床構造体、及びこれに用いる床板固定金具
【課題】床板に作用する上向きの強い風圧に対する固定強度の高い床構造体及びこれに用いる床板固定金具を提供する。
【解決手段】床板固定金具11は上金具13と下金具14とボルト15とからなる。上金具13は中央にボルト挿通穴をあけた平板部16の床板幅方向両端に、床板1の長穴5に係合可能な1対の下向き突起17を持つ。下金具14は梁7のフランジ7aの下面に係合可能な係合部21とボルト15が螺合可能なネジ穴22aを持つボルト結合部22とを持つ。床板1を梁7上に隙間8をあけて敷き並べる。梁7のフランジ端縁と隙間8との交差箇所で、隙間8の両側の床板1を床板固定金具11で同時に固定する。床板1は、剛性の小さい桟6の部分ではなく剛性の大きいフランジ3の部分(床板の幅方向端縁部)で固定されるので、上向きの風圧に対して充分高い固定強度を確保できる。
【解決手段】床板固定金具11は上金具13と下金具14とボルト15とからなる。上金具13は中央にボルト挿通穴をあけた平板部16の床板幅方向両端に、床板1の長穴5に係合可能な1対の下向き突起17を持つ。下金具14は梁7のフランジ7aの下面に係合可能な係合部21とボルト15が螺合可能なネジ穴22aを持つボルト結合部22とを持つ。床板1を梁7上に隙間8をあけて敷き並べる。梁7のフランジ端縁と隙間8との交差箇所で、隙間8の両側の床板1を床板固定金具11で同時に固定する。床板1は、剛性の小さい桟6の部分ではなく剛性の大きいフランジ3の部分(床板の幅方向端縁部)で固定されるので、上向きの風圧に対して充分高い固定強度を確保できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場の安全通路や作業床、ビル屋上床等として敷き並べられた床板を梁等の梁に固定してなる床構造体、及びこれに用いる床板固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の安全通路や作業床、ビル屋上床等として、図12に示すように、平坦なウエブ部2と前記ウエブ部2の両側から下向き直角に折り曲げたフランジ部3とを持つ断面形状をなし、前記ウエブ部2に床板幅方向(図12で左右方向)をなす長穴5を床板長手方向に間隔をあけて複数設けた床板1が用いられている。隣接する長穴5で挟まれた部分6を桟と呼ぶ。なお、図示例の床板1は、フランジ部3の下端にさらに内向きのリップ部4を形成している。
この床板1を例えば工場作業床等として用いる場合、図13に示すように、梁7上に一般に隙間なく敷き並べ、梁7に固定(固定手段は図示略)して敷設される。
【0003】
この種の床板1を梁7に固定する手段として、従来、種々の床板固定金具が用いられているが、例えば図14〜16に示すような床板固定金具41が用いられている(特許文献1、特許文献2)。この固定金具41は、上金具42と下金具43と両者を係合させるボルト44とからなっている。上金具42は、床板1の1つの長穴5に嵌合する凹部42aとその両側の長穴5に嵌入する側板部42bとを持ち、前記凹部42aの中央にボルト挿通穴42cをあけている。下金具43は、溝形断面の棒材を、水平部43bと垂直部43cとを持つL形に曲げた形状であり、前記ボルト44を螺合させるねじ穴43aを前記水平部43bにあけている。
この固定金具41で床板1を梁7に固定する場合、下金具43を図示例ではH形鋼である梁7のフランジ部7aの端縁の近傍上にある長穴5(5'で示す)に上から挿入する。次いで、上金具42を、その凹部42aの部分が前記長穴5'に嵌合し両側の側板部42bが両側の長穴5に嵌入する態様で、床板1の2つの桟6の上に載せる。次いで、ボルト44の頭部を回して下金具43の向きをボルト44とともに90°変え、かつボルト44を引き上げて、L形の下金具43の水平部43bをフランジ部7aの下面に当てる。次いで、ボルト44をねじ込んでいくと、上金具42と下金具43の水平部43bとで床板1及びフランジ部7aが挟持され、床板1が梁7に固定される。このように、床板1の上面側からの操作のみで、床板1を梁7に固定することができる。また、固定金具41の取り外しも、床板1の上面側からの操作のみで行なうことができる。
【0004】
また、前記L形の下金具43に代えて、図17に示すように、横向きU形の下金具53を用いた床板固定金具51もある(特許文献3参照(但し、図17は特許文献3の図面を分り易いように変更している))。
この場合、横向きU形の下金具53を梁フランジ7aを挟むように配し、下金具53の横向きU形の上辺部分53aにあけたネジ穴53bにボルト54を捻じ込み締付けると、下金具53が引き上げられて、横向きU形の下辺部分53cがフランジ7aの下面に当たり、下金具53の下辺部分53cと上金具52とで床板1及びフランジ部7aが挟持され、床板1が梁7に固定される。なお、この場合、U形の下金具53の幅(紙面と直交する方向の幅)を長穴5の幅より狭くできれば、前記と同様に床板1の上面側からの操作で床板1を梁7に固定することが可能である。
【0005】
床板固定金具として上記以外にも種々のものがあり、例えば、床板1のリップ部4を梁のフランジに固定する構造のもの(特許文献4の図4〜図6)もあるが、この場合、床板の上面側からの操作で床板を梁に固定することはできない。
【0006】
上記のように、床板長手方向に多数の長穴を備えた床板を対象とする床板固定金具で、かつ床板の上面側から操作可能な従来の床板固定金具はいずれも、上金具を床板1の桟6の部分に載せて梁に固定する構造である。
【特許文献1】特開2005−194805の図14〜図16
【特許文献2】意匠登録第1167637号
【特許文献3】実開昭63−186834
【特許文献4】特開平10−140724
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
床板には通常の使用態様では上からの荷重が加わるのみであるから、床板を梁に固定する床板固定金具に要求される固定強度は通常、床板がずれない程度の固定強度で済み、図14〜図16のような構造のもので要求される固定強度は十分確保される。
しかし、床板が例えば100mを越えるような高層建築物の屋上などに設置された場合、床板を持ち上げるような上向きの強い風圧が作用することがあるので、この上向きの風圧に対する固定強度が要求される。
このように上向きの風圧に対する固定強度を要求された場合、図14〜図16のように、床板の桟6の部分を梁7側に押し付けて固定する従来構造では、細く剛性の小さな桟6で風圧を受け持つことになるので、上向きの風圧に対する床板固定強度が不足するという問題がある。
そこで、風圧に対する固定強度を確保するために、梁スパンを短くして床板の梁スパン当たりの風圧荷重を小さくすることで、床板固定部に作用する荷重を小さくしたり、あるいは、床板固定金具を2個用いて固定強度を2倍にする等の対策を施している。
しかし、梁スパンを短くする対策では、梁の材料費・施工費が無用に高くなり、また、必要な床板固定金具の数が増してコストが高くなる。また、床板固定金具を2個用いる対策も当然金具の数が2倍増となりコストが高くなる。
【0008】
また、床板のリップ部4を固定する固定手段では、桟6の部分を固定する固定手段と比べて床板固定強度は高くなるが、前述の通り、床板1の下からの作業が必要となる。
【0009】
