説明

庫内の空気清浄装置

【課題】白金に生じる触媒毒を除去することで白金の有機化合物分解力が衰えることがない庫内の空気清浄装置を提供する。
【解決手段】庫内空気中の有機物を分解する庫内の空気清浄装置1を、庫内に配設される紫外線照射器2と、庫内面に形成される光触媒組成物塗布層3とを有して構成し、紫外線照射器から発する紫外線を光触媒組成物塗布層に当てる。光触媒組成物塗布層を、塗膜層の最外層に位置した表層部のバインダ剤とバインダ補助剤との層を拭き取りにより除去して形成するようにして、光触媒組成物と光触媒組成物の粒子表面に担持される白金を塗膜層の最外層表面に露出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷蔵庫や保冷庫などの庫内空気中の有機物を分解する庫内の空気清浄装置に関し、特に白金に生じる触媒毒を除去することで白金の有機化合物分解力が衰えることがない庫内の空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
庫内の空気清浄装置としては、冷蔵庫内に脱臭装置を設け、この脱臭装置を構成しているオゾン分解触媒に白金を含有させることで、白金にエチレンガスを吸着させて庫内のエチレンガスを速やかに除去するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
別の庫内の空気清浄装置としては、二酸化チタンの粒子表面に銀、銅、白金などの金属微粒子を分散付着させた金属担持型光触媒粒子を冷蔵庫の庫内壁面に塗布することで、庫内に光源がなくても、防菌、防かび、消臭などの効果を持たせるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
別の庫内の空気清浄装置としては、酸化チタンを冷蔵庫の庫内照明ランプの表面に塗布することで、光触媒用に紫外線ランプなどの光源を設置しなくても、脱臭などの効果を発揮させるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−43808号公報(段落0007,0008、図1)
【特許文献2】特開2005−233516号公報(段落0010,0013、図1)
【特許文献3】特開平11−118333号公報(段落0005,0006、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に係る庫内の空気清浄装置では、白金に臭気成分を分解する触媒作用に加えて、エチレンガスを吸着する吸着作用も有するよう構成されているところ、白金には触媒を失活させる物質(以下、触媒毒という)が吸着しやすいため、脱臭やエチレン吸着の効果が持続しない。
【0007】
前記特許文献2に係る庫内の空気清浄装置では、庫内に紫外線ランプなどの光源を設置しなくてもいいよう構成されているために、銀などの金属微粒子が抗菌などの効果を発揮しているものと考えられる。そして、銀や銅を庫内壁面に塗布する場合には、銀や銅が変色して庫内の外観が損なわれるため、銀や銅の含有量を防菌などの効果が出る程度にまで高められず、抗菌などの効果が安定しない。また、白金を庫内壁面に塗布する場合には、触媒毒が吸着しやすいため、抗菌などの効果が持続しない。
【0008】
前記特許文献3に係る庫内の空気清浄装置では、酸化チタンが紫外線量の少ない庫内照明用ランプ、例えば蛍光灯の光に含まれる紫外線に励起されるよう構成されているために、光源のごく一部しか光触媒作用に寄与しておらず、脱臭などの効果が安定しない。
【0009】
そこで、この発明では、前記した課題を解決し、白金の有機化合物分解力が衰えることがない庫内の空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明では、庫内空気中の有機物を分解する庫内の空気清浄装置を、庫内に配設される紫外線照射器と、庫内面に形成される光触媒組成物塗布層とを有して構成した。そして、光触媒組成物塗布層を、光触媒組成物と、光触媒組成物の粒子表面に担持される白金と、バインダ剤と、油成分を含有するバインダ補助剤とを混合して液状の塗布剤を得て、この塗布剤を庫内面へ塗布して薄く引き延ばした塗膜層を庫内面に形成させ、この塗膜層の最外層に位置した表層部のバインダ剤とバインダ補助剤との層を拭(ふ)き取りにより除去して、光触媒組成物を塗膜層の最外層表面に露出させて形成した。
【0011】
請求項2に係る発明では、紫外線照射器を、プラズマ発生器に置き換えた。
【0012】
請求項3に係る発明では、庫内を、青果物や花き類を保存する冷蔵庫、保冷庫または保存庫の庫内とした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、庫内の空気清浄装置を、庫内に配設される紫外線照射器と、庫内面に形成される光触媒組成物塗布層とを有して構成したので、紫外線照射器から発する紫外線を光触媒組成物塗布層に当てて、光触媒作用を引き起こすことができる。
