説明

床用目地カバー装置

【課題】従来よりもコンパクトに施工可能な床用目地カバー装置を提供する。
【解決手段】建造物P,Qの目地S間に差し渡し状に配設するカバー体を、両建造物P,Qに対して目地幅方向及び目地長手方向に移動可能に保持されるベース部材18と、該ベース部材18上に配設されて、通路の床面を形成する可変天板19とで構成する。そして、可変天板19を、平面視短冊形状をなす短冊部材25を、その短手方向が目地幅方向と一致するようにして、ベース部材18上に目地幅方向に沿って複数配列してなる構成とするとともに、各短冊部材25の両側部を、両建造物P,Qの間に張設された長尺ガイド部材40に当接させて、両建造物P,Qが目地長手方向に相対変位した場合には、長尺ガイド部材40の水平傾動した部分に押圧されて各短冊部材25が個別に目地長手方向に移動するよう構成し、これにより可変天板19を変形させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地を覆う床用目地カバー装置に関し、特には目地の間に差し渡されて、両建造物間の通路を構成するものに関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝機能を備えた免震装置によって下部が支持された建物からなる建造物にあっては、地震時における水平方向の揺れが大きくなる傾向がある。このような免震構造の建造物では、隣接する建造物との間に設けられた通路に、前記揺れによる変位を吸収し得る比較的広幅の目地(クリアランス)が形成される。そして、かかる目地の床部分には、床用目地カバー装置が差し渡し状に配設され、該床用目地カバー装置によって、当該通路の目地を覆う部分を形成するようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の床用目地カバー装置(エキスパンションジョイント床構造)は、両建造物の間に架け渡されて可動床として機能するカバー体(可動プレート)を備えている。このカバー体は、目地幅方向(架設方向)に移動可能に、かつ、水平方向に回動可能となるように建造物に保持されており、両建造物が水平方向に相対変位した時に、カバー体が移動・回動して両建造物に追従することでひずみを吸収し得るよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−26825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の床用目地カバー装置では、両建造物が目地長手方向(架設方向と直交方向)に変位した時に、カバー体が水平回動することとなるため、水平回動したカバー体を受け入れる大きなスペースを通路の両側に配設する必要があり、当該スペースを配設する分、通路の外幅が大きくなり、施工の手間が大きいという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来よりもコンパクトに施工可能な床用目地カバー装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されて、該目地間に形成される通路の床面を構成するカバー体の両端を、両側の建造物の床に対して移動可能に保持してなる床用目地カバー装置であって、前記カバー体は、両建造物の床に対して目地幅方向及び目地長手方向に移動可能となるように保持されるベース部材と、該ベース部材上に配設されて、前記通路の床面を形成する可変天板とを備えてなり、前記可変天板は、平面視短冊形状をなす短冊部材を、その短手方向が目地幅方向と一致するようにして、前記ベース部材上に目地幅方向に沿って複数配列してなるものであり、各短冊部材は、目地長手方向に個別に移動可能となるようにベース部材の上に保持され、かつ目地幅方向にはベース部材と一体に移動するよう保持されており、さらに、カバー体が形成する通路の両側に沿うように、両建造物間に目地幅方向に張設され、両建造物が目地長手方向に相対変位する際には、両建造物の間で緊張状態を保ちつつ、その中央部を水平傾動させる一対の長尺ガイド部材を備え、該一対の長尺ガイド部材は、前記各短冊部材の両端部に当接しており、両建造物が目地長手方向に相対変位する際には、各短冊部材が長尺ガイド部材によって目地長手方向に押圧されて移動し、可変天板が、その両側縁を長尺ガイド部材に倣わせるように変形することを特徴とする床用目地カバー装置である。ここで、「目地幅方向」とは、目地を横断して両建造物の床相互を差し渡す方向であり、「目地長手方向」とは、目地幅方向と直交する方向を意味する。
【0008】