本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、床板固定作業を床板の上面側から行うことが可能でありながら、上向きの風圧に対する充分な固定強度を確保することが可能な床構造体、及び、これに用いる床板固定金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1の発明の床構造体は、溝形断面形状をなしその上面のウエブ部に穴を床板長手方向に等ピッチで複数設けた床板を、上面に水平なフランジを持つ梁上に床板幅方向に隙間をあけて並べるとともに、前記梁のフランジ端縁と隙間との交差箇所において、上金具と下金具と両金具を結合させるボルトとからなる床板固定金具により梁に固定したことを特徴とする。
【0011】
請求項2は、請求項1における穴が床板幅方向をなす長穴であることを特徴とする。
【0012】
請求項3は、請求項1又は2の床構造体に用いられる床板固定金具であって、
上金具と下金具と両金具を結合させるボルトとからなり、
前記上金具は、隣接する床板間の前記隙間を跨いで両床板の幅方向端縁部に載る平板部と、この平板部の床板幅方向両端にそれぞれ形成された、床板の前記穴又は長穴端縁に係合可能な下向き突起と、平板部の床板幅方向中央部に形成されたボルト挿通穴とを備え、
前記下金具は、梁の前記フランジの下面に当接して梁に係合可能な係合部と、上金具の前記ボルト挿通穴に上から挿入した前記ボルトが螺合可能なネジ穴を持つボルト結合部とを備えたことを特徴とする
【0013】
請求項4は、請求項3の床板固定金具において、上金具の平板部における前記下向き突起の床板長手方向位置がボルトの床板長手方向位置に対して、床板長手方向に前記穴又は長穴のピッチの2分の1未満の寸法で偏位していることを特徴とする。
【0014】
請求項5は、請求項4の床板固定金具において、下向き突起の偏位量が前記穴又は長穴のピッチの4分の1であることを特徴とする。
【0015】
請求項6は、請求項3〜5の床板固定金具において、
前記下金具は、その係合部とボルト結合部と両者をつなぐ中間部との全体が床板幅方向から見て略コ字形をなしており、その天端に前記ネジ穴が形成されており、この略コ字形の凹所に梁のフランジが入るようになっていることを特徴とする。
【0016】
請求項7は、請求項3〜5の床板固定金具において、下金具が、床板幅方向から見て垂直部と水平部とからなる略L字形をなし、その水平部が係合部とボルト結合部とを兼ねているとともに、この水平部における垂直部近傍位置にボルト結合部としてのネジ穴が形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8の床板固定金具は、請求項3〜7記載の床板固定金具の上金具の平板部に、前記1対の下向き突起とは別に、その下向き突起位置から前記穴又は長穴のピッチだけずれた位置にさらに1対の下向き突起を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の床構造体によれば、隣接する床板間に隙間を設け、前記隙間と梁のフランジ端縁との交差箇所において、床板固定金具により床板を梁に固定するものであり、床板は床板固定金具により、剛性の小さいウエブ中央部分ではなく剛性の大きいフランジの部分(床板の幅方向端縁部)で固定されるので、床板側の剛性不足で上向きの風圧に対する固定強度が不足する問題は生じない。そして、固定金具自体の強度確保は容易なので、床板の上向きの風圧に対する固定強度が確保される床構造体が得られる。
したがって、床板の桟の部分で固定する従来構造と異なり、梁スパンを短くしたり床板固定金具を2個用いる等の対策を取る必要がなく、梁の材料費・施工費が無用に高くなったり、金具の数が増してコストが高くなったりする問題は生じない。
また、床板固定作業を床板の上面側から行うことが可能なので、作業性がきわめて良好である。
【0019】
本発明の床板固定金具で床板を梁に固定する場合、床板固定金具におけるボルトの位置(床板長手方向の位置)すなわち下金具の位置は、下向き突起が嵌入する床板の穴又は長穴(以下では長穴として説明する)の位置によって制約される。
床板固定金具を単にそのままの姿勢で床板長手方向に移動調整する場合、ボルトの位置は、下向き突起が嵌入する長穴の位置(床板長手方向位置)によって決まるので、長穴ピッチ刻みでしか移動調整できない(長穴ピッチより短い距離だけ移動調整することはできない)。この場合、下金具を梁のフランジに対して適切な位置にセットすることができない場合も生じ得る。
しかし、請求項4のように、下金具の平板部における下向き突起の床板長手方向位置がボルトの床板長手方向位置に対して、床板長手方向に長穴ピッチの2分の1未満の寸法で偏位している場合、上金具を反転させることで、長穴ピッチより短い距離の移動調整が可能となる。
すなわち、上金具の姿勢を変えないとすれば、前記の通り下金具は、下向き突起を隣接する長穴に移すことで長穴ピッチ分だけずらすことしかできない。そこで、長穴ピッチより短い距離だけ移動調整したい場合は、上金具を反転させる。そして、反転させた下向き突起を同じ長穴に嵌入させるか、又は、隣接する長穴に移すことで、ボルトの位置すなわち下金具の位置を、長穴ピッチより短い距離だけずらすことが可能となる(すなわち、下金具の位置調整可能距離が短くなる)。このように、ボルトの位置すなわち下金具の位置の微調整が可能となり、これにより下金具を梁のフランジに対して適切な位置にセットすることが可能となる。
請求項5のように、下向き突起の偏位量sを長穴ピッチpの4分の1(p/4)にすると、上金具を反転させる操作、あるいは下向き突起を嵌入させる長穴を隣に移す操作を適宜行うことでp/2きざみで移動調整でき、長穴ピッチ刻みでしか移動調整できな従来構造と比べて半分に短くできる。
また、下金具の位置調整可能距離が長穴ピッチであると、梁のフランジに係合する係合部の長さを充分長く取る必要があるが、位置調整可能距離を長穴ピッチより短くできるので、係合部の長さを極力短くすることができ、したがって、材料費節約、重量軽減が図られる。
【0020】
請求項6の床板固定金具によれば、下金具は、所定形状に打ち抜いた鋼板を折曲加工することで、ネジ穴を設けるボルト結合部及び梁フランジとの係合部を容易に形成することができ、また、剛性の高い下金具を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の床構造体及びこれに用いる床板固定金具の実施例を、図1〜図12参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
図1(イ)は本発明の一実施例の床板固定金具11の斜視図、図2は床板固定金具11の平面図、図3は図2のA−A断面図、図4は図2のB−B断面図、図5は図1の床板固定金具11を用いた本発明の一実施例の床構造体12の一部の外観を示す斜視図、図6は図5の床構造体12における床板固定部の詳細構造を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のC−C断面図、図7は図6(イ)のE−E断面図である。
【0023】
この実施例で対象とする床板1は、前述の図12で説明した床板であり、再度説明すると、平坦なウエブ部2と前記ウエブ部2の両側から下向き直角に折り曲げたフランジ部3と前記フランジ部3の下端から内向きに折り曲げたリップ部4とを持つ断面形状をなし、前記ウエブ部2に床板幅方向(図12で左右方向)をなす長穴5を床板長手方向に間隔をあけて複数設けた構造である。隣接する長穴5で挟まれた部分6を桟と呼ぶ。
【0024】
この実施例の床構造体12は、前記床板1をH形鋼による梁7上に床板幅方向に隙間8をあけて並べるとともに、梁7のフランジ端縁と隙間8との交差箇所において、実施例のような床板固定金具11で梁7に固定している。
