説明

座標入力装置

【課題】携帯電話やPDA、PC、TVなどの入力デバイスとして用いることができ、耐熱性等を向上させた座標入力装置を提供する。
【解決手段】透明な無機光導電膜層を、多数の平行電極と、該平行電極と交差する多数の透明な平行電極とで挟むことにより形成した入力部、駆動回路、信号検出回路、及び、スポット光を照射する光学系からなる座標入力装置からなる。そして、前記スポット光が少なくとも紫外線と可視レーザー光とからなり、紫外線によって透明な無機光導電膜層に電流を発生させ、可視レーザー光によって座標入力位置を確認できるようにしたことを特徴とする座標入力装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話やPDA、PCなどのポータブル情報機器、TVやスクリーンなどの映像機器の入力デバイス、入力装置、入力方法に関し、さらにはライトペンやポインタなどによる遠隔入力が可能で複数入力(マルチタッチ)が可能な入力デバイス、入力装置、入力方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発光する位置指示機で指定された位置を検出する座標入力装置として、特許文献1に示すように有機光導電膜層を、多数の平行電極と、該平行電極と交差する多数の透明な平行電極とで挟むことにより形成した入力部、駆動回路、信号検出回路、及び、スポット光を照射する光学系からなる光学的座標入力装置があった。
【0003】
上記座標入力装置では、スポット光を照射する光学系としてライトペンを用い、平行電極と多数の透明な平行電極との交差部で個々の画素が形成される。各画素の電流はスイッチング素子を介して逐次時系列信号として読み出される。駆動回路としては電荷蓄積型、電流電圧変換型などが挙げられる。ライトペンによってスポット光が照射された画素で有機光導電体膜層の抵抗値が低下し電流値が増加するため、2次元センサ上のライトペンの位置を検出することができる。この様に検出されたライトペンの位置をパーソナルコンピュータやコンピュータ端末装置などに伝送することによって、座標入力することが可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開平07-005972
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、有機光導電体膜は、電荷の移動度が小さいため、所望の画素にスポット光を長時間照射しなければ電流が発生しない問題があり、また耐熱性が低いなど入力スイッチとしての性能が劣る問題があった。また、透明性も低いため、背面に液晶パネルなどの映像画面を設けるような携帯電話やPDA、PC、TVなどの入力デバイスとしては用いることができない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の座標入力装置は、請求項1から5のように構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の座標入力装置は、透明な無機光導電膜層を、多数の透明な平行電極と、該平行電極と交差する多数の透明な平行電極とで挟むことにより形成した入力部、駆動回路、信号検出回路、及び、スポット光を照射する光学系からなることを特徴とする。したがって、入力部が全て透明になり、背面にある液晶などの映像画面を視認することができるため、携帯電話やPDA、PC、TVなどの入力デバイスとして用いることが可能となる効果がある。また、無機物からなるため、耐熱性など各種耐性が優れている効果がある。
【0008】
また、本発明の座標入力装置は、前記スポット光が少なくとも紫外線と可視レーザー光とからなり、紫外線によって透明な無機光導電膜層に電流を発生させ、可視レーザー光によって座標入力位置を確認できるようにしたことを特徴とする。したがって、エネルギーの高い紫外線を所望の画素に照射するので、スポット光を短時間照射するだけで電流を発生できる効果がある。また、可視レーザー光にどの位置の画素にスポット光が照射されているか確認でき、所望の座標入力ができたことを確認できる効果がある。また、スポット光の可視レーザー光は、眩しくて見続けることが困難なため、スポット光を見続けて、知らないうちに目を痛めてしまうことを防止できる効果がある。
【0009】
また、本発明の座標入力装置は、前記座標入力装置のスポット光において、紫外線が間欠的に発せられるスポット光において、紫外線が間欠的に発せられることを特徴とする。したがって、スポット光を見続けたとしても、目に入る紫外線量が少なくなり、知らないうちに目を痛めてしまう問題を防止できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。図1の(1)は本発明に係る座標入力装置の一実施例を示す模式断面図、図1の(2)は本発明に係る座標入力装置の適用例を示す模式図である。
【0011】
本発明の座標入力装置20は、少なくとも透明な無機光導電膜層1を、多数の平行電極2と、該平行電極と交差する別の多数の透明な平行電極3とで挟むことにより形成した入力部5、信号検出回路7及びスポット光8を照射する光学系からなる座標入力装置である(図1の(1)参照)。
