説明

廃ガラスの再生方法及び前記再生方法により得られる銀含有発泡ガラス

【課題】銀ペーストをプリントした自動車用リアガラスや、銀で装飾されたガラス等の銀を含有する廃ガラスをそのまま破砕、粉砕して再利用に供する。
【解決手段】銀を含有する廃ガラスを破砕または粉砕する工程と、前記工程で得られたガラス片またはガラス粉末を、発泡剤と混合して還元焼成して銀含有発泡ガラスを得る工程と、を有する銀含有廃ガラスの再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇用ヒータとして銀ペーストがプリントされた自動車用リアガラスや、銀で装飾されたガラス等の、銀を含有する廃ガラスを再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、後方確認の際の視認性を高めるために、リアガラスの内表面にプリントした銀ペーストに通電してガラスを加熱することにより、曇りを消失したり、曇り発生を防止することが行われている。
【0003】
一方で、環境保全や省資源の高まりから、自動車の構成部品のリサイクルが推進されているが、リアガラスの再生においては銀ペーストを含んだまま溶融すると、銀が溶融窯の耐火煉瓦を侵食して窯の寿命を短縮させるという問題がある。また、得られる再生ガラス中にも銀が混入して品質を低下させる。そのため、リアガラスの再生においては銀ペーストを取り除く作業が必要であり、例えば特許文献1では、破砕したリアガラスに研磨材を噴霧し、表面の銀を除去したガラスを回収し、再利用している。
【0004】
そのため、再生コストの増加を招いており、また、破砕したガラス片から銀ペーストを完全に除去することは実質的に無理であり、窯の耐火煉瓦の劣化や、再生ガラスの品質への影響は避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−103336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、銀ペーストをプリントした自動車用リアガラスや、銀で装飾されたガラス等の銀を含有する廃ガラスをそのまま破砕、粉砕して再利用に供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下を提供する。
(1)銀を含有する廃ガラスを破砕または粉砕する工程と、
前記工程で得られたガラス片またはガラス粉末を、発泡剤と混合して還元焼成して銀含有発泡ガラスを得る工程と、
を有することを特徴とする銀含有廃ガラスの再生方法。
(2)銀を含有する廃ガラスが、防曇用ヒータとして銀ペーストがプリントされた自動車のリアウインドであることを特徴とする上記(1)記載の銀含有廃ガラスの再生方法。
(3)上記(1)または(2)に記載の再生方法により得られることを特徴とする銀含有発泡ガラス。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防曇用の銀ペーストがプリントされた自動車用リアガラスや、装飾用の銀がプリントされたガラス等をそのまま破砕、粉砕して再利用に供することができ、低コストで再生できる。しかも、再生品においても、銀を酸化することなく、純銀に近いまま利用することができるため、銀による殺菌作用を十分に発現でき、例えば水の浄化を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】銀含有発泡ガラスを撮影した写真である。
【図2】本発明を応用した冷却塔を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の再生方法に関して詳細に説明する。
【0011】
本再生方法では、先ず、銀ペーストがプリントされた自動車用リアガラスや、装飾ために銀がプリントされたガラス等の銀含有廃ガラスをそのまま破砕、粉砕する。破砕、粉砕の程度には制限がないが、後述する還元焼成でのガラス軟化時の効率を考慮すると、ガラス片は小さいほど好ましく、数mm以下、好ましくは数十〜数百μm程度の粉末にする。また、破砕、粉砕方法にも制限はなく、公知のガラス用破砕機や粉砕機を用いることができる。
【0012】
次いで、得られたガラス片を発泡剤と混合し、還元焼成して銀含有発泡ガラスを得る。銀は酸素存在下で加熱すると容易に酸化し、銀が持つ殺菌作用が大きく低下する。そのため本発明では、銀の酸化を防ぐために還元焼成を行う。還元焼成は、例えば以下の(1)〜(3)の方法で行うことができる。尚、加熱温度はガラスの軟化温度以上であれば制限はないが、750〜900℃が好ましい。
(1)ガラス片と発泡剤との混合物をバーナー等の燃焼装置に入れ、空気比を1以下に調整して焼成する。
(2)ガラス片と発泡剤との混合物を電気炉に入れ、炉内を窒素ガスやアルゴンガス等の還元雰囲気下、または真空下に維持して加熱する。
(3)鞘状の容器に、ガラス片及び発泡剤とともに、加熱により酸素を消費する固体燃料等の酸素消費剤を入れて加熱する。
【0013】
