説明

床用再剥離型シート及びこれを用いた床仕上施工方法

【課題】従来の床施工方法における問題点である、床仕上材の剥がれや反り、床鳴り等の発生がなく、床仕上材の更新の際の再剥離性が十分で取替え作業性が良好で、かつホルムアルデヒドのような有害ガスの発生のない、床用再剥離型シート及びこれを用いた床仕上施工方法を提供する。
【解決手段】床面17の表面に設けられた木質の第一床仕上材18と木質床材(フローリング)、プラスチック系床タイル、タイルカーペット又は表示シートからなる第二床仕上材19との間に介在する、シート状基材層11の裏面側に密着層12が形成されてなる床用再剥離型シート10において、上記密着層が天然ゴムラテックス100質量部に対して合成樹脂エマルジョン5〜90質量部を含むことにより構成され、合成樹脂エマルジョンのガラス転移温度が−70℃〜−15℃であって、密着層の厚さが50〜150μmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた密着力を有し、かつ再剥離性に優れた床用再剥離型シート及びこれを用いた床仕上施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)等の住宅の床材リフォームの仕様では、パーティクルボード或いは合板からなる床下地材の表面に、合板とつき板若しくは合板と塩化ビニルシート若しくは紙とを接合したフローリング合板からなる第一床仕上材を積層し、更にその上にMDF(Medium Density Fiberboard)フローリング材からなる第二床仕上材を積層施工する工法が主に行われている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
このように第一床仕上材上に第二床仕上材を積層施工する場合、各仕上材間のサネ部分(接合部分)にフロアーネイル(釘)を打ち込んで固定する場合には、床仕上材のリフォーム作業性は比較的に良好であるが、使用時に床仕上材の剥がれや反り、床鳴り等の不具合が発生する問題があった。また、第一床仕上材上への第二床仕上材の固定に接着剤や両面粘着テープを用いる場合には、再剥離性が不十分であるため、第二床仕上材の取替え作業性が極端に低下する不具合があった。
【0004】
床材リフォームが容易な技術として、建築物の下地材を第一の仕上材の下面部にて被覆し、この建築物の仕上げ表面を第一の仕上材の上面部に第二の仕上材を脱着自在に嵌合させることにより形成する仕上材の施工方法及びその仕上材が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1では、シート上面に凹凸構造を形成し、床材の下面に上記シートの凹凸構造と嵌合可能な凹凸構造を形成し、シート上面に形成された凹凸構造に、床材の下面の凹凸構造とを嵌合させることによりシートの上面と床材の下面とを貼り合わせることができる。具体的には、シート上面に台形状のアリ溝を形成する場合、床材の下面にはアリ溝と断面が同型のアリ突起を形成し、シート上面に円形の突状を形成した場合、床材の下面には突状断面と同断面形状の溝を形成することで、シートの上面と床材の下面とを嵌合構造によって接着剤を使用することなく貼り合わせることができる。
【0005】
また、不織布又は熱可塑性樹脂フィルムからなる基材層の両面に粘着剤層が形成されてなる両面粘着シートにおいて、その少なくとも片面に形成されている粘着剤層の動的粘弾性スペクトルにおける100℃での損失正接(tan)が0.2〜0.5である両面粘着シートと、この両面粘着シートの特定粘着剤層が床仕上材側に積層されるように用いることを特徴とする床施工方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に示される両面粘着シートでは、両面粘着シートの床仕上材側に積層される方の粘着剤層に特定の物性(損失正接)を付与して優れた拘束力(耐応力性)を発現させることにより、床仕上材の動き(反り上がりや目隙等)を抑制することができる。
【0006】
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂及びオキサゾリン架橋剤を含有する樹脂組成物の発泡体からなる自己吸着性発泡シートが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−036248号公報(請求項1〜3、第2ページ右上欄20行〜第4ページ左上欄18行目、図1〜図3)
【特許文献2】特開2001−072949号公報(請求項1,2、段落[0008]、[0018])
【特許文献3】特開2006−176693号公報(請求項1,7)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「基材の品質判定基準(平成23年4月版)(総則編・建築編)」、[online]、平成23年4月、独立行政法人都市再生機構、[平成23年7月5日検索]、インターネット〈URL:http://www.ur-net.go.jp/architec/information/pdf/110401urhanteikijun.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示されるような仕上材同士を脱着可能な嵌合構造に形成することは、複雑な構造で高度な加工技術を必要とし、高コストで実用性に乏しい。
【0010】
また、特許文献2では両面に粘着剤層が形成された両面粘着シートを床施工に用いているが、粘着剤層としてアクリル系粘着剤を用いると、特に床暖房家屋のような高温環境下で使用した場合には粘着力の経時低下が問題となる。また、固定位置が決まるまでは、粘着剤層が第一床仕上材に付かないよう、浮かしながら施工する必要があるため、位置調整が困難である。
【0011】
また、特許文献3に示す自己吸着性発泡シートを床面施工用途に用いた場合、常温環境下で使用した場合についてのリフォーム時の再剥離作業性は比較的良好であるが、特に床暖房家屋のような高温環境下で使用した場合には粘着力が経時増加してしまい、再剥離の際に発泡シートが材破してしまう問題が生じるため、床面施工用途には適していない。
【0012】
本発明の目的は、床仕上材に対する密着力に優れるため、従来の床施工方法における問題点である、床仕上材の剥がれや反り、床鳴り等の発生がなく、床仕上材の更新の際の再剥離性が十分で取替え作業性が良好で、かつホルムアルデヒドのような有害ガスの発生のない、床用再剥離型シート及びこれを用いた床仕上施工方法を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、高温環境下での長期間使用であっても床仕上材の更新の際の再剥離性が十分で取替え作業性が良好である、床用再剥離型シート及びこれを用いた床仕上施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点は、図3に示すように、床面17の表面に設けられた木質の第一床仕上材18と、木質床材(フローリング)、プラスチック系床タイル、タイルカーペット又は表示シートからなる第2床仕上材19との間に介在する、シート状基材層11の裏面側に密着層12が形成されてなる床用再剥離型シート10において、上記密着層12が天然ゴムラテックス100質量部に対して合成樹脂エマルジョン5〜90質量部を含むことにより構成され、合成樹脂エマルジョンのガラス転移温度が−70℃〜−15℃であって、密着層の厚さが50〜150μmであることを特徴とする。また、本発明における合成樹脂エマルジョンとは、(メタ)アクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン等をいう。
【0015】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図4に示すように、裏面側に密着層12が形成されたシート状基材層11の表面側に粘着剤層或いは接着剤層13が形成されてなることを特徴とする。
【0016】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更に天然ゴムラテックスがアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル変性天然ゴムラテックスであることを特徴とする。
【0017】
本発明の第4の観点は、第2の観点に基づく発明であって、更に粘着剤層がエマルジョン型粘着剤或いは溶剤型粘着剤から構成され、接着剤層がエマルジョン型接着剤、溶剤型接着剤或いはホットメルト型接着剤から構成されることを特徴とする。
【0018】
本発明の第5の観点は、第1ないし第4の観点に基づく発明であって、更にシート状基材層が不織布からなることを特徴とする。
【0019】
本発明の第6の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図2に示すように、密着層12の表面に、更に保護シート14が積層されてなることを特徴とする。
【0020】
本発明の第7の観点は、第2の観点に基づく発明であって、更に図5に示すように、密着層12及び粘着剤層或いは接着剤層13の各表面に、更に保護シート14が積層されてなることを特徴とする。
