説明

床用化粧シート及び床用化粧材

【課題】耐衝撃性及び耐汚染性を悪化させることなく、高荷重条件下での耐傷性に優れた床用化粧シート及び床用化粧材を提供する。
【解決手段】基材シート上に、少なくとも透明性樹脂層及び表面保護層を有する床用化粧シートであって、(1)前記透明性樹脂層は、前記表面保護層の下層に積層されており、且つマルテンス硬さが20N/mm以上であり、(2)前記表面保護層は、層厚が15〜40μmであり、且つマルテンス硬さが70超〜140N/mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床用化粧シート及び床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
床用化粧シートとして、耐傷性を向上させるために表面保護層に電離放射線硬化型樹脂を塗工し、硬化させる方法が知られている。しかし、この様な床用化粧シートであっても、全く傷が付かないものではなく、高荷重条件下で傷付き試験を行うと、傷が付くという問題があった(特許文献1)。
【0003】
そこで、床用化粧シートの高荷重条件下での耐傷性を更に向上させるために、表面保護層を硬くすることが提案されている。しかし、表面保護層を硬くし過ぎると、表面保護層の塗膜が脆くなり、落下物等に対する耐衝撃性が悪くなるので、その結果、塗膜が割れるという問題があった。
【0004】
また、表面保護層の塗膜の膜厚を厚くすることで、床用化粧シートの耐傷性を向上させることも提案されている。しかし、この場合も、同様に表面保護層の塗膜が脆くなり、耐衝撃性が悪くなるので、その結果、塗膜が割れるという問題があった。
【0005】
更に、比較的柔らかい樹脂を厚く塗工して表面保護層を形成することで、床用化粧シートの耐傷性と耐衝撃性を両立させることが提案されている。しかし、床用化粧シートの表面保護層が柔らかすぎると、耐汚染性が悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−74683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
耐衝撃性及び耐汚染性を悪化させることなく、高荷重条件下での耐傷性に優れた床用化粧シート及び床用化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、床用化粧シートに、特定の塗膜厚さ及びマルテンス硬さを有する表面保護層、並びに、特定のマルテンス硬さを有する透明性樹脂層を備えることで、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の床用化粧シートに関する。
1.基材シート上に、少なくとも透明性樹脂層及び表面保護層を有する床用化粧シートであって、
(1)前記透明性樹脂層は、前記表面保護層の下層に積層されており、且つマルテンス硬さが20N/mm以上であり、
(2)前記表面保護層は、層厚が15〜40μmであり、且つマルテンス硬さが70超〜140N/mmである、
ことを特徴とする床用化粧シート。
2.前記表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂を含有する、前記項1に記載の床用化粧シート。
3.前記透明性樹脂層の厚さが、150μm未満である、前記項1又は2に記載の床用化粧シート。
4.前記項1〜3のいずれかに記載の床用化粧シートの基材シート側を被着材に貼り合わせてなる床用化粧材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の床用化粧シートは、層厚及びマルテンス硬さが特定の値である表面保護層、並びに、マルテンス硬さが特定の値である透明性樹脂層を備えることにより、高荷重条件下での耐傷付き性が向上しており、耐衝撃性にも優れ、また耐汚染性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本明細書におけるマルテンス硬さの測定に用いるダイヤモンド圧子(a)、押し込み操作の模式図(b)及び押し込み荷重と変位の一例(c)を示す図である。
【図2】本発明の床用化粧シート及び床用化粧材の実施形態の一例(層構成概念図)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の床用化粧シート及び床用化粧材について詳細に説明する。
【0013】
本発明の床用化粧シートは、基材シート上に、少なくとも透明性樹脂層及び表面保護層を有する床用化粧シートであって、
(1)前記透明性樹脂層は、前記表面保護層の下層に積層されており、且つマルテンス硬さが20N/mm以上であり、
(2)前記表面保護層は、層厚が15〜40μmであり、且つマルテンス硬さが70超〜140N/mmである、
ことを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の床用化粧シートの各構成について説明する。
マルテンス硬さ
本明細書におけるマルテンス硬さは、表面皮膜物性試験機(PICODENTOR HM-500、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて測定される値であり、具体的な測定方法は次の通りである。
【0015】
この測定方法では、図1(a)に示されるダイヤモンド圧子(ビッカーズ圧子)を用いて、図1(b)に示すように測定試料にダイヤモンド圧子を押し込み、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm)を計算し、試験荷重F(N)を割ることにより硬さを求める。押し込み条件は、室温(実験室環境温度)において、図1(c)に示される通り、先ず0〜5mNまでの負荷を10秒間で加え、次に5mNの負荷で5秒間保持し、最後に5〜0mNまでの除荷を10秒間で行う。そして、表面積A、試験荷重Fに基づきF/Aにより求められる硬度が、前記マルテンス硬さ(N/mm)である。
