説明

座位保持装置

【課題】姿勢を容易に保持することができる座位保持装置を提供する。
【解決手段】人が座る座面11と人の上体背面を支持する上体支持面21とを有する座席1において、上体支持面21に、腸骨において座位状態で後方に突き出す一対の腸骨凸部とそれぞれ突き合わせられる一対の腸骨支持凸部80を設ける。また、座面11に、座骨において下方に突き出している一対の座骨凸形状部を収容する一対の座骨収容凹部40を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座位保持装置に関し、特に、姿勢の保持を容易に行うことができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
座位保持装置としては、所謂、椅子が広く知られており、椅子は、人が座る座部と人の上体背面を支持する上体支持部とを備えている。また、椅子に被せるものや、椅子の上に設置されるものも知られている。これら座位保持装置は、人が座りやすいようにするために、種々の形状が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、シートバック(上体支持部)をアッパーバックとロアーバックの上下2つに分割し、ロアーバックを腰椎支持位置に対応する高さで回動可能としている。そして、着座者のヒップポイントに応じて、ロアーバックの角度を調整して、ロアーバックの下部と尻部との間の隙間をなくすようにしている(段落0006、0018など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−315089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、ロアーバックの下部と尻部との間の隙間をなくすようにして尻部付近を支持する場合、腰椎部分に荷重が集中する場合と比較して、腰椎への負担は軽減する。しかしながら、このようにしても、尻部が前方にずれ、骨盤が後傾する所謂サブマリン状態となった場合には、結局、尻部とシートとの間に隙間が生じてしまう。また、特許文献1のものでは、ロアーバックの下部と尻部との間の隙間をなくして疲れにくくすることで、間接的に姿勢を保持することができるものの、十分に姿勢の保持が容易とはいえない。
【0006】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、姿勢を容易に保持することができる座位保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するための請求項1記載の発明によれば、一対の腸骨凸部と突き合わせられる一対の腸骨支持凸部が設けられていることから、座位状態では、その腸骨支持凸部から腸骨凸部に力が加えられることになる。腸骨凸部は、骨盤の中では上方にあることから、腸骨凸部が支えられた状態では、骨盤に対して前傾方向に力が加わることになる。そのため、骨盤が後傾するサブマリン状態となりにくい。
【0008】
また、骨盤が後傾していない状態では、上体が座骨を押す力が大きくなるが、本発明では、座骨凸形状部を収容する座骨収容凹部が設けられていることから、上体が座骨を押す力が大きい状態では、座骨がその座骨収容凹部に収容された状態を保持しやすい。これらのことから、サブマリン状態となりにくく、且つ、その姿勢を容易に保持することができる。また、姿勢の保持が容易になることから、疲労の回復も早くなる。
【0009】
さらに、床に足をついて踏ん張った場合も、足裏から体幹に伝わる反作用力は、腸骨凸部を介して腸骨支持凸部によって支えられる。腸骨支持凸部は、それが設けられている部分の周囲よりも突き出していることから、上記反作用力は主としてこの腸骨支持凸部によって支えられ、腸骨支持凸部以外の部分によって支えられる割合が小さくなる。すなわち、反作用力のうち、背骨や腰椎を介して上体支持面によって支えられる割合が小さくなる。よって、背骨や腰椎の負担が軽減する。また、腸骨凸部は、大きな力が外部から加えられても、あまり痛く感じない部位である。これらのことから、背骨や腰椎部分を中心として上体を支える通常の椅子に比較して、床面方向に思い切り踏み込んでも、人体の負担は小さくなる。よって、思い切って踏み込むこともできるようになる。そのため、この座位保持装置は、ブレーキペダルやアクセルペダルの操作が必要になる車両の運転席に用いると特に好適である。
【0010】
なお、骨盤の大きさは人によって異なる。そのため、骨盤の一部である座骨や腸骨の座位状態における位置は人によって異なる。よって、座る個人を特定して腸骨支持凸部や座骨収容凹部の位置を決定することが最も好ましいといえる。しかしながら、骨盤の大きさは、成人であれば人による違いはそれほど大きくない。そのため、腸骨支持凸部や座骨収容凹部の位置は、座る個人を特定しなくても、その位置を定めることができる。また、座る個人を特定しない場合でも、成人男性、成人女性のように、座る人の属性を限定して、限定した属性に属する人の平均的な骨盤を考慮して、腸骨支持凸部や座骨収容凹部の位置を決定してもよい。また、その属性に属する人の骨盤の大きさの変動範囲を考慮して、腸骨支持凸部や座骨収容凹部の大きさを決定することがより好ましい。
【0011】