かかる構成にあっては、両建造物が目地長手方向に相対変位した場合には、かかる相対変位に伴って水平傾動した長尺ガイド部材に倣うように可変天板が変形することで、目地長手方向に生じるひずみが吸収される。この時の可変天板の変形は、短冊部材が目地長手方向に個別に移動することにより生じるものであるから、カバー体全体を水平回動させる特許文献1の構成に比べて、通路両側にカバー体が突き出る部分が大幅に少なくなる。このため、本発明の床用目地カバー装置では、通路の両側に設けるスペースが少なくて済み、通路の外幅を小さくすることで施工の手間を軽減可能となる。
【0009】
また、本発明にあって、前記長尺ガイド部材は、両建造物の床に対して引張バネを介して連結されている構成が提案される。かかる構成にあっては、両建造物が水平方向に変位した場合に、引張バネの収縮力によって長尺ガイド部材の緊張状態を適切に維持することができる。
【0010】
また、本発明にあって、前記長尺ガイド部材は、両端部が目地幅方向に沿うように保持された、水平方向に屈曲可能な直線帯状の弾性金属板材であり、両建造物が目地長手方向に相対変位する際には、長尺ガイド部材が屈曲して、その中央部のみが水平傾動する構成が提案される。かかる構成にあっては、両建造物が目地長手方向に相対変位する際に、長尺ガイド部材の両端部が外側に突き出ることを防止でき、また、弾性金属板材の弾性力によって、短冊部材を目地長手方向に円滑に移動させることが可能となる。
【0011】
また、本発明にあって、カバー体の端部を摺動可能に収容可能な摺動空隙を備え、両建造物の床の側縁に対向状に配設されて、カバー体の両端部を摺動空隙内に保持する一対の摺動受枠体を備える構成が提案される。かかる構成にあっては、カバー体の両端を摺動受枠体に収容することで、カバー体を、両建造物の床に対して適切に保持することができる
【0012】
また、本発明にあって、前記摺動受枠体は、水平受板と、該水平受板の上部に対設された端部カバー板とを備え、該端部カバー板と水平受板間を摺動空隙とするものであり、可変天板の、常態で摺動空隙外に露出する部分の上面は、前記端部カバー板の上面と略同じ高さに設けられており、可変天板の、常態で摺動空隙内に収容される部分の上面は、前記端部カバー板の底面よりも低い位置に設けられている構成が提案される。かかる構成にあっては、可変天板の上面と、端部カバー板の上面とで、段差のない、平坦な通路を形成することが可能となる。また、上記構成を採用した場合には、さらに、前記端部カバー板は、浮き上がり可能に設置されており、端部カバー板と可変天板の一方に、案内面を形成するとともに、端部カバー板と可変天板の他方に、両摺動受枠体が近接する方向に相対変位した際に、前記案内面に突き当たることとなる案内部材を配設し、両摺動受枠体が近接する方向に相対変位した際に、前記案内面と案内部材の案内作用によって、端部カバー板が浮き上がって可変天板の上に乗り上げるよう構成することが提案される。かかる構成とした場合には、両摺動受枠体が相互に近接する方向に移動した時に、摺動受枠体内に可変天板を確実に受け入れ可能となる。
【0013】
また、本発明にあって、短冊部材の両端部に、水平方向に回転するローラーが配設されており、短冊部材は該ローラーを、前記長尺ガイド部材に当接させている構成が提案される。かかる構成にあっては、短冊部材と長尺ガイド部材との間に摩擦が生じにくくなり、長尺ガイド部材の動きに各短冊部材をスムーズに追従させることができ、可変天板を円滑に変形、復元させることが可能となる。
【0014】
また、本発明にあって、前記複数の短冊部材のうち、中央部分に配置される一本の短冊部材は、ベース部材に固定され、該短冊部材の両端部は、長尺ガイド部材に固定されている構成が提案される。かかる構成にあっては、中央部分の一本の短冊部材を介して、ベース部材と長尺ガイド部材が連繋するから、長尺ガイド部材の中央部の水平傾動に合わせてベース部材を目地長手方向に適切に移動させることができ、これにより、可変天板の目地長手方向の中心部を、ベース部材によって確実に支持することが可能となる。
【0015】
また、本発明にあって、前記ベース部材は、両建造物の床に対して、目地長手方向に摺動可能に保持されるスライド部材と、両側のスライド部材とベース部材とを目地幅方向に並列接続する複数の引張バネとによって構成されることが提案される。かかる構成にあっては、引張コイルバネの付勢力によって、ベース部材を目地幅方向の中心に保持しておくことができる。スライド部材及びベース部材は、いずれも目地長手方向に移動可能であるため、両建造物が目地長手方向に変位した場合でも、引張バネは、ベース部材を水平回動させることなく目地方向の中心に保持しておくことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上に述べたように、本発明によれば、両建造物が目地長手方向に相対変位した場合には、複数の短冊部材を長尺ガイド部材に沿うように目地長手方向に個別に移動させることで、目地長手方向の相対変位に追従させるため、カバー体を水平回動させる特許文献1の装置に比べて、カバー体が通路の両側に突き出る部分が大幅に少なくなる。このため、本発明の床用目地カバー装置では、従来構成に比べて通路の両側に設けるスペースが少なくて済み、同じ通路幅でも通路外側部分を省スペース化することで、渡り廊下等における目地部分をコンパクト化し、施工時の手間を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】床用目地カバー装置1の施工状態を示す平面図である。
