説明

床用化粧材

【課題】耐衝撃性を悪化させることなく、高荷重条件下での耐傷性に優れた床用化粧材を提供する。
【解決手段】樹脂基材(ア)上に、化粧シートが積層された床用化粧材であって、(1)前記化粧シートが、少なくとも基材シート(イ)、透明性樹脂層及び表面保護層を順に積層してなり、前記化粧シートの前記基材シート(イ)側が前記樹脂基材(ア)側に位置するように、当該樹脂基材(ア)に積層してなり、(2)前記表面保護層は、層厚が5〜30μmであり、且つマルテンス硬さが50〜210N/mmであり、(3)前記樹脂基材(ア)は、JISK7161の規定に従って測定した引張弾性率が100〜1600MPaであることを特徴とする床用化粧材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗などの非住宅に使用される、樹脂基材を供えた床用化粧材(樹脂床)は、外履きの用途に使用され、砂がみにより白化傷が発生し易いことから、その様な床用化粧材には、表面の耐傷性の更なる向上が望まれていた(特許文献1)。
【0003】
ここで床用化粧材とは樹脂基材上に化粧シートを積層した構成のものであるが、化粧シートの表面の耐傷性は、化粧シート自体の物性はもちろんのことだが、裏面に貼り合わされる樹脂基材の物性からも大きく影響を受けることが知られていた。例えば、基材が軟らかすぎると、基材の変形に起因する凹み傷が表面塗膜に発生し、基材が硬すぎると、表面塗膜に負荷が集中することで、白化傷が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭62−52111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐衝撃性を悪化させることなく、高荷重条件下での耐傷性に優れた床用化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、床用化粧材において、特定の引張弾性率を有する樹脂基材、並びに特定の厚さ及びマルテンス硬さを有する表面保護層を備える化粧シートを組み合わせることで、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の床用化粧シートに関する。
1.樹脂基材(ア)上に、化粧シートが積層された床用化粧材であって、
(1)前記化粧シートが、少なくとも基材シート(イ)、透明性樹脂層及び表面保護層を順に積層してなり、前記化粧シートの前記基材シート(イ)側が前記樹脂基材(ア)側に位置するように、当該樹脂基材(ア)に積層してなり、
(2)前記表面保護層は、層厚が5〜30μmであり、且つマルテンス硬さが50〜210N/mmであり、
(3)前記樹脂基材(ア)は、JIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が100〜1600MPaである、
ことを特徴とする床用化粧材。
2.前記表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂を含有する、前記項1に記載の床用化粧材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の床用化粧材は、特定の引張弾性率を有する樹脂基材、並びに特定の層厚及びマルテンス硬さを有する表面保護層を備える化粧シートを組み合わせることにより、耐衝撃性を悪化させることなく、高荷重条件下での耐傷付き性が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本明細書におけるマルテンス硬さの測定に用いるダイヤモンド圧子(a)、押し込み操作の模式図(b)及び押し込み荷重と変位の一例(c)を示す図である。
【図2】JIS K7161の規定に従って試料の引張弾性率を測定する場合の、試料の形状を示す模式図(上面図)である。図中、R60は湾曲の程度を指す。
【図3】本発明の床用化粧材の一態様の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の床材用化粧シート及び床用化粧材について詳細に説明する。
【0011】
本発明の床材用化粧材は、樹脂基材(ア)上に、化粧シートが積層された床用化粧材であって、
(1)前記化粧シートが、少なくとも基材シート(イ)、透明性樹脂層及び表面保護層を順に積層してなり、前記化粧シートの前記基材シート(イ)側が前記樹脂基材(ア)側に位置するように、当該樹脂基材(ア)に積層してなり、
(2)前記表面保護層は、層厚が5〜30μmであり、且つマルテンス硬さが50〜210N/mmであり、
(3)前記樹脂基材(ア)は、JIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が100〜1600MPaである、
ことを特徴とする。
【0012】
以下、本発明の床用化粧材の各構成について説明する。
【0013】
マルテンス硬さ
本明細書におけるマルテンス硬さは、表面皮膜物性試験機(PICODENTOR HM-500、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて測定される値であり、具体的な測定方法は次の通りである。
【0014】
この測定方法では、図1(a)に示されるダイヤモンド圧子(ビッカーズ圧子)を用いて、図1(b)に示すように測定試料にダイヤモンド圧子を押し込み、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm)を計算し、試験荷重F(N)を割ることにより硬さを求める。押し込み条件は、室温(実験室環境温度)において、図1(c)に示される通り、先ず0〜5mNまでの負荷を10秒間で加え、次に5mNの負荷で5秒間保持し、最後に5〜0mNまでの除荷を10秒間で行う。そして、表面積A、試験荷重Fに基づきF/Aにより求められる硬度が、前記マルテンス硬さ(N/mm)である。
【0015】
