説明

床用化粧材

【課題】人やペットが滑ったり転んだりすることがなく、かつシート同士を摺り合わせたりした際に粒子が剥がれて白粉が出ることがない床用化粧材を提供する。
【解決手段】木質系基材1上に着色熱可塑性樹脂層3、絵柄模様層4、透明熱可塑性樹脂層6、表面保護層7を少なくともこの順に有してなる床用化粧材において、前記表面保護層7に粒径6〜8μmの球形ポリエチレンワックスを1〜3重量%含有させたことを特徴とする。着色熱可塑性樹脂層3にはポリブチレンテレフタレート、透明熱可塑性樹脂層にはポリオレフィンが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅の床面に用いられる床用化粧材に関する。特には人やペットが生活する室内の床面に用いる床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
主に木質系基材と化粧シートからなる床用化粧材は、近年の住宅の流行となってきている。しかし、犬などのペットを室内で飼育する上で、滑り易いためにペットの足や股関節に負担がかかり骨折などの原因ともなりかねないという問題があった。
【0003】
そこでペットの爪が引っかかるように、化粧シートの表面保護層に用いる硬化型樹脂に球状粒子を含有させ、これを塗工、硬化することで、表面にある程度の凹凸を設けるという方法が考えられた。しかし、あまり球状粒子が多かったり粒径が大きかったりすると表面保護層からはみ出て、布で表面を擦ったり、シート同士を摺り合わせたりした際に粒子が剥がれて白粉が出るという問題が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−135482
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本建築学会構造系論文集,第73巻,第624号,pp189〜196,2008年2月,すべり測定方法の提示 ペットの安全性からみた床のすべりの評価方法(その1):横山祐、横井健、小川慧、小野英哲
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、人やペットが滑ったり転んだりすることがなく、かつ表面の耐摺動性を有して白粉の発生がない床用化粧材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの課題を解決したものであり即ちその請求項1記載の発明は、木質系基材上に着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を少なくともこの順に有してなる床用化粧材において、前記表面保護層に粒径6〜8μmの球形ポリエチレンワックスを1〜3重量%含有させたことを特徴とする床用化粧材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明ではその表面保護層に含有する球状粒子を球形ポリエチレンワックスとし、かつその粒径と含有量を限定することで、人やペットが滑ったり転んだりすることのない摩擦を有するものとすると同時に耐擦動性を有するものとすることを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の床用化粧材の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の床用化粧材の一実施例の断面の構造を示す。木質系基材1の上に接着剤層2、着色熱可塑性樹脂層3、絵柄模様層4、接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、表面保護層7を設けてなる。接着剤層2、5は層間の接着強度を向上させるため適宜設けるものである。
【0011】
本発明における木質系基材1としては、南洋材合板、針葉樹合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、日本農林規格に規定される普通合板が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。厚みは3〜25mm程度が好適である。
【0012】
接着剤層2は木質系基材1と着色熱可塑性樹脂層3を接着するために適宜設ける。接着剤層2に使用する接着剤としては、前記木質系基材1にて用いた構成材料と後述する着色熱可塑性樹脂層3に用いる樹脂とを接着可能とするものであれば特に限定するものではないが、公知の2液のウレタン変性ビニル樹脂からなる水性接着剤や1液酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤等が使用可能である。また熱可塑性樹脂ホットメルト接着剤も使用可能である。
【0013】
接着剤層2は木質系基材の表面に接着剤を塗布することで設けることが可能であるが、化粧シートの着色熱可塑性樹脂層3側に塗布して設けても良いし、両方に設けてから貼り合わせることで設けるものとしても良い。塗布量は、乾燥後の重さが3〜20g/m2程度が接着性の観点から好適である。
【0014】
本発明における着色熱可塑性樹脂層3としては、熱可塑性樹脂に顔料などの着色剤を含有させてシート状としたものが用いられる。熱可塑性樹脂としては特に限定するものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなるものが好適に用いられる。また着色剤のほかにも適宜無機フィラー、滑剤、熱可塑性エラストマー、相溶化剤などを添加しても良い。
【0015】
前記着色熱可塑性樹脂層3の厚みは、後述する透明熱可塑性樹脂層5と合わせて床用化粧材とした際の表面の各種耐性と、木質系基材1に貼りあわせる前の化粧シートとしての巻き取り適性を考慮すると、100〜200μmが望ましい。
【0016】
本発明における絵柄模様層4は所望の絵柄の意匠を付与するために設けられるものである。絵柄模様層4のなす絵柄の種類は特に限定されず、例えば木目柄、石目柄、布目柄、砂目柄、抽象柄、幾何学図形、文字又は記号、或いはそれらの組み合わせ等、所望により任意である。
【0017】
絵柄模様層4には印刷インキ等の印刷により設けることが可能である。印刷インキ等の種類は特に限定されず、従来より係る化粧シートに使用されている任意の印刷インキを使用することができる。具体的には、例えばブチラール系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキド系、ポリアミド系等のバインダー樹脂に、有機又は無機の染料又は顔料や、必要に応じて体質顔料、充填剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、安定剤その他の添加剤を適宜添加し、適当な希釈溶剤で所望の粘度に調整したものが使用可能である。
