説明

座標入力装置及び方法

【課題】 入力軌跡の滑らかさを維持しながら、機器の消費電力を低減させることを目的とする。
【解決手段】 所定の時間間隔で座標の検出を行なう座標入力装置において、入力された座標列が曲線を為すかを検知する手段と、検知された曲線の度合いに応じて測定間隔を制御する手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを利用した座標入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タッチパネルを使用した座標入力装置が実現されている。タッチパネルの構造は、抵抗膜や電磁誘導、静電結合、超音波など様々な検出方式が存在する。例えば、抵抗膜方式は、ガラスとポリエチレンフィルムの対向面に抵抗膜を蒸着したタブレットを使用する。ペンや指などでフィルム上を押圧することにより、双方の抵抗膜が接触する。この抵抗値の変化を検出回路で測定することで、押圧された座標位置を検出する。検出回路は、抵抗膜のドライバとA/Dコンバータなどで構成され、所定の時間間隔ごとに座標値の測定を行なう。
【0003】
測定点数が多ければ、より滑らかな座標入力が可能となる。例えば、50ms毎(秒当り20ポイント)に測定すれば、大まかな筆記軌跡の入力と再現が可能である。また、10ms毎(秒当り100ポイント)に測定すれば、文字認識に使用できるレベルの滑らかなデータが入力できる。しかし、測定点数を多くすることは、処理負荷の増加を招き、検出回路を含めた消費電力が増加してしまうというデメリットもある。電池動作を行なう携帯情報機器などでは、消費電力の増加は致命的な使い勝手の悪化につながる。
【0004】
不要な座標入力を防ぐ方法として、以下の方法が提案されている。
【0005】
(1)特開平08-249104は、通常は座標を間引いてホストに送信し、要求があると全部送る方法を開示する。
【0006】
(2)特開平01-209523は、ペンの移動速度に応じて測定間隔を変更する方法を開示する。ペンの移動速度を検出し、移動速度が速い時は測定間隔を短くするように制御する。
【0007】
(3)特開平07-114621は、取り込んだ座標値を格納しておき、今回取り込んだ座標との距離を計算し、その距離と閾値を比較して、次の測定間隔を変更する方法を開示する。
【0008】
(4)特開平09-190275は、表示遅延を防ぐため、次の座標を予測して表示する方法を開示する。
【特許文献1】特開平08-249104号公報
【特許文献2】特開平01-209523号公報
【特許文献3】特開平07-114621号公報
【特許文献4】特開平09-190275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来例では、入力ストロークの形状に関わらずに測定間隔を制御するため、不要な座標検出が行なわれるという欠点があった。そのため、処理装置の負荷が重くなったり、消費電力が大きなものとなってしまっていた。
【0010】
本発明は、入力軌跡の滑らかさを維持しながら消費電力を低減させた、好適な座標入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の遮光型座標入力装置では、所定の時間間隔で座標の検出を行なう座標入力装置において、入力された座標列が曲線を為すかを検知する手段と、検知された曲線の度合いに応じて測定間隔を制御する手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入力ストロークの曲線部を検出してサンプリング速度を変更することで、座標検出回路の消費電力を大幅に低減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施例1)
以下、添付図面を参照して、本発明に係る好適な実施例を詳細に説明する。
【0014】
本実施例では、座標検出毎に座標列の方向ベクトルの変化を計算する。そして、変化が大きい場合は曲線部分であると見なしてサンプリング間隔を短くする、という動作を行なう。
【0015】
<表示装置の全体構成(図2)>
図2のブロック図を用いて、表示装置の構成を説明する。
【0016】
本実施例の表示装置は、液晶ディスプレイ(LCD)を備え、タッチパネル上を指示することでコマンドや筆記軌跡の入力を行なう携帯情報端末である。
【0017】