なお、本明細書では、表面保護層以外の層の硬度の影響を回避するために表面保護層の断面のマルテンス硬さを測定した。これに際し、床用化粧シートを樹脂(冷間硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で包埋し、室温で24時間以上放置して硬化させた後、硬化した埋包サンプルを機械研磨して表面保護層の断面を露出させ、当該断面に(充填材等の微粒子が層中に含まれる場合には当該微粒子を避けた位置に)ダイヤモンド圧子を押し込むことにより断面のマルテンス硬さを測定した。
【0016】
引張弾性率
本明細書における引張弾性率は、JIS K7161の規定に従って測定した値である。具体的には、引張試験機(テンシロン万能試験機RTC−1250A)を用いて、図2に示す形状に打ち抜かれた試験サンプル(樹脂基材(ア))の両端(図2のA及びB)を、50mm/min.の速度で引っ張った場合の引張弾性率(MPa)を測定することにより求めた値である。
【0017】
床用化粧材
本発明の床用化粧材は、樹脂基材(ア)に、化粧シートが積層される。
【0018】
樹脂基材(ア)
樹脂基材(ア)の引張弾性率は、高い荷重をかけた時、引張弾性率が低すぎると、化粧シートが樹脂基材(ア)と一緒に凹んで凹み傷が発生してしまい、また高すぎると、荷重が分散されにくくなり白化傷が発生しやすくなるという理由から100〜1600MPaであり、好ましくは、400〜1500MPaである。
【0019】
樹脂基材(ア)を形成する合成樹脂としては上記引張弾性率を得ることができるものであれば限定されないが、熱可塑性樹脂が好ましい。例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS等が挙げられる。これらの樹脂の中から、樹脂基材(ア)の引張弾性率が上記範囲になる様に、適宜選択するか或いは2種以上の樹脂を組み合わせて使用することができる。
【0020】
樹脂基材(ア)は、着色されていても良い。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
【0021】
樹脂基材(ア)には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0022】
樹脂基材(ア)の厚さは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、耐傷性、耐衝撃性の発現には1mm以上が好ましく、更に、樹脂床は直貼りするので、下地の凹凸を拾わないためには2mm以上がより好ましい。樹脂基材(ア)の厚さの上限は特に無いが、コストや寸法安定性(隙間や突き上げ)を考慮すると6mm以下が好ましい。
【0023】
樹脂基材(ア)の形状は、特に限定されず、通常はフローリング等への設置を考慮して平板とすればよい。
【0024】
この様な樹脂基材(ア)に、例えば接着剤を用いて、以下に説明する化粧シートを貼り合わせ(積層させ)て、床用化粧材を製造する。上記接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等を有効成分とする公知の接着剤が使用できる。
【0025】
積層後の床用化粧材は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナーを用いてサネ加工、V字形状の条溝付与、四辺の面取り等を施してもよい。
【0026】
化粧シート
床用化粧材において、化粧シートは、前述の樹脂基材(ア)の上に積層されるものであり、少なくとも基材シート(イ)、透明性樹脂層及び表面保護層を順に積層してなる。そして、化粧シートの基材シート(イ)側が、前述の樹脂基材(ア)側に位置するように、当該樹脂基材(ア)に積層してなり、床用化粧材を構成する。
【0027】
基材シート(イ)
基材シート(イ)としては、例えば、熱可塑性樹脂により形成されたものが好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0028】
基材シート(イ)は、着色されていても良い。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
【0029】
基材シート(イ)には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0030】
基材シート(イ)の厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、通常50〜150μmが好ましく、60〜80μm程度がより好ましい。
【0031】
基材シート(イ)は、必要に応じて、絵柄模様層を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従って実施すれば良い。また、必要に応じて、基材シートの裏面にコロナ放電処理を施したり、裏面プライマー層を形成したりしてもよい。
【0032】
絵柄模様層
化粧シートは、所望により、前述の基材シート(イ)の表面(おもて面)に、絵柄模様層を設けてもよい。
【0033】
絵柄模様層は、床用化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与するものであり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0034】
絵柄層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。
【0035】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等がさらに配合してもよい。
【0036】
結着材樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。
【0037】
より具体的には、例えば、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等を使用できる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂変性又は混合樹脂、その他の樹脂も使用できる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上で使用できる。