また、請求項2記載の発明によれば、呼気の際に降下させられる肋骨に対して、その肋骨の下方から突き合わせられ、その肋骨の傾斜に沿って傾斜している肋骨支持傾斜凸条が上体支持面に設けられている。この肋骨支持傾斜凸条によって肋骨が支えられることから、上体が左右方向に揺れ動くことが抑制される。これによっても、姿勢の保持が容易になる。加えて、呼吸が楽になるという効果も得られる。なお、呼吸が楽になる理由は後述する。
【0012】
上記肋骨支持傾斜凸条は、請求項3記載のように、第9肋骨と第10肋骨との間に当接するように設けられていることが好ましい。詳しい理由は後述するが、このようすれば、呼吸が楽になる効果が特に大きくなる。
【0013】
また、請求項4のように、左右の太腿の大腿二頭筋と半膜様筋との間の凹みに嵌るようにそれぞれ設けられた一対の太腿位置基準凸条を、座面にさらに設けることが好ましい。
【0014】
この太腿位置基準凸条が設けられていると、座位状態において太腿の位置が安定することになる。上体を左右に動かした場合にも、太腿の位置が安定しているので、太腿を基準として上体を元の位置に戻しやすい。よって、姿勢の保持がさらに容易になる。なお、車両の運転時においては、上体の位置を安定にすることが重要であることから、本発明は、特に、車両の運転席に用いると好適である。
【0015】
また、通常の椅子であれば、下腿を動かす際に、太腿まで連動して動いてしまうが、このようにすれば、太腿の位置が安定するので、下腿を、太腿の端である膝を支点として動かすことができる。そのため、下腿を動かす際、太腿がそれに連動して動いてしまうことが抑制されるので、下腿を動かしやすくなる。よって、車両の運転席に用いた場合には、アクセルペダルやブレーキペダルの操作が容易になる。この点でも、本発明は、車両の運転席に用いると特に好適である。
【0016】
また、請求項5のように、上体支持面に肩甲骨補助凸条がさらに設けられていることが好ましい。この肩甲骨補助凸条は、上下方向位置が第5肋骨乃至第7肋骨に対向する範囲にある略水平の凸条であり、背骨側端部が、背骨と肩甲骨の間にある凸条である。
【0017】
この肩甲骨補助凸条は略水平に設けられているので、左右方向への上体の傾斜運動は、この肩甲骨補助凸条によって邪魔される。よって、左右方向への上体の傾斜運動が抑制されるので、姿勢の保持がより容易になる。一方、背骨周りの上体の回転運動は肩甲骨補助凸条によって邪魔されない。よって、左右を見る際には、上体の左右方向への揺れを抑制しつつ、上体を回転させて顔を右や左へ向ける動きが促されることになる。その結果、運転中において好ましくない頭部の左右方向への揺れを抑制できることから、本発明は、運転席に用いると好適である。
【0018】
また、この肩甲骨補助凸条があると、人が座ったとき、肩甲骨補助凸条において背骨と肩甲骨の背骨側端との間に位置している背骨側端部が回旋の支点として利用されて肩甲骨の回旋が補助される。そのため、肩甲骨の回旋を伴う肩の運動が楽に行えるようになる。よって、運転席に用いた場合には、ハンドル操作を楽に行えるようになる。
【0019】
また、肩甲骨は下部僧帽筋によって下方に引っ張られているが、肩甲骨は、この肩甲骨補助凸条によって支えられるので、下がることが抑制される。このことによっても、肩を楽に回すことができるようになる。
【0020】
また、肩甲骨補助凸条に加えて、請求項6のように、第10乃至第12肋骨に対向する範囲に略水平の下部肋骨水平凸条をさらに備えていることが好ましい。この下部肋骨水平凸条によっても、左右方向への上体の傾斜運動は邪魔される。よって、左右方向への上体の傾斜運動が抑制されるので、姿勢の保持がより容易になる。
【0021】
また、請求項7記載のように、腸骨支持凸部が設けられている部分と肋骨支持傾斜凸条が設けられている部分とを別体として、さらに腸骨支持凸部が設けられている部分は座面に対して離隔不能に連結し、肋骨支持傾斜凸条が設けられている部分は座面に対して上下方向に可動するようにすることが好ましい。
【0022】
座面から肋骨までの高さは人によって比較的大きく変動する。そのため、このように、上体支持面の肋骨支持傾斜凸条が設けられている部分が上下方向に可動するようになっていると、肋骨支持傾斜凸条の高さを、人によって変動する肋骨の高さに合わせることができる。一方、腸骨は、座面からの高さが人によってそれほど違はない。そのため、腸骨支持凸部が設けられている部分までが肋骨支持傾斜凸条が設けられている部分とともに上下方向に移動すると、腸骨支持凸部が腸骨凸部に突き合せられなくなる恐れがある。しかし、腸骨支持凸部が設けられている部分は、座面に対して離隔不能に連結しているので、肋骨支持傾斜凸条が上下方向に移動しても、腸骨支持凸部が設けられている部分は上下方向に移動しない。よって、肋骨支持傾斜凸条が上下方向に移動しても、腸骨支持凸部を腸骨凸部に突き合せた状態を維持することができる。
【0023】
また、腸骨支持凸部に加えて上体支持面に肩甲骨補助凸条が設けられている場合(請求項5)においても、請求項8のように、肩甲骨補助凸条が設けられている上側部分と、腸骨支持凸条が設けられている下側部分とを別体として、下側部分は座面に対して離隔不能に連結さえ、上側部分は座面に対して上下方向に可動するようにすることが好ましい。このようにすると、腸骨支持凸部を腸骨凸部に付き合わせた状態を維持しつつ、肩甲骨補助凸条の位置を実際の使用者に対応させて変更することができる。
【0024】
なお、この請求項8における上体支持面の上側部分の可動範囲は、第5肋骨乃至第7肋骨の座面からの高さの人による変動範囲を含むようにする。
【0025】