発泡剤としては、例えば炭酸カルシウムや炭化ケイ素等が好ましい。また、発泡剤の量は、発泡効率を考慮すると、ガラス片との合計量に対し0.1〜5質量%が好ましい。
【0014】
還元焼成後に室温まで急冷すると、銀含有発泡ガラスが自然破損して、拳大ほどの塊りとなって得られる。図1の右側に示すように、銀含有発泡ガラスは、外観はほぼ多孔質のガラス塊であり、銀粉が外表面及び発泡により形成された無数の空孔の表面に付着しているとともに、一部がガラス内に封じ込められている。尚、参考のために、図1の左側に、銀を含まないガラス片を示す。
【0015】
尚、銀含有発泡ガラスにおける銀含有量、即ち外表面や空孔に付着した量と、ガラス内に封じ込められた量の合計量は、破砕、粉砕される前の廃ガラスにおける銀の量と同じである。例えば、自動車リアウインドには、通常は一枚当たり1〜5質量%の銀ペーストが防曇用ヒータとしてプリントされているが、この自動車リアウインドを処理して得られる銀含有発泡ガラスにも1〜5質量%の銀が含有される。
【0016】
このようにして得た銀含有発泡ガラスは、銀が持つ殺菌作用を利用して例えば水質改善剤として利用できる。使用方法には制限はなく、発泡体であるため水に浮く性質を利用して、塊のまま被処理水の液面に浮遊させてもよい。あるいは、網状容器や、多数の通孔が開いた容器に収容して被処理水中に配置してもよい。
【0017】
具体例を示すと、図2のような空調機等の冷却塔に応用することができる。図示される冷却塔1では、外気を貯水部10の周壁に設けたフィン20を通じて流入させつつ、フィン20の表面にて冷却水30と接触させて冷却水30を冷却し、排気をファン40により外部に放熱している。冷却水30は、外部から貯水部10の上部に連続的に供給され(30A)、外気との接触により冷却された後、貯水部10の底部から排水され(30B)、冷凍機50で熱交換されて再度貯水部10へと循環する。尚、この循環において、冷却塔1に供給される冷却水30Aは例えば約37.5℃であり、貯水部10から排水される冷却水30Bは約32℃まで冷却される。そのため、冷却水30は、外気に含まれる雑菌類や有機物と絶えず接触しており、自身が汚染したり、フィン20に藻類が発生して目詰まりを起したりする。その結果、排気が異臭を放つようになり、また冷凍機50の循環用配管が目詰りを起して熱交換効率が低下すようになる。そこで、貯水部10の底部に溜まっている冷却水に銀含有発泡ガラスを浮遊させ、銀の殺菌作用により冷却水30を浄化する。尚、水と長く接触しているとガラスからアルカリ分が溶出するが、アルカリ分の溶出に伴いガラスに封じ込まれている銀も外部に溶け出すため、殺菌作用が長続きする。
【0018】
従って、従来、このような冷却塔では通常は年2回の塔内清掃を行っていたが、銀含有発泡ガラスを用いることにより塔内清掃が年1回で済むようになり、冷却塔1のメンテナンスコストを半減することができる。また、定期的に冷却水30に殺菌用薬液を添加することも行われているが、殺菌用薬液も不要となる。
【0019】
尚、銀含有発泡ガラスの量には制限はないが、1年間の殺菌効果を維持するには、循環する冷却水30の水量に対して0.5質量%程度とすることが望ましい。これは、冷却水30は系内で適切な濃縮倍数を維持するために補給、排水(ブローダウン)が繰り返し行なわれており、常に排水が生じているが、その排水が処理施設に持ち込まれたときに、施設内で活用されている微生物への影響を与えないこと、及び1年を通じて銀イオンが溶出し続けて殺菌効果を持続できることを考慮しての値である。また、銀含有発泡ガラスの量がこれより多くても構わないが、殺菌作用の増分は余り得られず、不経済になることがある。
【符号の説明】
【0020】
1 冷却塔
10 貯水部
20 フィン
30 冷却水
40 ファン
50 冷凍機
100 銀含有発泡ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀を含有する廃ガラスを破砕または粉砕する工程と、
前記工程で得られたガラス片またはガラス粉末を、発泡剤と混合して還元焼成して銀含有発泡ガラスを得る工程と、
を有することを特徴とする銀含有廃ガラスの再生方法。
【請求項2】
銀を含有する廃ガラスが、防曇用ヒータとして銀ペーストがプリントされた自動車のリアウインドであることを特徴とする請求項1記載の銀含有廃ガラスの再生方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の再生方法により得られることを特徴とする銀含有発泡ガラス。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−163296(P2010−163296A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4836(P2009−4836)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】