【0016】
なお、本明細書では、当該層以外の層の硬さの影響を回避するために表面保護層及び透明性樹脂層の断面のマルテンス硬さを測定した。これに際し、床用化粧シートを樹脂(冷間硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で包埋し、室温で24時間以上放置して硬化させた後、硬化した埋包サンプルを機械研磨して表面保護層及び透明性樹脂層の断面を露出させ、各層の断面に(充填材等の微粒子が層中に含まれる場合には当該微粒子を避けた位置に)ダイヤモンド圧子を押し込むことにより各層の断面のマルテンス硬さを測定した。
【0017】
基材シート
本発明の床用化粧シートは、基材シートを備えており、その表面(おもて面)に表面保護層及び透明性樹脂層が積層される。
【0018】
基材シートとしては、例えば、熱可塑性樹脂により形成されたものが好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル等が挙げられる。上記の中でもポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。
【0019】
基材シートは、着色されていても良い。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
【0020】
基材シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0021】
充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。充填剤の含有量は、樹脂成分100重量部に対して0〜100重量部程度が好ましく、10〜50重量部程度がより好ましい。
【0022】
基材シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には50〜250μmが好ましい。
【0023】
基材シートは、必要に応じて、絵柄模様層を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従って実施すれば良い。また、必要に応じて、基材シートの裏面にコロナ放電処理を施したり、裏面プライマー層を形成したりしてもよい。
【0024】
裏面プライマー層
前述の基材シートの裏面には、必要に応じて、裏面プライマー層(プライマー層B)を設けても良い。例えば、基材シートと被着材とを接着して床用化粧材を作製する際に有利である。なお、本発明の床用化粧シートに後述するバッカー層が設けられている場合は、当該裏面プライマー層が基材シートとバッカー層(バッカー層のおもて面に接着剤層Bが設けられている場合は当該層も含む)とを接着する際に有利である。
【0025】
裏面プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シートの片面又は両面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマーには、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0026】
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1〜100g/m、好ましくは0.1〜50g/m程度である。
【0027】
裏面プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μm程度である。
【0028】
絵柄模様層
本発明の床用化粧シートは、所望により、基材シートの表面(おもて面)に、絵柄模様層を設けてもよい。
【0029】
絵柄模様層は、床用化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与するものであり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0030】
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。
【0031】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等がさらに配合してもよい。
【0032】
結着材樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。
【0033】
より具体的には、例えば、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等を使用できる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂変性又は混合樹脂、その他の樹脂も使用できる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上で使用できる。
【0034】
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層(これを着色隠蔽層とも言う)を形成する場合には、例えば、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法も挙げられる。
【0035】
上記以外にも、例えば、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法などを用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0036】
