説明

度違い装置を備えた横編機

【課題】構造を簡単にしてコストの低廉化を図りつつ小型にしてキャリッジに対する搭載スペースのコンパクト化を図ることができる度違い装置を備えた横編機を提供する。
【解決手段】カムプレート21に並設され、天山カム23の斜面と平行な第1長溝37及び第2長溝38と、フル高さの第2バット14に係合する第1度決めカム面35を有する第1カム31を第1長溝37に沿って移動させ、かつハーフ高さの第2バット14に係合する第2度決めカム面34を有する第2カム32を第2長溝38に沿って移動させるとともに、第1度決めカム面35と第2度決めカム面34とを均一又は段差状に変更させるように制御する制御カム44と、制御カム44を駆動するステッピングモータ48と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリッジの同一編成コースにおいて大きさの異なる編目を形成することが可能な度違い装置を備えた横編機に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、バットに関して、プレッサーによる押圧作用を受けない状態がフル高さ、プレッサーにより押圧されて略半分沈められた状態がハーフ高さ、プレッサーによる押圧を受けている状態がゼロ高さというものとする。カムやプレッサーに関して、針床に接近するほどカム表面の高さは高いとし、フル高さのカムはハーフ高さ及びフル高さのバットの両方に係合でき、ハーフ高さのカムはフル高さのバットとのみ係合できる。また、キャリッジの進行方向に対し、前方側を先行、後方側を後行とする。また、編針の進退方向に関しては、歯口側を前方とし、その反対方向を後方とする。同様に、カムの各部を表す際に、カムの前方側は、歯口に近い側、後方側とは歯口から遠い側を示す。また、上下方向の高さとは、図面(紙面)に対し直交する向きでの高さを意味するものとする。
【0003】
従来より、横編機でのキャリッジの1回のトラバースで形成される同一編成コース内において大きさの異なる編目を形成する上で、度違い装置が用いられている。この度違い装置は、例えば、下記の特許文献1に示すように、カムプレートに設けられた天山カムの斜面と平行に移動する第1カム及び第2カムを備える。更に、第1カムに、フル高さのバットに係合する大きいサイズの編目形成用の第1度決めカム面を設ける一方、第2カムに、ハーフ高さのバットに係合する小さいサイズの編目形成用の第2度決めカム面を設ける。そして、編針本体と連動するニードルジャックのバットがカム面に作用して後方に引き込まれることで編針のフックで編糸を引き込み、編目を形成する。このとき、第1度決めカム面と第2度決めカム面とに段差を生じさせることで、キャリッジの同一編成コースで小さいサイズの編目と大きいサイズの編目とを形成できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4016031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記従来のものでは、第1カムを駆動するための駆動源と、第2カムを駆動するための駆動源とを必要とする。その場合、度違い装置では、左右各1つずつの第1カムと第2カムとが必要となるため、計4つの駆動源を必要とする。そのため、度違い装置の構造が複雑化する上、コスト高となる。しかも、度違い装置の大型化が否めず、キャリッジに対して大きな搭載スペースを要してしまう。
【0006】
本発明の目的は、構造を簡単にしてコストの低廉化を図りつつ小型にしてキャリッジに対する搭載スペースのコンパクト化を図ることができる度違い装置を備えた横編機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、カムプレートに設けられた天山カムの斜面と平行な移動方向に移動し、キャリッジに設けたプレッサーの押圧作用により針床から突出する高さをフル高さとハーフ高さとの異なる高さに設定して編針の進退操作用としたバットが係合する第1カム及び第2カムを備え、前記第1カムに、フル高さのバットに係合する大きいサイズの編目形成用の第1度決めカム面が設けられている一方、前記第2カムに、ハーフ高さのバットに係合する小さいサイズの編目形成用の第2度決めカム面が設けられ、前記第1度決めカム面と前記第2度決めカム面とに段差を生じさせて、キャリッジの同一編成コースで小さいサイズの編目と大きいサイズの編目とを形成する度違い装置を備えた横編機を前提とする。更に、前記第1カム及び第2カムを前記移動方向に移動させて前記第1度決めカム面と前記第2度決めカム面とを均一又は段差状に変更させるように制御する制御カムと、前記制御カムを回転方向に駆動する駆動手段と、を備える。そして、前記制御カムに、第1摺接部材を介した摺接により前記第1カムを前記移動方向に移動させる第1カム摺接面と第2摺接部材を介した摺接により前記第2カムを前記移動方向に移動させる第2カム摺接面とを設ける。更に、前記制御カムの回転方向における前記第1カム摺接面と前記第2カム摺接面との互いの間隔を、周方向で複数の有段階又は無段階に異ならせることを特徴としている。