【0012】
透明な無機光導電膜層1は、スポット光8の光エネルギーを吸収して励起し、電流を発生する層である。すなわち、多数の平行電極2と該平行電極と交差する別の多数の透明な平行電極3との間に電界が印加されている場合、それらの交差部の透明な無機光導電膜層1にスポット光8が照射されると、スポット光8が照射された箇所の平行電極2と平行電極3との間に電流が流れ導通することになる。そして、その導通の有無を信号検出回路等で読み取り、スポット光8が発せられた座標位置を検知するしくみになっている(図1の(1)参照)。
【0013】
透明な無機光導電膜層1の材質としては、インジウムースズ系酸化物、インジウムー亜鉛系酸化物、インジウムーガリウム系酸化物、インジウムーガリウムー亜鉛系酸化物、インジウムーガリウムー亜鉛―マグネシウム系酸化物などの透明酸化物半導体が挙げられ、必要に応じて添加物を含有させてもよい。これらの透明酸化物半導体には、アモルファスシリコンや有機半導体に比べて、10倍以上の電子移動度を有し、飽和電流、スィッチング速度などのトランジスタ特性が10倍以上に向上するものがあるからである。
【0014】
透明な無機光導電膜層1の形成方法としては、スパッタリング法のほかプラズマCVD法などの方法を採用することもできる。
【0015】
透明な無機光導電膜層1の厚みとしては、数十nm〜数百nmの範囲が好ましい。これよりも厚みが薄すぎるとピンホールが生じやすくなり、厚すぎると検出感度が低下するからである。
【0016】
平行電極2および平行電極3の材質としては、インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープ亜鉛酸化物などの透明導電膜等が挙げられ、必要に応じて添加物を含有させてもよい。
【0017】
平行電極2および平行電極3の形成方法としては、スパッタリング法により全面に形成した後エッチングによりパターン化する場合のほか、ナノ粒子化した透明導電粒子をバインダーに混ぜ印刷によりパターニングする方法など挙げられる。
【0018】
平行電極2および平行電極3の厚みとしては、数十nm〜数μmの範囲が好ましい。これよりも厚みが薄すぎると抵抗値が高くなって検知感度が低くなり、厚すぎると透明性が低下するからである。
【0019】
スポット光8は、ライトペンやポインタによって発生した直進的に進む光であり、透明な無機光導電膜層1に光エネルギーを供給して無機光導電膜層1に電流を発生させる作用がある。
【0020】
スポット光8としては、可視光線、紫外線、赤外線などが挙げられ、その中でも透明な無機光導電膜層1を励起でき、安価で入手し易い波長330nm〜370nmの紫外線9が好ましい。
【0021】
ただ、該紫外線9は可視領域外であり、スポット光8がどの箇所の座標位置に照射されたか認識できないため、該紫外線9と平行して座標入力位置を確認できるようにするための可視レーザー光10を併用したスポット光8とするほうが好ましい(図1の(1),図1の(2)参照)。また、スポット光8に可視レーザー光10を使用すると、眩しくて見続けることが困難なため、紫外線9を見続けることを防止できる相乗効果もある。
【0022】
紫外線9の光源の強度としては、例えば1μW〜50mW/cmが適当である。光源の強度が低すぎると検出精度が低下し、高すぎるとエネルギーの無駄使いになるからである。
【0023】
また、スポット光8は、紫外線9が間欠的に発せられることを特徴としてもよい。透明な無機光導電膜層1が紫外線9の光エネルギーを吸収して励起するのはごく一瞬の時間であり、ずっと紫外線9を照射し続ける必要はなく、電流が検知されたらすぐに切れるようにしておいたほうがエネルギー節約の点から好ましいからである。具体的には0.05秒〜0.5秒が適当である。
【0024】
上記スポット光8によって無機光導電膜層1に生じた電流は、多数の平行電極2と該平行電極と別の多数の透明な平行電極3とが交差した電極を通じて信号として検出され、その信号は信号検出回路7を介してコントローラに送られ座標位置が認識される。
【0025】
なお、本発明の座標入力装置20は、上記の構成以外に他の層を設けたり、他の部品等を取り付けたりしてもよい。例えば、平行電極2が傷つくのを保護するために平行電極2上に透明な保護層11を形成したり、平行電極3を支持する例えばPETシートからなる透明支持体16を構成したりすることなどが挙げられる(図1の(1)参照)。
【実施例】
【0026】
<入力部および信号検出回路部の作製>
厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上にレジストをスクリーン印刷で形成し、その上からインジウムスズ酸化物からなる透明導電膜を厚さ100nmでスパッタリング法にて形成後、有機溶剤でもってエッチングレジストを剥離し、多数の平行電極をパターニング形成した後、下記のスッパリング加工により無機光導電膜層を形成した。その後、無機光導電膜層上にレジストをスクリーン印刷で形成し、その上からインジウムスズ酸化物からなる透明導電膜を厚さ100nmでスパッタリング法にて形成後、有機溶剤でもってレジストを剥離し、前記平行電極と交差する別の多数の透明な平行電極をパターニング形成した。後者平行電極上にはアクリル系の透明保護膜を貼合し、両平行電極は信号検出回路を介して光電流検出、信号処理、送信等の回路を持つ汎用チップを使用したコントローラと接続させ、入力部および信号検出回路部を作製した。
