底質改善方法及び底質改善構造体
【課題】閉鎖性・半閉鎖性水域などにおいて、底質改善剤を用いて対象水域内の底質改善を確実かつ均一に行う手段の提供。
【解決手段】支持部材１と、該支持部材１に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤２とを少なくとも備えた底質改善構造体Ａ’を敷設する工程を含む底質改善方法を提供する。線状、簾状、網状、若しくは略格子状などに形成された支持部材１に、底質改善成分を含有する固形剤２を一定の間隔で取着させ、その底質改善構造体Ａ’を港湾、湖沼、干潟、運河、堀など閉鎖性・半閉鎖性水域に敷設する。これにより、一定の間隔を保った状態で固形剤２を底泥Ｓ１内に供給できるため、底質改善を均一に行うことができる。また、固形剤２が支持部材１に固定されるため、対象水域への固形剤２の供給量を調節でき、波浪・潮流などで固形剤２が流されたり、掘り起こしなどの際に固形剤２が移動したりする懸念もない。
【解決手段】支持部材１と、該支持部材１に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤２とを少なくとも備えた底質改善構造体Ａ’を敷設する工程を含む底質改善方法を提供する。線状、簾状、網状、若しくは略格子状などに形成された支持部材１に、底質改善成分を含有する固形剤２を一定の間隔で取着させ、その底質改善構造体Ａ’を港湾、湖沼、干潟、運河、堀など閉鎖性・半閉鎖性水域に敷設する。これにより、一定の間隔を保った状態で固形剤２を底泥Ｓ１内に供給できるため、底質改善を均一に行うことができる。また、固形剤２が支持部材１に固定されるため、対象水域への固形剤２の供給量を調節でき、波浪・潮流などで固形剤２が流されたり、掘り起こしなどの際に固形剤２が移動したりする懸念もない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、閉鎖性・半閉鎖性水域などにおける底質改善手段に関連する。より詳細には、支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを備えた底質改善構造体を敷設する底質改善手段などに関連する。
【背景技術】
【０００２】
近年、港湾、湖沼、干潟、運河、堀など閉鎖性・半閉鎖性水域における底質の汚染が問題となっている。
【０００３】
閉鎖性・半閉鎖性水域などに産業排水・生活排水などが過剰に流入すると、有機物とともに、窒素化合物・リンなどの濃度が上昇し、水域内が富栄養化する。富栄養化が進行した水域ではプランクトンが異常増殖し、その死骸などが水底に堆積する。プランクトンの死骸やその他の堆積した有機物は、好気性微生物などにより分解され、その際、酸素が消費され、水底付近は貧酸素状態になる。底泥が貧酸素状態になると、有機物が酸化分解されて有機酸を生成し、底泥が酸性状態・還元状態となるとともに、嫌気性微生物により硫化水素などが生成され、悪臭を伴うようになる。また、底泥が還元状態となると、底泥中のリンが溶出し、富栄養化を助長する。
【０００４】
底質を改善・浄化する手段として、浚渫により汚泥を除去する方法、覆砂により底質を被覆する方法、耕転・曝気などで底泥内に酸素を供給する方法、薬剤を用いた方法などが行われている。
【０００５】
薬剤を用いた底質改善手段として、例えば、水酸化マグネシウムを用いて底泥を弱アルカリ性に改質することにより嫌気性微生物の活性を低くし硫化水素の発生を抑制する方法（特許文献１など参照）、過酸化カルシウムなどを用いて底泥内に酸素を供給することにより好気性微生物を活性化し底質を改善する方法（特許文献２など参照）などが検討されている。
【０００６】
また、薬剤を用いた底質改善手段として、硝酸カルシウムなどを底泥に注入する方法も実用化されている（特許文献３など参照）。
【０００７】
硝酸カルシウムは強力な酸化剤であり、また、水に易溶で潮解性の強い化合物である。硝酸カルシウムなどの酸化剤を底泥に注入すると、還元状態の底泥を酸化雰囲気に改善するとともに、硫化物を酸化し、硫化水素などによる悪臭の発生を抑制する。また、２価の鉄が３価に酸化され、可溶性リンを固定化することにより、リン溶出による水域の富栄養化を抑制する。さらに、脱窒菌の活性化により、有機物を窒素ガスと炭酸ガスに分解する反応を促進する。
【０００８】
現在、硝酸カルシウムなどを底泥に注入する方法として、硝酸カルシウムの水溶液をゲル内に閉じ込めた上で、船上から底泥まで圧送するための管などを設置し、そのゲル状物を底泥内に注入する方法が一般的に行われている。しかし、硝酸カルシウムは潮解性が強いため、水溶液の調製を作業の直前に行う必要があること、ゲルの状態管理が必要でかつ熟練を有すること、このゲル状物を底泥に注入する際に大規模な設備が必要で、注入作業も比較的煩雑であることなどの難点があった。
【０００９】
それに対し、特許文献４では、硝酸カルシウムなどを固形化する技術が開示されている。これにより、直接底泥などに固形剤を直接投下すればよいため、硝酸カルシウムなどを作業直前に調製する必要がなくなり、また、取り扱いも簡易になった。加えて、固形化することにより、大規模な注入設備を用いずに、また煩雑な作業を行わずに、底泥に硝酸カルシウムなどを供給できる。
【特許文献１】特開２００１−１８１１１７号公報
【特許文献２】特開平２−２１８４８８号公報
【特許文献３】特開２０００−２１８２９６号公報
【特許文献４】特開２００２−４５８８８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１０】
底質改善成分を含有する固形剤を用いる場合、その固形剤を船上などから底泥に投下するだけでよく、比較的簡易な作業で底質改善を図ることができる一方、予め設定した水域に設定した量の固形剤を確実かつ均一に供給することが難しい。
【００１１】