【0018】
接着剤層5は、絵柄模様層4を設けた着色熱可塑性樹脂層3と後述する透明熱可塑性樹脂層6とを接着するために適宜設ける。接着剤層5に使用する接着剤としては、前記目的を達成できるものであれば特に限定するものではないが、2液ウレタン樹脂接着剤等が使用可能である。塗布量としては乾燥後の塗布量が、1〜10g/m程度が望ましい。
【0019】
本発明における透明熱可塑性樹脂層6としては、特に限定するものではないが、ポリオレフィン系樹脂からなるものが好適に用いられる。具体的にはポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、などを主剤として1種あるいは複数種の樹脂を主剤とする単層あるいは複数の層からなるものが適用可能である。その厚みとしては、前記着色熱可塑性樹脂層3と併せて床用化粧材とした際の表面の各種耐性と、木質系基材1に貼りあわせる前の化粧シートとしての巻き取り適性を考慮すると、50〜100μmが望ましい。
【0020】
本発明における表面保護層7としては、床用化粧材の表面に各種耐性と摩擦性、耐擦動性を付与するために設けられる。樹脂としては、紫外線硬化型樹脂や2液ウレタン系樹脂が好適に用いられる。さらに表面の耐候性を向上させるために公知の紫外線吸収剤、光安定剤、などを適宜添加しても良い。
【0021】
本発明においては表面保護層7に粒径6〜8μmの球形ポリエチレンワックスを1〜3重量%含有させる。粒径が6μm未満では十分な耐擦動性が得られず白粉が発生するものとなり、粒径が8μmより大きいと十分な摩擦がとれなくなってペットが足を滑らすようなものとなってしまう。また含有量が1重量%未満では十分な摩擦がとれなくなってペットが足を滑らすようなものとなってしまい、含有量が3重量%より多いと十分な耐擦動性が得られず白粉が発生するものとなってしまう。
【0022】
表面保護層7を設ける方法としては、前記の樹脂等を、透明熱可塑性樹脂層6上に乾燥後の塗布量として6〜15g/mとなる程度に塗布するのが好適であるが、特にこれらの樹脂や塗布量に限定されるものではなく、適宜調節することが望ましい。
【実施例1】
【0023】
着色熱可塑性樹脂層として厚さ145μmのポリブチレンテレフタレートフィルム(リケンテクノス(株)製「FZ13317」)を使用し、その片面にグラビアインキ(東洋インキ製造(株)製「ラミスター」)で木目印刷をグラビア印刷機により印刷し絵柄模様層とした。さらに着色熱可塑性樹脂層の印刷の上から2液ウレタン樹脂接着剤(東洋モートン(株)製「TM−593」)を乾燥後の塗布量が10g/mとなるよう塗工して、透明熱可塑性樹脂層としてポリプロピレンを厚さ90μmになるようラミネートし、その上に表面保護層として平均粒径7μmの球形ポリエチレンワックス1重量%含む紫外線硬化型樹脂を5g/mとなるようコートして、厚さ235μmとなる化粧シートを得た。
【0024】
木質系基材として厚み12mmのラワン合板を用いこの表面に接着剤として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(BA−10/BA−11B=100:2.5))をウェット状態で100g/m2に塗工したあと、上記の化粧シートを貼り合わせ24時間養生し床用化粧材を得た。
【実施例2】
【0025】
上記紫外線硬化型樹脂に含まれるポリエチレンワックスを2重量%にしたものを使用した点以外は、上記実施例1と同様にして、床用化粧材を得た。
【実施例3】
【0026】
上記紫外線硬化型樹脂に含まれるポリエチレンワックスを3重量%にしたものを使用した点以外は、上記実施例1と同様にして、床用化粧材を得た。
【0027】
<比較例1>
上記紫外線硬化型樹脂に含まれるポリエチレンワックスを4重量%にしたものを使用した点以外は、上記実施例1と同様にして、床用化粧材を得た。
【0028】
<比較例2>
上記紫外線硬化型樹脂に含まれるポリエチレンワックスを0.5重量%にしたものを使用した点以外は、上記実施例1と同様にして、床用化粧材を得た。
【0029】
<比較例3>
上記紫外線硬化型樹脂に含まれるポリエチレンワックスの平均粒径を5μmにした点以外は、上記実施例1と同様にして、床用化粧材を得た。
【0030】
<比較例4>
上記紫外線硬化型樹脂に含まれるポリエチレンワックスの平均粒径を10μmにした点以外は、上記実施例1と同様にして、床用化粧材を得た。
【0031】
<性能評価:滑り性>
実施例1〜3、比較例1〜4の床用化粧材に対して床の滑り評価として滑り性試験器(IMASS「SP−2000」)を使用し、その滑り片に麻布を被せ、床用化粧材の木目方向に平行の静摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。
【0032】
<性能評価:耐摺動性>
実施例1〜3、比較例1〜4の床用化粧材に対してクロックメーター(大栄科学精器製作所「C−1D」)を使用し、面々同士で2000往復擦り合わせた。試験後、表面の状態を観察した。以上の結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の床用化粧材は、人やペットが生活する室内の床面に用いるとして利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1…木質系基材
2…接着剤層
3…着色熱可塑性樹脂層
4…絵柄模様層
5…接着剤層
6…透明熱可塑性樹脂層
7…表面保護層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基材上に着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を少なくともこの順に有してなる床用化粧材において、前記表面保護層に粒径6〜8μmの球形ポリエチレンワックスを1〜3重量%含有させたことを特徴とする床用化粧材。




【図1】
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【公開番号】特開2011−73221(P2011−73221A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225662(P2009−225662)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】