【0014】
ここで、請求項1に係る発明によれば、光触媒組成物塗布層を、光触媒組成物と、光触媒組成物の粒子表面に担持される白金とを有して構成したので、白金に生じる触媒毒を光触媒組成物、例えば二酸化チタンの光触媒作用によって分解することができる。そのために、一般に白金の有機化合物分解力が触媒毒によって衰えてくるところ、請求項1に係る発明によれば、白金の有機化合物分解力が衰えることがない。そして、白金が庫内空気中の有機物、例えば庫内空気環境に悪影響を及ぼす細菌やカビを分解することで、生鮮食料品の腐敗を遅らせ、においの発生も防ぐことができる。
【0015】
また、請求項1に係る発明によれば、光触媒組成物塗布層を、塗膜層の最外層に位置した表層部のバインダ剤とバインダ補助剤との層を拭き取りにより除去して形成するようにしたので、光触媒組成物と、光触媒組成物の粒子表面に担持される白金を塗膜層の最外層表面に露出させることができる。そのために、光触媒組成物と白金の触媒作用を大きくすることができる。あわせて、バインダ剤とバインダ補助剤との層を拭き取りにより除去するようにしたので、光触媒組成物塗布層を透明にでき、庫内の外観が損なわれることもない。
【0016】
さらに、請求項1に係る発明によれば、光触媒組成物塗布層を庫内面に形成したので、庫内の容量を減らすこともない。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、紫外線照射器をプラズマ発生器に置き換え、プラズマによって生じる活性種で白金の触媒毒を分解するようにしたので、プラズマ発生器を備えた既存の冷蔵庫や保冷庫をそのまま使うことができる。また、庫内に紫外線照射器がいらなくなるため、庫内設計の自由度を高めることもできる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、庫内を青果物や花き類を保存する冷蔵庫、保冷庫、保存庫の庫内としたので、青果物や花き類が発生するエチレンを分解することができる。そのために、青果物や花き類が保存中に成熟が進み過ぎることを防ぎ、日持ちをよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係る庫内の空気清浄装置をプレハブ保冷庫に適用した概略説明図である。
【図2】この発明に係る光触媒組成物塗布層の材料である塗布剤(以下、物品表面塗布剤という)の一部を拡大して示す断面図である。図2の(a)は、塗布直後を示し、図2の(b)は、拭き取り手段による拭き取り状態を示す。
【図3】この発明に係る塗布剤における光触媒組成物と白金を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、この発明の創作の基礎となる事項について簡単に説明する。発明者の一人は、特許第4048266号に係る発明をし、その発明に係る商品(以下、エアープロット(登録商標、商標権者は株式会社ゼンワールド)という)を製造している。発明者らは、エアープロットを販売しながらエアープロットを応用した技術について模索していたところ、空気中に浮遊している有機物質を光触媒組成物に付着させて分解するといったエアープロットの効果を応用すると、生鮮食料品から発生する臭気成分である有機物や、庫内空気環境に悪影響を及ぼす細菌やカビなどの有機物を分解でき、庫内の空気清浄装置として脱臭や抗菌の効果が期待できると考えた。
【0021】
そして発明者らは、エアープロットでは二酸化チタンなどの光触媒が有機物を分解していることから、太陽光のような多量の紫外線が不可欠であると考えられていたところ、光触媒が有機物を分解しているというよりも、光触媒が白金に生じる触媒毒を分解することで、白金の有機化合物分解力が衰えないことから有機物を分解し続けられるいった新たな着想に基づき、白金に生じる触媒毒を分解できる程度の紫外線量が得られれば、太陽光でなくてもいいことを見いだし、この発明を創作するに至ったものである。
【0022】
次に、この発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、この発明に係る庫内の空気清浄装置をプレハブ保冷庫に適用した概略説明図である。
【0023】
図1に示すように、プレハブ保冷庫Rは、断熱性を有した天井パネルと壁パネルと床パネルとを組み立ててなる倉庫に、中温用エアコンAと、室内灯Lとを有して構成されていて、一般に青果物や花き類を保存するために用いられている。そして、空気清浄装置1は、プレハブ保冷庫R内(以下、庫内という)に配設される紫外線照射器2と、庫内面に形成される光触媒組成物塗布層3とを有して構成されている。
【0024】