【図2】床用目地カバー装置1の施工状態を示す側面図である。
【図3】床用目地カバー装置1の施工状態を示す側断面図である。
【図4】摺動受枠体2の平面図である。
【図5】摺動受枠体2の側断面図である。
【図6】端部カバー板11を省略して示す床用目地カバー装置1の平面図である。
【図7】図3中のA−A部分拡大図である。
【図8】図7中のB−B部分拡大図である。
【図9】図7中のC−C部分拡大図である。
【図10】図7中のD−D部分拡大図である。
【図11】図6中のE部分拡大図である。
【図12】図6中のF分拡大図である。
【図13】目地幅方向の変位に対する床用目地カバー装置1の作動を示す説明図である。
【図14】目地長手方向の変位に対する床用目地カバー装置1の作動を示す説明図である。
【図15】床用目地カバー装置1の作動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
実施例の床用目地カバー装置1は、図1,2に示すように、隣接する建造物P,Qの間を繋ぐ渡り廊下等の通路Lに配設されるものである。両建造物P,Qは緩衝機能を備えた免震装置(図示省略)によって下部が支持されたものである。通路Lには地震時における建造物P,Qの水平方向の相対的な変位を吸収するための目地Sが設けられ、通路Lを構成する両建造物P,Qの床R,Rは目地Sを介して隣接している。そして、本実施例の床用目地カバー装置1は、この目地Sを差し渡すように両建造物P,Qの床R,Rに取り付けられ、目地形成箇所における通路Lの床面を形成する
【0019】
床用目地カバー装置1は、図1〜3に示すように、通路Lよりもわずかに幅広な扁平矩形状をなしている。この床用目地カバー装置1は、両建造物P,Qの床R,Rの側縁に配設される一対の摺動受枠体2,2と、両建造物P,Qの床R,Rに対して水平移動可能に保持されるカバー体3とを備えてなる。
【0020】
摺動受枠体2は、図4,5に示すように、目地長手方向の寸法が、通路Lの幅よりわずかに大きい平面視矩形状の枠体である。この摺動受枠体2は、床Rの上に設置される矩形状の水平受板10と、該水平受板10の上部に対設される二枚の矩形状の端部カバー板11とを備えてなり、該端部カバー板11と水平受板10の間に形成される扁平な空間を、カバー体3の各端部を摺動可能に収容する摺動空隙12としている。摺動受枠体2は、目地長手方向に対称形状をなしており、両側の床Rに同一構成のものが目地幅方向に対向するように配設されている。水平受板10は鋼板からなるものであり、その基端側(図4,5中の右側)には、端部カバー板11を支持する支持縁10aが上向きに屈曲形成される。この支持縁10aの上部には複数の螺子10bが突出している。端部カバー板11は、鋼板11aの上に、化粧シート11bを貼着してなるものである。二枚の端部カバー板11は、目地長手方向に隣接するようにして、カバー体3の端部の厚みに略一致する間隔で水平受板10の上に対設される。この端部カバー板11は、通路Lの床面を構成するものであり、摺動受枠体2は、端部カバー板11の上面が、建造物P,Qの床面と面一となるように設置される。また、端部カバー板11は、その基端側を前記支持縁10aに載せ、支持縁10aの上に突出した螺子10bと係合することにより水平方向に係止されるとともに、浮き上がり可能に保持されている。また、水平受板10は、二枚の端部カバー板11よりも、目地長手方向両側に延出しており、水平受板10の目地幅方向に沿った側縁は、鉛直上方に屈曲して、端部カバー板11と略同じ高さの側壁13,13を形成している。また、水平受板10は、端部カバー板11よりも目地側に延出しており、目地側の側縁には、カバー体3の目地幅方向の移動範囲を規定するストッパー14が配設されている。
【0021】
図6に示すように、カバー体3は、両建造物P,Qの床Rに対して目地幅方向及び目地長手方向に移動可能となるように保持されるベース部材18と、該ベース部材18上に配設されて、カバー体3の上面を形成する可変天板19とを備えてなり、目地幅方向及び目地長手方向に対して夫々対称形状をなしている。