【0008】
また、前記制御カムに、前記第1カム摺接面を外周側に有しかつ前記第2カム摺接面を内周側に有して略円環形状に凸設又は凹設された摺接部を設け、当該制御カムの軸回りに回転自在に支持され、その軸回りの回転に応じて当該軸と前記第1カム摺接面及び前記第2カム摺接面との距離を変更させている。そして、前記第1及び第2摺接部材のうちの一方の摺接部材を、前記第1カムに支持する一方、他方の摺接部材を、前記第1カムに長手方向中途部が揺動自在に支持されかつ一端が前記第2カムに支持されたアームの他端に支持していてもよい。
【0009】
更に、前記第1及び第2摺接部材として、ローラを適用していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る度違い装置を備えた横編機によれば、駆動手段により制御カムを回転させると、第1摺接面に対し第1摺接部材を介して摺接する第1カムと第2摺接面に対し第2摺接部材を介して摺接する第2カムとがそれぞれ天山カムの斜面と平行に移動し、フル高さ及びハーフ高さのバットの引き下げ量を変化させる。このとき、制御カムの回転方向において周方向で複数の有段階又は無段階に異ならせた第1カム摺接面と第2カム摺接面との互いの間隔に応じて第1度決めカム面と第2度決めカム面とが均一又は段差状に変更されることになり、フル高さのバットの編針で形成される編目とハーフ高さのバットの編針で形成される編目との互いのサイズを大小異ならせることが可能となる。
これにより、度違い装置では2つの駆動源で済み、度違い装置の構造を簡単なものにすることができる上、コストの低廉化を図ることができる。しかも、度違い装置の小型化も可能となり、キャリッジに対する搭載スペースのコンパクト化を図ることもできる。
【0011】
また、駆動手段により制御カムを軸回りに回転させると、第1及び第2摺接部材が摺接する摺接部の摺接位置と軸との距離が変化し、その両者間の距離に応じて第1カム及び第2カムがそれぞれ天山カムの斜面と平行に移動し、フル高さ及びハーフ高さのバットの引き下げ量を変化させる。このとき、第1カム摺接面と第2カム摺接面との互いの間隔に応じて第1度決めカム面と第2度決めカム面とが均一又は段差状に変更されることになり、フル高さのバットの編針で形成される編目とハーフ高さのバットの編針で形成される編目との互いのサイズを大小異ならせることができる。
更に、軸回りに回転する制御カムに、第1度決めカム面及び第2度決めカム面を内外周側に有する摺接部を凸設又は凹設することによって、フル高さ及びハーフ高さのバットの引き下げ量の変化と、第1度決めカム面及び第2度決めカム面の変更とが簡単な構成で行える。
しかも、アームを介して他方の摺接部材を第1カムに支持することで、第1カムと他方の摺接部材とがアームによって離間させることができる。
【0012】
更に、摺接部材としてローラを適用することで、第1及び第2カム摺接面に対する摺接を円滑かつスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る度違い装置を備えた横編機に用いられる編針の側面図である。
【図2】紙面の左方向へのキャリッジの走行時におけるカムユニットを編針側から見た底面図である。
【図3】図1の度違い装置の一方の度違い度山カムを編針側から見た底面図である。
【図4】図3の度違い度山カムの各構成要件を編針側から(a)〜(d)の順で取り除いた状態の底面図である。
【図5】図3の度違い度山カムのA−A線における断面図である。
【図6】図3の度違い度山カムをキャリッジの走行方向右側から見た右側面図である。
【図7】段差量を生じさせずに第2バットの引き下げ量を変化させた変遷状態を示す一方の度違い度山カムの底面図である。