【0021】
本発明の第8の観点は、図3又は図6に示すように、床面17の表面に設けられた木質の第一床仕上材18の表面に、更に木質床材(フローリング)、プラスチック系床タイル、タイルカーペット又は表示シートからなる第二床仕上材19を固定する床仕上施工方法において、第1ないし第5の観点に基づく床用再剥離型シート10のシート状基材層11の表面側に第二床仕上材19が接着或いは粘着固定され、密着層12の表面が、上記木質の第一床仕上材18の表面に当接されるように固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の観点では、密着層が天然ゴムラテックスに対して合成樹脂エマルジョンを所定の割合で含むように構成され、合成樹脂エマルジョンのガラス転移温度が−70℃〜−15℃であって、密着層の厚さが50〜150μmであるので、床面の表面に設けられた木質の第一床仕上材との優れた密着力を有するため、施工後の第二床仕上材(木質床材(フローリング)やプラスチック系床タイル、タイルカーペット、表示シート)に剥がれや反りを生じることがなく、また再剥離性に優れるため、第二床仕上材の更新の際の取替え作業が良好である。また、べたつきが無いため(タック値が低いため)、第二床仕上材を施工する際の位置調整が容易である。また、高温環境下での長期間使用であっても床仕上材の更新の際の再剥離性が十分で取替え作業性が良好であり、更に、上記構成成分からはホルムアルデヒドのような有害ガスを発生することがないため、環境にも優しい。
【0023】
本発明の第2の観点では、基材層の表面側に粘着剤層或いは接着剤層を備えることで、床仕上材の施工において、密着層が床面の表面に設けられた木質の第一床仕上材を固定する一方、粘着剤層或いは接着剤層が第二床仕上材を固定するため、床仕上材の接着施工作業がより容易なものとなる。
【0024】
本発明の第3の観点では、天然ゴムラテックスがアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル変性天然ゴムラテックスであると、塗工安定性が向上するとともに、保存安定性も向上する。
【0025】
本発明の第5の観点では、シート状基材層が不織布であると、密着層を構成する主成分である天然ゴムラテックスが物理的に絡みつくため固定が良く、加工時に熱収縮などを起こすことがないため、シワが生じることもない。
【0026】
本発明の第6又は第7の観点では、保護シートを積層することで、使用前の密着層表層、粘着剤層或いは接着剤層の表層が保護される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】シート状基材層の裏面側に密着層が形成された第1実施形態の床用再剥離型シートの断面図である。
【図2】密着層の表面に保護シートが積層された第1実施形態の床用再剥離型シートの断面図である。
【図3】第1実施形態の床用再剥離型シートを用いた床仕上施工方法の説明図である。
【図4】シート状基材層の表面側に更に粘着剤層或いは接着剤層が形成された第2実施形態の床用再剥離型シートの断面図である。
【図5】密着層及び粘着剤層或いは接着剤層の各表面に保護シートが積層された第2実施形態の床用再剥離型シートの断面図である。
【図6】第2実施形態の床用再剥離型シートを用いた床仕上施工方法の説明図である。
【図7】床用再剥離型シートの製造工程(粘着剤層形成)を示す図である。
【図8】床用再剥離型シートの製造工程(密着層形成)を示す図である。
【図9】90°ピール試験の説明図である。
【図10】デシケーター法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
<第1の実施の形態>
図3に示すように、本発明の床用再剥離型シート10は、床面17の表面に設けられた木質の第一床仕上材18と、木質床材(フローリング)、プラスチック系床タイル、タイルカーペット又は表示シートからなる第二床仕上材19との間に介在する再剥離型のシートである。本発明で「床面17」とは、合板、パーティクルボード、根太、床下地材、スラブ、モルタル、石材から構成されていてもよく、「木質の第一床仕上材18」とは、合板フローリング、繊維板フローリング、無垢材フローリングであり、一般的には厚さが3mm〜40mmである。第二床仕上材19の「木質床材」とは、合板フローリングや繊維板フローリング、無垢材フローリングで、一般的には厚さが3mm〜40mmであるが、更に薄いものや、木質の第一床仕上げと同等の厚みでもよい。「プラスチック系床タイル」とは、クッションフロア、硬質ビニールタイル(別称Pタイル)、軟質ビニールタイルである。「タイルカーペット」とは、400mm×400mmや500mm×500mmのタイル状のカーペットである。「表示シート」とは、例えばgoo!ステップ(登録商標;商標登録第5246641号;光洋産業株式会社)のような床面広告用シートである。
【0030】
図1に示すように、本発明の床用再剥離型シート10は、シート状基材層11の裏面側に密着層12が形成され、この密着層12が天然ゴムラテックス100質量部に対して合成樹脂エマルジョン5〜90質量部を含むことにより構成される。シート状基材層11の裏面側に形成された密着層12が天然ゴムラテックスに対して合成樹脂エマルジョンを所定の割合で含むように構成されているので、床面の表面に設けられた木質の第一床仕上材との優れた密着力を有するため、施工後の第二床仕上材に剥がれや反りを生じることがなく、また再剥離性に優れるため、第二床仕上材の更新の際の取替え作業が良好である。更に、上記構成成分からはホルムアルデヒドのような有害ガスを発生することがないため、環境にも優しい。なお、本発明で「密着」とは、高弾性又はゲル状の固体であるがべたべたしておらず、組成物の弾性で被着体との間に同伴される空気を押し出して空隙を作らずに固定させるものをいい、具体的には、シート状基材上に形成された天然ゴムラテックス皮膜が、床仕上げ材の如く平滑性に富んだ表面に対して、低圧力で高い密着性を発現する状態となるものをいう。上記の密着性を示す皮膜は、再剥離時に通常の粘着剤のような粘着成分の基材表面への移行を全く伴わないことも大きな特徴である。
【0031】
合成樹脂エマルジョンの割合が上記範囲の上限値を越えると密着力は高まるが再剥離性に乏しくなり、合成樹脂エマルジョンの割合が上記範囲の下限値未満になると再剥離性は高まるが密着力に乏しくなる。このため、高い密着力と高い再剥離性の双方の性質を兼ね備えた配合割合とする必要がある。
【0032】
配合割合は、使用する合成樹脂エマルジョンの性質によっても多少前後するが、天然ゴムラテックス100質量部に対して合成樹脂エマルジョン5〜90質量部を含むことが好ましく、特に10〜50質量部を含むことが好ましい。
【0033】
天然ゴムラテックスとしては、ULACOL(株式会社レヂテックス社製)が例示される。また、天然ゴムラテックスとして、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル変性天然ゴムラテックスを使用することが、塗工安定性が向上するとともに、保存安定性も向上するため好ましい。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルが例示される。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが例示される。特にメタクリル酸メチルが好ましい。アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル変性天然ゴムラテックスとしては、MG−15(株式会社レヂテックス社製)やコアテックス(ムサシノケミカル株式会社製)が例示される。
【0034】
密着層12を構成する合成樹脂エマルジョンは、ガラス転移温度が−70℃〜−15℃の範囲にあるものが、密着力の理由から好ましい。ガラス転移温度が下限値未満では密着層が軟らかくなりすぎ、再剥離性が低下し、上限値を越えると密着層が硬くなり密着性が低下する。合成樹脂エマルジョンとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン等が挙げられる。アクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョンとしては、KR−161(光洋産業株式会社製)やBPW6111(東洋インキ株式会社製)が例示される。エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンとしては、S408HQE,S950HQ,S951HQ,S755(住化ケムテックス株式会社製)が例示される。スチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョンとしては、L−7850,A7582,A7269(旭化成ケミカルズ株式会社製)が例示される。
【0035】
密着層12の厚みは50〜150μmの範囲内が好ましく、特に80〜100μmが好ましい。厚みが下限値未満では密着力が低下し、上限値を越えると乾燥工程において塗膜の表面に皮がはり、塗膜内部の水抜けが悪い状態となり水膨れが発生する。