紫外線照射器2は、ここでは紫外線ランプであって、光触媒組成物塗布層3が形成された庫内面に紫外線を照射できるように、ここでは天井パネルの中央に設けられている。なお、他の実施形態では、紫外線照射器2をプラズマ発生器に置き換え、プラズマによって生じる活性種で白金の触媒毒を分解するようにしてもよい。
【0025】
光触媒組成物塗布層3は、光触媒組成物と、光触媒組成物の粒子表面に担持される白金と、バインダ剤と、油成分を含有するバインダ補助剤とを混合して液状の塗布剤を得て、この塗布剤を庫内面へ塗布して薄く引き延ばした塗膜層を庫内面に形成させ、この塗膜層の最外層に位置した表層部のバインダ剤とバインダ補助剤との層を拭き取りにより除去して、光触媒組成物を塗膜層の最外層表面に露出させて形成させた薄膜である。光触媒組成物塗布層3は、ここでは、壁パネルの内面に形成されている。
【0026】
以上のように構成された空気清浄装置1では、紫外線照射器2が庫内、ここでは天井パネルの中央に設けられるとともに、光触媒組成物塗布層3が庫内面、ここでは壁パネルの内面に形成されているために、紫外線照射器2から発する紫外線を光触媒組成物塗布層3に当てられるようになっている。
【0027】
続いて、光触媒組成物塗布層3について説明する。光触媒組成物塗布層3は、発明者の一人が発明した特許第4048266号に係る光触媒組成物の物品表面塗布剤を物品表面塗布方法によって塗布することで形成される。そのため、光触媒組成物塗布層3については、特許第4048266号に係る光触媒組成物の物品表面塗布剤と、その物品表面塗布方法についての説明を援用しながら説明する。
【0028】
図2は、この発明に係る光触媒組成物塗布層3の材料である物品表面塗布剤の一部を拡大して示す断面図である。図2の(a)は、塗布直後を示し、図2の(b)は、拭き取り手段による拭き取り状態を示す。図3は、この発明に係る塗布剤における光触媒組成物と白金を示す断面図である。
【0029】
図2の(a)に示すように、物品表面塗布剤Pは、光触媒組成物11と、バインダ剤12と、油成分を含有するバインダ補助剤13とからなり、光触媒組成物11とバインダ剤12とバインダ補助剤13とを所定配合で混合して液状に調製してある。より詳細には、物品表面塗布剤Pは、光触媒組成物11と、バインダ剤12と、油成分を含有し物品表面塗布後に除去されるバインダ補助剤13とを混合して調製した液状の塗布剤である。そして、バインダ補助剤13が、天然植物由来のワックス、ミネラルスピリット系溶剤、植物油、界面活性剤からなるか、または天然植物由来のワックス、ミネラルスピリット系溶剤、植物油の少なくとも一以上と、界面活性剤とからなるものである。
【0030】
光触媒組成物11は、酸化チタン、二酸化チタン、またはゾル状チタン化合物、あるいは酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化銅、酸化銀、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化ゲルマニウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化クロム、酸化マンガン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化アンチモン、チタン酸ストロンチウムなどの金属酸化物が挙げられる。なお、ゾル状チタン化合物は、エタノール(メチルアルコール)や水などで所定の溶液状に作成される。
【0031】
図3に示すように、光触媒組成物11は、その粒子表面に白金11aが担持されている。光触媒組成物11の粒子表面に白金11aが担持されるとは、光触媒組成物11の粒子表面に対して、白金11aが物理的または化学的に固定化されることをいう。白金11aの固定化方法は、イオンドーピング法や光還元法などがあり、その方法は特に限定されない。
【0032】
バインダ剤12は、光触媒組成物11を担持するためのバインダ作用をなすもので、例えば、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂など適宜な組成物あるいは天然糊(のり)などが使用され、水やエチルアルコール(エタノール)などの適宜な希釈液によって流動性が良好となる所定濃度の溶液状に形成される。
【0033】
バインダ補助剤13は、光触媒組成物11を塗布対象物である庫内面、図2の(a)では物品bの表面に対して、できる限り薄く塗布させるためのものである。バインダ補助剤13は、油成分を有するものであって、この油成分は、例えば、天然植物由来のワックスやミネラルスピリット系溶剤、植物油などと、慣用の界面活性剤や水あるいはエタノールなどとで構成され、溶液状に作成される。天然植物由来のワックスとしては、例えば、カルナバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、オウリキュリロウ、サトウキビロウ、ホホバロウ、油糧種子ロウ、モクロウ、ウルシロウ、蜜蝋(みつろう)などがあり、少なくともこの群からの一種類を選べばよい。油成分は、撥水(はっすい)性を発揮し、塗布表面につやが出て、合成樹脂を相溶する特性がある。