【図8】段差量S1を生じさせて第2バットの引き下げ量を変化させた変遷状態を示す一方の度違い度山カムの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の度違い装置を備えた横編機の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は編針の側面図を示している。編針1は、編針本体11がその尾部でニードルジャック12と一体化されている。この編針1の進退操作は、ニードルジャック12の所定の間隔をおいて前後に突設した第1バット13及び第2バット14がカムユニット2(図2に表れる)に設けたカムと係合することで行われる。
【0016】
ニードルジャック12の後部に設けたアーム15は、第2バット14を上方(カムユニット2側)へ付勢して針溝外に突出させる。そして、図示しないキャリッジに設けた選針アクチュエータによって、針床の下方に並列するセレクターで選針した後、該セレクターに連動するセレクトジャックを異なる2つの位置に移動させる。これらの位置関係により、セレクトジャックのバットに対してプレッサーが作用してハーフ高さのバットが、プレッサーが作用せずにフル高さのバットがそれぞれ設定できる。なお、編針本体11との連結部の近傍に設けた第1バット13は、プレッサーの押圧作用に係わらず常に針溝外に突出した位置を維持する。
【0017】
図2は紙面の左方向へのキャリッジの走行時におけるカムユニット2を編針1側から見た底面図を示している。この図2において、カムユニット2は、キャリッジに配設され、カムプレート21の中心線Xを中心に左右対称に設けられる。カムユニット2は、カムプレート21の中央にニードルレイジングカム22を配置し、その前方(編針1の進退方向先行側)に天山カム23を、その左右両側にニードルジャック12の第2バット14の経路24を介して度違い装置25の度違い度山カム25a,25bをそれぞれ設けている。度違い度山カム25a,25bは、天山カム23の斜面とほぼ平行な向きに前後動可能に構成されている。符号26はニードルレイジングカム22の内側に設けた目移し受けカムである。天山カム23の前方には、目移しカム28が設けられている。目移しカム28は、目移し出没カム28aと、目移しガイドカム28bとを備えている。
【0018】
図3は図2の度違い装置25の一方の度違い度山カム25aを下方(編針1側)から見た底面図、図4は図3の度違い度山カム25aの各構成要件を下方から(a)〜(d)の順に取り除いた状態の底面図を示す。この図4の(a)ではカムプレート21上の第1カム及び第2カムを示し、(b)では第1カム及び第2カムを取り除いた状態での第1押え板及び第2押え板を示している。更に、(c)では第1押え板及び第2押え板を取り除いた状態でのアームを示し、(d)ではアームを取り除いた状態での制御カム及びステッピングモータを示している。また、図5は図3のA−A線における断面図、図6は図3の度違い度山カム25aをキャリッジの走行方向右側から見た右側面図をそれぞれ示している。
【0019】
度違い度山カム25a,25bは同じ構成なので一方の度違い度山カム25aについてのみ説明する。度違い度山カム25aは、第1カム31、第2カム32及びアーム33を備えている。第1カム31には、フル高さの第2バット14に係合してハーフ高さの第2バット14の編針1よりも大きな編目を形成する第1度決めカム面35が形成されている。一方、第2カム32には、ハーフ高さの第2バット14に係合する第2度決めカム面34が形成されている。
【0020】
カムプレート21には、天山カム23の斜面と平行な第1長溝37及び第2長溝38が穿設されている。この第1長溝37及び第2長溝38には支持ブロック37a,38a(図5に表れる)が摺動自在に配されている。そして、第1長溝37の支持ブロック37aは、第1カム31と、この第1カム31をカムプレート21の裏面側から摺動自在に支持する第1押え板41との間に介在されてボルト40により三者一体に固着され、第1カム31を第1長溝37に沿って移動可能にしている。一方、第2長溝38の支持ブロック38aは、第2カム32と、この第2カム32をカムプレート21の裏面側から摺動自在に支持する第2押え板42との間に介在されてボルト40により三者一体に固着され、第2カム32を第2長溝38に沿って移動可能にしている。
【0021】
アーム33は、第1押え板41の前部右側端位置より上方へ突出する軸43に長手方向略中間部が回転自在に支持されている。このアーム33の一端(図3及び図4では右端)にはローラ49が支持され、このローラ49が第2押え板42の前端部に設けた凹部42a内に左右動可能に収容されている。
【0022】