また、上体支持面が上側部分と下側部分とに分けられ、上側部分に肋骨支持傾斜凸条が設けられている場合(請求項7)には、請求項9のように、上側部分に、肩甲骨補助凸条がさらに設けられていることが好ましい。また、請求項10のように、その上側部分に、さらに、下部肋骨水平凸部が設けられていることが好ましい。このようにすれば、肩甲骨補助凸条や下部肋骨水平凸条も、人によって変動する肩甲骨や下部肋骨の高さに合わせることができる。
【0026】
請求項11における傾斜凸条は実質的に肋骨支持傾斜凸条と同じであり、請求項11によれば、請求項7と同じ効果を得ることができる。
【0027】
また、請求項12、13における凸条は実質的に肩甲骨補助凸条と同じであり、請求項12、13によれば、それぞれ、請求項8、9と同じ効果を得ることができる。また、請求項14において傾斜凸条の下側に設けられている凸条は実質的に下部肋骨水平凸条と同じであり、請求項14によれば、請求項10と同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の座位保持装置の実施形態となる座席1の斜視図である。
【図2】成人男性の骨盤50の正面視の概略図である。
【図3】一対の座骨収容凹部40を通る垂直断面(図1のIII−III断面)で座部10を切断した断面図である。
【図4】骨盤50の側面図である。
【図5】成人男性の骨盤50の上面視の概略図である。
【図6】左側の腸骨支持凸部80、座骨収容凹部40、太腿位置基準凸条70のそれぞれの中心を通る断面で座席1を切断した断面図である。
【図7】一対の腸骨支持凸部80を通る断面(図1のVI−VI断面)で切断した断面図である。
【図8】肋骨、肩甲骨、背骨の概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の座位保持装置の実施形態となる座席1の斜視図である。この座席1は自動車の運転席に用いられるものである。
【0030】
座席1は、座部10、上体支持部20、ヘッドレスト30を備えている。これら座部10、上体支持部20、ヘッドレスト30は、表面の材質は同一であり、布、革等の柔らかい材質で覆われている。座部10は人が座る部分であり、上体支持部20は、上体背面、たとえば、腰の背面や背中などを支える部分であり、ヘッドレスト30は後頭部を支える部分である。
【0031】
座部10には、その上面、すなわち、座面11に、一対の座骨収容凹部40と、一対の太腿位置基準凸条70とが形成されている。座骨収容凹部40は、人が着座した際に、座骨60において下方に突き出している一対の座骨凸形状部61(図2参照)を、肉部を介して皮膚上から収容する部分であり、座面11における座骨収容凹部40の位置は、骨盤や背中が上体支持部20によって支持されるように座面11に着座したときに座骨凸形状部61に対向する位置とされる。なお、図2は、成人男性の骨盤50の正面視の概略図である。座面11における座骨収容凹部40の位置は、一般的な成人の骨盤50の大きさに基づいて定められている。
【0032】
図3は、この一対の座骨収容凹部40を通る垂直断面(図1のIII−III断面)で座部10を切断した断面図である。この図3に示すように、座骨収容凹部40は皿形状である。すなわち、座骨収容凹部40は、中央が最も深くなっており、その中央に向けて浅皿と同程度の傾斜度合いで傾斜している。また、同図に示すように、座骨収容凹部40は、座部10の幅方向中心面C1を基準として対称に設けられており、一対の座骨収容凹部40の間隔および幅方向の長さは、一般的な成人の一対の座骨凸形状部61の間隔および大きさに基づいて定められている。また、座骨収容凹部40の傾斜度合いや深さ、図示していない縦方向(幅方向に垂直な方向)の長さも、一般的な成人の一対の座骨凸形状部61の大きさに基づいて定められている。なお、ここでの一般的な成人の一対の座骨凸形状部61の間隔および大きさは、成人男性および成人女性の両者を考慮したものであってもよいし、また、成人男性または成人女性のどちらか一方のみを考慮したものであってもよい。考慮する成人を男性および女性とするか、男性のみとするか、女性のみとするかは、用途によって決めればよい。なお、座面11における座骨収容凹部40の位置を定める場合に考慮する一般的な成人も、上記意味と同じである。また、用途によっては、子供の一対の座骨凸形状部の間隔および大きさに基づいて座骨収容凹部40の位置および大きさを決めてもよいし、また、個人の一対の座骨凸形状部の間隔および大きさに基づいて座骨収容凹部40の位置および大きさを決めてもよい。
【0033】
図1に戻り、座面11の構成についてさらに説明する。座面11には、一対の太腿位置基準凸条70が形成されている。また、座面11は、幅方向の両側もやや盛り上がっている。
【0034】
太腿の裏側には大腿二頭筋および半膜様筋があり、これら大腿二頭筋と半膜様筋との間には凹み、すなわち、大腿二頭筋や半膜様筋の直上部から押す場合よりも、外部から押した場合に凹みやすくなっている部分が存在する。この凹みは、太腿の裏側において略幅方向の中央に存在し、また、大腿二頭筋および半膜様筋がいずれも太腿の長手方向に沿って延びていることから、それらの間の凹みも太腿の長手方向に沿っている。
【0035】
