説明

床用伸縮継手装置

【課題】 隣合う2つの構造物の各躯体が相対的変位しても各躯体間の空隙を塞いだ状態に維持することができ、かつ任意の第2方向寸法でパネルを容易に構築することができる床用伸縮継手装置を提供する。
【解決手段】 床用伸縮継手装置10は、第1縁材13と、第2縁材14と、組立パネル体16とを含んで構成される。組立パネル体16は、複数の連結パネル部材18を有し、連結パネル部材18は、中間基部19と、嵌合凸部21および嵌合凹部22とを有する。中間基部19は、第1方向Xに延びて形成される。中間基部には、補強部が設けられる。嵌合凸部21および嵌合凹部22は、相互に嵌合可能である。また嵌合凸部21および嵌合凹部22は、中間基部19に連なって設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物と道路などの隣合う2つの構造物の各躯体間に目地空間として存在する空隙を塞いだ状態に維持する床用伸縮継手装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の典型的な従来技術は、たとえば特許文献1にアルミニウム製中空パネル連結装置として開示されている。この従来技術では、相互に嵌合可能な嵌合構造を有する嵌合凸部と嵌合凹部とが、中空の基部の水平方向両側部にそれぞれ設けられる複数のパネル部材が提案されている。
【0003】
嵌合凸部は、前記基部の水平方向一側部から突出し、一対の第1の接続脚を有する。各第1の接続脚は、先端部に係止爪が形成される。
【0004】
嵌合凹部は、前記基部の水平方向他側部から突出し、一対の第2の接続脚と、係止突起とを有する。一対の第2の接続脚は、前記第1の接続脚よりも厚み方向の外側で、前記基部から水平方向他側に突出する。係止突起は、各第2の接続脚の基端部から、基部の厚み方向の内側に向けて突出する。
【0005】
隣接する2つのパネル部材が互いに嵌合するときには、嵌合凸部が嵌合凹部に嵌合した状態で、第1の接続脚の先端部に設けられる各係止爪が、隣接するパネル部材の第2の接続脚の基端部に形成される各係止突起に内側から係合して係止される。これによって、複数のパネル部材が水平方向に平行に整列した状態で、隣接する嵌合凸部と嵌合凹部とが互いに嵌合し、抜け止めされた状態となり、水平方向に所定の長さを有する平坦なパネル本体を構築する。
【0006】
このような従来技術に類似する他の従来技術は、たとえば特許文献2に開示されている。この従来技術では、パネル部材を水平方向に連結した状態で、互いに嵌合した嵌合凸部と嵌合凹部との間のがたつきを防止するために、第1の接続脚の先端部に設けられる係止爪には、水平方向に垂直または水平方向に対して垂直に近い角度を成す係止面を形成し、第2の接続脚の基端部に設けられる係止突起には、水平方向に垂直または水平方向に対して垂直に近い角度を成す急斜面が形成される。
【0007】
前記係止爪における係止面は、およそ水平方向一方に臨み、係止突起に形成される急斜面は、およそ水平方向他方に臨み、急斜面と係止面とは、互いに対向する。これによって、この従来技術では、嵌合状態のがたつきを防止し、パネル部材の縦方向および横方向の動きを完全に阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭61−2141号公報
【特許文献2】実公平2−4171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1,2に記載される各従来技術では、パネルの第1方向である縦方向、および第2方向である横方向の動きは完全に阻止され、パネルは緊結されるので、たとえば地震などによって2つの建物が互いに相対変位し、各躯体間の空隙の水平方向に平行な方向の寸法が変化した場合に、床用伸縮継手が破損する危険を低減することができないという問題点がある。
【0010】
またパネルは、車両などの大きな荷重を負荷することができる大きな強度を有していないので、前記車両などの大きな荷重を負荷すると、変形または破壊されてしまうため、大きな荷重を負荷することができないという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、任意の幅方向の寸法でパネルを容易に構築することができ、かつ強度と施工性の向上を図ることができる床用伸縮継手装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、空隙をあけて水平な第1方向に隣合う2つの構造物の互いに対向する各躯体の一方に固定され、前記第1方向に水平面上で垂直な第2方向に延びて設けられる第1縁材と、