そこで、本発明は、対象水域内の底質改善を確実かつ均一に行う手段を提供することなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明では、支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体を敷設する工程を含む底質改善方法を提供する。
【００１３】
例えば、線状、簾状、網状、若しくは略格子状などに形成された支持部材に、底質改善成分を含有する固形剤を一定の間隔で取着させ、その底質改善構造体を港湾、湖沼、干潟、運河、堀など閉鎖性・半閉鎖性水域に敷設する。これにより、一定の間隔を保った状態で固形剤を底泥内に供給できるため、底質改善を均一に行うことができる。
【００１４】
また、固形剤が支持部材に固定されているため、対象水域への固形剤の供給量を調節できる。加えて、固形剤を対象水域に供給する際、若しくは供給後に、波浪・潮流などで固形剤が流されたり、底泥の掘り起こしを行った際などに、供給した場所から固形剤が移動したりする懸念もない。そのため、予め設定した水域に設定した量の固形剤を確実に供給できるため、対象水域の底質改善を確実に行うことができる。
【００１５】
その他、この底質改善手段は、大規模な装置などを用いずに行うことができ、また、比較的安価な材料で行うことができるため、簡易かつ低廉に施工できるという有利性がある。
【発明の効果】
【００１６】
本発明により、閉鎖性・半閉鎖性水域などにおける底質改善を簡易、確実かつ均一に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
＜本発明に係る底質改善構造体について＞
本発明は、支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体をすべて包含する。
【００１８】
以下、図１を用いて、本発明に係る底質改善構造体の例について説明する。なお、本発明は、この実施形態のみに狭く限定されない。
【００１９】
図１は、本発明に係る底質改善構造体の例を示す外観斜視部分模式図である。
【００２０】
図１の底質改善構造体Ａは、網状に形成された支持部材１と、その支持部材１に一定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤２とを備える。
【００２１】
支持部材１は、固形剤２を固定するための骨格構造である。支持部材１の形状は、固形剤２を一定の間隔を保った状態で固定できる形状であればよく、特に限定されない。
【００２２】
例えば、図１に示す通り、網状に形成された支持部材１を用いて、支持部材１上に固形剤２を取着させてもよいし、簾状（図２参照）、略格子状（図３参照）に形成された支持部材１を用いてもよい。また、線状に形成された支持部材１上に所定間隔で一列に固形剤２を取着させた構成にしてもよい。
【００２３】
支持部材１の二方又は四方を枠体１１で囲む構成にしてもよい。枠体１１を備える構成にすることにより、底質改善構造体Ａの構造を強固にでき、形状の変動を少なくできるため、底質改善構造体Ａの設置・運搬などの作業を容易化できる。
【００２４】
例えば、網状、簾状又は略格子状に形成された支持部材１を用いた場合、図１に示す通り、水及び底泥が流通可能な流通部分１２が、支持部材１内の非形成領域に形成される。流通部分１２を有する形状にすることにより、底質改善構造体Ａの軽量化を図れるほか、流通部分１２を水及び底泥が通り抜けることにより、底質改善構造体Ａを底泥内に簡易に設置できる。
【００２５】
支持部材１の材質は、上記の形状に形成できる公知のものを広く用いることができ、特に限定されない。
【００２６】
例えば、漁網などに用いられている天然繊維・合成繊維、金網などに用いられている金属、その他各種部材に用いられている合成樹脂・金属などを広く用いることができる。
【００２７】
支持部材１の材質は特に限定されないが、鉄が最も好適である。例えば、金網など、支持部材１が鉄を含む材料で形成された場合、鉄はもともと自然界に広く存在する物質であるため、敷設後、水中に放置しても環境負荷が少ない。また、例えば、固形剤２に酸化剤を用いる場合では、鉄製のものを用いることにより、２価の鉄を３価に酸化し、可溶性リンを固定化するため、リン溶出による水域の富栄養化を抑制できる。
【００２８】
支持部材１が合成繊維又は合成樹脂などで形成された場合、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉などの生分解性プラスチック製のものを用いてもよい。これにより、敷設後の環境負荷を低減できる。
【００２９】
固形剤２は、底質改善成分を有効成分として含有し、かつ固形化されたものであればよく、特に限定されない。
【００３０】
底質改善成分は、公知のものを広く用いることができ、狭く限定されない。例えば、底泥を弱アルカリ性に改質することにより底質改善できる化合物、底泥内に酸素を供給することにより底質改善できる化合物、酸化剤などを広く包含する。
【００３１】
底泥を弱アルカリ性に改質することにより底質改善できる化合物として、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硝酸マグネシウムなどのマグネシウム化合物が挙げられる。底泥内に酸素を供給することにより底質改善できる化合物として、例えば、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、酸化鉄などが挙げられる。
【００３２】