【0038】
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層(これを着色隠蔽層とも言う)を形成する場合には、例えば、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法も挙げられる。
【0039】
上記以外にも、例えば、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法などを用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0040】
絵柄層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1〜15μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜10μm程度である。
【0041】
接着剤層
化粧シートは、所望により、前述の絵柄模様層と以下に記す透明性樹脂層との間に、接着剤層を設けてもよい。
【0042】
接着剤層で使用する接着剤は、絵柄層又は透明性樹脂層を構成する成分等に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等を含む各種接着剤を使用できる。また、反応硬化タイプのほか、ホットメルトタイプ、電離放射線硬化タイプ、紫外線硬化タイプ等の接着剤でもよい。
【0043】
接着剤層は、絵柄層が認識できる限り、透明でも半透明でもよい。
【0044】
なお、本発明では、必要に応じ、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。
【0045】
接着剤層は、例えば、接着剤を絵柄模様層の上に塗布後、一度乾燥し、それから、透明性樹脂を積層することにより形成できる。接着剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムースコート、コンマコート等の方法が採用できる。
【0046】
接着剤層の厚みは、透明性保護層、使用する接着剤の種類等によって異なるが、一般的には0.1〜30μm程度とすれば良い。
【0047】
透明性樹脂層
透明性樹脂層を構成する樹脂は、透明であるか、下層の絵柄模様層が視認できる範囲内で半透明であれば、制限されない。
【0048】
その様な樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。
【0049】
透明性樹脂層には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0050】
透明性樹脂層の厚さは特に限定されないが、好ましくは40〜250μm程度、より好ましくは40〜140μm程度であり、更に好ましくは60〜100μm程度である。
【0051】
透明性樹脂層は、必要に応じて、上層のプライマー層との密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。
【0052】
プライマー層
化粧シートでは、所望により、前述の透明性樹脂層と以下に記す表面保護層の間にプライマー層を設けてもよい。プライマー層は、透明性樹脂層の表面をならし、透明性樹脂層と表面保護層との接着性を高める機能を有する。また、表面保護層の延伸部に微細な割れや白化を生じにくくする効果を有する。
【0053】
プライマー層を構成するプライマー組成物は、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル・ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が用いられる。
【0054】
また、プライマー層の厚さは0.1〜10μm程度であることが好ましい。0.1μm以上であると、表面保護層の割れ、破断、白化等を防ぐ効果を十分に発揮させることができる。一方、プライマー層の厚さが10μm以下であれば、プライマー層を塗工した際、塗膜の乾燥、硬化が安定であるので成形性が変動することが無く好ましい。以上の点からプライマー層の厚さは0.1〜10μmであることが好ましい。
【0055】
プライマー層は、例えば直接コーティング法によって形成することができ、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等を用いることができる。
【0056】
表面保護層
表面保護層は、化粧シートの最表層であり、床用化粧材の最表層でもあり、高荷重をかけた時、表面保護層厚さ薄すぎると白化傷が発生しやすくなり、厚すぎると表面保護層が割れやすくなるという理由から、層厚が5〜30μmである。また、表面保護層の層厚は、好ましくは10〜25μmである。
【0057】
表面保護層は、軟らかすぎると白化傷が発生しやすく、硬すぎると割れが発生しやすいという理由から、マルテンス硬さは、50〜210N/mmである。また、表面保護層のマルテンス硬さは、好ましくは80〜180N/mmであり、より好ましくは100〜160N/mmである。
【0058】
なお、表面保護層のマルテンス硬さは、1)異なる硬さを有する2種以上の樹脂を混合する、2)樹脂にエラストマーを混合する、等によって適宜設定することができる。また、後述する電離放射線硬化型樹脂を表面保護層に用いる場合は、1分子内に有する重合性の官能基の数を変更したり異なる官能基数を有する樹脂を混合して用いたりする等によってマルテンス硬さを所望の値に調整することもできる。また、後述する2液硬化型ウレタン系樹脂を表面保護層に用いる場合は、ポリオール系の主剤とイソシアネート系の硬化剤の混合比率を変える等によってマルテンス硬さを所望の値に調整することもできる。
【0059】