【0036】
シート状基材層11には不織布を使用することが好適である。不織布としては、麻などのセルロース系不織布、ポリオレフィン系やポリエステル系などの熱可塑性樹脂系繊維からなる不織布等が挙げられる。セルロース系不織布としては、ベンリーゼ(旭化成せんい株式会社製)やTCF(フタムラ化学株式会社製)が例示される。ポリオレフィン系不織布としては、エルベス(ユニチカ株式会社製)が例示される。ポリエステル系不織布としては、ミライフ(JX日鉱日石ANCI株式会社製)やエルタス(旭化成せんい株式会社製)が例示される。
【0037】
シート状基材層11として不織布を選定したのは、以下のような理由による。例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)のフィルムシートを使用する場合では、密着層12を構成する主成分である天然ゴムラテックスがうまく固定しない不具合がある。またPE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のフィルムシートを使用する場合も上記PETと同様の不具合があり、また、塗工後の乾燥工程での乾燥炉の熱でフィルムに収縮が起こり、シワの原因となる。また紙を使用する場合にも密着層12を構成する主成分である天然ゴムラテックスがうまく固定しない不具合がある。また、紙が水分を吸放出して伸び縮みが起こり、大きなシワができてしまう不具合が生じる。一方、不織布を使用する場合は、不織布と密着層12を構成する主成分である天然ゴムラテックスが物理的に絡みつくため固定が良く、加工時に熱収縮などを起こすことがないため、シワが生じることもないためである。
【0038】
不織布は坪量が20〜70g/m2の範囲内が好ましい。坪量を上記範囲内としたのは、上限値を越えるような坪量が大きい不織布でもシート化は可能であるが、坪量の大きい不織布を用いて作製したシートを床仕上材に貼り付けて剥がそうとするときに、不織布が裂けてしまい、再剥離できない不具合が生じるためである。また、下限値未満の坪量の小さい不織布では密着層組成物或いは粘着剤層組成物の塗工が困難である。
【0039】
そして、図2に示すように、床用再剥離型シート10には、使用前の密着層12表層を保護するために、密着層12の表面には、更に保護シート14が積層される。
【0040】
このように構成された第1実施形態の床用再剥離型シート10を用いた床仕上施工方法では、図3に示すように、スラブ上に設けられた床下地材などから構成された床面17の表面に設けられた木質の第一床仕上材18の表面に、更に木質床材(フローリング)、プラスチック系床タイル、タイルカーペット又は表示シートからなる第二床仕上材19を固定するに際して、先ず、床用再剥離型シート10の密着層12側の保護シート14を剥がし、露出した密着層12を木質の第一床仕上材18の表面に当接するように固定する。次に、床用再剥離型シート10のシート状基材層11表面側又は第二床仕上材19裏面側に接着剤を塗布することで第二床仕上材19を固定するか、或いは、床用再剥離型シート10のシート状基材層11表面側と第二床仕上材19裏面側との間に両面粘着テープ15などを貼り付けることで第二床仕上材19を固定する。
【0041】
また、この床仕上施工方法は、事前に第二床仕上材19(幅、長さのサイズ:約300mm×約1800mm)の裏面全面に床用再剥離型シート10を接着剤や両面粘着テープを用いて貼り付けておき、施工現場において、床用再剥離型シート10の密着層12側の保護シート14を剥がし、密着層12を床面17の表面に設けられた木質の第一床仕上材18の表面に当接するように固定する、全面貼りによる施工でもよい。或いはこの床仕上施工方法は、床用再剥離型シート10を、例えば50mm幅にカットしてテープ状としておき、テープ状の床用再剥離型シート10を第二床仕上材19の一部分、又は木質の第一床仕上材18の一部分に貼りつけることで固定する、テープ貼りによる施工でもよい。
【0042】
<第2の実施の形態>
図4は本発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態では、裏面側に密着層12が形成されたシート状基材層11の表面側に粘着剤層或いは接着剤層13が形成されてなることを特徴とする。シート状基材層11の表面側に粘着剤層或いは接着剤層13を備えることで、床仕上施工において、密着層12が床面17の表面に設けられた木質の第一床仕上材18を固定し、粘着剤層或いは接着剤層13が第二床仕上材19を固定するため、第1実施形態の床用再剥離型シートに比べて床仕上施工作業がより容易なものとなる。なお、本発明で「粘着」とは、高粘性の液体又はゲル状固体で塗工し、べたべたした状態を保ったまま被着体を固定させるものをいい、「接着」とは、液体又はゲル状固体で塗工し、固化することで剥離抵抗力を発揮するものをいう。
【0043】
また、粘着剤層はエマルジョン型粘着剤或いは溶剤型粘着剤から構成される。エマルジョン型粘着剤としてはアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョンKR−159(光洋産業株式会社製)やBPW6111(東洋インキ株式会社製)が例示される。溶剤型粘着剤としては、SKダインシリーズSK1717,SK1760(綜研化学株式会社製)が例示される。この粘着剤層で使用するのは強粘着タイプの硬い組成物であり、密着層に使用するような密着力が比較的弱い軟らかい組成物を用いると、第二床仕上材との密着力に劣り、施工後、第二床仕上材が剥離してしまうおそれがある。
【0044】
また、接着剤層はエマルジョン型接着剤、溶剤型接着剤或いはホットメルト型接着剤から構成される。エマルジョン型接着剤としては、KR−134,KR−7800(光洋産業株式会社製)が例示される。溶剤型接着剤としては、575(セメダイン株式会社製)が例示される。ホットメルト型接着剤としては、1535(ヤスハラケミカル株式会社製)やAS1002(東亞合成株式会社製)が例示される。
【0045】
そして、図5に示すように、床用再剥離型シート10には、使用前の密着層12表層及び粘着剤層或いは接着剤層13表層を保護するために、密着層12及び粘着剤層或いは接着剤層13の各表面には、更に保護シート14が積層される。
【0046】
次に、本発明の床用再剥離型シートの製造方法を説明する。ここではシート状基材層の裏面側に密着層が、表面側に粘着剤層がそれぞれ形成され、更に、密着層及び粘着剤層の各表面に保護シートが積層された床用再剥離型シートについて説明する。
【0047】
<粘着剤層形成工程>
先ず、図7に示すように、シート状基材層11の一方の面側に粘着剤組成物13aを塗工する。塗工後は乾燥炉に通じ、温度110℃で4〜5分間の乾燥工程を行うことで乾燥させ、シート状基材層11の一方の面側に粘着剤層13を形成する。乾燥炉から出た後は、形成した粘着剤層13側に保護シート14を付けて巻き取られる。これにより、シート状基材層11、粘着剤層13及び保護シート14からなる積層体10aが形成される。
【0048】
<密着層形成工程>
次に、図8に示すように、上記製造した巻物状の積層体10aの、シート状基材層11の他方の面側に、密着層組成物12a(天然ゴムラテックス及び合成樹脂エマルジョンの混合物)を塗工する。塗工後は乾燥炉に通じ、温度80℃で5〜6分間の乾燥工程を行うことで乾燥させ、シート状基材層11の他方の面側に密着層12を形成する。乾燥炉から出た後は、形成した密着層12側に保護シート14を付けて巻き取られる。これにより、シート状基材層11の他方の面側に密着層12及び保護シート14が形成される。
【0049】
<養生工程>
巻き取った後は、巻物状の状態で1週間〜10日間程度養生して平衡含水率にさせる。これにより、本発明の床用再剥離型シート10が得られる。
【0050】
なお、密着層12の前に粘着剤層13を形成するのは、密着層12を構成する天然ゴムラテックスが熱を与えすぎると硬くなり弾力性を失ってしまう性質であり、製造時の加熱を必要最小限に留める必要があるためである。
【0051】
ここでは第2実施形態の床用再剥離型シートの製造方法を示したが、第1実施形態の床用再剥離型シートの製造方法では、粘着剤層形成工程は省略され、密着層形成工程において、巻物状の積層体10aに代えてシート状基材層11に密着層組成物12a(天然ゴムラテックス及び合成樹脂エマルジョンの混合物)を塗工し、塗工後は乾燥炉で乾燥させて密着層12を形成し、形成した密着層12側に保護シート14を付けて巻き取り、後に続く養生工程で養生することにより、第1実施形態の床用再剥離型シートが得られる。
【0052】
このように構成された第2実施形態の床用再剥離型シート10を用いた床仕上施工方法では、図6に示すように、スラブ上に設けられた床下地材などから構成された床面17の表面に設けられた木質の第一床仕上材18の表面に、更に木質床材(フローリング)、プラスチック系床タイル、タイルカーペット又は表示シートからなる第二床仕上材19を固定するに際して、先ず、床用再剥離型シート10の密着層12側の保護シート14を剥がし、露出した密着層12を木質の第一床仕上材18の表面に当接するように固定する。次に、床用再剥離型シート10の粘着剤層或いは接着剤層13側の保護シート14を剥がし、露出した粘着剤層或いは接着剤層13を第二床仕上材19の裏面に当接するように固定する。