酸化剤として、例えば、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硝酸マグネシウム、硝酸マンガン、ミョウバンなどが挙げられる。これらの酸化剤は、還元状態の底泥を酸化雰囲気に改善するとともに、硫化物を酸化し、硫化水素などによる悪臭の発生を抑制でき、さらに、２価の鉄を３価に酸化し、可溶性リンを固定化することにより、リン溶出による水域の富栄養化を抑制するため、本発明に係る底質改善成分として好適である。また、これらのうち、硝酸塩は、脱窒菌を活性化し、有機物を窒素ガスと炭酸ガスに分解する反応を促進するため、より好適である。
【００３３】
このうち、硝酸カルシウムは、酸化剤として最も強力な作用を有し、かつ、底質改善効果、特に、脱臭効果が高いので、最も好適である。なお、硝酸カルシウム中のカルシウム塩は、水中に溶解する有機酸・リンなどの成分を吸着・固定化し、水中への溶出を抑制する作用も有する。
【００３４】
底質改善成分の固形化は、公知の技術を用いることができ、特に限定されない。例えば、上記の化合物と、結合剤を混合し、型に入れて加圧し（例えば、２０〜１００ｋｇ/ｃｍ２）、所定の形状に成形することにより、製造できる。なお、固形剤２の形状は、目的・用途などに応じて設計すればよく、特に限定されない。
【００３５】
結合剤としては、例えば、炭素数１１〜３１の常温で固体の脂肪族カルボン酸（例えば、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸）又はそのエステル、芳香族カルボン酸又はそのエステルなどを用いることができる。なお、これらの化合物は疎水性である。従って、例えば、これらの結合剤の混合比率を１〜４０重量％の範囲で適宜調節することにより、水中における酸化剤の溶出の速さを目的・用途などに応じて適宜調節できる。
【００３６】
その他、上記の化合物と結合剤を混合する際、目的・用途などに応じて、適宜、他の化合物を加え、加圧・成形してもよい。
【００３７】
目的・用途などに応じて、一部又は全ての固形剤２を、水不溶性又は水難溶性の基材で被覆してもよい。固形剤２をこれらの基材で被覆することにより、固形剤２の溶出を遅くできる。従って、例えば、水に不溶性又は難溶性の基材による固形剤２の被覆を行ったものと行っていないものの両方、若しくは被覆の度合いの異なる複数の固形剤２を、支持部材１に順に取着することにより、効果持続期間を調節・延長できる。
【００３８】
水不溶性又は水難溶性の基材として、例えば、ワックス類（カルナバロウ、ミツロウ、サラシミツロウ、硬化油、パラフィン、ステアリン酸及びステアリルアルコール）、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレングリコール類、ロジン、水素添加ロジングリセリンエステル、エステルガム、酢酸ビニル樹脂、寒天、アルギン酸、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。固形剤２の被覆処理（コーティング処理）は、公知の手段により、行うことができる。
【００３９】
固形剤２を支持部材１に取着させる手段については、公知の手段を採用でき、特に限定されない。例えば、公知の接着剤などを用いて固形剤２を支持部材１に固定させてもよいし、支持部材１又は他の紐状部材などで結束することにより固形剤２を支持部材１に固定させてもよい。また、貫通孔を備えた形状に固形剤２を予め成型し、支持部材１をその貫通孔に挿通させることにより、固形剤２を支持部材１に取着させてもよい。
【００４０】
なお、各固形剤２の間隔は、目的・用途、固形剤２の大きさ、底質改善効果の有効範囲などに応じて適宜定めることができ、特に限定されない。
【００４１】
＜本発明に係る底質改善方法について＞
本発明は、支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体を敷設する工程を含む底質改善方法をすべて包含する。
【００４２】
以下、図２及び図３を用いて、本発明に係る底質改善方法の施工例を説明する。なお、本発明は、これらの施工例のみに狭く限定されない。
【００４３】
図２は、本発明に係る底質改善方法の施工例を示す模式図である。
【００４４】
図２の底質改善構造体Ａ’は、簾状に形成された支持部材１と、その支持部材１に一定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤２と、底質改善構造体Ａ’を底泥Ｓ１内に沈下させる重量調整手段３とを備える。
【００４５】
船４上では、底質改善構造体Ａ’が巻き取られた状態で保管されている（符号１３参照）。底質改善構造体Ａ’を巻き取り可能に形成することにより、底質改善構造体Ａ’の省スペース化を図ることができ、かつ保管・運搬・設置を簡易化できる。
【００４６】
重量調整手段３は、例えば、沈子などのように、底質改善構造体Ａ’に取着し、底質改善構造体Ａ’を水中、さらに底泥内にまで沈める役割を果たす。
【００４７】
重量調整手段３の形状・材質などは特に限定されないが、比重の高い材料、例えば、鉄製のものが好ましい。鉄製のものを用いることには、上記と同様、敷設後、水中に放置しても環境負荷が少ない、固形剤２に酸化剤を用いる場合、２価の鉄を３価に酸化し、可溶性リンを固定化するため、リン溶出による水域の富栄養化を抑制できる、などの有利性がある。
【００４８】
例えば、水底Ｓに底質改善構造体Ａ’を敷設する際、底質改善構造体Ａ’が自重だけでは十分に底泥Ｓ１内に沈下しない場合、底質改善構造体Ａ’に重量調整手段３を取着させることにより、底質改善構造体Ａ’を底泥Ｓ１内に沈下させることができる。
【００４９】
図２では、船４を用いて、水中Ｗに底質改善構造体Ａ’を敷設する作業を行う。
【００５０】
杭材５を水底Ｓに打ち付けて、底質改善構造体Ａ’の一端を予め底泥Ｓ１内に固定しておく。次に、船４を前方へ進ませながら、底質改善構造体Ａ’を順次水Ｗ内へ投下し、底泥Ｓ１上に底質改善構造体Ａ’を敷設していく。
【００５１】
底質改善構造体Ａ’の自重により、若しくは重量調整手段３の重みにより、底質改善構造体Ａ’は底泥Ｓ１内に沈下する。