また、度違い度山カム25aは、アーム33の裏面側(上方)に制御カム44を備えている。この制御カム44は、円形状のプレート45の周縁より下方(アーム33側)へ凸設された略円環形状の摺接部46と、プレート45より上方へ突出する軸としてのボス部47とを備えている。摺接部46は、その周方向の基準位置(図3において後述する内側及び外側ローラ51,52により挟持された位置)を境にして周方向で半径方向の厚みを互いに異ならせた2種類の第1及び第2厚み部46a,46bを有し、第2厚み部46bの厚みが第1厚み部46aの厚みよりも厚みが大きくなっている。ボス部47の中心には、例えば駆動手段としての正逆回転可能なステッピングモータ48の出力軸48aが一体回転可能に嵌挿されている。なお、駆動手段はステッピングモータ48に限定されるものではなく、サーボモータなどの他のモータであってもよい。
【0023】
摺接部46の第1及び第2厚み部46a,46bは、内外方向から第1及び第2摺接部材としての対の内側及び外側ローラ51,52により挟持されている。第1及び第2厚み部46a,46bの外周側に摺接する外側ローラ52は、第1押え板41の前端部に回動自在に支持されている。一方、第1及び第2厚み部46a,46bの内周側に摺接する内側ローラ51は、アーム33の他端(図3及び図4では左端)に回転自在に支持されている。また、プレート45には、摺接部46の基準位置をセンサ50により検出する検出片45aが設けられている。
【0024】
そして、第2厚み部46bの厚みは、第1厚み部46aに対して摺接部46の内周側を縮径させることによって大きく形成されている。このため、第2厚み部46bでは、外側ローラ52に対する内側ローラ51の離間量が、第2厚み部46bが第1厚み部46aよりも厚いために増大している。
【0025】
第1押え板41の後部右側端位置にはフック53が固着され、このフック53とアーム33の一端との間には、対の内側及び外側ローラ51,52を第1及び第2厚み部46a,46bの内外周側に押圧する付勢スプリング54が設けられている。このとき、付勢スプリング54の付勢力によって、アーム33を介して内側ローラ51が第1及び第2厚み部46a,46bの内周側に押圧されるとともに、その反力を受けた第1押え板41の後方への引き下げ力によって外側ローラ52が第1及び第2厚み部46a,46bの外周側に押圧される。また、摺接部46の外周側は、第1カム31を外側ローラ52を介した摺接により第1長溝37に沿って移動させる第1カム摺接面462として構成され、摺接部46の内周側は、第2カム32を内側ローラ51及びアーム33を介した摺接により第2長溝38に沿って移動させる第2カム摺接面461として構成されている。これにより、2種類の第1及び第2厚み部46a,46bの厚みに応じて対の内側及び外側ローラ51,52が密着状態で追従し、内側及び外側ローラ51,52による挟持誤差をなくして第1度決めカム面35と第2度決めカム面34とを均一状態又は段差状態に確実に保持することができる。しかも、第1及び第2厚み部46a,46bの第1カム摺接面462及び第2カム摺接面461に内側及び外側ローラ51,52を摺接させることで、第1及び第2カム摺接面462,461に対する摺接を円滑かつスムーズに行うことができる。
【0026】
次に、度違い度山カム25aによる実際の動作を説明する。
図7は段差量を生じさせずに第2バット14の引き下げ量を変化させた変遷状態を示す一方の度違い度山カム25aの底面図を示している。
【0027】
図7の(a)に示す基準位置からステッピングモータ48を正回転(図7の(a)では紙面右回転)させると、図7の(b)に示すように、第1厚み部46aを内側及び外側ローラ51,52により挟持した状態で制御カム44が同様に正回転(図7の(b)では紙面右回転)する。これに伴い、内側及び外側ローラ51,52間の第1厚み部46aとボス部47の中心との距離が漸減し、第1カム31が後退移動するとともに、第2カム32がアーム33を介して後退移動して、第2バット14の引き下げ量が2mmに変更される。このとき、第1厚み部46aの半径方向の厚みは、内側及び外側ローラ51,52により挟まれた際に第1カム31の第1度決めカム面35と第2カム32の第2度決めカム面34とに段差が生じずに均一となるように設定されている。
【0028】
次いで、図7の(b)に示す位置からステッピングモータ48をさらに正回転させて、図7の(c)及び(d)に示すように、第1厚み部46aを内側及び外側ローラ51,52により挟持した状態で制御カム44を同様に正回転させる。すると、内側及び外側ローラ51,52間の第1厚み部46aとボス部47の中心との距離がさらに漸減し、第1カム31及び第2カム32が後退移動して、図7の(c)では第2バット14の引き下げ量が4mmに変更され、図7の(d)では内側及び外側ローラ51,52が第1厚み部46aの終端位置に位置付けられて第2バット14の引き下げ量が6mmに変更される。
