説明

座標入力装置用導電シート並びにその製造方法及び座標入力装置

【課題】透明性及び座標検出精度に優れ、しかも環境負荷が小さい座標入力装置用導電シートを提供する。また、座標検出精度に優れた座標入力装置を提供する。
【解決手段】本発明の座標入力装置用導電シート10aは、透明基材11aと、透明基材11aの片面の少なくとも一部に導電性高分子塗料が一方向に塗布されて形成された透明導電膜12aと、透明導電膜12aの一部に隣接し、導電性高分子塗料の塗布方向に対して直交方向に設けられた一対の帯状電極13a,13bとを備える。本発明の座標入力装置は、上記座標入力装置用導電シートを一対具備する座標入力装置であって、一対の座標入力装置用導電シートは、各々の透明導電膜が互いに間隔を有しつつ対面しており、座標入力装置用導電シートの各々の帯状電極を辺とした矩形状の入力領域が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標入力装置に具備される座標入力装置用導電シート並びにその製造方法に関する。また、タッチパネル等に具備される座標入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等の入力装置においては、画像表示装置上に、指やスタイラスなどが接触した接触点の座標を検出する座標入力装置が備えられている。座標入力装置としては、透明基材と、該透明基材の片面に形成された透明導電膜と、該透明導電膜の一部に隣接し、互いに平行な一対の帯状電極とを備える導電シートを一対具備するものが知られている。この座標入力装置では、一対の座標入力装置用導電シートが、各々の透明導電膜が互いに間隔を有しつつ対面しており、また、座標入力装置用導電シートの各々の帯状電極を辺とした矩形状の入力領域が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
上記座標入力装置用導電シートの透明導電膜としては、例えば、カーボンペースト膜やITO蒸着膜が使用されている。また、帯状電極の材料としては、例えば、銀ペーストなどが使用されている。
【特許文献1】特開平10−63428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、座標入力装置に具備された座標入力装置用導電シートの透明導電膜として、カーボンペースト膜を使用した場合には、入力領域の透明性が不足するため、画像表示装置の画像の視認性が低くなった。
また、ITOは環境負荷が高いという問題があるため、ITO蒸着膜を使用しない透明導電膜が求められていた。その上、透明導電膜として、ITO蒸着膜を用いた場合には、帯状電極から配線を設けるために、非入力領域のITO蒸着膜をエッチング等により除去することがあり、座標入力装置用導電シート製造の工程数が多くなることがあった。
そこで、近年では、π共役系導電性高分子を含む塗料を透明基材上に塗布して、透明導電膜を形成することが検討されている。
【0004】
ところが、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子塗料を透明基材上に塗布して形成した透明導電膜を備えた導電シートを、座標入力装置に適用してみると、座標検出の精度が低くなることがあった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、透明性及び座標検出精度に優れ、しかも環境負荷が小さい座標入力装置用導電シート並びにその製造方法を提供することを目的とする。また、座標検出精度に優れた座標入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが、導電性高分子塗料が塗布されて形成された透明導電膜を備えた導電シートを座標入力装置に用いた場合に、座標検出精度が低くなる原因について調べたところ、透明導電膜に帯状電極と平行に形成された塗布斑や傷が原因であることを見出した。また、導電性高分子塗料がカーボンペーストのように透明性が低い場合には、塗布斑や傷を目視あるいは画像処理などの光学的手法により確認できるが、π共役系導電性高分子を含む塗料の場合には、透明性が高いため、目視や画像処理による確認が困難であることが分かった。そして、本発明者らは、これらの知見に基づいて、以下の座標入力装置用導電シート並びにその製造方法及び座標入力装置を発明した。
【0006】