前記各躯体の他方に、前記第1縁材と平行に固定され、前記第2方向に延びて設けられる第2縁材と、
前記第1方向一端部が、前記第1縁材に対して、前記第2方向に移動自在に係止され、前記第1方向他端部が、前記第2縁材に対して前記第1方向に移動自在に支持される組立パネル体であって、前記第1および第2縁材間にわたって前記第1方向に延びて形成される中間基部と、前記中間基部の前記第2方向一端部に一体的に形成される嵌合凸部と、中間基部の前記第2方向他端部に一体的に形成される嵌合凹部と、前記中間基部から立ち上がり、前記第1方向に延びる補強部とを有し、一方の連結パネル部材の嵌合凹部と隣接する他方の連結パネル部材の嵌合凸部とが嵌合して連結される複数の連結パネル部材によって構成される組立パネル体とを含むことを特徴とする床用伸縮継手装置である。
【0013】
また本発明は、前記組立パネル体は、前記中間基部の第2方向の寸法が他の連結パネル部材と異なる連結部材を有することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記組立パネル体の前記第1方向他端部には、前記第2方向に平行な回転軸線周りに角変位可能なヒンジ片を有するヒンジ部が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、組立パネル体は、複数の連結パネル部材を有し、連結パネル部材は、中間基部と、嵌合凸部および嵌合凹部とを有し、補強部が形成される。中間基部は、第1方向である水平方向に延びて形成される。嵌合凸部および嵌合凹部は、相互に嵌合可能である。また嵌合凸部および嵌合凹部は、中間基部に連なって形成される。
【0016】
このような構成によって、地震などによって2つの構造物が互いに相対変位し、各躯体間の空隙の水平方向に沿う第1方向の寸法が変化しても、各躯体の相対変位を許容しながら、組立パネル体による各躯体間の連結を維持することができる。したがって、組立パネル体が破損することを防止することができる。
【0017】
また連結パネル部材の個数を変更することで、幅方向に沿う第2方向の寸法が異なる組立パネル体とすることができる。さらに組立パネル体を1つの部材によって形成する場合に比べて、組立パネル体の搬入を容易にすることができる。
【0018】
また連結パネル部材には、補強部が形成されるので、連結パネル部材の補強部が形成される側表面にセメントモルタルなどを介して化粧材を取付ける場合に、補強部を抜け止め片として使用することができ、連結パネル部材とセメントモルタルとの付着強度を向上することができる。これによって、セメントモルタルの剥離割れを防ぐことができる。
【0019】
また本発明によれば、組立パネル体は、複数種類の連結パネル部材を有し、複数種類の連結パネル部材は、中間基部の第2方向の寸法が互いに異なる。これによって、任意の第2方向の寸法の組立パネルを容易に構築することができる。
【0020】
また本発明によれば、組立パネル体の第一方向他端部には、第2方向に平行な回転軸線周りに角変位可能なヒンジ片を有するヒンジ部が設けられる。これによって、ヒンジ片を角変位させて、組立パネル体の表面と躯体床面との間に生じる段差を塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る床用伸縮継手装置10の第2方向Yに垂直な断面図である。
【図2】本発明に係る床用伸縮継手装置10の第1方向Xに垂直な断面図である。
【図3】本発明に係る床用伸縮継手装置10の平面図である。
【図4】本実施形態における第1縁材13を第2方向Yに垂直な仮想平面で切断して見た断面図である。
【図5】本実施形態における第2縁材14を第2方向Yに垂直な仮想平面で切断して見た断面図である。
【図6】本実施形態における組立パネル体16の第1方向他方X2の端部の、第2方向Yに垂直な断面図である。
【図7】連結パネル部材18の断面図である。
【図8】本実施形態における嵌合凸部21および嵌合凹部22の断面図である。
【図9】本実施形態における組立パネル体16の第2向他方Y2の端部の断面図である。
【図10】パネル部材80の他の形態であるパネル部材90の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明に係る床用伸縮継手装置10の第2方向Yに垂直な断面図である。図2は、本発明に係る床用伸縮継手装置10の第1方向Xに垂直な断面図である。図3は、本発明に係る床用伸縮継手装置10の平面図である。図1は、図3に示す、第2方向Yに垂直な切断面線S1−S1で床用伸縮継手装置10を切断して見た断面図であり、図2は、図3に示す、第1方向Xに垂直な切断面線S2−S2で床用伸縮継手装置10を切断して見た断面図である。