図中、携帯情報端末1において、2は装置全体の制御を行うCPUであり、メモリ部3に格納されたプログラムに従って、撮影制御、各種演算、I/O制御などの処理を実行する。メモリ部3は、RAMやROMなどで構成され、CPU2の制御プログラムやワークデータなどを格納する。ハードディスクや光磁気ディスク、CD-ROM、CD−RW、DVD-ROMなどの二次記憶装置が含まれていてもよい。4は、ユーザの操作を直接に入力するスイッチである。電源ON/OFFやアプリケーション切換え、画面スクロールなど任意の機能を持ったスイッチで構成する。5は拡張カードインタフェースであり、拡張メモリや機能I/Oカードなどが挿入できる。PCMCIAやCF、SD、MMCなど任意の規格のICカードが使用可能である。6は液晶ディスプレイ(LCD)であり、装置内の各種データの表示を行なう。後述するように、タッチパネルに入力されたストロークの軌跡を表示したり、各種制御を行なうためのソフトウェアスイッチを表示する。7は液晶ディスプレイ表示制御部であり、LCD6を駆動するための信号を生成する。また、表示メモリ8から表示データを読出し、駆動信号にタイミングを合わせてLCD6へと出力する。8は表示メモリであり、表示したい画像をLCD6とLCD表示制御部7に合わせたデータ形式に展開して格納する。
【0018】
9は抵抗膜方式タブレットなどを利用したタッチパネルである。入力ペン(図示せず)や指などでパネル上の座標位置を押圧することで、操作入力を行なう。タッチパネル9は、相対する面に抵抗膜を蒸着したポリエチレンフィルム(PET)とガラスで構成され、PET上の押圧された位置が検出できる。これを液晶ディスプレイ6上に重ね合わせることで、入出力一体型のユーザインタフェースを構成することができる。タッチパネル入力があった場合、入力座標と対応する位置にエコーバック表示させることで、あたかも紙に書くかのようなインタフェースを実現できる。10はタッチパネル制御部であり、タッチパネル9を駆動して、ユーザが押圧した点を座標データに変換して出力する。
【0019】
タッチパネル制御部10において、11はタッチパネルのドライバ回路であり、12はA/Dコンバータである。座標の検出原理について説明すると、ドライバ回路11はガラス側、フィルム側のいずれかの抵抗膜に電圧を印加する。タッチパネルが押圧されていると両側の抵抗膜が接触し、非駆動側の抵抗膜にも電圧が現れる。出力電圧は押圧位置に応じて抵抗分割されたレベルとなるので、これをA/Dコンバータで測定することで、押圧位置が検出できる。ここで、ガラス側の電圧勾配をX軸に沿った方向、フィルム側をY軸に沿った方向になるように電極を配置して、ドライバ回路11を交互に切り替えて検出を行うことで、タッチパネル9上の二次元座標が検出できる。
【0020】
<座標入力処理の説明(図1)>
図1のフローチャートを用いて、座標入力を行なう処理の流れを説明する。本実施例では、座標検出毎に以前の座標列との方向ベクトルの差を算出し、差が所定値以上であった場合はサンプリング間隔を短くする、という処理を行なう。
【0021】
ステップS101では、座標値のサンプリング測定を行なう時間となったかを判定し、肯定であればステップS102へ進み、否定であればステップS101を繰り返す。ステップS102では、タッチパネル制御部10を駆動して1ポイントの座標入力を行なう。ステップS103では、入力した座標値をメモリ3上に確保した入力バッファへ格納する。ステップS104では、座標列をベクトル化して表し、ストロークの方向の変化量を計算する。まず、直前の座標データとの間でベクトルデータを作成する。次に、直前のベクトルデータとの差分を取って、変化量を示す差分ベクトルを求める。さらに差分ベクトルの大きさを計算する。ステップS105では、差分ベクトルの大きさを閾値と比較して、入力中の座標がストロークの曲線部分であるかを判定する。曲線部分と判定した場合はステップS106へ、そうでない場合はステップS107へ進む。ステップS106では、サンプリング間隔を短く設定し、ステップS108へ進む。例えば、文字認識ができるような滑らかさで検出するため、10ms毎(秒当り100ポイント)に設定する。一方のステップS107では、サンプリング間隔を長く設定し、ステップS108へ進む。例えば、20ms毎(秒当り50ポイント)に設定し、タッチパネル9やタッチパネル制御回路10の動作割合を減らすようにする。ステップS108では、入力座標に対するベクトル値をメモリ3に格納した後に、ステップS101へと進む。操作スイッチ4の指示などによって、座標入力の必要ないアプリケーションに切り換えられた場合に処理を終了する。
【0022】
<座標入力例の説明(図3〜5)>
次に、図3〜5を用いて、座標データの入力例を説明する。
【0023】
図3は、筆記軌跡を入力する例を示す図である。71は、ユーザの書いた入力軌跡である。72から78はサンプリングされた座標である。
【0024】