【0025】
前記床板固定金具11の詳細構造を説明すると、この床板固定金具11は、上金具13と下金具14と両金具を結合させるボルト15とからなっている。
前記上金具13は、隣接する床板1間の前記隙間8を跨いで両床板1の幅方向端縁部に載る平板部16と、この平板部16の床板幅方向両端にそれぞれ形成された、床板1の長穴端縁に係合可能な1対の下向き突起17と、平板部16の床板幅方向中央部に形成されたボルト挿通穴18とを備えている。
前記下向き突起17の床板長手方向位置は、ボルト15の床板長手方向位置に対して、床板長手方向に長穴ピッチの2分の1未満の寸法で偏位している(図示例は長穴ピッチの4分の1(p/4)で偏位している)。
また、ボルト挿通穴18の部分は、ボルト15の頭部15aが平板部16の上面から突出しないように凹所19としている。20はワッシャである。
【0026】
前記下金具14は、梁7のフランジ7aの下面に当接することで梁7に係合可能な係合部21と、上金具13の前記ボルト挿通穴18に上から挿入したボルト15が螺合可能なネジ穴22aを天端に持つボルト結合部22とを備えている。この実施例の下金具14は、所定形状に打ち抜いた鋼板を床板長手方向から見て細長い下向きコ字形(図4で下向きコ字形)に折曲加工したものである。また、係合部21とボルト結合部22と両者をつなぐ中間部23との全体が床板幅方向から見て略コ字形(図3で略コ字形)をなしており、この略コ字形の凹所24に梁7のフランジ7aが入るようになっている。なお、下金具14の側面には図1(イ)、(ロ)に示すように、補強用凹み部14aを形成している。なお、図1以外では補強用凹み部14aの図示を省略している。
【0027】
上記の床構造体12を構成する要領について説明する。床板1は、従来の一般的な敷設方法と異なり、梁7上に隙間8をあけて並べる。床板固定金具11の上金具13と下金具14とはボルト15で図1等に示すように結合しておく。その状態で、下金具14を床板1の上面側から隙間8に挿入し梁7側に移動(図6で左方に移動)させて、そのコ字形の凹所24を梁7のフランジ7aに嵌合させるとともに、上金具13の1対の下向き突起17を適切な長穴5に嵌入させる。次いで、下金具14のネジ穴22aに螺合しているボルト15を締め付けていくと、下金具14がボルト締め付けに伴って引き上げられ、係合部21が梁7のフランジ7aの下面に当接し、ボルト15を強く締め付けると、隣接する2つの床板1が同時に梁7に固定される。
なお、下金具14の幅寸法を敷き並べる床板1間の隙間寸法に設定すると、床板1を下金具14に当てながら敷き並べていけば、自動的に適切な隙間間隔に位置決めされるので、床板1を敷き並べる作業の作業性は良好である。
【0028】
上記の床構造体12において、床板1は床板固定金具11により床板幅方向両端部で、すなわち、剛性の小さい桟6の部分ではなく剛性の大きいフランジ3の部分で固定されるので、床板側の剛性不足で上向きの風圧に対する固定強度が不足する問題は生じない。そして、固定金具11自体の強度確保は容易なので、床板1の上向きの風圧に対する固定強度が確保される床構造体12が得られる。
したがって、床板1の桟6の部分で固定する従来構造と異なり、梁スパンを短くしたり床板固定金具を2個用いる等の対策を取る必要がなく、梁の材料費・施工費が無用に高くなったり、金具の数が増してコストが高くなったりする問題は生じない。
また、床板固定作業を床板の上面側から行うことが可能なので、作業性がきわめて良好である。
【0029】
上記床板固定金具11で床板1を梁7に固定する場合、床板固定金具11におけるボルト15の位置(床板長手方向の位置)すなわち下金具14の位置は、下向き突起17が嵌入する床板1の長穴5の位置によって制約される。
床板固定金具11を単にそのままの姿勢で床板長手方向に移動調整した場合、ボルト15の位置は、下向き突起17が嵌入する長穴5の位置(床板長手方向位置)によって決まるので、長穴ピッチp刻みでしか移動調整できない(長穴ピッチpより短い距離だけ移動調整することはできない)。
しかし、上記床板固定金具11のように、上金型13における平板部16の下向き突起17の床板長手方向位置が、ボルト15の床板長手方向位置に対して、床板長手方向に長穴ピッチpの2分の1(p/2)未満の寸法で偏位している場合、上金具13を反転させることで、長穴ピッチより短い距離の移動調整が可能となる。
すなわち、上金具13の姿勢を変えないとすれば、前記の通り下金具14は、下向き突起17を隣接する長穴に移すことで長穴ピッチpだけずらすことしかできない。
そこで、長穴ピッチpより短い距離だけ移動調整したい場合は、上金具13を反転させる。その場合の要領を説明すると、例えば図8に示すように、梁7のフランジ7aが下金具14の凹所24に深く入らずに、係合部21がフランジ7aに僅かしか当接しない場合(A部)、フランジ7aが下金具14の凹所24の奥に入るようにする必要がある。そこで、ボルト15を緩め上金具13を持ち上げて下向き突起17を長穴5から外し、そのままの姿勢で下向き突起17を図8で左隣りの長穴5’に嵌入するように移動させたとする。すると、図示例のものでは図9に2点鎖線で示すように、梁フランジ7aが下金具14の凹所24の奥に当たってしまうので、単にそのままの姿勢でフランジ7a側に移動させることはできない。そこで、図10に示すように、上金具13を180°反転させるとともに、下向き突起17をこの例では左隣りの長穴5’に嵌入させると、フランジ7aが下金具14の凹所24の奥側に位置することになり、こうして、下金具14を梁7のフランジ7aに対して適切な位置にセットすることが可能となる。
下金具14とフランジ7aとの相対位置関係によっては、同じく上金具13を180°反転させるが下向き突起17は同じ長穴5に嵌入させることで、下金具14をフランジ7aに対して適切な位置にセットさせることが可能になる場合もある。
下向き突起17の偏位量をsとすると、上金具13を反転させることで、ボルト15及び下金具14の位置を2sだけ(下向き突起17が同じ長穴の場合)、あるいは[p−2s]だけ(下向き突起17を隣の長穴に移した場合)移動させることができる。したがって、偏位量sが長穴ピッチpの半分(p/2)であれば、長穴ピッチpだけずらす場合と差異はないが、p/2未満の偏位量であれば長穴ピッチpだけずらす場合と異なる移動調整が可能となる。
【0030】
なお、偏位量sは、長穴ピッチpの4分の1(p/4)にするのが最も適切であり、その時、位置調整可能距離は長穴ピッチpの半分(p/2)となる。すなわち、下向き突起17を偏位させない場合の位置調整可能距離は長穴ピッチpであるから、調整距離を半分に小さくできる。なお、偏位量sがp/4の場合、上金具を反転させる操作と下向き突起を嵌入させる長穴を隣に移す操作とを適宜行うことでp/2きざみで移動調整できるが、偏位量sがp/4と異なる場合は、同様な操作をしても、移動量がp/2より小さいか大きいかであり不揃いなので、p/2刻みで移動調整可能である場合と比べて、調整性能として良好ではない。
【0031】
上記のように、ボルト15及び下金具14の位置調整可能距離が短くなるので、梁のフランジに係合する係合部21の長さを、位置調整可能距離が長穴ピッチpである従来のものと比べて充分短くすることができ、したがって、金具の材料費節約、重量軽減が図られる。
【実施例2】
【0032】