座面11に形成されている一対の太腿位置基準凸条70は、大腿二頭筋と半膜様筋との間の凹みに嵌るように設けられたものである。そのため、一対の太腿位置基準凸条70の具体的な向きは、前述の一対の座骨収容凹部40が設けられた付近から、座部10の膝側端部12に向かって互いに略平行、あるいは、膝側端部12に向かうほどやや互いに離隔する向きである。また、この大腿位置基準凸条70の高さ、長手方向長さ、幅方向長さ、2つの太腿位置基準凸条70の間の間隔は、人が座面11に座ったときに、大腿二頭筋と半膜様筋との間の凹みに嵌りやすいように設定されている。また、この大腿位置基準凸条70は、太腿が載置されたときにも形状を維持することができる硬さの材料が、座席1の表面を構成する材質の下側に配置されることにより形成される。
【0036】
次に、上体支持部20の構成について説明する。図1に示すように、上体支持部20の上体支持面21には、下部に一対の腸骨支持凸部80が形成されている。一対の腸骨支持凸部80は、座面11からの高さ、大きさ、突き出し度合いが、いずれも互いに同一である。
【0037】
図4は、骨盤50の側面図である。この図4に示すように、骨盤50の上部を構成する腸骨90には、後方に突き出している凸部(以下、腸骨凸部)91が存在する。また、成人男性の骨盤50の上面視の概略図である図5に示すように、腸骨凸部91は、背骨92を挟んで両側に存在する。この腸骨凸部91は、上下方向長さは短いが、左右方向はそれに比較すると長くなっている凸形状である。上体支持部20に設けられた腸骨支持凸部80は、皮膚上から肉部を介して上記腸骨凸部91に突き合わせられるためのものであり、この腸骨支持凸部80の位置は、一般的な成人の骨盤の大きさに基づいて定められている。なお、一般的な成人の意味は、前述のものと同じである。
【0038】
図6は、左側の腸骨支持凸部80、座骨収容凹部40、太腿位置基準凸条70のそれぞれの中心を通る断面で座席1を切断した断面図であり、また、図7は、一対の腸骨支持凸部80を通る断面(図1のVI−VI断面)で切断した断面図である。これら図6、7から分かるように、腸骨支持凸部80は、頂点を中心として上下左右に傾斜する凸形状ではなく、腸骨凸部91の凸形状に対応して、最も突き出した部分が直線に近い形状となっている。また、図7から分かるように、腸骨支持凸部80は、上体支持面21の幅方向中心に向かって直線的に傾斜している。換言すれば、腸骨支持凸部80は、上体支持面21の幅方向中心に向かうほど、突き出しの程度が少なくなっている。これも、腸骨凸部91の凸形状に対応させるためである。
【0039】
腸骨支持凸部80の座面11からの位置、一対の腸骨支持凸部80の間の間隔は、一般的な成人の一対の腸骨凸部91の間隔および大きさに基づいて定められている。また、腸骨支持凸部80の大きさは、腸骨凸部91を支持することができ、且つ、他の部位をできるだけこの腸骨支持凸部80によって支持しない大きさとなっている。なお、ここでの一般的な成人の考え方は、座骨収容凹部40の場合と同様である。
【0040】
また、腸骨支持凸部80は、腸骨凸部91を支持したときにも形状を維持することができる硬さの材料が、座席1の表面を構成する材質の下側に配置されることにより形成される。なお、ブレーキペダル、アクセルペダルを思い切り踏み込んだ際には、踏み込む力が大きいことから反力も大きい。そのため、腸骨支持凸部80には、大きな力が加わる可能性がある。よって、腸骨支持凸部80は、この反力が加えられても形状を維持することができる硬さとすることが好ましい。
【0041】
上体支持部20の上体支持面21には、さらに、一対の肋骨支持傾斜凸条100、一対の肩甲骨補助凸条110、一対の下部肋骨水平凸条120が形成されている。
【0042】
肋骨支持傾斜凸条100は、呼気の際に降下する肋骨に対して、その肋骨の下方から突き合わせられる。ここで、呼気の際に降下する肋骨とは、主として、下後鋸筋が結合している第9〜第12肋骨を意味する。よって、肋骨支持傾斜凸条100は、第9肋骨〜第12肋骨のいずれかに対して下方から突き合わせられる位置に配置される。たとえば、第9肋骨に対して下方から付き合わせる場合、肋骨支持傾斜凸条100は、第9肋骨と第10肋骨との間に当接する位置に配置することになる。
【0043】
なお、第9〜第12肋骨は、それよりも上の肋骨と生体組織により繋がっていることから、第9肋骨よりも上の肋骨も、呼気の際に降下する。従って、例えば、第8肋骨と第9肋骨との間に当接する位置に肋骨支持傾斜凸条100を配置するようにしてもよい。
【0044】
本実施形態の一対の肋骨支持傾斜凸条100は、図1に示されるように、互いに離間しており、離間距離は、この肋骨支持傾斜凸条100が背骨を押えないようにするために、背骨の太さよりも広くなっている。また、肋骨支持傾斜凸条100は、他方の肋骨支持傾斜凸条100に近い側の端部(背骨側端部)から他方の端部(外側端部)に向かって下方に傾斜している。この傾斜の角度は、この肋骨支持傾斜凸条100が突き合わせられる肋骨の傾斜角度と略一致する角度になっている。
【0045】
また、肋骨支持傾斜凸条100の長さ、太さ、硬さは、それぞれ以下のようになっている。まず、長さは、それが突き合わせられる肋骨(たとえば第9肋骨)の標準的な長さに設定されることが好ましいが、それよりも、長くても、また短くても、この肋骨支持傾斜凸条100による効果は得られる。太さは、それが突き合わせられる肋骨とその下の肋骨の間隔よりも細く、且つ、それが突き合わせられる肋骨を支えることができる太さ、たとえば、その肋骨と同程度の太さとなっている。硬さは、人がもたれた際に痛くない程度であって、且つ、肋骨を好適に支えることができる硬さに設定されている。