【００５２】
この方法により、一定の間隔を保った状態で固形剤２を水底Ｓに敷設でき、かつ固形剤２を底泥Ｓ１内に沈下させることができるため、底質改善を均一に行うことができる。
【００５３】
また、この方法により、比較的大規模な水域を底質改善処理したい場合にも、専用の装置などを用いずに比較的安価な材料で施工できる。
【００５４】
図３は、本発明に係る底質改善方法の別の施工例を示す模式図である。
【００５５】
図３の底質改善構造体Ａ’’は、略格子状に形成された支持部材１と、その支持部材１に一定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤２とを備える。また、この底質改善構造体Ａ’’は、枠体１１を備え、パネル状に形成されている。
【００５６】
例えば、干潮時に水底Ｓが露出する水域では干潮時に、常に水が存在する水域ではダイバーによる作業又は船上からの作業により、底泥Ｓ１上にパネル状の底質改善構造体Ａ’’を並べて設置していく（符号Ｘ１参照）。
【００５７】
各底質改善構造体Ａ’’を連結できる構成にしてもよい。連結できる構成にすることにより、各底質改善構造体Ａ’’を正確な場所に設置できる。連結手段は公知の方法を広く用いることができる。
【００５８】
各底質改善構造体Ａ’’を底泥Ｓ１上に敷設した際、自重により底質改善構造体Ａ’’が底泥Ｓ１内に沈下しない場合は、例えば、圧力付加手段６を用いて、底質改善構造体Ａ’’に敷設後上方から圧力を加えることにより、底質改善構造体Ａ’’を底泥内に沈下させる（符号Ｘ２参照）。
【００５９】
なお、圧力付加手段６は、底質改善構造体Ａ’’に敷設後上方から圧力を加えることができる構成のものであればよい。
【００６０】
この方法により、前記と同様、一定の間隔を保った状態で固形剤２を水底Ｓに敷設でき、かつ固形剤２を底泥Ｓ１内に沈下させることができるため、底質改善を均一に行うことができる。
【００６１】
また、この方法により、前記と同様、比較的大規模な水域を底質改善処理したい場合にも、専用の装置などを用いずに比較的安価な材料で施工できる。
【００６２】
即ち、本発明に係る方法により、簡易、低廉、かつ均一に底質改善を行うことができ、かつ対象水域の底質改善を確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【００６３】
本発明は、港湾、湖沼、干潟、運河、堀など閉鎖性・半閉鎖性水域において、固形化できる薬剤を用いて底質改善を行う場合に、一定の間隔を保った状態で固形剤を底泥内に供給できるため、底質改善を均一に行うことができる点、予め設定した水域に設定した量の固形剤を確実に供給できるため、対象水域の底質改善を確実に行うことができる点などで、有用である。また、比較的低労力・低コストで施工できる点、比較的広範囲の水域を底質改善したい場合にも適用できる点などで有用である。
【００６４】
上述の通り、硝酸カルシウムを用いた底質改善方法は、底質改善効果、特に、脱臭効果の高い方法である。現在、硝酸カルシウムの水溶液をゲル内に閉じ込めた上で、船上から底泥まで圧送するための管などを設置し、そのゲル状物を底泥内に注入する方法が一般的に行われている。
【００６５】
しかし、この方法の場合、硝酸カルシウムは潮解性が強いため、硝酸カルシウム水溶液の調製を、施工現場などで、作業の直前に行う必要がある。また、施工段階で、硝酸カルシウム水溶液の均一状態を保持するため、攪拌作業が必要であり、施工管理が煩雑であった。さらに、ゲルの状態管理が必要であり、その管理が不充分な場合、圧送したゲルが底泥中に混在しないで底泥表面に漏れ出し、水中へ溶解する。そのため、熟練した作業員が行わないと、一定量かつ均一な硝酸カルシウムの注入が難しいという問題があった。即ち、この方法で施工する場合、充分な経験と多大な労力が必要であるという問題があった。
【００６６】
一方、固形化した硝酸カルシウムを用いた場合、固形剤の投下・散布などの労力は大幅に軽減され、また、取り扱いも容易になる。しかし、予め設定した水域に設定した量の固形剤を確実かつ均一に供給することが難しいという問題があった。
【００６７】
それに対し、本発明は、線状、簾状、網状、若しくは略格子状などに形成された支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体を底泥に敷設することにより、底質改善を簡易、確実かつ均一に行うことができる底質改善手段であり、固形化した硝酸カルシウムなどにも適用できる。また、労力・コストを大幅に軽減でき、施工管理も容易で、大規模な施工にも適用できる。従って、本発明は、硝酸カルシウムなどを用いて、簡易、有効かつ大規模に底質改善工事を施工できる点でも有用である。
【図面の簡単な説明】
【００６８】
【図１】本発明に係る底質改善構造体の例を示す外観斜視部分模式図。
【図２】本発明に係る底質改善方法の施工例を示す模式図。
【図３】本発明に係る底質改善方法の別の施工例を示す模式図。
【符号の説明】
【００６９】
１ 支持部材
２ 固形剤
３ 重量調整手段
４ 船
５ 杭材
６ 圧力付加手段
Ａ 底質改善構造体
Ｓ 水底
Ｓ１ 底泥
Ｗ 水
【技術分野】
【０００１】
本発明は、閉鎖性・半閉鎖性水域などにおける底質改善手段に関連する。より詳細には、支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを備えた底質改善構造体を敷設する底質改善手段などに関連する。
【背景技術】
【０００２】
近年、港湾、湖沼、干潟、運河、堀など閉鎖性・半閉鎖性水域における底質の汚染が問題となっている。
【０００３】