【0029】
図8は段差量S1を生じさせて第2バット14の引き下げ量を変化させた変遷状態を示す一方の度違い度山カム25aの底面図を示している。
【0030】
図8の(a)に示すように、基準位置からステッピングモータ48を逆回転(図8の(a)では紙面左回転)させて第2厚み部46bの第1カム摺接面462と第2カム摺接面461とを内側及び外側ローラ51,52により内外から挟持しておく。このとき、内周側の縮径により第1厚み部46aよりも厚くなる第2厚み部46bによって、内側ローラ51が後方へ引き下げられる。このため、アーム33及び第2押え板42を介して第2カム32が第1カム31よりも前方へ移動し、第1カム31の第1度決めカム面35と第2カム32の第2度決めカム面34とに段差量S1が生じている。これにより、フル高さの第2バット14の編針1で形成される編目とハーフ高さの第2バット14の編針1で形成される編目との互いのサイズを大小異ならせることが可能となる。
【0031】
次いで、図8の(b)に示すように、ステッピングモータ48をさらに逆回転させて制御カム44を同様に逆回転させる。これに伴い、内側及び外側ローラ51,52間の第2厚み部46bとボス部47の中心との距離が漸減し、第1カム31が後退移動するとともに、第2カム32がアーム33を介して後退移動して、第1度決めカム面35と第2度決めカム面34とに段差量S1を生じさせたままで第2バット14の引き下げ量が2mmに変更される。
【0032】
その後、図8の(b)に示す位置からステッピングモータ48をさらに逆回転させて、図8の(c)及び(d)に示すように、第2厚み部46bを内側及び外側ローラ51,52により挟持した状態で制御カム44を反所定回りに回転させる。すると、内側及び外側ローラ51,52間の第2厚み部46bとボス部47の中心との距離がさらに漸減し、度決めカム面35,34同士の間に段差量S1を生じさせたままで第1カム31及び第2カム32が後退移動する。このとき、図8の(c)では第2バット14の引き下げ量が4mmに変更され、図8の(d)では内側及び外側ローラ51,52が第2厚み部46bの終端位置に位置付けられて第2バット14の引き下げ量が6mmに変更される。
【0033】
このように、制御カム44の回転に伴って、フル高さ及びハーフ高さの第2バット14の引き下げ量を変化させるとともに、第1度決めカム面35と第2度決めカム面34とに段差量S1を生じさせている。これにより、度違い装置25では、左右の度違い度山カム25a,25bがそれぞれ2つのステッピングモータ48で済み、度違い装置25の構造を簡単なものにすることができる上、コストの低廉化を図ることができる。しかも、度違い装置25の小型化も可能となり、キャリッジに対する搭載スペースのコンパクト化を図ることもできる。
【0034】
更に、プレート45のボス部47回りに回転する制御カム44に、第1及び第2カム摺接面462,461を内外周側に有する摺接部46を設けることで、フル高さ及びハーフ高さの第2バット14の引き下げ量の変化と、第1度決めカム面35と第2度決めカム面34との段差量の変更とが簡単な構成で行える。しかも、アーム33を介して内側ローラ51を第2押え板42(第2カム32)に支持することで、第2カム32と内側ローラ51とがアーム33によって離間させることができる。
【0035】
なお、本発明の実施の形態を前記に示したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において実施できる。例えば、本実施の形態では、制御カム44のプレート45に略円環形状の摺接部46を下方へ凸設したが、プレートに略円環形状の摺接部を上方へ凹設し、この摺接部の外周側に第1カム摺接面が、内周側に第2カム摺接面がそれぞれ設けられていてもよい。この場合、プレートに設けられた溝の摺接部内に内側及び外側ローラがそれぞれ収容される。
【0036】