上記実施例の床板固定金具11では、上金具13の平板部16の下向き突起17を1対設けたが、図11に示した床板固定金具11’のように2対設けることもできる。すなわち、上記実施例における1対の下向き突起17に加えて、その隣の長穴5’に嵌入する1対の下向き突起17’を設けることもできる。この場合の追加の下向き突起17’は、位置調整可能距離に関して影響はないが、床板1との係合強度が高くなり、また、平板部16’を広くすることで上金具の強度が高くなる。
【実施例3】
【0033】
本発明の床板固定金具における下金具は、上記実施例の下金具14のような構造のものに限らず、種々の構造のものを用いることができる。
例えば、図15の下金具43のようなL字形の下金具を用いることができる。すなわち、図示は省略するが、床板幅方向から見て垂直部と水平部とからなる略L字形をなし、その水平部が係合部とボルト結合部とを兼ねているとともに、この水平部における垂直部近傍位置にボルト結合部としてのネジ穴が形成されている構造の下金具を用いることができる。
【実施例4】
【0034】
また、下金具として、図17の下金具53のようなU字形の下金具を用いることができる。すなわち、図示は省略するが、床板幅方向から見て横向きU字形をなし、その上辺部分にネジ穴を形成してボルト結合部とし、下辺部分を梁のフランジ下面に係合する係合部として、ボルトを締め付けたときに、下金具の下辺部分と上金具とで床板1及びフランジ部7aを挟持することで、床板1を梁7に固定する構造の下金具を用いることができる。
【実施例5】
【0035】
上記の実施例では、上金具13の平板部16に設ける1対の下向き突起17の位置を、ボルト15の位置に対して床板長手方向に偏位させたが、偏位させずにボルト15の位置と一致させてもよい。この場合、ボルト及び下金具の位置の調整は長穴ピッチp刻みとなる。
【0036】
上述の実施例で対象とする床板1は、溝形断面形状におけるフランジ部3の先端に内向きのリップ部4を形成したリップ付き溝形断面形状であるが、リップ部のない単なる溝形断面形状のものにも適用できる。
【0037】
実施例で用いた床板1は図12の通り、ウェブ部2に床板幅方向に延びる長穴5を設けた構成であるが、この長穴5に代えて、床板幅方向に間隔をあけて複数の円形や楕円形等の穴を設けた床板を用いることができる。この場合、上金具13の下向き突起17は、長穴にではなく複数の穴のうちフランジに最も近い穴に嵌入する。
なお、穴に代えて、床板幅方向に延びる細長い窪み、あるいは、床板幅方向に間隔をあけて複数の円形や楕円形等の窪みを設けた床板を用いることもできる。この場合、上金具13の下向き突起17は、穴にではなく、細長い窪みに、あるいは、複数の窪みのうちフランジに最も近い窪みに嵌入させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例の床板固定金具を示すもので、(イ)は斜視図、(ロ)はその下金具の中間で切断した水平断面図である。
【図2】上記床板固定金具の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】図1の床板固定金具を用いた本発明の一実施例の床構造体の一部の外観を示す斜視図である。
【図6】図5の床構造体における床板固定部の詳細構造を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のC−C断面図である。
【図7】図6(イ)のE−E断面図である。
【図8】梁フランジに対する床板固定金具の下金具の係合が不十分である場合の相対位置関係を説明する図であり、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のF−F断面図である。
【図9】図8の相対位置関係から床板固定金具を長穴ピッチ分だけずらそうとすると梁フランジに干渉することを説明する図であり、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のG−G断面図である。
【図10】図8の相対位置関係から上金具を180°反転させることで、床板固定金具の下金具を梁のフランジに対して適切な位置にセットできることを説明する図である、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のH−H断面図である。
【図11】下向き突起を2対設けた上金具の変形例を示すもので、ボルト及び下金具と梁フランジとの相対位置関係は図6と同じである。(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のI−I断面図である。
【図12】実施例で用いている床板の斜視図である。
【図13】図12の床板を用いた従来の一般的な床構造体の斜視図である。
【図14】従来の床板固定金具を用いた床構造体における床板固定部の詳細構造を示す平面図である。
【図15】図14のJ−J断面図である。
【図16】図14ないし図15の床板固定部を下から見た斜視図である。
【図17】従来の他の床板固定金具を示すもので、床板固定部の断面図である
【符号の説明】
【0039】
1 床板
2 ウエブ部
3 フランジ部
4 リップ部
5 (床板の)長穴
6 (床板の)桟
7 梁
7a (梁の)フランジ
8 (隣接する床板間の)隙間
11、11' 床板固定金具
12 床構造体
13 上金具
14 下金具
15 ボルト
15a ボルトの頭部
16 平板部
17 下向き突起
18 ボルト挿通穴
19 凹所
21 係合部
22 ボルト結合部
22a ネジ穴
23 中間部
24 (下金具の)コ字形の凹所
p 長穴ピッチ
s (下向き突起の)偏位量
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場の安全通路や作業床、ビル屋上床等として敷き並べられた床板を梁等の梁に固定してなる床構造体、及びこれに用いる床板固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の安全通路や作業床、ビル屋上床等として、図12に示すように、平坦なウエブ部2と前記ウエブ部2の両側から下向き直角に折り曲げたフランジ部3とを持つ断面形状をなし、前記ウエブ部2に床板幅方向(図12で左右方向)をなす長穴5を床板長手方向に間隔をあけて複数設けた床板1が用いられている。隣接する長穴5で挟まれた部分6を桟と呼ぶ。なお、図示例の床板1は、フランジ部3の下端にさらに内向きのリップ部4を形成している。
この床板1を例えば工場作業床等として用いる場合、図13に示すように、梁7上に一般に隙間なく敷き並べ、梁7に固定(固定手段は図示略)して敷設される。
【0003】
この種の床板1を梁7に固定する手段として、従来、種々の床板固定金具が用いられているが、例えば図14〜16に示すような床板固定金具41が用いられている(特許文献1、特許文献2)。この固定金具41は、上金具42と下金具43と両者を係合させるボルト44とからなっている。上金具42は、床板1の1つの長穴5に嵌合する凹部42aとその両側の長穴5に嵌入する側板部42bとを持ち、前記凹部42aの中央にボルト挿通穴42cをあけている。下金具43は、溝形断面の棒材を、水平部43bと垂直部43cとを持つL形に曲げた形状であり、前記ボルト44を螺合させるねじ穴43aを前記水平部43bにあけている。
