被覆部材により覆われていることを特徴とする床構造における木質床材と見切り材との配置構造。
【請求項2】
前記被覆部材は前記見切り材と一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載の床構造における木質床材と見切り材との配置構造。
【請求項3】
前記被覆部材は前記見切り材とは別部材として形成されたものであり、固定手段により前記見切り材に一体に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の床構造における木質床材と見切り材との配置構造。
【請求項4】
前記見切り材が、床見切り材、敷居見切り材、木枠見切り材、または上がり框見切り材のいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の床構造における木質床材と見切り材との配置構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−121111(P2009−121111A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295564(P2007−295564)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】