本発明の座標入力装置用導電シートは、透明基材と、該透明基材の片面の少なくとも一部に導電性高分子塗料が一方向に塗布されて形成された透明導電膜と、該透明導電膜の一部に隣接し、導電性高分子塗料の塗布方向に対して直交方向に設けられた一対の帯状電極とを備えることを特徴とする。
本発明の座標入力装置用導電シートの製造方法は、透明基材の片面の少なくとも一部に、導電性高分子塗料を一方向に塗布して透明導電膜を形成する透明導電膜形成工程と、
透明導電膜の一部に、導電性高分子塗料の塗布方向に対して直交方向に一対の帯状電極を設ける電極設置工程とを有することを特徴とする。
本発明の座標入力装置は、上述した座標入力装置用導電シートを一対具備する座標入力装置であって、
一対の座標入力装置用導電シートは、各々の透明導電膜が互いに間隔を有しつつ対面しており、
座標入力装置用導電シートの各々の帯状電極を辺とした矩形状の入力領域が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の座標入力装置用導電シートは、透明性及び座標検出精度に優れ、しかも環境負荷が小さい。
本発明の座標入力装置用導電シートの製造方法によれば、透明性及び座標検出精度に優れ、しかも環境負荷が小さい座標入力装置用導電シートを製造できる。
本発明の座標入力装置は、座標検出精度に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(座標入力装置用導電シート)
本発明の座標入力装置用導電シート(以下、導電シートと略す。)の一実施形態例について説明する。
図1及び図2に、本実施形態例の導電シートを示す。この導電シート10aは、矩形状の透明基材11aと、透明基材11aの片面の一部に矩形状に形成された透明導電膜12aと、透明導電膜12aにおける透明基材11a側と反対側の面の一部に隣接する一対の帯状電極13a,13bとを備えるものである。
【0009】
透明基材11aとしては特に制限されず、ガラス基板であってもよいし、透明樹脂フィルムであってもよい。
透明樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられ、目的に応じて適宜選択できるが、透明性に優れる点からポリエチレンテレフタレートがより好ましい。透明樹脂フィルムはプライマ処理が施されていてもよい。ただし、指やスタイラスなどが触れる側(表面側)に配置される導電シート(例えば、図9における導電シート10b)には、可撓性を有する透明樹脂フィルムを使用することが好ましく、その厚さとしては50〜300μmであることが好ましい。さらに、指やスタイラスなどが触れる側に対向する側に配置される導電シート(例えば、図9における導電シート10a)には、入力精度などの観点より、ガラス基板などの撓みにくい材質を選択することが好ましく、その厚さとしては、0.5〜2mmであることが好ましい。
【0010】
本実施形態例における透明導電膜12aは、透明基材11aの片面に、導電性高分子塗料が透明基材11aの長辺に沿った方向Lに塗布されて形成された膜である。
また、本実施形態例における透明導電膜12aは、透明基材11aの長辺側端部11c以外の部分に形成されている。
透明導電膜12aの厚さは0.01〜10μmであることが好ましく、透明性、導電性及び耐久性の観点から、より好ましくは0.05〜5μmであり、最も好ましくは0.1〜2.0μmの範囲である。
【0011】
透明導電膜12aを形成する導電性高分子塗料は、少なくともπ共役系導電性高分子と溶媒とを含むものである。
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0012】
π共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0013】
(溶媒)
導電性高分子塗料に含まれる溶媒としては、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
【0014】
また、導電性高分子塗料は、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化するための可溶化高分子を含むことが好ましい。可溶化高分子としては、アニオン基を有する高分子(ポリアニオン)、電子吸引基を有する高分子などが挙げられる。
アニオン基を有する高分子の具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。