【0022】
ベース部材18は、図6〜8に示すように、金属製角パイプ18a,18bを格子状に組み付けてなるものである。ベース部材18の目地幅方向の寸法は目地幅よりも長く、また、目地長手方向の寸法は、摺動空隙12の目地長手方向の寸法の三分の二程度である。ベース部材18の両端部は前記摺動受枠体2の摺動空隙12内に収容され、ベース部材18は、底部に固定された脚部18cを水平受板10に当接させることにより、摺動空隙12の内部で目地幅方向及び目地長手方向に摺動可能に保持される。また、ベース部材18には、後述する引張コイルバネ23を連結するためのバネ連結部18dが両側に10箇所ずつ配設されている。
【0023】
ベース部材18は、図6〜8に示すように、両側の摺動受枠体2の内部に配設された一対の中心保持手段6,6によって、目地幅方向において目地Sの中心に位置するように保持される。各中心保持手段6は、水平受板10の基端側上面に固定された断面略C字状をなす目地幅方向のレール部材21と、該レール部材21に、目地幅方向に沿って摺動可能に保持される長尺なスライド部材22と、ベース部材18のバネ連結部18dとスライド部材22とを目地幅方向に並列接続する10本の引張コイルバネ23とを夫々備えてなる。引張コイルバネ23は、ベース部材18をスライド部材22が保持された建造物P,Q側に付勢するものであり、両建造物P,Q側からそれぞれ10本の引張コイルバネ23で並行して付勢することにより、目地幅方向に関して、ベース部材18を目地Sの中心に保持し、建造物P,Qが目地幅方向に相対変位した際には、各引張コイルバネ23が伸縮することにより目地幅の変化を吸収しつつ、ベース部材18を目地の中央に保持し得るよう構成されている。スライド部材22は、図8,11,12に示すように、目地長手方向に長尺な金属板22aに、摺動用ローラー22bを配設してなるものであり、建造物P,Qが目地長手方向に相対変位した場合は、レール部材21に沿って摺動することでベース部材18の目地長手方向への変位に追従し、これにより、引張コイルバネ23が、ベース部材18を水平回動させずに目地Sの中心に保持し得るようにしている。
【0024】
可変天板19は、図6,7に示すように、23本の短冊部材25(25a〜25e)を目地幅方向方向に配列してなるものである。各短冊部材25は、上面が平坦で平面視短冊形状をなす長尺な筒状の金属杆によって主に構成される。全ての短冊部材25は長手方向及び短手方向の寸法が略同じであり、各短冊部材25が、その短手方向を目地幅方向に一致させるようにして目地幅方向に配列することで、可変天板19は、常態では平面視矩形状をなしている。
【0025】
短冊部材25のうち、中央に配設される短冊部材25aは、ベース部材18に固定される固定短冊部材である。一方、その他の短冊部材25b〜25eは、ベース部材18に対して目地長手方向に個別に移動可能に保持される可動短冊部材である。
【0026】
固定短冊部材25aは、図9に示すように、断面矩形状の金属杆27aの上に、ゴム板28a上に化粧シート28bを貼着してなるパネル状床材28を配設してなるものであり、ベース部材18の角パイプ18aの上に溶接されて、摺動受枠体2に対してベース部材18と一体となって移動するよう構成される。
【0027】
各可動短冊部材25b〜25eは、図8〜10に示すように、断面が等脚台形状をなす金属杆27bによって構成される。この金属杆27bの一側には、断面C字状をなす目地長手方向の連結溝30が形成され、また、連結溝30の反対側には、連結溝30と嵌合する連結突部31が形成されている。そして、可動短冊部材25b〜25eは、隣接配置されるもの同士が、連結溝30と連結突部31を嵌合させることにより目地幅方向に連結される。かかる連結状態では、嵌合した連結溝30と連結突部31を目地長手方向に摺動させることで、可動短冊部材25b〜25eは、目地長手方向に個別に移動可能となっている。
【0028】
また、図11に示すように、各可動短冊部材25b〜25eの金属杆27bの両端には、水平方向に回転するローラー部材32が装着される。このローラー部材32は、先端に水平回転可能なローラー32aを備えており、各可動短冊部材25b〜25eは、このローラー部材32のローラー32aを後述する長尺ガイド部材40に当接させることで、長尺ガイド部材40によって、各可動短冊部材25b〜25eを目地長手方向にスムーズに移動させ得るようにしている。
【0029】