【0053】
また、この床仕上施工方法は、事前に第二床仕上材19(幅、長さのサイズ:約300mm×約1800mm)の裏面全面に床用再剥離型シート10の粘着剤層13を貼り付けておき、施工現場において、床用再剥離型シート10の密着層12側の保護シート14を剥がし、密着層12を床面17の表面に設けられた木質の第一床仕上材18の表面に当接するように固定する、全面貼りによる施工でもよい。或いはこの床仕上施工方法は、床用再剥離型シート10を、例えば50mm幅にカットしてテープ状としておき、テープ状の床用再剥離型シート10を第二床仕上材19の一部分、又は木質の第一床仕上材18の一部分に貼りつけることで固定する、テープ貼りによる施工でもよい。
【実施例】
【0054】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0055】
<実施例1〜5>
先ず、密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス(固形分60質量%、製品名:ULACOL、株式会社レヂテックス社製)及び合成樹脂エマルジョンとしてアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分60質量%、ガラス転移温度−40℃、製品名:KR−161、光洋産業株式会社製)を用意し、上記二つの成分を質量基準で、100:5、100:10、100:25、100:43及び100:90の割合となるようにそれぞれ配合して密着層組成物を調製した。また、シート状基材層として、厚さ100μmのポリエステル不織布(坪量40g/m2、製品名:ミライフ、JX日鉱日石ANCI株式会社製)を用意した。
【0056】
次に、図8に示す密着層形成工程を行い、ポリエステル不織布の裏面側に最終的に90μmの厚さとなるように上記密着層組成物を塗工し、乾燥炉に通じて温度80℃、5〜6分間の条件で乾燥することにより、ポリエステル不織布の裏面側に密着層を形成した。そして、形成した密着層側に保護シートを付けて巻き取った。
【0057】
最後に、巻物状の状態で1週間〜10日間程度養生して平衡含水率にさせることで、床用再剥離型シートを得た。
【0058】
<実施例6〜10>
合成樹脂エマルジョンとしてアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分60質量%、ガラス転移温度−68℃、製品名:AP620、中央理化工業株式会社製)を用いた以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0059】
<比較例1>
合成樹脂エマルジョン成分を使用しない、天然ゴムラテックスのみからなる密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0060】
<比較例2>
天然ゴムラテックス及びアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分60質量%、ガラス転移温度−40℃、製品名:KR−161、光洋産業株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0061】
<比較例3>
天然ゴムラテックス及びアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分60質量%、ガラス転移温度−68℃、製品名:AP620、中央理化工業株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0062】
<比較例4>
天然ゴムラテックス成分を使用しない、アクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(製品名:R−60、一方社油脂工業株式会社製、弱粘着タイプ)のみからなる密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0063】
<比較例5>
天然ゴムラテックス成分を使用しない、アクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(製品名:KR−159、光洋産業株式会社製、強粘着タイプ)のみからなる密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0064】
<比較例6,7>
天然ゴムラテックス及びアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分57質量%、ガラス転移温度−75℃、製品名:AP601、中央理化工業株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:5及び100:90の割合となるようにそれぞれ配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0065】
<比較試験1>
次に、実施例1〜10及び比較例1〜7で得られた床用再剥離型シートについて、以下に示す、タックテスター試験及び90°ピール試験を行い、形成した密着層の配合比によるべたつきの無さ、粘着力、再剥離性及び密着力を評価した。それらの結果を次の表1に示す。なお、表1における、べたつきの無さ評価は、タックテスター試験の結果が0.5N以下のとき「優」とし、0.6〜0.7Nの状態のとき「良好」とし、0.8〜0.9Nの状態のとき「可」とし、1.0〜1.8Nの状態のとき「不良」とした。また粘着力評価は、90°ピール試験の結果が4.0〜18.0(N/25mm幅)のとき「優」とし、3.9〜1.2(N/25mm幅)のとき「良好」とし、1.1〜0.6(N/25mm幅)のとき「可」とし、0.6未満(N/25mm幅)のとき「不良」とした。また再剥離性評価は、目視評価とした。更に、密着力の総合評価は、べたつきの無さ評価及び再剥離性評価において「不良」が一個以上あるとき「不良」とし、「不良」がなく、かつ「可」が一個以上あるとき「可」とし、「不良」及び「可」がなく、「良好」が一個以上あるとき「良好」とし、双方の評価が「優」であるとき「優」とした。なお、90°ピール試験において自然剥離した例は「不良」とした。
【0066】
<タックテスター試験>
測定装置として、株式会社東洋精機製作所社製のPICMA・タックテスタを使用した。先ず、測定装置に試験片を設置して、装置のスタートボタンを押し、接着部円盤を100cm/minの速さで下げて、試験片と接触させる。次いで、接着部円盤と試験片とを圧着荷重4.9Nで2秒間圧着させる。次に圧着後、接着部円盤を70cm/minの速さで引き上げることで試験片におけるタック値を測定した。
【0067】
<90°ピール試験>
図9(a)に示すように、幅25mm×長さ200mmの試験片30を切り出し、試験片30の長さ100mm部分をフローリング31に2kgのローラーで5往復させることで密着させた。そして図9(b)に示すように、室温(23℃)環境にて試験片を90°方向へのピーリング試験を行った。なお、引張り速度は300mm/minとした。また、測定開始後、最初の25mmの長さにおける測定値は無視し、その後に続く、75mmの長さにおける測定値を平均し、この平均値を粘着力の評価とした。また、フローリングへの糊残りの状態を目視で判断し、再剥離性を評価した。
【0068】
【表1】

表1から明らかなように、実施例1〜10のように天然ゴムラテックスに対してアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョンの配合割合が5質量部〜90質量部の範囲とすることで、べたつきの無さに優れ、かつ再剥離性にも優れた密着層を構成することができることが確認された。
【0069】
<実施例11〜15>
密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス−メタクリル酸メチル変性タイプ(固形分60質量%、製品名:MG−15、株式会社レヂテックス社製)及び合成樹脂エマルジョンとしてアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分60質量%、ガラス転移温度−40℃、製品名:KR−161、光洋産業株式会社製)を用意し、上記二つの成分を質量基準で、100:5、100:10、100:25、100:43及び100:90の割合となるようにそれぞれ配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0070】
<実施例16〜20>
密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス−メタクリル酸メチル変性タイプ(固形分60質量%、製品名:MG−15、株式会社レヂテックス社製)及び合成樹脂エマルジョンとしてアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分60質量%、ガラス転移温度−68℃、製品名:AP620、中央理化工業株式会社製)を用いた以外は実施例11〜15と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0071】