また、前記実施の形態では、内側及び外側ローラ51,52を付勢スプリング54の付勢力により第1及び第2厚み部46a,46bの第1及び第2カム摺接面462,461に摺接させたが、第1及び第2厚み部の第1カム摺接面及び第2カム摺接面に沿って内側及び外側ローラをそれぞれ摺接させるように、凸設した摺接部の内周側及び外周側に沿って凹設される壁によって内側及び外側ローラを案内する内周側溝及び外周側溝が構成されていてもよい。また、プレートの上下両面に略円環形状の摺接部をそれぞれ凹設し、その上面に凹設した摺接部の溝の内周側及び外周側の一方に第1カム摺接面が、下面に凹設した摺接部の溝の内周側及び外周側の他方に第2カム摺接面がそれぞれ設けられていてもよい。このとき、制御カムの回転に伴いそれぞれ内側及び外側ローラが内周側溝側の第2カム摺接面及び外周側溝側の第1カム摺接面で転動される。これらの場合には、内側及び外側ローラを第1及び第2厚み部の第1カム摺接面と第2カム摺接面とに押圧する付勢スプリングが不要となり、度違い度山カムの構造の簡素化及びコストの低廉化をより図ることが可能となる。
【0037】
また、前記実施の形態では、互いに厚みの異なる2種類の第1及び第2厚み部46a,46bによって段差量S1を生じさせたり生じさせなかったりしたが、2種類の厚み部によって互いに異なる段差量を生じさせるようにしてもよい。また、周方向で半径方向の厚みを3段階以上に異ならせた3種類以上の厚み部や、周方向で半径方向の厚みを無段階に異ならせた厚み部を摺接部に有していてもよい。
【0038】
更に、前記実施の形態では、摺接部46の第1及び第2厚み部46a,46bの第1カム摺接面462及び第2カム摺接面461に内側及び外側ローラ51,52を摺接させたが、内側及び外側ローラに代えて、軸回りに回転しない円柱体、又は球体などの摺接部材を第1及び第2カム摺接面に摺接させていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
14 第2バット
21 カムプレート
23 天山カム
25 度違い装置
25a,25b 度違い度山カム
31 第1カム
32 第2カム
33 アーム
34 第2度決めカム面
35 第1度決めカム面
44 制御カム
46 摺接部
461 第2カム摺接面
462 第1カム摺接面
47 軸
48 ステッピングモータ
51 内側ローラ
52 外側ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムプレートに設けられた天山カムの斜面と平行な移動方向に移動し、キャリッジに設けたプレッサーの押圧作用により針床から突出する高さをフル高さとハーフ高さとの異なる高さに設定して編針の進退操作用としたバットが係合する第1カム及び第2カムを備え、前記第1カムに、フル高さのバットに係合する大きいサイズの編目形成用の第1度決めカム面が設けられている一方、前記第2カムに、ハーフ高さのバットに係合する小さいサイズの編目形成用の第2度決めカム面が設けられ、前記第1度決めカム面と前記第2度決めカム面とに段差を生じさせて、キャリッジの同一編成コースで小さいサイズの編目と大きいサイズの編目とを形成する度違い装置を備えた横編機において、
前記第1カム及び第2カムを前記移動方向に移動させて前記第1度決めカム面と前記第2度決めカム面とを均一又は段差状に変更させるように制御する制御カムと、
前記制御カムを回転方向に駆動する駆動手段と、
を備え、
前記制御カムが、第1摺接部材を介した摺接により前記第1カムを前記移動方向に移動させる第1カム摺接面と第2摺接部材を介した摺接により前記第2カムを前記移動方向に移動させる第2カム摺接面とを有しているとともに、
前記制御カムの回転方向における前記第1カム摺接面と前記第2カム摺接面との互いの間隔を、周方向で複数の有段階又は無段階に異ならせていることを特徴とする度違い装置を備えた横編機。
【請求項2】
前記制御カムは、前記第1カム摺接面を外周側に有しかつ前記第2カム摺接面を内周側に有して略円環形状に凸設又は凹設された摺接部を備え、当該制御カムの軸回りに回転自在に支持され、その軸回りの回転に応じて当該軸と前記第1カム摺接面及び前記第2カム摺接面との距離が変更されており、
前記第1及び第2摺接部材のうちの一方の摺接部材が、前記第1カムに支持されている一方、他方の摺接部材が、前記第1カムに長手方向中途部が揺動自在に支持されかつ一端が前記第2カムに支持されたアームの他端に支持されている請求項1に記載の度違い装置を備えた横編機。
【請求項3】
前記第1及び第2摺接部材としては、ローラが適用されている請求項1又は請求項2に記載の度違い装置を備えた横編機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−108184(P2013−108184A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251540(P2011−251540)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】