電子吸引基を有する高分子の具体例としては、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂や、水酸基あるいはアミノ基含有樹脂をシアノエチル化した樹脂(例えば、シアノエチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリビニルピロリドン、ニトロセルロースなどが挙げられる。
【0015】
透明導電膜12aの全光線透過率は60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。透明導電膜12aの全光線透過率が前記範囲であれば、充分に高い透明性を有しているから、この導電シート10aを備えたタッチパネルは画像の視認性に特に優れる。
【0016】
帯状電極13a,13bは、導電性高分子塗料の塗布方向(長辺に沿った方向L)に対して直交方向に設けられたものである。具体的には、本実施形態例における帯状電極13a,13bは矩形状の透明基材11aにおける短辺の近傍に、該短辺に沿った方向Lにスクリーン印刷等により設けられている。
帯状電極13a,13bの材質としては、例えば、銀ペースト、カーボンペースト、銅ペーストなどの導電性ペーストが挙げられる。
帯状電極13a,13bの配線抵抗(点600a,600b間の抵抗)は座標検出精度に影響するため、帯状電極13a,1b間の抵抗より充分小さく、例えば、1%以下が好ましく、0.1%であることがより好ましい。
帯状電極13a,13bの寸法は、座標入力装置の入力領域の大きさに応じて適宜選択されるが、長さは、通常、入力領域の長さ以上に設定され、透明導電膜12aのL方向の長さと同等であり、かつ、帯状電極13c,13d間の距離よりも長いことが好ましい。また、幅は上記抵抗達成するための広さが必要であるが、入力領域を確保するためにできるだけ狭いことが好ましく、通常は、導電性ペーストの印刷作業性と座標入力装置の外形寸法の関係から、0.5〜15mm程度に設定される。
【0017】
(導電シートの製造方法)
上記導電シート10aの製造方法について説明する。
本実施形態例の導電シートの製造方法では、まず、透明導電膜形成工程にて、透明基材11aの片面における長辺側端部11c以外の部分に、透明基材11aの長辺に沿った方向Lに導電性高分子塗料を塗布して矩形状の透明導電膜12aを形成する。
導電性高分子塗料の塗布方法としては特に制限されず、ワイヤーコーター等のバーコーター、ロールコーターなどを用いることができる。これらの中でも、連続的に塗布でき、生産性に優れることから、ロールコーターが好ましい。ただし、少量生産の場合には、厚みを正確に制御しやすいことからバーコーターが好ましい。
【0018】
次いで、電極設置工程にて、透明導電膜12aにおける透明基材11a側と反対側の面の短辺近傍部に、導電性高分子塗料の塗布方向(長辺に沿った方向L)に対して直交方向(短辺に沿った方向L)に一対の帯状電極13a,13bを設ける。導電性高分子塗料の塗布方向に対して直交方向に帯状電極13a,13bを設ける方法としては、例えば、導電性高分子塗料の塗布方向に対して直交方向に導電性ペーストを塗布する方法などが挙げられる。ここで、導電性ペーストとしては、例えば、銀ペースト、カーボンペースト、銅ペーストなどが挙げられる。
【0019】
以上説明した導電シート10aでは、導電性高分子塗料の塗布方向(長辺に沿った方向L)に対して直交方向(短辺に沿った方向L)に一対の帯状電極13a,13bが設けられているため、透明導電膜12aに帯状電極13a,13bと平行に塗布斑や傷が形成された場合でも、帯状電極13a,13b間の透明導電膜12aの均一性を確保できる。したがって、塗布斑や傷による座標検出の不具合が生じにくく、座標入力装置の座標検出精度を高くすることができる。
また、透明導電膜12aは導電性高分子塗料から形成されているため、透明性に優れ、しかも環境負荷が小さい
【0020】
なお、本発明の導電シートは、上述した実施形態例のものに限定されない。例えば、導電シートは、図3に示すような、導電性高分子塗料が透明基材11bの短辺に沿った方向Lに塗布されて透明導電膜12bが形成され、帯状電極13c,13dが透明基材11bの長辺に沿った方向Lに設けられたものでもよい。
【0021】
また、上述した実施形態例では、透明基材11aの長辺側端部11c以外の部分に導電性高分子塗料を塗布して透明導電膜を形成していたが、透明基材11aの短辺側端部以外の部分に導電性高分子塗料を塗布して透明導電膜を形成してもよい。