この固定金具41で床板1を梁7に固定する場合、下金具43を図示例ではH形鋼である梁7のフランジ部7aの端縁の近傍上にある長穴5(5'で示す)に上から挿入する。次いで、上金具42を、その凹部42aの部分が前記長穴5'に嵌合し両側の側板部42bが両側の長穴5に嵌入する態様で、床板1の2つの桟6の上に載せる。次いで、ボルト44の頭部を回して下金具43の向きをボルト44とともに90°変え、かつボルト44を引き上げて、L形の下金具43の水平部43bをフランジ部7aの下面に当てる。次いで、ボルト44をねじ込んでいくと、上金具42と下金具43の水平部43bとで床板1及びフランジ部7aが挟持され、床板1が梁7に固定される。このように、床板1の上面側からの操作のみで、床板1を梁7に固定することができる。また、固定金具41の取り外しも、床板1の上面側からの操作のみで行なうことができる。
【0004】
また、前記L形の下金具43に代えて、図17に示すように、横向きU形の下金具53を用いた床板固定金具51もある(特許文献3参照(但し、図17は特許文献3の図面を分り易いように変更している))。
この場合、横向きU形の下金具53を梁フランジ7aを挟むように配し、下金具53の横向きU形の上辺部分53aにあけたネジ穴53bにボルト54を捻じ込み締付けると、下金具53が引き上げられて、横向きU形の下辺部分53cがフランジ7aの下面に当たり、下金具53の下辺部分53cと上金具52とで床板1及びフランジ部7aが挟持され、床板1が梁7に固定される。なお、この場合、U形の下金具53の幅(紙面と直交する方向の幅)を長穴5の幅より狭くできれば、前記と同様に床板1の上面側からの操作で床板1を梁7に固定することが可能である。
【0005】
床板固定金具として上記以外にも種々のものがあり、例えば、床板1のリップ部4を梁のフランジに固定する構造のもの(特許文献4の図4〜図6)もあるが、この場合、床板の上面側からの操作で床板を梁に固定することはできない。
【0006】
上記のように、床板長手方向に多数の長穴を備えた床板を対象とする床板固定金具で、かつ床板の上面側から操作可能な従来の床板固定金具はいずれも、上金具を床板1の桟6の部分に載せて梁に固定する構造である。
【特許文献1】特開2005−194805の図14〜図16
【特許文献2】意匠登録第1167637号
【特許文献3】実開昭63−186834
【特許文献4】特開平10−140724
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
床板には通常の使用態様では上からの荷重が加わるのみであるから、床板を梁に固定する床板固定金具に要求される固定強度は通常、床板がずれない程度の固定強度で済み、図14〜図16のような構造のもので要求される固定強度は十分確保される。
しかし、床板が例えば100mを越えるような高層建築物の屋上などに設置された場合、床板を持ち上げるような上向きの強い風圧が作用することがあるので、この上向きの風圧に対する固定強度が要求される。
このように上向きの風圧に対する固定強度を要求された場合、図14〜図16のように、床板の桟6の部分を梁7側に押し付けて固定する従来構造では、細く剛性の小さな桟6で風圧を受け持つことになるので、上向きの風圧に対する床板固定強度が不足するという問題がある。
そこで、風圧に対する固定強度を確保するために、梁スパンを短くして床板の梁スパン当たりの風圧荷重を小さくすることで、床板固定部に作用する荷重を小さくしたり、あるいは、床板固定金具を2個用いて固定強度を2倍にする等の対策を施している。
しかし、梁スパンを短くする対策では、梁の材料費・施工費が無用に高くなり、また、必要な床板固定金具の数が増してコストが高くなる。また、床板固定金具を2個用いる対策も当然金具の数が2倍増となりコストが高くなる。
【0008】
また、床板のリップ部4を固定する固定手段では、桟6の部分を固定する固定手段と比べて床板固定強度は高くなるが、前述の通り、床板1の下からの作業が必要となる。
【0009】
本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、床板固定作業を床板の上面側から行うことが可能でありながら、上向きの風圧に対する充分な固定強度を確保することが可能な床構造体、及び、これに用いる床板固定金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1の発明の床構造体は、溝形断面形状をなしその上面のウエブ部に穴を床板長手方向に等ピッチで複数設けた床板を、上面に水平なフランジを持つ梁上に床板幅方向に隙間をあけて並べるとともに、前記梁のフランジ端縁と隙間との交差箇所において、上金具と下金具と両金具を結合させるボルトとからなる床板固定金具により梁に固定したことを特徴とする。
【0011】
請求項2は、請求項1における穴が床板幅方向をなす長穴であることを特徴とする。
【0012】
請求項3は、請求項1又は2の床構造体に用いられる床板固定金具であって、
上金具と下金具と両金具を結合させるボルトとからなり、
前記上金具は、隣接する床板間の前記隙間を跨いで両床板の幅方向端縁部に載る平板部と、この平板部の床板幅方向両端にそれぞれ形成された、床板の前記穴又は長穴端縁に係合可能な下向き突起と、平板部の床板幅方向中央部に形成されたボルト挿通穴とを備え、
前記下金具は、梁の前記フランジの下面に当接して梁に係合可能な係合部と、上金具の前記ボルト挿通穴に上から挿入した前記ボルトが螺合可能なネジ穴を持つボルト結合部とを備えたことを特徴とする
【0013】
請求項4は、請求項3の床板固定金具において、上金具の平板部における前記下向き突起の床板長手方向位置がボルトの床板長手方向位置に対して、床板長手方向に前記穴又は長穴のピッチの2分の1未満の寸法で偏位していることを特徴とする。
【0014】
請求項5は、請求項4の床板固定金具において、下向き突起の偏位量が前記穴又は長穴のピッチの4分の1であることを特徴とする。
【0015】
請求項6は、請求項3〜5の床板固定金具において、
前記下金具は、その係合部とボルト結合部と両者をつなぐ中間部との全体が床板幅方向から見て略コ字形をなしており、その天端に前記ネジ穴が形成されており、この略コ字形の凹所に梁のフランジが入るようになっていることを特徴とする。
【0016】
請求項7は、請求項3〜5の床板固定金具において、下金具が、床板幅方向から見て垂直部と水平部とからなる略L字形をなし、その水平部が係合部とボルト結合部とを兼ねているとともに、この水平部における垂直部近傍位置にボルト結合部としてのネジ穴が形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8の床板固定金具は、請求項3〜7記載の床板固定金具の上金具の平板部に、前記1対の下向き突起とは別に、その下向き突起位置から前記穴又は長穴のピッチだけずれた位置にさらに1対の下向き突起を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の床構造体によれば、隣接する床板間に隙間を設け、前記隙間と梁のフランジ端縁との交差箇所において、床板固定金具により床板を梁に固定するものであり、床板は床板固定金具により、剛性の小さいウエブ中央部分ではなく剛性の大きいフランジの部分(床板の幅方向端縁部)で固定されるので、床板側の剛性不足で上向きの風圧に対する固定強度が不足する問題は生じない。そして、固定金具自体の強度確保は容易なので、床板の上向きの風圧に対する固定強度が確保される床構造体が得られる。
したがって、床板の桟の部分で固定する従来構造と異なり、梁スパンを短くしたり床板固定金具を2個用いる等の対策を取る必要がなく、梁の材料費・施工費が無用に高くなったり、金具の数が増してコストが高くなったりする問題は生じない。
また、床板固定作業を床板の上面側から行うことが可能なので、作業性がきわめて良好である。