【0027】
<無機光導電膜層の形成条件>
ターゲット材料として、InGaO3(ZnO)4組成を有する多結晶焼結体(サイズ20mmΦ5mm厚)を用い、成長室内の到達真空を1×10−4Paにし、成長中の酸素ガスとアルゴンガスの全圧は、4〜0.1×10−1Paの範囲での一定値にした。アルゴンガスと酸素との分圧比を変えて、酸素分圧を3×10−2Pa以上、5×10-1Pa以下の範囲にし、基板温度を室温とし、ターゲットと被成膜基板間の距離30mmとした。投入電力はRF180Wとし、成膜レートは、10nm/分の条件下で無機光導電膜層のスッパリング加工を行った。得られた無機光導電膜層の膜厚は180nm程度であった。
【0028】
<スポット光を照射する光学系の選定>
スポット光としては波長370nmの紫外線と赤色レーザー光を発生できるLEDを束にしたものを用い、ポインタ内に組み込んだ。紫外線の光源の強度としては1mW/cmで、赤色レーザー光が1秒間連続して出ている状態で0.2秒間照射でき0.8秒間は照射停止される間欠照射タイプを選定した。
【0029】
<座標入力装置としての評価結果>
(1)入力検知評価
上記の構成で得た入力部および信号検出回路部に上記選定したスポット光を照射して、照射位置の座標が検知可能か否かテストした。スポット光を任意の20箇所各3回ずつ照射し、導通の有無を測定した。その結果、照射箇所20箇所全てで導通の有無を確認できた。
【0030】
(2)高温環境下での耐久性評価
上記の構成で得た入力部および信号検出回路部を、85℃の高温環境下に16時間置いた後、スポット光を照射して座標入力検知の動作確認を行った。その結果、高温環境下に置いた前後でほとんど動作特性に変化が見られなかった。
【0031】
以上、上記の構成で得た座標入力装置では、スポット光を照射する場合、スポット光が照射された無機光導電膜層に電流が生じ、平行電極間に導通が生じると考えられる。そして、その導通の有無を検出することでスポット光の照射箇所が認識できた。その結果、この座標入力装置はポインタのスポット光によって入力可能なセンサとして使用できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本願発明は、入力部が全て透明になるので図1の(1)に示すように背面にある液晶12などの映像画面を視認することができ、携帯電話やPDA、PC、TVなどの入力デバイスとして用いることが可能となる。また、図1の(2)で示したように、プロジェクタ13でスクリーンに画面を投影したインプットスクリーン14などの大画面に、入力ポインタ15でスポット光8を照射する入力装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】その(1)が本発明に係る座標入力装置の一実施例を示す模式断面図であり、その(2)が、本発明に係る座標入力装置の適用例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0034】
1 透明な無機光導電膜層
2 多数の透明な平行電極
3 平行電極2と交差する別の多数の透明な平行電極
5 入力部
7 信号検出回路
8 スポット光
9 紫外線
10 可視レーザー光
20 座標入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な無機光導電膜層を、多数の透明な平行電極と、該平行電極と交差する多数の透明な平行電極とで挟むことにより形成した入力部と、
前記入力部にスポット光を照射する光学系と、
前記入力部からの信号を検出する信号検出回路とを備えた、座標入力装置。
【請求項2】
前記透明な無機光導電膜層が、インジウムースズ系酸化物、インジウムー亜鉛系酸化物、インジウムーガリウム系酸化物、インジウムーガリウムー亜鉛系酸化物、インジウムーガリウムー亜鉛―マグネシウム系酸化物のいずれかから選ばれる透明酸化物半導体からなる、請求項1記載の座標入力装置。
【請求項3】
前記スポット光が少なくとも紫外線と可視レーザー光とからなり、前記紫外線によって透明な無機光導電膜層に電流を発生させ、前記可視レーザー光によって座標入力位置を確認できるようにした、請求項1又は請求項2記載の座標入力装置。
【請求項4】
前記紫外線は間欠的に照射される、請求項3記載の座標入力装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−73021(P2010−73021A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241109(P2008−241109)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】