絵柄模様層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1〜15μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜10μm程度である。
【0037】
接着剤層
本発明の床用化粧シートは、所望により、絵柄模様層と透明性樹脂層との間に基材シートの表面(おもて面)に、接着剤層(接着剤層A)を設けてもよい。
【0038】
接着剤層は、絵柄模様層が認識できる限り、透明でも半透明でもよい。また、接着剤層で使用する接着剤は、特に限定されず、絵柄模様層又は透明性樹脂層を構成する成分等に応じて適宜選択することができる。床用化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら接着剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
【0039】
また、必要に応じ、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。
【0040】
接着剤層は、例えば、接着剤を絵柄模様層の上に塗布後、一度乾燥し、それから、透明性樹脂を積層することにより形成できる。接着剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムースコート、コンマコート等の方法が採用できる。
【0041】
接着剤層の厚みは、透明性樹脂層、使用する接着剤の種類等によって異なるが、一般的には0.1〜30μm程度とすれば良い。
【0042】
透明性樹脂層
本発明の床用化粧シートは、基材シートの表面(おもて面)と表面保護層の間に、透明性樹脂層が積層される。
【0043】
透明性樹脂層は、比較的高荷重での耐傷付き性を発揮させるという理由から、マルテンス硬さは、20N/mm以上である。また、透明性樹脂層のマルテンス硬さは、好ましくは30〜50N/mmである。なお、マルテンス硬さは、1)異なる硬さを有する2種以上の樹脂を混合する、2)樹脂にエラストマーを混合する、等によって適宜設定することができる。
【0044】
透明性樹脂層を構成する樹脂は、マルテンス硬さが前記範囲を満たし、下層に絵柄模様層がある場合は透明であるか、下層の絵柄模様層が視認できる範囲内で半透明であれば、制限されない。その様な樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。上記樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂を主成分とする共重合体も使用できる。
【0045】
上記の中でも、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。より好ましくは、立体規則性を有するポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂を用いる場合は、溶融ポリオレフィン系樹脂を押し出し法により透明性樹脂層を形成することが望ましい。
【0046】
ポリオレフィン系樹脂としては単独重合体又は共重合体のいずれも使用することができる。例えばポリプロピレン系樹脂であれば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は市販品(例えばポリプロピレン系樹脂であれば、プライムポリマー株式会社製(プライムTPO「J−5900」、プライムポリプロ「F219DA」)等)を使用することができる。
【0047】
透明性樹脂層には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0048】
透明性樹脂層の厚さは特に限定されないが、透明性樹脂層の厚みが薄すぎると耐摩耗性が低下する。また厚すぎると切削時に毛羽立つ等の問題が生じるという理由から、150μm未満が好ましく、40〜100μmがより好ましく、60〜80μmが更に好ましい。
【0049】
透明性樹脂層は、必要に応じて、上層のプライマー層との密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。
【0050】
プライマー層
本発明の床用化粧シートでは、所望により、透明性樹脂層と表面保護層の間にプライマー層(プライマー層A)を設けてもよい。プライマー層は、透明性樹脂層と表面保護層との接着性(密着性)を高める機能を有する。また、表面保護層の延伸部に微細な割れや白化を生じにくくする効果を有する。また、プライマー層を設けることにより、前記表面保護層の形成を容易することができる。前記プライマー層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。
【0051】
プライマー層は、公知の又は市販のプライマー剤を前記透明性樹脂層の上に塗布することにより形成できる。特に、前記プライマー層は、樹脂を架橋させることにより形成された層であることが好ましい。そのような層を形成するためのプライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。これらプライマー剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
プライマー層には、艶消し剤としてシリカを含有させてもよい。プライマー剤中におけるシリカの含有量は、樹脂成分100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましく、10〜40重量部がより好ましい。更に、必要に応じて、プライマー剤に公知の添加剤を含有させてもよい。例えば、プライマー剤にヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤を含有させることにより、前記透明性樹脂層と前記表面保護層との密着性をより向上させることができる。また、プライマー層には紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の耐候性剤を加えてもよい。