【0019】
本発明の床板固定金具で床板を梁に固定する場合、床板固定金具におけるボルトの位置(床板長手方向の位置)すなわち下金具の位置は、下向き突起が嵌入する床板の穴又は長穴(以下では長穴として説明する)の位置によって制約される。
床板固定金具を単にそのままの姿勢で床板長手方向に移動調整する場合、ボルトの位置は、下向き突起が嵌入する長穴の位置(床板長手方向位置)によって決まるので、長穴ピッチ刻みでしか移動調整できない(長穴ピッチより短い距離だけ移動調整することはできない)。この場合、下金具を梁のフランジに対して適切な位置にセットすることができない場合も生じ得る。
しかし、請求項4のように、下金具の平板部における下向き突起の床板長手方向位置がボルトの床板長手方向位置に対して、床板長手方向に長穴ピッチの2分の1未満の寸法で偏位している場合、上金具を反転させることで、長穴ピッチより短い距離の移動調整が可能となる。
すなわち、上金具の姿勢を変えないとすれば、前記の通り下金具は、下向き突起を隣接する長穴に移すことで長穴ピッチ分だけずらすことしかできない。そこで、長穴ピッチより短い距離だけ移動調整したい場合は、上金具を反転させる。そして、反転させた下向き突起を同じ長穴に嵌入させるか、又は、隣接する長穴に移すことで、ボルトの位置すなわち下金具の位置を、長穴ピッチより短い距離だけずらすことが可能となる(すなわち、下金具の位置調整可能距離が短くなる)。このように、ボルトの位置すなわち下金具の位置の微調整が可能となり、これにより下金具を梁のフランジに対して適切な位置にセットすることが可能となる。
請求項5のように、下向き突起の偏位量sを長穴ピッチpの4分の1(p/4)にすると、上金具を反転させる操作、あるいは下向き突起を嵌入させる長穴を隣に移す操作を適宜行うことでp/2きざみで移動調整でき、長穴ピッチ刻みでしか移動調整できな従来構造と比べて半分に短くできる。
また、下金具の位置調整可能距離が長穴ピッチであると、梁のフランジに係合する係合部の長さを充分長く取る必要があるが、位置調整可能距離を長穴ピッチより短くできるので、係合部の長さを極力短くすることができ、したがって、材料費節約、重量軽減が図られる。
【0020】
請求項6の床板固定金具によれば、下金具は、所定形状に打ち抜いた鋼板を折曲加工することで、ネジ穴を設けるボルト結合部及び梁フランジとの係合部を容易に形成することができ、また、剛性の高い下金具を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の床構造体及びこれに用いる床板固定金具の実施例を、図1〜図12参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
図1(イ)は本発明の一実施例の床板固定金具11の斜視図、図2は床板固定金具11の平面図、図3は図2のA−A断面図、図4は図2のB−B断面図、図5は図1の床板固定金具11を用いた本発明の一実施例の床構造体12の一部の外観を示す斜視図、図6は図5の床構造体12における床板固定部の詳細構造を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のC−C断面図、図7は図6(イ)のE−E断面図である。
【0023】
この実施例で対象とする床板1は、前述の図12で説明した床板であり、再度説明すると、平坦なウエブ部2と前記ウエブ部2の両側から下向き直角に折り曲げたフランジ部3と前記フランジ部3の下端から内向きに折り曲げたリップ部4とを持つ断面形状をなし、前記ウエブ部2に床板幅方向(図12で左右方向)をなす長穴5を床板長手方向に間隔をあけて複数設けた構造である。隣接する長穴5で挟まれた部分6を桟と呼ぶ。
【0024】
この実施例の床構造体12は、前記床板1をH形鋼による梁7上に床板幅方向に隙間8をあけて並べるとともに、梁7のフランジ端縁と隙間8との交差箇所において、実施例のような床板固定金具11で梁7に固定している。
【0025】
前記床板固定金具11の詳細構造を説明すると、この床板固定金具11は、上金具13と下金具14と両金具を結合させるボルト15とからなっている。
前記上金具13は、隣接する床板1間の前記隙間8を跨いで両床板1の幅方向端縁部に載る平板部16と、この平板部16の床板幅方向両端にそれぞれ形成された、床板1の長穴端縁に係合可能な1対の下向き突起17と、平板部16の床板幅方向中央部に形成されたボルト挿通穴18とを備えている。
前記下向き突起17の床板長手方向位置は、ボルト15の床板長手方向位置に対して、床板長手方向に長穴ピッチの2分の1未満の寸法で偏位している(図示例は長穴ピッチの4分の1(p/4)で偏位している)。
また、ボルト挿通穴18の部分は、ボルト15の頭部15aが平板部16の上面から突出しないように凹所19としている。20はワッシャである。
【0026】
前記下金具14は、梁7のフランジ7aの下面に当接することで梁7に係合可能な係合部21と、上金具13の前記ボルト挿通穴18に上から挿入したボルト15が螺合可能なネジ穴22aを天端に持つボルト結合部22とを備えている。この実施例の下金具14は、所定形状に打ち抜いた鋼板を床板長手方向から見て細長い下向きコ字形(図4で下向きコ字形)に折曲加工したものである。また、係合部21とボルト結合部22と両者をつなぐ中間部23との全体が床板幅方向から見て略コ字形(図3で略コ字形)をなしており、この略コ字形の凹所24に梁7のフランジ7aが入るようになっている。なお、下金具14の側面には図1(イ)、(ロ)に示すように、補強用凹み部14aを形成している。なお、図1以外では補強用凹み部14aの図示を省略している。
【0027】
上記の床構造体12を構成する要領について説明する。床板1は、従来の一般的な敷設方法と異なり、梁7上に隙間8をあけて並べる。床板固定金具11の上金具13と下金具14とはボルト15で図1等に示すように結合しておく。その状態で、下金具14を床板1の上面側から隙間8に挿入し梁7側に移動(図6で左方に移動)させて、そのコ字形の凹所24を梁7のフランジ7aに嵌合させるとともに、上金具13の1対の下向き突起17を適切な長穴5に嵌入させる。次いで、下金具14のネジ穴22aに螺合しているボルト15を締め付けていくと、下金具14がボルト締め付けに伴って引き上げられ、係合部21が梁7のフランジ7aの下面に当接し、ボルト15を強く締め付けると、隣接する2つの床板1が同時に梁7に固定される。
なお、下金具14の幅寸法を敷き並べる床板1間の隙間寸法に設定すると、床板1を下金具14に当てながら敷き並べていけば、自動的に適切な隙間間隔に位置決めされるので、床板1を敷き並べる作業の作業性は良好である。
【0028】
上記の床構造体12において、床板1は床板固定金具11により床板幅方向両端部で、すなわち、剛性の小さい桟6の部分ではなく剛性の大きいフランジ3の部分で固定されるので、床板側の剛性不足で上向きの風圧に対する固定強度が不足する問題は生じない。そして、固定金具11自体の強度確保は容易なので、床板1の上向きの風圧に対する固定強度が確保される床構造体12が得られる。
したがって、床板1の桟6の部分で固定する従来構造と異なり、梁スパンを短くしたり床板固定金具を2個用いる等の対策を取る必要がなく、梁の材料費・施工費が無用に高くなったり、金具の数が増してコストが高くなったりする問題は生じない。
また、床板固定作業を床板の上面側から行うことが可能なので、作業性がきわめて良好である。
【0029】