【0023】
床用伸縮継手装置10は、建物と建物、または建物と道路など、隣り合う2つの構造物の各躯体11,12間に目地空間などとして存在する空隙を塞いだ状態で維持する。本実施形態において、各躯体11,12は、たとえばコンクリート構造体からなる。各躯体11,12は、数十センチメートル(centimeters, 略号「cm」)〜1メートル(meter, 略号「m」)程度離れており、躯体11と躯体12との間には空隙が存在する。躯体11,12は、空隙に臨んで配置され、2つの躯体11,12のうち一方の躯体11と他方の躯体12とは、空隙を挟んで対向している。
【0024】
以下の説明において、対向する2つの躯体11,12を結ぶ水平な直線に沿う方向を「第1方向X」と称し、前記第1方向Xに水平面上で垂直な方向を「第2方向Y」と称する。また第1方向Xのうち、他方の躯体12から一方の躯体11に向かう向きを「第1方向一方X1」と称し、第1方向Xのうち第1方向一方X1とは反対の向きを「第1方向他方X2」と称する。また第2方向Yのうち、図1において手前側から奥側に向かう向きを「第2方向一方Y1」と称し、第2方向Yのうち第2方向一方Y1とは反対の向きを「第2方向他方Y2」と称する。
【0025】
これら各躯体11,12間の空隙には、床用伸縮継手装置10が架け渡され、2つの構造物間の通路を構成する。
【0026】
床用伸縮継手装置10は、第1縁材13と、第2縁材14と、組立パネル体16とを含んで構成される。第1縁材13は、各躯体11,12の一方に固定され、前記第2方向Yに延びて設けられる。第2縁材14は、各躯体11,12の他方に、第1縁材13と平行に固定され、第2方向Yに延びて設けられる。
【0027】
組立パネル体16は、第1および第2縁材13,14間にわたる第1方向一方X1側端部が、第1縁材13に対して、第2方向Yに移動自在に係止され、前記第1方向他方X2側端部が、第2縁材14上で、第2縁材14に対して、第1方向Xに移動自在に、第2縁材14に支持される。
【0028】
組立パネル体16は、複数の連結パネル部材18を有する。各連結パネル部材18は、中間基部19と、嵌合凸部21および嵌合凹部22とを有する。中間基部19は、第1方向Xに延びて形成される。嵌合凸部21および嵌合凹部22は、相互に嵌合可能である。嵌合凸部21は、中間基部19の第2方向Y2側に連なって形成される。嵌合凹部22は、中間基部19の第2方向Y1側に連なって形成される。
【0029】
各連結パネル部材18には、中間基部19から上方Z1に立ち上がる断面逆L字状の第1補強部分20a、および断面T字状の第2補強部分20bが補強部としてそれぞれ形成される。各連結パネル部材18には、前記第1および第2補強部分20a,20bを側壁とする凹状の収容空間が形成される。この収容空間には、セメントモルタル等が充填される。第1および第2補強部分20a,20bの具体的構成については、後述する。
【0030】
組立パネル体16の上面には、セメントモルタル等を介して、石材、タイル、レンガなどの化粧材9が設けられる。
【0031】
組立パネル体16に含まれる各連結パネル部材18は、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金などの押出し成形材によって実現される。各連結パネル部材16は、その長手方向が第2方向Yに一致するように配置される。複数の連結パネル部材18は、第2方向Yに並んで配置され、第2方向Yに関して隣合う2つの連結パネル部材18は、互いに連結されている。各連結パネル部材18の嵌合凸部21および嵌合凹部22は、連結パネル部材18の第1方向Xの長さ全体にわたって形成され、嵌合凸部21および嵌合凹部22の第1方向Xに垂直な断面形状は、第1方向Xの長さ全体にわたって一様に形成される。
【0032】
各連結パネル部材18の嵌合凸部21は、中間基部19よりも第2方向Yのいずれの側に向けられてもよいけれども、1つの組立パネル体16に含まれる全ての連結パネル部材18において各嵌合凸部21は、各中間基部19よりも第2方向Y同じ側に向けられる。本実施形態では、各嵌合凸部21は各中間基部19よりも第2方向一方Y1に向けて配置される。したがって、各嵌合凹部22は、各中間基部19よりも第2方向他方Y2に向けて配置される。
【0033】
組立パネル体16は、複数種類の連結パネル部材18を有し、複数種類の連結パネル部材18は、中間基部19の第2方向Yの寸法が互いに異なる。連結パネル部材18の第1方向Xの寸法は、いずれも同じ寸法に設定され、空隙の長さLよりも長く、たとえば1250ミリメートル(millimeters, 略号「mm」)に設定される。連結パネル部材18のうち嵌合凸部21および嵌合凹部22は、いずれの連結パネル部材18においても同じ形状および同じ寸法に形成される。また連結パネル部材18は、中空の部材として形成され、中間基部19の内方には内部空間が形成される。隣接する連結パネル部材18は、嵌合凸部21および嵌合凹部22が互いに嵌合することによって、一体的に連結される。