表面保護層を構成する樹脂成分は、表面保護層の厚み及びマルテンス硬さが上記範囲内であればよく限定的ではないが、電離放射線硬化型樹脂が好ましく、電子放射線硬化型樹脂がより好ましい。この様に、電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応(硬化反応)可能な官能基を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。
【0060】
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0061】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250〜100000程度が好ましい。ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0063】
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常190〜380nmが好ましい。
【0064】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましい。
【0065】
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
【0066】
これらの樹脂の中から、表面保護層のマルテンス硬さが上記範囲になる様に、適宜選択するか或いは2種以上の樹脂を組み合わせて使用することができる。
【0067】
表面保護層は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。
【0068】
表面保護層は、例えば、透明性樹脂層の上に電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。電離放射線硬化型樹脂の場合には、電離放射線照射により樹脂硬化する。
【0069】
化粧シートの製造方法
化粧シートを構成する各層の積層は、例えば、(i)基材シートの裏面に裏面プライマー層を設け、(ii)基材シートのおもて面に絵柄模様層を印刷により形成し、(iii)当該絵柄印刷模様層上に接着剤層を形成し、(iv)当該接着剤層の上に透明性樹脂層を押出しラミネート方式で積層し、(v)当該透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、プライマー層を形成し、(vi)その表面にロールコート方式により特定の層厚及びマルテンス硬さを有する本発明の表面保護層を塗工し、必要であれば、電子線を照射することにより、行うことができる。
【0070】
エンボス加工
化粧シートは、表面保護層側からエンボス加工が施されていてもよい。
【0071】
エンボス加工は、化粧シートに木目模様等の所望のテクスチャーを付与するために行う。例えば、透明性保護層を加熱軟化させた後、所望の形の凹凸模様を有するエンボス板で加圧・賦形し、冷却固定することによりテクスチャーを付与する。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式エンボス機で行える。エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。
【0072】
エンボス加工を施した場合には、必要に応じて、エンボス凹部にワイピング加工によりインキを充填してもよい。例えば、エンボス凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する。充填するインキ(ワイピングインキ)としては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。特に木目導管溝凹凸に対してワイピング加工を行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することにより商品価値を高めることができる。
【0073】
床用化粧材の製造方法
本発明の床用化粧材は、前記樹脂基材(ア)に、化粧シートを積層することにより製造できる。例えば、化粧シート(基材シート(イ))の裏面に、裏面プライマー層を介して、樹脂着材(ア)を貼り合わせて、接合することにより、床用化粧材とできる。
【0074】
樹脂着材(ア)と接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナーを用いてサネ加工、V字形状の条溝付与、四辺の面取り等を施してもよい。
【実施例】
【0075】
次に、実験例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0076】
実施例及び比較例
(実施例1)
60μm厚の着色ポリプロピレンフィルム(着色PPフィルム)からなる基材シートの裏面にプライマー層を設けた。次いで、基材シートのおもて面に絵柄模様層を印刷により形成し、さらに当該絵柄模様層上に接着剤層を形成した。当該接着剤層の上に透明性樹脂層(ポリプロピレン系樹脂配合、厚さ80μm)を押出しラミネート方式で積層した。この透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、2液硬化型ウレタン樹脂を塗工することによりプライマー層を形成した。
【0077】
その表面に下記組成を主成分とする電離放射線硬化型樹脂をロールコート方式により15μm塗工し、次いで酸素濃度200ppm以下の環境下において電子線照射装置を用いて、加速電圧175keV、5Mradの条件で電子線を照射して硬化させることで表面保護層を形成し、床用化粧シートを作成した。表面保護層の断面方向のマルテンス硬さは110N/mm(10点の測定値の平均値)であった。
【0078】
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマー 80質量部
(ポリオール成分がポリエステルジオール、ガラス転移点25℃、分子量1500)
・6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー 20質量部
(ガラス転移点200℃以上、分子量1500、共栄社化学株式会社製UA306H)
・マット剤(11μmシリカ) 14質量部
【0079】