上記床板固定金具11で床板1を梁7に固定する場合、床板固定金具11におけるボルト15の位置(床板長手方向の位置)すなわち下金具14の位置は、下向き突起17が嵌入する床板1の長穴5の位置によって制約される。
床板固定金具11を単にそのままの姿勢で床板長手方向に移動調整した場合、ボルト15の位置は、下向き突起17が嵌入する長穴5の位置(床板長手方向位置)によって決まるので、長穴ピッチp刻みでしか移動調整できない(長穴ピッチpより短い距離だけ移動調整することはできない)。
しかし、上記床板固定金具11のように、上金型13における平板部16の下向き突起17の床板長手方向位置が、ボルト15の床板長手方向位置に対して、床板長手方向に長穴ピッチpの2分の1(p/2)未満の寸法で偏位している場合、上金具13を反転させることで、長穴ピッチより短い距離の移動調整が可能となる。
すなわち、上金具13の姿勢を変えないとすれば、前記の通り下金具14は、下向き突起17を隣接する長穴に移すことで長穴ピッチpだけずらすことしかできない。
そこで、長穴ピッチpより短い距離だけ移動調整したい場合は、上金具13を反転させる。その場合の要領を説明すると、例えば図8に示すように、梁7のフランジ7aが下金具14の凹所24に深く入らずに、係合部21がフランジ7aに僅かしか当接しない場合(A部)、フランジ7aが下金具14の凹所24の奥に入るようにする必要がある。そこで、ボルト15を緩め上金具13を持ち上げて下向き突起17を長穴5から外し、そのままの姿勢で下向き突起17を図8で左隣りの長穴5’に嵌入するように移動させたとする。すると、図示例のものでは図9に2点鎖線で示すように、梁フランジ7aが下金具14の凹所24の奥に当たってしまうので、単にそのままの姿勢でフランジ7a側に移動させることはできない。そこで、図10に示すように、上金具13を180°反転させるとともに、下向き突起17をこの例では左隣りの長穴5’に嵌入させると、フランジ7aが下金具14の凹所24の奥側に位置することになり、こうして、下金具14を梁7のフランジ7aに対して適切な位置にセットすることが可能となる。
下金具14とフランジ7aとの相対位置関係によっては、同じく上金具13を180°反転させるが下向き突起17は同じ長穴5に嵌入させることで、下金具14をフランジ7aに対して適切な位置にセットさせることが可能になる場合もある。
下向き突起17の偏位量をsとすると、上金具13を反転させることで、ボルト15及び下金具14の位置を2sだけ(下向き突起17が同じ長穴の場合)、あるいは[p−2s]だけ(下向き突起17を隣の長穴に移した場合)移動させることができる。したがって、偏位量sが長穴ピッチpの半分(p/2)であれば、長穴ピッチpだけずらす場合と差異はないが、p/2未満の偏位量であれば長穴ピッチpだけずらす場合と異なる移動調整が可能となる。
【0030】
なお、偏位量sは、長穴ピッチpの4分の1(p/4)にするのが最も適切であり、その時、位置調整可能距離は長穴ピッチpの半分(p/2)となる。すなわち、下向き突起17を偏位させない場合の位置調整可能距離は長穴ピッチpであるから、調整距離を半分に小さくできる。なお、偏位量sがp/4の場合、上金具を反転させる操作と下向き突起を嵌入させる長穴を隣に移す操作とを適宜行うことでp/2きざみで移動調整できるが、偏位量sがp/4と異なる場合は、同様な操作をしても、移動量がp/2より小さいか大きいかであり不揃いなので、p/2刻みで移動調整可能である場合と比べて、調整性能として良好ではない。
【0031】
上記のように、ボルト15及び下金具14の位置調整可能距離が短くなるので、梁のフランジに係合する係合部21の長さを、位置調整可能距離が長穴ピッチpである従来のものと比べて充分短くすることができ、したがって、金具の材料費節約、重量軽減が図られる。
【実施例2】
【0032】
上記実施例の床板固定金具11では、上金具13の平板部16の下向き突起17を1対設けたが、図11に示した床板固定金具11’のように2対設けることもできる。すなわち、上記実施例における1対の下向き突起17に加えて、その隣の長穴5’に嵌入する1対の下向き突起17’を設けることもできる。この場合の追加の下向き突起17’は、位置調整可能距離に関して影響はないが、床板1との係合強度が高くなり、また、平板部16’を広くすることで上金具の強度が高くなる。
【実施例3】
【0033】
本発明の床板固定金具における下金具は、上記実施例の下金具14のような構造のものに限らず、種々の構造のものを用いることができる。
例えば、図15の下金具43のようなL字形の下金具を用いることができる。すなわち、図示は省略するが、床板幅方向から見て垂直部と水平部とからなる略L字形をなし、その水平部が係合部とボルト結合部とを兼ねているとともに、この水平部における垂直部近傍位置にボルト結合部としてのネジ穴が形成されている構造の下金具を用いることができる。
【実施例4】
【0034】
また、下金具として、図17の下金具53のようなU字形の下金具を用いることができる。すなわち、図示は省略するが、床板幅方向から見て横向きU字形をなし、その上辺部分にネジ穴を形成してボルト結合部とし、下辺部分を梁のフランジ下面に係合する係合部として、ボルトを締め付けたときに、下金具の下辺部分と上金具とで床板1及びフランジ部7aを挟持することで、床板1を梁7に固定する構造の下金具を用いることができる。
【実施例5】
【0035】
上記の実施例では、上金具13の平板部16に設ける1対の下向き突起17の位置を、ボルト15の位置に対して床板長手方向に偏位させたが、偏位させずにボルト15の位置と一致させてもよい。この場合、ボルト及び下金具の位置の調整は長穴ピッチp刻みとなる。
【0036】
上述の実施例で対象とする床板1は、溝形断面形状におけるフランジ部3の先端に内向きのリップ部4を形成したリップ付き溝形断面形状であるが、リップ部のない単なる溝形断面形状のものにも適用できる。
【0037】
実施例で用いた床板1は図12の通り、ウェブ部2に床板幅方向に延びる長穴5を設けた構成であるが、この長穴5に代えて、床板幅方向に間隔をあけて複数の円形や楕円形等の穴を設けた床板を用いることができる。この場合、上金具13の下向き突起17は、長穴にではなく複数の穴のうちフランジに最も近い穴に嵌入する。
なお、穴に代えて、床板幅方向に延びる細長い窪み、あるいは、床板幅方向に間隔をあけて複数の円形や楕円形等の窪みを設けた床板を用いることもできる。この場合、上金具13の下向き突起17は、穴にではなく、細長い窪みに、あるいは、複数の窪みのうちフランジに最も近い窪みに嵌入させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例の床板固定金具を示すもので、(イ)は斜視図、(ロ)はその下金具の中間で切断した水平断面図である。
【図2】上記床板固定金具の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】図1の床板固定金具を用いた本発明の一実施例の床構造体の一部の外観を示す斜視図である。
【図6】図5の床構造体における床板固定部の詳細構造を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のC−C断面図である。
【図7】図6(イ)のE−E断面図である。
【図8】梁フランジに対する床板固定金具の下金具の係合が不十分である場合の相対位置関係を説明する図であり、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のF−F断面図である。