<比較例8>
合成樹脂エマルジョン成分を使用しない、天然ゴムラテックス−メタクリル酸メチル変性タイプのみからなる密着層組成物を用いた以外は実施例11〜15と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0072】
<比較例9>
天然ゴムラテックス−メタクリル酸メチル変性タイプ及びアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分60質量%、ガラス転移温度−40℃、製品名:KR−161、光洋産業株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例11〜15と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0073】
<比較例10>
天然ゴムラテックス−メタクリル酸メチル変性タイプ及びアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分60質量%、ガラス転移温度−68℃、製品名:AP620、中央理化工業株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例11〜15と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0074】
<比較試験2>
次に、実施例11〜20及び比較例8〜10で得られた床用再剥離型シートについて、上記比較試験1と同様に、タックテスター試験及び90°ピール試験を行い、形成した密着層の配合比によるべたつきの無さ、粘着力、再剥離性及び密着力を評価した。それらの結果を次の表2に示す。
【0075】
【表2】

表2から明らかなように、実施例11〜20のように天然ゴムラテックス−メタクリル酸メチル変性タイプに対してもアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョンの配合割合が5質量部〜90質量部の範囲とすることで、べたつきの無さに優れ、かつ再剥離性にも優れた密着層を構成することができることが確認された。
【0076】
<比較例11〜13>
密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス(固形分60質量%、製品名:ULACOL、株式会社レヂテックス社製)及び合成ゴムエマルジョンとしてエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムエマルジョン(固形分52質量%、製品名:セポレックスEP125、住友精化株式会社製)を用意し、上記二つの成分を質量基準で、100:5、100:43及び100:90の割合となるようにそれぞれ配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0077】
<比較例14〜16>
密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス及び合成ゴムエマルジョンとしてクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)ゴムエマルジョン(固形分40質量%、製品名:CSM−200、住友精化株式会社製)を用いた以外は比較例11〜13と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0078】
<比較例17〜19>
密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス及び合成ゴムエマルジョンとしてシリコーンゴムエマルジョン(固形分34質量%、製品名:BY 22−856 SR、東レ・ダウコーニング株式会社製)を用いた以外は比較例11〜13と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0079】
<比較例20>
天然ゴムラテックス及びエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムエマルジョン(固形分52質量%、製品名:セポレックスEP125、住友精化株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は比較例11〜13と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0080】
<比較例21>
天然ゴムラテックス及びクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)ゴムエマルジョン(固形分40質量%、製品名:CSM−200、住友精化株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は比較例11〜13と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0081】
<比較例22>
天然ゴムラテックス及びシリコーンゴムエマルジョン(固形分34質量%、製品名:BY 22−856 SR、東レ・ダウコーニング株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は比較例11〜13と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0082】
<比較例23>
天然ゴムラテックス成分を使用しない、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムエマルジョン(固形分52質量%、製品名:セポレックスEP125、住友精化株式会社製)のみからなる密着層組成物を用いた以外は比較例11〜13と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0083】
<比較例24>
天然ゴムラテックス成分を使用しない、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)ゴムエマルジョン(固形分40質量%、製品名:CSM−200、住友精化株式会社製)のみからなる密着層組成物を用いた以外は比較例11〜13と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0084】
<比較例25>
天然ゴムラテックス成分を使用しない、シリコーンゴムエマルジョン(固形分34質量%、製品名:BY 22−856 SR、東レ・ダウコーニング株式会社製)のみからなる密着層組成物を用いた以外は比較例11〜13と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0085】
<比較試験3>
次に、比較例11〜25で得られた床用再剥離型シートについて、上記比較試験1と同様に、タックテスター試験及び90°ピール試験を行い、形成した密着層の配合比によるべたつきの無さ、粘着力、再剥離性及び密着力を評価した。それらの結果を次の表3に示す。
【0086】
【表3】

表3から明らかなように、比較例11〜25のように天然ゴムラテックスに対して合成ゴムエマルジョンを配合しただけでは十分な密着力を得られなかった。
【0087】
<実施例21〜24>
密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス(固形分60質量%、製品名:ULACOL、株式会社レヂテックス社製)及び合成樹脂エマルジョンとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(固形分50質量%、ガラス転移温度−30℃、製品名:S408HQE、住化ケムテックス株式会社製)を用意し、上記二つの成分を質量基準で、100:5、100:10、100:43及び100:90の割合となるようにそれぞれ配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0088】
<実施例25〜28>
密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス及び合成樹脂エマルジョンとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(固形分50質量%、ガラス転移温度−15℃、製品名:S755、住化ケムテックス株式会社製)を用いた以外は実施例21〜24と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0089】
<比較例26>