図4は、隣接する座標間のベクトルの計算例を示す図である。81〜86は、座標データから求めたベクトルである。例えば、ベクトル81は座標データ72と73、ベクトル82は座標データ73と74から求める。図の例では、ベクトル83以降が以前のベクトルと方向が異なっている。そこで、座標データ75を検出した時点で「曲線入力中」と判定し、それ以降はサンプリング間隔が短くなっている。
【0025】
図5は、図3のストローク入力を行なったときのサンプリング間隔の変化を示すタイミング図である。図中、座標72〜75を入力する時は、20ms間隔で座標検出を行なっている。ところが、「曲線入力中」と判定された座標75以降は、サンプリング間隔を短くして、10ms間隔で座標検出を行なうように制御が切り換えられている。
【0026】
以上のように、本実施例の制御を行なうことで、曲線部分でサンプリング間隔を短くすることができる。
【0027】
以上説明したように実施例によれば、座標列のベクトルの方向変化によって曲線部分かを判定してサンプリング速度を変更することで、座標検出回路の消費電力を大幅に低減することができる。
【0028】
本発明の趣旨は、本実施例に限定されることなく、さまざまに応用することができる。例えば、サンプリング間隔の設定は、装置に応じた任意の数値であってよい。また、実施例のサンプリング間隔切換えは2段階であったが、段階をもっと増やしてもよい。方向ベクトルの曲線判定閾値を複数個設定し、それぞれに応じたサンプリング間隔を設定するようにすればよい。ベクトルは隣接する2点間で求めたが、任意の点数を用いることができる。測定誤差やノイズによって座標データがゆらぐ場合が多いが、平滑化などノイズ除去処理を行なった後に本発明の処理を行なうことで、より安定した制御が可能となる。
【0029】
さらに、曲率があまりに大きい場合は、異常データと見なして、座標列から削除するようにしてもよい。これにより、ノイズ除去処理や異常処理などソフトウェア上位層での処理負荷を減らすことができる。
【0030】
(実施例2)
前述までの実施例では、入力中のストローク内の曲率を判定する例について説明を行なった。しかし、文字の筆記時などのように、以前のストロークの曲率情報が有用な場合もある。文字を構成するストロークは、似通った大きさと曲率を持つことが多い。文字は複数のストロークで構成されるから、類似のストローク入力が続くことになる。そこで、本実施例では、直前のストローク中で曲線が含まれる度合いを記憶しておき、曲線が多かった場合は次ストロークのサンプリング間隔を短く設定する例について説明を行なう。
【0031】
本実施例の装置は、実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【0032】
<座標入力処理の説明(図6)>
図6のフローチャートを用いて、座標入力を行なう処理の流れを説明する。本実施例では、直前のストローク中で曲線が含まれる度合いを記憶しておき、曲線が多かった場合は次ストロークのサンプリング間隔を短く設定する、という処理を行なう。
【0033】
ステップS201は、入力ペンでタッチパネル9を指示している状態(ペンダウン状態)にあるか判定する。肯定であればステップS202へ進み、否定であればステップS201を繰り返す。
【0034】
続くステップS202〜205で、本実施例のサンプリング間隔設定制御を行なう。ステップS202では、直前のストロークの曲線度合いデータを取り出す。ステップS203では、直前のストロークに曲線が多かったか判定し、肯定であればステップS204へ、否定であればステップS205へ進む。ステップS204では、サンプリング間隔を短く設定し、ステップS206へ進む。例えば、文字認識ができるような滑らかさで検出するため、10ms毎(秒当り100ポイント)に設定する。一方のステップS205では、サンプリング間隔を長く設定し、ステップS206へ進む。例えば、20ms毎(秒当り50ポイント)に設定し、タッチパネル9やタッチパネル制御回路10の動作割合を減らすようにする。
【0035】
以降のステップでは、ペンアップとなるまで、サンプリング間隔毎に座標入力を繰り返す。ステップS206では、タイマ(図示せず)等を用いて座標入力の時間になったかを判定する。肯定であればステップS207へ進み、否定であればステップS206を繰り返す。ステップS207では、タッチパネル制御部10を駆動して1ポイントの座標入力を行なう。ステップS208では、ペンアップ状態にあるか判定し、肯定であればステップS210へ進み、否定であればステップS209へ進む。ステップS209では、入力した座標値データをメモリ3上に確保した入力バッファへ格納し、ステップS206へと戻る。
【0036】
一方のステップS210は、1ストローク分の入力が終了した後の処理である。同ステップでは、ストローク中の曲線の割合を計算してメモリ3中に格納した後に、ステップS201へ進む。ストローク中の曲線割合は、実施例1のように変化ベクトルを計算して、曲線と判定されたベクトルの数を用いても良いし、他の任意の方法を用いてよい。
