説明

床用化粧シート

【課題】ペットが歩いて滑らない、かつ素足や靴下履きの人が歩いてつっかからない、人とペットが快適に生活できる床用化粧シートを提供すること。
【解決手段】最表面に表面保護層を有する化粧シートにおいて、前記表面保護層が硬化型樹脂を主剤とし、平均粒径が10〜20μmのウレタンビーズを10〜30重量%含有してなることを特徴とする。硬化型樹脂とウレタンビーズとにより、人とペットに好適な滑り性を有し、摺動性などの問題もない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に住宅屋内の床材表面に用いる化粧シートに関し、特には素足で歩行したりペットが動き回ったりするような耐すべり性を要求される床用の化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
主に木質基材からなるフローリングは近年住宅の流行となってきているが、犬などのペットを室内で飼育する上で、滑り易いためにペットの足や股関節に負担がかかり骨折などの原因ともなりかねないという問題があった。
【0003】
ペットの爪が引っかかるように表面に凹凸を設けるという方法もあるが、あまり大きな凹凸であると人が歩く際につっかかりやすくなり転倒の原因ともなる。また表面の凹凸形成後に表面保護層を塗布することが通常行われるが、凹凸が大きいとムラが生じて経時の耐傷付性が低下するものとなりやすい。
【0004】
また、表面保護層に粒子状物を添加する方法も考えられたが、摺動性(表面どうしを合わせて荷重がかかった状態ですり動かすことにより傷が生じる)の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−135482
【非特許文献1】日本建築学会構造系論文集,第73巻,第624号,pp189〜196,2008年2月,すべり測定方法の提示 ペットの安全性からみた床のすべりの評価方法(その1):横山祐、横井健、小川慧、小野英哲
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、ペットが歩いて滑らない、かつ素足や靴下履きの人が歩いてつっかからない、人とペットが快適に生活できる床用化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、最表面に表面保護層を有する化粧シートにおいて、前記表面保護層が硬化型樹脂を主剤とし、平均粒径が10〜20μmのウレタンビーズを10〜30重量%含有してなることを特徴とする床用化粧シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明はその請求項1記載の発明により、硬化型樹脂とウレタンビーズとにより、人とペットに好適な滑り性を有し、摺動性などの問題もない床用化粧シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の床用化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の床用化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。床材1の上に、着色熱可塑性樹脂基材2、絵柄模様層3、透明熱可塑性樹脂層4、表面保護層5を設けてなる。前記表面保護層5は硬化型樹脂を主剤として、平均粒径が10〜20μmのウレタンビーズ6を10〜30重量%含有してなる。床材1と着色熱可塑性樹脂基材2、着色熱可塑性基材2と透明熱可塑性樹脂層4、透明熱可塑性樹脂層4と表面保護層5の各層間には、適宜の接着剤による接着剤層(図示せず)を設けても良い。透明熱可塑性樹脂層4の表面にはエンボスによる凹凸形状などを設けても良い。また、そのようにして設けた凹凸形状の凹部には適宜着色樹脂を埋め込んでも良い。
【0011】
床材1としては、床面に並べて置く板材や板状部材の側面同士で嵌合して敷設可能なフローリング材などであって、木材、合板など特に材質を限定するものではなく、合成樹脂に木粉を混合したものを発泡成形した樹脂板などであっても良い。
【0012】
着色熱可塑性樹脂基材2としては、化粧シートの基材としての強度と床材1の表面を隠蔽する着色を有するものであればよく、用いる熱可塑性樹脂としては、種類は特に限定されず、例えば従来、係る化粧シート用の基材シートの素材として使用されている公知の任意の熱可塑性樹脂を使用することができる。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(以後ASとする)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(以後ABSとする)等のスチレン系樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等、またはこれらから選ばれる2種または3種以上の共重合体や混合物、複合体、積層体等を使用することができる。厚みとしては50〜150μm程度が印刷しやすさ、基材に貼るときにある程度形状を保持したほうがの貼りやすさの点で好適である。
【0013】