【0046】
なお、座位状態において座面11から肋骨までの高さは、人によって比較的大きく異なる。そのため、肋骨支持傾斜凸条100は、標準的な体型に基づいて座面11からの高さを設定する。このようにしても、座る人によっては、肋骨支持傾斜凸条100が第9肋骨に対して下方から突き合わせる位置にならないこともある。しかし、前述のように、必ずしも第9肋骨に突き合わせる必要はなく、第10肋骨や第11肋骨に突き合わせてもよい。また、第8肋骨に突き合わせてもよい。また、これらの肋骨の傾斜角度には、大きな相違はない。そのため、座面11から肋骨支持傾斜凸条100までの高さが固定されている本実施形態において、様々な座高の人が座っても、呼気の際に降下する肋骨に対して下方から突き合わせることができる。
【0047】
一対の肩甲骨補助凸条110は、上下方向位置が第5肋骨乃至第7肋骨に対向する範囲である。従って、図1に示すように、肋骨支持傾斜凸条100の上方に配置されている。この一対の肩甲骨補助凸条110は、左右方向に並んでおり、どちらも略水平となっている。なお、ここでの略水平とは、背骨が鉛直方向となっているときにおける第5肋骨乃至第7肋骨の傾斜程度は含む意味である。
【0048】
また、この肩甲骨補助凸条110の背骨側端部は、肩甲骨の背骨側端と背骨との間に位置するようになっている。具体的には、上体支持面21の幅方向中心線C2から肩甲骨補助凸条110の背骨側端部までの距離は、背骨中心線から背骨端までの水平方向長さd1、すなわち、背骨の太さの半分(図8参照)以上、且つ、背骨中心線と、第5乃至第7肋骨の範囲における肩甲骨との間の水平方向長さd2(図8参照)以下となっている。ただし、肩甲骨は種々の動きをするため、この長さd2は、肩甲骨の動きに伴い変化する。そのため、考慮する長さd2は、回旋時の最小の長さを考える。なお、図8は、肋骨、肩甲骨、背骨の概略構造を示す図である。
【0049】
また、前述のように、座位状態において座面11から肋骨までの高さは、人によって比較的大きく異なる。そのため、この肩甲骨補助凸条110の座面11からの高さは、標準的な座高を考慮して設定されている。また、肩甲骨補助凸条110の長手方向の長さは、上体支持面21に形成できれる範囲であれば特に制限はない。たとえば、標準的な大きさの人の背中の幅方向長さの半分程度とされる。
【0050】
一対の下部肋骨水平凸条120は、上下方向位置が、標準的な座高を考慮しており、肋骨群のうちの最も下部の肋骨である第10肋骨乃至第12肋骨に対向する範囲である。従って、図1に示すように、肋骨支持傾斜凸条100の下方であって、腸骨支持凸部80の上方に配置されている。
【0051】
この一対の下部肋骨水平凸条120は、左右方向に並んでおり、どちらも略水平となっている。なお、ここでの略水平とは、背骨が鉛直方向となっているときにおける第10肋骨乃至第12肋骨の傾斜程度は含む意味である。この一対の下部肋骨水平凸条120の長さ、および、左右方向の位置には特に制限はない。ただし、背骨に当接しないようになっていることが好ましい。そのため、本実施形態の下部肋骨水平凸条120の背骨側端部は、上体支持面21の幅方向中心線C2から、図8の長さd1以上離隔している。
【0052】
また、本実施形態の肋骨支持傾斜凸条100、肩甲骨補助凸条110、下部肋骨水平凸条120は、それらの背骨側端部および外側端部の幅方向中心線C2からの距離が互いに同一となるように、長さおよび位置が定められている。
【0053】
また、本実施形態の上体支持面21は、上記肋骨支持傾斜凸条100、肩甲骨補助凸条110、下部肋骨水平凸条120の外側端部よりも外側は、前方向に突き出すように湾曲している。これにより、上体が左右方向にずれにくくなっている。
【0054】
次に、このように構成された座席1に人が座ったときの効果について説明する。まず、姿勢の保持が容易であるという効果について説明する。
【0055】
この効果に最も関係する構造は、一対の腸骨支持凸部80と一対の座骨収容凹部40である。座席1に形成された一対の腸骨支持凸部80によって、座っている人の一対の腸骨凸部91が支持される。換言すれば、一対の腸骨支持凸部80から、座っている人の一対の腸骨凸部91に対して力が加えられることになる。腸骨凸部91は、骨盤の中では上方にあることから、腸骨凸部91に対して力が加えられることで、骨盤に対して前傾方向に力が加わることになる。そのため、骨盤が前傾するサブマリン状態となりにくくなる。
【0056】
さらに、骨盤が後傾していない状態では、人の一対の座骨凸形状部61は、座面11に形成された一対の座骨収容凹部40に収容され、また、骨盤が後傾していない状態では、上体が垂直に近い状態となるので、上体が座骨を押す力が大きくなる。そのため、座骨が座骨収容凹部40に収容された状態を保持しやすい。これらのことから、サブマリン状態となりにくく、且つ、その姿勢を容易に保持することができる。また、姿勢の保持が容易になることから、疲労の回復も早くなる。
【0057】