【0037】
以上説明したように本実施例によれば、前述の実施例と全く同じ効果を得ることができる。文字や図形の入力といったようなユーザの使用場面に応じた切り換えが可能となり、より使い勝手を高めることが出来る。
【0038】
また、ペンダウン後の座標入力の反復処理を行なう中に、実施例1の処理を組み込むようにしても良い。この場合は、本実施例の処理がサンプリング間隔の初期値を設定し、それ以後は実施例1の処理がサンプリング間隔を設定するようになる。こうすることで、座標検出回路の不要な動作をより少なくすることができ、消費電力の低減に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1における座標入力の処理の流れを示すフローチャート。
【図2】実施例1における座標入力装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】実施例1における座標入力例を示す図。
【図4】実施例1におけるベクトル検出の例を示す図。
【図5】実施例1における座標入力のタイミングを説明する図。
【図6】実施例2における座標入力の処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0040】
1 携帯情報端末機
2 CPU
3 メモリ
4 操作スイッチ
5 拡張カードインタフェース
6 液晶ディスプレイ
7 液晶ディスプレイ表示制御部
8 表示メモリ
9 タッチパネル
10 タッチパネル制御部
11 ドライバ回路
12 A/Dコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の時間間隔で座標の検出を行なう座標入力装置において、
入力された座標列が曲線を為すかを検知する手段と、
検知された曲線の度合いに応じて測定間隔を制御する手段と、
を備えたことを特徴とする座標入力装置。
【請求項2】
前記制御手段は、曲線の曲がる度合いが大きい場合に測定間隔を短くし、小さい場合に測定間隔を長く設定すること、を特徴とする請求項1記載の座標入力装置。
【請求項3】
前記制御手段は、曲線の曲がる度合いを複数の閾値と比較して、各閾値に応じた測定間隔を設定すること、を特徴とする請求項1乃至2記載の座標入力装置。
【請求項4】
前記制御手段は、同一ストローク中の座標列の曲線度合いに応じて制御すること、を特徴とする請求項1乃至3記載の座標入力装置。
【請求項5】
前記制御手段は、過去に入力されたストロークの曲線度合いに応じて制御すること、を特徴とする請求項1乃至3記載の座標入力装置。
【請求項6】
所定の時間間隔で座標の検出を行なう座標入力装置において、
入力された座標列が曲線を為すかを検知する手段と、
検知された曲線の度合いが所定値以上であった場合は当該データを座標列から削除する手段と、
を備えたことを特徴とする座標入力装置。
【請求項7】
所定の時間間隔で座標の検出を行なう座標入力方法において、
入力された座標列が曲線を為すかを検知するステップと、
検知された曲線の度合いに応じて測定間隔を制御するステップと、
を備えたことを特徴とする座標入力方法。
【請求項8】
前記制御ステップは、曲線の曲がる度合いが大きい場合に測定間隔を短くし、小さい場合に測定間隔を長く設定すること、を特徴とする請求項7記載の座標入力方法。
【請求項9】
前記制御ステップは、曲線の曲がる度合いを複数の閾値と比較して、各閾値に応じた測定間隔を設定すること、を特徴とする請求項7乃至8記載の座標入力方法。
【請求項10】
前記制御ステップは、同一ストローク中の座標列の曲線度合いに応じて制御すること、を特徴とする請求項7乃至9記載の座標入力方法。
【請求項11】
前記制御ステップは、過去に入力されたストロークの曲線度合いに応じて制御すること、を特徴とする請求項7乃至9記載の座標入力方法。
【請求項12】
所定の時間間隔で座標の検出を行なう座標入力方法において、
入力された座標列が曲線を為すかを検知するステップと、
検知された曲線の度合いが所定値以上であった場合は当該データを座標列から削除するステップと、
を備えたことを特徴とする座標入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−39823(P2006−39823A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217173(P2004−217173)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】