可動短冊部材25b〜25eは、配設位置によって少しずつ構成が異なっている。まず、相互に連結された可動短冊部材25b〜25eのうち、中央の固定短冊部材25aの両側に隣接する二本の可動短冊部材25bは、図9に示すように、螺子33によってベース部材18の角パイプ18aの上に螺着され、これにより、ベース部材18に対して目地長手方向に所定幅で摺動可能に保持されるとともに、目地幅方向にはベース部材18と一体となって移動するよう保持される。なお、その他の可動短冊部材25c〜25eは、かかる可動短冊部材25bと連結しているため、かかる可動短冊部材25bがベース部材18に螺着されることで、目地幅方向にベース部材18と一体となって移動するよう保持される。
【0030】
また、図8〜10に示すように、相互に連結された可動短冊部材25b〜25eのうち、常態で摺動空隙12の外に露出する可動短冊部材25b,25cには、固定短冊部材25a同様に、金属杆27bの上に、パネル状床材28が配設されている。一方、常態で摺動空隙12内に収容されている可動短冊部材25d,25eには、パネル状床材28は配設されず、パネル状床材28の厚み分だけ、他の短冊部材25a〜25cよりも上面が低くなるよう構成されている。ここで、パネル状床材28の厚みは、摺動受枠体2の端部カバー板11と略同じ厚みであり、摺動空隙12に収容されている短冊部材25d,25eは、パネル状床材28を具備しないことで、端部カバー板11と干渉することなく、摺動空隙12に収容されている。一方、摺動空隙12の外に露出している短冊部材25a〜25cは、パネル状床材28を備えることで、その上面が端部カバー板11と面一となり、これにより、可変天板19と端部カバー板11の上面を段差なく連続させて、可変天板19と端部カバー板11とによって段差のない床面を形成している。
【0031】
また、相互に連結された可動短冊部材25b〜25eのうち、常態で摺動空隙12の開口部分に位置する可動短冊部材25dには、図10に示すように、その上面に、目地長手方向に沿った案内部材34が螺子35によって固定されている。この案内部材34は、建造物P,Qが近接方向に相対変位した際に、端部カバー板11を浮き上がらせる働きをする。具体的には、端部カバー板11を構成する鋼板11aには、目地側の端縁に目地方向に迫り上がる案内面36が形成されており、常態で、当該案内面36と案内部材34とが目地幅方向に対向するよう配置されている。また、鋼板11aの目地側端縁上面には、化粧シート11bの端縁の見切り材を兼ねた遮蔽板37が溶接されている。該遮蔽板37は、化粧シート11bと略同一厚みで帯状に形成された鋼板からなり、端部カバー板11から目地側に向けて延出して案内部材34を覆っている。かかる構成にあって、建造物P,Qが近接する方向に相対変位した場合は、端部カバー板11の案内面36が案内部材34に突き当たり、案内面36の案内作用によって端部カバー板11が浮き上がり、図10に二点鎖線で示すように、パネル状床材28付きの可動短冊部材25cの上に端部カバー板11が乗り上げることとなる。このように、本実施例にあっては、建造物P,Qが近接する方向に相対変位した場合は、案内部材34と案内面36の案内作用によって端部カバー板11を浮き上がらせることで、面一に配置された可動短冊部材25cを摺動空隙12内に受け入れるよう構成されている。
【0032】
また、可変天板19の底部には、図7に示すように、伏コ字状のストッパー38が設けられる。このストッパー38は、水平受板10の目地側端部に配設されたストッパー14と目地幅方向に対向しており、カバー体3が目地Sの中心から大きく変位した時に、これらのストッパー14,38が当接することで、カバー体3が許容範囲を超えて変位するのを防止する。
【0033】
次に、可変天板19を変形させる変形機構について説明する。
変形機構は、図2,6に示すように、目地Sに形成される通路Lの両側に目地幅方向に沿って張設された一対の長尺ガイド部材40,40と、各長尺ガイド部材40を両側から緊張状態で保持する4つの引張コイルバネ41と、各長尺ガイド部材40と各引張コイルバネ41とを連繋するワイヤー42とを備えている。
【0034】
長尺ガイド部材40は、カバー体3の目地幅方向の寸法と略同寸法をなす、弾性変形可能な直線帯状の弾性金属板材からなるものであり、摺動受枠体2,2の、目地Sを介して対向する両隅部分の間に目地幅方向に張設され、水平方向に撓み得るよう保持される。引張コイルバネ41は、図12に示すように、水平受板10の建造物側の側縁中央部に立設された係止部46に一端を係止され、目地長手方向に配置されている。引張コイルバネ41の他端には、ワイヤー42が連結される。ワイヤー42は、水平受板10上の建物側の隅に配設されたローラー43で目地幅方向に転換し、摺動受枠体2の側縁で長尺ガイド部材40の一端と連結している。
【0035】