さらに、床に足をついて踏ん張った場合も、足裏から体幹に伝わる反作用力は、人の腸骨凸部91を介して、座席1の腸骨支持凸部80によって支えられる。腸骨支持凸部80は、それが設けられている部分の周囲よりも突き出していることから、上記反作用力は主としてこの腸骨支持凸部80によって支えられ、腸骨支持凸部80以外の部分によって支えられる割合が小さくなる。すなわち、反作用力のうち、背骨や腰椎を介して上体支持面21によって支えられる割合が小さくなる。よって、背骨や腰椎の負担が軽減する。また、人の腸骨凸部91は、大きな力が外部から加えられても、あまり痛く感じない部位である。これらのことから、主として背骨や腰椎で上体を支える通常の椅子に比較して、床面方向に思い切り踏み込んでも、人体の負担は小さくなる。よって、アクセルペダルやブレーキペダルを思い切って踏み込むこともできるようになる。
【0058】
また、座骨収容凹部40、腸骨支持凸部80によって、姿勢の保持が容易になるだけでなく、本実施形態の座席1では、上体支持面21に、肋骨支持傾斜凸条100、肩甲骨補助凸条110、下部肋骨水平凸条120が設けられており、これらが設けられていることにより、上体が左右方向に揺れ動くことが抑制される。よって、これらによっても、姿勢の保持が容易になる。さらに、座面11に設けられている太腿位置基準凸条70によって太腿の位置が定まる。これによっても、姿勢の保持が容易になる。
【0059】
次に、呼吸が楽になるという効果について説明する。この効果に最も関係する構造は、肋骨支持傾斜凸条100である。肋骨間には種々の生体組織が存在し、それら生体組織により肋骨間は繋がっていることから、肋骨支持傾斜凸条100がない場合には、呼気の際に収縮する筋肉(たとえば下後鋸筋)によって、その筋肉が結合している肋骨が降下させられるだけでなく、その筋肉が結合していない上方の肋骨までも降下させられる。しかし、本実施形態の座席1には、肋骨支持傾斜凸条100が設けられており、この肋骨支持傾斜凸条100は、呼気の際に降下する肋骨に対して、その肋骨の下方から突き合わせられる。そのため、胸に対応する上方の肋骨の降下が抑制されるので、胸が開いた状態が維持されやすくなる。したがって、呼吸が楽になるのである。
【0060】
特に、第9肋骨と第10肋骨との間に肋骨支持傾斜凸条100が位置している場合には、呼吸が楽になる効果が大きい。これは以下の理由による。第10肋骨以下の肋骨は腹筋系の筋肉であり、腹筋がつながっているために、腹筋の収縮によって降下させられる。一方、第9肋骨以上の肋骨は腹筋ではなく吸気筋がつながっている。そのため、第9肋骨と第10肋骨との間に肋骨支持傾斜凸条100が位置している場合、腹筋系の筋肉によって肋骨が降下させられることを効果的に抑制しつつ、吸気系の筋肉の運動は阻害しないことになる。よって、呼吸が楽になる効果が大きくなるのである。
【0061】
さらに、前述したように、腸骨支持凸部80、一対の座骨収容凹部40等の構成により、姿勢の保持が容易になっており、腸骨支持凸部80、一対の座骨収容凹部40等によって保持された姿勢は、胸の圧迫が少ない姿勢であることから、腸骨支持凸部80、一対の座骨収容凹部40等の構成によっても、呼吸が楽になるという効果が促進される。
【0062】
次に、姿勢を元の姿勢に戻しやすいという効果について説明する。この効果に最も関係する構造は、太腿位置基準凸条70である。太腿位置基準凸条70は、大腿二頭筋と半膜様筋との間の凹みに嵌るように設けられており、太腿位置基準凸条70が大腿二頭筋と半膜様筋との間の凹みに嵌ることにより、太腿の位置が定まることになる。通常の椅子であれば、上体を左右に揺らすと、それに連動して太腿まで動いてしまうことが多い。しかし、本実施形態では、太腿位置基準凸条70があることにより太腿の位置が定まり、且つ、その位置で安定する。
【0063】
そのため、上体が左右にくずれた場合にも、上体の左右へのくずれに連動して太腿までが左右に移動してしまうことが抑制される。そのため、太腿の位置を基準とすることができるので、上体が左右にくずれた場合にも、上体を元の適切な位置に戻すことが容易になる。そして、上体の位置が適切であると、筋疲労が減少するので、疲れにくくなる。また、安全に運転するには上体の位置を安定にすることが重要であることから、本実施形態の座席1は安全運転に役立つ。
【0064】
次に、下腿が動かしやすいという効果について説明する。この効果に最も関係する構造も、太腿位置基準凸条70である。通常の椅子であれば、下腿を動かす際に太腿まで連動して動いてしまう。しかし、本実施形態では、太腿位置基準凸条70があることにより太腿の位置が定まり、且つ、その位置で安定する。そのため、下腿を動かす際に、太腿の端である膝が支点となる。すなわち、下腿を動かす際、それに連動して太腿までが動いてしまうことが抑制されて、下腿のみを動かすことができるようになる。これにより、下腿が軽く動くようになる。よって、アクセルペダルやブレーキペダルの操作が容易になる。また、これらの操作が容易になることから、運転時の疲労が減少する。なお、姿勢の保持が容易になるという効果によっても、運転時の疲労が減少する。
【0065】
次に、左右方向への姿勢のくずれを抑制できるという効果について説明する。この効果に最も関係する構造は、肩甲骨補助凸条110、下部肋骨水平凸条120である。肩甲骨補助凸条110は略水平となっていることから、左右方向への上体の傾斜運動は肩甲骨補助凸条110が邪魔になって行いにくい。その結果、左右方向への姿勢のくずれが抑制される。一方、背骨周りの上体の回転運動は肩甲骨補助凸条110によって邪魔されない。そのため、左右を見る際には、上体の左右方向への揺れを抑制しつつ、上体を回転させて顔を右や左へ向ける動きが促されることになる。その結果、運転中において好ましくない頭部の左右方向へ揺れを抑制できる。