また、透明基材11aの片面全部に導電性高分子塗料を塗布して透明導電膜12aを形成してもよい。ただし、透明基材11a上に配線を形成する場合には、透明導電膜12aの一部をサンドブラストやエッチング、アンモニア水などのアルカリ成分の塗布による脱ドープなどにより除去することが行われる。
上述した実施形態例では、透明基材11aおよび透明導電膜12aは矩形状であったが、必ずしも矩形状である必要はなく、円形状、楕円形状、矩形以外の多角形状であっても構わない。
【0022】
(座標入力装置)
本発明の座標入力装置の一実施形態例について説明する。
図4及び図5に、本実施形態例の座標入力装置を示す。この座標入力装置1は、図1に示す導電シート10a(以下、第1の導電シート10aと表記する)と、図3に示す導電シート10b(以下、第2の導電シート10bと表記する。)とを具備し、第2の導電シート10bが表面側に配置されたものである。
また、本実施形態例の座標入力装置1では、第1の導電シート10a及び第2の導電シート10bが、絶縁スペーサ20を介して、各々の透明導電膜12a,12bが互いに間隔を有しつつ対面している。また、本実施形態例の座標入力装置1は、第1の導電シート10a及び第2の導電シート10bの各々の帯状電極13a〜13dを辺とした矩形状の入力領域30が形成されている。
なお、本実施形態例では、透明基材11a,11bの長辺に沿った方向がX方向であり、透明基材11a,11bの短辺に沿った方向がY方向である。
【0023】
また、座標入力装置1は、第1の導電シート10aの帯状電極13a,13bに電圧を印加するための第1の電圧印加回路40aと、第2の導電シート10bの帯状電極13c,13dに電圧を印加するための第2の電圧印加回路40bと、第1の電圧印加回路40aに接続された第1の電圧測定器50aと、第2の電圧印加回路40bに接続された第2の電圧測定器50bと、第1の導電シート10aの帯状電極13a,13bと第1の電圧印加回路40aとを接続する第1の配線60aと、第2の導電シート10bの帯状電極13c,13dと第2の電圧印加回路40bとを接続する第2の配線60bとを具備している。
【0024】
座標入力装置1における絶縁スペーサ20としては特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができるが、透明性の点で、アクリル樹脂製ものが好ましい。
【0025】
第1の電圧印加回路40aは、電源41aとスイッチ手段42aとを有し、H状態とした際に、第1の配線60aを介して、第1の導電シート10aに一定の電圧を印加するものである。
第2の電圧印加回路40bは、電源41bとスイッチ手段42bとを有し、H状態とした際に、第2の配線60bを介して、第2の導電シート10bに一定の電圧を印加するものである。また、第2の電圧印加回路40bには、非押圧時に第2の導電シート10bを一定電圧に保持するためのプルアップ抵抗43と、第2の導電シート10bをプルアップ抵抗43から遮断するために遮断手段44とが設けられている。
第1の電圧印加回路40a及び第2の電圧印加回路40bにおけるスイッチ手段42a,42bとしては、ダイオード、トランジスタ、3ステートバッファ、アナログスイッチなどを用いることができる。
【0026】
第1の電圧測定器50a及び第2の電圧測定器50bとしては、例えば、A/Dコンバータ、コンパレータなどを使用することができる。
第1の配線60aは、透明基材11a上に直接パターニングされて形成されたものであり(図6,7参照)、第2の配線60bは、透明基材11b上に直接パターニングされて形成されたものである(図8参照)。第1の配線60a及び第2の配線60bは、帯状電極13a〜13dと同様に導電性ペーストなどから形成される。
【0027】
この座標入力装置1では、第2の導電シート10bがスタイラス70等に押圧されるようになっており、第2の導電シート10bが押圧されるとその押圧部分が第1の導電シート10aに接触するようになっている(図9参照)。なお、本実施形態例では、第1の導電シート10aと第2の導電シート10bとが接触する点を接触点Sという。
また、押圧されなくなった際には、第2の導電シート10bの形状が復元し、第1の導電シート10aと第2の導電シート10bとが再び間隔を有するようになっている。
【0028】