【0034】
また、バインダ補助剤13は、良好な塗膜物性を有し、耐アルカリ性、耐候性、速乾性を併せ持ち、かつ、スプレー、はけ、ローラーなど通常補修の際に用いられる塗装方法での塗装作業性が良好で、しかも毒性の少ないミネラルスピリット系溶剤をその成分として使用する。
【0035】
バインダ補助剤13におけるミネラルスピリットとしては、例えば、ミネラルターペン、ホワイトスピリット、ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリットなどがあり、少なくともこの群からの一種類を選べばよい。
【0036】
さらに、バインダ補助剤13における植物油は、不乾性油の性質があり、酸化や変質のしにくい植物油が望ましい。すなわち、薄くよく延びる役割を発揮する素材であれば任意のものが選定し得るもので、例えば、椿油、オリーブ油、ゴマ油、大豆油、サフラワー油、菜種油または月見草油などであり、少なくともこの群からの一種類を選べばよい。
【0037】
また、物品表面塗布剤Pには、必要に応じて、植物油やワックス類の酸化に起因する変色などを防止する目的で、酸化防止剤を添加する。酸化防止剤としては、例えば、チルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン酸などが用いられる。そのほかに、フェノール性物質、芳香族アミン、フェノチアジン、ジチオホスフェート、ジチオカルバメート、スルフィド、硫化オレフィンなども使用できる。さらに、植物油の酸化防止に対しては、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルが、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル及び/又はL−アスコルビン酸ステアリン酸エステルなどが有効である。また、食品添加物の酸化防止剤として、L‐アスコルビン酸、L‐アスコルビン酸ナトリウム(ビタミンC)、エチレンジアミン四酢酸CA二Na、エチレンジアミン四酢酸二Na、エルソルビン酸、エルソルビン酸ナトリウム、グアヤク脂、クエン酸イソプロピル、ノルジヒドログアヤレチック酸、没食子酸プロピル、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、dl-α‐トコフェロール(ビタミンE)、ブチルヒデロキシアニソール(BHA)、ローズマリー抽出物質、エトキシキンなどと、食品添加物の防腐剤として、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デビドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウムなどを利用してもよい。これらの酸化防止剤の中から少なくとも一種類のものを添加してもよい。
【0038】
なお、光触媒組成物11とバインダ剤12とバインダ補助剤13は、例えば適宜な容器内において一度に添加して、エチルアルコールや水などの希釈液で所定濃度に希釈し、溶液化させることができる。それぞれの配合比率は、特許第4048266号に係る発明の実施の形態に示した配合範囲内において任意に選定し得る。
【0039】
次に、光触媒組成物11の物品表面塗布方法、すなわち光触媒組成物塗布層3の形成方法について説明する。まず、塗布対象物である庫内面、図2の(a)では物品bの汚れ、特に表面に付着した油分を、汚れ除去剤(例えばその成分がエチルアルコールや界面活性剤、トコフェロール、イオン交換水、Lアスコルピンサン、クエン酸などが含有する液状の洗浄剤)を散布して、ウエスなどにより十分に取り除く。
【0040】
図2の(a)に示すように、物品表面塗布剤Pを、物品bの表面へ適量(例えば1m当たり4cc程度)を付け、スクレーパー(スクィジーとも呼ばれ、先端部に硬質ゴムを設けたもの)などの塗布手段(図示せず)により薄く引き延ばすように表面全体へ万遍なく塗布して、物品b表面に塗膜層14aを形成させる。このとき、物品表面塗布剤Pに混入されたバインダ補助剤13が、バインダ剤12自体を薄層にさせて、塗膜層14aを薄く形成させる作用をなす。
【0041】
図2の(b)に示すように、拭き取り手段15、例えばバルキー繊維などのクロス布を用いて、塗膜層14aが乾燥していない状態(まだ湿った状態が残存しているとき)で、物品bの表面に塗布された塗膜層14aを拭き取ると、塗膜層14aの表層部からバインダ剤12とバインダ補助剤13(図2の(a)参照)との混合層が取り除かれる。
【0042】