【0034】
第1縁材13および第2縁材14は、一方および他方のいずれの躯体に設けられてもよい。本実施形態では、第1縁材13は一方の躯体11に、第2縁材14は他方の躯体12に、それぞれ溶接アンカー26によって締結されて設けられる。第1縁材13は、一方の躯体11のうち、第1方向他方X2の端部近傍に設けられる。これに対し第2縁材14は、他方の躯体12のうち、第1方向一方X1の端部から第1方向他方X2に数十cm奥まった位置に設けられる。
【0035】
他方の躯体12の表面部には、第1方向一方X1側の端部から第2縁材14にわたって延びる断面略L字状の下地材27が溶接アンカー26によって支持された状態で、第2方向Yに間隔を空けて複数設けられる。また他方の躯体12の第1方向一方X1側の端部には、第2方向Yに延びる断面略L字状の見切り材28が設けられる。下地材27および見切り材28は、溶接アンカー26によって躯体12に支持されて固定され、またその周囲には、セメントモルタルが充填される。
【0036】
各下地材27の上方Z1に臨む表面部には、第2方向Yに延びる板状の下地材29が設けられる。下地材29は、ねじ部材15によって各下地材27に締結される。下地材27、見切り材28および下地材29によって、躯体12の上部には、水平な載置面部31を有する載置部23が形成され、この載置面部31に床用伸縮継手装置10が設けられる。
【0037】
地震などによって各躯体11,12間の離隔距離Lが拡大し、組立パネル体16の第1方向他方X2の端部が第2縁材14よりも第1方向一方X1に移動した場合にも、組立パネル体16は、載置面部31によって支持される。これによって、組立パネル体16の第1方向他方X2の端部の高さ方向の位置は、各躯体11,12間の離隔距離Lに関わらず、組立パネル体16の第1方向他方X2の端部が第2縁材14上に位置しているときの高さ方向の位置と同じに保たれる。
【0038】
図4は、本実施形態における第1縁材13を第2方向Yに垂直な仮想平面で切断して見た断面図である。図4には、組立パネル16の第1方向一方X1の端部も合わせて示している。
【0039】
第1縁材13は、縁材本体35と、断面略逆J字状の案内部材36と、板状の蓋部材37とを含む。縁材本体35は、縁材本体35から下方Z2に突出して連なり、第2方向Yに延びる脚部分40a,40b,40c,40dと、縁材本体35から第1方向一方X1に突出して連なり、第2方向Yに延びる係合部分41と、縁材本体35から第1方向他方X2に突出して連なり、第2方向Yに延びる断面略L字状の第1案内部材支持部分42と、第1案内部材支持部分42よりも上方Z1で、縁材本体35から第1方向他方X2に突出して連なり、第2方向Yに延びる第2案内部材支持部分43とを有する。
【0040】
躯体11は、設置凹所8を有する。設置凹所8には、係合部材38が設けられる。係合部材38は、断面略L字状の本体部分47と、板状の係合片部分48とを有する。係合部材38は、短尺の部材であり、第2方向一方Y1に間隔を空けて複数設けられる。係合部材38は、溶接アンカー26に固定され、設置凹所8に設けられる。
【0041】
第1縁材13は、係合部材38の係合片48に係合部分41を係合させることによって、躯体11の設置凹所8に取付けられる。これによって係合部分41は、縁材本体35の第1方向他方X1への移動を制限する。このように、第1縁材13が係合部材38に係合した状態で、設置凹所8にはセメントモルタルが充填される。第1縁材13の脚部分40a,40b,40c,40dは、セメントモルタルに埋設される。したがって、脚部分40a〜40dは、アンカーとして機能し、第1縁材13が、設置凹所8から離脱することを防止する。
【0042】
第1案内部材支持部分42は、案内部材36の案内溝部分45を支持する。第2案内部材支持部分43は、案内部材36の平板部分を支持する。また第2案内部材支持部分43には、下方Z2に向けて挿通するねじ孔が形成される。
【0043】
案内部材36は、本体部分44と、案内溝部分45と、固定部分46とを含む。案内溝部分45は、本体部分44から第1方向他方X2に突出して連なり、上方に向けて湾曲して形成される。固定部分46は、案内溝部分45の上方で本体部分44に連なり、板状に形成される。固定部分46には、下方Z2に挿通するねじ孔が形成される。案内部材36は、案内溝部分45に後述する係合片71を嵌り込ませることによって、組立パネル体16を第2方向Yに関して摺動可能に支持する。