上記座標入力装置1による座標検出の一例について説明する。なお、以下の例は、第1の導電シート10aの帯状電極13a,13b間又は第2の導電シート10bの帯状電極13c,13d間に一定の電圧を印加し、帯状電極13a又は帯状電極13cから接触点Sまでの電圧を測定することにより座標を求める定電圧法を適用した例である。
【0029】
この例は、第2の導電シート10bを接触点Sにて指又はスタイラス等により押圧して、第1の導電シート10aの透明導電膜12aと第2の導電シート10bの透明導電膜12bを導通させた際の接触点Sの座標検出である。
この座標検出では、第1の導電シート10aの透明導電膜12aと第2の導電シート10bの透明導電膜12bが導通した際に、第1の電圧印加回路40aをH状態(スイッチ手段42aをON)として、第1の導電シート10aの帯状電極13a,13b間に電圧を印加し、帯状電極13a,13b間のX方向に電位勾配を形成させる。また、第2の電圧印加回路40bをL状態(スイッチ手段42bをOFF)とする(すなわち、第2の導電シート10bの帯状電極13c,13d間には電圧を印加しない。)。
その状態の際に、第1の導電シート10aにおける一方の帯状電極13aから接触点Sまでの電位を、接触点Sにて透明導電膜12aに接する透明導電膜12bおよび第2の配線60bを介して第2の電圧測定器50bにより測定する。そして、あらかじめ作製しておいた電圧−距離の検量線に基づいて、帯状電極13aから接触点Sまでの距離を求めることにより、X方向の座標を求める。
その後、第2の電圧印加回路40bをH状態(スイッチ手段42bをON)として第2の導電シート10bの帯状電極13c,13d間に電圧を印加してY方向に電位勾配を形成させる。また、第1の電圧印加回路40aをL状態とする(すなわち、第1の導電シート10aの帯状電極13a,13b間には電圧を印加しない。)。その状態の際に、第2の導電シート10bにおける一方の帯状電極13cから接触点Sまでの電位を、接触点Sにて透明導電膜12bに接する透明導電膜12aおよび第1の配線60aを介して第1の電圧測定器50aにより測定する。そして、あらかじめ作製しておいた電圧−距離の検量線に基づいて、帯状電極13cから接触点Sまでの距離を求めることにより、Y方向の座標を求める。
このようにして、X方向の座標およびY方向の座標を求めることができる。
【0030】
座標検出は、上記定電圧法以外の他の方法を適用することもできる。例えば、一方の導電シートから他方の導電シートに一定の電流を流し、一方の導電シートにおける帯状電極間の電位差から、一方の帯状電極から接触点までの抵抗値を求め、あらかじめ作製しておいた抵抗値−距離の検量線に基づいて、座標を求める定電流法を適用することができる。
ただし、帯状電極近傍に塗布斑や傷が形成されても測定が可能であることから、定電圧法が好ましい。
【0031】
上述した座標入力装置1では、透明基材11a,11bの片面に導電性高分子塗料が一方向に塗布されて形成された透明導電膜12a,12bと、導電性高分子塗料の塗布方向に対して直交方向に設けられた一対の帯状電極13a〜13dとを備える第1の導電シート10a及び第2の導電シート10bを具備しているため、透明導電膜12a,12bに塗布斑や傷が形成された場合でも、その影響が小さく、座標検出精度に優れている。
【0032】
また、本実施形態例のように、第1の配線60a及び第2の配線60bが透明基材11a,11b上に直接パターニングされて形成されていれば、レジストパターンの印刷により透明導電膜12a,12b上に絶縁部を設けなくてもよい。その結果、レジストインクの溶剤による透明導電膜12a,12bの溶解や温度湿度変化に伴う絶縁部61の寸法変化の透明導電膜12a、12bへの影響を防止でき、座標検出精度がより高くなる。
【0033】
なお、本発明の座標入力装置は上述した実施形態例に限定されない。上述した実施形態例では、第1の配線60a及び第2の配線60bが透明基材11a,11b上に直接パターニングされて形成されていたが、例えば、図10に示すように、各配線60cは、透明導電膜12a上にレジストパターンの印刷や粘着テープの貼り付けにより絶縁部61を形成し、この絶縁部61上に形成したものでもよい。