【0053】
プライマー層は、例えば直接コーティング法によって形成することができ、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等を用いることができる。
【0054】
プライマー層の厚さは0.1〜10μm程度であることが好ましい。0.1μm以上であると、表面保護層の割れ、破断、白化等を防ぐ効果を十分に発揮させることができる。一方、プライマー層の厚さが10μm以下であれば、プライマー層を塗工した際、塗膜の乾燥、硬化が安定であるので成形性が変動することが無く好ましい。以上の点からプライマー層の厚さは0.1〜10μmであることが好ましい。
【0055】
表面保護層
本発明の床用化粧シートは、基材シートの表面(おもて面)に、透明性樹脂層及び表面保護層が順に積層される。
【0056】
表面保護層は最表層であり、比較的高荷重での耐傷付き性を発揮しつつ、表面保護層がもろくならず、耐衝撃性にも優れるという理由から、層厚が15〜40μmである。また、表面保護層の層厚は、好ましくは25〜35μmである。特に、表面保護層の層厚が15μm未満では、十分な耐傷性が得られない。
【0057】
表面保護層は、比較的高荷重での耐傷付き性を発揮しつつ、かつ表面保護層がもろくならず耐衝撃性に優れ、さらに耐汚染性にも優れるという理由から、マルテンス硬さは、70超〜140N/mmである。また、表面保護層のマルテンス硬さは、好ましくは90〜140N/mmであり、より好ましくは90〜120N/mmである。
【0058】
なお、マルテンス硬さは、1)異なる硬さを有する2種以上の樹脂を混合する、2)樹脂にエラストマーを混合する、等によって適宜設定することができる。また、後述する電離放射線硬化型樹脂を表面保護層に用いる場合は、1分子内に有する重合性の官能基の数を変更したり異なる官能基数を有する樹脂を混合して用いたりする等によってマルテンス硬さを所望の値に調整することもできる。また、後述する2液硬化型ウレタン系樹脂を表面保護層に用いる場合は、ポリオール系の主剤とイソシアネート系の硬化剤の混合比率を変える等によってマルテンス硬さを所望の値に調整することもできる。
【0059】
表面保護層は所定のマルテンス硬さが得られる範囲であれば限定的ではないが、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。実質的には、これらの樹脂から形成されているものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂により透明性表面保護層を形成する場合には、化粧シートの耐摩性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高め易い。
【0060】
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能な官能基を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0061】
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0062】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250〜100000程度が好ましい。ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0064】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
【0065】
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常190〜380nmが好ましい。
【0066】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましい。
【0067】
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
【0068】
表面保護層は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲において、耐候剤、抗菌剤、抗アレルゲン剤、消臭剤といった機能剤を含んでもよい。
【0069】
表面保護層は、例えば、透明性ポリプロピレン系樹脂層の上に電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。電離放射線硬化型樹脂の場合には、電離放射線照射により樹脂硬化する。
【0070】
床用化粧シートの製造方法
本発明の床用化粧シートを構成する各層の積層は、例えば、(ア)基材シートの裏面に裏面プライマー層を設け、(イ)基材シートのおもて面に絵柄模様層を印刷により形成し、(ウ)当該絵柄印刷模様層上に接着剤層を形成し、(エ)当該接着剤層の上に特定のマルテンス硬さを有する本発明の透明性樹脂層を押出しラミネート方式で積層し、(オ)当該透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、プライマー層を形成し、(カ)その表面にロールコート方式により特定の層厚及びマルテンス硬さを有する本発明の表面保護層を塗工し、必要であれば、電子線を照射することにより、行うことができる。
【0071】
エンボス加工
床用化粧シートは、表面保護層側からエンボス加工が施されていてもよい。
【0072】