【0044】
蓋部材37は、板状に形成され、ねじ部材15などによって固定部分46を介して第2案内部材支持部分43に固定される。蓋部材37の表面部は、躯体11の床面と連続するように設けられ、躯体11の床面に連続する床面となる。蓋部材37の表面部と組立パネル体16上の化粧材9の表面部とは、一平面内に配置される。
【0045】
図4に示すように、組立パネル体16の第1方向一方X1の端部には、係合片71を有する係合部材70がねじ部材15によって取付けられる。組立パネル体16は、案内溝部分45に前記係合片71を係合することによって、第1縁材13に第2方向Yに関して摺動可能に支持される。係合部材70には、第1縁材13に臨んで開放する水抜き孔72が第2方向Yに関して、間隔を空けて複数形成される。
【0046】
図5は、本実施形態における第2縁材14を第2方向Yに垂直な仮想平面で切断して見た断面図である。図5には、組立パネル体16の第1方向他方X2の端部も合わせて示している。組立パネル体16の第1方向他方X2の端部には、組立パネル体16の第2方向Yの長さ全体にわたってヒンジ部材50および補助カバー体51が設けられる。
【0047】
補助カバー体51は、ヒンジ部材50を介して連結パネル部材18に接続されており、連結パネル部材18に対して角変位可能に設けられる。補助カバー体51は、ヒンジ片52を有し、ヒンジ片52およびヒンジ部材50は、第2方向Yに延びる共通した回転軸線53を有し、補助カバー体51は、この回転軸線53周りに角変位自在である。補助カバー体51の重心は、回転軸線53の第1方向Xの位置よりも、第1方向他方X2に位置している。
【0048】
ヒンジ片52は、補助カバー体51およびヒンジ部材50のように長尺の部材として形成されてもよいけれども、本実施形態では、第2方向寸法が組立パネル体16の第2方向Yの寸法よりも短い寸法の部材として形成される。このヒンジ片52は、第2方向Yに延びる補助カバー体51において、複数設けられ、いずれのヒンジ片52も第2方向Yに延びる共通した回転軸線53まわりに角変位が許容される。
【0049】
組立パネル体16の第1方向他方X2の端部は、ヒンジ部材50が第2縁材14に上方Z1から接触することによって、第2縁材14に支持される。第2縁材14は、平板状の固定部55と、固定部55の第1方向Xの中間部付近から水平な平面に対して傾斜する傾斜部56と、固定部55の第1方向他方X2側端部から上方Z1に立ち上がる立上がり部57とを有する。固定部55の第1方向一方X1は、各下地材27の表面部に、ねじ部材15によってねじ止めされる。固定部55には上方Z1に臨む水平な載置面58が形成され、傾斜部56には、固定部55から第1方向他方X2に向かうにつれて上方Z1に傾斜する傾斜面59が形成される。載置面58と傾斜面59とは、連なって連続している。
【0050】
立上がり部57は、第1方向一方X1に突出して形成される蟻溝部分60と、第1方向他方X2に突出して形成される係合爪部分61とを有する。立上がり部57の上方Z1側の端部は、傾斜部56の第1方向他方X2側端部に連なる。
【0051】
第2縁材14は、係合爪部分61を載置部24に溶接アンカー26によって固定される係合部材54に係合することによって第1方向一方X1への移動が制限された状態で設けられる。
【0052】
たとえば地震などが起こらず、各躯体11,12間の離隔距離Lが予め定める距離で安定しているときには、組立パネル16の第1方向他方X2側端部は、第2縁材14の固定部55の載置面58上に載置されている。この状態で前記端部は、固定部に直接接触してもよいけれども、載置面58上に、フィルム66を配置し、前記端部がフィルム66を介して載置面58上に載置される構成としてもよい。
【0053】
この状態から、たとえば地震などによって各躯体11,12間の離隔距離Lが予め定める距離よりも長くなったときには、前記端部は、固定部55よりも第1方向一方X1に移動し、再度各躯体11,12間の離隔距離Lが予め定める距離に回復するときには、前記端部は再び固定部55の載置面58に載る。
【0054】
図6は、本実施形態における組立パネル体16の第1方向他方X2の端部の、第2方向Yに垂直な断面図である。図6には、各躯体11,12間の離隔距離Lが予め定める距離よりも短くなったときの様子を示している。各躯体11,12間の離隔距離Lが予め定める距離よりも短くなったとき、組立パネル体16の第1方向他方X2側端部は、固定部55よりも第1方向他方X2に変位する。この場合には、前記端部が傾斜部56に形成される傾斜面59に接触し、これに乗り上げることによって組立パネル体16は、傾斜部56に乗り上げる。