また、上記座標入力装置1では、第2の導電シート10bが表面側に配置されていたが、第1の導電シート10aが表面側に配置されていても構わない。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を具体的に示すが、本発明は実施例により限定されるものではない。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の合成
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を2時間攪拌した。
これにより得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000mlと10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約10000ml溶液を除去し、残液に10000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30K
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0035】
(製造例2)エステル化合物の合成
43.6gのピロメリット酸・二無水物と73.6gのグリセリンをナス型フラスコに入れ、混合させた。ピロメリット酸・二無水物とグリセリンの混合物の入っているナス型フラスコを100℃のオイルバスの油浴中に入れ、10分間掻き混ぜた後、0.1gのp−トルエンスルホン酸を添加し、1時間掻き混ぜた。これにより、ピロメリット酸・二無水物とグリセリンとを脱水反応させて、エステル化合物を含む反応溶液を得た。
そして、得られた反応溶液に115gのイオン交換水を加え、掻き混ぜながら溶解させ、さらにイオン交換水を溶液の固形濃度が50質量%になるように加えて濃度調整をした。これにより得られた水溶液をエステル化合物水溶液とした。
【0036】
(製造例3)導電性高分子塗料の合成
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記ろ過処理が行われた処理液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)を得た。これをπ共役系導電性高分子溶液とした。
そして、得られたπ共役系導電性高分子溶液100mlに、製造例2で得た3.0gのエステル化合物水溶液とを添加し、均一に分散させて導電性高分子塗料を得た。
【0037】
(実施例)
以下のようにして、図1,3の導電シートおよび図4の座標入力装置1を作製した。
製造例3で得た導電性高分子塗料を、プライマ処理が施された矩形状の第1のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ポリエステルフィルム製T−680EW07、透明基材11a)の片面における長辺側端部11c以外の部分に、ワイヤーコーターにより長辺に沿った方向Lに塗布し、乾燥して矩形状の透明導電膜12aを形成した。次いで、透明導電膜12a上に、銀ペーストを短辺に沿った方向Lに塗布して帯状電極13a,13bを設けて第1の導電シート10aを得た。また、前記第1のポリエチレンテレフタレートフィルムの片面の残部に銀ペーストを塗布して第1の配線60aを設けた。
また、第1のポリエチレンテレフタレートフィルムと同形状の第2のポリエチレンテレフタレートフィルム(透明基材11b)の片面における短辺側端部以外の部分に、ワイヤーコーターにより短辺に沿った方向Lに、第1の導電シート10aの透明導電膜12aと同面積に塗布し、乾燥して矩形状の透明導電膜12bを形成した。次いで、透明導電膜12b上に、銀ペーストを長辺に沿った方向Lに塗布して帯状電極13c,13dを設けて第2の導電シート10bを得た。また、前記第2のポリエチレンテレフタレートフィルムの片面の残部に銀ペーストを塗布して第2の配線60bを設けた。
【0038】
次いで、第1の導電シート10a及び第2の導電シート10bを、絶縁スペーサ20を介して、各々の透明導電膜12a,12bが間隔を有しつつ対面し、かつ、第1の導電シート10a及び第2の導電シート10bにおける帯状電極13a〜13dを辺とした矩形状の入力領域30が形成されるように配置した。そして、第1の配線60aに第1の電圧印加回路40aおよび第1の電圧測定器50aを接続し、第2の配線60bに第2の電圧印加回路40bおよび第2の電圧測定器50bを接続して、座標入力装置1を得た。
【0039】