かかる構成にあっては、長尺ガイド部材40は、図1,2に示すように、常態では、両側の引張コイルバネ41,41の引張力により、カバー体3が目地Sに形成する通路Lの両側に沿うようにして、両建造物P,Qの間に目地幅方向に張設される。ここで、長尺ガイド部材40を張設する引張コイルバネ41のバネ特性は全て等しく、長尺ガイド部材40は、片方の建造物側に偏ることなく、目地幅方向において目地Sの中央で保持される。そして、かかる張設状態にあって、長尺ガイド部材40は、その中央部分において固定短冊部材25aの端部と水平回動可能なリンク機構45を介して連結しており、また、その他の側面を、可動短冊部材25b〜25eの両端部に設けられたローラー32aと当接している。
【0036】
また、水平受板10の側縁には、目地幅方向の側壁13が立設されており、摺動受枠体2の内部では、かかる側壁13が、長尺ガイド部材40の外側に位置することにより、長尺ガイド部材40の両端部が目地幅方向から外側に水平傾動しないように規制されている。このように、長尺ガイド部材40の両端部は水平傾動不能に保持されているため、両建造物P,Qが目地長手方向に相対変位した場合は、長尺ガイド部材40が側壁13の目地側端縁部で屈曲し、側壁13に保持された両端部を除く中央部のみが水平傾動して、目地長手方向の変位に追従することとなる。また、側壁13の目地側側縁部には、水平回転するローラー44が設けられている。かかるローラー44は、長尺ガイド部材40の外側に当接しており、長尺ガイド部材40の中央部が円滑に水平傾動し得るよう補助する。
【0037】
次に、床用目地カバー装置1の作動について説明する。
床用目地カバー装置1は、図13(a)に示すように、常態では、両側の摺動受枠体2,2が目地幅方向に対向している。そして、カバー体3は、摺動受枠体2,2に両端を保持されて、両建造物P,Qの床Rを相互に差し渡しており、両建造物P,Qの床Rと、端部カバー板11,11と、カバー体3とによって段差のない目地幅方向の通路Lを形成している。この時、両側の長尺ガイド部材40は、通路Lの目地S部分の両側に沿って目地幅方向に張設されており、可変天板19は、各短冊部材25の両端部を長尺ガイド部材40に当接させることで、目地幅方向の側縁を長尺ガイド部材40に添わせるようにして矩形状を成している。
【0038】
地震等によって両建造物P,Qが接近する方向に相対変位した場合、図13(b)に示すように、床用目地カバー装置1は、カバー体3が両側の摺動受枠体2の内部に深く進入することで、目地幅の収縮に伴う歪みを吸収する。一方、両建造物P,Qが離間する方向に相対変位した場合は、図13(c)に示すように、カバー体3の、摺動受枠体2に収容された部分が、摺動受枠体2の外に出ることで、目地幅の拡張に伴う歪みを吸収する。このように、建造物P,Qの目地幅方向の相対変位に対しては、カバー体3が両側の摺動受枠体2,2に対して目地幅方向に摺動することで目地幅の変化に追従する。この時、カバー体3は、中心保持手段6の引張コイルバネ23(図6参照)によって、目地Sの中央に保持されているため、一方の建造物側に偏って摺動受枠体2から脱落することがない。また、この時、変形機構は、長尺ガイド部材40を張設する引張コイルバネ41が伸縮することで、長尺ガイド部材40を緊張状態に保ちつつ、目地幅の変化に追従する。長尺ガイド部材40の中央部は、目地幅方向の相対変位に対しては水平傾動しないため、可変天板19は、目地幅方向の相対変位に対しては変形せずに矩形状態に保たれる。
【0039】
一方、地震等によって両建造物P,Qが、目地長手方向に相対変位した場合は、図14に示すように、対向状に配置されていた摺動受枠体2,2が目地長手方向にずれることとなる。この時、長尺ガイド部材40,40は、摺動受枠体2の目地側両隅部分で屈曲し、その中央部(摺動受枠体2の間に位置する部分)を、摺動受枠体2,2の相対変位に追従するように水平傾動させる。そして、この長尺ガイド部材40,40の中央部の水平傾動に伴って、長尺ガイド部材40の中央部に当接していた短冊部材25が目地長手方向に押圧されて個別に移動し、可変天板19は、摺動受枠体2,2の間に位置する部分が平行四辺形状に変形することとなる。このように、かかる構成にあっては、両建造物P,Qが目地長手方向に相対変位した場合でも、図14に示すように、可変天板19の、摺動受枠体2の外部に露出する部分が平行四辺形状に変形することにより、両建造物P,Qの間で隙間のない通路Lを保持することが可能となる。また、かかる場合にあっては、図14に示すように、ベース部材18が、固定短冊部材25aと一体となって目地長手方向に移動して、変形した可変天板19の中央部分を下方から支持しているため、可変天板19が変形した状態でも、カバー体3は、十分な負荷に耐えることができる。そして、地震等が収まって、摺動受枠体2,2が対向状態に復帰した場合には、長尺ガイド部材40の水平傾動した部分が再び目地幅方向に張設され、これに伴って、変形した可変天板19が矩形状態に復元することで、床用目地カバー装置1は変位前の常態(図13(a)参照)に復帰する。