着色するときの着色剤としては、高屈折率で耐候性、隠蔽性に優れた無機顔料を使用することが望ましい。具体的には、例えば黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、バリウムイエロー、キナクリドン、オーレオリン、モリブデートオレンジ、弁柄、マルスバイオレット、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、紺青、エメラルドグリーン、ビリジアン、鉄黒、カーボンブラック等の有色顔料や、例えば酸化チタン(チタン白、チタニウムホワイト)、酸化亜鉛(亜鉛華)、塩基性炭酸鉛(鉛白)、塩基性硫酸鉛、硫化亜鉛、リトポン、チタノックス等の白色顔料等を使用することができる。
【0014】
また、各種充填剤(タルク、炭酸カルシウム、シリカなど)、耐候性処方(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤など)などの各種添加剤を適宜添加することも任意である。以上の樹脂をそれぞれ単独でまたは複数種混合して使用することができる。
【0015】
絵柄模様層3としては、前記着色熱可塑性樹脂基材2の表面側か後述する透明熱可塑性樹脂層4の裏側にグラビア印刷等の手段により設けられる。具体的には2液硬化型ウレタン樹脂系インキ、塩化酢酸ビニル樹脂系インキなどが挙げられる。顔料としては、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、魚鱗粉、塩基性炭酸鉛、酸化塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料、蛍光顔料、夜光顔料等、またはこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。また、各種充填剤、耐候性処方(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤など)などの各種添加剤を適宜添加することも任意である。
【0016】
本発明における透明熱可塑性樹脂層4としては、前記着色熱可塑性樹脂基材2と同様の樹脂が使用可能であるが、透明性や加工適性の点からポリオレフィン系樹脂が好適である。また、本発明における透明熱可塑性樹脂層4は、その表面側に木目柄の導管エンボスを付与しても良いし、梨地調の凹凸エンボスを設けても良い。透明熱可塑性樹脂層4を設ける方法としては、前記絵柄模様層3を設けた着色熱可塑性樹脂基材2の表面に、適宜接着剤層などを介して、予め表面凹凸を設けた透明熱可塑性樹脂層4を貼りあわせる方法や、溶融樹脂を押出同時エンボス付与により直接透明熱可塑性樹脂層4を設ける方法などがあげられるが、特にこれらに限定するものではない。厚みとしては50〜150μm程度が好適である。
【0017】
本発明における表面保護層5としては、化粧シート表面の各種耐性を得るために設けるものであり、硬化型樹脂を主剤とし、平均粒径が10〜20μmのウレタンビーズ6を10〜30重量%含有してなる。硬化型樹脂としては2液硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などがあるが、特には紫外線硬化型樹脂が好適である。ウレタンビーズ6の粒径と含有量を前記範囲内とすることで、人とペットの両方に好適な滑り性が得られる。用いるウレタンビーズ6の平均粒径が小さすぎると滑り防止の効果がなく、平均粒径が大きすぎると人が素足や靴下で歩く際につっかかって転倒しやすくなり、かつ表面保護層の塗工もしにくいものと成る。ウレタンビーズ6の含有量が少なすぎると滑り防止の効果がなく、多すぎると人が素足や靴下で歩く際につっかかって転倒しやすくなり、またウレタンビーズ6の沈降が発生したり主剤との混ざり合いが悪くなったりする。また特にウレタンビーズ6を用いることで、摺動性も良好で傷付き等が発生することが無い。他のビーズ、特にアクリルビーズでは摺動により傷付きが発生するものとなり、好ましくない。
【0018】
また本発明の表面保護層5にはその他の添加剤としてベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ガラスビーズなどを適宜添加可能である。表面保護層5の厚みは、乾燥後の塗布量で6〜15g/m程度が好適である。
【実施例1】
【0019】
着色熱可塑性樹脂基材2として厚さ70μmのポリエチレンフィルム(リケンテクノス(株)製「FZ13317」)を使用し、その片面に絵柄模様層3としてグラビアインキ(東洋インキ製造(株)製「ラミスター」)で木目印刷をグラビア印刷機により印刷して設けた。前記絵柄模様層3の上から接着剤層として2液ウレタン樹脂接着剤(東洋モートン(株)製「TM−593」)を乾燥後の塗布量が10g/m2となるよう塗工し、透明熱可塑性樹脂層4として、厚さ90μmのポリプロピレン樹脂とをラミネートした。その表面に表面保護層5として、紫外線硬化型のウレタンアクリレート樹脂(DIC株式会社(株)「UV210」)100重量部に対して、ウレタンビーズ6として平均粒径20μmのウレタンビーズを20重量%添加し、その他添加剤として、ツヤ調整材のマット剤を5重量%、減摩材としてガラスビーズを3重量%添加した樹脂をなるべく均一に硬化後の厚さが10μmになるようコートし、紫外線を照射し、硬化して床用化粧シートを得た。
