説明

床用化粧シート

【課題】耐衝撃性、耐キャスター性、耐水性、生産性に優れ、かつ床材とした際に滑りにくいものとなる床用化粧シートを提供すること。
【解決手段】着色熱可塑性樹脂層の上に絵柄模様層と透明熱可塑性樹脂層、紫外線硬化型表面保護層を少なくともこの順に設けてなる床用化粧シートにおいて、前記紫外線硬化型表面保護層に、粒径が前記紫外線硬化型表面保護層の層厚の1/3〜2/3であるガラスビーズを10〜20重量%含有し、かつワックス成分を3〜5重量%含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、戸建て住宅、アパート、マンション、保養所、店舗等の建築物において、荒床や捨板、コンクリートスラブ等の床下地面に直接施工して床仕上面を形成し、或いは、木質基材や合成樹脂基材等の床材用基材の表面に積層して床材を製造するために使用される床用化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記用途の床用化粧シートには、表面の耐傷付性、耐衝撃性、耐キャスター性といったものが要求されてきており、また四季の変化や床暖房の使用による温度変化、水廻りでの使用による湿度変化が原因でそりや突き上げなどの問題を回避するためにさまざまな工夫がなされている。また、生産工程上、化粧シートとして製造する際にはインラインで製造した後、一旦ロール状に巻き取るといったことが行われるため、その状態での耐傷付性や巻取り加工適性も問題となっている。
【0003】
さらにこれらの床用化粧シートを用いて床材とした際には、その上で歩行する人やペットが滑ったりしないようにある程度の摩擦性が要求される。しかしながら上記の耐傷付性や巻取り加工適性とは相反するような部分ともなり、十分満足のいくものは得られなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、耐衝撃性、耐キャスター性、耐水性、生産性に優れ、かつ床材とした際に滑りにくいものとなる床用化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、着色熱可塑性樹脂層の上に絵柄模様層と透明熱可塑性樹脂層、紫外線硬化型表面保護層を少なくともこの順に設けてなる床用化粧シートにおいて、前記紫外線硬化型表面保護層に、粒径が前記紫外線硬化型表面保護層の層厚の1/3〜2/3であるガラスビーズを10〜20重量%含有し、かつワックス成分を3〜5重量%含有することを特徴とする床用化粧シートである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明により、表面保護層中のワックス成分とガラスビーズ成分を調整し、さらにはガラスビーズの粒径を表面保護層の1/3〜2/3と層厚よりも小さい範囲内で調整することにより、耐傷付性と滑りにくさを両立させた表面特性を得ることを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の床用化粧シートの一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に床用化粧シートの一実施例の断面の形状を示す。着色熱可塑性樹脂層1上に絵柄模様層2、適宜設ける接着剤層3、透明熱可塑性樹脂層4、紫外線硬化型樹脂からなる表面保護層5をこの順に設けてなり、表面保護層5中にガラスビーズ6とワックス7を含有してなる。
【0009】
本発明における着色熱可塑性樹脂層1に用いる熱可塑性樹脂としては、種類は特に限定されず、例えば従来、係る化粧シート用の基材シートの素材として使用されている公知の任意の熱可塑性樹脂を使用することができる。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(以後ASとする)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(以後ABSとする)等のスチレン系樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等、またはこれらから選ばれる2種または3種以上の共重合体や混合物、複合体、積層体等を使用することができる。さらに押出し同時エンボスや押出し後にエンボスを施しても良い。
【0010】
前記着色熱可塑性樹脂層1の厚みとしては20〜200μm程度、更に好ましくは50〜150μm程度の範囲内で選ばれると印刷しやすさ、基材に貼るときにある程度形状を保持したほうがの貼りやすさの点で好適である。
【0011】