閉鎖性・半閉鎖性水域などに産業排水・生活排水などが過剰に流入すると、有機物とともに、窒素化合物・リンなどの濃度が上昇し、水域内が富栄養化する。富栄養化が進行した水域ではプランクトンが異常増殖し、その死骸などが水底に堆積する。プランクトンの死骸やその他の堆積した有機物は、好気性微生物などにより分解され、その際、酸素が消費され、水底付近は貧酸素状態になる。底泥が貧酸素状態になると、有機物が酸化分解されて有機酸を生成し、底泥が酸性状態・還元状態となるとともに、嫌気性微生物により硫化水素などが生成され、悪臭を伴うようになる。また、底泥が還元状態となると、底泥中のリンが溶出し、富栄養化を助長する。
【０００４】
底質を改善・浄化する手段として、浚渫により汚泥を除去する方法、覆砂により底質を被覆する方法、耕転・曝気などで底泥内に酸素を供給する方法、薬剤を用いた方法などが行われている。
【０００５】
薬剤を用いた底質改善手段として、例えば、水酸化マグネシウムを用いて底泥を弱アルカリ性に改質することにより嫌気性微生物の活性を低くし硫化水素の発生を抑制する方法（特許文献１など参照）、過酸化カルシウムなどを用いて底泥内に酸素を供給することにより好気性微生物を活性化し底質を改善する方法（特許文献２など参照）などが検討されている。
【０００６】
また、薬剤を用いた底質改善手段として、硝酸カルシウムなどを底泥に注入する方法も実用化されている（特許文献３など参照）。
【０００７】
硝酸カルシウムは強力な酸化剤であり、また、水に易溶で潮解性の強い化合物である。硝酸カルシウムなどの酸化剤を底泥に注入すると、還元状態の底泥を酸化雰囲気に改善するとともに、硫化物を酸化し、硫化水素などによる悪臭の発生を抑制する。また、２価の鉄が３価に酸化され、可溶性リンを固定化することにより、リン溶出による水域の富栄養化を抑制する。さらに、脱窒菌の活性化により、有機物を窒素ガスと炭酸ガスに分解する反応を促進する。
【０００８】
現在、硝酸カルシウムなどを底泥に注入する方法として、硝酸カルシウムの水溶液をゲル内に閉じ込めた上で、船上から底泥まで圧送するための管などを設置し、そのゲル状物を底泥内に注入する方法が一般的に行われている。しかし、硝酸カルシウムは潮解性が強いため、水溶液の調製を作業の直前に行う必要があること、ゲルの状態管理が必要でかつ熟練を有すること、このゲル状物を底泥に注入する際に大規模な設備が必要で、注入作業も比較的煩雑であることなどの難点があった。
【０００９】
それに対し、特許文献４では、硝酸カルシウムなどを固形化する技術が開示されている。これにより、直接底泥などに固形剤を直接投下すればよいため、硝酸カルシウムなどを作業直前に調製する必要がなくなり、また、取り扱いも簡易になった。加えて、固形化することにより、大規模な注入設備を用いずに、また煩雑な作業を行わずに、底泥に硝酸カルシウムなどを供給できる。
【特許文献１】特開２００１−１８１１１７号公報
【特許文献２】特開平２−２１８４８８号公報
【特許文献３】特開２０００−２１８２９６号公報
【特許文献４】特開２００２−４５８８８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１０】
底質改善成分を含有する固形剤を用いる場合、その固形剤を船上などから底泥に投下するだけでよく、比較的簡易な作業で底質改善を図ることができる一方、予め設定した水域に設定した量の固形剤を確実かつ均一に供給することが難しい。
【００１１】
そこで、本発明は、対象水域内の底質改善を確実かつ均一に行う手段を提供することなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明では、支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体を敷設する工程を含む底質改善方法を提供する。
【００１３】
例えば、線状、簾状、網状、若しくは略格子状などに形成された支持部材に、底質改善成分を含有する固形剤を一定の間隔で取着させ、その底質改善構造体を港湾、湖沼、干潟、運河、堀など閉鎖性・半閉鎖性水域に敷設する。これにより、一定の間隔を保った状態で固形剤を底泥内に供給できるため、底質改善を均一に行うことができる。
【００１４】
また、固形剤が支持部材に固定されているため、対象水域への固形剤の供給量を調節できる。加えて、固形剤を対象水域に供給する際、若しくは供給後に、波浪・潮流などで固形剤が流されたり、底泥の掘り起こしを行った際などに、供給した場所から固形剤が移動したりする懸念もない。そのため、予め設定した水域に設定した量の固形剤を確実に供給できるため、対象水域の底質改善を確実に行うことができる。
【００１５】
その他、この底質改善手段は、大規模な装置などを用いずに行うことができ、また、比較的安価な材料で行うことができるため、簡易かつ低廉に施工できるという有利性がある。
【発明の効果】
【００１６】
本発明により、閉鎖性・半閉鎖性水域などにおける底質改善を簡易、確実かつ均一に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
＜本発明に係る底質改善構造体について＞
本発明は、支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体をすべて包含する。
【００１８】
以下、図１を用いて、本発明に係る底質改善構造体の例について説明する。なお、本発明は、この実施形態のみに狭く限定されない。
【００１９】
図１は、本発明に係る底質改善構造体の例を示す外観斜視部分模式図である。
【００２０】
図１の底質改善構造体Ａは、網状に形成された支持部材１と、その支持部材１に一定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤２とを備える。
【００２１】
支持部材１は、固形剤２を固定するための骨格構造である。支持部材１の形状は、固形剤２を一定の間隔を保った状態で固定できる形状であればよく、特に限定されない。