この座標入力装置1の入力領域30における帯状電極13a側にて、第2の導電シート10bを第1の導電シート10aに押圧し、引き続き、帯状電極13a側から帯状電極13b側に向けて接触点Sを連続的に移動させた。この際、第2の導電シート10bに接続された第2の電圧測定器50bによって帯状電極13aから接触点Sまでの電圧を測定した。その結果を図11に示す。
図11に示されるように、この例の座標入力装置1では、帯状電極13aから接触点Sまでの距離と電圧との関係が比例関係にあるため、座標検出精度に優れる。
【0040】
(比較例)
第1の導電シートを得る際に、第1のポリエチレンテレフタレートフィルムに、導電性高分子塗料を透明基材の短辺に沿った方向に塗布したこと以外は実施例1と同様にして座標入力装置を得た。そして、実施例1と同様に、帯状電極から接触点までの電圧を測定したところ、急激に電圧が上昇する箇所があった(図12参照)。これは、透明基材の短辺に沿った方向に塗布斑が形成されていたためだと思われる。
このような座標入力装置では、帯状電極から接触点までの距離と電圧との関係とに不連続な箇所があるため、座標検出精度が低くなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の導電シートの一実施形態例を示す平面図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】本発明の導電シートの他の実施形態例を示す平面図である。
【図4】本発明の座標入力装置の一実施形態例を示す平面図である。
【図5】図4のB−B’断面図である。
【図6】図4の座標入力装置に具備される第1の導電シート及び第1の配線を示す平面図である。
【図7】図6のC−C’断面図である。
【図8】図4の座標入力装置に具備される第2の導電シート及び第2の配線を示す平面図である。
【図9】図4の座標入力装置において、第1の導電シートと第2の導電シートとが接触した際の状態を示す断面図である。
【図10】導電シートに接続される配線の他の例を示す断面図である。
【図11】実施例の座標入力装置における帯状電極から接触点までの距離と電圧との関係を示すグラフである。
【図12】比較例の座標入力装置における帯状電極から接触点までの距離と電圧との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
1 座標入力装置
10a 導電シート(第1の導電シート)
10b 導電シート(第2の導電シート)
11a,11b 透明基材
12a,12b 透明導電膜
13a,13b,13c,13d 帯状電極
20 絶縁スペーサ
30 入力領域
40a 第1の電圧印加回路
40b 第2の電圧印加回路
41a,41b 電源
42a,42b スイッチ手段
43 プルアップ抵抗
44 遮断手段
50a 第1の電圧測定器
50b 第2の電圧測定器
60a 第1の配線
60b 第2の配線
60c 配線
61 絶縁部
70 スタイラス
S 接触点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、該透明基材の片面の少なくとも一部に導電性高分子塗料が一方向に塗布されて形成された透明導電膜と、該透明導電膜の一部に隣接し、導電性高分子塗料の塗布方向に対して直交方向に設けられた一対の帯状電極とを備えることを特徴とする座標入力装置用導電シート。
【請求項2】
透明基材の片面の少なくとも一部に、導電性高分子塗料を一方向に塗布して透明導電膜を形成する透明導電膜形成工程と、
透明導電膜の一部に、導電性高分子塗料の塗布方向に対して直交方向に一対の帯状電極を設ける電極設置工程とを有することを特徴とする座標入力装置用導電シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の座標入力装置用導電シートを一対具備する座標入力装置であって、
一対の座標入力装置用導電シートは、各々の透明導電膜が互いに間隔を有しつつ対面しており、
座標入力装置用導電シートの各々の帯状電極を辺とした矩形状の入力領域が形成されていることを特徴とする座標入力装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−128280(P2007−128280A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320371(P2005−320371)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】