エンボス加工は、床用化粧シートに木目模様等の所望のテクスチャーを付与するために行う。例えば、表面保護層を加熱軟化させた後、所望の形の凹凸模様を有するエンボス版で加圧・賦形し、冷却固定することによりテクスチャーを付与する。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式エンボス機で行える。エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。
【0073】
エンボス加工を施した場合には、必要に応じて、エンボス凹部にワイピング加工によりインキを充填してもよい。例えば、エンボス凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する。充填するインキ(ワイピングインキ)としては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。特に木目導管溝凹凸に対してワイピング加工を行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することにより商品価値を高めることができる。
【0074】
バッカー層
床用化粧シートには、基材シートの裏面にバッカー層を設けても良い。バッカー層を設けることにより、耐衝撃性に優れるだけでなく、耐傷性(特に部分的に荷重が掛かった場合の凹み傷)にも優れる。ただし、本発明の床用化粧シートは、バッカー層を形成しなくとも、十分な耐衝撃性を確保できる。
【0075】
バッカー層を形成する方法としては、溶融樹脂の押出し成形によって形成することができる。例えば、Tダイを用いた押出し成形が好適に利用できる。また、バッカー層が多層である場合には、例えば、マルチマニホールドタイプやフィードブロックタイプのTダイを用いることにより、多層同時押出しを行えばよい。
【0076】
基材シートとバッカー層とを接着させる方法としては、基材シートと溶融樹脂を押出し成形することによって得られるバッカー層とを熱融着によって接着させる方法、基材シートとバッカー層との間にプライマー層B及び/又は接着剤層(接着剤層B)を設けることによって接着させる方法、等が挙げられる。なお、接着剤層Bの成分、形成方法、厚み等の各内容は、上述の接着剤層Aと同様である。
【0077】
バッカー層を構成する樹脂としては、限定的ではないが、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、アモルファスポリエチレンテレフタレート(A−PET)、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレート〔例えば、エチレングリコールの一部を1,4−シクロヘキサンジメタノールやジエチレングリコール等で置換したポリエチレンテレフタレートである、いわゆる商品名PET−G(イーストマンケミカルカンパニー製)〕ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等が挙げられる。これらの樹脂は単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0078】
バッカー層の厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には100〜800μmが好ましい。
【0079】
バッカー層には、必要に応じ、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。
【0080】
バッカー層の裏面には、プライマー層(プライマー層C)を設けてもよい。例えば、バッカー層と被着材とを接着して床用化粧材を作製する際に有利である。
当該プライマー層Cの成分、形成方法、厚み等の各内容は、上述の裏面プライマー層(プライマー層B)と同様である。
【0081】
床用化粧材
本発明の床用化粧シートの裏面に、被着材を貼り合わせて、接合することにより、床用化粧材とすることができる。
【0082】
被着材の材質は特に限定されず、例えば、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の材質が挙げられる。具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(ガラス繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス材料などが挙げられる。金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料(金属鋼板)が挙げられる。木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0083】
このような被着材の形状は特に限定されず、通常はフローリング等への設置を考慮して平板とすればよい。
【0084】
被着材と化粧シートとを貼り合わせるには、例えば接着剤を用いることができる(接着剤層Cの形成)。接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等を有効成分とする公知の接着剤が使用できる。
【0085】
被着材と化粧シートとの接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナーを用いてサネ加工、V字形状の条溝付与、四辺の面取り等を施してもよい。
【実施例】
【0086】
次に、実験例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例1〜85及び比較例1〜55
60μm厚の着色ポリプロピレンフィルムからなる基材シートの裏面にプライマー層(プライマー層B)を設けた。次いで、基材シートのおもて面に絵柄模様層を印刷により形成し、さらに当該絵柄印刷模様層上に接着剤層(接着剤層A)を形成した。当該接着剤層の上に80μm厚の透明性樹脂層(ポリプロピレン系樹脂配合)を押出しラミネート方式で積層した。この透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、2液硬化型ウレタン樹脂を塗工することによりプライマー層(プライマー層A)を形成した。