【００２２】
例えば、図１に示す通り、網状に形成された支持部材１を用いて、支持部材１上に固形剤２を取着させてもよいし、簾状（図２参照）、略格子状（図３参照）に形成された支持部材１を用いてもよい。また、線状に形成された支持部材１上に所定間隔で一列に固形剤２を取着させた構成にしてもよい。
【００２３】
支持部材１の二方又は四方を枠体１１で囲む構成にしてもよい。枠体１１を備える構成にすることにより、底質改善構造体Ａの構造を強固にでき、形状の変動を少なくできるため、底質改善構造体Ａの設置・運搬などの作業を容易化できる。
【００２４】
例えば、網状、簾状又は略格子状に形成された支持部材１を用いた場合、図１に示す通り、水及び底泥が流通可能な流通部分１２が、支持部材１内の非形成領域に形成される。流通部分１２を有する形状にすることにより、底質改善構造体Ａの軽量化を図れるほか、流通部分１２を水及び底泥が通り抜けることにより、底質改善構造体Ａを底泥内に簡易に設置できる。
【００２５】
支持部材１の材質は、上記の形状に形成できる公知のものを広く用いることができ、特に限定されない。
【００２６】
例えば、漁網などに用いられている天然繊維・合成繊維、金網などに用いられている金属、その他各種部材に用いられている合成樹脂・金属などを広く用いることができる。
【００２７】
支持部材１の材質は特に限定されないが、鉄が最も好適である。例えば、金網など、支持部材１が鉄を含む材料で形成された場合、鉄はもともと自然界に広く存在する物質であるため、敷設後、水中に放置しても環境負荷が少ない。また、例えば、固形剤２に酸化剤を用いる場合では、鉄製のものを用いることにより、２価の鉄を３価に酸化し、可溶性リンを固定化するため、リン溶出による水域の富栄養化を抑制できる。
【００２８】
支持部材１が合成繊維又は合成樹脂などで形成された場合、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉などの生分解性プラスチック製のものを用いてもよい。これにより、敷設後の環境負荷を低減できる。
【００２９】
固形剤２は、底質改善成分を有効成分として含有し、かつ固形化されたものであればよく、特に限定されない。
【００３０】
底質改善成分は、公知のものを広く用いることができ、狭く限定されない。例えば、底泥を弱アルカリ性に改質することにより底質改善できる化合物、底泥内に酸素を供給することにより底質改善できる化合物、酸化剤などを広く包含する。
【００３１】
底泥を弱アルカリ性に改質することにより底質改善できる化合物として、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硝酸マグネシウムなどのマグネシウム化合物が挙げられる。底泥内に酸素を供給することにより底質改善できる化合物として、例えば、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、酸化鉄などが挙げられる。
【００３２】
酸化剤として、例えば、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硝酸マグネシウム、硝酸マンガン、ミョウバンなどが挙げられる。これらの酸化剤は、還元状態の底泥を酸化雰囲気に改善するとともに、硫化物を酸化し、硫化水素などによる悪臭の発生を抑制でき、さらに、２価の鉄を３価に酸化し、可溶性リンを固定化することにより、リン溶出による水域の富栄養化を抑制するため、本発明に係る底質改善成分として好適である。また、これらのうち、硝酸塩は、脱窒菌を活性化し、有機物を窒素ガスと炭酸ガスに分解する反応を促進するため、より好適である。
【００３３】
このうち、硝酸カルシウムは、酸化剤として最も強力な作用を有し、かつ、底質改善効果、特に、脱臭効果が高いので、最も好適である。なお、硝酸カルシウム中のカルシウム塩は、水中に溶解する有機酸・リンなどの成分を吸着・固定化し、水中への溶出を抑制する作用も有する。
【００３４】
底質改善成分の固形化は、公知の技術を用いることができ、特に限定されない。例えば、上記の化合物と、結合剤を混合し、型に入れて加圧し（例えば、２０〜１００ｋｇ/ｃｍ２）、所定の形状に成形することにより、製造できる。なお、固形剤２の形状は、目的・用途などに応じて設計すればよく、特に限定されない。
【００３５】
結合剤としては、例えば、炭素数１１〜３１の常温で固体の脂肪族カルボン酸（例えば、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸）又はそのエステル、芳香族カルボン酸又はそのエステルなどを用いることができる。なお、これらの化合物は疎水性である。従って、例えば、これらの結合剤の混合比率を１〜４０重量％の範囲で適宜調節することにより、水中における酸化剤の溶出の速さを目的・用途などに応じて適宜調節できる。
【００３６】
その他、上記の化合物と結合剤を混合する際、目的・用途などに応じて、適宜、他の化合物を加え、加圧・成形してもよい。
【００３７】
目的・用途などに応じて、一部又は全ての固形剤２を、水不溶性又は水難溶性の基材で被覆してもよい。固形剤２をこれらの基材で被覆することにより、固形剤２の溶出を遅くできる。従って、例えば、水に不溶性又は難溶性の基材による固形剤２の被覆を行ったものと行っていないものの両方、若しくは被覆の度合いの異なる複数の固形剤２を、支持部材１に順に取着することにより、効果持続期間を調節・延長できる。
【００３８】
水不溶性又は水難溶性の基材として、例えば、ワックス類（カルナバロウ、ミツロウ、サラシミツロウ、硬化油、パラフィン、ステアリン酸及びステアリルアルコール）、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレングリコール類、ロジン、水素添加ロジングリセリンエステル、エステルガム、酢酸ビニル樹脂、寒天、アルギン酸、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。固形剤２の被覆処理（コーティング処理）は、公知の手段により、行うことができる。