【図9】図8の相対位置関係から床板固定金具を長穴ピッチ分だけずらそうとすると梁フランジに干渉することを説明する図であり、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のG−G断面図である。
【図10】図8の相対位置関係から上金具を180°反転させることで、床板固定金具の下金具を梁のフランジに対して適切な位置にセットできることを説明する図である、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のH−H断面図である。
【図11】下向き突起を2対設けた上金具の変形例を示すもので、ボルト及び下金具と梁フランジとの相対位置関係は図6と同じである。(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のI−I断面図である。
【図12】実施例で用いている床板の斜視図である。
【図13】図12の床板を用いた従来の一般的な床構造体の斜視図である。
【図14】従来の床板固定金具を用いた床構造体における床板固定部の詳細構造を示す平面図である。
【図15】図14のJ−J断面図である。
【図16】図14ないし図15の床板固定部を下から見た斜視図である。
【図17】従来の他の床板固定金具を示すもので、床板固定部の断面図である
【符号の説明】
【0039】
1 床板
2 ウエブ部
3 フランジ部
4 リップ部
5 (床板の)長穴
6 (床板の)桟
7 梁
7a (梁の)フランジ
8 (隣接する床板間の)隙間
11、11' 床板固定金具
12 床構造体
13 上金具
14 下金具
15 ボルト
15a ボルトの頭部
16 平板部
17 下向き突起
18 ボルト挿通穴
19 凹所
21 係合部
22 ボルト結合部
22a ネジ穴
23 中間部
24 (下金具の)コ字形の凹所
p 長穴ピッチ
s (下向き突起の)偏位量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝形断面形状をなしその上面のウエブ部に穴を床板長手方向に等ピッチで複数設けた床板を、上面に水平なフランジを持つ梁上に床板幅方向に隙間をあけて並べるとともに、前記梁のフランジ端縁と隙間との交差箇所において、上金具と下金具と両金具を結合させるボルトとからなる床板固定金具により梁に固定したことを特徴とする床構造体。
【請求項2】
前記穴が床板幅方向をなす長穴であることを特徴とする請求項1記載の床構造体。
【請求項3】
請求項1又は2の床構造体に用いられる床板固定金具であって、
上金具と下金具と両金具を結合させるボルトとからなり、
前記上金具は、隣接する床板間の前記隙間を跨いで両床板の幅方向端縁部に載る平板部と、この平板部の床板幅方向両端にそれぞれ形成された、床板の前記穴又は長穴端縁に係合可能な下向き突起と、平板部の床板幅方向中央部に形成されたボルト挿通穴とを備え、
前記下金具は、梁の前記フランジの下面に当接して梁に係合可能な係合部と、上金具の前記ボルト挿通穴に上から挿入した前記ボルトが螺合可能なネジ穴を持つボルト結合部とを備えたことを特徴とする床板固定金具。
【請求項4】
上金具の平板部における前記下向き突起の床板長手方向位置がボルトの床板長手方向位置に対して、床板長手方向に前記穴又は長穴のピッチの2分の1未満の寸法で偏位していることを特徴とする請求項3記載の床板固定金具。
【請求項5】
下向き突起の前記偏位量が前記穴又は長穴のピッチの4分の1であることを特徴とする請求項4記載の床板固定金具。
【請求項6】
前記下金具は、その係合部とボルト結合部と両者をつなぐ中間部との全体が床板幅方向から見て略コ字形をなしており、その天端に前記ネジ穴が形成されており、この略コ字形の凹所に梁のフランジが入るようになっていることを特徴とする請求項3〜5記載の床板固定金具。
【請求項7】
前記下金具が、床板幅方向から見て垂直部と水平部とからなる略L字形をなし、その水平部が係合部とボルト結合部とを兼ねているとともに、この水平部における垂直部近傍位置にボルト結合部としてのネジ穴が形成されていることを特徴とする請求項3〜5記載の床板固定金具。
【請求項8】
請求項3〜7記載の床板固定金具の上金具の平板部に、前記1対の下向き突起とは別に、その下向き突起位置から前記穴又は長穴のピッチだけずれた位置にさらに1対の下向き突起を設けたことを特徴とする床板固定金具。
【請求項1】
溝形断面形状をなしその上面のウエブ部に穴を床板長手方向に等ピッチで複数設けた床板を、上面に水平なフランジを持つ梁上に床板幅方向に隙間をあけて並べるとともに、前記梁のフランジ端縁と隙間との交差箇所において、上金具と下金具と両金具を結合させるボルトとからなる床板固定金具により梁に固定したことを特徴とする床構造体。
【請求項2】
前記穴が床板幅方向をなす長穴であることを特徴とする請求項1記載の床構造体。
【請求項3】
請求項1又は2の床構造体に用いられる床板固定金具であって、
上金具と下金具と両金具を結合させるボルトとからなり、
前記上金具は、隣接する床板間の前記隙間を跨いで両床板の幅方向端縁部に載る平板部と、この平板部の床板幅方向両端にそれぞれ形成された、床板の前記穴又は長穴端縁に係合可能な下向き突起と、平板部の床板幅方向中央部に形成されたボルト挿通穴とを備え、
前記下金具は、梁の前記フランジの下面に当接して梁に係合可能な係合部と、上金具の前記ボルト挿通穴に上から挿入した前記ボルトが螺合可能なネジ穴を持つボルト結合部とを備えたことを特徴とする床板固定金具。
【請求項4】
上金具の平板部における前記下向き突起の床板長手方向位置がボルトの床板長手方向位置に対して、床板長手方向に前記穴又は長穴のピッチの2分の1未満の寸法で偏位していることを特徴とする請求項3記載の床板固定金具。
【請求項5】
下向き突起の前記偏位量が前記穴又は長穴のピッチの4分の1であることを特徴とする請求項4記載の床板固定金具。
【請求項6】
前記下金具は、その係合部とボルト結合部と両者をつなぐ中間部との全体が床板幅方向から見て略コ字形をなしており、その天端に前記ネジ穴が形成されており、この略コ字形の凹所に梁のフランジが入るようになっていることを特徴とする請求項3〜5記載の床板固定金具。
【請求項7】
前記下金具が、床板幅方向から見て垂直部と水平部とからなる略L字形をなし、その水平部が係合部とボルト結合部とを兼ねているとともに、この水平部における垂直部近傍位置にボルト結合部としてのネジ穴が形成されていることを特徴とする請求項3〜5記載の床板固定金具。
【請求項8】
請求項3〜7記載の床板固定金具の上金具の平板部に、前記1対の下向き突起とは別に、その下向き突起位置から前記穴又は長穴のピッチだけずれた位置にさらに1対の下向き突起を設けたことを特徴とする床板固定金具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−144553(P2008−144553A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336158(P2006−336158)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【出願人】(595027099)株式会社ニッケンビルド (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【出願人】(595027099)株式会社ニッケンビルド (22)
【Fターム(参考)】
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