【0087】
その表面に下記組成を主成分とする電離放射線硬化型樹脂をロールコート方式により30μm塗工し、次いで酸素濃度200ppm以下の環境下において電子線照射装置を用いて、加速電圧175keV、5Mradの条件で電子線を照射して硬化させることで表面保護層を形成し、実施例48の床用化粧シートを作製した。表面保護層の断面方向のマルテンス硬さは110N/mm(10点の測定値の平均値)であり、透明性樹脂層の断面方向のマルテンス硬さは50N/mm(3点の測定値の平均値)であった。
【0088】
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマーα 80重量部
・6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー 20重量部
・マット剤(11μmシリカ) 14重量部
以下、透明性樹脂層のマルテンス硬さと層厚と、表面保護層のマルテンス硬さと層厚を振り、実施例(実施例1〜85)および比較例(比較例1〜55)とした。
【0089】
前記透明性樹脂層(トップPP)の詳細は以下の通りである。尚、PPとはポリプロピレンを意味する。
a(マルテンス硬さ50N/mm):ホモPP、結晶化温度130℃
b(マルテンス硬さ30N/mm):ランダムPP、結晶化温度100℃
c(マルテンス硬さ20N/mm):ランダムPP70重量部+オレフィン系エラストマー30重量部、結晶化温度90℃
前記電離放射線硬化型樹脂を構成する成分として、以下の成分を使用した。
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマーα(ポリオール成分がポリエステルジオール、ガラス転移点:25℃、分子量1500)
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマーβ(ポリオール成分がポリエステルジオール、ガラス転移点:25℃、分子量1200)
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマーγ(ポリオール成分がポリエーテルジオール、ガラス転移点:−55℃、分子量5000)
・6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(ガラス転移点:200℃以上、分子量1500、共栄社化学株式会社製UA306H)
ただし、2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとは、1分子中にラジカル重合性のアクリロイル基を2つ有するウレタンアクリレートオリゴマーを意味するものとする。また、6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーとは、1分子中にラジカル重合性のアクリロイル基を6つ有するウレタンアクリレートオリゴマーを意味するものとする。
【0090】
実施例86
裏面プライマー層(プライマー層B)を形成しない以外は、上記実施例18と同様にして床用化粧シートSを得た後、さらに当該床用化粧シートに対して表面保護層側からエンボス加工を施すことによって、床用化粧シート(床用化粧シートT)を作製した。表面保護層の断面方向のマルテンス硬さは110N/mm(10点の測定値の平均値)であり、透明性樹脂層の断面方向のマルテンス硬さは30N/mm(3点の測定値の平均値)であった。
【0091】
続いて、上記床用化粧シートTの裏面に樹脂層を押出しラミネート方式で積層することにより、バッカー層を形成した。さらに、当該バッカー層の裏面にコロナ放電処理を施した後、プライマー層(プライマー層C)を形成することにより、実施例86の床用化粧シートを作製した。なお、当該バッカー層の厚さは250μmであり、当該バッカー層の材質はPPである。
【0092】
実施例87及び88
バッカー層の層厚を代える以外は上記実施例86の床用化粧シートと同様にして、実施例87及び88の床用化粧シートを作製した。
【0093】
実施例89
基材シートの裏面にプライマー層Bを設ける以外は、上記床用化粧シートTと同様にして、床用化粧シート(床用化粧シートU)を作製した。
【0094】
続いて、当該床用化粧シートUのプライマー層Bの表面に、接着剤によって形成された接着剤層(接着剤層B)を介してバッカー層を設けることにより、実施例89の床用化粧シートを作製した。
【0095】
実施例90〜92
バッカー層の材質及び/又は層厚を代える以外は上記実施例89の床用化粧シートと同様にして、実施例90〜92の床用化粧シートを作製した。
【0096】
(評価方法)
下記各種試験は、作製した床用化粧シートを厚さ2.7mmの中密度木質繊維板(MDF)上に貼り合わせて行ったものである。
【0097】
(1)耐傷性試験
<評価試験例1 (耐傷性:ホフマンスクラッチ試験)>
実施例及び比較例で作製した床用化粧シートの耐傷性を、ホフマンスクラッチ試験機(BYK-Gardnar製)を用いて確認した。具体的には、床用化粧シートの表面保護層に対して、45度の角度で接するようにスクラッチ刃(直径7mmの円柱のエッジ部)をセットし、該スクラッチ刃を引っ張るように移動させて表面を擦った。その際、300〜1500g荷重の範囲で100gずつスクラッチ刃にかける荷重を変化させて、前記表面保護層に傷が発生するか否かを確認した。評価基準は、以下の通りである。
◎:1000g荷重において、傷が見られないもの
○:500g荷重において、傷が見られないもの
×:500g荷重において、傷が明らかに目立つもの
【0098】
<評価試験例2 (耐傷性:コインスクラッチ試験)>