【0055】
これによって、地震などによって各躯体11,12間の離隔距離Lが予め定める距離よりも短くなったときには、前記端部が傾斜面59に案内されて傾斜部56よりも上方Z1に移動するので、組立パネル体16が、第1方向Xに圧縮する向きの外力によって曲がったり座屈したりすることを防ぐことができる。
【0056】
組立パネル体16の前記端部が第2縁材14の傾斜部56よりも上方Z1に変位した場合には、第2縁材14よりも第1方向他方X2に位置する床面に対し、前記端部が浮き上がった状態となる。第2縁材14よりも第1方向他方X2の、他方の躯体12の床面を、「躯体床面」と称すると、前記端部が傾斜部56に乗り上げた状態では、前記端部と躯体床面との間には、段差が生じる。補助カバー体51は、ヒンジ部材50と躯体床面との間に生じる段差を塞ぐ。補助カバー体51は、ヒンジ片52を介して自重に基づいて回転軸線53回りに角変位し、ヒンジ部材50の上方Z1から躯体床面に至るまでの範囲に斜面を形成する。この斜面は、第1方向他方X2に向かうにつれて下方Z2に傾斜しており、これによって段差に基づく通行障害を緩和する。
【0057】
図7は、本実施形態における連結パネル部材18の断面図である。図7には、連結パネル部材18の第1方向Xに垂直な断面を示している。連結パネル部材18において中間基部19の第2方向Yの寸法は、連結パネル部材18の種類によって異なる。
【0058】
連結パネル部材18の中間基部19には内部空間が形成され、内部空間は1つまたは複数の仕切壁62によって第2方向Yに仕切られている。仕切壁62は、中間基部19の第1方向Xの全体の長さにわたって形成されており、中間基部19の上方Z1の平板状の部分から下方Z2の平板状の部分までを連結して形成される。これによって仕切壁62は、中間基部19の曲げに対する機械的強度を向上している。中間基部19には、少なくとも1つの蟻溝63が形成される。蟻溝63は、本実施形態では、断面が略C字状に形成され、中間基部19の内部空間内に第2方向他方Y2に突出して形成される。
【0059】
また連結パネル部材18は、中間基部19から上方Z1に立ち上がる断面逆L字状の第1補強部分20aと、同じく中間基部19から上方Z1に立ち上がる断面T字状の第2補強部分20bとを有する。第1および第2補強部分20a,20bは、共に第1方向Xに延び、その第1方向Xの寸法は、連結パネル部材18の第1方向Xの寸法と同じである。また第1補強部分20aの両端部には、ねじ孔が形成される。このねじ孔に、前記係合部材70またはヒンジ部材50がねじ部材15によってねじ止めされる。
【0060】
このような構成によって、連結パネル部材18は、上方からの荷重に対する機械的強度を向上することができる。
【0061】
また連結パネル部材18には、補強部である第1および第2補強部分20a,20bが形成されるので、連結パネル部材18の第1および第2補強部分20a,20bが形成される側表面にセメントモルタルなどを介して化粧材9を取付ける場合に、第1および第2補強部分20a,20bを抜け止め片として使用することができ、連結パネル部材18とセメントモルタルとの付着強度を向上することができる。
【0062】
第1縁材13の案内溝部分45に係合する組立パネル体16の係合部材70を、連結パネル部材18に取付けるとき、および組立パネル体16の第1方向他方X2においてヒンジ部材50を連結パネル部材18に取付けるときには、ビスなどのねじ部材15を蟻溝63に螺合させることによって、その取付けが行われる。
【0063】
図7に示すように、下地材29の上面には、樹脂製のフィルム66が設けられる。これによって、組立パネル体16が下地材29に接触するときに、衝突を緩和し、組立パネル体16が下地材29に対して摺動するときには、摩擦を緩和することができる。
【0064】
図8は、本実施形態における嵌合凸部21および嵌合凹部22の断面図である。図8には、嵌合凸部21および嵌合凹部22の第1方向Xに垂直な断面を表しており、連結パネル部材18の厚み方向の半分を拡大して示している。嵌合凸部21および嵌合凹部22の形状は、連結パネル部材18の厚み方向中央を通る中央平面に関して厚み方向に対称である。この中央平面は、厚み方向に垂直な平面である。
【0065】
嵌合凸部21は、中間基部19から第2方向一方Y1に向けて突出して形成され、一対の凸部形成脚部74と、一対の突縁75とを有する。各凸部形成脚部74は、先端部に係止爪76が形成され、各突縁75は、中間基部19よりも第2方向一方Y1において、凸部形成脚部74の基端部よりも厚み方向外方に配置される。凸部形成脚部74の第2方向Yの寸法は、突縁75の第2方向Yの寸法に比べて長く形成され、凸部形成脚部74および突縁75は、ともに中間基部19から突出して形成される。