【0066】
また、下部肋骨水平凸条120は、第10肋骨乃至第12肋骨に対向する範囲において略水平となっており、第10肋骨乃至第12肋骨には腹筋がつながっている。そのため、腹筋は、下部肋骨水平凸条120に案内される動きが容易になる。この動きは、腰を回転させる際の動きである。腰が回転する動きは、背骨周りの上体の回転運動であることから、結果的に、下部肋骨水平凸条120によっても、上体の左右方向へ揺れが抑制される。なお、下部肋骨水平凸条120によって上記効果が得られるようにするためには、下部肋骨水平凸上20が第10肋骨の下端に当接するようにすることが最も好ましい。
【0067】
次に、肩を楽に回すことができるという効果について説明する。この効果に最も関係する構造も、肩甲骨補助凸条110である。本実施形態の座席1に人が座ったとき、肩甲骨補助凸条110の背骨側端部は、背骨と肩甲骨の背骨側端との間に位置することになる。そのため、この肩甲骨補助凸条110の背骨側端部が回旋の支点として利用されて肩甲骨の回旋が補助されるので、肩甲骨の回旋を伴う肩の運動が楽に行えるようになるのである。よって、運転席に用いた場合には、ハンドル操作を楽に行えるようになる。
【0068】
また、肩甲骨は下部僧帽筋によって下方に引っ張られているが、肩甲骨は、この肩甲骨補助凸条によって支えられるので、下がることが抑制される。このことによっても、肩を楽に回すことができるようになる。
【0069】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0070】
たとえば、前述の実施形態では、肋骨支持傾斜凸条100は、一組のみであったが、二組以上であってもよい。たとえば、第9肋骨と第10肋骨との間に当接する一組目の肋骨支持傾斜凸条と、第10肋骨と第11肋骨との間に当接する二組目の肋骨支持傾斜凸条が設けられていてもよい。このようにすれば、肋骨の効果がより抑制されることから、呼吸が楽になると言う効果がより大きくなる。
【0071】
また、前述の実施形態では、肋骨支持傾斜凸条100、肩甲骨補助凸条110、下部肋骨水平凸条120は上体支持面21に固定されており、位置を上下させることはできなかった。しかし、これらの支持対象である肋骨、肩甲骨の座面11からの位置は、人によって比較的大きく異なる。その一方で、これらと同様に上体支持面21に形成されている腸骨支持凸部80が支持する腸骨凸部91の座面11からの高さは、人による違いが比較的小さい。そこで、座席1を次のように構成してもよい。すなわち、上体支持部20において、腸骨支持凸部80が設けられている部分(以下、上体下部支持部)と、肋骨支持傾斜凸条100、肩甲骨補助凸条110、下部肋骨水平凸条120が設けられている部分(以下、上体上部支持部)とを別体として、且つ、上体下部支持部は、座面11に対して離隔不能に連結させ、上体上部支持部は、座面11に対して上下方向に可動するように構成してもよい。この場合、上体上部支持部の可動範囲は、肋骨支持傾斜凸条100、肩甲骨補助凸条110、下部肋骨水平凸条120がそれぞれ対象とする肋骨の座面11からの高さの人による変動範囲を含むようにする。
【0072】
なお、上体上部支持部を座面11に対して上下方向に可動させるための具体的構成は、たとえば、上体上部支持部と上体下部支持部との間を、上体支持部20とヘッドレスト30との間と同様に、複数本の金属柱で連結する構成が考えられる。また、上体支持面21のうち上体上部支持部に属する部分が特許請求の範囲における上体支持面の上側部分に相当し、上体支持面21のうち上体下部支持部に属する部分が特許請求の範囲における上体支持面の下側部分に相当する。
【0073】
また、前述の実施形態は座席1であったが、脚を備えた椅子に本発明を適用してもよい。脚を備えた椅子は家屋内で用いられることが多く、このような椅子は、座面や上体支持面の材質が木製、ビニール製等種々のものがある。本発明を適用した場合においても、座面や上体支持面の材質に特に制限はなく、従来の椅子と同様の種々の材質を用いることができる。また、椅子やシートに被せるカバーに本発明を適用してもよい。また、本発明をカバーに適用する場合にも、上体上部支持部と上体下部支持部とを別体とし、上体下部支持部は座部に対して離隔不能に連結させ、上体上部支持部は、座部に対して上下方向に可動するように構成してもよい。
【0074】
また、本発明をカバーに適用する場合には、上体支持面のカバーを設けず座面部分のみのカバーとしてもよいし、反対に、座面のカバーを設けずに、上体支持面のみのカバーとしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1:座席(座位保持装置)、 10:座部、 11:座面、 12:膝側端部、 20:上体支持部、 21:上体支持面、 30:ヘッドレスト、 40:座骨収容凹部、 50:骨盤、 60:座骨、 61:座骨凸形状部、 70:太腿位置基準、 凸条、 80:腸骨支持凸部、 90:腸骨、 91:腸骨凸部、 92:背骨、 100:肋骨支持傾斜凸条、 110:肩甲骨補助凸条、 120:下部肋骨水平凸条、 C1:座部10の幅方向中心面、 C2:上体支持面21の幅方向中心線、 d1:背骨中心線から背骨端までの水平方向長さ、 d2:背骨中心線と、第5乃至第7肋骨の範囲における肩甲骨との間の水平方向長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が座る座面と前記人の上体背面を支持する上体支持面とを有する座位保持装置であって、