【0040】
このように、本実施例の床用目地カバー装置1は、建造物P,Qの、目地長手方向及び目地幅方向の相対変位に対してスムーズに追従することができる。特に、建造物P,Qの目地長手方向の相対変位に対しては、可変天板19が両摺動受枠体2,2の間で平行四辺形状に変形するとともに、ベース部材18が可変天板19を下方から支持することにより、両建造物P,Qの間に、負荷に耐え得る、隙間のない通路Lを適切に保持することができる。
【0041】
図15(a)は、実施例の床用目地カバー装置1のより具体的な施工例である。詳述すると、かかる施工例にあっては、床用目地カバー装置1は、建造物P,Qの間に架け渡される渡り廊下にあって、一方の建造物Qの付け根部分において、建造物P,Qの床Rの間に形成された目地Sを差し渡すように配設される。また、床用目地カバー装置1の両側には、両建造物P,Qの通路内壁M,Mの間に形成された目地を繋ぐ内壁用目地カバー装置U,Uが立設される。さらに、内壁用目地カバー装置U,Uの外側には、両建造物P,Qの通路外壁N,Nの間に形成された目地を繋ぐ外壁用目地カバー装置W,Wが立設される。これらの壁用目地カバー装置U,Wは、両建造物P,Qの水平方向の相対変位に対して伸縮・傾動・屈曲することにより、両建造物P,Qの壁部分に生じる歪みを吸収するものである。これらの壁用目地カバー装置U,Wの構成は既知であるため詳細な説明は省略する。
【0042】
床用目地カバー装置1は、上述のように、目地Sの間に形成する通路Lの幅を少し上回る程度の幅寸法に設計されているから、図15(a)に示すように、かかる施工例にあっては、常態で、床用目地カバー装置1が、通路Lの内壁を形成する内壁用目地カバー装置Uの外側に殆ど突出することがない。また、床用目地カバー装置1は、上述のように、摺動受枠体2の間で可変天板19を平行四辺形状に変形させることで、両建造物P,Qの相対変位に追従する構成であるから、図15(b),15(c)に示すように、かかる施工例にあって、建造物P,Qが目地幅方向や目地長手方向に大きく相対変位した場合でも、床用目地カバー装置1は、可変天板19を変形させて、内壁用目地カバー装置Uの内側を確実に遮蔽しながらも、内壁用目地カバー装置Uの外側には可変天板19を殆ど突出させることがない。
【0043】
このように、本実施例の床用目地カバー装置1は、常態でも、また、建造物P,Qが水平方向に相対変位した場合でも、通路Lの両側に殆ど突出することがないから、例えば、図15(a)の施工例にあっては、内壁と外壁の間に、カバー体3を受け入れるスペースを設ける必要がなくなり、内壁と外壁を近接させて、通路幅(内壁間の寸法)に比して外壁間の寸法を小さくし、施工時の手間を軽減することが可能となる。
【0044】
なお、本発明の床用目地カバー装置は、上記実施例の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、本発明の床用目地カバー装置は、渡り廊下に配設されるものに限らず、異なる建造物間を結ぶ通路全般に適用可能である。また、図15において、実施例の床用目地カバー装置1を、内壁用目地カバー装置U及び外壁用目地カバー装置Wと組み合わせる施工例について説明したが、本発明の床用目地カバー装置は、開放型の渡り廊下にも適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 床用目地カバー装置
2 摺動受枠体
3 カバー体
6 保持手段
10 水平受板
10a 支持縁
10b 螺子
11 端部カバー板
11a 鋼板
11b 化粧シート
12 摺動空隙
13 側壁
14 ストッパー
18 ベース部材
18a,18b 角パイプ
18c 脚部
18d バネ連結部
19 可変天板
21 レール部材
22 スライド部材
22a 金属板
22b 摺動用ローラー
23 引張コイルバネ
25(25a〜25e) 短冊部材
27a,27b 金属杆
28 パネル状板材
28a ゴム板
28b 化粧シート
30 連結溝
31 連結突部
32 ローラー部材
32a ローラー
33 螺子
34 見切板
35 螺子
36 案内面
37 遮蔽板
38 ストッパー
40 長尺ガイド部材
41 引張コイルバネ
42 ワイヤー
43 ローラー
44 ローラー
45 リンク機構
46 係止部
L 通路
M 内壁
N 外壁
P 建造物
Q 建造物
R 床
S 目地
U 内壁用目地カバー装置
W 外壁用目地カバー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されて、該目地間に形成される通路の床面を構成するカバー体の両端を、両側の建造物の床に対して移動可能に保持してなる床用目地カバー装置であって、