【００３９】
固形剤２を支持部材１に取着させる手段については、公知の手段を採用でき、特に限定されない。例えば、公知の接着剤などを用いて固形剤２を支持部材１に固定させてもよいし、支持部材１又は他の紐状部材などで結束することにより固形剤２を支持部材１に固定させてもよい。また、貫通孔を備えた形状に固形剤２を予め成型し、支持部材１をその貫通孔に挿通させることにより、固形剤２を支持部材１に取着させてもよい。
【００４０】
なお、各固形剤２の間隔は、目的・用途、固形剤２の大きさ、底質改善効果の有効範囲などに応じて適宜定めることができ、特に限定されない。
【００４１】
＜本発明に係る底質改善方法について＞
本発明は、支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体を敷設する工程を含む底質改善方法をすべて包含する。
【００４２】
以下、図２及び図３を用いて、本発明に係る底質改善方法の施工例を説明する。なお、本発明は、これらの施工例のみに狭く限定されない。
【００４３】
図２は、本発明に係る底質改善方法の施工例を示す模式図である。
【００４４】
図２の底質改善構造体Ａ’は、簾状に形成された支持部材１と、その支持部材１に一定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤２と、底質改善構造体Ａ’を底泥Ｓ１内に沈下させる重量調整手段３とを備える。
【００４５】
船４上では、底質改善構造体Ａ’が巻き取られた状態で保管されている（符号１３参照）。底質改善構造体Ａ’を巻き取り可能に形成することにより、底質改善構造体Ａ’の省スペース化を図ることができ、かつ保管・運搬・設置を簡易化できる。
【００４６】
重量調整手段３は、例えば、沈子などのように、底質改善構造体Ａ’に取着し、底質改善構造体Ａ’を水中、さらに底泥内にまで沈める役割を果たす。
【００４７】
重量調整手段３の形状・材質などは特に限定されないが、比重の高い材料、例えば、鉄製のものが好ましい。鉄製のものを用いることには、上記と同様、敷設後、水中に放置しても環境負荷が少ない、固形剤２に酸化剤を用いる場合、２価の鉄を３価に酸化し、可溶性リンを固定化するため、リン溶出による水域の富栄養化を抑制できる、などの有利性がある。
【００４８】
例えば、水底Ｓに底質改善構造体Ａ’を敷設する際、底質改善構造体Ａ’が自重だけでは十分に底泥Ｓ１内に沈下しない場合、底質改善構造体Ａ’に重量調整手段３を取着させることにより、底質改善構造体Ａ’を底泥Ｓ１内に沈下させることができる。
【００４９】
図２では、船４を用いて、水中Ｗに底質改善構造体Ａ’を敷設する作業を行う。
【００５０】
杭材５を水底Ｓに打ち付けて、底質改善構造体Ａ’の一端を予め底泥Ｓ１内に固定しておく。次に、船４を前方へ進ませながら、底質改善構造体Ａ’を順次水Ｗ内へ投下し、底泥Ｓ１上に底質改善構造体Ａ’を敷設していく。
【００５１】
底質改善構造体Ａ’の自重により、若しくは重量調整手段３の重みにより、底質改善構造体Ａ’は底泥Ｓ１内に沈下する。
【００５２】
この方法により、一定の間隔を保った状態で固形剤２を水底Ｓに敷設でき、かつ固形剤２を底泥Ｓ１内に沈下させることができるため、底質改善を均一に行うことができる。
【００５３】
また、この方法により、比較的大規模な水域を底質改善処理したい場合にも、専用の装置などを用いずに比較的安価な材料で施工できる。
【００５４】
図３は、本発明に係る底質改善方法の別の施工例を示す模式図である。
【００５５】
図３の底質改善構造体Ａ’’は、略格子状に形成された支持部材１と、その支持部材１に一定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤２とを備える。また、この底質改善構造体Ａ’’は、枠体１１を備え、パネル状に形成されている。
【００５６】
例えば、干潮時に水底Ｓが露出する水域では干潮時に、常に水が存在する水域ではダイバーによる作業又は船上からの作業により、底泥Ｓ１上にパネル状の底質改善構造体Ａ’’を並べて設置していく（符号Ｘ１参照）。
【００５７】
各底質改善構造体Ａ’’を連結できる構成にしてもよい。連結できる構成にすることにより、各底質改善構造体Ａ’’を正確な場所に設置できる。連結手段は公知の方法を広く用いることができる。
【００５８】
各底質改善構造体Ａ’’を底泥Ｓ１上に敷設した際、自重により底質改善構造体Ａ’’が底泥Ｓ１内に沈下しない場合は、例えば、圧力付加手段６を用いて、底質改善構造体Ａ’’に敷設後上方から圧力を加えることにより、底質改善構造体Ａ’’を底泥内に沈下させる（符号Ｘ２参照）。
【００５９】
なお、圧力付加手段６は、底質改善構造体Ａ’’に敷設後上方から圧力を加えることができる構成のものであればよい。
【００６０】
この方法により、前記と同様、一定の間隔を保った状態で固形剤２を水底Ｓに敷設でき、かつ固形剤２を底泥Ｓ１内に沈下させることができるため、底質改善を均一に行うことができる。
【００６１】
また、この方法により、前記と同様、比較的大規模な水域を底質改善処理したい場合にも、専用の装置などを用いずに比較的安価な材料で施工できる。
【００６２】
即ち、本発明に係る方法により、簡易、低廉、かつ均一に底質改善を行うことができ、かつ対象水域の底質改善を確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【００６３】