天然ゴムラテックス及びエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(固形分50質量%、ガラス転移温度−30℃、製品名:S408HQE、住化ケムテックス株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例21〜24と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0090】
<比較例27>
天然ゴムラテックス及びエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(固形分50質量%、ガラス転移温度−15℃、製品名:S755、住化ケムテックス株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例21〜24と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0091】
<比較例28>
天然ゴムラテックス成分を使用しない、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(固形分50質量%、ガラス転移温度−30℃、製品名:S408HQE、住化ケムテックス株式会社製)のみからなる密着層組成物を用いた以外は実施例21〜24と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0092】
<比較例29>
天然ゴムラテックス成分を使用しない、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(固形分50質量%、ガラス転移温度−15℃、製品名:S755、住化ケムテックス株式会社製)のみからなる密着層組成物を用いた以外は実施例21〜24と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0093】
<比較試験4>
次に、実施例21〜28及び比較例26〜29で得られた床用再剥離型シートについて、上記比較試験1と同様に、タックテスター試験及び90°ピール試験を行い、形成した密着層の配合比によるべたつきの無さ、粘着力、再剥離性及び密着力を評価した。それらの結果を次の表4に示す。
【0094】
【表4】

表4から明らかなように、実施例21〜28のように天然ゴムラテックスに対してエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンの配合割合が5質量部〜90質量部の範囲とすることで、べたつきの無さに優れ、かつ再剥離性にも優れた密着層を構成することができることが確認された。
【0095】
<実施例29〜32>
密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス(固形分60質量%、製品名:ULACOL、株式会社レヂテックス社製)及び合成樹脂エマルジョンとしてスチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(固形分48質量%、ガラス転移温度−27℃、製品名:L−7850、旭化成ケミカルズ株式会社製)を用意し、上記二つの成分を質量基準で、100:5、100:10、100:43及び100:90の割合となるようにそれぞれ配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0096】
<実施例33〜36>
密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス及び合成樹脂エマルジョンとしてスチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(固形分50質量%、ガラス転移温度−15℃、製品名:A7269、旭化成ケミカルズ株式会社製)を用いた以外は実施例29〜32と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0097】
<比較例30>
天然ゴムラテックス及びスチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(固形分48質量%、ガラス転移温度−27℃、製品名:L−7850、旭化成ケミカルズ株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例29〜32と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0098】
<比較例31>
天然ゴムラテックス及び合成樹脂エマルジョンとしてスチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(固形分50質量%、ガラス転移温度−15℃、製品名:A7269、旭化成ケミカルズ株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例29〜32と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0099】
<比較例32>
天然ゴムラテックス成分を使用しない、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(固形分48質量%、ガラス転移温度−27℃、製品名:L−7850、旭化成ケミカルズ株式会社製)のみからなる密着層組成物を用いた以外は実施例29〜32と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0100】
<比較例33>
天然ゴムラテックス成分を使用しない、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(固形分50質量%、ガラス転移温度−15℃、製品名:A7269、旭化成ケミカルズ株式会社製)のみからなる密着層組成物を用いた以外は実施例29〜32と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0101】
<比較例34>
天然ゴムラテックス及び合成樹脂エマルジョンとしてスチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(固形分50質量%、ガラス転移温度−13℃、製品名:HA−030、旭化成ケミカルズ株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例29〜32と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0102】
<比較試験5>
次に、実施例29〜36及び比較例30〜34で得られた床用再剥離型シートについて、上記比較試験1と同様に、タックテスター試験及び90°ピール試験を行い、形成した密着層の配合比によるべたつきの無さ、粘着力、再剥離性及び密着力を評価した。それらの結果を次の表5に示す。
【0103】
【表5】

表5から明らかなように、実施例29〜36のように天然ゴムラテックスに対してスチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョンの配合割合が5質量部〜90質量部の範囲とすることで、べたつきの無さに優れ、かつ再剥離性にも優れた密着層を構成することができることが確認された。
【0104】
また、表1〜表5から明らかなように、ガラス転移温度が下限値未満では密着層が軟らかくなりすぎ、再剥離性が低下し、上限値を越えると密着層が硬くなり密着性が低下する。この結果から、密着層を構成する成分として、ガラス転移温度が−70℃〜−15℃までの合成樹脂エマルジョンを混合させるのが適当であることが確認された。
【0105】
<実施例37〜41>
実施例1〜5と同様にして得られた床用再剥離型シートを用い、この床用再剥離型シートのシート状基材層であるポリエステル不織布の表面側に粘着剤層(製品名:KR−159、光洋産業株式会社製)を付け、この粘着剤層を介して床用再剥離型シートを硬質な第二床仕上材である、木質床材(フローリング)の裏面に固定することにより、床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0106】
<実施例42〜46>
硬質な第二床仕上材としてプラスチック系床タイルを用いた以外は実施例37〜41と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0107】
<実施例47〜51>
硬質な第二床仕上材に代えて、軟質な第二床仕上材としてタイルカーペットを用いた以外は実施例37〜41と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0108】
<実施例52〜56>
硬質な第二床仕上材に代えて、軟質な第二床仕上材として表示シートを用いた以外は実施例37〜41と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0109】
<比較例35>