実施例及び比較例で作製した床用化粧シートの耐傷性を、水平な面に試験片を置き、10円硬貨を用い、45°の角度で試験片上を引き掻き、表面を観察する、というコインスクラッチ試験により確認した。その際、1〜5kg荷重の範囲で1kgずつ10円硬貨にかける荷重を変化させて、前記表面保護層に傷が発生するか否かを確認した。評価基準は、以下の通りである。
◎:荷重4kg荷重において、傷が見られないもの
○:荷重2kg荷重において、傷が見られないもの
×:荷重2kg荷重において、傷が明らかに目立つもの
【0099】
(2)耐衝撃試験
<評価試験例3 (耐衝撃性:デュポン衝撃試験)>
実施例及び比較例で作製した床用化粧シートの耐衝撃性を、デュポン衝撃試験機(JIS K5600−5−3に準拠)を用いて評価した。具体的には、200mmの高さから規定重量の錘を床用化粧シート表面に落下させて床用化粧シートに割れが生ずるか否かを確認した。評価基準は、以下の通りである。
○:200mmの高さから落下させて、目視により、床用化粧シートの割れが観察できなかったもの
△:200mmの高さから落下させて、目視により、床用化粧シートにやや割れが認められたもの
×:200mmの高さから落下させて、目視により、床用化粧シートの割れが明らかに認められたもの
【0100】
(3)耐汚染性試験
<評価試験例4 (耐汚染性)>
実施例及び比較例で作製した床用化粧シートの耐汚染性を、JAS汚染A試験の規定に準じて評価した。具体的には床用化粧シートを切断して10cm角としたものを試験片とし、これを水平に置いた後、試験片の表面保護層面に一般市販品事務用青色インキ及び黒色速乾性インキ(JIS S 6037 マーキングペンに定めるもの)、並びに、赤色クレヨン(JIS S 6026に定めるもの)で、夫々幅10mmで10cm長さの直線を描き、4時間放置した後、一般市販品事務用青色インキ、赤色クレヨンは中性洗剤を含浸した布で拭取り、黒色速乾性インキはエタノールを含浸した布で拭き取り、観察した。評価基準は、以下の通りである。
○:10cm長さの直線が拭き取れたもの
△:10cm長さの直線がやや拭き取れないもの
×:10cm長さの直線が明らかに拭き取れないもの
【0101】
<評価試験例5 (耐傷性:静圧荷重試験)>
実施例18及び86〜92で作製した床用化粧シートの耐傷性を、テンシロン万能試験機(RTC−1310A、株式会社オリエンテック製)を用いて評価した。具体的には、直径20mmφの鉄製円柱治具を45°傾けた状態で試験サンプルの表面にセットし、上記テンシロン万能試験機にて80Nの荷重が加わるまで押し込み、当該荷重を外した後に形成された凹みの深さ(凹み深さ)を測定した。評価基準は、以下の通りである。
◎:凹み深さが10μm未満
○:凹み深さが10μm以上30μm未満
△:凹み深さが30μm以上50μm未満
×:凹み深さが50μm以上
なお、静圧荷重試験は、△以上が製品として合格である。
【0102】
評価した結果を以下の表に示す。
【0103】
表1に、表面保護層及び透明性樹脂層に用いた樹脂組成及びマルテンス硬さを記載した。表1において2官能α、2官能β、2官能γ及び6官能は、夫々、2官能ウレタンアクリレートオリゴマーα、2官能ウレタンアクリレートオリゴマーβ、2官能ウレタンアクリレートオリゴマーγ、及び6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーを指す。
【0104】
【表1】

【0105】
表2及び3に、透明性樹脂層の硬さが30N/mmである場合の試験例を示した。
【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
表4及び5に、透明性樹脂層の硬さが50N/mmである場合の試験例を示した。
【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【0111】
表6及び7に、透明性樹脂層の硬さが20N/mmである場合の試験例を示した。
【0112】
【表6】

【0113】
【表7】

【0114】
表8に、バッカー層を設けた場合(実施例86〜92)の試験例を示した。なお、参考として、バッカー層を設けていない実施例18における試験例も併記する。また、表中、PPはポリプロピレン、PETはポリエチレンテレフタレート、A−PETはアモルファスポリエチレンテレフタレート、PBTはポリブチレンテレフタレートを示す。
【0115】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に、少なくとも透明性樹脂層及び表面保護層を有する床用化粧シートであって、
(1)前記透明性樹脂層は、前記表面保護層の下層に積層されており、且つマルテンス硬さが20N/mm以上であり、
(2)前記表面保護層は、層厚が15〜40μmであり、且つマルテンス硬さが70超〜140N/mmである、
ことを特徴とする床用化粧シート。
【請求項2】
前記表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂を含有する、請求項1に記載の床用化粧シート。
【請求項3】
前記透明性樹脂層の厚さが、150μm未満である、請求項1又は2に記載の床用化粧シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の床用化粧シートの基材シート側を被着材に貼り合わせてなる床用化粧材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−215064(P2012−215064A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−74828(P2012−74828)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】