前記使用する2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとは、1分子中にラジカル重合性のアクリロイル基を2つ有するウレタンアクリレートオリゴマーを意味するものとする。また、6官能ウレタンアクリレートオリゴマーとは、1分子中にラジカル重合性のアクリロイル基を6つ有するウレタンアクリレートオリゴマーを意味するものとする。
【0080】
上記で作製した化粧シートを、3mm厚のポリ塩化ビニル(PVC)樹脂基材(引張弾性率800MPa)に、接着剤を用いて貼り合わせ、床用化粧材を作製した。
【0081】
以下、樹脂基材の引張弾性率、樹脂基材の種類、樹脂基材の厚さ、透明性樹脂層の厚さ、並びに、表面保護層の厚さ及びマルテンス硬さ(樹脂成分比)を振り、実施例2〜13、及び比較例3〜8とした。
【0082】
(比較例1)
60μm厚の着色ポリプロピレンフィルムからなる基材シートの裏面にプライマー層を設けた。次いで、基材シートのおもて面に絵柄模様層を印刷により形成し、さらに当該絵柄印刷模様層上に接着剤層を形成した。当該接着剤層の上に透明性樹脂層(ポリプロピレン系樹脂配合、厚さ80μm)を押出しラミネート方式で積層した。透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、2液硬化型ウレタン樹脂を塗工することによりプライマー層を形成した。
【0083】
その表面に2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビアコート方式により、乾燥後の厚みが15μmになるように塗工し、床用化粧シートを作製した。硬化塗膜の断面方向のマルテンス硬さは40N/mm(10点の測定値の平均値)であった。
【0084】
上記で作製した化粧シートを3mm厚のPVC樹脂基材(引張弾性率800MPa)に接着剤を用いて貼り合わせ、床用化粧材を作製した。
【0085】
以下、表面保護層の厚さを振り、比較例2とした。
【0086】
上記で得られた床用化粧材の耐傷性試験として、コインスクラッチ試験及び鋼球落下試験を実施した。
【0087】
<評価方法>
(1)耐傷性試験(コインスクラッチ試験)
実施例及び比較例で作製した床用化粧材の耐傷性を、コインスクラッチ試験により評価した。具体的には、45°に傾けた100円玉を試験片表面に接触させ、荷重(3Kg荷重、5Kg荷重及び7Kg荷重)を加えながら水平方向に引き摺った際の傷付き状態を評価した。評価基準は、以下の通りである。
<判定基準>・・・△以上を合格とする。
◎:7Kg荷重でも白化傷並びに著しい凹み傷が発生しない。
○:5Kg荷重でも白化傷並びに著しい凹み傷が発生しない。
△:3Kg荷重でも白化傷並びに著しい凹み傷が発生しない。
×:3Kg荷重にて白化傷あるいは著しい凹み傷が発生した。
【0088】
(2)耐衝撃試験(鋼球落下試験)
実施例及び比較例で作製した床用化粧材の耐衝撃性を、鋼球落下試験により評価した。具体的には、300gの鋼球を50cm高さより試験片に落下させ、外観状態及び凹み量を評価した。評価基準は、以下の通りである。
<判定基準>
○:表面割れがなく、凹み量が300μm以下である。
×:表面割れ、もしくは凹み量が300μm以上である。
【0089】
評価した結果を以下の表1〜5に示す。
【0090】
表1には、樹脂基材の弾性率を対比したものを示した。表中、EBは電離放射線の照射による硬化を意味する。PVC、PE及びPPは、夫々ポリ塩化ビニル、ポリエチレン及びポリプロピレンを意味する。表2〜5においても同じである。
【0091】
【表1】

【0092】
表2には、樹脂基材の厚さを対比したものを示した。
【0093】
【表2】

【0094】
表3には、透明性樹脂層の厚さ対比したものを示した。
【0095】
【表3】

【0096】
表4には、表面保護層のマルテンス硬さを対比したものを示した。
【0097】
【表4】

【0098】
表5には、表面保護層の層厚を対比したものを示した。
【0099】
【表5】

【0100】
表1〜5の結果より、樹脂基材に、化粧シートが積層された床材用化粧材では、前記化粧シートの表面保護層の層厚が5〜30μmであり、且つマルテンス硬さが50〜210N/mmであって、前記樹脂基材のJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が100〜1600MPaであることで、過度な使用条件(高荷重下での耐傷性)でも白化傷及び凹み傷が発生しにくいことが確認された。
【符号の説明】
【0101】
(1)表面保護層
(2)透明性樹脂層
(3)接着剤層
(4)絵柄模様層
(5)基材シート(イ)
(6)樹脂基材(ア)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材(ア)上に、化粧シートが積層された床用化粧材であって、
(1)前記化粧シートが、少なくとも基材シート(イ)、透明性樹脂層及び表面保護層を順に積層してなり、前記化粧シートの前記基材シート(イ)側が前記樹脂基材(ア)側に位置するように、当該樹脂基材(ア)に積層してなり、
(2)前記表面保護層は、層厚が5〜30μmであり、且つマルテンス硬さが50〜210N/mmであり、
(3)前記樹脂基材(ア)は、JIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が100〜1600MPaである、
ことを特徴とする床用化粧材。
【請求項2】
前記表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂を含有する、請求項1に記載の床用化粧材。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−213913(P2012−213913A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80694(P2011−80694)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】