さらに、スポンジなどの第一仕上げ手段(図示せず)によって、表層部が取り除かれた塗膜層14aを拭き取ると、バインダ補助剤13に含まれていた油成分も取り除かれる。そして、物品表面塗布剤Pの表層部には、粒子状となっている光触媒組成物11が露出する。必要に応じて、若干水分を有するウエスやタオル(好ましくは約40℃の湯を湿らせる、あるいは、タオルの長さ方向1/3部分に水を付け、残りの長さ方向2/3部分の渇いた部分でぬらした部分を挟み付けて、この渇いた部分を両面の表部としたもの)などの第二仕上げ手段(図示せず)によって、塗膜層14aを拭き残しのないように拭き取ると、物品bの表面が白濁した曇りのないきれいな透明状態になる。なお、このようにして形成された塗膜層14aは、この発明に係る光触媒組成物塗布層3に相当する。
【0043】
以上のように形成された光触媒組成物塗布層3では、光触媒組成物塗布層3を、塗膜層14aの最外層に位置した表層部のバインダ剤12とバインダ補助剤13との層を拭き取りにより除去して形成するようにしたので、光触媒組成物11と光触媒組成物の粒子表面に担持された白金11aが、塗膜層14a最外層表面に露出している。そのために、光触媒組成物11と白金11aが庫内空気と接する面積を大きくでき、光触媒作用と白金の有機化合物分解力が十分に発揮される。
【0044】
そして、光触媒組成物塗布層3では、光触媒組成物塗布層3を、光触媒組成物11と光触媒組成物11の粒子表面に担持される白金11aとを有して構成したので、光触媒組成物11に紫外線を当たると白金11aに生じる触媒毒が光触媒作用によって分解される。そのために、一般に白金の有機化合物分解力が触媒毒によって衰えてくるところ、空気清浄装置1によれば、白金11aの有機化合物分解力が衰えない。
【0045】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は前記実施形態には限定されない。例えば、この発明に係る庫とは、プレハブ保冷庫に限られるものではなく、業務用や家庭用のあらゆるタイプの保冷庫でも、保冷車でも構わない。また、庫内の温度条件が問われるものではなく、保冷庫のほか、冷蔵庫、保存庫、冷凍庫、恒温庫でも構わない。さらに、この発明に係る庫は、青果物や花き類用に限られるものではなく、肉類や魚介類を含む生鮮食料品用でも、生物や生体サンプル用でも構わない。
【0046】
この発明において紫外線照射器とは、実施形態の紫外線ランプのほか、ブラックライト、紫外線発光ダイオードなどの紫外線を発生させる光源のことをいう。
【0047】
この発明において庫内面とは、実施形態のように壁に限られるものではなく、天井や床でも、扉でも構わない。また、庫内面に光触媒組成物塗布層を形成とは、実施形態のように壁の内面にじかに塗布剤を塗布して光触媒組成物塗布層を形成する以外にも、例えば塗布剤を塗布したパネルを庫内に取り付けても、塗布剤を塗布した棚板を庫内に設置してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 空気清浄装置
2 紫外線照射器
3 光触媒組成物塗布層
11 光触媒組成物
11a 白金
12 バインダ剤
13 バインダ補助剤
14a 塗膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内空気中の有機物を分解する庫内の空気清浄装置において、
庫内に配設される紫外線照射器と、庫内面に形成される光触媒組成物塗布層とを有し、
前記光触媒組成物塗布層が、
光触媒組成物と、光触媒組成物の粒子表面に担持される白金と、バインダ剤と、油成分を含有するバインダ補助剤とを混合して液状の塗布剤を得て、
この塗布剤を庫内面へ塗布して薄く引き延ばした塗膜層を庫内面に形成させ、
この塗膜層の最外層に位置した表層部の前記バインダ剤と前記バインダ補助剤との層を拭き取りにより除去して、
前記光触媒組成物を前記塗膜層の最外層表面に露出させて形成されたことを特徴とする庫内の空気清浄装置。
【請求項2】
前記紫外線照射器が、プラズマ発生器に置き換えられることを特徴とする請求項1に記載の庫内の空気清浄装置。
【請求項3】
前記庫内が、青果物または花き類を保存する冷蔵庫、保冷庫または保存庫の庫内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の庫内の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−2465(P2012−2465A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140002(P2010−140002)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(310011930)株式会社ゆうと (1)
【出願人】(301045920)株式会社ゼンワールド (2)