【0020】
<比較例1>
ウレタンビーズ6のかわりにアクリルビーズを用いた以外は実施例1と同様にして、床用化粧シートを得た。
【0021】
<比較例2>
ウレタンビーズ6の平均粒径を5μmにした以外は実施例1と同様にして、床用化粧シートを得た。
【0022】
<比較例3>
ウレタンビーズ6の平均粒径を30μmにした以外は実施例1と同様にして、床用化粧シートを得た。
【0023】
<比較例4>
ウレタンビーズ6の添加量を主剤に対して5重量%にした以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0024】
<比較例5>
ウレタンビーズ6の添加量を主剤に対して30重量%にした以外は実施例1と同様にして作成を試みたが、主剤とウレタンビーズ6との混ざり合わせが悪く、ウレタンビーズ6の沈降、ゲル化が著しく、表面塗工することが出来ず、化粧シートの作成ができなかった。
【0025】
<化粧材へ貼り合わせ>
以上の実施例1、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4の化粧シートを、床材1として厚み12mmのラワン合板を用い、この表面に接着剤として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(BA−10/BA−11B=100:2.5))をウェット状態で100g/mに塗工したあと、上記の化粧シートを貼り合わせ、24時間養生し床用化粧材とした。これらの床用化粧材を以下の方法により評価した。
【0026】
<滑り性評価>
床用化粧材の滑り抵抗性の評価として、C.S.R’Dを測定した。C.S.R’Dの測定には携帯型すべり試験機(ONO・PPSM)を用いた。ONO・PPSMによる測定方法は以下の通りである。
・測定対象床にONO・PPSMを設置し、すべり片を測定箇所に全面接触させた後、直ちに(前置時間0s)ハンドルを回転させ、斜め上方18°の方向に引張荷重速度約20kgf(196N)で引っ張る。
・すべり片が明らかに動き始めるのを確認したうえで引っ張るのを停止し、停止するまでの最大引張荷重(Pmax)を読み取り、下式によりすべり抵抗係数C.S.R’Dを算出する。
【0027】
C.S.R’D=Pmax(kgf)/5kgf
【0028】
ここで、ONO・PPSMのすべり片と重錘をあわせた質量は5kgである。また、すべり片と床との接触面の大きさは6×5cmであり、すべり片には発泡ゴムシート(ショアA硬度:10,厚さ:10mm,材質:ポリウレタンフォーム)に麻織物(平織,厚さ:0.8mm,材質:ジュート,織密度:8×8本/inch)をかぶせたものを使用する。
【0029】
<参考文献>
小野英哲:携帯型床のすべり試験機(ONO・PPSM)の開発,日本建築学会構造系論文集,第585号,pp51〜56,2004年11月
【0030】
<摺動性評価>
床材を面々合わせにし、面々合わせの上から500g/cmとなるような荷重を加え、2000回往復して床材を擦り合わせたのち、床材の表面を観察した。評価方法は、表面状態に僅かに傷有り(実用上問題無し)・・・○、傷あり、表層の塗膜が削れる・・・×
【0031】
【表1】

【0032】
比較例1は、すべり性は良いが、アクリルビーズだと硬すぎて表層を削ってしまう。比較例2は、平均粒径が小さいので、表層に現れ難いので効果が限定的。比較例3は、ウレタンビーズの平均粒径が大きいので、表面層に塗工されにくく、その結果表層に残っている数が少ない。また、摺動性でもウレタンビーズが取れやすい。比較例4は、ウレタンビーズの量が少なく、効果が限定てきである。C.S.R’Dの値について、0.33〜0.55が人,犬の双方に丁度いい滑り抵抗性であり、これより低い数値だと犬が滑りやすく、また高い数値だと人、特に靴下等の履物が引っかかりやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の床用化粧シートは、特には人やペットが生活する室内の床面に用いる床用化粧シートとして適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…床材
2…着色熱可塑性樹脂層
3…絵柄模様層
4…透明熱可塑性樹脂層
5…表面保護層
6…ウレタンビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最表面に表面保護層を有する化粧シートにおいて、前記表面保護層が硬化型樹脂を主剤とし、平均粒径が10〜20μmのウレタンビーズを10〜30重量%含有してなることを特徴とする床用化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−61727(P2012−61727A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207798(P2010−207798)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】