着色するときの着色剤としては、高屈折率で耐候性、隠蔽性に優れた無機顔料を使用することが望ましい。具体的には、例えば黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、バリウムイエロー、キナクリドン、オーレオリン、モリブデートオレンジ、弁柄、マルスバイオレット、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、紺青、エメラルドグリーン、ビリジアン、鉄黒、カーボンブラック等の有色顔料や、例えば酸化チタン(チタン白、チタニウムホワイト)、酸化亜鉛(亜鉛華)、塩基性炭酸鉛(鉛白)、塩基性硫酸鉛、硫化亜鉛、リトポン、チタノックス等の白色顔料等を使用することができる。また、各種充填剤、耐候性処方添加剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤など)を適宜添加することも任意である。以上の樹脂をそれぞれ単独でまたは複数種混合して使用することができる。
【0012】
本発明における絵柄模様層2としては、耐候性を有する顔料インキをグラビア印刷法等によって設けられた印刷層からなるものであり、前記顔料としては、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、魚鱗粉、塩基性炭酸鉛、酸化塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料、蛍光顔料、夜光顔料等、またはこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。また、各種充填剤、耐候性処方添加剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤など)を適宜添加することも任意である。
【0013】
適宜設ける接着剤層3としては、公知の2液ウレタン樹脂接着剤等が使用可能である。乾燥後の塗布量が1〜10g/m程度が望ましい。
【0014】
本発明における透明熱可塑性樹脂層4としては、前記着色熱可塑性樹脂層1と同様に、ポリ塩化ビニル樹脂、非晶状態の結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などからなる単層あるいは複数の層からなるものが用いられる。透明熱可塑性樹脂層4の厚みは、耐候性、耐熱性、巻取りのしやすさや、耐傷性等などを考慮すると70〜200μmが望ましい。
【0015】
本発明における表面保護層5としては、化粧シート表面の各種耐性を得るために設けるものであり、公知の硬化型樹脂が使用可能であり、特には紫外線硬化型樹脂が好適である。硬化型樹脂には適宜ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ガラスビーズなどを適宜添加する。表面保護層5の厚みは、耐衝撃性試験、耐キャスター性試験の復元性を考慮すると、乾燥後の塗布量で6〜15g/m程度が好適である。
【0016】
本発明における表面保護層5には、平均粒径が表面保護層5の層厚の1/3〜2/3であるガラスビーズ6を10〜20重量%含有する。前記ガラスビーズ6の平均粒径が層厚の2/3より大きいとガラスビーズが塗膜面から出ている面積が多くなり過ぎ、シート面々を積層した際にシート同士を傷付けてしまう。また、ガラスビーズの離脱等も多くなり初望の物性値が得られなくなる。ガラスビーズの平均粒径が層厚の1/3より小さいと、ガラスビーズが塗膜面にもぐってしまい、耐傷付き性を向上させる効果が得られない。ガラスビーズの含有量が10重量%より少ないと耐傷付き性を向上させる効果が得られず、ガラスビーズの含有量が30重量%より多くなると化粧シートを積層した際に傷付きやすいものとなってしまう。
【0017】
本発明におけるガラスビーズ6としては公知のガラスビーズ(シリカ系、球状、屈折率約1.47)が使用可能であり、容易に且つ安価に得る事ができる。特にはその屈折率が前記表面保護層と近いものであり、内部が均質で透明度が極めて高く、真球に近くしかも表面が平滑な球状粒子が好適である。
【0018】
本発明における表面保護層5には、ワックス成分7を3〜5重量%含有する。ワックス成分7の含有量が3重量%より少ないと化粧シートを積層した際に傷付きやすいものとなってしまい、ワックス成分7の含有量が5重量%より多くなると、表面が滑り易いものになってしまう。
【0019】
本発明におけるワックス成分7としては公知の天然ワックス又は合成ワックスの中から適宜選択して使用することができる。本発明で使用することのできる天然ワックスの例としては、例えばミツロウ、羊毛脂、鯨ロウのような動物性ワックス、カルナバロウ、木ロウのような植物性ワックス又はモンタンロウ、パラフィンロウ等の鉱物性ワックスが挙げられる。又、合成ワックスとしては、例えば、アクリル系又はアクリル−スチレン系エマルジョン等を挙げることができる。
【実施例1】
【0020】