腸骨において座位状態で後方に突き出す一対の腸骨凸部とそれぞれ突き合わせられる一対の腸骨支持凸部が前記上体支持面に設けられ、
座骨において下方に突き出している一対の座骨凸形状部を収容する一対の座骨収容凹部が前記座面に設けられていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項2】
請求項1において、
呼気の際に降下させられる肋骨に対して、その肋骨の下方から突き合わせられ、その肋骨の傾斜に沿って傾斜している肋骨支持傾斜凸条が前記上体支持面に設けられていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記肋骨支持傾斜凸条は、第9肋骨と第10肋骨との間に当接するように設けられていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
左右の太腿の大腿二頭筋と半膜様筋との間の凹みに嵌るようにそれぞれ設けられた一対の太腿位置基準凸条が、前記座面に設けられていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記上体支持面に設けられ、上下方向位置が第5肋骨乃至第7肋骨に対向する範囲にある略水平の凸条であって、上体支持面の幅方向中心線からその凸条の背骨側端部までの距離が、背骨中心線から背骨端までの水平方向長さ以上、且つ、背骨中心線から肩甲骨までの水平方向長さ以下となっている肩甲骨補助凸条を備えていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記上体支持面に設けられ、第10乃至第12肋骨に対向する範囲にある略水平の下部肋骨水平凸条をさらに備えていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項7】
請求項2または3において、
前記上体支持面は、前記肋骨支持傾斜凸条が設けられている上側部分と前記腸骨支持凸部が設けられている下側部分とが別体となっており、下側部分は前記座面に対して離隔不能に連結している一方、上側部分は前記座面に対して上下方向に可動するようになっていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項8】
請求項5において、
前記上体支持面は、前記肩甲骨補助凸条が設けられている上側部分と前記腸骨支持凸部が設けられている下側部分とが別体となっており、下側部分は前記座面に対して離隔不能に連結している一方、上側部分は前記座面に対して上下方向に可動するようになっていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項9】
請求項7において、
前記上体支持面の前記上側部分には、上下方向位置が第5肋骨乃至第7肋骨に対向する範囲にある略水平の凸条であって、上体支持面の幅方向中心線からその凸条の背骨側端部までの距離が、背骨中心線から背骨端までの水平方向長さ以上、且つ、背骨中心線から肩甲骨までの水平方向長さ以下となっている肩甲骨補助凸条がさらに設けられていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記上体支持面の前記上側部分には、第10乃至第12肋骨に対向する範囲にある略水平の下部肋骨水平凸条がさらに設けられていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記上体支持面に、前記上体支持面の幅方向中心線を挟んでおり、その幅方向中心線から離隔するに従い、人の第9肋骨あるいは第10肋骨と略同一の角度で傾斜する一対の傾斜凸条が設けられ、
且つ、前記上体支持面は、その一対の傾斜凸条が設けられている上側部分と前記腸骨支持凸部が設けられている下側部分とが別体となっており、下側部分は前記座面に対して離隔不能に連結している一方、上側部分は前記座面に対して上下方向に可動するようになっていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記上体支持面に、前記上体支持面の幅方向中心線を挟んでいる一対の略水平な凸条が設けられており、
且つ、前記上体支持面は、その一対の略水平な凸条が設けられている上側部分と前記腸骨支持凸部が設けられている下側部分とが別体となっており、下側部分は前記座面に対して離隔不能に連結している一方、上側部分は前記座面に対して上下方向に可動するようになっていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項13】
請求項11において、
前記上体支持面のうち、前記上側部分には、前記傾斜凸条の上側に、上体支持面の幅方向中心線を挟んでいる一対の略水平な凸条が設けられていることを特徴とする座位保持装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記上体支持面の上側部分には、前記傾斜凸条の下側にも、上体支持面の幅方向中心線を挟んでいる一対の略水平な凸条が設けられていることを特徴とする座位保持装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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