本発明は、港湾、湖沼、干潟、運河、堀など閉鎖性・半閉鎖性水域において、固形化できる薬剤を用いて底質改善を行う場合に、一定の間隔を保った状態で固形剤を底泥内に供給できるため、底質改善を均一に行うことができる点、予め設定した水域に設定した量の固形剤を確実に供給できるため、対象水域の底質改善を確実に行うことができる点などで、有用である。また、比較的低労力・低コストで施工できる点、比較的広範囲の水域を底質改善したい場合にも適用できる点などで有用である。
【００６４】
上述の通り、硝酸カルシウムを用いた底質改善方法は、底質改善効果、特に、脱臭効果の高い方法である。現在、硝酸カルシウムの水溶液をゲル内に閉じ込めた上で、船上から底泥まで圧送するための管などを設置し、そのゲル状物を底泥内に注入する方法が一般的に行われている。
【００６５】
しかし、この方法の場合、硝酸カルシウムは潮解性が強いため、硝酸カルシウム水溶液の調製を、施工現場などで、作業の直前に行う必要がある。また、施工段階で、硝酸カルシウム水溶液の均一状態を保持するため、攪拌作業が必要であり、施工管理が煩雑であった。さらに、ゲルの状態管理が必要であり、その管理が不充分な場合、圧送したゲルが底泥中に混在しないで底泥表面に漏れ出し、水中へ溶解する。そのため、熟練した作業員が行わないと、一定量かつ均一な硝酸カルシウムの注入が難しいという問題があった。即ち、この方法で施工する場合、充分な経験と多大な労力が必要であるという問題があった。
【００６６】
一方、固形化した硝酸カルシウムを用いた場合、固形剤の投下・散布などの労力は大幅に軽減され、また、取り扱いも容易になる。しかし、予め設定した水域に設定した量の固形剤を確実かつ均一に供給することが難しいという問題があった。
【００６７】
それに対し、本発明は、線状、簾状、網状、若しくは略格子状などに形成された支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体を底泥に敷設することにより、底質改善を簡易、確実かつ均一に行うことができる底質改善手段であり、固形化した硝酸カルシウムなどにも適用できる。また、労力・コストを大幅に軽減でき、施工管理も容易で、大規模な施工にも適用できる。従って、本発明は、硝酸カルシウムなどを用いて、簡易、有効かつ大規模に底質改善工事を施工できる点でも有用である。
【図面の簡単な説明】
【００６８】
【図１】本発明に係る底質改善構造体の例を示す外観斜視部分模式図。
【図２】本発明に係る底質改善方法の施工例を示す模式図。
【図３】本発明に係る底質改善方法の別の施工例を示す模式図。
【符号の説明】
【００６９】
１ 支持部材
２ 固形剤
３ 重量調整手段
４ 船
５ 杭材
６ 圧力付加手段
Ａ 底質改善構造体
Ｓ 水底
Ｓ１ 底泥
Ｗ 水
【特許請求の範囲】
【請求項１】
支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体を敷設する工程を含む底質改善方法。
【請求項２】
前記支持部材が、線状、簾状、網状、若しくは略格子状に形成された請求項１記載の底質改善方法。
【請求項３】
前記底質改善構造体に重量調整手段を取着することにより、若しくは前記底質改善構造体に敷設後上方から圧力を加えることにより、前記底質改善構造体を底泥内に沈下させる請求項１又は請求項２記載の底質改善方法。
【請求項４】
前記支持部材が鉄を含む材料で形成された請求項１から請求項３のいずれか一項記載の底質改善方法。
【請求項５】
支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体。
【請求項１】
支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体を敷設する工程を含む底質改善方法。
【請求項２】
前記支持部材が、線状、簾状、網状、若しくは略格子状に形成された請求項１記載の底質改善方法。
【請求項３】
前記底質改善構造体に重量調整手段を取着することにより、若しくは前記底質改善構造体に敷設後上方から圧力を加えることにより、前記底質改善構造体を底泥内に沈下させる請求項１又は請求項２記載の底質改善方法。
【請求項４】
前記支持部材が鉄を含む材料で形成された請求項１から請求項３のいずれか一項記載の底質改善方法。
【請求項５】
支持部材と、該支持部材に所定間隔で取着され、底質改善成分を含有する固形剤とを少なくとも備えた底質改善構造体。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２０１３−８５９８７（Ｐ２０１３−８５９８７Ａ）
【公開日】平成２５年５月１３日（２０１３．５．１３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−２２６１４１（Ｐ２０１１−２２６１４１）
【出願日】平成２３年１０月１３日（２０１１．１０．１３）
【出願人】（０００００１３７３）鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】（５９４１３０６６２）米山化学工業株式会社 (3)
【出願人】（３０１０５０２７８）日本ミクニヤ株式会社 (4)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２５年５月１３日（２０１３．５．１３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年１０月１３日（２０１１．１０．１３）
【出願人】（０００００１３７３）鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】（５９４１３０６６２）米山化学工業株式会社 (3)
【出願人】（３０１０５０２７８）日本ミクニヤ株式会社 (4)
【Ｆターム（参考）】
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