合成樹脂エマルジョン成分を使用しない、天然ゴムラテックスのみからなる密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして得られた床用再剥離型シートを用い、この床用再剥離型シートのシート状基材層であるポリエステル不織布の表面側に粘着剤層(製品名:KR−159、光洋産業株式会社製)を付け、この粘着剤層を介して床用再剥離型シートを硬質な第二床仕上材である、木質床材(フローリング)の裏面に固定することにより、床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0110】
<比較例36>
硬質な第二床仕上材としてプラスチック系床タイルを用いた以外は比較例35と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0111】
<比較例37>
天然ゴムラテックス及びアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分60質量%、ガラス転移温度−40℃、製品名:KR−161、光洋産業株式会社製)の二つの成分を質量基準で100:150の割合となるように配合して調製した密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして得られた床用再剥離型シートを用い、この床用再剥離型シートのシート状基材層であるポリエステル不織布の表面側に粘着剤層(製品名:KR−159、光洋産業株式会社製)を付け、この粘着剤層を介して床用再剥離型シートを硬質な第二床仕上材である、木質床材(フローリング)の裏面に固定することにより、床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0112】
<比較例38>
硬質な第二床仕上材としてプラスチック系床タイルを用いた以外は比較例37と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0113】
<比較例39>
天然ゴムラテックス成分を使用しない、アクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(製品名:KR−159、光洋産業株式会社製、強粘着タイプ)のみからなる密着層組成物を用いた以外は実施例1〜5と同様にして得られた床用再剥離型シートを用い、この床用再剥離型シートのシート状基材層であるポリエステル不織布の表面側に粘着剤層(製品名:KR−159、光洋産業株式会社製)を付け、この粘着剤層を介して床用再剥離型シートを硬質な第二床仕上材である、木質床材(フローリング)の裏面に固定することにより、床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0114】
<比較例40>
硬質な第二床仕上材としてプラスチック系床タイルを用いた以外は比較例39と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0115】
<比較例41>
硬質な第二床仕上材に代えて、軟質な第二床仕上材としてタイルカーペットを用いた以外は比較例35と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0116】
<比較例42>
硬質な第二床仕上材に代えて、軟質な第二床仕上材として表示シートを用いた以外は比較例35と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0117】
<比較例43>
硬質な第二床仕上材に代えて、軟質な第二床仕上材としてタイルカーペットを用いた以外は比較例37と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0118】
<比較例44>
硬質な第二床仕上材に代えて、軟質な第二床仕上材として表示シートを用いた以外は比較例37と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0119】
<比較例45>
硬質な第二床仕上材に代えて、軟質な第二床仕上材としてタイルカーペットを用いた以外は比較例39と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0120】
<比較例46>
硬質な第二床仕上材に代えて、軟質な第二床仕上材として表示シートを用いた以外は比較例39と同様にして床用再剥離型シート付き第二床仕上材を得た。
【0121】
<比較試験6>
次に、実施例37〜56及び比較例35〜46で得られた床用再剥離型シート付き第二床仕上材について、第二床仕上材が硬質のフローリングとプラスチック系床タイルの場合は割裂試験を行い、第二床仕上材が軟質のタイルカーペットと表示シートの場合は90°ピール試験を行い、形成した密着層の配合比による再剥離性及び密着力を評価した。それらの結果を次の表6,表7に示す。
【0122】
<割裂試験>
先ず、フローリングとして、割裂試験用治具を挿入させる切り込み(幅10mm×高さ8mm×奥行き40mm)を入れたものを用意し、床用再剥離型シート付き第二床仕上材を幅100mm×長さ100mmに切り出し、密着層がフローリングの表面に当接するように、床用再剥離型シートをフローリングに60kgfの荷重で圧着させた。次に、フローリングを固定し、切り込みに治具を挿入し、精密万能試験機(島津製作所社製;製品名AGS−500B)を上方向に稼働させる試験を行った。なお、引張り速度は100mm/minとし、最大荷重を割裂抵抗値とした。また、フローリングへの糊残りの状態を目視で判断し、再剥離性を評価した。
【0123】
<90°ピール試験>
図9(a)に示すように、幅25mm×長さ200mmの試験片30を切り出し、試験片30の長さ100mm部分をフローリングからなる試験基材31に60kgfの荷重で圧着させた。そして図9(b)に示すように、室温(23℃)環境にて試験片を90°方向へのピーリング試験を行った。なお、引張り速度は100mm/minとし、最大荷重を90°ピール試験の評価とした。また、試験基材31への糊残りの状態を目視で判断し、再剥離性を評価した。
【0124】
【表6】

表6から明らかなように、実施例37〜46は密着性を十分に有し、かつ糊残りが見られない結果が得られた。一方、比較例35,36は密着せず、十分な密着性が得られておらず、比較例37〜40は密着層の凝集破壊が起き、糊残りが見られた。
【0125】
【表7】

表7から明らかなように、実施例47〜56は密着性を十分に有し、かつ糊残りが見られない結果が得られた。一方、比較例41,42は自然剥離してしまい、十分な密着性が得られておらず、比較例43〜46は密着層の凝集破壊が起き、糊残りが見られた。
【0126】
<実施例57,58>
密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス及び合成樹脂エマルジョンとしてアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分60質量%、ガラス転移温度−40℃、製品名:KR−161、光洋産業株式会社製)を用意し、上記二つの成分を質量基準で、100:10の割合となるように配合して密着層組成物を調製した。そして、密着層形成工程において、最終的に密着層の厚さが55μm及び148μmの厚さ(厚さは実測値による数値)となるようにシート状基材層の裏面側に上記密着層組成物を塗工した以外は実施例1〜5と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0127】
<比較例47,48>
密着層形成工程において、密着層の厚さが41μm及び163μmの厚さ(厚さは実測値による数値)となるようにシート状基材層の裏面側に上記密着層組成物を塗工した以外は実施例57,58と同様にして床用再剥離型シートを得た。
【0128】
<比較試験7>
次に、実施例57,58及び比較例47,48で得られた床用再剥離型シートについて、上記比較試験1と同様に、タックテスター試験及び90°ピール試験を行い、形成した密着層の厚さによるべたつきの無さ、粘着力、再剥離性及び密着力を評価した。それらの結果を次の表8に示す。なお、表8には実施例2の結果も併せて示す。
【0129】
【表8】

表8から明らかなように、密着層を所定の厚さとした実施例57,実施例2,実施例58では、べたつきの無さに優れ、かつ再剥離性にも優れた密着層を構成することができることが確認された。一方、比較例47は密着層の厚さが薄すぎたためか、90°ピール試験では自然剥離を生じていた。また、比較例48は密着層の厚さが厚すぎたためか、気泡が発生して表面に凹凸ができ製膜できなかった。この結果から密着層には適切な範囲が存在することが判った。
【0130】
<実施例59>
先ず、粘着剤層を構成する粘着剤組成物として、アクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分53質量%、製品名:KR−159、光洋産業株式会社製)を、シート状基材層として、厚さ100μmのポリエステル不織布(坪量40g/m2、製品名:ミライフ、JX日鉱日石ANCI株式会社製)を、密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス(固形分60質量%、製品名:ULACOL、株式会社レヂテックス社製)及びアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(固形分60質量%、ガラス転移温度−40℃、製品名:KR−161、光洋産業株式会社製)をそれぞれ用意し、上記密着層の二つの成分を質量基準で、100:10の割合で配合して密着層組成物を調製した。