前記カバー体は、両建造物の床に対して目地幅方向及び目地長手方向に移動可能となるように保持されるベース部材と、該ベース部材上に配設されて、前記通路の床面を形成する可変天板とを備えてなり、
前記可変天板は、平面視短冊形状をなす短冊部材を、その短手方向が目地幅方向と一致するようにして、前記ベース部材上に目地幅方向に沿って複数配列してなるものであり、
各短冊部材は、目地長手方向に個別に移動可能となるようにベース部材の上に保持され、かつ目地幅方向にはベース部材と一体に移動するよう保持されており、
さらに、カバー体が形成する通路の両側に沿うように、両建造物間に目地幅方向に張設され、両建造物が目地長手方向に相対変位する際には、両建造物の間で緊張状態を保ちつつ、その中央部を水平傾動させる一対の長尺ガイド部材を備え、
該一対の長尺ガイド部材は、前記各短冊部材の両端部に当接しており、両建造物が目地長手方向に相対変位する際には、各短冊部材が長尺ガイド部材によって目地長手方向に押圧されて移動し、可変天板が、その両側縁を長尺ガイド部材に倣わせるように変形することを特徴とする床用目地カバー装置。
【請求項2】
前記長尺ガイド部材は、両建造物の床に対して引張バネを介して連結されていることを特徴とする請求項1に記載の床用目地カバー装置。
【請求項3】
前記長尺ガイド部材は、両端部が目地幅方向に沿うように保持された、水平方向に屈曲可能な直線帯状の弾性金属板材であり、両建造物が目地長手方向に相対変位する際には、長尺ガイド部材が屈曲して、その中央部のみが水平傾動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床用目地カバー装置。
【請求項4】
カバー体の端部を摺動可能に収容可能な摺動空隙を備え、両建造物の床の側縁に対向状に配設されて、カバー体の両端部を摺動空隙内に保持する一対の摺動受枠体を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の床用目地カバー装置。
【請求項5】
前記摺動受枠体は、水平受板と、該水平受板の上部に対設された端部カバー板とを備え、該端部カバー板と水平受板間を摺動空隙とするものであり、
可変天板の、常態で摺動空隙外に露出する部分の上面は、前記端部カバー板の上面と略同じ高さに設けられており、可変天板の、常態で摺動空隙内に収容される部分の上面は、前記端部カバー板の底面よりも低い位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の床用目地カバー装置。
【請求項6】
前記端部カバー板は、浮き上がり可能に設置されており、
端部カバー板と可変天板の一方に、案内面を形成するとともに、端部カバー板と可変天板の他方に、両摺動受枠体が近接する方向に相対変位した際に、前記案内面に突き当たることとなる案内部材を配設し、両摺動受枠体が近接する方向に相対変位した際に、前記案内面と案内部材の案内作用によって、端部カバー板が浮き上がって可変天板の上に乗り上げるよう構成されていることを特徴とする請求項5に記載の床用目地カバー装置。
【請求項7】
短冊部材の両端部に、水平方向に回転するローラーが配設されており、短冊部材は該ローラーを、前記長尺ガイド部材に当接させていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の床用目地カバー装置。
【請求項8】
前記複数の短冊部材のうち、中央部分に配置される一本の短冊部材は、ベース部材に固定され、該短冊部材の両端部は、長尺ガイド部材に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の床用目地カバー装置。
【請求項9】
前記ベース部材は、両建造物の床に対して、目地長手方向に摺動可能に保持されるスライド部材と、両側のスライド部材とベース部材とを目地幅方向に並列接続する複数の引張バネとによって構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の床用目地カバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−112996(P2013−112996A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260019(P2011−260019)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(592094243)カネソウ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】