【0066】
嵌合凹部22は、中間基部19から第2方向他方Y2に向けて突出して形成され、一対の凹部形成脚部77と、一対の差込突縁78と、係止突起79とを有する。厚み方向における一対の凹部形成脚部77の位置は、一対の凸部形成脚部74の厚み方向の位置よりも、厚み方向外方に配置される。一対の差込突縁78は、凹部形成脚部77の先端部からさらに第2方向他方Y2に突出して形成される。一対の差込突縁78は、凹部形成脚部77の先端部に連続するけれども、凹部形成脚部77の先端部よりもわずかに厚み方向内方に配置して形成される。差込突縁78の第2方向Yの長さは、凸部形成脚部74の突縁75の第2方向Yの長さとほぼ同じかわずかに短く形成される。
【0067】
嵌合凸部21と嵌合凹部22とが互いに嵌合するときには、差込突縁78は、凸部形成脚部74の基端部と、突縁75との間に嵌まり込む。係止突起79は、各凹部形成脚部77の基端部から、厚み方向内方に向けて突出して形成される。
【0068】
嵌合凸部21と嵌合凹部22とが互いに嵌合した状態では、凸部形成脚部74の先端部に設けられる係止爪76は、凹部形成脚部77の基端部に形成される各係止突起79に対し、内側から係合して係止される。またこの状態で、凹部形成脚部77の先端部に設けられる差込突縁78は、凸部形成脚部74の基端部と突縁75との間に挿入される。
【0069】
これによって、複数の連結パネル部材18が、第2方向Yに平行に整列した状態で、隣接する嵌合凸部21と嵌合凹部22とが互いに嵌合し、第2方向Yに抜け止めされた状態となる。これによって、隣接する連結パネル部材18が相互に連結された状態では、突縁75の厚み方向外方の表面と、凹部形成脚部77の厚み方向外方の表面とは、およそ一平面内に配置される。
【0070】
図9は、本実施形態における組立パネル体16の第2向他方Y2の端部の断面図である。図9には、組立パネル体16を、第1方向Xに垂直な仮想平面で切断して見た図を示している。組立パネル体16は、パネル部材80をさらに有する。
【0071】
パネル部材80は、嵌合空間形成部82を有する。嵌合空間形成部82は、中間基部19に関して嵌合凹部22とは反対側に、中間基部19に連なって設けられ、挿入部材81が嵌り込む内部空間を形成する。挿入部材81は嵌合空間形成部82に少なくともその一部が挿入された状態で、パネル部材80に取付けられる。
【0072】
嵌合空間形成部82に形成される内部空間は、嵌合凹部22とは反対側に開口しており、この開口を規定する開口部側から、挿入部材81が挿入される。
【0073】
挿入部材81は、中空の部材として形成され、挿入部材81のうち嵌合空間形成部82の内部に挿入される部分は、厚み方向の寸法が一様な形状に形成される。この部分の厚み方向の寸法は、嵌合空間形成部82の厚み方向の内寸とほぼ等しく、かつわずかに小さく設定される。これによって、嵌合空間形成部82に対し、挿入部材81が深く挿入された状態においても浅く挿入された状態においても、嵌合空間形成部82の開口部近傍は、厚み方向両側から挿入部材81に対して接触する。嵌合空間形成部82および挿入部材81は、これらの厚み方向を上下方向Zに一致させて配置される。
【0074】
嵌合空間形成部82に挿入部材81の少なくとも一部が挿入された状態で、嵌合空間形成部82と挿入部材81とは、嵌合空間形成部82よりも厚み方向外方からねじ部材によって互いに固定される。これによって、嵌合空間形成部82と挿入部材81とは連結される。
【0075】
図10は、パネル部材80の他の形態であるパネル部材90の断面図である。パネル部材90は、嵌合凹部22の代わりに嵌合空間形成部91を有する。嵌合空間形成部91は、嵌合凸部21とは反対側に、中間基部19に連なって設けられ、挿入部材81が嵌り込む内部空間を形成する。
【0076】
このように組立パネル体16の第2方向Yにおける両端部には、パネル部材80またはパネル部材90が取付けられ、嵌合空間形成部82,91に挿入部材81が取付けられる。これによって、組立パネル体16の第2方向Yにおける両端部が挿入部材81によって覆われる。
【0077】
本実施形態によれば、床用伸縮継手装置10は、第1縁材13と、第2縁材14と、組立パネル体16とを含んで構成される。第1縁材13は、空隙を挟んで対向する2つの躯体の一方に固定され、第1方向Xに垂直かつ水平な第2方向Yに延びて設けられる。第2縁材14は、2つの躯体の他方に、第1縁材13と平行に固定され、第2方向Yに延びて設けられる。組立パネル体16は、第1および第2縁材13,14間にわたる第1方向一端部が、第1縁材13に、第2方向Yに移動自在に係止され、前記第1方向他端部が、第2縁材14上で第1方向Xに移動自在に、第2縁材14に支持される。