【0131】
次いで、図7に示す粘着剤層形成工程を行い、ポリエステル不織布の表面側に80〜90μmの厚さとなるように粘着剤組成物を塗工し、乾燥炉に通じて温度110℃、4〜5分間の条件で乾燥することにより、ポリエステル不織布の表面側に粘着剤層を形成した。そして、形成した粘着剤層側に保護シートを付けて巻き取り、巻物状の積層体とした。
【0132】
次に、図8に示す密着層形成工程を行い、巻物状の積層体の、ポリエステル不織布の裏面側に90μmの厚さとなるように密着層組成物を塗工し、乾燥炉に通じて温度80℃、5〜6分間の条件で乾燥することにより、ポリエステル不織布の裏面側に密着層を形成した。そして、形成した密着層側に保護シートを付けて巻き取った。
【0133】
最後に、巻物状の状態で1週間〜10日間程度養生して平衡含水率にさせることで、床用再剥離型シートを得た。
【0134】
<比較試験8>
次に、実施例59のシートについて、以下に示す、ホルムアルデヒド放散量試験を行い、シートから発せられるホルムアルデヒド放散濃度を評価した。それらの結果を次の表9に示す。なお次の表10に参考資料としてホルムアルデヒド性能区分基準を示す。
【0135】
<ホルムアルデヒド放散量試験(デシケーター法)>
先ず、幅50mm×長さ150mm×製品厚さの試験片を10枚を1組として、2組用意した。そしてこの試験片を容器に入れて密封し、温度20℃、湿度65%RHに維持された恒温恒湿室内にて24時間養生した。次に、図10に示すように、ガラス製のデシケーター41内に蒸留水42を300mlと1組の試験片40をセットして、温度20℃、湿度65%RH環境下で24時間静置した。静置後は、デシケーター41内の蒸留水42を取り出し、蒸留水42に溶け込んだホルムアルデヒドを吸光光度法によって分析することで、ホルムアルデヒド放散量濃度を測定した。
【0136】
【表9】

【0137】
【表10】

表9から明らかなように、実施例59のシートでは、殆どホルムアルデヒドが放散されておらず、表10に示す性能区分F☆☆☆☆をクリアする環境優れたシートであることが確認された。
【0138】
<比較例49>
混合容器に固形分換算で100部のN−メチロール基を含有しないカルボン酸変性(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂(組成:アクリル酸エチル46/アクリル酸ブチル46/アクリロニトリル6.4/アクリル酸0.8/メタクリル酸0.8の共重合体樹脂、ガラス転移温度−17℃)、固形分換算で3.64部のオキサゾリン系架橋剤(オキサゾリン基含有ポリマー、DIC株式会社製、DICNAL GX)及び固形分換算で2.73部の酸化亜鉛水分散体(正同化学工業株式会社製、酸化亜鉛2種)を添加し、ディスパーで撹拌した。次に、撹拌を継続しながら、固形分換算で1.2部の増粘剤(カルボン酸変性アクリル酸エステル重合体、東亞合成株式会社製、アロンB−300)及び固形分換算で3.55部の整泡剤〔アルキルベタイン両性化物・脂肪酸アルカノールアミド混合物(DIC株式会社製、DICNAL M−20)/スルホン酸型アニオン界面活性剤(DIC株式会社製、DICNAL M−40)の1/1混合物〕をこの順に添加し、150メッシュで濾過した。更に、撹拌を継続しながら、ホルムアルデヒド捕捉剤として、固形分換算で0.27部の硫酸ヒドロキシルアミンを添加し、最後に、アンモニアを添加して粘度を4500mPa・sに調整して発泡性樹脂組成物を得た。
【0139】
この発泡性樹脂組成物を泡立て器で撹拌し、発泡倍率が2倍になるように泡立て、発泡倍率が1.6倍になったところで、撹拌速度を落として、更に5分間撹拌を続行した。
【0140】
得られた発泡混合物をポリエチレンテレフタレートフィルムに、0.5mmのアプリケーターを用いて塗布した。これをオーブン中に入れ、80℃で2分間、その後130℃で3分間保持して、乾燥架橋を行わせて基材上に形成された発泡体(自己吸着性シート)を得た。なお、本発明で「吸着」とは、組成物自体は被着体に固定しないが、組成物中の微細なセルが吸盤効果を発揮し固定させるものをいう。
【0141】
<比較試験9>
次に、実施例59及び比較例49のシートについて、以下に示す、90°ピール試験を行い、一定温度に維持した後の再剥離性を評価した。それらの結果を次の表11に示す。
【0142】
<90°ピール試験>
図9(a)に示すように、幅25mm×長さ200mmの試験片30を切り出し、試験片30の長さ100mm部分をフローリング31に2kgのローラーで5往復させて密着させた。これを試験体とし、複数の試験体を作製した。次に、作製した試験体を5℃、20℃、60℃の温度環境にそれぞれ維持し、1ヶ月間放置した。その後、放置した温度環境下から試験体を取り出して室温(23℃)に1時間置いた後、図9(b)に示すように、室温(23℃)環境にて試験片を90°方向へのピーリング試験を行った。なお、引張り速度は300mm/minとした。また、測定開始後、最初の25mmの長さにおける測定値は無視し、その後に続く、75mmの長さにおける測定値を平均し、この平均値を再剥離性の値とした。また、フローリングへの糊残りの状態を目視で判断した。
【0143】
【表11】

表11から明らかなように、実施例59及び比較例49ともに5℃、20℃環境に放置したシートでは、再剥離性に優れた結果が得られた。しかし、60℃環境では、実施例59のシートが再剥離性に優れた結果が得られているのに対し、比較例49のシートは材破し、フローリングに吸着層が残留してしまっていた。この結果から比較例49のシートは高温環境下で長期間使用すると粘着力が経時増加してしまい、上記不具合を生じることから、床面施工用途には適していないことが判る。
【符号の説明】
【0144】
10 床用再剥離型シート
11 シート状基材層
12 密着層
13 粘着剤層或いは接着剤層
14 保護シート
17 床面
18 木質の第一床仕上材
19 第二床仕上材(木質床材(フローリング)、プラスチック系床タイル、タイルカーペット又は表示シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面の表面に設けられた木質の第一床仕上材と、木質床材(フローリング)、プラスチック系床タイル、タイルカーペット又は表示シートからなる第二床仕上材との間に介在する、シート状基材層の裏面側に密着層が形成されてなる床用再剥離型シートにおいて、
前記密着層が天然ゴムラテックス100質量部に対して合成樹脂エマルジョン5〜90質量部を含むことにより構成され、
前記合成樹脂エマルジョンのガラス転移温度が−70℃〜−15℃であって、
前記密着層の厚さが50〜150μmである
ことを特徴とする床用再剥離型シート。
【請求項2】
裏面側に密着層が形成された前記シート状基材層の表面側に粘着剤層或いは接着剤層が形成されてなる請求項1記載の床用再剥離型シート。
【請求項3】
前記天然ゴムラテックスがアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル変性天然ゴムラテックスである請求項1又は2記載の床用再剥離型シート。
【請求項4】
前記粘着剤層がエマルジョン型粘着剤或いは溶剤型粘着剤から構成され、前記接着剤層がエマルジョン型接着剤、溶剤型接着剤或いはホットメルト型接着剤から構成される請求項2記載の床用再剥離型シート。
【請求項5】
前記シート状基材層が不織布からなる請求項1ないし4いずれか1項に記載の床用再剥離型シート。
【請求項6】
前記密着層の表面に、更に保護シートが積層されてなる請求項1記載の床用再剥離型シート。
【請求項7】
前記密着層及び前記粘着剤層或いは接着剤層の各表面に、更に保護シートが積層されてなる請求項2記載の床用再剥離型シート。
【請求項8】
床面の表面に設けられた木質の第一床仕上材の表面に、更に木質床材(フローリング)、プラスチック系床タイル、タイルカーペット又は表示シートからなる第二床仕上材を固定する床仕上施工方法において、
請求項1ないし5いずれか1項に記載の床用再剥離型シートの前記シート状基材層の表面側に前記第二床仕上材が接着或いは粘着固定され、前記密着層の表面が、前記木質の第一床仕上材の表面に当接されるように固定することを特徴とする床仕上施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−53509(P2013−53509A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−271010(P2011−271010)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【出願人】(390001339)光洋産業株式会社 (46)
【Fターム(参考)】