着色熱可塑性樹脂層1として厚さ150μmのポリエステルフィルム(リケンテクノス(株)製)を使用し、その片面にグラビアインキ(東洋インキ製造(株)製「ラミスター」)で木目印刷をグラビア印刷機により印刷して絵柄模様層2とした。その後、印刷を施した面とは逆の面にシリカ粉末を含有する2液ウレタン系プライマー樹脂を乾燥後の厚みが1μmとなるようにグラビア塗工した。
【0021】
その後、前記絵柄模様層2上に接着剤層3としてポリエステルポリオールを主剤としイソホロンジイソシアネートを硬化剤とする2液ウレタン樹脂系接着剤を用い、乾燥後の塗布量が2g/mになるように塗工し、透明熱可塑性樹脂層4として、透明ポリプロピレン樹脂と接着性樹脂(マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)とを、透明ポリプロピレン樹脂の厚みが80μm、接着性樹脂の厚みが20μmとなり、接着性樹脂が絵柄模様層2側になるように共押出ラミネートした。
【0022】
前記透明熱可塑性樹脂層4の表面上に、乾燥後の厚みが1g/mとなるように2液ウレタン樹脂からなるリコート層を設け、その表面に、ウレタンアクリレート(ダイセル・ユーシービ(株)製「Ebecryl 4858」)100部とペンタエリスリトールテトラアクリレート(ダイセル・ユーシービ(株)製「PETA−K」)20部、ベンゾフェノン系光開始剤(ダイセル・ユーシービ(株)製「Ebecryl BZO」)0.5部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5部、平均粒径6μmの球状ガラスビーズ15部、平均粒径6μmのポリエチレンワックス4部を添加した紫外線硬化型樹脂を厚さ15μmとなるように塗布し、メタルハライドランプによる紫外線照射により硬化させ表面保護層5を設け、本発明の化粧シートを得た。
【0023】
<比較例1>
充填ガラスビーズを0部とした以外は実施例1と同様にして床材を得た。
【0024】
<比較例2>
充填ガラスビーズを30部とした以外は実施例1と同様にして床材を得た。
【0025】
<比較例3>
ポリエチレンワックスを0部とした以外は実施例1と同様にして床材を得た。
【0026】
<比較例4>
ポリエチレンワックスを8部とした以外は実施例1と同様にして床材を得た。
【0027】
<性能評価方法>
厚み12mmの合板を用い、この表面に2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(「BA−20」と「BA−11B」を100部:5部で混合)を用い、これをウエット状態で100g/mに塗工したあと、ラミネータにて前記実施例1と比較例1〜比較例4の化粧シートの着色熱可塑性樹脂層側とを貼り合わせ、12時間養生し床材とした。
【0028】
<滑り性評価>
ドライボアミューズ(HEIDON製「TYPE:94iII)を使用し、滑り片にストッキングを被せ、前記床材と滑り片との静摩擦係数を測定した。
【0029】
<耐傷つき性評価>
床材表面に斜め45度に傾けた10円玉を1〜4kgの荷重で引掻き傷をつける試験を実施し、傷がつき始めた荷重を目視にて確認した。
【0030】
<摺動性評価>
床材を面々合わせにし、面々合わせの上から1kg/cmとなるような荷重を加え、2000回往復して床材を擦り合わせたのち、床材の表面を観察した。
以上の結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の床材は、戸建て住宅、アパート、マンション、保養所、店舗等の建築物において、荒床や捨板、コンクリートスラブ等の床下地面に直接施工して床仕上面を形成し、或いは、木質基材や合成樹脂基材等の床材用基材の表面に積層して床材を製造するために使用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…着色熱可塑性樹脂層
2…絵柄模様層
3…接着剤層
4…透明熱可塑性樹脂層
5…表面保護層
6…ガラスビーズ
7…ワックス成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色熱可塑性樹脂層の上に絵柄模様層と透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を少なくともこの順に設けてなる床用化粧シートにおいて、前記表面保護層に、粒径が前記紫外線硬化型表面保護層の層厚の1/3〜2/3であるガラスビーズを10〜20重量%含有し、かつワックス成分を3〜5重量%含有することを特徴とする床用化粧シート。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−236204(P2010−236204A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83215(P2009−83215)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】