【0078】
また組立パネル体16は、複数の連結パネル部材18を有し、連結パネル部材18は、中間基部19と、嵌合凸部21および嵌合凹部22とを有する。中間基部19は、第1方向Xに延びて形成される。嵌合凸部21および嵌合凹部22は、相互に嵌合可能である。また嵌合凸部21および嵌合凹部22は、中間基部19に関して互いに第2方向Y反対側に、中間基部19に設けられる。
【0079】
これによって、たとえば地震などによって2つの構造物が互いに相対変位し、各躯体11,12間の空隙の第1方向の寸法が変化しても、各躯体11,12の相対変位を許容しながら、組立パネル体16による各躯体11,12間の連結を維持することができる。したがって、組立パネル体16が破損することを防止することができる。また連結パネル部材18の個数を変更することで、幅寸法の異なる組立パネル体16とすることができる。さらに組立パネル体16を1つの部材によって形成する場合に比べて、組立パネル体16の材料の搬入を容易にすることができる。
【0080】
また本実施形態によれば、組立パネル体16は、複数種類の連結パネル部材18を有し、複数種類の連結パネル部材18は、中間基部19の第2方向の寸法が互いに異なる。これによって、任意の幅寸法の組立パネルを容易に構築することができる。
【0081】
また本実施形態によれば、組立パネル体16の第2方向Y両端部には、パネル部材80またはパネル部材90と、挿入部材81とが取付けられる。
【0082】
これによって、組立パネル体16のうち、第2方向Y両端に向けて開口する連結パネル部材18の嵌合凸部21および嵌合凹部22を塞ぐことができる。
【0083】
また本実施形態によれば、組立パネル体16を構成する連結パネル部材18には、補強部分20a,20bが形成される。これによって、組立パネル体16の荷重に対する機械的強度を向上することができる。
【符号の説明】
【0084】
10 床用伸縮継手装置
11 一方の躯体
12 他方の躯体
13 第1縁材
14 第2縁材
16 組立パネル体
18 連結パネル部材
19 中間基部
20a,20b 補強部分
21 嵌合凸部
22 嵌合凹部
23 載置部
24 載置部
50 ヒンジ部
51 補助カバー体
55 固定部
56 傾斜部
57 立上がり部
80 パネル部材
81 挿入部材
82 嵌合空間形成部
90 パネル部材
91 嵌合空間形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙をあけて水平な第1方向に隣合う2つの構造物の互いに対向する各躯体の一方に固定され、前記第1方向に水平面上で垂直な第2方向に延びて設けられる第1縁材と、
前記各躯体の他方に、前記第1縁材と平行に固定され、前記第2方向に延びて設けられる第2縁材と、
前記第1方向一端部が、前記第1縁材に対して、前記第2方向に移動自在に係止され、前記第1方向他端部が、前記第2縁材に対して前記第1方向に移動自在に支持される組立パネル体であって、前記第1および第2縁材間にわたって前記第1方向に延びて形成される中間基部と、前記中間基部の前記第2方向一端部に一体的に形成される嵌合凸部と、中間基部の前記第2方向他端部に一体的に形成される嵌合凹部と、前記中間基部から立ち上がり、前記第1方向に延びる補強部とを有し、一方の連結パネル部材の嵌合凹部と隣接する他方の連結パネル部材の嵌合凸部とが嵌合して連結される複数の連結パネル部材によって構成される組立パネル体とを含むことを特徴とする床用伸縮継手装置。
【請求項2】
前記組立パネル体は、前記中間基部の第2方向の寸法が他の連結パネル部材と異なる連結部材を有することを特徴とする請求項1に記載の床用伸縮継手装置。
【請求項3】
前記組立パネル体の前記第1方向他端部には、前記第2方向に平行な回転軸線周りに角変位可能なヒンジ片を有するヒンジ部が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の床用伸縮継手装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−220006(P2011−220006A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90986(P2010−90986)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000004732)株式会社日本アルミ (64)
【Fターム(参考)】